特許第6580523号(P6580523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580523
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】車両制御システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/04 20060101AFI20190912BHJP
   H02H 9/04 20060101ALI20190912BHJP
   H02J 7/14 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   H02P9/04 M
   H02H9/04 B
   H02J7/14 E
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-113827(P2016-113827)
(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公開番号】特開2017-221032(P2017-221032A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2018年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】大崎 真吾
(72)【発明者】
【氏名】白石 真嗣
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−259800(JP,A)
【文献】 特開2006−141145(JP,A)
【文献】 特開平07−111710(JP,A)
【文献】 特開2008−048575(JP,A)
【文献】 特開2011−050218(JP,A)
【文献】 特開2013−123299(JP,A)
【文献】 特開2010−268625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
H02H 9/04
H02J 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流発電機により供給される交流電圧を入力する交流入力端子と、前記交流電圧を整流し、電圧値が調整された直流電圧を生成する直流電圧生成部と、前記直流電圧を出力する直流出力端子とを有する電源装置と、
前記直流出力端子に正極端子が電気的に接続され、負極端子が接地され、前記直流出力端子から出力された直流電圧により充電されるバッテリーと、
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子が前記直流出力端子に電気的に接続されたイグニッションスイッチと、
前記イグニッションスイッチの前記第2端子に電気的に接続された直流入力端子と、前記直流入力端子から入力された直流電圧により動作する電気回路とを有する少なくとも一つ以上の車両制御装置と、
一端が前記交流入力端子に電気的に接続され、他端が接地されており、前記バッテリーの電圧が供給されるバッテリーラインの電圧であるバッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えると、前記一端および前記他端間が導通状態となる過電圧保護素子を有するシステム過電圧保護部と、
を備え、
前記システム過電圧保護部は、前記バッテリーライン電圧として前記直流出力端子の電圧を検出する第1の電圧検出部と、前記第1の電圧検出部により検出された電圧が前記第1の基準電圧を超えた場合に、前記過電圧保護素子が導通状態になるように制御する制御部と、をさらに有し、
複数の前記車両制御装置の一つは、車両用エンジンの点火制御を行うエンジンコントロールユニットであり、前記エンジンコントロールユニットは、前記直流入力端子または前記電気回路の入力端子の電圧を検出する第2の電圧検出部をさらに有し、前記第2の電圧検出部により検出された電圧が前記第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合に前記車両用エンジンの点火制御を停止することを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記過電圧保護素子は、アノード端子が前記交流入力端子に電気的に接続され、カソード端子が接地され、ゲート端子が前記制御部に電気的に接続されたサイリスタであることを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
交流発電機により供給される交流電圧を入力する交流入力端子と、前記交流電圧を整流し、電圧値が調整された直流電圧を生成する直流電圧生成部と、前記直流電圧を出力する直流出力端子とを有する電源装置と、
前記直流出力端子に正極端子が電気的に接続され、負極端子が接地され、前記直流出力端子から出力された直流電圧により充電されるバッテリーと、
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子が前記直流出力端子に電気的に接続されたイグニッションスイッチと、
