特許第6580947号(P6580947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6580947
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】地盤改良工法及び地盤改良装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   E02D3/12 101
   E02D3/12 102
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-216862(P2015-216862)
(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-89136(P2017-89136A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】591141429
【氏名又は名称】金子 裕治
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100121474
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕治
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−306846(JP,A)
【文献】 特開2012−122272(JP,A)
【文献】 特開2003−286716(JP,A)
【文献】 特開平02−197612(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0079883(KR,A)
【文献】 特開2012−007329(JP,A)
【文献】 特開2012−167497(JP,A)
【文献】 米国特許第05006017(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケーシングを地表から目標深さまで挿入して先行削孔する工程と、
該先行削孔後、該先行削孔内に、長手方向の一定範囲にわたって一面を切り欠いた切欠部を有する第2のケーシングを改良予定範囲より深く挿入する工程と、
先端部に噴射ノズルを備えた噴射ロッドを前記第2のケーシング内に挿入する工程と、を備え、
前記噴射ノズルを前記切欠部に対向する位置に配置するとともに、前記噴射ロッドを旋回させることにより該噴射ロッドの旋回と一体的に前記第2のケーシングを旋回させ、
前記切欠部を通して前記噴射ノズルから噴射材を外方に噴射させつつ前記噴射ロッドを引き上げることにより周囲の地盤を改良する一方、前記第2のケーシングを定位置で旋回させながら留め置くようにしたことを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
請求項1に記載の地盤改良工法において、
前記噴射ロッドの外面には平坦部が形成されているとともに前記第2のケーシングの内面には前記平坦部に対応する平坦部が形成されており、両平坦部が合致する位置にくるように前記噴射ロッドを前記第2のケーシング内に挿入配置することにより前記第2のケーシングが前記噴射ロッドの旋回と一体的に旋回するようになっていることを特徴とする地盤改良工法。
【請求項3】
長手方向の一定範囲にわたって一面を切り欠いた切欠部を有し、改良予定範囲よりも地中深く挿入されるケーシングと、
該ケーシング内に挿入されるとともに、先端部に設けられた噴射ノズルが前記切欠部に対向する位置に配置される噴射ロッドと、を備え、
前記噴射ロッドを旋回させることにより該噴射ロッドの旋回と一体的に前記ケーシングが旋回するように構成されており、
前記切欠部を通して前記噴射ノズルから噴射材を外方に噴射させつつ前記噴射ロッドを引き上げることにより周囲の地盤を改良する一方、前記ケーシングは定位置で旋回させながら留め置くように構成されていることを特徴とする地盤改良装置。
【請求項4】
請求項3に記載の地盤改良装置において、
