(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、作動油を貯留する作動油タンクと、前記エンジンによって駆動され、前記作動油タンク内の作動油を圧油として吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された圧油によって動作するブームシリンダと、当該圧油の流れを制御するオープンセンタタイプの方向制御弁と、前記方向制御弁を切換操作する操作装置と、前記ブームシリンダが伸縮することによって上下方向へ回動するブームとを備え、前記ブームによるブーム下げ動作を利用して車体を持ち上げるジャッキアップ操作を行う建設機械において、
前記車体の重量を取得する車体重量取得装置と、
前記操作装置の操作量を検出する操作量検出器と、
前記油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧検出器と、
前記油圧ポンプを前記作動油タンクに接続するセンタバイパス管路の途中であって前記方向制御弁よりも下流に設けられ、当該センタバイパス管路を全閉することが可能な開口面積特性を有するセンタバイパス切換弁と、
前記センタバイパス切換弁を切換操作するセンタバイパス切換弁用操作弁と、
前記車体重量取得装置によって取得された前記車体の重量、前記操作量検出器によって検出された前記操作装置の操作量、及び前記吐出圧検出器によって検出された前記油圧ポンプの吐出圧に基づいて、前記センタバイパス切換弁の動作を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記車体の重量毎に予め設定された前記ブーム下げ動作に対する前記操作装置の操作量と前記油圧ポンプの目標吐出圧との第1関係を記憶する記憶部と、
前記車体重量取得装置によって取得された前記車体の重量及び前記操作量検出器によって検出された前記操作装置の操作量を前記記憶部に記憶された前記第1関係に適用し、前記油圧ポンプの目標吐出圧を演算する目標吐出圧演算部と、
前記吐出圧検出器によって検出された前記油圧ポンプの吐出圧が前記目標吐出圧演算部によって演算された前記油圧ポンプの目標吐出圧と一致するように、前記センタバイパス切換弁用操作弁を介して前記センタバイパス切換弁をフィードバック制御するフィードバック制御部とを有することを特徴とする建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る建設機械を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る建設機械の一実施形態として挙げた油圧ショベル100の構成を示す全体図、
図2は旋回体12の内部の構成を示す油圧回路図である。
【0015】
本発明に係る建設機械の一実施形態は、例えば、
図1に示す油圧ショベル100から成っている。この油圧ショベル100は、走行体11と、この走行体11の上側に旋回装置12Aを介して旋回可能に取り付けられた旋回体12と、この旋回体12の前方に取り付けられて上下方向に回動するフロント作業機13とから構成されている。
【0016】
走行体11は、前後方向の一端のうち左右の両側にそれぞれ配置され、履帯11Aを駆動する走行モータ11Bを有している。旋回装置12Aは、内部に配置された旋回モータ(図示せず)を有している。これらの走行モータ11B及び旋回モータは、例えば、油圧を動力源とする油圧モータから構成されている。
【0017】
旋回体12は、車体の前部に配置され、オペレータが搭乗する運転室15と、車体の後部に配置され、車体のバランスを保つカウンタウェイト16と、これらの運転室15とカウンタウェイト16との間に配置され、原動機としてのエンジン31(
図2参照)を格納する機械室17と、この機械室17の上部に設けられた車体カバー18とを有している。
【0018】
また、
図2に示すように、旋回体12は、機械室17内に格納され、車体の動作全体を制御するコントローラ21と、このコントローラ21の後述の入出力インターフェース21D(
