(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
オペレータが手動操作で拘束および解除する部位として、構成部材相互が支軸まわりに相対移動する回動移動部と、構成部材相互が長手方向に沿って相対移動するスライド移動部とを有し、
前記回動移動部は、当該回動移動部での格納姿勢時の保護プレートと、当該回動移動部での展開姿勢時の保護プレートとが異なる位置に別箇の部品として設けられており、
前記スライド移動部は、当該スライド移動部での格納姿勢時の保護プレートと、当該スライド移動部での展開姿勢時の保護プレートとが同じ位置に共通の部品として設けられている請求項1または2に記載のアウトリガ装置。
機体を支持する複数のアウトリガ装置を有し、前記複数のアウトリガ装置は、相対移動する構成部材相互の位置をオペレータが手動操作で拘束および解除することにより、格納姿勢にあっては、前記機体の上部に格納され、展開姿勢にあっては、各アウトリガを前記機体から側方に張り出して前記機体を支持するクローラクレーンであって、
前記複数のアウトリガ装置として、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアウトリガ装置を備えることを特徴とするクローラクレーン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、同文献に開示される小型のクローラクレーンでは、各アウトリガ装置は、相対移動する構成部材相互の位置を、オペレータが手動操作で拘束および解除することにより、上記格納姿勢と展開姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。なお、最終的な接地のための張り出し動作は油圧シリンダによる。
【0006】
オペレータが手動で拘束および解除する部分の構造は、例えば
図8に要部断面図を示すように、相対移動する複数の構成部材100の幅方向に沿って貫通形成された複数の姿勢保持穴110と、複数の姿勢保持穴110にオペレータが手で挿抜可能な姿勢保持ピン120とを備えて構成されている。
【0007】
姿勢保持穴110は、展開姿勢および格納姿勢に応じた位置それぞれにおいて、同図に示すように、複数の構成部材100相互を同軸に貫通している。そして、オペレータが、展開姿勢および格納姿勢に応じた位置にて、複数の構成部材100を同軸に貫通する姿勢保持穴110に姿勢保持ピン120を手で挿抜することによって、展開姿勢と格納姿勢とを選択的に変更可能になっている。
【0008】
この例では、姿勢保持ピン120の基端側には、オペレータが手で掴むためのハンドル120hが設けられるとともに、姿勢保持ピン120の先端部には円環状の溝120mが形成されている。そして、オペレータが、ハンドル120hを手で把持して姿勢保持ピン120の挿抜を行うとともに、松葉ピン120pを径方向から手で円環状の溝120mに嵌め込むことにより、挿入位置での姿勢保持ピン120の抜けを防止するようになっている。
【0009】
しかし、
図8に示したような、松葉ピン120pを用いる姿勢保持ピン120の抜け防止構造であると、
オペレータはまず松葉ピン120pを係抜した後、姿勢保持ピン120を挿抜するという2段階作業が必要なため、姿勢保持ピン120の挿抜作業が煩わしいという問題がある。
【0010】
そこで、上記松葉ピン120pを排して、例えば、軸線と直交方向に進退可能なプランジャボールを有する姿勢保持ピンを用いれば、松葉ピンを用いるものに比べて、姿勢保持ピンの挿抜性を向上させることができる。
しかし、この種の小型のクローラクレーンでは、アウトリガ装置の姿勢保持穴に対して姿勢保持ピンが頻繁に挿抜されるので、姿勢保持穴の外側面の周囲は、姿勢保持ピンの先端や外周面(特に、プランジャボール)との金属同士のこすれが生じる。したがって、姿勢保持穴110の周囲の塗装が剥離したり、塗装の剥離により錆が発生したりするおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、オペレータが手動操作するアウトリガ装置での格納姿勢および展開姿勢を保持するための姿勢保持ピンの挿抜性を向上させつつ、姿勢保持穴周囲を保護し得るアウトリガ装置およびこれを備えるクローラクレーンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るアウトリガ装置は、構成部材相互が相対移動する位置をオペレータが手動操作で拘束および解除することにより、展開姿勢と格納姿勢とに動作可能に構成されたアウトリガ装置であって、前記展開姿勢および前記格納姿勢に応じた位置で前記構成部材相互を同軸に貫通する複数の姿勢保持穴と、前記展開姿勢および前記格納姿勢に応じた位置で前記姿勢保持穴に挿抜されて前記構成部材相互の位置を拘束および解除する姿勢保持ピンと、前記構成部材の最も外側の両面にそれぞれ装着されて当該最も外側の両面に開口する前記姿勢保持穴と同軸に且つ前記姿勢保持ピンを挿抜可能に形成された挿通孔を有する樹脂製の一対の保護プレートと、を有することを特徴とする。