前記イグニッションスイッチの前記第2端子に電気的に接続された直流入力端子と、前記直流入力端子から入力された直流電圧により動作する電気回路とを有する少なくとも一つ以上の車両制御装置と、
一端が前記直流出力端子に電気的に接続され、他端が接地されており、前記バッテリーの電圧が供給されるバッテリーラインの電圧であるバッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えると、前記一端および前記他端間が導通状態となる過電圧保護素子を有するシステム過電圧保護部と、
を備え、
前記過電圧保護素子は、カソード端子が前記直流出力端子に電気的に接続され、アノード端子が接地され、前記直流出力端子の電圧が前記第1の基準電圧を超えると導通状態となるツェナーダイオードであり、
複数の前記車両制御装置の一つは、車両用エンジンの点火制御を行うエンジンコントロールユニットであり、前記エンジンコントロールユニットは、前記直流入力端子または前記電気回路の入力端子の電圧を検出する第2の電圧検出部をさらに有し、前記第2の電圧検出部により検出された電圧が前記第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合に前記車両用エンジンの点火制御を停止することを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
前記第1の基準電圧は、複数の前記車両制御装置の前記電気回路の耐圧のうち最も低い耐圧以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記第2の基準電圧は、複数の前記車両制御装置の前記電気回路の耐圧のうち最も低い耐圧以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記直流電圧生成部は、
前記交流入力端子に電気的に接続されたアノード端子と、前記直流出力端子に電気的に接続されたカソード端子と、ゲート端子とを有するサイリスタと、
前記サイリスタのゲート端子に接続され、前記サイリスタをオンオフ制御する電源制御部と、を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両制御システム。
【請求項7】
交流発電機により供給される交流電圧を入力する交流入力端子と、前記交流電圧を整流し、電圧値が調整された直流電圧を生成する直流電圧生成部と、前記直流電圧を出力する直流出力端子とを有する電源装置と、
前記直流出力端子に正極端子が電気的に接続され、負極端子が接地され、前記直流出力端子から出力された直流電圧により充電されるバッテリーと、
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子が前記直流出力端子に電気的に接続されたイグニッションスイッチと、
前記イグニッションスイッチの前記第2端子に電気的に接続された直流入力端子と、前記直流入力端子から入力された直流電圧により動作する電気回路とを有する少なくとも一つ以上の車両制御装置と、
一端が前記交流入力端子に電気的に接続され、他端が接地された過電圧保護素子を有するシステム過電圧保護部と、を備える車両制御システムの制御方法であって、
複数の前記車両制御装置の一つは、車両用エンジンの点火制御を行うエンジンコントロールユニットであり、
前記バッテリーの電圧が供給されるバッテリーラインの電圧であるバッテリーライン電圧を検出する工程と、
前記バッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えると、前記一端および前記他端間が導通状態になるように前記過電圧保護素子を制御する工程と、
前記直流入力端子または前記電気回路の入力端子の電圧が前記第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合に前記車両用エンジンの点火制御を停止する工程と、
を備えることを特徴とする車両制御システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(二輪車、四輪車等)のエンジンの回転駆動力を利用して発電を行い、発電された電力を用いてエンジンコントロールユニット(ECU)等の車両制御装置を動作させる車両制御システムが知られている。図3に示すように、従来の車両制御システム1000は、車両用エンジン102の回転に同期して回転駆動される交流発電機(ACG)103と、交流発電機103から出力された交流電圧を整流し、電圧値が調整された直流電圧を出力する電源装置110と、この電源装置110から供給される直流電圧により充電されるバッテリーBと、イグニッションスイッチ105を介してバッテリーBの電圧が供給される複数の車両制御装置120とを備えている。
【0003】
特許文献1には、負荷端子にアノードが接続され、アース端子にカソードが接続されたサイリスタと、バッテリー電圧が所定の上限値以上のときにサイリスタを導通状態(オン状態)に制御にする過電圧制御部と、を有するバッテリー充電装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−123299
