特許第6580921号(P6580921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580921
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】圧電振動片および圧電振動子
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20190912BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   H03H9/19 D
   H03H9/10
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-185770(P2015-185770)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-111680(P2016-111680A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2018年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-240526(P2014-240526)
(32)【優先日】2014年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】皿田 孝史
(72)【発明者】
【氏名】大塚 才一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良和
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−219708(JP,A)
【文献】 特開2013−021667(JP,A)
【文献】 特開2004−236253(JP,A)
【文献】 特開2006−140887(JP,A)
【文献】 特開2014−110488(JP,A)
【文献】 特開2010−114620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00− 9/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状の振動部と、前記振動部を実装するための一対のマウント部と、を有する圧電板を備え、
前記一対のマウント部は、前記圧電板の面方向に沿って前記振動部から突出し、さらに前記圧電板の両主面から厚さ方向に突出するように形成され
前記圧電板は両主面から突出した厚肉部を有し、
前記厚肉部と前記一対のマウント部が同じ高さである、
ことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
前記一対のマウント部は、前記振動部の平面視における角部に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動片。
【請求項3】
前記振動部は、平面視長方形状に形成され、
前記一対のマウント部は、前記振動部における長手方向の両端部に形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動片。
【請求項4】
前記圧電板は、ATカット水晶基板により形成され、
前記圧電板の前記長手方向は、前記ATカット水晶基板のZ´軸方向に沿い、
前記一対のマウント部は、Z´軸方向に沿って配置されている、
ことを特徴とする請求項に記載の圧電振動片。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の圧電振動片と、
前記圧電振動片の前記マウント部が実装されるパッケージと、を備える、
ことを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
前記圧電振動片の前記マウント部と前記パッケージとの間に配置され、前記マウント部を前記パッケージに実装するための実装部材を有し、
前記実装部材は、前記マウント部のみに接触している、
ことを特徴とする請求項に記載の圧電振動子。
【請求項7】
前記実装部材は、前記マウント部の主面と前記マウント部の側面とに接触している、
ことを特徴とする請求項に記載の圧電振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片および圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や携帯情報端末機器、電波時計等には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として、例えば水晶を利用した圧電振動子が用いられている。従来、圧電振動子には、圧電振動片が実装用の導電性接着剤によってパッケージに固定された状態で格納される(例えば、特許文献1参照)。
