特許第6580918号(P6580918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580918
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】ワイヤーテンション調整治具
(51)【国際特許分類】
   B65H 59/14 20060101AFI20190912BHJP
   B66D 1/36 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   B65H59/14
   B66D1/36 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-183510(P2015-183510)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2017-57060(P2017-57060A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】松下 利智
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 英哲
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 竜雄
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−030687(JP,U)
【文献】 実開昭60−006794(JP,U)
【文献】 実開昭60−056684(JP,U)
【文献】 実開平05−051875(JP,U)
【文献】 実開平04−032883(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 59/00 − 59/40
B66D 1/00 − 1/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のシャフト部と、
前記シャフト部の一端から二股に分岐するテンション部と、
前記シャフト部の他端に設けられたグリップ部と、
を有し、
前記テンション部の二股に分岐した一方が、他方より長く、かつ、その先端にワイヤーの抜けを防止する抜止部を有することを特徴とするワイヤーテンション調整治具。
【請求項2】
前記シャフト部が、前記テンション部と前記グリップ部のいずれか、または両方と着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤーテンション調整治具。
【請求項3】
前記テンション部の二股に分岐した部分の少なくとも一部に、摩擦力付与部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤーテンション調整治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーにテンション(張力)を加えるためのワイヤーテンション調整治具に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打ち機や移動式クレーン等のワイヤーを使用する重機において、ワイヤーにテンションがかかっていない状態でワイヤーを巻き上げると、ワイヤーがドラムに規則的に巻き取られない乱巻きが生じることがある。ワイヤーの乱巻きは、型崩れやキンクの原因となる。型崩れやキンクが生じたワイヤーは、強度が低下する。強度が低下したワイヤーは、本来は耐えることのできる荷重であっても切断してしまい、重量物の落下や倒壊に繋がり、非常に危険である。そのため、ワイヤーに乱巻きが生じると、ワイヤーを緩め、テンションを加えながらワイヤーを巻き直す必要がある。
ワイヤーにテンションを加えるための治具は市販されておらず、ケーブルベンダー、コンジットベンダー等の棒状の物を用いたり、革手袋をはめた手で直接ワイヤーを掴んだりして、ワイヤーにテンションを加えながら巻き直す作業が行われている。ケーブルベンダー等は、ワイヤーをしっかりと保持することができないためテンションが弱く、作業中にワイヤーが外れることもある。また、作業員が手で直接ワイヤーを掴むことは、手や衣類がワイヤーに巻き込まれる危険性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、乱巻きが生じたワイヤーを緩めて巻き直す際に、少ない力で、かつ、安全にテンションを加えることのできるワイヤーテンション調整治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1.棒状のシャフト部と、
前記シャフト部の一端から二股に分岐するテンション部と、
前記シャフト部の他端に設けられたグリップ部と、
を有することを特徴とするワイヤーテンション調整治具。
2.前記シャフト部が、前記テンション部と前記グリップ部のいずれか、または両方と着脱自在であることを特徴とする1.に記載のワイヤーテンション調整治具。
3.前記テンション部の二股に分岐した部分の少なくとも一部に、摩擦力付与部材が設けられていることを特徴とする1.または2.のいずれかに記載のワイヤーテンション調整治具。
【発明の効果】
【0005】
本発明のワイヤーテンション調整治具は、ワイヤーをしっかりと挟み込むことができ、使用中にワイヤーが外れることはなく、また、ワイヤーにテンションを容易にかけることができる。巻き直されるワイヤーから離れて作業が行えるため、作業員がワイヤーに巻き込まれることがなく、安全性に優れている。ワイヤーテンション調整治具を構成する部品を着脱自在とし、シャフト部の長さが最適な部品と交換して用いることで、狭い作業スペースでも取り扱い性に優れている。また、テンション部を交換することで、様々な太さのワイヤーに適用することができる。テンション部に摩擦力付与部材を設けることで、さらに小さな力でワイヤーにテンションをかけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明のワイヤーテンション調整治具の一実施態様を示す図。
図2】テンション部の形態例を示す図。
図3】本発明のワイヤーテンション調整治具の使用方法を説明する図。
図4】本発明のワイヤーテンション調整治具の使用方法を説明する図。
図5】本発明のワイヤーテンション調整治具の使用している様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のワイヤーテンション調整治具の一実施態様を図1に示す。
