特許第6580929号(P6580929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580929
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】電動機制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20190912BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20190912BHJP
【FI】
   H02P27/06
   H02P29/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-197886(P2015-197886)
(22)【出願日】2015年10月5日
(65)【公開番号】特開2017-73851(P2017-73851A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】北条 善久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷見 達也
(72)【発明者】
【氏名】萩原 茂教
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−124858(JP,A)
【文献】 特開2014−220999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主回路装置と、該主回路装置と分離された制御装置とを備える電動機制御システムであって、
前記主回路装置は、
当該主回路装置に接続される電動機に流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記電流値をアナログ値からデジタル値にA/D変換するA/D変換部と、
前記デジタル値を前記制御装置に送信する第1送信部と、
前記制御装置から電圧指令を受信する第1受信部と、
前記電圧指令に基づきゲート信号を生成するゲート信号生成部と、
前記ゲート信号に従ってスイッチング制御を更新し、入力される直流電力を変換した変換電力を前記電動機に供給する電力変換部と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1送信部から前記デジタル値を受信する第2受信部と、
前記デジタル値及び前記電動機に対する電流指令に基づき前記電圧指令を生成する電流制御部と、
前記電圧指令を前記主回路装置に送信する第2送信部と、
を備え
前記第1送信部は、前記デジタル値を無線で前記第2受信部に送信し、
前記第2送信部は、前記電圧指令を無線で前記第1受信部に送信することを特徴とする電動機制御システム。
【請求項2】
複数の前記制御装置を有する制御盤と、
複数の前記主回路装置を有する主回路盤と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動機制御システム。
【請求項3】
前記電流制御部は、前記電圧指令を出力する周期内に、前記電流検出部による前記電流値の検出と、前記A/D変換部による前記A/D変換と、前記第1送信部による前記デジタル値の送信と、前記第2受信部による前記デジタル値の受信と、前記第2送信部による前記電圧指令の送信と、前記第1受信部による前記電圧指令の受信と、前記ゲート信号生成部による前記ゲート信号の生成と、前記電力変換部による前記更新されたスイッチング制御に基づく前記変換電力の供給と、を実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電動機制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機を制御する電動機制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電流制御器と電力変換器とを備え、電流制御器からの電圧指令に従って電力を変換して電動機を制御する電動機制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、従来の電動機制御装置の構成例を示す図であり、この図に基づいて従来技術を説明する。電流検出部12は、電動機40に流れる電流値を検出する。A/D変換部23は電流検出部12により検出した電流値をアナログ値からデジタル値にA/D変換し、電流制御部21に出力する。
【0004】
電流制御部21は、A/D変換部23から入力される電流値が電流指令通りとなるような電圧指令を、ゲート信号生成部22に出力する。ゲート信号生成部22は、電力変換部11が電流制御部21からの電圧指令通りの電圧を出力するようなゲート信号を、電力変換部11のスイッチング素子に出力する。
【0005】