前記噴射ロッドの外面には平坦部が形成されているとともに前記ケーシングの内面には前記平坦部に対応する平坦部が形成されており、両平坦部が合致する位置にくるように前記噴射ロッドを前記ケーシング内に挿入配置することにより前記ケーシングが前記噴射ロッドの旋回と一体的に旋回するようになっていることを特徴とする地盤改良装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射ロッドの先端部から硬化材や圧縮空気等の噴射材を噴射して周囲の地盤を改良する地盤改良工法及び地盤改良装置に関し、詳しくは、噴射反力を受け止めて適正な改良範囲を確保することができる地盤改良工法及び地盤改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工法として、噴射ロッドの先端部から硬化材や圧縮空気等の噴射材を噴射して周囲の地盤を改良する地盤改良工法が知られている。具体的には、噴射ロッドの先端部に設けられた硬化材噴射ノズル及び圧縮空気噴射ノズルからそれぞれ硬化材及び圧縮空気を噴射する一方、該噴射ロッドを旋回させつつ引き上げることにより、目的とする周囲の地盤を改良するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−306846号公報
【特許文献2】特許第5061079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、硬化材及び圧縮空気を片側噴射させる場合には噴射力の反作用(つまり噴射反力)で噴射ロッドが撓んで噴射材が斜め下方へ噴射し、飛距離が低下して切削半径が小さくなるという問題があった。この結果、改良予定範囲と実際に改良される範囲とが齟齬し、所期の改良範囲を確保できないという問題があった。
かかる問題は、噴射圧の増大に伴い特に大きな問題となる。
【0005】
上記問題を解決するために、本出願人は、過去に特許文献1に記載の地盤改良工法及び地盤改良装置を提案した。
【0006】
本発明は、特許文献1に記載の方法及び装置とは全く別の方法及び装置により、上記の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る地盤改良工法は、
第1のケーシングを地表から目標深さまで挿入して先行削孔する工程と、
該先行削孔後、該先行削孔内に、長手方向の一定範囲にわたって一面を切り欠いた切欠部を有する第2のケーシングを改良予定範囲より深く挿入する工程と、
先端部に噴射ノズルを備えた噴射ロッドを前記第2のケーシング内に挿入する工程と、を備え、
前記噴射ノズルを前記切欠部に対向する位置に配置するとともに、前記噴射ロッドを旋回させることにより該噴射ロッドの旋回と一体的に前記第2のケーシングを旋回させ、
前記切欠部を通して前記噴射ノズルから噴射材を外方に噴射させつつ前記噴射ロッドを引き上げることにより周囲の地盤を改良する一方、前記第2のケーシングを定位置で旋回させながら留め置くようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、その好適な実施態様の一つとして、前記噴射ロッドの外面には平坦部が形成されているとともに前記第2のケーシングの内面には前記平坦部に対応する平坦部が形成されており、両平坦部が合致する位置にくるように前記噴射ロッドを前記第2のケーシング内に挿入配置することにより前記第2のケーシングが前記噴射ロッドの旋回と一体的に旋回するように構成することができる。
【0009】
また、本発明に係る地盤改良装置は、
長手方向の一定範囲にわたって一面を切り欠いた切欠部を有し、改良予定範囲よりも地中深く挿入されるケーシングと、
該ケーシング内に挿入されるとともに、先端部に設けられた噴射ノズルが前記切欠部に対向する位置に配置される噴射ロッドと、を備え、
前記噴射ロッドを旋回させることにより該噴射ロッドの旋回と一体的に前記ケーシングが旋回するように構成されており、