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のバッテリー充電装置では、サイリスタ、過電圧制御部、その他の周辺回路に異常が発生した場合にサイリスタが正常に導通状態にならず、その結果、バッテリーから動作電力を供給される各車両制御装置に想定外の過電圧が印加されるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、フェールセーフ機能を有し、車両制御装置に過電圧が印加されることを防止できる車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両制御システムは、
交流発電機により供給される交流電圧を入力する交流入力端子と、前記交流電圧を整流し、電圧値が調整された直流電圧を生成する直流電圧生成部と、前記直流電圧を出力する直流出力端子とを有する電源装置と、
前記直流出力端子に正極端子が電気的に接続され、負極端子が接地され、前記直流出力端子から出力された直流電圧により充電されるバッテリーと、
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子が前記直流出力端子に電気的に接続されたイグニッションスイッチと、
前記イグニッションスイッチの前記第2端子に電気的に接続された直流入力端子と、前記直流入力端子から入力された直流電圧により動作する電気回路とを有する少なくとも一つ以上の車両制御装置と、
一端が前記交流入力端子に電気的に接続され、他端が接地されており、前記バッテリーの電圧が供給されるバッテリーラインの電圧であるバッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えると、前記一端および前記他端間が導通状態となる過電圧保護素子を有するシステム過電圧保護部と、
を備え、
前記システム過電圧保護部は、前記バッテリーライン電圧として前記直流出力端子の電圧を検出する第1の電圧検出部と、前記第1の電圧検出部により検出された電圧が前記第1の基準電圧を超えた場合に、前記過電圧保護素子が導通状態になるように制御する制御部と、をさらに有し、
複数の前記車両制御装置の一つは、車両用エンジンの点火制御を行うエンジンコントロールユニットであり、前記エンジンコントロールユニットは、前記直流入力端子または前記電気回路の入力端子の電圧を検出する第2の電圧検出部をさらに有し、前記第2の電圧検出部により検出された電圧が前記第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合に前記車両用エンジンの点火制御を停止することを特徴とする。
【0008】
また、前記車両制御システムにおいて、
前記過電圧保護素子は、アノード端子が前記交流入力端子に電気的に接続され、カソード端子が接地され、ゲート端子が前記制御部に電気的に接続されたサイリスタであるようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る車両制御システムは、
交流発電機により供給される交流電圧を入力する交流入力端子と、前記交流電圧を整流し、電圧値が調整された直流電圧を生成する直流電圧生成部と、前記直流電圧を出力する直流出力端子とを有する電源装置と、
前記直流出力端子に正極端子が電気的に接続され、負極端子が接地され、前記直流出力端子から出力された直流電圧により充電されるバッテリーと、
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子が前記直流出力端子に電気的に接続されたイグニッションスイッチと、
前記イグニッションスイッチの前記第2端子に電気的に接続された直流入力端子と、前記直流入力端子から入力された直流電圧により動作する電気回路とを有する少なくとも一つ以上の車両制御装置と、
一端が前記直流出力端子に電気的に接続され、他端が接地されており、前記バッテリーの電圧が供給されるバッテリーラインの電圧であるバッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えると、前記一端および前記他端間が導通状態となる過電圧保護素子を有するシステム過電圧保護部と、
を備え、
前記過電圧保護素子は、カソード端子が前記直流出力端子に電気的に接続され、アノード端子が接地され、前記直流出力端子の電圧が前記第1の基準電圧を超えると導通状態となるツェナーダイオードであり、
複数の前記車両制御装置の一つは、車両用エンジンの点火制御を行うエンジンコントロールユニットであり、前記エンジンコントロールユニットは、前記直流入力端子または前記電気回路の入力端子の電圧を検出する第2の電圧検出部をさらに有し、前記第2の電圧検出部により検出された電圧が前記第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合に前記車両用エンジンの点火制御を停止することを特徴とする。
【0010】
また、前記車両制御システムにおいて、
前記第1の基準電圧は、複数の前記車両制御装置の電気回路の耐圧のうち最も低い耐圧以下であるようにしてもよい。
【0011】
また、前記車両制御システムにおいて、
前記第2の基準電圧は、複数の前記車両制御装置の電気回路の耐圧のうち最も低い耐圧以下であるようにしてもよい。
【0012】