本発明のワイヤーテンション調整治具10は、棒状のシャフト部1と、シャフト部1の一端から二股に分岐するテンション部2と、シャフト部1の他端に設けられたグリップ部3とを有する。
本発明のワイヤーテンション調整治具10は、シャフト部1とテンション部2とグリップ部3とが一体に成形されていてもよく、シャフト部1と、テンション部2、グリップ部3のいずれか、または両方とが着脱自在であってもよい。重機の大きさは様々であり、機種によってはワイヤーを巻き戻すための作業スペースが狭い。シャフト部1と、テンション部2、グリップ部3のいずれか、または両方とを着脱自在とし、シャフト部1を含む部分を異なる長さのものと交換することで、作業スペースの広さに応じた長さにワイヤーテンション調整治具10を調整することができる。
シャフト部1と、テンション部2、グリップ部3のいずれか、または両方とを着脱自在とする方法は、ワイヤーテンション調整治具10を使用する際に緩まない方法であれば特に制限することなく使用することができる。例えば、雄ネジと雌ネジによる螺合、通しボルトとナットによる固定、を挙げることができる。
【0008】
シャフト部1は、ワイヤーテンション調整治具10の使用時に破損しない強度を有するものであれば特に制限することなく、鉄、アルミ、木材等の様々な材料から形成することができ、また、中実、中空のどちらでもよいが、中空のほうが軽くて取り扱い性に優れるため好ましい。強度、コストの点から鉄であることが好ましい。
シャフト部1の長さは特に制限されないが、50cm〜120cm程度が、重機上で取り扱いやすく、作業性に優れている。また、シャフト部1は、長さが調整可能であってもよい。シャフト部1の長さを調整する方法は特に制限されず、シャフト部1を複数部材から構成して必要な長さとなるように継手で接続する等の方法を用いることができる。
【0009】
テンション部2は、二股に分岐しており、ワイヤーを挟み込むことによりワイヤーにテンションを付与するものである。テンション部2は、ワイヤーテンション調整治具10の使用時に破損しない強度を有するものであれば特に制限することなく、鉄、アルミ等の様々な材料から形成することができ、強度、コストの点から鉄であることが好ましい。
図2にテンション部2の形状例を示す。図2に示すテンション部2は、分岐した一方が他方より長く、その先端にワイヤーの抜けを防止する抜止部4を有している。分岐した部分の間隔は、挟み込まれるワイヤーの太さよりも広く、テンション部2をワイヤーに対して傾斜させることにより、ワイヤーを挟み込む。上記したように、シャフト部1とテンション部2とを着脱自在とし、分岐した部分の間隔が異なるテンション部2を用意しておけば、テンション部2を交換して様々な太さのワイヤーに対応することができる。テンション部2の形状は、図2に示す形状例に限定されず、例えば、分岐した両方の先端に抜止部4を有する形状、抜止部4を有さないU字状、より丸みを帯びたC字状等を挙げることができる。
【0010】
ワイヤーにかかるテンションを大きくするために、テンション部2の二股に分岐した部分の少なくとも一部に、摩擦力付与部材5を設けることが好ましい。摩擦力付与部材5は、テンション部2の素材よりもワイヤーとの摩擦力が大きいものであれば特に制限することなく使用することができ、硬質ゴム、シリコンゴム、ビニールテープ等を用いることができる。これらの中で、耐久性に優れるため、硬質ゴムが好ましい。摩擦力付与部材5は、接着剤、両面テープ等でテンション部2に設けることができる。また、筒状に形成した摩擦力付与部材5を、テンション部2の分岐した棒状の部分に嵌めこむと、摩擦力付与部材5を容易にテンション部2に設けることができ、かつ使用時に摩擦力付与部材5がテンション部2から剥がることがない。
【0011】
グリップ部3は、ワイヤーテンション調整治具10の使用時に把持するものである。グリップ部3は、ワイヤーテンション調整治具10の使用時に破損しない強度を有するものであれば特に制限することなく、鉄、アルミ等の様々な材料から形成することができ、強度、コストの点から鉄であることが好ましい。
図1に示すグリップ部3は、シャフト部1の径方向で、シャフト部1から離れた位置に把持部6を有する。把持部6はシャフト部1から離れており、把持部6を作用点、シャフト部1を回転軸とするモーメントが大きいため、少ない力でワイヤーテンション調整治具10を回転させ、すなわち、テンション部2を傾斜させ、ワイヤーを挟み込みテンションをかけることができる。把持部6は、使用時に滑りにくくするため、すべり止め加工を施す、ゴムで覆う等することが好ましい。なお、グリップ部3の形状は、図1に示す形状に限定されない。
【0012】
次に、本発明のワイヤーテンション調整治具10の使用方法を説明する。
乱巻きが生じたワイヤー20を、乱巻きしている部分がなくなるまでドラム30から緩める。ワイヤー20がドラム30に巻き取られる方向に向かい、ワイヤー20に近い側の手でシャフト部1、もう一方の手でグリッド部3を持ち、ワイヤー20をテンション部2の分岐部分に挿入する。ドラム30軸方向と巻き取られるワイヤー20のなす角が直角に近くなるように、ドラム30から離れた位置で、ワイヤー20をテンション部2に挿入することが好ましい。(図3)。
グリップ部3を前、または後ろに倒し、シャフト部1を中心としてワイヤーテンション調整治具10を回転させる。ワイヤーテンション調整治具10が回転すると、テンション部2が傾斜し、ワイヤー20はテンション部2に挟み込まれる(図4)。
ワイヤー20が、テンション部2にしっかりと挟み込まれていることを確認した後、ゆっくりとドラム30を回転させ、テンションをかけながらワイヤー2を巻き直す。
【0013】
図5に、本発明のワイヤーテンション調整治具10を用いて、ワイヤー20を巻き直す様を示す。作業員がワイヤーテンション調整治具10を傾けると、テンション部2がワイヤー20を挟み込み、ワイヤーにテンションをかけることができる。作業員は、ワイヤー20から離れた場所で作業することができるため、巻き直されるワイヤー20に指や衣類等が巻き込まれることがなく、安全性に優れている。
【符号の説明】
【0014】
10 ワイヤーテンション調整治具
1 シャフト部
2 テンション部
3 グリップ部
4 抜止部
5 摩擦力付与部材
6 把持部

20 ワイヤー

30 ドラム
図1
図2
図3
図4
図5