(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連通部が、前記ピストンの外周面のうち、前記予備円筒面部の反ロータ側に隣接した位置から、反ロータ側端縁に掛けての部分に、全周に亙り形成された連通用小径部により構成されている、請求項1に記載したディスクブレーキ装置。
前記連通部が、前記ピストンの外周面のうち、前記予備円筒面部の反ロータ側に隣接した位置から、反ロータ側端縁に掛けての部分に形成されており、前記ピストンの径方向外方及び反ロータ側端部が開口した少なくとも一本の連通用軸方向凹溝により構成されている、請求項1に記載したディスクブレーキ装置。
前記連通部が、前記ピストンの外周面のうち、前記予備円筒面部の反ロータ側に隣接した部分に、前記ピストンの径方向外方のみが開口した状態で形成された、少なくとも一個の連通用凹部により構成されている、請求項1に記載したディスクブレーキ装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の走行中の車両の制動を行う為のディスクブレーキ装置として、特許文献1に記載された油圧式のディスクブレーキ装置が従来から知られている。又、特許文献1に記載された構造とは異なるが、油圧式のディスクブレーキ装置として、
図7に記載された構造も従来から知られている。以下、
図7を参照しつつ、油圧式のディスクブレーキ装置の従来構造に就いて簡単に説明する。
【0003】
図7に記載された油圧式のディスクブレーキ装置1は、所謂フローティングキャリパ型のディスクブレーキ装置であって、キャリパ2と、インナパッド3と、アウタパッド4と、ピストン5と、ピストンシール6と、ピストンブーツ7とを備えている。lang=EN-US> このうちのキャリパ2は、アウタ側端部にキャリパ爪8を、インナ側半部にシリンダ部9を、それぞれ有している。これらキャリパ爪8とシリンダ部9とは、車輪と共に回転するロータ10の外周縁よりも径方向外方に存在する(ロータ10を跨ぐ位置に設けた)ブリッジ部11により、それぞれの径方向外端部同士を一体に連続されている。又、前記シリンダ部9は、アウタ側端部寄り部分からアウタ側端縁に掛けての部分に設けられた大径シリンダ部12と、この大径シリンダ部12よりもインナ側に設けられており、この大径シリンダ部12の内径寸法よりも小さい内径寸法を有する小径シリンダ部13とから成る。このうちの小径シリンダ部13の内周面のアウタ側端部寄り部分には、全周に亙りシール係止溝14が形成されている。この様なキャリパ2は、車体に固定されたサポート15に対して、軸方向の変位を可能に支持されている。尚、軸方向とは、特に断らない限り、ロータの軸方向を言う。又、アウタ側とは、車体への組み付け状態で前記車体の幅方向外側を、インナ側とは、同じく中央側を、それぞれ言う。何れも、本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。
【0004】
前記インナパッド3は、前記ロータ10のインナ側面と対向する状態で、軸方向の変位を可能に支持されている。
前記アウタパッド4は、前記ロータ10のアウタ側面と対向する状態で、軸方向の変位を可能に支持されている。
前記ピストン5は、底部16と、筒部17とを有する有底筒状であり、前記底部16がアウタ側に配置された状態で、前記キャリパ2の小径シリンダ部13の内側に油密に嵌装されている。尚、前記筒部17の外径寸法は、後述するピストン側係止面22が形成された部分を除き、前記筒部17の軸方向に関して全長に亙り変化しない。
【0005】
前記ピストンシール6は、ゴム等の弾性部材から成る環状部材であって、前記小径シリンダ部13に形成されたシール係止溝14に全周に亙り係止されている。又、前記ピストンシール6の内周面は、前記ピストン5の筒部17の外周面と弾性的に当接している。この様なピストンシール6は、前記ピストン5の軸方向の変位を可能としつつ、前記小径シリンダ部13の内部の気密性を確保する為に設けられている。又、前記ピストンシール6は、制動時に、前記ピストン5のアウタ側への変位に伴って弾性変形し、この弾性変形に伴って生じる弾性力により、制動解除時に、前記ピストン5をインナ側に引き戻す様に作用する。
【0006】
前記ピストンブーツ7は、ゴム等の弾性部材から成る蛇腹状部材であって、このピストンブーツ7の径方向外端部に形成された外側リップ18と、同じく径方向内端部に形成された内側リップ19と、同じく径方向中間部に形成された蛇腹部20とを有している。この様なピストンブーツ7は、前記外側リップ18を、前記シリンダ部9を構成する大径シリンダ部12のインナ側端部に形成されたシリンダ側係止面21に内嵌すると共に、前記内側リップ19を、前記ピストン5を構成する筒部17の外周面のアウタ側端部に形成されたピストン側係止面22に外嵌した状態で組み付けられている。この様なピストンブーツ7は、前記ピストン5の外周面と、前記小径シリンダ部13の内周面との間に異物が入るのを防止する為のものである。
【0007】