前記切欠部を通して前記噴射ノズルから噴射材を外方に噴射させつつ前記噴射ロッドを引き上げることにより周囲の地盤を改良する一方、前記ケーシングは定位置で旋回させながら留め置くように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、その好適な実施態様の一つとして、前記噴射ロッドの外面には平坦部が形成されているとともに前記ケーシングの内面には前記平坦部に対応する平坦部が形成されており、両平坦部が合致する位置にくるように前記噴射ロッドを前記ケーシング内に挿入配置することにより前記ケーシングが前記噴射ロッドの旋回と一体的に旋回するように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2のケーシング(請求項3又は4に記載の発明についてはケーシング。以下、この項において同じ)を改良予定範囲よりも地中深く挿入するとともに、噴射ノズルから噴射材を切欠部を通して外方に噴射させつつ噴射ロッドを引き上げることにより周囲の地盤を改良する一方、第2のケーシングを定位置で旋回させつつ留め置くようにしているので、第2のケーシングは先端部が改良予定範囲よりも地中深く挿入された状態で支持されることになる。この結果、第2のケーシングで噴射反力を受け止めることができるので、噴射ロッドの撓みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)は本発明の実施形態に係る地盤改良工法における先行削孔工程図、(B)は同実施形態における反力ケーシングの建て込み工程図。
図2】(A)は上記実施形態における噴射ロッドの建て込み工程図、(B)は同実施形態におけるテスト噴射工程図。
図3】(A)は上記実施形態における噴射ロッドの引き上げ工程の開始時の状態図、(B)は同引き上げ工程の途中段階の状態図。
図4】上記実施形態における地盤改良が完了した状態の図。
図5】(A)は上記実施形態で使用される反力ケーシングの縦断面図、(B)はそのI−I線矢視断面図。
図6】(A)は上記反力ケーシングの先端部に取り付けられる先端支持部の縦断面図、(B)はそのII−II線矢視断面図。
図7】反力ケーシング内に噴射ロッドを挿入した状態の横断面図。
図8】反力ケーシングの基端部をボーリングマシンの基台に設けられた軸受に固定するための固定部材の側面図。
図9】反力ケーシングの基端部をボーリングマシンの基台に取り付けた状態の要部拡大縦断面図
図10】変形例1に係る反力ケーシングの縦断面図。
図11】変形例2に係る反力ケーシングの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1〜4は、本発明の実施形態に係る地盤改良工法を工程順に説明した図である。以下、かかる工程順に説明する。
【0015】
《1》掘削ケーシングによる先行削孔工程
図1(A)に示すように、地上にボーリングマシンMを設置し、掘削ケーシング(第1のケーシング)1により目標深さまで先行削孔を行う。具体的には、掘削ケーシングの上部に設けられたスイベル11の入口11aから水又はベントナイト泥水を供給し、メタルクラウン12を装着した掘削ケーシング1の下端部から前記水又はベントナイト泥水を吐出させ、掘削ケーシング1を旋回させながら下降させてメタルクラウン12で削孔することにより掘削ケーシング1を地中の所定の深さまで挿入する。その際、本実施形態では、改良予定範囲よりも深い位置まで予め削孔するようにしている。
【0016】
《2》反力ケーシングの建て込み工程
次に、図1(B)に示すように、上記のようにして形成された先行削孔H内に、噴射反力を受け止めるためのケーシング2(第2のケーシング。以下、「反力ケーシング」という)を挿入する。反力ケーシング2の具体的な構成は以下のとおりである。
【0017】
反力ケーシング2は、図5に示すように、長手方向にわたって一面を切り欠いた切欠部21を有する断面視C字形状の円筒状部材で構成されている。本実施形態では、切欠部21は、反力ケーシング2の長手方向の上端部から下端部にわたって設けられているが(但し、後述する先端支持部24には設けられていない)、必ずしも反力ケーシング2の長手方向のすべてにわたって切欠部21を設ける必要はない。
【0018】