【0013】
ここで、本発明の一態様に係るアウトリガ装置において、前記姿勢保持ピンは、自身先端部に軸線と直交方向に進退可能なプランジャボールを有し、前記一対の保護プレートの内径寸法は、前記姿勢保持ピンが前記挿通孔の内周面に前記プランジャボールの外周面が摺接するとともに挿抜を可能とする径を有することは好ましい。
【0014】
また、本発明の一態様に係るアウトリガ装置において、オペレータが手動操作で拘束および解除する部位として、構成部材相互が支軸まわりに相対移動する回動移動部と、構成部材相互が長手方向に沿って相対移動するスライド移動部とを有し、前記回動移動部は、当該回動移動部での格納姿勢時の保護プレートと、当該回動移動部での展開姿勢時の保護プレートとが異なる位置に別箇の部品として設けられており、前記スライド移動部は、当該スライド移動部での格納姿勢時の保護プレートと、当該スライド移動部での展開姿勢時の保護プレートとが同じ位置に共通の部品として設けられていることは好ましい。
【0015】
また、前記回動移動部での展開姿勢は、複数の展開姿勢が選択可能になっており、
前記回動移動部での展開姿勢時の保護プレートには、その表側の面に、当該回動移動部での複数の展開姿勢を区別する表示としての目印が示されていることは好ましい。
【0016】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るクローラクレーンは、機体を支持する複数のアウトリガ装置を有し、前記複数のアウトリガ装置は、相対移動する構成部材相互の位置をオペレータが手動操作で拘束および解除することにより、格納姿勢にあっては、前記機体の上部に格納され、展開姿勢にあっては、各アウトリガを前記機体から側方に張り出して前記機体を支持するクローラクレーンであって、前記複数のアウトリガ装置として、本発明の一態様に係るアウトリガ装置を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係るアウトリガ装置によれば、アウトリガ装置の格納姿勢および展開姿勢を保持する姿勢保持ピンと、姿勢保持ピンが挿抜される姿勢保持穴とを有し、構成部材の最も外側の両面には、当該最も外側の両面に開口する姿勢保持穴と同軸に且つ姿勢保持ピンを挿抜可能に形成された挿通孔を有する樹脂製の保護プレートが装着されているので、保護プレートの自己潤滑性により、オペレータは、構成部材の最も外側の両面に形成されている姿勢保持穴に対して姿勢保持ピンを円滑に挿抜することができる。よって、姿勢保持ピンの挿抜性が一層向上する。
【0018】
そして、姿勢保持ピンを姿勢保持穴に挿入する際には、構成部材の最も外側の両面にそれぞれ装着されている一対の保護プレートが樹脂製なので、最も外側の両面に開口する姿勢保持穴の入口側と出口側での姿勢保持ピンと姿勢保持穴相互の金属接触を防止し、姿勢保持穴周囲の塗装の剥離を防止または抑制できる。したがって、錆の発生や進行を防止または抑制し、製品の外観品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
上述のように、本発明によれば、姿勢保持ピンの挿抜性を向上させつつ、姿勢保持穴周囲を保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るアウトリガ装置を備える作業車両の一実施形態であるクローラクレーンについて、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0022】
図1に示すように、このクローラクレーン1は、機体2にオペレータが搭乗しないで走行する小型のクローラクレーンである。機体2の後部には、オペレータが立って操作するための操縦部4が、走行時の操作位置(同図左側の位置)に設けられている。操縦部4には、左右一対の走行操作レバー50がオペレータの立つ側に向けて斜め上方に張り出している。操縦部4正面の機体2の中央には、エンジンや圧油供給装置等を含む原動部5および不図示の制御部を備えている。さらに、機体2の下部には、クローラ装置3が装備されている。
【0023】
