特許第6580518号(P6580518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580518
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20190912BHJP
   F02M 35/116 20060101ALI20190912BHJP
   F02M 26/19 20160101ALI20190912BHJP
【FI】
   F02M35/10 311E
   F02M35/116 V
   F02M35/10 101E
   F02M26/19 331
   F02M26/19 321
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-95899(P2016-95899)
(22)【出願日】2016年5月12日
(65)【公開番号】特開2017-203421(P2017-203421A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浅井 満季
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−113139(JP,A)
【文献】 実開昭55−083561(JP,U)
【文献】 実開昭59−182667(JP,U)
【文献】 実開昭60−090552(JP,U)
【文献】 特開2009−162135(JP,A)
【文献】 特開2009−287418(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/059956(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 26/19
F02M 35/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新気が流れる1本の新気吸気管に分岐部を介して第1バンク用と第2バンク用の2本の分岐管が接続された吸気管と、
前記吸気管にEGRガスを導入するためのEGRガス管と、
を備える内燃機関の吸気装置であって、
前記EGRガス管が前記吸気管の前記分岐部に接続され、
前記吸気管内における前記EGRガス管の開口部の周囲に、前記EGRガス管から前記吸気管に導入されるEGRガスの新気上流側への逆流を防止するとともに、前記新気吸気管より導入される新気を第1バンク及び第2バンクへと導く隔壁部材が配置され、
前記隔壁部材は、前記隔壁部材と対向する前記吸気管の内面との間に、前記EGRガス管から導入されるEGRガスを前記吸気管内に滞留させるEGRガス溜め室を区画形成するとともに、前記EGRガス溜め室に滞留したEGRガスを第1バンクと第2バンクの吸気に応じて流出させる第1バンク用流路及び第2バンク用流路を区画形成しており、
前記第1バンク用流路での有効断面積及び前記第2バンク用流路での有効断面積が前記EGRガス管の開口部での流路断面積より小さくされており、
前記第1バンク用流路及び前記第2バンク用流路は、前記EGRガス管の開口部側から前記第1バンク用の分岐管又は前記第2バンク用の分岐管に向けて流路が縮小していることを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記第1バンク用流路での実断面積及び前記第2バンク用流路での実断面積が前記EGRガス管の開口部での流路断面積より小さいことにより、前記第1バンク用流路での有効断面積及び第2バンク用流路での有効断面積が前記EGRガス管の開口部での流路断面積より小さくされていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記第1バンク用流路での実断面積及び前記第2バンク用流路での実断面積が前記EGRガス管の開口部での流路断面積より大きく、かつ、前記EGRガス溜め室におけるEGRガスの流路での絞りにより、前記第1バンク用流路での有効断面積及び第2バンク用流路での有効断面積が前記EGRガス管の開口部での流路断面積より小さくされていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記隔壁部材は、新気吸気管の開口部に向かって凸となる形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のEGRシステムにおいては排気ガスの一部をEGRガスとして吸気系に還流するために吸気管にEGRガス管を接続している。