反力ケーシング2の内部は中空になっており、その内壁の対向する2箇所には、平坦部22aが形成されている。具体的には、一面が平坦面22aに形成され、他面が断面視で円弧状曲面22bに形成された長尺状部材22が反力ケーシング2の内壁に取り付けられており、これにより、反力ケーシング2の内面の対向する2箇所に平坦部22aが形成されるようにしている。この長尺状部材22は、反力ケーシング2とは別体に構成されており、六角ボルト等の固定手段23により反力ケーシング2の内壁に固定されている。本実施形態では、この長尺状部材22は、反力ケーシング2の長手方向にわたって設けられており(但し、後述する先端支持部24には設けられていない)、したがって、平坦面22aも長手方向にわたって形成されているが、必ずしも反力ケーシング2の長手方向のすべてにわたって平坦部22aを形成する必要はない。
【0019】
本実施形態では、反力ケーシング2の内壁に上記のように構成された長尺状部材22を取り付けることにより、後述するとおり、反力ケーシング2の内面が噴射ロッド5の外形と適合ないし合致する形状となるようにされている。そして、噴射ロッド5が回転したときに、この長尺状部材22の平坦部22aで噴射ロッド5の外壁(具体的には噴射ロッド5の外壁の対応する平坦部53)を受け止めることにより噴射ロッド5の回転と一体的に反力ケーシング2が回転するようになっている(図7参照)。この意味で、上記長尺状部材22は、噴射ロッド5の外壁を受け止める受け止め部材(回転伝達部材)として機能することになる。
【0020】
反力ケーシング2の先端部には、改良予定範囲よりも地中深くに挿入されて該反力ケーシング2を先端部において支持する先端支持部24が設けられている。この先端支持部24は、図6に示すとおり、円筒状部材で構成されており、反力ケーシング2の先端部(下端部)に装着されるようになっている。後述するように、この先端支持部24が改良予定範囲よりも下方の地中に挿入されることにより噴射反力を先端部において支持することになる。なお、本実施形態では、この先端支持部24には、前述した切欠部21や長尺状部材22は設けられていないが、これらを先端支持部24に設けてもよいことはもちろんである。
【0021】
他方、反力ケーシング2の基端部(図上で上側ないしボーリングマシン側の部位)は、前記先行削孔H内に反力ケーシング2を挿入後、ボーリングマシンMの基台3に固定されるようになっている。具体的には、ボーリングマシンMの基台3には、予め軸受4(例えばスラスト軸受)が設けられており、この軸受4の内部を挿通して反力ケーシング2を前記先行削孔H内に挿入した後、図8に示すような固定部材25を軸受4の内面(例えば、スラスト軸受の場合であれば、ハウジング軌道盤と軸軌道盤のうちの軸軌道盤の内面)と反力ケーシング2との間に嵌合することにより、反力ケーシング2と軸受4(軸軌道盤)とを一体化させる(図9参照)。これにより、反力ケーシング2を回転自在に支持しつつ、該反力ケーシング2を上下方向に固定することができる。
以上のようにして、反力ケーシング2を先行削孔H内に挿入した後、ボーリングマシンMに固定し、反力ケーシング2の建て込みが完了する。
【0022】
《3》噴射ロッドの建て込み工程
反力ケーシング2を建て込んだ後、該反力ケーシング2内に噴射ロッド5を挿入する。本実施形態では、噴射ロッド5は二重管ロッドからなり、図2(B)並びに図3(A)及び(B)に示すように、その上端部には硬化材入口51a及び圧縮空気入口51bを有するスイベル51が設けられており、下端部には硬化材噴射ノズル52a及び圧縮空気噴射ノズル52bが設けられている。硬化材噴射ノズル52a及び圧縮空気噴射ノズル52bは、それぞれスイベル51の硬化材入口51a及び圧縮空気入口51bと連通している。本実施形態では、硬化材噴射ノズル52aの周囲を囲繞するように圧縮空気噴射ノズル52bの開口部が形成されている(図2(A)及び図7参照)。
【0023】
噴射ロッド5の外形は、図7に示すとおり、断面視多角形状(本実施形態では、略六角形状)に長手方向に一様に形成されており、反力ケーシング2内に挿入したときに、そのうちの対向する2つの平坦部53が反力ケーシング2の内面に設けられた長尺状部材22の平坦部22aと向かい合うようになっている。これにより、後述するように、噴射ロッド5を回転させたときに、噴射ロッド5の外面を反力ケーシング2の内面で受け止めることができ、噴射ロッド5の回転が反力ケーシング2に伝達されて両者を一体的に回転させることができるようになっている。
【0024】