また、前記車両制御システムにおいて、
前記直流電圧生成部は、
前記交流入力端子に電気的に接続されたアノード端子と、前記直流出力端子に電気的に接続されたカソード端子と、ゲート端子とを有するサイリスタと、
前記サイリスタのゲート端子に接続され、前記サイリスタをオンオフ制御する電源制御部と、を有するようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る車両制御システムの制御方法は、
交流発電機により供給される交流電圧を入力する交流入力端子と、前記交流電圧を整流し、電圧値が調整された直流電圧を生成する直流電圧生成部と、前記直流電圧を出力する直流出力端子とを有する電源装置と、
前記直流出力端子に正極端子が電気的に接続され、負極端子が接地され、前記直流出力端子から出力された直流電圧により充電されるバッテリーと、
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子が前記直流出力端子に電気的に接続されたイグニッションスイッチと、
前記イグニッションスイッチの前記第2端子に電気的に接続された直流入力端子と、前記直流入力端子から入力された直流電圧により動作する電気回路とを有する少なくとも一つ以上の車両制御装置と、
一端が前記交流入力端子に電気的に接続され、他端が接地された過電圧保護素子を有するシステム過電圧保護部と、を備える車両制御システムの制御方法であって、
複数の前記車両制御装置の一つは、車両用エンジンの点火制御を行うエンジンコントロールユニットであり、
前記バッテリーの電圧が供給されるバッテリーラインの電圧であるバッテリーライン電圧を検出する工程と、
前記バッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えると、前記一端および前記他端間が導通状態になるように前記過電圧保護素子を制御する工程と、
前記直流入力端子または前記電気回路の入力端子の電圧が前記第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合に前記車両用エンジンの点火制御を停止する工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両制御システムでは、システム過電圧保護部が、バッテリーライン電圧として直流出力端子の電圧を検出する第1の電圧検出部と、前記第1の電圧検出部により検出された電圧が第1の基準電圧を超えた場合に過電圧保護素子が導通状態になるように制御する制御部とを有し、また、車両制御装置の一つであるエンジンコントロールユニットが、直流入力端子または電気回路の入力端子の電圧を検出する第2の電圧検出部を有し、前記第2の電圧検出部により検出された電圧が前記第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合に車両用エンジンの点火制御を停止する。これにより、過電圧保護素子が導通状態にならない場合であっても、エンジンコントロールユニットが車両用エンジンの点火制御を停止するため、車両制御装置に過電圧が印加されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る車両制御システム1の概略的構成図である。
図2】第2の実施形態に係る車両制御システム1Aの概略的構成図である。
図3】従来の車両制御システム1000の概略的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る車両制御システム1について、図1を参照して説明する。車両制御システム1は、車両用エンジン2の回転駆動力に基づいて交流発電機(ACG)3により発電された電力を利用して、車両制御装置20を動作させるように構成されている。次に、車両制御システム1の具体的な構成について説明する。
【0018】
車両制御システム1は、図1に示すように、電源装置(REG/RECT)10と、バッテリーBと、ヒューズ4と、イグニッションスイッチ5と、車両制御装置20と、システム過電圧保護部30とを備えている。各構成要素について以下詳しく説明する。
【0019】
電源装置10は、少なくとも一つ以上の車両制御装置20に動作電圧を供給するためのバッテリーBを充電する。この電源装置10は、交流発電機3により発電された交流電圧を所定の直流電圧に変換して出力するように構成されている。具体的には、電源装置10は、交流発電機3により供給される交流電圧を入力する交流入力端子11と、当該交流電圧を整流し、電圧値が調整された直流電圧を生成する直流電圧生成部13と、当該直流電圧を出力する直流出力端子12とを有している。なお、電源装置10は、図1に示すように、後述のシステム過電圧保護部30を有してもよい。
【0020】
本実施形態では、直流電圧生成部13は、サイリスタSCR1および電源制御部14を有する。サイリスタSCR1は、図1に示すように、交流入力端子11に電気的に接続されたアノード端子と、直流出力端子12に電気的に接続されたカソード端子と、ゲート端子とを有する。電源制御部14は、サイリスタSCR1のゲート端子に接続され、サイリスタSCR1をオンオフ制御する。
【0021】