図3参照)に通信接続され、コントローラ21に対して各種の情報を入力する入力装置22と、油圧によってフロント作業機13を動かすための油圧駆動装置23とを有している。なお、油圧駆動装置23の具体的な構成については後述する。
【0019】
図1に示すフロント作業機13は、基端が旋回体12に回動可能に取り付けられ、上下方向に回動するブーム13Aと、このブーム13Aの先端に回動可能に取り付けられ、上下方向に回動するアーム13Bと、このアーム13Bの先端に回動可能に取り付けられ、上下方向に回動するバケット13Cとを有している。
【0020】
また、フロント作業機13は、旋回体12とブーム13Aとを接続し、伸縮することによってブーム13Aを回動させるブームシリンダ13aと、ブーム13Aの上側に配置されると共にブーム13Aとアーム13Bとを接続し、伸縮することによってアーム13Bを回動させるアームシリンダ13bと、アーム13Bとバケット13Cとを接続し、伸縮することによってバケット13Cを回動させるバケットシリンダ13cとを有している。
【0021】
図2に示すように、ブームシリンダ13aは、圧油が供給されるシリンダチューブ13a1と、このシリンダチューブ13a1内に摺動自在に収容され、シリンダチューブ13a1内をボトム室13a2とロッド室13a3とに区画するピストン13a4と、シリンダチューブ13a1のロッド室13a3内に一部が収容され、ピストン13a4に基端が連結されたピストンロッド13a5とから構成されている。
【0022】
このような構成のブームシリンダ13aでは、圧油がシリンダチューブ13a1のボトム室13a2に供給されると、ボトム室13a2内の圧力が上昇してピストン13a4がロッド室13a3側へ押し出されることにより、ピストンロッド13a5がシリンダチューブ13a1の外側へ伸長し、ブーム上げ動作が行われる。
【0023】
一方、圧油がシリンダチューブ13a1のロッド室13a3に供給されると、ロッド室13a3内の圧力が上昇してピストン13a4がボトム室13a2側へ押し戻されることにより、ピストンロッド13a5がシリンダチューブ13a1の内側へ縮退し、ブーム下げ動作が行われる。これにより、ブーム13Aによるブーム下げ動作を利用して車体を持ち上げるジャッキアップ操作が可能となる。なお、アームシリンダ13b及びバケットシリンダ13cの構成についても、ブームシリンダ13aの構成と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0024】
上述した走行モータ11B、旋回モータ、ブームシリンダ13a、アームシリンダ13b、及びバケットシリンダ13cが油圧アクチュエータを構成する。なお、油圧ショベル100には、バケット13C等の各種アタッチメントが存在し、バケット13Cは岩盤を掘削するブレーカ(図示せず)や岩石を破砕する小割機(図示せず)等に変更可能であり、作業の内容に適したアタッチメントを用いることにより、掘削や破砕を含む様々な作業を行うことができる。
【0025】
図1に示す運転室15には、オペレータの右側の近傍に設置され、オペレータが右手で把持してブームシリンダ13a及びバケットシリンダ13cを操作するための操作装置としての操作レバー15A(
図2参照)と、オペレータの左側の近傍に設置され、アームシリンダ13b及び旋回モータを操作するための操作レバー(図示せず)と、オペレータの前方の下側に設置され、走行モータ11Bを操作するための走行ペダル(図示せず)とを含んでおり、これらの各装置はコントローラ21に電気的に接続されている。
【0026】
なお、ブームシリンダ13a、アームシリンダ13b、バケットシリンダ13c、走行モータ11B、及び旋回モータの動作方向及び動作速度は、オペレータの右側の操作レバー15A、オペレータの左側の操作レバー、及び走行ペダルの操作方向及び操作量によって予め設定されている。
【0027】
オペレータの右側の操作レバー15Aは、前後方向に操作されると、その操作量に対応してブーム13Aを上下方向へ回動させるように設定されている。また、当該操作レバー15Aは、左右方向に操作されると、その操作量に対応してバケット13Cを上下方向へ回動させるように設定されている。オペレータの左側の操作レバーは、前後方向に操作されると、その操作量に対応して旋回体12を左右に旋回させるように設定されている。また、当該操作レバーは、左右方向に操作されると、その操作量に対応してアーム13Bを上下方向へ回動させるように設定されている。