噴射ロッド5を反力ケーシング2内に挿入する際に重要な点は、硬化材噴射ノズル52a及び圧縮空気噴射ノズル52bを切欠部21に対向する位置に配置することである(図2(A)及び図7参照)。これにより、噴射ロッド5を反力ケーシング2と一体的に回転させても、切欠部21を通して硬化材及び圧縮空気を径方向外方に向けて噴射させることができる。
【0025】
噴射ロッド5の各噴射ノズル52a・52bは、改良予定範囲の最下点に配置される。したがって、噴射ロッド5の反力ケーシング2内への挿入長さは反力ケーシング2の先行削孔H内への挿入長さよりも短くなっている。
【0026】
《4》テスト噴射工程
上記のように反力ケーシング2及び噴射ロッド5を配置した状態でテスト噴射を開始する(図2(B)参照)。噴射テストに異常がなければ、本格的に造成(地盤改良)を開始する。
【0027】
《5》噴射ロッドの引き上げ工程
地盤改良の具体的な工程は以下のとおりである。まず、スイベル51の硬化材入口51aから硬化材を、圧縮空気入口51bから圧縮空気をそれぞれ供給し、噴射ロッド5の下端部の硬化材噴射ノズル52aから硬化材を、圧縮空気噴射ノズル52bから圧縮空気を、それぞれ切欠部21を通して外方に噴射させる。それとともに、ボーリングマシンMにより噴射ロッド5を回転させつつ引き上げる(図3(A)及び(B)参照)。これにより、周囲の地盤を改良する。切削の結果生じた排泥は、反力ケーシング2と削孔(先行削孔)Hとの間の隙間を通って地表に排出され、図示しない排泥タンクに回収される。なお、噴射ロッド5の引き上げは、連続的又は断続的に行うことができる。断続的に噴射ロッド5を引き上げる場合は、1ステップの引き上げ量(1回の引き上げ量)として2.5〜5.0cmを例示することができる。かかる断続的動作を繰り返すことにより、当初予定した範囲の地盤を改良していくことになる。
【0028】
他方、反力ケーシング2は、噴射ロッド5と一体的に回転するが、上下方向においては略定位置に留まることになる。その理由は、反力ケーシング2は一般にかなり長く(25〜30m程度)、それに相応して重量も重いため、噴射ロッド5を引き上げてもそれに伴連れせず、自重によりその場に留まることになるからである。但し、噴射ロッド5の引き上げに反力ケーシング2が随伴する場合は、軸受4によってそれを受け止めるように構成してもよい。
【0029】
このように、反力ケーシング2は、略定位置に留まることにより、先端部が改良範囲より下方の位置で土中に支持されるとともに、基端部がボーリングマシンMの基台3に支持されることにより、両端支持状態となる。この結果、噴射反力が作用しても先端部が撓むことがない。つまり、噴射反力を両端で支持することができ、硬化材及び圧縮空気を適正な方向に噴射させることができる。
【0030】
《6》造成完了・噴射ロッド及び反力ケーシング引き抜き工程
地盤改良が終了したら、噴射ロッド5及び反力ケーシング2を引き抜く。具体的な作業手順は以下のとおりである。まず、噴射ロッド5を引き抜く。次いで、軸受4の内面と反力ケーシング2との間に嵌合されていた固定部材25を取り外して、反力ケーシング2を上下方向に移動自在な状態にした後、反力ケーシング2を引き抜く。噴射ロッド5及び反力ケーシング2を引き抜いた後に生じた穴は、図4に示すように、排泥等により埋め合わせる。
以上により、一連の地盤改良作業が終了する。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、噴射ノズルの一例として噴射ノズルが硬化材噴射ノズル52a及び圧縮空気噴射ノズル52bからなる場合について説明したが、必ずしも二つのノズルから構成されている必要はなく、単一のノズルでも、また、三つ以上のノズルで構成されていてもよい。さらに、噴射ノズルを硬化材噴射ノズルと圧縮空気噴射ノズルとで構成する場合であっても、必ずしも両者を二重構造のノズル(硬化材噴射ノズルの周囲を囲繞するように圧縮空気噴射ノズルを設けた構造のノズル)で構成する必要はない。さらに、本実施形態では、噴射ロッド5が二重管で構成される場合について説明したが、単管ロッドで構成されていてもよく、また、三重管ロッドで構成されていてもよい。
【0032】