また、近年では、圧電振動子への小型化の要求が高まっており、それに伴って圧電振動片の小型化が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−197826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、圧電振動片をパッケージに実装する際、導電性接着剤等の実装部材は、ディスペンサノズルから供給される。しかしながら、圧電振動片の小型化に対応して導電性接着剤の塗布面積を小さくするためにディスペンサノズルを小径化すると、実装部材の詰まり等が生じやすくなる。しかし、ディスペンサノズルの小径化は難しく、その結果として実装部材の塗布面積のさらなる縮小化が困難となっている。
【0005】
このため、圧電振動片の小型化が進むにしたがい、圧電振動片の表面における実装部材の塗布面積の占める割合が増加する。これにより実装部材の濡れ広がりに伴う、実装部材の塗布面積のばらつき増加や、実装部材の励振電極近傍への付着等が生じる。このように、塗布面積のばらつきが増加すると、これに伴い振動部の実寸法(振動部において実装部材が接触しない領域の寸法、又はすべり振動が生じる領域の寸法)がばらつくので、その結果、所望の振動特性を得ることが困難になるといった課題がある。また、振動部の励振電極近傍に実装部材が付着すると、クリスタルインピーダンス(以下、CI値)の増加や不要振動の発生等が引き起こされる。即ち、従来技術では、小型化された圧電振動片において、優れた振動特性を安定的に確保するという点で課題がある。
【0006】
そこで本発明は、優れた振動特性を備える小型な圧電振動片および圧電振動子を安定的に提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電振動片は、矩形板状の振動部と、前記振動部を実装するための一対のマウント部と、を有する圧電板を備え、前記一対のマウント部は、前記圧電板の面方向に沿って前記振動部から突出している、ことを特徴とする。
本発明によれば、マウント部が振動部から突出しているため、圧電振動片を実装する際に、導電性接着剤等の実装部材が、マウント部から振動部へ濡れ広がる量を抑制できる。これにより、圧電振動片の小型化に伴って圧電振動片の表面における実装部材の塗布面積が占める割合が増加する場合であっても、塗布面積のばらつきを低減でき、圧電振動片の実寸法のばらつきを抑えることができるため、所望の振動特性を有する圧電振動片を安定的に得ることが可能になる。また、平面視においてマウント部が振動部の領域に形成されず、振動部に隣接した領域に形成されており、即ち、振動部とは独立した部分として形成されるので、濡れ広がった実装部材が励振電極近傍に付着しにくくなり、CI値の増加や不要振動の発生等を抑制できる。即ち、優れた振動特性を備える小型な圧電振動片を安定的に提供することが可能になる。
【0008】
上記の圧電振動片において、前記一対のマウント部は、前記振動部の平面視における角部に形成されている、ことを特徴とする。
本発明によれば、振動部に形成される励振電極と、マウント部との距離が長くなる。これにより、マウント部への振動の伝搬距離が長くなるため、マウント部からパッケージ側へ振動エネルギーが漏れる、所謂振動漏れを低減できる。よって、圧電振動片を小型化した場合でも、CI値を低減し、さらにはマウント部において生じる不要振動を抑制することができる。したがって、より優れた振動特性を備える小型な圧電振動片が得られる。
【0009】
上記の圧電振動片において、前記一対のマウント部と前記振動部との間に段差が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、圧電振動片を実装する際に、マウント部と振動部との間の段差により、実装部材がマウント部の主面から濡れ広がって振動部に付着することを防止できる。これにより、圧電振動片の振動特性のばらつきを抑制できる。したがって、より優れた振動特性を備える圧電振動片が得られる。
【0010】
上記の圧電振動片において、前記振動部は、平面視長方形状に形成され、前記一対のマウント部は、前記振動部における長手方向の両端部に形成されている、ことを特徴とする。
本発明によれば、一対のマウント部同士の間隔を広く設けることができる。これにより、それぞれのマウント部の実装部材同士が接触して短絡することを防止できるとともに、実装部材の塗布が容易になるため、圧電振動片の実装作業を効率よく行うことが可能となる。
【0011】
上記の圧電振動片において、前記圧電板は、ATカット水晶基板により形成され、前記圧電板の前記長手方向は、前記ATカット水晶基板のZ´軸方向に沿い、前記一対のマウント部は、Z´軸方向に沿って配置されている、ことを特徴とする。
ATカット水晶基板の主振動モードである厚みすべり振動は、X軸方向に大きく変位する振動である。本発明によれば、一対のマウント部が振動部の変位が大きい方向(X軸方向)に直交する方向に沿って配置されているため、マウント部は振動部のX軸方向の変位を妨げない。これにより、マウント部において不要振動が発生することを抑制できる。したがって、より優れた振動特性を備える圧電振動片が得られる。
【0012】
本発明の圧電振動子は、上記の圧電振動片と、前記圧電振動片の前記マウント部が実装されるパッケージと、を備える、ことを特徴とする。
