(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような揺動部材を有する給電装置では、搭乗者がスライドドアを開閉して車両に乗降する際に、ワイヤハーネスを踏んでしまうことがある。このような場合には、ワイヤハーネスを保持している揺動部材における揺動軸や、その周辺構造に負荷が掛かる。このとき、そのような負荷が大き過ぎると揺動軸近傍の構造を傷めてしまう恐れがある。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題点に着目し、ワイヤハーネスを保持している揺動部材における揺動軸や、その周辺構造に掛かる負荷を軽減することができる給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、スライドドアを有する車両において、車体と前記スライドドアとをワイヤハーネスを介して電気的に接続する給電装置であって、前記車体又は前記スライドドアに固定される支持部材と、前記ワイヤハーネスを保持するとともに、前記車両の上下方向に延びる揺動軸回りに揺動自在に、前記支持部材に軸支される揺動部材と、を備え、前記支持部材には、前記揺動部材の揺動に応じて前記揺動軸回りに揺動する前記ワイヤハーネスの揺動範囲の少なくとも一部範囲の、前記上下方向における下方であって前記揺動軸近傍に、前記ワイヤハーネスの揺動方向に延在し、少なくとも前記一部範囲に位置する前記ワイヤハーネスが前記上下方向における上方から押されたときに前記ワイヤハーネスを前記下方から支える、当該支持部材の一部である支持棚が設けられ
、前記支持部材は、前記支持棚の、前記車両における幅方向の一対の端縁の一方の端縁から前記上下方向における上方へと壁面が延在し、且つ他方の端縁から前記下方へと壁面が延在した形状を有していることを特徴とする給電装置となっている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給電装置において、前記支持棚が設けられた前記支持部材が、少なくとも前記スライドドアに固定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の給電装置において、前記スライドドアが半開された状態では、前記ワイヤハーネスは、前記スライドドアから前記車体にかけてS字状に湾曲するものであり、前記支持棚が、少なくとも、前記S字状に湾曲した前記ワイヤハーネスの両端のうち少なくとも一方の端部を支える位置に設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうち何れか一項に記載の給電装置において、前記支持部材が、前記上下方向と交差して延在する平坦面を有し、当該平坦面に、前記
揺動軸における下方部分が挿入されて当該下方部分を軸支する穴状の軸受部が形成されており、前記支持棚は、前記平坦面において前記軸受部から見て前記一部範囲へと向かう面部分が他の面部分よりも広く張り出して形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、支持部材に設けられた支持棚により、ワイヤハーネスの揺動範囲の少なくとも一部範囲における揺動軸近傍について、ワイヤハーネスが上方から押されたときに、そのワイヤハーネスが下方から支えられる。これにより、搭乗者がスライドドアを開閉して車両に乗降する際に、ワイヤハーネスを踏んでしまったとしても、ワイヤハーネスを保持している揺動部材における揺動軸や、その周辺構造に掛かる負荷を軽減することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、上記の支持棚が設けられた支持部材が、少なくともスライドドアに固定されている。多くの場合、車体からスライドドアに至るワイヤハーネスのうち、車体側については車体のフレーム等によってある程度支えられる。一方、スライドドア側についてはスライドドアが半開された状態では、ワイヤハーネスの下方が略開放された状態となることが多い。このため、搭乗者がスライドドアを開閉して車両に乗降する際に、ワイヤハーネスを踏むときには、多くの場合、スライドドア側における揺動軸や、その周辺構造に掛かる負荷が大きくなり易い。これに対し、請求項2に記載の発明によれば、ワイヤハーネスの支持棚がスライドドアに固定される支持部材に設けられているので、上記のように大きくなりがちなスライドドア側の負荷を確実に軽減することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、スライドドアが半開された状態でS字状に湾曲したワイヤハーネスの端部を支える位置に支持棚が設けられている。