上述の様なディスクブレーキ装置1により制動を行う際には、前記小径シリンダ部13の内側に、インレット(図示省略)を介して油圧を導入し、前記ピストン5を前記ロータ10に向けて押し出して、前記インナパッド3を前記ロータ10のインナ側面に押し付ける。そして、この様な押し付けの反作用として、前記キャリパ2がインナ側に変位し、前記キャリパ2のアウタ側端部に設けたキャリパ爪8が、前記アウタパッド4を前記ロータ10のアウタ側面に向けて押し付ける。この結果、前記ロータ10が軸方向両側から強く挟持されて、制動が行われる。
【0008】
次に、前記ピストンブーツ7を、前記大径シリンダ部12に形成されたシリンダ側係止面21と、前記ピストン5のピストン側係止面22との間に組み付ける作業に就いて、
図8を参照しつつ簡単に説明する。
先ず、
図8(A)に示す様に、前記ピストン5を前記小径シリンダ部13の最奥部まで押し込んだ状態で、図示しない組立用治具により、前記ピストンブーツ7の外側リップ18を、前記シリンダ側係止面21に内嵌する。この状態で、前記ピストンブーツ7の蛇腹部20は伸張しており、前記内側リップ19のインナ側端面は、前記ピストン5の底部16のアウタ側面のうち、前記ピストン5の径方向に関して外端部に当接している。
【0009】
次いで、
図8(A)に示す状態から、
図8(B)に示す様に、前記ピストン5を、前記ピストン5の外周面のインナ側端縁が、前記ピストンシール6(シール係止溝14)よりもアウタ側に位置するまで変位させる。この状態で、前記ピストン5のインナ側端部外周面は、前記小径シリンダ部13のアウタ側端部内周面と、前記ピストン5の径方向に重畳している。又、前記ピストンブーツ7の内側リップ19が、前記ピストン5の外周面の軸方向中間部に当接している。尚、
図8(B)に示す位置まで、前記ピストン5を変位させる作業は、使用時に、前記シリンダ部9のシリンダ内部空間23にブレーキ液を供給する為のインレットに空気給排手段(図示省略)を接続した状態で、前記空気給排手段により前記シリンダ内部空間23に圧縮空気を送り込む事により行う。即ち、前記ピストン5は、前記圧縮空気により前記小径シリンダ部13からアウタ側に押し出される様にして変位する。
【0010】
前記ピストン5のインナ側端縁が、前記ピストンシール6(シール係止溝14)のアウタ側端縁よりもインナ側に位置している状態では、前記シリンダ内部空間23と、前記ピストンブーツ7の内周面と前記ピストン5のインナ側端部外周面との間に存在するブーツ内部空間24とは、前記ピストンシール6により隔離されている(連通していない)。一方、前記ピストン5のインナ側端縁が、前記ピストンシール6のアウタ側端縁よりもアウタ側に位置している状態{
図8(B)に示す状態}では、前記シリンダ内部空間23と前記ブーツ内部空間24とが連通している。この為、前記空気給排手段により前記シリンダ内部空間23に供給された圧縮空気は、前記ブーツ内部空間24にも流れ込む。この状態では、前記シリンダ内部空間23及び前記ブーツ内部空間24の圧力値が所定の圧力値以上になっており、所定時間経過後に前記シリンダ内部空間23及び前記ブーツ内部空間24の圧力値を計測する事により、前記ピストンブーツ7の気密性に異常があるか否かを判断する異常検査を行う事ができる。
【0011】
次いで、前記ピストン5を図示しない組立治具により軸方向の変位を規制した状態で、前記空気給排手段により、前記シリンダ内部空間23の空気を少なくとも前記シリンダ内部空間23内の圧力が大気圧未満となるまで吸引する。この状態では、前記ピストン5の軸方向の変位が規制されている為、前記シリンダ内部空間23と前記ブーツ内部空間24とは連通したままである。この為、前記ブーツ内部空間24の圧力も大気圧未満となり、前記ピストンブーツ7の蛇腹部20が収縮して、前記ピストンブーツ7の内側リップ19が、前記ピストン5の外周面を沿う様にインナ側に移動して、
図8(C)に示す状態となる。この様に
図8(C)に示す状態となった時点で、前記空気給排手段の吸引を停止する。
【0012】
最後に、
図8(C)に示す状態から、前記組立治具により、前記ピストン5をインナ側に変位させて、前記小径シリンダ部13の内側に押し込む。この様にピストン5をインナ側に変位させると、前記ピストンブーツ7の内側リップ19の軸方向に関する位置が、前記ピストン5のピストン側係止面22の軸方向に関する位置と整合した状態で、前記ピストンブーツ7の内側リップ19が、前記ピストン側係止面22に係合して、
図8(D)に示す状態となる。この様に
図8(D)に示す状態で、前記ピストンブーツ7の組み付け作業は終了する。
【0013】
以上の様なピストンブーツ7の組み付け作業の際、前記ピストンブーツ7の異常検査を行ったり、前記ピストンブーツの蛇腹部を、
図8(B)に示す状態から
図8(C)に示す状態にまで収縮させる為には、前記ピストン5を、前記ピストン5のインナ側端縁が、前記ピストンシール6のアウタ側端縁よりもアウタ側に位置する状態{
図8(B)に示す状態}にまで変位させて、前記シリンダ内部空間23と前記ブーツ内部空間24とを連通させる必要がある。この様に、