本発明によれば、上述した圧電振動片を備えているので、優れた振動特性を備える小型な圧電振動子が得られる。
【0013】
上記の圧電振動子において、前記圧電振動片の前記マウント部と前記パッケージとの間に配置され、前記マウント部を前記パッケージに実装するための実装部材を有し、前記実装部材は、前記マウント部のみに接触している、ことを特徴とする。
本発明によれば、実装部材が振動部の振動を阻害することを防止できる。このため、圧電振動子は、CI値を低減でき、より優れた振動特性が得られる。
【0014】
上記の圧電振動子において、前記実装部材は、前記マウント部の主面と前記マウント部の側面とに接触している、ことを特徴とする。
本発明によれば、圧電振動片は、実装部材により少なくとも2方向から固定されるので、圧電振動片とパッケージとの固着強度を向上させることができる。このため、実装部材による固着部において生じる不要振動を抑制でき、圧電振動片の振動を安定させることができる。したがって、より優れた振動特性を備える圧電振動子が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた振動特性を備える小型な圧電振動片および圧電振動子を安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図2】第1実施形態に係る圧電振動子の分解斜視図である。
図3図2のIII−III線における断面図である。
図4】第1実施形態の変形例に係る圧電振動子の断面図である。
図5】第2実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図6】第2実施形態に係る他の圧電振動片の平面図である。
図7】第2実施形態に係る他の圧電振動片の平面図である。
図8】第2実施形態の変形例に係る圧電振動片の平面図である。
図9】第3実施形態に係る圧電振動片を+X方向から見た側面図である。
図10】第3実施形態に係る他の圧電振動片を+X方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図の構成を説明する際には、XY´Z´座標系を用いる。このXY´Z´座標系における各軸は、後述する水晶の結晶軸と以下の関係を有している。即ち、X軸が電気軸であり、Z´軸が光学軸であるZ軸に対してX軸周りに35度15分だけ傾いた軸であり、Y´軸がX軸およびZ´軸に直交する軸である。また、X軸方向、Y´軸方向およびZ´軸方向は、図中矢印方向を+方向とし、矢印とは反対の方向を−方向として説明する。
【0018】
[第1実施形態]
最初に、第1実施形態の圧電振動片および圧電振動子について説明する。
図1は、第1実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図1に示すように、圧電振動片10は、圧電板11と、マウント電極31,32と、励振電極34と、を備える。
圧電板11は、ATカット水晶基板により形成されている。ここで、ATカットは、人工水晶の結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)および光学軸(Z軸)の3つの結晶軸のうち、Z軸に対してX軸周りに35度15分だけ傾いた方向(Z´軸方向)に切り出す加工手法である。ATカットによって切り出された圧電板11を有する圧電振動片10は、周波数温度特性が安定しており、構造や形状が単純で加工が容易であり、CI値が低いという利点がある。圧電板11は、Y´軸方向を厚さ方向とし、一様な厚さに形成され、Y´軸方向の両面に主面11A,11Bを有している。
【0019】
圧電板11は、矩形板状の振動部12と、振動部12を実装するための一対のマウント部14,15と、を有する。
振動部12は、平面視長方形状であって、長手方向がZ´軸方向に沿うように形成されている。振動部12には、圧電板11の一方主面11A上に形成された一方の励振電極34Aと、他方主面11B上に形成された他方の励振電極34Bと、が形成されている。一方の励振電極34Aは、振動部12の平面視略中央において、矩形状に形成されている。他方の励振電極34Bは、平面視において一方主面11A上に形成された一方の励振電極34Aと重なるように形成されている。
【0020】
一対のマウント部14,15は、振動部12の長手方向(Z´軸方向)の両端部において振動部12と一体的に形成され、振動部12から突出するように配置されている。
第1マウント部14は、振動部12の平面視略中央から見て+Z´方向側の端部におけるX方向略中央に配置されている。第1マウント部14は、平面視矩形状に形成され、振動部12の+Z´方向に面する側面と接するように配置されている。
【0021】
第1マウント部14は、第1マウント電極31A,31Bを有する。一方の第1マウント電極31Aは、一方主面11A上に形成され、一方の励振電極34Aに対して引き回し配線36Aを介して接続されている。他方の第1マウント電極31Bは、他方主面11B上に形成されている。