【0028】
図3はコントローラ21のハードウェア構成を模式的に示すブロック図である。
【0029】
図3に示すように、コントローラ21は、例えば図示されないが、車体の動作全体を制御するための各種の演算を行うCPU(Central Processing Unit)21Aと、CPU21Aによる演算を実行するためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)21B1やHDD(Hard Disk Drive)21B2等の記憶装置21Bと、CPU21Aがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)21Cと、外部の装置との間で各種の情報や信号の入出力を行う入出力インターフェース21Dとを含むハードウェアから構成されている。
【0030】
このようなハードウェア構成において、ROM21B1やHDD21B2、もしくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM21Cに読み出され、CPU21Aの制御に従って動作することによりプログラム(ソフトウェア)とハードウェアとが協働して、コントローラ21の機能を実現する機能ブロックが構成される。なお、本実施形態の特徴をなすコントローラ21の機能構成の詳細については後述する。
【0031】
図2に示す入力装置22は、例えば、オペレータが携帯し、各種の情報を画面に表示してオペレータの入力を受け付けるタッチパネル等の携帯端末から構成されている。運転室15内のオペレータは、入力装置22の画面から車体の重量を含む油圧ショベル100の仕様を入力すると、その情報をコントローラ21へ送信する。したがって、入力装置22は、車体の重量を取得する車体重量取得装置として機能する。なお、本実施形態では、車体の重量として、フロント作業機13を含まない走行体11及び旋回体12の重量の総和を用いているが、本発明はこの場合に限らず、走行体11、旋回体12、及びフロント作業機13の重量の総和を用いてもよい。
【0032】
油圧駆動装置23は、運転室15内のオペレータの右側の操作レバー15A、オペレータの左側の操作レバー、及び走行ペダルの操作に応じて、圧油を生成してブームシリンダ13a、アームシリンダ13b、バケットシリンダ13c、走行モータ11B、及び旋回モータを駆動する。
【0033】
以下、これらの油圧アクチュエータを駆動するための油圧駆動装置23の構成について、
図2を参照しながら詳細に説明する。なお、同図は油圧アクチュエータのうちブームシリンダ13aに関する構成を示しており、他のアームシリンダ13b、バケットシリンダ13c、走行モータ11B、及び旋回モータに関する構成は本発明の特徴部分ではないため、これらの構成の図示及び説明を省略する。
【0034】
図2に示すように、油圧駆動装置23は、原動機としてのエンジン31と、作動油を貯留する作動油タンク32と、エンジン31の出力軸に接続され、作動油タンク32内の作動油を圧油として吐出する油圧ポンプ33と、パイロット圧油を吐出するパイロットポンプ34とを含んでいる。
【0035】
また、油圧駆動装置23は、コントローラ21に通信接続され、油圧ポンプ33の容量を調整するレギュレータとしての電磁比例弁35と、左右の両側に形成された操作部36A,36Bにパイロット管路51A,51Bを介して接続され、油圧ポンプ33からブームシリンダ13aへ供給する圧油の流れを制御するオープンセンタタイプの方向制御弁36とを含んでいる。
【0036】
さらに、油圧駆動装置23は、方向制御弁36とブームシリンダ13aのボトム室13a2とを接続する管路52に取り付けられ、この管路52を流通する作動油の圧力、すなわち、ブームシリンダ13aのボトム側の圧力(以下、便宜的にボトム圧と称する)を検出する圧力センサ37と、操作レバー15Aと方向制御弁36の左右の操作部36A,36Bとを接続するパイロット管路51A,51Bにそれぞれ取り付けられ、これらのパイロット管路51A,51Bを流通する作動油の圧力、すなわち、パイロット圧を検出するパイロット圧センサ38A,38Bとを含んでいる。