電力変換部11は、ゲート信号生成部22から入力されるゲート信号に従ってスイッチング素子をスイッチングし、直流電源30から入力される電力を変換して電動機40に供給する。このようにして、従来の電動機制御装置2は電動機40の動作を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4076348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、電動機制御装置を構成する全ての部品の大きさや配置は、最適設計を行い小型化されている。よって、新しい電動機制御装置を設計する場合、全ての部品について配置設計が必要となるため、設計期間が長期になるという課題がある。また、同じ機能であっても電動機制御装置ごとに異なる部品が必要となるため、多くの種類の部品を管理しなければならないという課題がある。
【0008】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、設計期間を短縮させ、部品の在庫種類を低減させることが可能な電動機制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る電動機制御システムは、主回路装置と、該主回路装置と分離された制御装置とを備える電動機制御システムであって、前記主回路装置は、当該主回路装置に接続される電動機に流れる電流値を検出する電流検出部と、前記電流値をアナログ値からデジタル値にA/D変換するA/D変換部と、前記デジタル値を前記制御装置に送信する第1送信部と、前記制御装置から電圧指令を受信する第1受信部と、前記電圧指令に基づきゲート信号を生成するゲート信号生成部と、前記ゲート信号に従ってスイッチング制御を更新し、入力される直流電力を変換した変換電力を前記電動機に供給する電力変換部と、を備え、前記制御装置は、前記第1送信部から前記デジタル値を受信する第2受信部と、前記デジタル値及び前記電動機に対する電流指令に基づき前記電圧指令を生成する電流制御部と、前記電圧指令を前記主回路装置に送信する第2送信部と、を備え、前記第1送信部は、前記デジタル値を無線で前記第2受信部に送信し、前記第2送信部は、前記電圧指令を無線で前記第1受信部に送信することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る電動機制御システムにおいて、複数の前記制御装置を有する制御盤と、複数の前記主回路装置を有する主回路盤と、を備えることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る電動機制御システムにおいて、前記電流制御部は、前記電圧指令を出力する周期内に、前記電流検出部による前記電流値の検出と、前記A/D変換部による前記A/D変換と、前記第1送信部による前記デジタル値の送信と、前記第2受信部による前記デジタル値の受信と、前記第2送信部による前記電圧指令の送信と、前記第1受信部による前記電圧指令の受信と、前記ゲート信号生成部による前記ゲート信号の生成と、前記電力変換部による前記更新されたスイッチング制御に基づく前記変換電力の供給と、を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部品を共通化することにより、設計期間を短縮させ、部品の在庫種類を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る電動機制御システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電動機制御システムの主要な動作のタイミングチャートである。
図3】従来の電動機制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る電動機制御システムの構成例を示すブロック図である。図1に示す電動機制御システム1は、主回路装置10と、主回路装置10とは分離された制御装置20とを備える。
【0016】
主回路装置10は、電力変換部11と、電流検出部12と、A/D変換部13と、第1送信部14と、第1受信部15と、ゲート信号生成部16とを備える。主回路装置10は、直流電源30から入力される直流電力を変換して電動機40に出力する。なお、図1では電動機40を1つのみ示しているが、電動機40は複数であってもよい。
【0017】
電流検出部12は、電動機40に流れる電流値を検出し、A/D変換部13に出力する。
【0018】
A/D変換部13は、電流検出部12により検出された電流値をアナログ値からデジタル値にA/D変換し、第1送信部14に出力する。
【0019】
第1送信部14は、A/D変換部13により変換された電流値を、制御装置20の第2受信部23に送信する。データの送信は無線通信により行うのが好適である。
【0020】
第1受信部15は、制御装置20の第2送信部22から電圧指令を受信し、ゲート信号生成部16に出力する。
【0021】
ゲート信号生成部16は、電流制御部21により生成された電圧指令通りの電圧を電力変換部11が出力するように、ゲート信号を電力変換部11のスイッチング素子に出力する。ゲート信号生成部16は、例えばPWM制御を行い、三角波と電圧指令とを比較してゲート信号のパルス幅を決定する。
【0022】