搭乗者がスライドドアを開閉して車両に乗降する際には、スライドドアが半開され、ワイヤハーネスがS字状に湾曲したときに搭乗者に踏まれ易い。これに対し、請求項3に記載の発明によれば、ワイヤハーネスの支持棚が、このようにS字状に湾曲したワイヤハーネスの端部を支える位置に設けられている。これにより、搭乗者によってワイヤハーネスが踏まれて揺動軸や、その周辺構造に掛かる負荷が大きくなりがちなタイミングで、その負荷を確実に軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態にかかる給電装置を、
図1〜
図9を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態にかかる給電装置を示す図である。本実施形態の給電装置1は、スライドドア50を有する車両5において、車体60とスライドドア50とをワイヤハーネス10を介して電気的に接続する装置である。尚、この
図1では、図中右側が車両5の前側に相当し、図中左側が車両5の後側に相当し、図中上側が車両外側に相当し、図中下側が車両内側に相当する。また、図中上下方向が本実施形態におけるX方向であり、図中左右方向が本実施形態におけるY方向であり、紙面に対する垂直方向がZ方向である。
【0016】
給電装置1では、車体60に設けられた不図示の電源からスライドドア50に設けられた不図示の電気機器へとワイヤハーネス10を介して電力が供給される。また、この給電装置1では、車体60に設けられた不図示の制御手段とスライドドア50に設けられた不図示の電気機器との間でワイヤハーネス10を介して電気信号の授受も行われる。給電装置1は、ワイヤハーネス10、コルゲートチューブ20、ドア側ユニット30、車体側ユニット40、を備えている。
【0017】
ワイヤハーネス10は可撓性を有するコルゲートチューブ20に挿通されており、コルゲートチューブ20の一端がドア側ユニット30に、車両の上下方向であるZ方向を揺動軸方向として揺動自在に保持され、他端が車体側ユニット40に、Z方向を揺動軸方向として揺動自在に保持されている。スライドドア50は、ドアパネル51と、このドアパネル51の車内側に設けられたドアトリム52と、を備えており、ドア側ユニット30は、スライドドア50を構成するドアパネル51に固定されている。ドア側ユニット30では、コルゲートチューブ20の一端が、スライドドア50の全閉時にドアパネル51側に向かうように、矢印D1方向に付勢されている。また、車体側ユニット40は、スカッフトリム61にその一部が覆われて不図示の車体フレームに固定されている。車体側ユニット40では、コルゲートチューブ20の他端が、スライドドア50の全閉時に車両内側に向かうように、矢印D2方向に付勢されている。
【0018】
スライドドア50は、車両の前後方向であるY方向に開閉される。スライドドア50が全閉から全開へと向かって開かれるときには、ドア側ユニット30では、コルゲートチューブ20の一端が、上記の付勢力に反してドアパネル51から離れる方向に揺動する。また、このときには、車体側ユニット40では、コルゲートチューブ20の他端が、上記の付勢力に反して車両外側に向かって揺動する。一方、スライドドア50が全開から全閉へと向かって閉じられるときには、ドア側ユニット30では、コルゲートチューブ20の一端が、上記の付勢力に応じてドアパネル51側に揺動する。また、このときには、車体側ユニット40では、コルゲートチューブ20の他端が、上記の付勢力に応じて車両内側に向かって揺動する。
【0019】
これにより、コルゲートチューブ20を介してドア側ユニット30や車体側ユニット40に保持されているワイヤハーネス10は、スライドドア50の開閉に伴って図中に矢印Ar1で示されている範囲(以下、揺動範囲Ar1と呼ぶ)を揺動する。また、スライドドア50が半開された状態では、コルゲートチューブ20(即ち、ワイヤハーネス10)は、スライドドア50から車体60にかけてS字状に湾曲する。ワイヤハーネス10は、このような湾曲を経つつ揺動範囲Ar1を揺動する。
【0020】
図2は、
図1に示されているドア側ユニットを示す分解斜視図である。この
図2には、
図1におけるX方向、Y方向、Z方向が示されている。また、
図2では、