【0037】
また、油圧駆動装置23は、油圧ポンプ33を作動油タンク32に接続するセンタバイパス管路53の途中であって方向制御弁36よりも上流、すなわち、油圧ポンプ33の吐出口側に設けられ、油圧ポンプ33の吐出圧を検出する吐出圧検出器としての吐出圧センサ39とを含んでいる。
【0038】
上述した圧力センサ37、パイロット圧センサ38A,38B、及び吐出圧センサ39は、コントローラ21に通信接続されており、これらの各センサ37,38A,38B,39から得られた情報はコントローラ21に入力される。そして、コントローラ21は、パイロット圧センサ38A,38Bによって検出されたパイロット圧を操作レバー15Aの操作量に換算して各種の演算を行う。すなわち、パイロット圧センサ38A,38Bが操作レバー15Aの操作量を検出する操作量検出器として機能する。
【0039】
さらに、油圧駆動装置23は、センタバイパス管路53の途中であって方向制御弁36よりも下流に設けられ、当該センタバイパス管路53を全閉することが可能な開口面積特性を有するセンタバイパス切換弁40と、センタバイパス切換弁40を切換操作するセンタバイパス切換弁用操作弁としての電磁比例弁41とを含んでいる。
【0040】
油圧ポンプ33は、電磁比例弁35によって変更された傾転角に応じた流量の圧油を吐出する可変容量型油圧ポンプから成っている。具体的には、この油圧ポンプ33は、可変容量機構として、例えば、斜板(図示せず)を有し、この斜板の傾斜角を調整することによって圧油の吐出流量を制御している。以下、油圧ポンプ33を斜板ポンプとして説明するが、圧油の吐出流量を制御する機能を有するものであれば、油圧ポンプ33は斜軸ポンプ等であってもよい。
【0041】
電磁比例弁35は、コントローラ21から出力される駆動信号に基づいて、油圧ポンプ33の容量(押しのけ容積)を調整するものである。具体的には、電磁比例弁35は、コントローラ21から駆動信号を受信すると、パイロットポンプ34から吐出されたパイロット圧油から当該駆動信号に相当する制御圧を生成し、この制御圧によって油圧ポンプ33の斜板の傾斜角を変更する。これにより、油圧ポンプ33の容量が調整され、油圧ポンプ33の吸収トルクを制御することができる。
【0042】
方向制御弁36は、ブームシリンダ13aと油圧ポンプ33との間に接続され、図示されないが、外殻を形成するハウジング内でストロークすることにより、油圧ポンプ33から吐出された圧油の流量及び方向を調整するスプールを有している。また、方向制御弁36は、作動油をブームシリンダ13aのボトム室13a2へ導くことにより、ブームシリンダ13aを伸長させる切換位置L、作動油をブームシリンダ13aへ導かずに作動油タンク32へ流出させる切換位置N、及び作動油をブームシリンダ13aのロッド室13a3へ導くことにより、ブームシリンダ13aを縮退させる切換位置Rを有している。
【0043】
この方向制御弁36の切換位置R側には、ブーム下げ動作時の振動を緩和するための絞り36aが内蔵されている。そして、方向制御弁36は、パイロットポンプ34からパイロット管路51A,51Bを介して左右の操作部36A,36Bにそれぞれ流入したパイロット圧油の圧力に応じて、スプールのストローク量を変更しながら3つの切換位置L,N,Rのいずれかに切り換えるように構成されている。
【0044】
このような構成の油圧駆動装置23では、油圧ポンプ33がエンジン31の駆動力で動作することにより、油圧ポンプ33から吐出された圧油が方向制御弁36に供給され、パイロットポンプ34から吐出されたパイロット圧油が操作レバー15Aに供給される。このとき、運転室15内のオペレータが操作レバー15Aを前後方向に操作すると、操作装置1Aは、その操作量に応じて減圧したパイロット圧油を、パイロット管路51A,51Bを介して方向制御弁36の左右の操作部36A,36Bへそれぞれ供給する。