図7、8に示す構造の場合、
図8(A)に示す状態から、
図8(B)に示す状態に変化する際の、前記ピストン5のアウタ側への変位量が大きい。この為、前記ピストンブーツ7の組み付け作業の時間が長くなってしまう可能性がある。又、
図8(C)に示す状態では、前記ピストン5のインナ側端部外周面と、前記小径シリンダ部13のアウタ側端部内周面とが、前記ピストン5の径方向に重畳しているのみであり、前記ピストン5が脱落し易くなり、前記ピストンブーツ7の組み付け作業を安定して行えない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、ピストンブーツの組付作業を短い時間で、安定して行う事ができる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のディスクブレーキ装置は、一対のパッドと、キャリパと、ピストンと、ピストンブーツと、ピストンシールとを備えている。
このうちの両パッド(インナパッド、アウタパッド)は、車輪と共に回転するロータを両側から挟んで設けられている。
前記キャリパは、前記両パッドのうちの一方のパッドの軸方向側面に対向する位置に、前記一方のパッドに対向する側を開口させた状態でシリンダ部が設けられている。
前記ピストンは、前記シリンダ部の内側に嵌装されている。
前記ピストンブーツは、前記ピストンの外周面と前記シリンダ部の開口部との間に設けられている。この様なピストンブーツは、前記シリンダ部に対する前記ピストンの変位を許容しつつ、前記ピストンと前記シリンダ部との嵌装部に異物が浸入する事を防止する為のものである。
前記ピストンシールは、前記シリンダ部の内周面のうち、前記ピストンブーツが設けられた位置より前記ロータと反対側となる部分に、全周に亙り形成された係止凹溝に係止されている。この状態で、前記ピストンシールの内周面は、前記ピストンの外周面に弾性的に当接している。
この様な本発明のディスクブレーキ装置は、前記シリンダ部の内部から前記ピストンを前記ロータに向けて押し出す事により、前記一方のパッドを前記ロータの側面に押し付ける事により制動を行う。
【0017】
特に、本発明のディスクブレーキ装置は、前記ピストンを前記シリンダ部の内側の奥部まで嵌装した初期状態で、前記ピストンの外周面のうち、前記ピストンシールの内周面と当接したシール当接部の前記ロータと反対側に隣接した位置に、前記シール当接部と同じ外径を有し、少なくとも前記パッド及びロータのそれぞれの許容摩耗量の和以上の軸方向寸法を有する予備円筒面部が形成されている。
又、前記ピストンの外周面のうち、前記予備円筒面部の前記ロータと反対側に隣接した位置に、前記予備円筒面部より、前記ピストンの径方向に関して内側に凹んでおり、軸方向寸法が、前記ピストンシールの軸方向寸法よりも大きい連通部が形成されている。
【0018】
上述の様な本発明のディスクブレーキ装置を実施する場合には、追加的に、請求項2に記載した発明の様に、前記連通部を、前記ピストンの外周面のうち、前記予備円筒面部の反ロータ側に隣接した位置から、反ロータ側端縁に掛けての部分に、全周に亙り形成された連通用小径部により構成する事ができる。この様な連通用小径部としては、例えば、外径寸法が、予備円筒部の外径寸法よりも小さい筒部を採用する事ができる。
【0019】
上述の様な本発明のディスクブレーキ装置を実施する場合には、追加的に、請求項3に記載した発明の様に、前記連通部を、前記ピストンの外周面のうち、前記予備円筒面部の反ロータ側に隣接した位置から、反ロータ側端縁に掛けての部分に形成されており、前記ピストンの径方向外方及び反ロータ側端部が開口した少なくとも一本の連通用軸方向凹溝により構成する事ができる。
【0020】
上述の様な本発明のディスクブレーキ装置を実施する場合には、追加的に、請求項4に記載した発明の様に、前記連通部を、前記ピストンの外周面のうち、前記予備円筒面部の反ロータ側に隣接した部分に、前記ピストンの径方向外方のみが開口した状態で形成された、少なくとも一個の連通用凹部により構成する事ができる。
【発明の効果】
【0021】
上述の様に構成する本発明のディスクブレーキ装置によれば、ピストンブーツの組付作業を短い時間で、安定して行う事ができる。
先ず、ピストンブーツの組付作業を短い時間で行える理由は、本発明の場合、前記ピストンブーツを組み付ける作業のうち、
図8(A)に示す状態から
図8(B)に示す状態に変化する工程での、シリンダ部に対するピストンのロータ方向への変位量を小さく抑えられるからである。即ち、前記ピストンブーツを
図8に示した手順で組み付ける為には、
図8(B)に相当する状態で、シリンダ内部空間とブーツ内部空間とが連通している必要がある。本発明の場合、前記ピストンを、連通部のロータ側端縁が、係止凹溝(ピストンシール)のロータ側端縁よりもロータ側に位置し、且つ前記連通部の反ロータ側端縁が、前記係止凹溝(ピストンシール)の反ロータ側端縁よりも反ロータ側に位置する状態まで変位させる事で、前記シリンダ内部空間と前記ブーツ内部空間とを連通させる事ができる。この様に、本発明の場合、前記連通部を設けていない構造と比べて、前記ピストンのロータ側への変位量を少なく抑える事ができる。この結果、前記ピストンブーツの組付作業に要する時間を短縮できる。