上記実施形態では、噴射ロッドの外形が断面視で略六角形状に形成されていたが、必ずしも六角形状である必要はない。平坦部22a・53を形成する箇所についても、反力ケーシング2及び噴射ロッド5の対応する箇所にそれぞれ平坦部22a・53を形成すればよい。
【0033】
上記実施形態では、反力ケーシング2の内面形状及び噴射ロッド5の外面形状がいずれも長手方向に一様に形成されていたが、必ずしも一様に形成されている必要はなく、噴射ロッド5の回転を反力ケーシング2に伝達できるのであれば、特にその形状や設ける範囲は限定されない。例えば、少なくとも長手方向の中間部や先端部においてのみ反力ケーシング2の内面形状と噴射ロッド5の外面形状とが適合ないし合致するように両者の形状が形成されていてもよい。
【0034】
(変形例1)
図10は、変形例1に係る反力ケーシング6の縦断面図を示している。なお、前記実施形態と同一又は対応する部材には同一の符号を付して説明を省略する。
この変形例1に係る反力ケーシング6は、まず、本体部分が複数の単位部材61を連結することにより構成されている。そして、本体部分の上側ないし基端側(ボーリングマシンM側)に基端支持部62を備えるとともに、その下側ないし先端側に先端支持部24を備えている。固定部材25は基端支持部62の上端に取り付けられる。
【0035】
本変形例1では、各単位部材61は同一の構成を有している。各単位部材61の上端部には雌ねじ部61bが設けられており、この雌ねじ部61bの内周面には雌ねじが切られている。他方、各単位部材61の下端部には雄ねじ部61cが設けられており、この雄ねじ部61cの外周面には雄ねじが切られている。また、先端支持部24の上端部にも雌ねじ部24bが設けられており、この雌ねじ部24bの内周面には雌ねじが切られている。さらに、基端支持部62の下端部には雄ねじ部62cが設けられており、この雄ねじ部62cの外周面には雄ねじが切られている。同様に、固定部材25の下端部には雄ねじ部25cが設けられており、この雄ねじ部25cの外周面には雄ねじが切られている。
【0036】
このように構成されることにより、変形例1に係る反力ケーシング6では、各単位部材61・61…は一方の雄ねじ部61cと他方の雌ねじ部61bとを螺合することにより連結され、最下部の単位部材61と先端支持部24とは雄ねじ部61cと雌ねじ部24bとを螺合することにより連結され、最上部の単位部材61と基端支持部62とは雄ねじ部62cと雌ねじ部61bとを螺合することにより連結され、基端支持部62と固定部材25とは雄ねじ部25cと雌ねじ部62bとを螺合することにより連結されるようになっている。
【0037】
さらに、各単位部材61には、切欠部21が長手方向の上端から下端にわたって形成されており、各単位部材61・61…を連結することにより上下方向に一連に繋がるようになっている。
【0038】
変形例1において、反力ケーシング6の内面に平坦部22aを形成するための手段となる長尺状部材22は、各単位部材61の下端部及び基端支持部62の下端部にのみ設けられており、各部材を連結した後の反力ケーシング6全体としてみれば、長尺状部材22は、単位部材61・61同士の連結部付近、最下部の単位部材61と先端支持部24との連結部付近、及び、最上部の単位部材61と基端支持部62との連結部付近にのみ設けられるようになっている。そして、各連結部において、各長尺状部材22はその上下に位置する部材の両方に跨って設けられるようになっている。
【0039】
かかる変形例1の構成によっても、噴射ロッド5の回転を反力ケーシング6に伝達することができ、また、地盤改良時に噴射ロッド5に作用する噴射反力を両端支持された反力ケーシング6で受け止めることができるため、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
(変形例2)
図11は、変形例2に係る反力ケーシング7の縦断面図を示している。なお、前記実施形態と同一又は対応する部材には同一の符号を付して説明を省略する。
この変形例2に係る反力ケーシング7は、本体部分が複数の単位部材71を連結してなる点は上記変形例1と同様であるが、各単位部材71において、切欠部21が、長手方向の上端から下端にわたって一連に形成されていない点、及び、基端支持部72が固定部材25と一体に形成されている点で相違する。以下では、前者について、さらに具体的に説明する。