クローラ装置3は、例えばゴム製の履帯が機体2の左右に装着されている。そして、上記原動部5の圧油供給装置は、この左右の履帯それぞれに対応する二つの走行用油圧モータを有し、左右二系統の油圧回路によって、左右の履帯を個別に駆動可能になっている。
これにより、このクローラクレーン1は、上記原動部5の圧油供給装置を作動させ、左右一対の走行操作レバー50を同時に前進または後退操作することで、機体2下部のクローラ装置3を駆動して車両速度が人の歩く速度程度で前進または後退方向に走行可能である。また、クローラ装置3を有する機体2が右折ないし左折する場合、左右一対の走行操作レバー50を個別に前進または後退操作することで、対応する左右の履帯を個別に駆動できるため、単純に左右の速度差で回頭可能である。
【0024】
さらに、このクローラクレーン1は、
図1に示すように、機体(車体)2上に、ブーム7およびウインチ(不図示)を有するクレーン装置6、および複数のアウトリガ装置10が搭載されている。なお、このクローラクレーン1は、オペレータが立って操作するための操縦部4に、走行モードとクレーンモードとを切り換えるための走行−クレーン切換スイッチ(不図示)と、クレーンモードにおいて、クレーン装置6を操作可能とするためのクレーン操作モードとアウトリガ装置10を操作可能とするためのアウトリガ操作モードとを切り換えるためのクレーン操作−アウトリガ操作切換スイッチ(不図示)が設けられており、上述のクローラ装置3、アウトリガ装置10およびクレーン装置6相互は、安全のため同時には作動できないように構成されている。また、遠隔操作器を用いても、同様に各モードの切換操作が可能である。
【0025】
ここで、複数のアウトリガ装置10は、機体2前後の左右両端それぞれに合計4本が配置され、相対移動する構成部材相互の位置を、オペレータが手動操作で拘束および解除することにより、同図の格納姿勢と、
図6に示す展開姿勢とに位置可能に構成されている。
これにより、このクローラクレーン1では、クレーン装置6の使用時には、オペレータが手動操作で各アウトリガ装置10を機体2の側方に張り出し、次いで、伸縮用油圧シリンダ11の駆動によって各アウトリガ装置10を接地させて機体2の安定を確保可能になっている。その後に、このクローラクレーン1では、クレーン装置6のブーム7を旋回、起伏、伸縮させ、クレーン装置6のウインチ(不図示)により吊荷の巻上げ、巻下げが行えるようになっている。
【0026】
以下、上記アウトリガ装置10について詳しく説明する。なお、4本のアウトリガ装置10はいずれも同じ構成を有するので、以下、特に区別せず説明する。
このアウトリガ装置10は、
図1の左側のアウトリガ装置10に示すように、機体2の上面に装着されるベースブラケット12を備えている。ベースブラケット12の基端側には、円筒状の回動支持部14が設けられている。回動支持部14は、機体2の上面に設けられた垂直な軸回りに旋回可能に枢支され、挿抜可能な固定ピン14pをオペレータが手で取り外し、アウトリガ装置10を手で水平方向に旋回することで、機体2の側方に向けた張り出し位置にアウトリガ装置10全体を旋回可能になっている。
【0027】
なお、張り出し位置にて固定ピン14pを張り出し位置固定穴(不図示)に挿入してアウトリガ装置10の張り出し位置が確実に固定される。すなわち、このアウトリガ装置10は、
図1および2に示す格納姿勢から、4本のアウトリガ装置10をオペレータが手で水平方向に回動させることで、機体2に対して側方に張り出す張り出し位置に位置させられるように構成されている。
【0028】
このアウトリガ装置10は、
図2に示すように、ベースブラケット12には、垂直方向に立設された板状のブラケット部13が上記回動支持部14と一体に形成されており、このブラケット部13の下部には、基端側アーム15の基端部が、水平な軸まわりに回動可能に枢支されている。基端側アーム15の先端部には、板状のセンタブラケット16が一体に溶着されている。
【0029】
さらに、センタブラケット16にその側方に張り出すように設けられた装着腕16aとベースブラケット12のブラケット部13にその上方に張り出すように設けられた装着腕13aとに、上記伸縮用油圧シリンダ11の両端部がそれぞれ水平な軸まわりに回動可能に枢支されている。伸縮用油圧シリンダ11を伸縮することにより、アウトリガ装置10の接地時における張出し作動および格納時における収容作動が可能になっている。
【0030】
また、このアウトリガ装置10は、センタブラケット16の先端部に、先端側アーム18が、その基端部を水平な軸まわりに回動可能に枢支されている。さらに、上記基端側アーム15の基端側の側面と先端側アーム18の基端側の側面との間には、伸縮用ガススプリング17の両端部が相互を繋ぐようにそれぞれの側面に対して水平な軸まわりに回動可能に枢支されている。