又、前記ピストンブーツの組付作業を安定して行える理由は、上述した様に、本発明の場合、前記ピストンをロータ側に変位させて前記シリンダ内部空間と前記ブーツ内部空間とを連通した状態{
図8(B)に相当する状態}で、前記連通部が形成されていない場合と比べて、前記シリンダ部の内側に存在するピストンの軸方向寸法を大きくする事ができるからである。この為、前記ピストンブーツの組付作業の際、前記ピストンが前記シリンダ部から脱落する事の防止を図れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例に就いて、
図1〜2を参照しつつ説明する。尚、本例を含めて、本発明のディスクブレーキ装置の特徴は、ピストンの構造を工夫した点にある。この特徴部分以外の構造は
図7、8を参照して説明した従来構造のディスクブレーキ装置1の構造とほぼ同様である。以下、本例のディスクブレーキ装置の構造に就いて簡単に説明してから、本例のパッド支持構造に就いて説明する。
【0024】
本例のディスクブレーキ装置は、走行している車両を減速乃至停止させる為のサービスブレーキを油圧式に、車両を停車状態に維持する為のパーキングブレーキを電気式に、それぞれ作動させる、フローティングキャリパ型ディスクブレーキ装置である。尚、パーキングブレーキは、機械式に作動するものを採用する事もできる。更に、本発明は、サービスブレーキを電動式に作動させる構造にも適用する事ができる。
【0025】
この様な本例のディスクブレーキ装置は、
図1(D)に示す様に、キャリパ2と、インナパッド3(
図7参照)と、アウタパッド4(
図7参照)と、ピストン5aと、ピストンシール6と、ピストンブーツ7とを備えている。
このうちのキャリパ2は、アウタ側端部にキャリパ爪8を、インナ側半部にシリンダ部9を、それぞれ有している。これらキャリパ爪8とシリンダ部9とは、車輪と共に回転するロータ10(
図7参照)の外周縁よりも径方向外方に存在する(ロータ10を跨ぐ位置に設けた)ブリッジ部11により、それぞれの径方向外端部同士を一体的に結合している。又、前記シリンダ部9は、アウタ側端部寄り部分からアウタ側端縁に掛けての部分に設けられた大径シリンダ部12と、この大径シリンダ部12よりもインナ側に設けられており、この大径シリンダ部12の内径寸法よりも小さい内径寸法を有する小径シリンダ部13とから成る。このうちの小径シリンダ部13の内周面のアウタ側端部寄り部分には、全周に亙りシール係止溝14が形成されている。この様なキャリパ2は、車体に固定されたサポート15(
図7参照)に対して、軸方向の変位を可能に支持されている。
【0026】
前記インナパッド3は、前記ロータ10のインナ側面と対向する状態で、軸方向の変位を可能に支持されている。
前記アウタパッド4は、前記ロータ10のアウタ側面と対向する状態で、軸方向の変位を可能に支持されている。
前記ピストン5aは、底部16と、筒部17aとを有する有底筒状であり、前記底部16がアウタ側に配置された状態で、前記キャリパ2の小径シリンダ部13の内側に油密に嵌装されている。
【0027】
前記ピストンシール6は、ゴム等の弾性部材から成る環状部材であって、前記小径シリンダ部13に形成されたシール係止溝14に全周に亙り係止されている。又、前記ピストンシール6の内周面は、前記ピストン5の筒部17aの外周面と弾性的に当接している。この様なピストンシール6は、前記ピストン5aの軸方向の変位を可能としつつ、前記小径シリンダ部13の内部の気密性を確保する為に設けられている。又、前記ピストンシール6は、制動時に、前記ピストン5aのアウタ側への変位に伴って弾性変形し、この弾性変形に伴って生じる弾性力により、制動解除時に、前記ピストン5をインナ側に引き戻す様に作用する。
【0028】
前記ピストンブーツ7は、ゴム等の弾性部材から成る蛇腹状部材であって、このピストンブーツ7の径方向外端部に形成された外側リップ18と、同じく径方向内端部に形成された内側リップ19と、同じく径方向中間部に形成された蛇腹部20とを有している。この様なピストンブーツ7は、前記外側リップ18を、前記シリンダ部9を構成する大径シリンダ部12のインナ側端部に形成されたシリンダ側係止面21に内嵌すると共に、前記内側リップ19を、前記ピストン5aを構成する筒部17aの外周面のアウタ側端部に形成されたピストン側係止面22に外嵌した状態で組み付けられている。この様なピストンブーツ7は、前記ピストン5aの外周面と、前記小径シリンダ部13の内周面との間に異物が侵入するのを防止する為のものである。
【0029】
特に、本例のディスクブレーキ装置の場合、前記ピストン5aを構成する筒部17aを、大径円筒部26と、小径円筒部27とにより構成している。