特許文献1においては多気筒エンジンの吸気通路分岐部にEGRガス管を接続するとともに傘状の流れ変更手段を設けて吸入空気流とEGRガス流とを対向衝突させないようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−88745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、V型エンジン等の左右のバンクを有する内燃機関においてEGRガスを吸気系に還流する場合には、気筒間におけるEGR率のばらつきを低減させるために左右のバンクに流すEGRガスの量を均等化する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、第1バンク及び第2バンクに流すEGRガスの量を均等化することができる内燃機関の吸気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、新気が流れる1本の新気吸気管に分岐部を介して第1バンク用と第2バンク用の2本の分岐管が接続された吸気管と、前記吸気管にEGRガスを導入するためのEGRガス管と、を備える内燃機関の吸気装置であって、前記EGRガス管が前記吸気管の前記分岐部に接続され、前記吸気管内における前記EGRガス管の開口部の周囲に、EGRガスが流入するとともにEGRガスが第1バンク及び第2バンクに向けて流出するEGRガス溜め室を区画形成するための隔壁部材が配置され、前記EGRガス溜め室におけるEGRガスが第1バンクに向けて流出する第1バンク用流路での有効断面積及び第2バンクに向けて流出する第2バンク用流路での有効断面積が前記EGRガス管の開口部での流路断面積より小さくされていることを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、EGRガス管のEGRガス流入口が吸気管の分岐部に接続され、吸気管内におけるEGRガス管の開口部の周囲に配置された隔壁部材によりEGRガス溜め室が区画形成され、EGRガスが流入するとともにEGRガスが第1バンク及び第2バンクに向けて流出する。また、EGRガス溜め室におけるEGRガスが第1バンクに向けて流出する第1バンク用流路での有効断面積及び第2バンクに向けて流出する第2バンク用流路での有効断面積がEGRガス管の開口部での流路断面積より小さくされている。これにより、新気及びEGRガスは第1バンクと第2バンクとで交互に吸気されるが、この脈動に対してEGRガスで満たされた容積を確保することができ、第1バンク及び第2バンクに流すEGRガスの量を均等化することができる。
【0008】
請求項2に記載のように、請求項1に記載の内燃機関の吸気装置において、前記第1バンク用流路での実断面積及び前記第2バンク用流路での実断面積が前記EGRガス管の開口部での流路断面積より小さいことにより、前記第1バンク用流路での有効断面積及び第2バンク用流路での有効断面積が前記EGRガス管の開口部での流路断面積より小さくされているとよい。
【0009】
請求項3に記載のように、請求項1に記載の内燃機関の吸気装置において、前記第1バンク用流路での実断面積及び前記第2バンク用流路での実断面積が前記EGRガス管の開口部での流路断面積より大きく、かつ、前記EGRガス溜め室におけるEGRガスの流路での絞りにより、前記第1バンク用流路での有効断面積及び第2バンク用流路での有効断面積が前記EGRガス管の開口部での流路断面積より小さくされているとよい。
【0010】
請求項4に記載のように、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の吸気装置において、前記隔壁部材は、新気吸気管の開口部に向かって凸となる形状を有するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1バンク及び第2バンクに流すEGRガスの量を均等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における内燃機関の吸気装置の概略平面図。
図2】内燃機関の吸気装置の一部斜視図。
図3】内燃機関の吸気装置の一部斜視図。
図4】(a)は内燃機関の吸気装置の一部断面図、(b)は(a)のA矢視図。
図5】別例の内燃機関の吸気装置の一部断面図。
図6】別例の内燃機関の吸気装置の一部断面図。
図7】別例の内燃機関の吸気装置の一部断面図。
図8】別例の内燃機関の吸気装置の一部断面図。
図9】(a)は別例の内燃機関の吸気装置の一部断面図、(b)は(a)のB矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
なお、本実施形態では、発明の構造を理解しやすいように、各図面において、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸により3次元空間の直交座標系を規定している。
【0014】
図1に示すように、本実施形態における内燃機関の吸気装置10は、吸気管20と、吸気管20にEGRガスを導入するためのEGRガス管30を備えている。吸気管20は、1本の新気吸気管21と、新気吸気管21から分岐する2本の分岐管22,23とを有する。吸気管20は、新気が流れる1本の新気吸気管21に分岐部24を介して右バンク用と左バンク用の2本の分岐管22,23が接続されている。
【0015】
車両に内燃機関50が搭載されており、内燃機関50の出力が変速機を介して車輪に伝達される。この実施形態では、内燃機関50として、V型の6気筒ディーゼルエンジンを用いた場合を示している。内燃機関50は、第1バンクとしての右バンク51と第2バンクとしての左バンク52とを有しており、右バンク51には3気筒が、左バンク52には3気筒が配置されている。
【0016】