同図に示すように、格納姿勢においては、伸縮用油圧シリンダ11は最縮小位置にあり、伸縮用油圧シリンダ11、基端側アーム15、伸縮用ガススプリング17および先端側アーム18は、いずれも略垂直方向に沿った姿勢とされ、機体2の上部に格納されたときに、アウトリガ装置10全体が機体2から側方に張り出さないでコンパクトに収まるようになっている。なお、符号22は、格納姿勢におけるストッパである。
【0031】
上記先端側アーム18は、角筒状のアウタボックス19と、アウタボックス19の長手方向に沿って伸縮可能なようにアウタボックス19内に収嵌されたインナボックス20とを有する。アウタボックス19の外側を向く側面には、オペレータが把持する略U字状の取っ手23が設けられている。インナボックス20の先端には、水平な軸回りに回動可能にフロート21が枢支されている。また、インナボックス20の先端には、フロート21が枢支されている側の対向側に、オペレータが手を掛けることができる円筒状のハンドル24が設けられている。
【0032】
ここで、このアウトリガ装置10は、センタブラケット16の側面とアウタボックス19の側面に、展開姿勢および格納姿勢に応じた位置を拘束および解除するための二本の姿勢保持ピン41、31がそれぞれ設けられている。
詳しくは、
図3に要部拡大図を示すように、上方に位置するセンタブラケット16の部分には、上記基端側アーム15に対する先端側アーム18の回動による展開姿勢と格納姿勢とを拘束および解除する姿勢保持ピン41が設けられている。ここで、先端側アーム18の回動に対するアウトリガ装置10の「構成部材」は、センタブラケット16およびアウタボックス19が対応する。すなわち、これら構成部材16、19は、オペレータが手動操作で拘束および解除する部位として、構成部材16、19相互が支軸まわりに相対移動する回動移動部になっている。これら「構成部材」は、金属製(例えば高張力鋼)であり、アウトリガ装置として必要な剛性を有している。
【0033】
センタブラケット16の両面には、格納姿勢に応じた位置に、一組の姿勢保持穴16kが設けられている。一組の姿勢保持穴16kは、センタブラケット16をその幅方向に同軸に円形をなして貫通している。さらに、センタブラケット16の両面には、展開姿勢に応じた位置に、三組の姿勢保持穴16u,16m,16sが設けられている。三組の姿勢保持穴16u,16m,16sは、センタブラケット16をその幅方向に同軸に円形をなして貫通している。一組の姿勢保持穴16k、および三組の姿勢保持穴16u,16m,16sは、アウタボックス19の支軸19cを中心とする同一円周上に周方向に離隔して配置されている。
【0034】
三組の姿勢保持穴16u,16m,16sは、各組それぞれが、複数の展開姿勢(この例では、
図6に示す3つの姿勢)に応じた位置に形成されている。本実施形態では、基端側アーム15に対する先端側アーム18の回動による展開姿勢として、3姿勢が設定可能になっている。3つの展開姿勢のうち、センタブラケット16の最も高い位置に形成された上部の姿勢保持穴16uは、
図6に示す最大張り出し姿勢Uに応じた位置に形成されている。
また、3つの展開姿勢のうち、センタブラケット16の最も低い位置に形成された下部の姿勢保持穴16sは、
図6に示す最小張り出し姿勢Sに応じた位置に形成されている。また、3つの展開姿勢のうち、センタブラケット16の上部の姿勢保持穴16uと下部の姿勢保持穴16sとの間の位置に形成された中間部の姿勢保持穴16mは、
図6に示す中間張り出し姿勢Mに応じた位置に形成されている。
【0035】
一方、アウタボックス19には、
図5に要部の断面を示すように、格納姿勢に応じた位置に、円筒をなす姿勢保持穴19kがアウタボックス19の幅方向に沿って設けられている。この姿勢保持穴19kは、格納姿勢に応じた位置において、一組の姿勢保持穴16kと同軸となる位置に設けられている。
これにより、アウタボックス19の姿勢保持穴19kは、アウタボックス19の支軸19cを中心とする一組の姿勢保持穴16k、および三組の姿勢保持穴16u,16m,16sと同一円周上に配置される。なお、本実施形態の例では、アウタボックス19には、格納姿勢に応じた位置において、一組の姿勢保持穴16kと同軸となる位置にボス19bが固定されており、このボス19bの内面がアウタボックス19の姿勢保持穴16kになっている。
【0036】