このうちの大径円筒部26は、前記筒部17aのうち、軸方向中間部からアウタ側端部に掛けての部分(筒部17aのアウタ側の約2/3に相当する部分)に形成されている。この様な大径円筒部26の外周面は、軸方向の全長に亙り外径寸法が変化しない円筒面状に形成されている。又、前記大径円筒部26の外周面のうち、前記ピストン5aを前記小径シリンダ部13の内側の奥部まで嵌装した初期状態{
図1(A)及び(D)に示す状態}で、前記大径円筒部26の外周面のうち、前記ピストンシール6の内周面と当接したシール当接部25のインナ側(反ロータ側)に隣接した位置には、前記シール当接部25と同じ外径を有し、前記インナ、アウタ両パッド3、4及び前記ロータ10のそれぞれの許容摩耗量の和以上の軸方向寸法を有する予備円筒面部29{
図1(A)に斜格子で示す部分の外周面}が設けられている。尚、前記インナ、アウタ両パッド3、4の許容摩耗量とは、使用時に許容する前記インナ、アウタパッド3、4を構成するライニング28、28(
図7参照)の摩耗量である。この様なインナ、アウタ両パッド3、4の許容摩耗量及び前記ロータ10の許容摩耗量は、それぞれ設計的に決められるものである。
【0030】
前記小径円筒部27は、特許請求の範囲に記載した連通部及び連通用小径部に相当する部分であり、前記筒部17aのうち、インナ側端部寄り部分からインナ側端縁に掛けての部分(筒部17aのインナ側の約1/3に相当する部分)に形成されている。この様な小径円筒部27の外径寸法D
27は、軸方向の全長に亙り前記大径円筒部26の外径寸法D
26よりも小さい(D
27<D
26)。本例の場合、前記小径円筒部27の外径寸法D
27は、インナ側端縁に形成した面取り部及びアウタ側端部に設けられた前記大径円筒部26との連続部を除いて、軸方向の全長に亙り変化しない。但し、この小径円筒部27の外径寸法D
27は、前記大径円筒部26の外径寸法D
26よりも小さい範囲で、変化させる(例えば、テーパ状にする)事も可能である。又、本例の場合、前記小径円筒部27の軸方向寸法L
27は、前記ピストンシール6の軸方向寸法L
6よりも大きい(L
27>L
6)。
【0031】
尚、本例のディスクブレーキ装置の場合、前記ピストン5aの内側に電動式のパーキングブレーキ装置を構成する、スクリュ35とナット36とを設けている。
このうちのスクリュ35は、外周面の軸方向中間部にフランジ部37が形成されている。又、このスクリュ35の外周面の軸方向中間部からアウタ側端部に掛けての部分には、雄ねじ部38が形成されている。この様な構成を有する前記スクリュ35は、インナ側端部を前記小径シリンダ部13の奥部に形成された貫通孔39に挿入した状態で、前記キャリパ2に対する回転を可能な状態に支持されている。そして、前記スクリュ35は、このスクリュ35のインナ側端部に連結された減速機(図示省略)を介して、電動モータ(図示省略)により回転駆動される。
【0032】
又、前記ナット36は、筒状部材であり、インナ側から順に、円筒部40と、多角形筒部41と、球面部42とを有している。このうちの円筒部40は、前記ナット36の軸方向中間部からインナ側端部に掛けての部分に設けられている。又、前記多角形筒部41は、外周面が略四角形状であり、前記ナット36のうち、前記円筒部40のアウタ側に隣接した位置から、インナ側端部寄り部分に掛けての部分に設けられている。又、前記球面部42は、前記ナット36のうち、前記多角形筒部41のアウタ側に隣接した位置からアウタ側端部に掛けての部分に形成されている。この様な球面部42の外周面は、球面状に形成されている。又、前記ナット36の内周面のうち、軸方向中間部からインナ側端部に掛けての部分には、雌ねじ部43が形成されている。この様な構成を有するナット36は、この雌ねじ部43を、前記スクリュ35の雄ねじ部38に螺合した状態で設けられている。
【0033】
又、前記ナット36は、前記多角形筒部41の外周面と、前記ピストン5aの内周面との係合(嵌合)により、このピストン5aに対する回り止めを図られている。別の言い方をすれば、前記ナット36は、前記多角形筒部41の外周面と、前記ピストン5aの内周面との係合(嵌合)により、前記ピストン5aと一体的な回転が可能である。この為に、本例の場合、前記ピストン5aの内周面は、前記多角形筒部41と嵌合可能な多角形状(本例の場合、四角形状)に形成されている。
尚、前記ピストン5aは、前記底部16のアウタ側面に形成されたピストン側凹部44と、前記インナパッド3を構成する裏板45のインナ側面に形成されたパッド側凸部46との係合により、前記インナパッド3に対する回り止めを図られている。
【0034】