一方の第1マウント電極31Aと、他方の第1マウント電極31Bとは、第1マウント部14の側面に形成された第1側面電極37を介して相互に接続されている。第1マウント部14の表面は、第1マウント電極31A,31Bおよび第1側面電極37により形成されている。
【0022】
第2マウント部15は、振動部12の平面視略中央から見て−Z´方向側の端部におけるX方向略中央に配置されている。第2マウント部15は、平面視矩形状に形成され、振動部12の−Z´方向に面する側面と接するように配置されている。
【0023】
第2マウント部15は、第2マウント電極32A,32Bを有する。一方の第2マウント電極32Aは、一方主面11A上に形成されている。他方の第2マウント電極32Bは、他方主面11B上に形成され、他方の励振電極34Bに対して引き回し配線36Bを介して接続されている。
一方の第2マウント電極32Aと、他方の第2マウント電極32Bとは、第2マウント部15の側面に形成された第2側面電極38を介して相互に接続されている。第2マウント部15の表面は、第2マウント電極32A,32Bおよび第2側面電極38により形成されている。
【0024】
次いで、圧電振動片10を備える圧電振動子1について説明する。
図2は、第1実施形態に係る圧電振動子の分解斜視図である。図3は、図2のIII−III線における断面図である。なお、図3では、わかりやすくするためにマウント電極31,32の膜厚を誇張して図示している(以下の断面図および側面図についても同様)。
図2に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、パッケージ5のキャビティCの内部に圧電振動片10を収容したものである。パッケージ5は、ベース基板2とリッド基板3とを重ね合わせて形成されている。
【0025】
ベース基板2は、矩形板状に形成された底壁部2aと、底壁部2aの周縁部から立設された側壁部2bと、を備えている。底壁部2aおよび側壁部2bは、セラミック材料等により形成されている。
キャビティCの内部における底壁部2aの表面には、一対の内部電極7が形成されている。一対の内部電極7は、所定方向に離間して形成されている。また、キャビティCの外部における底壁部2aの表面には、一対の外部電極(不図示)が形成されている。そして、底壁部2aを厚さ方向に貫通する貫通電極(不図示)により、内部電極7と外部電極とが接続されている。なお、貫通電極で接続するのではなく、セラミック層の層間に形成される層間電極によって、内部電極と外部電極とを接続する構成であってもよい。
リッド基板3は、セラミック材料や金属材料等により、矩形板状に形成されている。リッド基板3の周縁部は、ベース基板2の側壁部2bの端面に接着されている。そして、ベース基板2の底壁部2aおよび側壁部2bとリッド基板3とで囲まれた領域に、キャビティCが形成されている。
【0026】
図3に示すように、キャビティCの内部には、圧電振動片10が収容されている。圧電振動片10は、導電性接着剤等の実装部材9を介して、ベース基板2の底壁部2aに実装される。より具体的には、ベース基板2の底壁部2aに形成された一対の内部電極7に対して、圧電振動片10の一対のマウント部14,15が有する第1マウント電極31および第2マウント電極32が実装部材9を介して実装される。このとき、実装部材9は、一対のマウント部14,15に接触する。これにより、圧電振動片10は、パッケージ5に機械的に保持されると共に、第1マウント電極31および第2マウント電極32と内部電極7とがそれぞれ導通された状態となっている。
【0027】
このように、本実施形態の圧電振動片10は、矩形板状の振動部12と、一対のマウント部14,15と、を有する圧電板11を備えている。一対のマウント部14,15は、圧電板11の面方向(XZ´平面方向)に沿って振動部12から突出している。即ち、平面視で振動部12の領域内にマウント部14、15が形成されているのではなく、振動部12に隣接する領域、即ち、振動部12とは独立した部分にマウント部14、15が形成されている。
この構成によれば、マウント部14,15が振動部12から突出しているため、圧電振動片10を実装する際に、例えば導電性接着剤等の実装部材9がマウント部14,15から振動部12へ濡れ広がる量を抑制できる。これにより、圧電振動片10の小型化に伴って圧電振動片10の表面における実装部材9の塗布面積が占める割合が増加する場合であっても、塗布面積のばらつきを低減でき、圧電振動片10の実寸法のばらつきを抑えることができるため、所望の振動特性を有する圧電振動片10を安定的に得ることが可能になる。また、平面視においてマウント部14,15が振動部12の領域に形成されず、振動部12に隣接した領域に形成されており、即ち、振動部12とは独立した部分として形成されるので、濡れ広がった実装部材9が励振電極34近傍に付着しにくくなり、CI値の増加や不要振動の発生等を抑制できる。即ち、優れた振動特性を備える小型な圧電振動片10を安定的に提供することが可能になる。
【0028】