そして、姿勢保持ピン41は、各組の姿勢保持穴16k、16u,16m,16sに対して僅かな隙間を隔てて挿入可能な外径寸法、およびセンタブラケット16の両面に亘って貫通可能な軸長をもつ中実円筒状の軸部43を有する。軸部43は、金属製(例えば機械構造用炭素鋼)であり、アウトリガ装置の姿勢拘束のために必要な剛性を有している。
これにより、姿勢保持ピン41は、展開姿勢および格納姿勢に応じた位置で各組の姿勢保持穴16k、16u,16m,16sに挿抜され、各姿勢保持穴16k、16u,16m,16sに挿入されたときには、展開姿勢および格納姿勢に応じた位置で、上記構成部材16、19相互を同軸に貫通することで構成部材16、19相互の相対位置を拘束し、姿勢保持穴から抜かれたときには、構成部材16、19相互の相対位置の拘束が解除されるようになっている。
【0037】
なお、この姿勢保持ピン41は、基端側にはオペレータが手で掴むためのハンドル42が設けられるとともに、姿勢保持ピン41の先端は、大きな面取り部44が形成されて尖頭状をなすとともに、先端部には、軸線と直交方向に進退可能な金属製のプランジャボール45が上下に設けられている。上下のプランジャボール45それぞれは、内蔵されたばねによって径方向外側に向けて押圧されており、内蔵のばねの押圧力を超える力が作用したときには、プランジャボール45が自転しつつ、軸部43の外周面よりも内側まで引き込めるように装着されている。
これにより、オペレータが姿勢保持ピン41のハンドル42を握って先端の面取り部44側から、各組の姿勢保持穴16k、16u,16m,16sへの挿入が容易になっており、さらに、各組の姿勢保持穴16k、16u,16m,16sへの挿入後、プランジャボール45が径方向外側に向けて突設した位置に復帰するので、挿入された位置が保持されるようになっている。
【0038】
ここで、本実施形態においては、
図3に示すように、構成部材16、19の最も外側の両面である、センタブラケット16の両側面16fに、格納姿勢に応じた位置用の一対の保護プレート65と、展開姿勢に応じた位置用の一対の保護プレート61とが装着されている。これらの保護プレート65、保護プレート61は、自己潤滑性を有する樹脂材料から形成されている。この種の樹脂材料としては、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:ふっ素樹脂)等や、その他のエンジニアリングプラスチックを用いることができる。
【0039】
格納姿勢に応じた位置用の一対の保護プレート65は、円環状の板部材であり、姿勢保持ピン41を挿抜可能に形成された挿通孔65nを有する。特に、この保護プレート65は、姿勢保持ピン41を姿勢保持穴16kに挿抜するときに、挿通孔65nの内周面が、プランジャボール45の外周面と摺接する内径寸法を有している。そして、一対の保護プレート65は、各挿通孔65nが姿勢保持穴16kと同軸となる位置にてセンタブラケット16の両側面16fに固定されている(
図5参照)。挿通孔65nの角は、姿勢保持ピン41の挿入時におけるプランジャボール45の転動と引き込みがし易いように面取り加工65mがなされている。
なお、本実施形態では、各保護プレート65は、表側の面に、周方向に離隔した4箇所に、皿ねじ用の装着孔が形成されており、4本の皿ねじ66によってセンタブラケット16の両側面16fに着脱可能に固定される。
【0040】
また、展開姿勢に応じた位置用の一対の保護プレート61は、三組の姿勢保持穴16u,16m,16sを囲繞するようにこれらの円弧状の並びに沿って形成された略瓜状の外周面をもつ板部材である。一対の保護プレート61それぞれは、各姿勢保持穴16u,16m,16sに対応する位置に、姿勢保持ピン41を挿抜可能に形成された3つの挿通孔61u,61m,61sを有する。
【0041】
特に、この保護プレート61は、姿勢保持ピン41を三組の姿勢保持穴16u,16m,16sに挿抜するときに、対応する3つの挿通孔61u,61m,61sの内周面が、プランジャボール45の外周面と摺接する内径寸法を有している。そして、一対の保護プレート61のそれぞれは、各挿通孔61u,61m,61sそれぞれが、三組の姿勢保持穴16u,16m,16sのうちの対応する姿勢保持穴と同軸となる位置になるように、センタブラケット16の両側面16fに固定されている(
図5参照)。
なお、本実施形態では、各保護プレート61は、表側の面に、各挿通孔61u,61m,61sそれぞれの近傍の位置2箇所の計6か所に、皿ねじ用の装着孔が形成されており、これら6本の皿ねじ62によってセンタブラケット16の両側面16fに着脱可能に固定される。
【0042】
さらに、