バッテリーBは、直流出力端子12から出力された直流電圧により充電される。このバッテリーBは、直流出力端子12に正極端子が電気的に接続され、負極端子が接地されている。ヒューズ4は、電源装置10の直流出力端子12とバッテリーBの正極端子との間に設けられている。
【0022】
イグニッションスイッチ5は、端子5a(第1端子)および端子5b(第2端子)を有する。端子5aは直流出力端子12に電気的に接続されており、端子5bは車両制御装置20の直流入力端子21に電気的に接続されている。
【0023】
車両制御装置20は、車両制御システム1に、少なくとも一つ以上設けられている。この車両制御装置20は、例えば、車両用エンジン2の運転を制御するエンジンコントロールユニット(ECU)、車両のメーターやランプ等の制御装置である。
【0024】
車両制御装置20は、イグニッションスイッチ5の端子5bに電気的に接続された直流入力端子21と、直流入力端子21から入力された直流電圧により動作する電気回路22と、平滑回路23とを有する。
【0025】
複数の車両制御装置20のうち少なくともエンジンコントロールユニットは、電圧検出部24をさらに有する。この電圧検出部24は、直流入力端子21の電圧、または電気回路22の入力端子22aの電圧(すなわち、コンデンサC1の電圧)を検出する。
【0026】
平滑回路23は、直流入力端子21から入力される直流電圧を平滑化するための回路であり、一端が直流入力端子21に電気的に接続され、他端が電気回路22の入力端子22aに電気的に接続されている。本実施形態では、平滑回路23は、ダイオードD1およびコンデンサC1を有する。ダイオードD1は、アノード端子が直流入力端子21に電気的に接続され、カソード端子が電気回路22の入力端子22aに電気的に接続されている。コンデンサC1は、一端がダイオードD1のカソード端子に電気的に接続され、他端が接地されている。
【0027】
システム過電圧保護部30は、バッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えた場合に、電源装置10および各車両制御装置20に過電圧がかかることを防止するように構成されている。このシステム過電圧保護部30は、過電圧保護素子としてのサイリスタSCR2と、電圧検出部31と、制御部32とを有する。なお、システム過電圧保護部30は、本実施形態では電源装置10内に設けられているが、電源装置10の外部に設けられてもよい。
【0028】
本明細書において「バッテリーライン電圧」とは、バッテリーラインの電圧のことである。「バッテリーライン」とは、バッテリーBの電圧が供給される部分の総称である。例えば、バッテリーラインは、サイリスタSCR1のカソードと直流出力端子12を結ぶライン、直流出力端子12と端子5aを結ぶライン、端子5bと直流入力端子21を結ぶラインである。
【0029】
なお、システム過電圧保護部30が用いる第1の基準電圧は、複数の車両制御装置20の電気回路22の耐圧のうち最も低い耐圧以下であることが好ましい。これにより、最も耐圧の低い電気回路22を有する車両制御装置20を過電圧から保護することができる。
【0030】
過電圧保護素子は、一端が交流入力端子11に電気的に接続され、他端が接地されている。そして、過電圧保護素子は、バッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えると、一端および他端間が導通状態(すなわち、オン状態)となる。本実施形態では、過電圧保護素子はサイリスタSCR2である。このサイリスタSCR2は、アノード端子が交流入力端子11に電気的に接続され、カソード端子が接地され、ゲート端子が制御部32に電気的に接続されている。
【0031】
電圧検出部31は、バッテリーライン電圧として、直流出力端子12の電圧を検出する。この電圧検出部31は、サイリスタSCR1のカソードと直流出力端子12との間のラインの電圧測定を測定してもよいし、あるいは、直流出力端子12と端子5aとの間のラインの電圧を測定してもよい。
【0032】
制御部32は、電圧検出部31により検出された電圧が第1の基準電圧を超えた場合に、サイリスタSCR2が導通状態になるように制御するように構成されている。なお、システム過電圧保護部30が電源装置10内に設けられる場合、制御部32は、電源制御部14と一体のものとして一つのマイクロプロセッサにより実現されてもよい。
【0033】
システム過電圧保護部30は、電圧検出部31によりバッテリーライン電圧を検出する工程と、バッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えると、過電圧保護素子の一端および他端間が導通状態になるように当該過電圧保護素子を制御する工程とを実行する。
【0034】
エンジンコントロールユニットの車両制御装置20は、電圧検出部24により検出された電圧が第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合に車両用エンジンの点火制御を停止する。なお、第2の基準電圧は、例えば、複数の車両制御装置20の電気回路22の耐圧のうち最も低い耐圧以下である。これにより、最も耐圧の低い電気回路22を有する車両制御装置20を過電圧から保護することができる。
【0035】