また、一対のマウント部14,15は、振動部12における長手方向(Z´軸方向)の両端部に形成されているため、一対のマウント部14,15同士の間隔を広く設けることができる。これにより、それぞれのマウント部14,15の実装部材9同士が接触して短絡することを防止できるとともに、実装部材9の塗布が容易になるため、圧電振動片10の実装作業を効率よく行うことが可能となる。
【0029】
また、圧電板11は、ATカット水晶基板により形成され、圧電板11の長手方向は、Z´軸方向に沿い、一対のマウント部14,15は、Z´軸方向に沿って配置されている。
ここで、ATカット水晶基板の主振動モードである厚みすべり振動は、X軸方向に大きく変位する振動である。このため、一対のマウント部14,15を振動部12の変位が大きい方向(X軸方向)に直交する方向に沿って配置することで、マウント部14,15は振動部12のX軸方向の変位を妨げない。これにより、圧電振動片10では、マウント部14,15における不要振動の発生が抑制される。また、CI値を低下させることも可能になる。
【0030】
また、本実施形態の圧電振動子1は、圧電振動片10と、圧電振動片10のマウント部14,15が実装されるパッケージ5と、を備えているため、優れた振動特性を備える小型な圧電振動子1が得られる。
また、実装部材9は、マウント部14,15のみに付着しているため、実装部材9が振動部12の振動を阻害することを防止できる。このため、圧電振動子1は、CI値を低減でき、より優れた振動特性が得られる。
【0031】
[第1実施形態の変形例]
次に、第1実施形態の変形例の圧電振動子101について説明する。
図4は、第1実施形態の変形例に係る圧電振動子の断面図であり、図2のIII−III線に相当する部分における断面図である。
図3に示す第1実施形態の圧電振動子1では、実装部材9を圧電振動片10のマウント部14,15の主面のみに接触させている。これに対して、図4に示す圧電振動子101では、実装部材9を圧電振動片10のマウント部14,15の主面と側面とに接触させている点で、第1実施形態と異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0032】
図4に示すように、圧電振動子101は、圧電振動片10が実装部材9を介してパッケージ5に実装されている。圧電振動子101では、実装部材9をマウント部14,15における他方主面11B上から、マウント部14,15の側面14a,15aに亘って接触している。
【0033】
このように、本変形例の圧電振動子101は、マウント部14,15における他方主面11Bと、マウント部14,15の側面14a,15aとに接触する実装部材9を有する。この構成によれば、圧電振動片10は、実装部材9により少なくとも2方向から固定されるので、圧電振動片10とパッケージ5との固着強度を向上させることができる。このため、実装部材9による固着部において生じる不要振動を抑制でき、圧電振動片10の振動を安定させることができる。
【0034】
[第2実施形態]
次に第2実施形態の圧電振動片210について説明する。
図5は、第2実施形態に係る圧電振動片の平面図である。
図5に示す第2実施形態の圧電振動片210は、一対のマウント部214,215が振動部12の角部に形成されている点で、第1実施形態の圧電振動片10と異なっている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0035】
図5に示すように、圧電振動片210は、振動部12の角部に形成された1対のマウント部214,215を有する。
一対のマウント部214,215は、振動部12の長手方向(Z´軸方向)の一端部であって、短手方向(X軸方向)の両端部に形成されている。
第1マウント部214は、振動部12の(+X,+Z´)方向に位置する角部において、振動部12の+X方向に面する側面と接するように配置されている。第1マウント部214は、両主面211A,211B上の第1マウント電極231と、側面上の第1側面電極237と、を有する。第1マウント部214の表面は、第1マウント電極231および第1側面電極237により形成されている。
【0036】
第2マウント部215は、振動部12の(−X,+Z´)方向に位置する角部において、振動部12の−X方向に面する側面と接するように配置されている。第2マウント部215は、両主面211A,211B上の第2マウント電極232と、側面上の第2側面電極238と、を有する。第2マウント部215の表面は、第2マウント電極232および第2側面電極238により形成されている。
【0037】
このように、本実施形態の圧電振動片210は、一対のマウント部214,215が、振動部12の平面視における角部に形成されている。
この構成によれば、振動部12に形成される励振電極34と、マウント部214,215との距離が長くなる。これによりマウント部214,215への振動の伝搬距離が長くなるため、マウント部214,215からパッケージ側へ振動エネルギーが漏れる、所謂振動漏れを低減できる。よって、圧電振動片210が小型化した場合でも、CI値を低減し、さらにはマウント部214,215において生じる不要振動を抑制することができる。