内燃機関50には、内燃機関50より排出される排気ガスが流れる排気管55が接続されている。排気管55は、右バンク用排気管55aと左バンク用排気管55bを有する。排気管55には、排気ガスの一部を吸気系に戻すための、EGRガス管30が接続されている。EGRガス管30は、右バンク用EGRガス管31aと、左バンク用EGRガス管31bと、右バンク用EGRガス管31aと左バンク用EGRガス管31bとが集合した集合EGRガス管31cを有する。
【0017】
図2,3に示すように、分岐管22,23は分岐部24において新気吸気管21から分岐している。分岐管22は右バンク51用であり、分岐管23は左バンク52用である。新気吸気管21は円管であり、分岐管22,23は円管である。
【0018】
新気吸気管21は、分岐部24においてZ軸に沿って延びている。分岐管22,23は、それぞれ、分岐部24において、X軸に沿って互いに離間する方向に延びている。
排気ガスが流れる排気管に一端が接続されたEGRガス管30を介して、内燃機関より排出された排気ガスの一部がEGRガスとして吸気系に戻される。吸気管20の分岐部24にはEGRガス管30が連結されている。
【0019】
図1に示すように、集合EGRガス管31cの途中には、EGRガスの吸気管20への流入と遮断を制御するためのEGRバルブ32が設けられている。また、EGRガス管30におけるEGRバルブ32の上流には、排気管より導入されるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ33a,33bが設けられている。EGRガス管30は円管である。
【0020】
図2に示すように、EGRガス管30は、分岐部24において、Y軸に沿って延びている。EGRガス管30を介して吸気管20にEGRガスが導入され、導入されたEGRガスは左右のバンク51,52の吸気時に、それぞれ、新気吸気管21より左右のバンク51,52へ流入する新気に合流する。また、新気吸気管21における分岐部24よりも吸気上流側にはディーゼルスロットル(弁)27が設けられている。ディーゼルスロットル27の開閉制御により、軽負荷時などにおいて、EGRガス管30から吸気管20への多量のEGRガスの導入を可能としている。
【0021】
EGRガス管30の吸気管20への連結位置は、ディーゼルスロットル27よりも下流側となっている。これは、EGRガス管30から吸気管20に導入されるEGRガスに含まれるススや未燃燃料などの成分がディーゼルスロットル27に付着して動作不良となるのを防止するためである。分岐部24はディーゼルスロットル27から離間した位置に形成されているため、ここにEGRガス管30が連結される。また、EGRガス管30は吸気管20に対し分岐部24において一点で連結させることにより、構造を複雑化させることなくEGRガスを新気に合流させることを可能としている。つまり、EGRガス管を分岐部24よりも下流で吸気管20に連結しようとすると、EGRガス管の吸気管20への接続部を分岐管22,23に対応させて分岐させる必要があり、結果としてEGRガス管の構造が複雑になってしまう。このようなEGRガス管の構造の複雑化を回避すべく、本実施形態ではEGRガス管30を分岐部24において一点で連結している。
【0022】
図2図3図4(a)、図4(b)に示すように、吸気管20内に隔壁部材40が配置されている。隔壁部材40は、図4(a)に示すように、分岐部24において新気吸気管21に対向配置された頂上部43と、頂上部43より分岐管22,23に沿って両側に延びる斜状板部41、斜状板部42を有している。具体的には、図4(a)に示すように、斜状板部41は新気吸気管21の中央部に対向する頂上部43を基点として分岐管22が延びる方向に下がり傾斜で延在する壁として形成されており、斜状板部42は頂上部43から分岐管23が延びる方向に下がり傾斜で延在する壁として形成されている。なお、図4(a)において、斜状板部41がX軸となす傾斜角度と斜状板部42がX軸となす傾斜角度は等しくなっている。また、図4(a)に示すように、隔壁部材40の頂上部(斜状板部41と斜状板部42の連結部)43は新気吸気管21側に凸の円弧状に形成されている。板状の隔壁部材40はEGRガス管30から吸気管20に導入されるEGRガスの新気上流側への逆流を防止するとともに、新気吸気管21より導入される新気の整流板として機能する。つまり、新気吸気管21より新気が導入されると、右バンク51で吸気される場合には、隔壁部材40の斜状板部41に沿って右バンク51に向かう流れC10が形成され、同様に左バンク52で吸気される場合には、斜状板部42に沿って左バンク52に向かう流れC11が形成される。このように、隔壁部材40は、新気吸気管21の開口部21aに向かって凸となる形状を有し、新気吸気管21から導入される新気を左右のバンクへスムーズに導く整流板として機能する。
【0023】