上記のように、第1の実施形態に係る車両制御システム1は、過電圧保護素子としてのサイリスタSCR2、電圧検出部31および制御部32を有するシステム過電圧保護部30を備えている。そして、電圧検出部31により検出されたバッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えると、制御部32によりサイリスタSCR2が導通状態に制御され、交流発電機3の出力が短絡される。さらに、電圧検出部24により検出された電圧が第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合は、エンジンコントロールユニットの車両制御装置20が車両用エンジンの点火制御を停止する。その結果、電源装置10および各車両制御装置20に印加される電圧が低下する。このように、サイリスタSCR2、制御部32、電圧検出部31等が故障し、サイリスタSCR2が正常に導通状態にならない場合であっても、電源装置10および各車両制御装置20に過電圧が印加されることを防止することができる。よって、第1の実施形態によれば、フェールセーフ機能を有し、車両制御装置に過電圧が印加されることを確実に防止できる車両制御システムを提供することができる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両制御システム1Aについて、図2を参照して説明する。図2では、第1の実施形態で説明したものと同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付している。第2の実施形態と第1の実施形態との相違点の一つは、過電圧保護素子がサイリスタではなくツェナーダイオードである点である。以下、第1の実施形態との相違点を中心に、第3の実施形態に係る車両制御システム1Aについて説明する。
【0037】
車両制御システム1Aは、図2に示すように、電源装置(REG/RECT)10Aと、バッテリーBと、ヒューズ4と、イグニッションスイッチ5と、車両制御装置20と、システム過電圧保護部30Aとを備えている。
【0038】
電源装置10Aは、交流入力端子11と、直流出力端子12と、直流電圧生成部13とを有する。交流入力端子11、直流出力端子12および直流電圧生成部13については第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、電源装置10Aは、図2に示すように、後述のシステム過電圧保護部30Aを有してもよい。
【0039】
システム過電圧保護部30Aは、バッテリーライン電圧が第1の基準電圧を超えた場合に各車両制御装置20に過電圧がかかることを防止するように構成されている。このシステム過電圧保護部30Aは、過電圧保護素子としてのツェナーダイオードZ2を有する。ツェナーダイオードZ2は、図2に示すように、カソード端子が直流出力端子12に電気的に接続され、アノード端子が接地されている。このツェナーダイオードZ2は、直流出力端子12の電圧が第1の基準電圧を超えると導通状態になる。
【0040】
複数の車両制御装置20のうち少なくともエンジンコントロールユニットは、電圧検出部24をさらに有し、電圧検出部24により検出された電圧が第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合に車両用エンジンの点火制御を停止する。
【0041】
上記のように、第2の実施形態に係る車両制御システム1Aは、過電圧保護素子としてツェナーダイオードZ2を有するシステム過電圧保護部30Aを備えている。そして、このツェナーダイオードZ2は直流出力端子12の電圧が基準電圧を超えると導通状態になり、交流発電機3の出力が短絡される。さらに、電圧検出部24により検出された電圧が第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧を超えた場合は、エンジンコントロールユニットの車両制御装置20が車両用エンジンの点火制御を停止する。よって、第2の実施形態によれば、フェールセーフ機能を有し、車両制御装置に過電圧が印加されることを確実に防止できる車両制御システムを提供することができる。
【0042】
また、第2の実施形態では、バッテリーライン電圧を検出するための電圧検出部や、過電圧保護素子を制御するための制御部が不要であるため、車両制御システムのコストをより低減することができる。
【0043】
本発明に係るいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1,1A,1000 車両制御システム
2,102 車両用エンジン
3,103 交流発電機(ACG)
4 ヒューズ
5,105 イグニッションスイッチ
5a,5b 端子
10,10A,110 電源装置
11 交流入力端子
12 直流出力端子
13 直流電圧生成部
14 電源制御部
20,120 車両制御装置
21 直流入力端子
22,122 電気回路
22a 入力端子
23 平滑回路
24 電圧検出部
30,30A システム過電圧保護部
31 電圧検出部
32,32A 制御部
B バッテリー
C1 コンデンサ
D1 ダイオード
SCR1,SCR2 サイリスタ
Z2,Z11 ツェナーダイオード
図1
図2
図3