この様な構成を有する電動式パーキングブレーキ装置を作動させる場合には、運転手によるスイッチ等の操作に基づき、前記電動モータに制御電流を供給してこの電動モータの出力軸を回転させる。すると、この電動モータの出力軸の回転により、前記減速機を介して前記スクリュ35が回転駆動されて、上述の様に前記ピストン5aに対して回り止めされた前記ナット36は、このナット36の雌ねじ部43と、前記スクリュ35の雄ねじ部38との螺合に基づいてアウタ側に変位する。そして、前記球面部42の外周面が、前記ピストン5aの底部16のインナ側面のうち、このピストン5aの径方向外端寄り部分に形成された球面状凹面47に当接して(押圧して)、前記ピストン5aをアウタ側に変位させる。この結果、前記ピストン5aが、前記インナパッド3を前記ロータ10のインナ側面に押し付ける。一方、この様な押し付けの反作用として、前記キャリパ2がインナ側に変位し、前記キャリパ2のアウタ側端部に設けたキャリパ爪8が、前記アウタパッド4を前記ロータ10のアウタ側面に向けて押し付ける。この様にして、前記ロータ10が前記インナパッド3と前記アウタパッド4とにより軸方向両側から強く挟持されて、制動が行われる。
【0035】
以下、本例のディスクブレーキ装置に前記ピストンブーツ7を組み込む手順に就いて説明する。
本例のディスクブレーキ装置1に前記ピストンブーツ7を組み込む手順は、先ず、予め前記ピストン5aの内側に前記ナット36と前記スクリュ35とを組み込み、該ピストン5aの前記小径円筒部27のインナ側端面とインナ側端部内周面との連続部に形成された面取り部49と、前記スクリュ35のフランジ部37のアウタ側側面と外周面との連続部に形成された凸球面状の凸球面部50とを当接させる事により、前記ピストン5aと前記スクリュ35とのセンタリングを図る。
次いで、前述した従来構造と同様に、
図1(A)に示す様に、前記ピストン5aを前記小径シリンダ部13の最奥部まで押し込んだ状態で、図示しない組立用治具により、前記ピストンブーツ7の外側リップ18を、前記シリンダ部9を構成する大径シリンダ部12に形成されたシリンダ側係止面21に内嵌する。この状態で、前記ピストンブーツ7の蛇腹部20は伸張しており、内側リップ19のインナ側端面は、前記ピストン5aの底部16のアウタ側面のうち、前記ピストン5aの径方向に関して外端部に当接している。
【0036】
次いで、
図1(A)に示す状態から、
図1(B)に示す様に、前記ピストン5aを、前記ピストン5aの小径円筒部27のアウタ側端縁(大径円筒部26のインナ側端縁)が、前記ピストンシール6(シール係止溝14)よりもアウタ側に位置するまで変位させる。この状態で、前記ピストンブーツ7の内側リップ19を、前記ピストン5aの外周面のアウタ側端部に当接させている。尚、
図1(B)に示す位置まで、前記ピストン5aを変位させる作業は、前記シリンダ部9のシリンダ内部空間23にブレーキ液を供給する為のインレットに空気給排手段(図示省略)を接続した状態で、前記空気給排手段により前記シリンダ内部空間23に圧縮空気を送り込む事により行う。即ち、前記ピストン5aは、前記圧縮空気により前記小径シリンダ部13からアウタ側に押し出される様にして変位する。
【0037】
本例の場合、前記ピストン5aの小径円筒部27のアウタ側端縁が、前記ピストンシール6(シール係止溝14)のアウタ側端縁よりもインナ側に位置している状態では、前記シリンダ内部空間23と、前記ピストンブーツ7の内周面と前記ピストン5aの軸方向中間部外周面との間に存在するブーツ内部空間24とは、前記ピストンシール6により隔離されている(連通していない)。一方、前記ピストン5aの小径円筒部27のアウタ側端縁が、前記ピストンシール6(シール係止溝14)のアウタ側端縁よりもアウタ側に位置している状態{
図1(B)に示す状態}では、前記シリンダ内部空間23と前記ブーツ内部空間24とが、前記小径円筒部27の外周面と前記ピストンシール6の内周面との間に存在する連通空間30を介して連通している。この為、前記空気給排手段により前記シリンダ内部空間23に供給された圧縮空気は、前記ブーツ内部空間24にも流れ込む。この状態では、前記シリンダ内部空間23及び前記ブーツ内部空間24の圧力値が所定の圧力値以上になっており、所定時間経過後に前記シリンダ内部空間23及び前記ブーツ内部空間24の圧力値を計測する事により、前記ピストンブーツ7の気密性に異常があるか否かを判断する異常検査を行う事ができる。
【0038】
次いで、前記ピストン5aを図示しない組立治具により軸方向の変位を規制した状態で、前記空気給排手段により、前記シリンダ内部空間23の空気を少なくとも前記シリンダ内部空間23内の圧力が大気圧未満となるまで吸引する。この状態では、前記ピストン5aの軸方向の変位が規制されている為、前記シリンダ内部空間23と前記ブーツ内部空間24とは連通したままである。この為、前記ブーツ内部空間24の圧力も大気圧未満となり、前記ピストンブーツ7の蛇腹部20が収縮して、前記ピストンブーツ7の径方向内端縁が、前記ピストン5aの外周面を沿う様にインナ側に移動して、
図1(C)に示す状態となる。この様に
図1(C)に示す状態となった時点で、前記空気給排手段の吸引を停止する。
【0039】
最後に、
図1(C)に示す状態から、前記組立治具により、前記ピストン5aをインナ側に変位させて、前記小径シリンダ部13の内側に押し込む。この様にピストン5aをインナ側に変位させると、前記ピストンブーツ7の径方向内端縁の軸方向に関する位置が、前記ピストン5aのピストン側係止面22の軸方向に関する位置と整合した状態で、前記ピストンブーツ7の内側リップ19が、前記ピストン側係止面22に係合して、