吸気管20における隔壁部材40の頂上部43の新気吸気管21と対向する側と反対側には、Y方向に向かって延びるEGRガス管30が接続されて吸気管20に開口している。このため、図4(a)に示すように、吸気管20の分岐部24において、隔壁部材40の新気吸気管21と対向する側と反対側に形成される断面略三角形状の空間(隔壁部材40と吸気管20の内面とで囲まれた空間)が、EGRガスが滞留するEGRガス溜め室R1として機能する。即ち、隔壁部材40により、吸気管20内にEGRガスを滞留させるためのEGRガス溜め室R1が区画形成される。EGRガス管30よりEGRガス溜め室R1に流入してEGRガス溜め室R1に滞留するEGRガスは第1バンク用流路としての右バンク用流路C1または第2バンク用流路としての左バンク用流路C2を介して左右のバンク51,52に流出する。具体的には、新気吸気管21より導入される新気及びEGRガス管30より導入されてEGRガス溜め室R1に溜められたEGRガスは、右バンク51と左バンク52の吸気に応じて、それぞれ、分岐管22または分岐管23に流れる。
【0024】
このようにして、EGRガス管30が吸気管20の分岐部24に接続され、吸気管20内におけるEGRガス管30の開口部30aの周囲に、EGRガスが流入するとともにEGRガスが右バンク51及び左バンク52に向けて流出するEGRガス溜め室R1を区画形成するための隔壁部材40が配置されている。
【0025】
EGRガス溜め室R1におけるEGRガスが右バンク51に向けて流出する右バンク用流路C1での有効断面積及び左バンク52に向けて流出する左バンク用流路C2での有効断面積が、EGRガス管30の開口部30aでの流路断面積S3より小さくされている。
【0026】
詳しくは、図4(a),(b)に示すように、右バンク用流路C1での実断面積S1及び左バンク用流路C2での実断面積S2が、EGRガス管30の開口部30aでの流路断面積S3より小さい。これにより、右バンク用流路C1での有効断面積及び左バンク用流路C2での有効断面積がEGRガス管30の開口部30aでの流路断面積S3より小さくされている。
【0027】
次に、作用について説明する。
新気吸気管21から新気が導入される。分岐部24においてEGRガス管30から導入されてEGRガス溜め室R1に溜められたEGRガスが新気に合流する。分岐部24において新気とEGRガスが合流した後の混合気が分岐管22,23を通して左右のバンク51,52に供給される。
【0028】
分岐部24において吸気管20に配置された隔壁部材40によりEGRガス溜め室R1が区画形成され、右バンク用流路C1での実断面積S1及び左バンク用流路C2での実断面積S2がEGRガス管30の開口部30aでの流路断面積S3より小さく形成されている。つまり、流入側の面積よりも流出側の面積が小さく形成されている。これにより、EGRガス溜め室R1に所定量のEGRガスを滞留させておくことが可能となっている。左バンク吸気時には、EGRガス溜め室R1に溜められたEGRガスのうち左バンク用流路C2より流出する一定量のEGRガスが新気吸気管21より導入される新気とともに左バンク52に流入し、右バンク吸気時には、EGRガス溜め室R1に溜められたEGRガスのうち右バンク用流路C1より流出する一定量のEGRガスが新気吸気管21を介して導入される新気とともに右バンク51に流入するので、結果としてEGRガスは左右のバンクの各気筒に均等に分配されることとなる。
【0029】
このようにして、左右のバンクへのEGR率(新気とEGRガスの割合)を均等化して6気筒のEGR率を揃えることができる。つまり、各種の運転条件(負荷条件下)においても左右のバンクのEGR率の差を小さくでき、EGR分配改善が図られる。また、板状の隔壁部材40を配置したことによりディーゼルスロットル27へのEGRガスの吹き返しの低減が図られる。即ち、EGRガスについて新気の上流側への吹き返しが発生するとディーゼルスロットル27にEGRガスが達することによりディーゼルスロットル27にススや未燃燃料などの不純物成分が付着してしまう虞があるが、これを抑制することができる(ディーゼルスロットル27の動作不良を回避できる)。
【0030】
また、隔壁部材40を上に凸の板形状とすることにより、新気を左右のバンクへスムーズに導くための整流板として機能させている。具体的には、図4(a)に示すように、隔壁部材40が、新気吸気管21より導入される新気を右バンク51に対しては流路C10に沿った流れとして流すとともに左バンク52に対しては流路C11に沿った流れとして流す。その結果、新気の左右のバンクへの流れが円滑な流れとなり、新気吸入時の圧損低減が図られる。
【0031】
また、一点でEGRガス管30を吸気管20に連結することによりEGRガスを新気に合流させているので、EGRガス管を分岐させて吸気管の左右のバンクに対応する分岐管にそれぞれ連結しているものに比べてコスト低減が図られる。
【0032】
本実施形態では、EGRガス管30の連結部における吸気管20内に配置された隔壁部材40によりEGRガス溜め室R1が区画形成され、EGRガスが流入するとともにEGRガスが左右のバンク51,52に向けて流出する。これにより、EGRガス管30を分岐してEGRガスを左右のバンクに分配するのではなく、吸気管20にEGRガス管30を一点で連結することによりEGRガスを合流させ、吸気管20内でEGRガスを分配することにより形状の複雑化を抑えることができる。
【0033】