【0038】
なお、一対のマウント部214,215の形成位置は、図5に示す位置に限定されるものではない。
図6および図7は、第2実施形態に係る他の圧電振動片の平面図である。
図6に示すように、一対のマウント部214,215は、振動部12の長手方向(Z´軸方向)の一端部であって、短手方向(X軸方向)の両端部における、+Z´方向に面する側面と接するように配置されていてもよい。
また、図7に示すように、一対のマウント部214,215は、振動部12の平面視における対角部にそれぞれ配置されていてもよい。
【0039】
[第2実施形態の変形例]
次に、第2実施形態の変形例の圧電振動片310について説明する。
図8は、第2実施形態の変形例に係る圧電振動片の平面図である。
図8に示す変形例では、一対のマウント部214,215が振動部12の+X側に配置されている点で、第2実施形態と異なっている。なお、第2実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
図8に示すように、圧電振動片310は、振動部12の+X側であって、長手方向(Z´軸方向)の両端部に形成された一対のマウント部214,215を有する。
第1マウント部214は、振動部12の(+X,+Z´)方向に位置する角部おいて、振動部12の+X方向に面する側面と接するように配置されている。第2マウント部215は、振動部12の(+X,−Z´)方向に位置する角部において、振動部12の+X方向に面する側面と接するように配置されている。
【0041】
圧電板211をウェットエッチングにより形成すると、圧電板211の側面には、水晶結晶のエッチング異方性により、主面に対して90度未満の角度で傾斜した傾斜面が形成される。さらに、圧電板211の+X方向に面する側面に形成される傾斜面は、−X方向に面する側面に形成される傾斜面よりも、圧電板211の主面に対する傾斜角が水晶結晶の異方性により小さくなる。このため、圧電板211の+X方向に面する側面は、−X方向に面する側面よりも、緩やかな傾斜で形成された断面視先細り形状となる。
【0042】
ここで、振動部12の励振電極34において励振され、X軸方向に伝搬した振動は、振動部12のX軸方向両端部において、断面視先細り形状により減衰する。この際、断面視形状がより緩やかな傾斜で形成された振動部12の+X方向に面する側面のほうが、−X方向に面する側面よりも振動減衰効果が高くなる。
【0043】
振動部12の外形形状は、マウント部214,215を一体的に形成することで、所望の形状が得られない場合がある。より具体的には、振動部12は、その形成時において、振動部12の周端部のうちマウント部214,215近傍の端部にエッチング残り等が発生し、凹凸状に形成される。このため、振動部12の形状が乱れた部分において、不要振動が発生しやすくなる。
本変形例の圧電振動片310では、一対のマウント部214,215を振動部12の+X側に配置しているため、振動部12の+X側の端部の形状が乱れた場合でも、振動部12から伝搬した振動を高効率で減衰でき、不要振動の発生を抑制できる。
【0044】
[第3実施形態]
次に第3実施形態の圧電振動片410について説明する。
図9は、第3実施形態に係る圧電振動片を+X方向から見た側面図である。
図3に示す第1実施形態の圧電振動片10は、マウント部14,15が振動部12と同じ厚さで形成されている。これに対して、図9に示す第3実施形態の圧電振動片410は、マウント部414,415が振動部412よりも厚く形成されている点で、第1実施形態と異なっている。即ち、振動部412とマウント部414,415との間には段差が形成されている。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
図9に示すように、圧電板411は、振動部412よりも厚く形成された第1マウント部414および第2マウント部415を有する。
第1マウント部414は、平面視矩形状に形成されている。第1マウント部414は、振動部412における一方主面411Aよりも一段高く、かつ振動部412における他方主面411Bよりも一段高く形成されている。第1マウント部414は、両主面が振動部412における両主面411A,411Bと平行に形成されている。
第1マウント部414の表面は、両主面に形成された第1マウント電極431と、側面に形成された第1側面電極437とにより形成されている。また、第1マウント部414の+Y´方向に面する主面上の第1マウント電極431は、一方の励振電極34Aに対して引き回し配線436Aを介して接続されている。
【0046】
第2マウント部415は、平面視矩形状に形成されている。第2マウント部415は、第1マウント部414と同様に、振動部412における一方主面411Aよりも一段高く、かつ振動部412における他方主面411Bよりも一段高く形成されている。第2マウント部415は、両主面が振動部412における両主面411A,411Bと平行に形成されている。