図1(D)に示す状態となる。この様に
図1(D)に示す状態で、前記ピストンブーツ7の組み付け作業は終了する。
【0040】
以上の様な構成を有する本例のディスクブレーキ装置によれば、前記ピストンブーツ7の組付作業を短い時間で、安定して行う事ができる。
即ち、本例の場合、
図1(A)に示す状態から、
図1(B)に示す状態に変化する際、前記ピストン5aのアウタ側への変位量(引き出し量)が、前述した従来構造の様に、前記小径円筒部27が形成されていない場合と比べて小さくて済む。この為、前記ピストンブーツ7の組付作業に要する時間を短縮する事ができる。
又、本例の場合、
図1(B)に示す状態で、前記ピストン5aのうち、前記小径シリンダ部13の内側に存在する部分の軸方向寸法が、前述した従来構造の場合と比べて大きい。この為、
図1(B)に示す状態で、前記ピストン5aが前記小径シリンダ部13から脱落する事の防止を図れる。この結果、前記ピストンブーツ7の組付作業を安定して行う事ができる。
【0041】
又、本例の場合、前記大径円筒部26の外周面に前記予備円筒面部29を設けている。この為、使用を続けるうちに、前記インナ、アウタ両パッド3、4を構成するライニング28、28、及び前記ロータ10の摩耗が進み、前記ピストン5aの軸方向に関する位置が、初期状態の位置よりもアウタ側(ロータ10側)に変位したとしても、前記ピストン5aの小径円筒部27のアウタ側端縁が、前記ピストンシール6(シール係止溝14)のアウタ側端縁よりもアウタ側に位置して、前記シリンダ内部空間23と前記ブーツ内部空間24とが連通される様な事はない。尚、予備円筒面部29の軸方向寸法は、使用時に許容する前記インナ、アウタパッド3、4を構成するライニング28、28の摩耗量及びロータ10の摩耗量だけでなく、例えば、制動時の通常のストローク量以外に、前記ピストン5aをアウタ側(ロータ側)に変位させる要因がある場合には、この要因に基づく前記ピストン5aの変位量も考慮して決定する。別の言い方をすれば、前記予備円筒面部29の軸方向寸法は、使用時に、前記ピストン5aが、アウタ側(ロータ10側)に変位した場合に、前記シリンダ内部空間23と前記ブーツ内部空間24とが連通される事がない様に決定する必要がある。
【0042】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例に就いて、
図3を参照しつつ説明する。本例のディスクブレーキ装置は、前述した実施の形態の第1例と同様に、ピストン5bを構成する筒部17bのうち、前記ピストン5bを小径シリンダ部13(
図1参照)の内側の奥部まで嵌装した初期状態{
図1(A)及び(D)に示す状態}で、前記筒部17bの外周面のうち、ピストンシール6(
図1参照)の内周面と当接したシール当接部25のインナ側(反ロータ側)に隣接した位置に、前記シール当接部25と同じ外径を有し、インナ、アウタ両パッド3、4及びロータ10(
図7参照)のそれぞれの許容摩耗量の和以上の軸方向寸法を有する予備円筒面部29(
図1に斜格子で示す部分に相当する部分の外周面)が設けられている。
【0043】
又、
図3(A)に示す様に、前記ピストン5bを構成する筒部17bの外周面のうち、前記予備円筒面部29よりもインナ側部分(筒部17bのインナ側の約1/3に相当する部分)の円周方向複数箇所に、軸方向に長い連通用軸方向凹溝32、32が形成されている。前記各連通用軸方向凹溝32、32の前記ピストン5bの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状は、前記ピストン5bの周方向に関して中央側に向かうほど前記ピストン5bの径方向に関する内側に向かう凹曲線状である。この様な各連通用軸方向凹溝32、32は、前記ピストン5bの径方向に関して外側、及びインナ側端部のみが開口した状態で形成されている。尚、前記各連通用軸方向凹溝32、32同士の前記ピストン5bの円周方向に関する間部分には、前記予備円筒面部29と同じ外径寸法を有する部分円筒面部31、31が形成されている。又、本例の場合、前記各連通用軸方向凹溝32、32の軸方向寸法L
32は、前記ピストンシール6の軸方向寸法L
6(
図1参照)よりも大きい(L
32>L
6)。
【0044】
以上の様な構成を有する本例の場合、
図1(B)に相当する状態で、前記小径シリンダ部13の内周面のうち、シール係止溝14のインナ側に隣接した部分に、前記ピストン5bを構成する各部分円筒面部31、31が内嵌されている。この為、
図1(B)に示す状態で、前記ピストン5bが前記小径シリンダ部13の内側でがたつく事を防止しつつ、前記ピストン5bの脱落をより効果的に防止できる。尚、本例を実施する場合には、連通用軸方向凹溝は、少なくとも1個形成すれば良い。又、連通用軸方向凹溝の形状は、各種形状を採用する事ができる。具体的には、例えば、