【0045】
これにより、方向制御弁36内のスプールの位置がパイロット圧油によって切換えられるので、油圧ポンプ33から方向制御弁36を流通した圧油がブームシリンダ13aへ供給されることにより、ブームシリンダ13aが伸縮してブーム13Aをそれぞれ駆動することができる。つまり、オペレータによる操作レバー15Aの操作に従って、ブーム上げ動作又はブーム下げ動作を行うことができる。
【0046】
次に、本実施形態の特徴をなすコントローラ21の具体的な機能構成について、
図4を参照しながら詳細に説明する。
図4はコントローラ21の機能構成を示すブロック図である。
【0047】
コントローラ21は、ジャッキアップ操作判定部211、記憶部212、目標吐出圧演算部213、フィードバック制御部214、目標吐出流量演算部215、及び傾転角制御部216を含んで構成されている。
【0048】
ジャッキアップ操作判定部211は、パイロット圧センサ38A,38Bによって検出されたパイロット圧に相当する操作レバー15Aの操作量及び圧力センサ37によって検出されたブームシリンダ13aのボトム圧に応じて、ジャッキアップ操作が行われているか否かを判定する。
【0049】
記憶部212は、車体の重量毎に予め設定されたブーム下げ動作に対する操作レバー15Aの操作量と油圧ポンプ33の目標吐出圧(狙いポンプ吐出圧)との第1関係、及び車体の重量毎に予め設定されたブーム下げ動作に対する操作レバー15Aの操作量と油圧ポンプ33の目標吐出流量(狙いポンプ流量)との第2関係を記憶する。
【0050】
図5は記憶部212に記憶された第1関係及び第2関係の具体例を示す図である。
【0051】
図5に示すように、記憶部212に記憶された第1関係は、例えば、車体の重量が(1)20t〜21t、(2)21t〜22t、(3)22t〜23t、(4)23t〜24t、(5)24t〜25t、(6)25t〜毎に、ブーム下げ動作に対する操作量が大きくなるに従って目標吐出圧が高くなる比例関係であり、さらに車体の重量が大きくなるにつれて、すなわち、(1)〜(6)の順にその比例関係の傾きが大きくなるように設定されている。
【0052】
また、記憶部212に記憶された第2関係は、例えば、車体の重量が(1)20t〜21t、(2)21t〜22t、(3)22t〜23t、(4)23t〜24t、(5)24t〜25t、(6)25t〜毎に、ブーム下げ動作に対する操作量が大きくなるに従って目標吐出流量が増加する比例関係であり、さらに車体の重量が大きくなるにつれて、すなわち、(1)〜(6)の順にその比例関係の傾きが大きくなるように設定されている。
【0053】
目標吐出圧演算部213は、入力装置22によって入力された車体の重量及びパイロット圧センサ38A,38Bによって検出されたパイロット圧に相当する操作レバー15Aの操作量を記憶部212に記憶された第1関係に適用し、油圧ポンプ33の目標吐出圧を演算する。フィードバック制御部214は、吐出圧センサ39によって検出された油圧ポンプ33の吐出圧が目標吐出圧演算部213によって演算された油圧ポンプ33の目標吐出圧と一致するように、電磁比例弁41を介してセンタバイパス切換弁40をフィードバック制御する。
【0054】
目標吐出流量演算部215は、入力装置22によって入力された車体の重量及びパイロット圧センサ38A,38Bによって検出されたパイロット圧に相当する操作レバー15Aの操作量を記憶部212に記憶された第2関係に適用し、油圧ポンプ33の目標吐出流量を演算する。傾転角制御部216は、目標吐出流量演算部215によって演算された油圧ポンプ33の目標吐出流量に相当する駆動信号を電磁比例弁35に出力して油圧ポンプ33の傾転角を制御する。
【0055】
次に、本実施形態に係るコントローラ21によるジャッキアップ操作時の油圧駆動装置23の制御処理について、
図6に示すフローチャーを参照しながら詳細に説明する。
図6は本実施形態に係るコントローラ21による油圧駆動装置23の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0056】