図1と同様に図中右側が車両5の前側に相当し、図中左側が車両5の後側に相当する。さらに、図中上側が車両5の上側に相当し、図中下側が車両5の下側に相当する。
【0021】
ドア側ユニット30は、ドア側支持部材31と、ドア側揺動部材32と、ドア側巻きバネ33と、案内部材34と、を備えている。ドア側支持部材31は、スライドドア50のドアパネル51に固定される。ドア側揺動部材32は、コルゲートチューブ20におけるドア側の一端を保持することでその内部に挿通されたワイヤハーネス10を保持する。そして、ドア側揺動部材32は、スライドドア50と平行かつスライドドア50の開閉方向(Y方向)と直交するZ方向を軸方向とする揺動軸回りに、スライドドア50の開閉方向(Y方向)に揺動自在に、ドア側支持部材31に軸支される。ドア側巻きバネ33は、この揺動軸回りに巻かれてドア側揺動部材32をその揺動軸回りの、
図1に矢印D1で示されている揺動方向に付勢する。案内部材34は、ドア側支持部材31に組み付けられる。この案内部材34は、コルゲートチューブ20を出てドア側揺動部材32の内部を通ったワイヤハーネス10をY方向後側に向けて案内する。
【0022】
ドア側揺動部材32は、第1揺動部材321と第2揺動部材322とを備えている。第1揺動部材321は、Z方向上側に突出した中空の第1軸部321Aと、ドア側巻きバネ33の一端331が係止する第1係止部321Bと、を備えている。また、第2揺動部材322は、Z方向下側に突出した第2軸部322Aを備えている。第1揺動部材321と第2揺動部材322とが互いに組み付けられると、Z方向と直交する方向に向かって開いてコルゲートチューブ20におけるドア側の一端が固定されるドア側チューブ固定口323が形成される。そして、ドア側揺動部材32では、このドア側チューブ固定口323から中空の第1軸部321Aの内部に至るワイヤハーネス10のドア側挿通路324が形成されている。コルゲートチューブ20の一端を出たワイヤハーネス10は、このドア側挿通路324を通って案内部材34へと向かう。
【0023】
ドア側支持部材31は、第1支持部材311と第2支持部材312とを備えている。第1支持部材311には、第1軸部321Aが挿入されて、その第1軸部321Aを軸支する第1軸受部311Aが設けられている。そして、この第1軸受部311Aを囲むように、ドア側巻きバネ33を収容するバネ収容部311Bが形成されている。このバネ収容部311Bは、車両5における上方に向かって開いた開口311B−1を有している。バネ収容部311Bの内部には、ドア側巻きバネ33の他端332が係止する第2係止部311Cが設けられている。また、バネ収容部311Bの外壁面には、案内部材34を組み付けるための係合突起311Dが設けられている。
【0024】
ドア側支持部材31における第2支持部材312には、第2軸部322Aが挿入されて、その第2軸部322Aを軸支する第2軸受部312Aが設けられている。さらに、上記の第1支持部材311と第2支持部材312には、両者を重ねたときに連通するように、それぞれ貫通孔311E,312Bが設けられている。
【0025】
第1軸部321Aが第1軸受部311Aに軸支され、第2軸部322Aが第2軸受部312Aに軸支された状態で、第1支持部材311と第2支持部材312とが互いに重ねられる。そして、上記の貫通孔311E,312Bを貫通した不図示のネジにより第1支持部材311と第2支持部材312とが共締めされた状態でスライドドア50のドアパネル51に固定される。
【0026】
案内部材34は、L字案内路341と蓋部342とを備えている。L字案内路341は、ドア側挿通路324を通ったワイヤハーネス10を、Z方向及びY方向に案内するL字状の案内路である。蓋部342は、第1支持部材311におけるバネ収容部311Bの開口311B−1を覆う蓋である。この蓋部342には、第1支持部材311の係合突起311Dが係合する係合部342Aが設けられている。係合部342Aには穴342A−1が設けられており、この穴342A−1に係合突起311Dが進入して係合する。
【0027】
図3は、
図1に示されている車体側ユニットを示す分解斜視図である。この
図3にも、
図1におけるX方向、Y方向、Z方向が示されている。また、
図3では、
図1や
図2とは逆に図中右側が車両5の後側に相当し、図中左側が車両5の前側に相当する。さらに、図中上側が車両5の上側に相当し、図中下側が車両5の下側に相当する。
【0028】