第2マウント部415の表面は、両主面に形成された第2マウント電極432と、側面に形成された第2側面電極438とにより形成されている。また、第2マウント部415の−Y´方向に面する主面上の第2マウント電極432は、他方の励振電極34Bに対して引き回し配線436Bを介して接続されている。
【0047】
このように、本実施形態の圧電振動片410は、一対のマウント部414,415が、振動部412のうち一対のマウント部414,415の周囲における領域よりも厚く形成されている。
この構成によれば、圧電振動片410を実装する際に、振動部412の主面よりも一段高いマウント部414,415の主面に実装部材9を接触させることで、マウント部414,415と振動部412との間の段差により、実装部材9がマウント部414,415の主面から濡れ広がって振動部412に付着することを防止できる。これにより、圧電振動片410の振動特性のばらつきを抑制できる。
【0048】
なお、本実施形態では、圧電振動片410の振動部412が一様な厚さに形成されているが、これに限定されるものではなく、振動部のうち一対のマウント部の周囲における領域が、一対のマウント部414,415よりも薄く形成されていればよい。
図10は、第3実施形態に係る他の圧電振動片を+X方向から見た側面図である。
図10に示すように、圧電振動片510は、振動部512が圧電板511の両主面511A,511Bから突出した厚肉部512aを有する、いわゆるメサ形状の圧電振動片であってもよい。この場合、厚肉部512aおよびマウント部414,415は、それぞれが独立して圧電板511の両主面511A,511Bから厚さ方向(Y´方向)に突出するように形成されている。これにより圧電振動片510は、上記の作用効果に加えて、振動エネルギーを厚肉部512a内に閉じ込め、マウント部414,415へ振動が伝搬することを抑制できる。
【0049】
なお、図10に示す圧電振動片510においては、厚肉部512aおよびマウント部414,415の高さは特に限定されないが、厚肉部512aおよびマウント部414,415を同じ高さとすることが好ましい。この構成によれば、厚肉部512aとマウント部414,415とを、圧電板511の形成時に同時に形成できるため、製造工程を簡略化できる。
また、図10に示す圧電振動片510では、厚肉部512aの主面が圧電板511の両主面511A,511Bから一段高くなるように形成されているが、厚肉部の主面は、圧電板511の両主面511A,511Bから多段に高くなるように形成されてもよい。
【0050】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、振動部が平板状の圧電振動片や、いわゆるメサ型の圧電振動片を用いているが、これに限定されず、例えばいわゆるベベル型やコンベックス型の圧電振動片を用いてもよい。
【0051】
また、上記実施形態の圧電振動子1,101では、圧電振動片10の他方主面11B上に実装部材9を接触させているが、これに限定されず、一方主面11A上に実装部材9を接触させてもよい。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態では、上面視におけるマウント部の形状を矩形状として説明したが、マウント部の形状はこれに限られるものではない。例えば、上面視として平行四辺形状に形成されていてもよい。そして、平行四辺形状の先端部分において、実装部材9によって実装されていると好適である。
【0054】
また、水晶ウェハに対してエッチング技術によって圧電振動片を複数個形成し、該ウェハから各々の圧電振動片を折り取る際に、矩形状、又は平行四辺形状に形成されたマウント部の先端部分で折り取ってもよい。即ち、マウント部の先端と水晶ウェハとが接続されているように、水晶ウェハに対してエッチング加工を施してもよい。
【0055】
さらに、上記実施形態では、水晶の結晶軸のZ´軸方向を圧電板の長手方向としていたが、水晶の結晶軸のX軸方向を長手方向とする構成であってもよい。この場合は、−X軸側において、+Z´軸側、−Z´軸側の両端部に、圧電板の面方向に突出する矩形状又は平行四辺形状のマウント部が形成されていればよい。
【0056】
また、上述した厚肉部は、圧電板の両主面の少なくとも一方の主面に形成されていてもよい。さらに、メサ部として、複数段の厚肉部が形成される構成であってもよい。その場合、複数段の厚肉部の最下面から最上面との高さとマウント部の厚みとを同じにしてもよい。
【0057】
また、マウント部が突出部によって形成されている場合、実装部材は、マウント部の主面(裏面)のみならず、外側側面、内側側面の少なくとも一方に付着していればよい。これにより、マウント部における実装強度をさらに高めることが可能になる。
【符号の説明】
【0058】
1,101…圧電振動子 5…パッケージ 9…実装部材 10,210,310,410,510…圧電振動片 11,211,411,511…圧電板 12,412,512…振動部 14,15,214,215,414,415…マウント部
図1
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