図6に示すように、まずは、コントローラ21のジャッキアップ操作判定部211は、パイロット圧センサ38A,38Bの検出信号を取得し、パイロット圧センサ38Bによって検出されたパイロット圧が所定値(例えば、5MPa)以上であるか否かを確認する(ステップ(以下、Sと記す)601)。
【0057】
このとき、ジャッキアップ操作判定部211は、パイロット圧センサ38Bによって検出されたパイロット圧が所定値未満であることを確認すると(S601/NO)、ブーム下げ動作が行われていないので、ジャッキアップ操作が行われていないと判定し、本実施形態に係るコントローラ21によるジャッキアップ操作時の油圧駆動装置23の制御処理を終了する。
【0058】
一方、S601において、ジャッキアップ操作判定部211は、パイロット圧センサ38Bによって検出されたパイロット圧が所定値以上であることを確認すると(S601/YES)、ブーム下げ動作が行われているので、圧力センサ37の検出信号を取得し、圧力センサ37によって検出されたブームシリンダ13aのボトム圧が所定値(例えば、10MPa)以下であるか否かを確認する(S602)。
【0059】
このとき、ジャッキアップ操作判定部211は、圧力センサ37によって検出されたブームシリンダ13aのボトム圧が所定値よりも高いことを確認すると(S602/NO)、ジャッキアップ操作が行われていないと判定し、本実施形態に係るコントローラ21によるジャッキアップ操作時の油圧駆動装置23の制御処理を終了する。
【0060】
一方、S602において、ジャッキアップ操作判定部211は、圧力センサ37によって検出されたブームシリンダ13aのボトム圧が所定値以下であることを確認すると(S602/YES)、ジャッキアップ操作が行われていると判定し、その判定結果をコントローラ21の目標吐出圧演算部213へ送信する。
【0061】
次に、目標吐出圧演算部213は、ジャッキアップ操作判定部211の判定結果を受信すると、入力装置22の入力情報及びパイロット圧センサ38A,38Bの検出信号を取得すると共に、記憶部212内の情報を参照し、入力装置22によって入力された車体の重量、パイロット圧センサ38A,38Bによって検出されたパイロット圧に相当する操作レバー15Aの操作量、及び記憶部212に記憶された第1関係から油圧ポンプ33の目標吐出圧を演算し(S603)、その演算結果をコントローラ21のフィードバック制御部214へ送信する。
【0062】
そして、フィードバック制御部214は、目標吐出圧演算部213の演算結果を受信すると、吐出圧センサ39によって検出された油圧ポンプ33の吐出圧と目標吐出圧演算部213によって演算された油圧ポンプ33の目標吐出圧との差分を演算し、その差分から駆動信号を生成して電磁比例弁41へ送信する。これにより、電磁比例弁41が駆動信号を受信すると、パイロットポンプ34から吐出されたパイロット圧油から当該駆動信号に相当する制御圧を生成し、その制御圧をセンタバイパス切換弁40に与えることにより、センタバイパス切換弁40の開口量が調整され、センタバイパス切換弁40のフィードバック制御が行われる(S604)。
【0063】
また、目標吐出流量演算部215は、入力装置22の入力情報及びパイロット圧センサ38A,38Bの検出信号を取得すると共に、記憶部212内の情報を参照し、入力装置22によって入力された車体の重量、パイロット圧センサ38A,38Bによって検出されたパイロット圧に相当する操作レバー15Aの操作量、及び記憶部212に記憶された第2関係から油圧ポンプ33の目標吐出流量を演算し(S605)、その演算結果をコントローラ21の傾転角制御部216へ送信する。
【0064】
そして、傾転角制御部216は、目標吐出流量演算部215の演算結果を受信すると、目標吐出流量演算部215によって演算された油圧ポンプ33の目標吐出流量に相当する駆動信号を電磁比例弁35へ送信する。これにより、電磁比例弁35が駆動信号を受信すると、パイロットポンプ34から吐出されたパイロット圧油から当該駆動信号に相当する制御圧を生成し、その制御圧を油圧ポンプ33の傾転アクチュエータ(図示せず)に与えることにより、油圧ポンプ33の斜板の傾斜角が調整され、油圧ポンプ33の傾転角が制御される(S606)。このようにして、本実施形態に係るコントローラ21によるジャッキアップ操作時の油圧駆動装置23の制御処理が完了する。