車体側ユニット40は、車体側支持部材41と、車体側揺動部材42と、車体側巻きバネ43と、を備えている。車体側支持部材41は、車体60の不図示のフレームに固定される。車体側揺動部材42は、コルゲートチューブ20における車体側の一端を保持することでその内部に挿通されたワイヤハーネス10を保持する。そして、車体側揺動部材42は、スライドドア50と平行かつスライドドア50の開閉方向(Y方向)と直交するZ方向を軸方向とする揺動軸回りに、スライドドア50の開閉方向(Y方向)に揺動自在に、車体側支持部材41に軸支される。車体側巻きバネ43は、この揺動軸回りに巻かれて車体側揺動部材42をその揺動軸回りの、
図1に矢印D2で示されている揺動方向に付勢する。
【0029】
車体側揺動部材42は、第1揺動部材421と第2揺動部材422とを備えている。第1揺動部材421は、Z方向上側に突出した第1軸部421Aと、車体側巻きバネ43の一端431が係止する第1係止部421Bと、を備えている。また、第2揺動部材422は、Z方向下側に突出した第2軸部422Aを備えている。第1揺動部材421と第2揺動部材422とが互いに組み付けられると、Z方向と直交する方向に向かって開いてコルゲートチューブ20の一端が固定される車体側チューブ固定口423が形成される。そして、車体側揺動部材42では、この車体側チューブ固定口423から、揺動軸と直行するように車体側揺動部材42を貫通するワイヤハーネス10の挿通路424が形成されている。コルゲートチューブ20の一端を出たワイヤハーネス10は、この挿通路424を通って車両内側へと向かう。
【0030】
車体側支持部材41は、第1支持部材411と第2支持部材412とを備えている。第1支持部材411には、第1軸部421Aが挿入されて、その第1軸部421Aを軸支する第1軸受部411Aが設けられている。そして、この第1軸受部411Aを囲むように、車体側巻きバネ43を収容するバネ収容部411Bが形成されている。このバネ収容部411Bは、車両における下方に向かって開いた開口411B−1を有している。この開口411B−1は、第1揺動部材421の上面によって塞がれる。バネ収容部411Bの内部には、車体側巻きバネ43の他端432が係止する第2係止部411Cが設けられている。また、第1支持部材411には、第2支持部材412を組み付けるための複数の係合穴411Dが設けられている。
【0031】
車体側支持部材41における第2支持部材412には、第2軸部422Aが挿入されて、その第2軸部422Aを軸支する第2軸受部412Aが設けられている。さらに、第2支持部材412には、第1支持部材411における複数の係合穴411Dに進入して係合する複数の係合突起412Bが設けられている。
【0032】
第1軸部421Aが第1軸受部411Aに軸支され、第2軸部422Aが第2軸受部412Aに軸支された状態で、第1支持部材411と第2支持部材412とが互いに組み付けられる。そして、第2支持部材412が不図示の固定構造により、車体60に固定される。
【0033】
本実施形態では、ドア側支持部材31及び車体側支持部材41それぞれが本発明にいう支持部材の一例に相当し、ドア側揺動部材32及び車体側揺動部材42それぞれが本発明にいう揺動部材の一例に相当する。また、ドア側揺動部材32における第1軸部321Aと第2軸部322Aのそれぞれ、及び、車体側揺動部材42における第1軸部421Aと第2軸部422Aのそれぞれが、本発明にいう揺動軸の一例に相当する。
【0034】
図4は、
図1に示されているスライドドアを車両内側から給電装置とともに見た平面図であり、
図5は、
図4に示されているスライドドアを、車両内側で斜め上方から給電装置とともに見た斜視図である。また、
図6は、
図5に示されている斜視図においてドアトリムを取り去った状態を示す図である。尚、
図4〜
図6では、
図1における全閉時のスライドドア50が示されている。これらの
図4〜
図6にも、
図1におけるX方向、Y方向、Z方向が示されている。また、
図4〜
図6では、
図1や
図2と同様に図中右側が車両5の前側に相当し、図中左側が車両5の後側に相当する。さらに、図中上側が車両5の上側に相当し、図中下側が車両5の下側に相当する。
【0035】
図4〜
図5に示されているようにドアトリム52は、ドアパネル51との間に距離を開けてドアパネル51と略平行に延在するパネルである。本実施形態では、ドアパネル51は金属製パネルであり、ドアトリム52は樹脂製パネルである。給電装置1を構成するドア側ユニット30において案内部材34によってY方向後側に案内されたワイヤハーネス10は、ドアトリム52とドアパネル51との間に配策される。ドア側ユニット30におけるドア側支持部材31は、