図4に要部拡大図を示すように、先端側アーム18の先端寄りの位置には、上記アウタボックス19に対する、インナボックス20のスライド移動によるインナボックス20の展開姿勢と格納姿勢とを拘束および解除する姿勢保持ピン31が設けられている。
ここで、インナボックス20のスライド移動に対するアウトリガ装置10の「構成部材」は、アウタボックス19およびインナボックス20が対応する。すなわち、これら構成部材19、20は、オペレータが手動操作で拘束および解除する部位として、構成部材19、20相互が長手方向に沿って相対移動するスライド移動部になっている。これら「構成部材」は、金属製(例えば高張力鋼)であり、アウトリガ装置として必要な剛性を有している。
【0043】
アウタボックス19の先端寄りの位置には、格納姿勢と格納姿勢とに共通して、アウタボックス19をその幅方向に同軸に円形をなす一組の姿勢保持穴19dがアウタボックス19の両面に貫通して設けられている。
さらに、インナボックス20には、格納姿勢と展開姿勢に応じた位置に、インナボックス20をその幅方向に同軸に円形(またはスライド方向を短軸とする長穴)をなして貫通する四組の姿勢保持穴20u,20m,20s、20kがインナボックス20の両面に貫通して設けられている。四組の姿勢保持穴20u,20m,20s、20kは、各組それぞれが、格納姿勢と複数の展開姿勢(この例では、
図6に示す3つの姿勢)とに応じた位置に形成されている。四組の姿勢保持穴20k、20u,20m,20sは、インナボックス20のスライドする軸線に沿って同一直線上に離隔して配置されている。
【0044】
本実施形態では、
図6に示すように、格納姿勢に対応する位置として、四組の姿勢保持穴のうち、インナボックス20の先端寄りの最も低い位置に形成された姿勢保持穴20kを、格納姿勢に対応する姿勢保持穴として使用している。また、姿勢保持穴20kは、
図6に示す最小張り出し姿勢Sに応じた姿勢保持穴としても兼用している。そして、アウタボックス19に対するインナボックス20のスライド移動による展開姿勢として、姿勢保持穴20kを含めた4姿勢が設定可能になっており、4つの展開姿勢のうち、インナボックス20の最も高い位置に形成された上部の姿勢保持穴20uは、
図6に示す最大張り出し姿勢Uに応じた位置に形成されている。
【0045】
また、4つの展開姿勢のうち、インナボックス20の上部の姿勢保持穴20uと下部の姿勢保持穴20kとの間の位置に形成された中間部の姿勢保持穴20s,20mは、
図6に示す中間張り出し姿勢Mに応じた位置に形成されている。なお、インナボックス20のスライド移動に対するアウトリガ装置10の構成部材19、20の横断面の構成は、寸法が相違する他は基本的に、
図5に横断面を示した上記構成部材16、19と同様なので説明を省略する。また、姿勢保持ピン31の構成についても、上述した姿勢保持ピン41と同様の構成なので説明を省略する。
【0046】
ここで、本実施形態において、インナボックス20のスライド移動による展開姿勢と格納姿勢に対しては、
図4に示すように、構成部材19、20の最も外側の両面である、アウタボックス19の両側面19sに、格納姿勢と格納姿勢とに共通して、一対の保護プレート71が装着されている。
【0047】
この保護プレート71は、円環状の板部材であり、自己潤滑性を有する樹脂材料から形成されている。この種の樹脂材料としては、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:ふっ素樹脂)等や、その他のエンジニアリングプラスチックを用いることができる。
【0048】
この一対の保護プレート71は、姿勢保持ピン31を挿抜可能に形成された挿通孔71nを有する。特に、各保護プレート71は、姿勢保持ピン31を姿勢保持穴19dに挿抜するときに、挿通孔71nの内周面が、プランジャボール35の外周面と摺接する内径寸法を有している。
そして、一対の保護プレート71は、各挿通孔71nが姿勢保持穴19dと同軸となる位置にてアウタボックス19の両側面19sに固定されている。挿通孔71nの角は、姿勢保持ピン31の挿入時におけるプランジャボール35の転動と引き込みがし易いよう、面取り加工(図示略)がなされている。
なお、本実施形態では、各保護プレート71は、表側の面に、周方向に離隔した4箇所に、皿ねじ用の装着孔が形成されており、4本の皿ねじ72によってアウタボックス19の両側面19sに着脱可能に固定される。
【0049】
次に、上記アウトリガ装置10を備えるクローラクレーン1の動作、および作用効果について説明する。