図3(B)に示す様に、ピストン5eを構成する筒部17bの外周面のうち、前記予備円筒面部29よりもインナ側部分の円周方向複数箇所に、
図3(A)に示す前記各連通用軸方向凹溝32、32よりも軸方向寸法L
32aが小さい(L
32a<L
32)連通用軸方向凹溝32a、32aを形成する事もできる。即ち、前記各連通用軸方向凹溝32a、32aは、前記ピストン5eの径方向に関して外側のみが開口した状態で形成されている。この様な各連通用軸方向凹溝32a、32aも、前記
各連通用軸方向凹溝32a、32aの前記ピストン5eの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状が、前記ピストン5eの周方向に関して中央側に向かうほど前記ピストン5eの径方向に関する内側に向かう凹曲線状である。
その他の構造及び作用・効果は、前述した実施の形態の第1例と同様である。
【0045】
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例に就いて、
図4、5を参照しつつ説明する。本例のディスクブレーキ装置は、前述した実施の形態の第1例及び第2例と同様に、ピストン5cを構成する筒部17cのうち、前記ピストン5cを小径シリンダ部13の内側の奥部まで嵌装した初期状態{
図4(A)及び(D)に示す状態}で、前記筒部17cの外周面のうち、ピストンシール6の内周面と当接したシール当接部25のインナ側(反ロータ側)に隣接した位置に、前記シール当接部25と同じ外径を有し、前記インナ、アウタ両パッド3、4及び前記ロータ10(
図7参照)のそれぞれの許容摩耗量の和以上の軸方向寸法を有する予備円筒面部29{
図4(A)に斜格子で示す部分の外周面}が設けられている。
【0046】
又、前記ピストン5cを構成する筒部17cの外周面のうち、前記予備円筒面部29よりもインナ側部分の円周方向複数箇所に、前記ピストン5cの径方向に関して外側から見た形状が円形の連通用凹部33、33が形成されている。尚、前記各連通用凹部33、33同士の前記ピストン5cの円周方向に関する間部分には、前記予備円筒面部29と同じ外径寸法を有する部分円筒面部31a、31aが形成されている。又、筒部17cの外周面のうち、前記各連通用凹部33、33よりもインナ側部分には、前記予備円筒面部29と同じ外径寸法を有するインナ側円筒面部34が設けられている。又、本例の場合、前記各連通用凹部33、33の軸方向寸法L
33は、前記ピストンシール6の軸方向寸法L
6(
図4参照)よりも大きい(L
33>L
6)。
【0047】
この様な本例のディスクブレーキ装置の場合、
図4(B)に示す状態で、前記ピストン5cの外周面に形成された前記各連通用凹部33、33のアウタ側端縁が、ピストンシール6(シール係止溝14)よりもアウタ側に位置している。一方、前記各連通用凹部33、33のインナ側端縁は、前記ピストンシール6(シール係止溝14)よりもインナ側に位置している。この様にして、シリンダ内部空間23とブーツ内部空間24とを、前記各連通用凹部33、33と前記ピストンシール6の内周面との間に存在する連通空間30aを介して連通している。
【0048】
以上の様な構成を有する本例の場合、
図4(B)に示す状態で、前記小径シリンダ部13の内周面に、前記ピストン5cを構成する各部分円筒面部31a、31a及びインナ側円筒面部34が内嵌されている。この為、
図4(B)に示す状態で、前記ピストン5cが前記小径シリンダ部13の内側でがたつく事をより効果的に防止できる。又、
図4(B)に示す状態で、前記ピストン5cが前記小径シリンダ部13から脱落する事も、より効果的に防止できる。尚、本例を実施する場合には、連通用凹部は、少なくとも1個形成すれば良い。又、連通用凹部の形状に関しては、各種形状を採用する事ができる。その他の構造及び作用・効果は、前述した実施の形態の第1例と同様である。
【0049】
[実施の形態の第4例]
本発明の実施の形態の第4例に就いて、
図6を参照しつつ説明する。本例のディスクブレーキ装置の場合、ピストン5dを構成する筒部17cの外周面のうち、予備円筒面部29よりもインナ側部分の円周方向複数箇所に、前記ピストン5dの径方向に関して外側から見た形状が円形で、前記筒部17cを径方向に貫通した連通用貫通孔48、48が形成されている。
又、本例の場合、前記各連通用貫通孔48、48の軸方向寸法L
48は、ピストンシール6の軸方向寸法L
6(
図4参照)よりも小さい(L
48<L
6)。
【0050】
以上の様な構成を有する本例の場合、組み立て工程に於ける
図4(B)に相当する状態で、前記各連通用貫通孔48、48のアウタ側端縁が、前記ピストンシール6(シール係止溝14)よりもアウタ側に位置した時点で、シリンダ内部空間23とブーツ内部空間24とを、前記各連通用貫通孔48、48の内側に存在する連通空間30bを介して連通する事ができる。尚、前記各連通用貫通孔48、48の軸方向寸法L
48を、ピストンシール6の軸方向寸法L
6よりも大きくする事もできる。その他の構造及び作用・効果は、前述した実施の形態の第1例と同様である。