また、EGRガス溜め室R1におけるEGRガスが右バンク51に向けて流出する右バンク用流路C1での有効断面積及び左バンク52に向けて流出する左バンク用流路C2での有効断面積がEGRガス管30の開口部30aでの流路断面積S3より小さくされている。これにより、新気及びEGRガスは右バンク51と左バンク52とで交互に吸気されるが、この脈動に対して左右圧損を同じにするだけでなくEGRガスで満たされた容積を確保しているので、左右のバンク51,52に流すEGRガスの量を均等化することができる。
【0034】
その結果、形状の複雑化を回避しつつ左右のバンクに流すEGRガスの量を均等化することができる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0035】
(1)内燃機関の吸気装置10の構成として、EGRガス管30が吸気管20の分岐部24に接続されている。吸気管20内におけるEGRガス管30の開口部30aの周囲に、EGRガスが流入するとともにEGRガスが右バンク51及び左バンク52に向けて流出するEGRガス溜め室R1を区画形成するための隔壁部材40が配置されている。EGRガス溜め室R1におけるEGRガスが右バンク51に向けて流出する右バンク用流路C1での有効断面積及び左バンク52に向けて流出する左バンク用流路C2での有効断面積がEGRガス管30の開口部30aでの流路断面積より小さくされている。よって、右バンク及び左バンクに流すEGRガスの量を均等化することができる。
【0036】
(2)右バンク用流路C1での実断面積S1及び左バンク用流路C2での実断面積S2がEGRガス管30の開口部30aでの流路断面積S3より小さいことにより、右バンク用流路C1での有効断面積及び左バンク用流路C2での有効断面積がEGRガス管30の開口部30aでの流路断面積S3より小さくされている。よって、実用的である。
【0037】
(3)隔壁部材40は、新気吸気管21の開口部21aに向かって凸となる形状を有するので、新気の流路での流れを滑らかにでき、新気流の抵抗を小さくすることができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0038】
図4(a)に代わる図5に示すように、板材よりなる隔壁部材60はX方向に真っ直ぐに延びていてもよい。図5の場合、吸気管20には、外側に凸となる円弧部61が形成され、隔壁部材60と円弧部61との間においてEGRガス管30が開口している。
【0039】
図4(a)に代わる図6に示すように、EGRガス管30は、分岐部24において、Z方向に延びており、EGRガスの導入方向はZ方向からでもよい。
図4(a)に代わる図7に示すように、分岐部24の形状として、新気吸気管21と分岐管22,23とは逆Yの字状であってもよく、この形状に合わせて隔壁部材70を設けてもよい。要は、分岐後の配管形状に合わせて隔壁部材70を設ければよい。
【0040】
図4(a)に代わる図8に示すように、隔壁部材40における斜状板部41の先端側に折曲部80を設けるとともに斜状板部42の先端側に折曲部81を設けてもよい。この場合には斜状板部41と折曲部80との境界及び斜状板部42と折曲部81との境界部が最小流路部となる。
【0041】
図4(a),(b)に代わり図9(a),(b)に示すようにしてもよい。有効断面積は流路の実際の断面積に流量係数をかけたもの、即ち、有効断面積=(流量係数)×(実流路断面積)であるので、以下の構成としてもよい。
【0042】
右バンク用流路C1での実断面積S11及び左バンク用流路C2での実断面積S12がEGRガス管30の開口部30aでの流路断面積S13より大きい。また、EGRガス溜め室R1におけるEGRガスの流路C1,C2に、流量係数を小さくするために急激に断面積が小さくなる絞りとしての垂直板部92,93が形成されている。つまり、隔壁部材90は、X方向に延びる平板部91と、平板部91の先端からZ方向に延びる絞りとして垂直板部92,93と、垂直板部(絞り)92,93の先端からX方向に延びる平板部94,95を有する。これにより、垂直板部(絞り)92,93により、右バンク用流路C1での有効断面積及び左バンク用流路C2での有効断面積がEGRガス管30の開口部30aでの流路断面積S13より小さくされている。
【0043】
・内燃機関はV型エンジンに限らず、ボクサーエンジン、W型エンジンなど第1バンクと第2バンクに分岐しているエンジンに適用可能である。
図4(a)において隔壁部材40を含めた分岐部24の形状として左右対称でなくてもEGRガスの分配性に有用である。
【0044】
・隔壁部材40は板材で構成しなくてもよい。
・EGRガス管は新気吸気管に対し直交するように連結されているが、斜め方向から連結してもよい。
【0045】
・内燃機関はディーゼルエンジン以外でもよく、例えばガソリンエンジンでもよい。また、内燃機関の気筒数は問わない。
【符号の説明】
【0046】
10…内燃機関の吸気装置、20…吸気管、21…新気吸気管、21a…開口部、22…分岐管、23…分岐管、24…分岐部、30…EGRガス管、30a…開口部、40…隔壁部材、51…右バンク、52…左バンク、90…隔壁部材、92…垂直板部、93…垂直板部、C1…右バンク用流路、C2…左バンク用流路、R1…EGRガス溜め室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9