このクローラクレーン1では、クレーン作業を行う場合、オペレータは、各アウトリガ装置10を格納姿勢から展開姿勢にして機体2の安定を図る。つまり、オペレータは、まず、各アウトリガ装置10を機体2の側方に手で旋回させて上記張り出し位置に固定する。次いで、オペレータは、各アウトリガ装置10の上部に装着されている姿勢保持ピン41を姿勢保持穴16kの位置から手で引き抜き、先端側アーム18の拘束を解除する。
【0050】
次いで、オペレータは、先端側アーム18を伸縮用ガススプリング17の反力によって手で展開させ、上記3つの展開位置のうちオペレータの所期の展開位置にて、回動移動部の構成部材16,19相互を同軸に貫通するように上部側の姿勢保持ピン41を姿勢保持穴16u,16m,16sのいずれか対応する位置に挿入する。これにより、構成部材16,19相互の位置を拘束し、先端側アーム18の展開位置を保持することができる。
【0051】
さらに、オペレータは、各アウトリガ装置10の下部に装着されている姿勢保持ピン31を姿勢保持穴19dから手で引き抜き、各アウトリガ装置10のインナボックス20の拘束を解除する。次いで、オペレータは、各アウトリガ装置10のインナボックス20を手で引き出し、上記3つの引き出し位置のうちオペレータの所期の引き出し位置にて、スライド移動部の構成部材19,20相互を同軸に貫通するように下部側の姿勢保持ピン31を姿勢保持穴19dに挿入する。これにより、構成部材19,20相互の位置を拘束し、インナボックス20の引き出し位置を保持することができる。
【0052】
その後、オペレータは、各アウトリガ装置10の伸縮用油圧シリンダ11を駆動することによって、
図6に示すように、インナボックス20下部に設けられたフロート21を地上GLに接地させる。オペレータは、各アウトリガ装置10によって機体2を所望の高さまで持ち上げて機体2の安定を図り、全周同一の吊上げ性能を確保する。
【0053】
このようにして、オペレータは、各アウトリガ装置10を所望の展開状態に設置した後に、クレーン装置6のブーム7を旋回、起伏、伸縮させるとともに、ウインチにより吊荷の巻上げ、巻下げを適宜行って所望のクレーン作業を行うことができる。なお、クローラクレーン1を移動する場合には、オペレータは、各アウトリガ装置10を展開姿勢から格納姿勢にしてアウトリガ装置10全体を機体2の上部に格納するが、その手順は上記展開姿勢とする際の逆手順によるため説明を省略する。
【0054】
ここで、オペレータが手動で拘束および解除する、この種のアウトリガ装置において、従来は、
図8に示したように、姿勢保持ピン120の先端部は、円環状の溝120mに松葉ピン120pを径方向から手で嵌め込むことにより、挿入位置での姿勢保持ピン120の抜けを防止するようになっていたので、姿勢保持ピン120の挿抜性が悪いという問題があった。
【0055】
これに対し、本実施形態のクローラクレーン1によれば、アウトリガ装置10上部の回動移動部には、構成部材16、19の最も外側の両面16fに、姿勢保持穴16kと同軸に且つ姿勢保持ピン41を挿抜可能に形成された挿通孔65nを有する樹脂製の保護プレート65、および姿勢保持穴16k、16u,16m,16sと同軸に且つ姿勢保持ピン41を挿抜可能に形成された挿通孔61u,61m,61sを有する樹脂製の保護プレート61が装着されているので、これら保護プレート65、61の自己潤滑性により、オペレータは、姿勢保持ピン41を各姿勢保持穴16k、16u,16m,16sに対して円滑に挿抜することができる。よって、姿勢保持ピン41の挿抜性が向上する。
【0056】
ここで、仮に、保護プレート65、61を装着しない場合、例えば
図7に比較例を示すように、松葉ピン120pを排して、上記実施形態のようにプランジャボール45を有する姿勢保持ピン41を用いれば、松葉ピン120pを用いるものに比べて、姿勢保持ピン41の挿抜性が向上する。
しかし、この場合であっても、同図において、姿勢保持穴16kの外側面の周囲は、姿勢保持ピン41の先端や外周面(特に、プランジャボール45)との金属同士の接触が生じ、姿勢保持穴16kの周囲の塗装が剥離したり、塗装の剥離により錆が発生したりするおそれがある。
【0057】
これに対し、本実施形態のアウトリガ装置10であれば、姿勢保持ピン41を姿勢保持穴16k、16u,16m,16sに挿入する際には、回動移動部の構成部材16、19の最も外側の両面16fにそれぞれ装着されている一対の保護プレート65、61が樹脂製なので、各姿勢保持穴16k、16u,16m,16sの入口側と出口側での姿勢保持ピン41と各姿勢保持穴16k、16u,16m,16s相互の金属接触を防止し、各姿勢保持穴16k、16u,16m,16s周囲の塗装の剥離を防止または抑制できる。したがって、錆の発生や進行を防止または抑制し、製品の外観品質を向上させることができる。