【0041】
変形例2に係る反力ケーシング7を構成する各単位部材71・71…は、その上端部及び下端部を除く中央部において長手方向に相対的に長く延びる切欠部21aと、その上端部の雌ねじ部71bにおいて切欠部21aとは別個に(つまり切欠部21aとは切り離して)開口窓のように形成された切欠部21bと、その下端部の雄ねじ部71cにおいて切欠部21aとは別個に(つまり切欠部21aとは切り離して)開口窓のように形成された切欠部21cとを備えている。言い換えれば、切欠部21bと切欠部21aとの間及び切欠部21cと切欠部21aとの間には、それぞれ左右の壁面を一連に繋ぐ補強片が形成されるようになっている(さらに、切欠部21bの上側及び切欠部21cの下側にも左右の壁面を一連に繋ぐ補強片が形成されるようになっている)。そして、各部材を螺合連結したときに、各単位部材の切欠部21a・21b・21cが上下方向に一列に整列するとともに、相互に連結される単位部材71・71同士において、下側の単位部材71の切欠部21bと上側の単位部材71の切欠部21cとが互いに合致する位置にくるようになっている。これにより、反力ケーシング7全体としてみれば、変形例2に係る切欠部は、下から順に「最下部の単位部材71の切欠部21a」・「最下部の単位部材71の切欠部21b(下から2番目の単位部材71の切欠部21c)」・「下から2番目の単位部材71の切欠部21a」・「下から2番目の単位部材71の切欠部21b(下から3番目の単位部材71の切欠部21c)」・・・「上から2番目の単位部材71の切欠部21a」・「上から2番目の単位部材71の切欠部21b(最上部の単位部材71の切欠部21c)」・「最上部の単位部材71の切欠部21a」というように補強片によって一部途切れながら断続的に整列するようになっている。
【0042】
なお、各単位部材71の上端部及び下端部に雌ねじ部71b又は雄ねじ部71cがそれぞれ設けられている点、先端支持部24の上端部に雌ねじ部24bが設けられている点、並びに、基端支持部72の下端部に雄ねじ部72cが設けられている点は、変形例1と同様である。これにより、変形例2に係る反力ケーシング7においても、各単位部材71・71は一方の雄ねじ部71cと他方の雌ねじ部71bとを螺合することにより連結され、最下部の単位部材71と先端支持部24とは雄ねじ部71cと雌ねじ部24bとを螺合することにより連結され、最上部の単位部材71と基端支持部72とは雄ねじ部72cと雌ねじ部71bとを螺合することにより連結されるようになっている。
【0043】
このように、各部材を螺合連結する場合、例えば変形例1のように切欠部21が各連結部を超えて一連に形成されていると、各連結部において、螺合による連結強度が得られない場合があり得る。これに対し、変形例2では、切欠部21b及び21cの上下に左右の壁面を連結する補強片が形成されているので、螺合によっても十分な連結強度を得ることができるという利点がある。
【0044】
なお、変形例2における長尺状部材22の構成及び配置の態様は変形例1と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
かかる変形例2の構成によっても、噴射ロッド5の回転を反力ケーシング7に伝達することができ、また、地盤改良時に噴射ロッド5に作用する噴射反力を両端支持された反力ケーシング7で受け止めることができるため、前記実施形態及び変形例1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 掘削ケーシング(第1のケーシング)
2 反力ケーシング(第2のケーシング)
21 切欠部
21a・21b・21c 切欠部
22a (反力ケーシング内面ないし長尺状部材の)平坦部
5 噴射ロッド
52a 硬化剤噴射ノズル
52b 圧縮空気噴射ノズル
53 (噴射ロッド外面の)平坦部
6 変形例1に係る反力ケーシング(第2のケーシング)
7 変形例2に係る反力ケーシング(第2のケーシング)
M ボーリングマシン
H 先行削孔
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