図6に示されているようにドアパネル51に固定される。他方、車体側ユニット40における車体側支持部材41は、車体60における不図示のフレームに固定される。
【0036】
図7は、
図4〜
図6に示されている給電装置のみを示す斜視図である。給電装置1では、搭乗者がスライドドア50(
図1)を開閉する際に、コルゲートチューブ20を介して保持されたワイヤハーネス10が、
図1を参照して説明したように、途中でS字状に湾曲しつつ揺動範囲Ar1を揺動する。
図7には、スライドドア50が全閉状態にあるときの給電装置1が示されている。そして、ドア側ユニット30から見たときのワイヤハーネス10の揺動範囲Ar1が、矢印Ar1−1で示され、車体側ユニット40から見たときのワイヤハーネス10の揺動範囲Ar1が、矢印Ar1−2で示されている。以下、ドア側ユニット30から見たときのワイヤハーネス10の揺動範囲Ar1を、ドア側の揺動範囲Ar1−1と呼び、車体側ユニット40から見たときのワイヤハーネス10の揺動範囲Ar1−2を、車体側の揺動範囲Ar1−2と呼ぶ。また、
図7には、スライドドア50が半開状態にあってS字状に湾曲したコルゲートチューブ20(即ち、ワイヤハーネス10)が、ドア側ユニット30と車体側ユニット40との双方について二点鎖線で示されている。
【0037】
スライドドア50の開閉時にこのようにワイヤハーネス20が揺動する給電装置1では、搭乗者がスライドドア50を開閉して車両5に乗降する際に、コルゲートチューブ20越しにワイヤハーネス10を踏んでしまうことがある。特に、スライドドア50が半開された状態で、コルゲートチューブ20(即ち、ワイヤハーネス10)がスライドドア50から車体60にかけてS字状に湾曲しているときに搭乗者に踏まれ易い。
【0038】
コルゲートチューブ20越しにワイヤハーネス10が踏まれると、コルゲートチューブ20、延いてはワイヤハーネス10を保持している、ドア側揺動部材32における第1軸部321Aと第2軸部322A、及び車体側揺動部材42における第1軸部421Aと第2軸部422Aや、それらの周辺構造に負荷が掛かる。このとき、そのような負荷が大き過ぎるとドア側揺動部材32における第1軸部321Aと第2軸部322Aとの近傍の構造や、車体側揺動部材42における第1軸部421Aと第2軸部422Aとの近傍の構造を傷めてしまう恐れがある。
【0039】
そこで、本実施形態の給電装置1では、コルゲートチューブ20越しにワイヤハーネス10が踏まれたときに掛かる上記の負荷を軽減するための構造が、ドア側支持部材31や車体側支持部材41に設けられている。
【0040】
図8は、ワイヤハーネスが踏まれたときに掛かる負荷を軽減するためにドア側支持部材に設けられた構造を示す図である。
図8(A)には、ドア側ユニット30を車内側から見た平面図が示されており、
図8(B)には、
図8(A)中のA−A断面が示されている。
【0041】
この
図8に示されているように、ドア側支持部材31には、ドア側揺動部材32の第2軸部322Aを軸支する第2軸受部312Aの図中左隣の近傍に、コルゲートチューブ20越しにワイヤハーネス10を下方から支える支持棚312Cが設けられている。この支持棚312Cは、
図7に示されているドア側の揺動範囲Ar1−1の一部範囲Ar2−1の下方であって第2軸部322Aの近傍に、ワイヤハーネス10の揺動方向に延在した段部となっている。そして、一部範囲Ar2−1に位置するワイヤハーネス10がコルゲートチューブ20越しに踏まれて上方から押されたときに、そのワイヤハーネス10をコルゲートチューブ20越しに下方から支える。本実施形態では、この支持棚312Cがワイヤハーネス10を下方から支える一部範囲Ar2−1とは、スライドドア50が全閉状態にあるときのコルゲートチューブ20(即ち、ワイヤハーネス10)の位置から、半開状態でコルゲートチューブ20(即ち、ワイヤハーネス10)がS字状に湾曲したときの位置までのドア側の揺動範囲に相当する。
【0042】
図9は、ワイヤハーネスが踏まれたときに掛かる負荷を軽減するために車体側支持部材に設けられた構造を示す図である。
図9(A)には、車体側ユニット40をドア側から見た平面図が示されており、
図9(B)には、
図9(A)中のB−B断面が示されている。
【0043】
この