【0058】
同様にして、アウトリガ装置10下部のスライド移動部には、構成部材19、20の最も外側の両面19sに、姿勢保持穴19dと同軸に且つ姿勢保持ピン31を挿抜可能に形成された挿通孔71nを有する樹脂製の保護プレート71が装着されているので、この保護プレート71の自己潤滑性により、オペレータは、姿勢保持ピン31を姿勢保持穴19dに対して円滑に挿抜することができる。よって、姿勢保持ピン31の挿抜性が一層向上する。
【0059】
そして、姿勢保持ピン31を姿勢保持穴19dに挿入する際には、スライド移動部の構成部材19、20の最も外側の両面16fにそれぞれ装着されている一対の保護プレート71が樹脂製なので、姿勢保持穴19dの入口側と出口側での姿勢保持ピン31と姿勢保持穴19d相互の金属接触を防止し、姿勢保持穴19d周囲の塗装の剥離を防止または抑制できる。したがって、錆の発生や進行を防止または抑制し、製品の外観品質を向上させることができる。
【0060】
以上説明したように、このアウトリガ装置10を備えるクローラクレーン1によれば、アウトリガ装置10の格納姿勢および展開姿勢を保持するための姿勢保持ピン41、31の挿抜性を向上させつつ、各姿勢保持穴16k、16u,16m,16s、19d周囲を保護することができる。
【0061】
なお、本発明に係るアウトリガ装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明に係るアウトリガ装置を装備する作業車両として、クローラクレーンを例に説明したが、これに限らず、本発明は、展開姿勢と格納姿勢とをオペレータが手動操作で拘束および解除する仕様のアウトリガ装置を装備する作業車両であれば、種々の作業車両に適用可能であることは勿論である。
【0062】
また、例えば上記実施形態のアウトリガ装置10では、センタブラケット16の側面とアウタボックス19の側面に、展開姿勢および格納姿勢に応じた位置を拘束および解除するための二本の姿勢保持ピン41、31がそれぞれ設けられ、各姿勢保持ピン41、31それぞれに対して、専用の保護プレート61、65、71を設けた例を示したが、これに限定されるものではない。
【0063】
すなわち、格納姿勢および展開姿勢を保持するための姿勢保持ピンの挿抜性を向上させつつ、姿勢保持穴周囲を保護する上では、回動移動部の構成部材16,19、およびスライド移動部の構成部材19、20のうちの最も外側の面の少なくとも一箇所に対して保護プレートを装着すれば、本発明に係るアウトリガ装置の作用効果を奏することができる。
また、例えば上記実施形態では、各姿勢保持ピン41、31それぞれに対して、専用の保護プレート61、65、71を設けた例を示したが、これに限定されず、例えば、上下の姿勢保持ピン41、31に同一の部品を用いて共通化し、それに応じて保護プレート61、65、71の厚さを異ならせることにより、回動移動部とスライド移動部の部品を共通にすることができる。
また、例えば、回動移動部とスライド移動部の各姿勢保持ピン41、31は専用とする一方、保護プレート61、65、71を、すべて同一の円環状として共通化(この場合には保護プレート61が3枚となる)してもよい。但し、回動移動部の姿勢保持ピン41に対応する保護プレートを、上記実施形態のように、格納姿勢用および展開姿勢用として個別に設ければ、オペレータの展開作業を確実に行えるようにする上で好適である。
【0064】
また、例えば上記実施形態では、
図3等に示す例では、回動移動部の保護プレート61の表面には、複数の個別の展開姿勢に対応した姿勢保持ピン41の挿入位置には何も明記しておらず、そのまま外面としているが、これに限らず、例えば、回動移動部の保護プレート61の表面に、複数の個別の展開姿勢に対応した姿勢保持ピン41の挿入位置を喚起するよう明示しても良い。これは、保護プレート61の表面に直接印刷等しても良いし、全面を覆うシールを更に保護プレート61の表面に張り付けてもよい。この場合に、張り付けるシールは、保護プレート61と同一または僅かに小さい相似形状とすることが好ましい。さらに、張り付けるシールは、その表面に、
図6に示す複数の展開姿勢に応じてそれぞれの位置を区別する表示が示されていることが好ましい。
このような構成であれば、保護プレート61の全面を覆うシールにより、6本の皿ねじ62を隠すことができるため、外観の品質をより向上させることができる。また、そのシール表面に、複数の展開姿勢に応じた位置を明示する表示があれば、オペレータの展開作業を一層確実に行えるように補助する上で好ましい。