電力変換部11は、IGBT又はGTOなどのスイッチング素子を複数有し、ゲート信号生成部16から入力されるゲート信号に従ってスイッチング制御(スイッチング素子のスイッチング)を行い、直流電源30の電力を変換した変換電力を電動機40に供給する。スイッチング制御は、電流制御部21から電圧指令を受信するごとに更新される。
【0023】
制御装置20は、電流制御部21と、第2送信部22と、第2受信部23とを備える。制御装置20は、電流指令が入力され、電動機40に流れる電流が電流指令通りになるように、主回路装置10を制御する。
【0024】
第2受信部23は、第1送信部14から電動機40に流れる電流のデジタル値を受信し、電流制御部21に出力する。
【0025】
電流制御部21は、第2受信部23から入力される電流値が、電流指令通りとなるような電圧指令を生成し、第2送信部22に出力する。
【0026】
第2送信部22は、電流制御部21により生成された電圧指令を第1受信部15に送信する。データの送信は無線通信により行うのが好適である。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態に係る電動機制御システムの主要な動作のタイミングチャートである。この図ではタイミングの順番を示すものであり、タイミングの間隔はこの通りである必要はない。タイミングaは、電流検出部12が電動機40に流れる電流値を検出するタイミングを示す。タイミングbは、A/D変換部13が電流値をA/D変換するタイミングを示す。タイミングcは、第1送信部14が第2受信部23にデータを送信するタイミングを示す。タイミングdは、第2受信部23が第1送信部14からデータを受信するタイミングを示す。タイミングeは、電流制御部21が電圧指令を生成するタイミングを示す。タイミングfは、第2送信部22が電圧指令を第1受信部15に送信するタイミングを示す。タイミングgは、第1受信部15が電圧指令を受信するタイミングを示す。タイミングhは、ゲート信号生成部16がゲート信号を生成するタイミングを示す。タイミングiは、電力変換部11がゲート信号生成部16からのゲート信号に基づきスイッチング制御を更新し、変換電力を電動機40に供給するタイミングを示す。
【0028】
制御装置20と主回路装置10との間で通信を行う場合、通信による制御遅れが発生すると、電動機40の電流を正常に制御することができなくなる。そのため、図2に示すように電流制御部21は、電圧指令を出力する電流制御周期内に、電流検出部12による電流値の検出と、A/D変換部13によるA/D変換と、第1送信部14によるデジタル値の送信と、第2受信部23によるデジタル値の受信と、第2送信部22による電圧指令の送信と、第1受信部15による電圧指令の受信と、ゲート信号生成部16によるゲート信号の生成と、電力変換部11による更新されたスイッチング制御に基づく変換電力の電動機40への供給と、を実施するのが好適である。
【0029】
主回路装置10は、電動機制御システム1の定格電圧や定格電流といった仕様ごとに採用する部品を選定する必要があり、電動機制御システム1ごとに設計が必須となる。一方、制御装置20は、電動機制御システム1の仕様にかかわらず共通の部品を用いることができる。よって、本発明のように制御装置20と主回路装置10とを分離することで、制御装置20を共通化することができる。そうすると、設計は主回路装置10のみとなるため、設計期間を短縮することができるとともに、部品の在庫種類を低減することができる。また、主回路装置10は電気的な設計自由度が増し、電動機制御システム1の定格電圧や定格電流などの各電気仕様に基づいた設計が容易となる。
【0030】
また、製造ラインなどに複数の電動機制御システムを適用する場合、複数の制御装置20を、全体を制御するプログラマブルコントローラなどの全体制御装置と一緒に制御盤にまとめ、複数の主回路装置10を主回路盤にまとめる構成とすることができる。これにより、主回路装置10は主回路盤内の機構的な設計自由度が増し、共通小型化が可能となる。
【0031】
さらに、製造ラインの動作確認や調整を行う際、全体を制御する全体制御装置と、電動機制御システム1と、電動機40とが全て揃う必要がある。本発明では制御装置20と主回路装置10とを分離しているため、動作作業や調整作業の一部を、制御盤のみと主回路盤及び電動機40とで分離して実施することが可能となり、動作確認や調整の作業場所の縮小や、作業時間の短縮が可能となる。
【0032】
また、本発明では、制御装置20と主回路装置10との間は無線通信によりデータを送受信するのが好適である。これにより、ケーブル本数低減によるケーブルコストの削減及び信頼性向上を実現することができる。
【0033】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、制御装置の部品を共通化して設計期間の短縮や在庫種類の低減ができ、さらにコストダウンもできることから、産業上の利用可能性はおおいにある。
【符号の説明】
【0035】
1 電動機制御システム
10 主回路装置
11 電力変換部
12 電流検出部
13 A/D変換部
14 第1送信部
15 第1受信部
16 ゲート信号生成部
20 制御装置
21 電流制御部
22 第2送信部
23 第2受信部
30 直流電源
40 電動機
図1
図2
図3