図9に示されているように、車体側支持部材41には、車体側揺動部材42の第2軸部422Aを軸支する第2軸受部412Aの図中左隣の近傍にコルゲートチューブ20越しにワイヤハーネス10を下方から支える支持棚412Cが設けられている。この支持棚412Cは、
図7に示されている車体側の揺動範囲Ar1−2の一部範囲Ar2−2の下方であって第2軸部422Aの近傍に、ワイヤハーネス10の揺動方向に延在した段部となっている。そして、本実施形態では、この支持棚412Cがワイヤハーネス10を下方から支える一部範囲Ar2−2とは、スライドドア50が全閉状態にあるときのコルゲートチューブ20(即ち、ワイヤハーネス10)の位置から、半開状態でコルゲートチューブ20(即ち、ワイヤハーネス10)がS字状に湾曲したときの位置までの範囲に相当する。
【0044】
以上に説明した本実施形態の給電装置1によれば、ドア側支持部材31に設けられた支持棚312Cと、車体側支持部材41に設けられた支持棚412Cとにより、スライドドア50側と車体60側との双方について、ワイヤハーネス10の揺動範囲Ar1−1,Ar1−2の少なくとも一部範囲Ar2−1,Ar2−2における揺動軸近傍についてワイヤハーネス10が下方から支えられる。これにより、搭乗者がスライドドア50を開閉して車両5に乗降する際に、コルゲートチューブ20越しにワイヤハーネス10を踏んでしまったとしても、スライドドア50側と車体60側との双方について、ワイヤハーネス10を保持している揺動部材32,42における軸部321A,322A、421A,422Aや、その周辺構造に掛かる負荷を軽減することができる。
【0045】
ここで、本実施形態では、車体60からスライドドア50に至るワイヤハーネス10のうち、車体60側については車体60のフレーム等によってある程度支えられる。一方、スライドドア50側についてはスライドドア50が半開された状態では、ワイヤハーネス10の下方が略開放された状態となる。このため、搭乗者がスライドドア50を開閉して車両5に乗降する際に、コルゲートチューブ20越しにワイヤハーネス10を踏むときには、多くの場合、スライドドア50側における軸部321A,322Aや、その周辺構造に掛かる負荷が大きくなり易い。
【0046】
これに対し、本実施形態の給電装置1によれば、ドア側支持部材31に設けられた支持棚312Cと、車体側支持部材41に設けられた支持棚412Cとにより、上記のように負荷が大きくなりがちなスライドドア50側を含めて、スライドドア50側と車体60側との双方について負荷を確実に軽減することができる。
【0047】
また、上述したように、搭乗者がスライドドア50を開閉して車両5に乗降する際には、スライドドア50が半開され、コルゲートチューブ20を介してワイヤハーネス10がS字状に湾曲したときに搭乗者に踏まれ易い。これに対し、本実施形態の給電装置1によれば、ワイヤハーネス10の支持棚312C,412Cが、このようにS字状に湾曲したワイヤハーネス10の端部を支える位置に設けられている。これにより、搭乗者によってコルゲートチューブ20越しにワイヤハーネス10が踏まれて上記の負荷が大きくなりがちなタイミングで、その負荷を確実に軽減することができる。
【0048】
尚、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の給電装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0049】
例えば、前述した実施形態では、本発明にいう給電装置の一例として、スライドドア50側と車体60側との双方にワイヤハーネス10の支持棚312C,412Cが設けられた給電装置1が例示されている。しかしながら、本発明にいう給電装置はこれに限るものではない。本発明にいう給電装置は、例えば、ワイヤハーネスが踏まれたときの負荷が大きくなり易いスライドドア側にのみ支持棚が設けられたもの等であってもよい。
【0050】
また、例えば、前述した実施形態では、本発明にいう支持棚の一例として、スライドドア50が全閉状態にあるときのコルゲートチューブ20(即ち、ワイヤハーネス10)の位置から、半開状態でコルゲートチューブ20(即ち、ワイヤハーネス10)がS字状に湾曲したときの位置までの一部範囲Ar2−1,Ar2−2の下方に設けられた支持棚312C,412Cが例示されている。しかしながら、本発明にいう支持棚はこれに限るものではない。本発明にいう支持棚は、例えば、このような範囲を含んだより広い範囲の下方に設けられたもの等であってもよい。