【0065】
このように構成した本実施形態に係る油圧ショベル100によれば、コントローラ21が、入力装置22によって入力された車体の重量、パイロット圧センサ38A,38Bによって検出されたパイロット圧に相当する操作レバー15Aの操作量、及び吐出圧センサ39によって検出された油圧ポンプ33の吐出圧に基づいて、センタバイパス切換弁40の動作を制御するようにしている。そのため、ブーム下げ動作中に操作レバー15Aを微操作しても、油圧ポンプ33の吐出圧が急に上昇することがなく、油圧ポンプ33の流量を適切に制御できるので、ジャッキアップ操作に対する操作性を高めると共に、複数の油圧アクチュエータの複合操作時に油圧アクチュエータの速度の変動等を抑制することができる。
【0066】
さらに、コントローラ21のフィードバック制御部214によるセンタバイパス切換弁40のフィードバック制御において、油圧ショベル100の仕様に含まれる車体の重量が反映されているので、ジャッキアップ操作時に車体の重量に応じて車体を持ち上げるのに必要な油圧ポンプ33の吐出圧が異なっても、操作レバー15Aの操作量に対する車体の上昇量(車体の持ち上がり量)を維持することができる。このように、本実施形態は、車体の重量に拘わらず、ジャッキアップ操作時に良好な操作性能を実現することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る油圧ショベル100では、フィードバック制御部214は、ジャッキアップ操作判定部211によってジャッキアップ操作が行われていると判定されたときに限り、センタバイパス切換弁40のフィードバック制御を行うようにしているので、ジャッキアップ操作以外のブーム下げ動作やブーム上げ動作中にセンタバイパス切換弁40が作動することがない。これにより、ブームシリンダ13aの誤作動を防止できるので、オペレータによる操作レバー15Aの操作に伴って、ブーム13Aを安定して上下方向へ回動させることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る油圧ショベル100では、入力装置22をコントローラ21の入出力インターフェース21Dに接続し、オペレータが携帯する入力装置22の画面から油圧ショベル100の仕様を入力することにより、センタバイパス切換弁40のフィードバック制御に対して、オペレータが搭乗する油圧ショベル100の車体の重量に適した設定を容易に行うことができる。これにより、ジャッキアップ操作を行う際のオペレータの利便性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る油圧ショベル100では、フィードバック制御部214によるセンタバイパス切換弁40のフィードバック制御に加え、コントローラ21の傾転角制御部216が、入力装置22によって入力された車体の重量、及びパイロット圧センサ38A,38Bによって検出されたパイロット圧に相当する操作レバー15Aの操作量に基づいて、油圧ポンプ33の傾転角を制御するようにしている。そのため、オペレータによる操作レバー15Aの操作に応じて、油圧ポンプ33の吐出流量が調整されることにより、ブーム13Aの速度を迅速に増減させることができる。これにより、ジャッキアップ操作時にオペレータの意図通りの車体の動きを実現できるので、油圧ショベル100の操作性能に対して優れた信頼性を得ることができる。また、本実施形態では、車格の違いによるジャッキアップに必要な力は、出荷時に車体重量を入力することで調整が可能である。また、本実施形態では、作業現場でフロント作業機のアタッチメントを交換したり、カウンタウェイトを増量したりして車体重量が変更された場合においても、ジャッキアップ力の調整が可能である。
【0070】
なお、上述した本発明の各実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。