(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、取扱い性が良く、優れた耐熱性を有しつつも脆さを発現しないアミドイミド樹脂およびアミドイミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のアミドイミド樹脂が良好な取り扱い性を有しつつ優れた耐熱性、可撓性を発現することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、下記(1)〜(
7)により達成される。
(1)
脂肪族ジカルボン酸化合物(a)、カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)、及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(c)由来の構成単位を含むアミドイミド樹脂であって、各成分が以下の関係(i)および(ii)を満たすアミドイミド樹脂。
【0008】
(i)イソシアネート化合物(c)と(
脂肪族ジカルボン酸化合物(a)+カルボン酸無水物構造を有する化合物(b))のモル比((c)/((a)+(b)))が0.45〜0.75である。
【0009】
(ii)
脂肪族ジカルボン酸化合物(a)とカルボン酸無水物構造を有する化合物(b)のモル比((a)/(b))が0.01〜0.5である。
【0010】
好ましくは、
脂肪族ジカルボン酸化合物(a)、カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)、及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(c)を必須成分とする混合物を反応させて得られるアミドイミド樹脂であって、各成分が上記関係(i)および(ii)を満たすアミドイミド樹脂である。
(2)
上記脂肪族ジカルボン酸化合物(a)が、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、及びドデカン二酸からなる群から選択された少なくとも1つの化合物である、(1)に記載のアミドイミド樹脂。
(
3)(1)
又は(2)に記載のアミドイミド樹脂と、有機溶剤とを含んでなるアミドイミド樹脂組成物。
(
4)上記有機溶剤が窒素原子および硫黄原子のいずれも含まない極性溶剤であることを特徴とする(
3)に記載のアミドイミド樹脂組成物。
(
5)(1)
又は(2)に記載のアミドイミド樹脂、又は(
3)若しくは(
4)に記載のアミドイミド樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
(
6)
脂肪族ジカルボン酸化合物(a)、カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)、及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(c)の各成分が以下の関係(i)および(ii)を満たすように混合し、反応させることを特徴とするアミドイミド樹脂の製造方法。
(7)上記脂肪族ジカルボン酸化合物(a)が、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、及びドデカン二酸からなる群から選択された少なくとも1つの化合物である、(6)に記載のアミドイミド樹脂の製造方法。
【0011】
(i)イソシアネート化合物(c)と(
脂肪族ジカルボン酸化合物(a)+カルボン酸無水物構造を有する化合物(b))のモル比((c)/((a)+(b)))が0.45〜0.75である。
【0012】
(ii)
脂肪族ジカルボン酸化合物(a)とカルボン酸無水物構造を有する化合物(b)のモル比((a)/(b))が0.01〜0.5である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアミドイミド樹脂組成物は、取扱い性が良好で、得られる硬化物は耐熱性に優れつつも脆さを発現しないものであった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアミドイミド樹脂は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物(a)、カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(c)を必須成分とする混合物を特定モル比で反応させて得られることを特徴とするものである。つまり、上記(a)、(b)及び(c)由来の構成単位を含むことを特徴とするものである。
【0015】
好ましくは以下の製造方法によって得られる。
【0016】
1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物(a)、カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)、及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(c)の各成分が以下の関係(i)および(ii)を満たすように混合し、反応させることを特徴とするアミドイミド樹脂の製造方法。
【0017】
(i)イソシアネート化合物(c)と(多価カルボン酸化合物(a)+カルボン酸無水物構造を有する化合物(b))のモル比((c)/((a)+(b)))が0.45〜0.75である。
【0018】
(ii)1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物(a)とカルボン酸無水物構造を有する化合物(b)のモル比((a)/(b))が0.01〜0.5である。
【0019】
1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物(a)としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でも、柔軟性の点から脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。
【0020】
カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)は、1分子中にカルボン酸無水物構造を1個以上有することが好ましく、トリカルボン酸の無水物を必須成分として含むことが好ましい。
【0021】
トリカルボン酸の無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
また、テトラカルボン酸の無水物を併用しても良く、テトラカルボン酸の無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,3,2’,3’−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,8,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,2,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等が挙げられ、これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
なお、本発明では1分子中に2個以上のカルボキシル基とカルボン酸無水物構造を有する化合物は、上記多価カルボン酸化合物(a)に属することとする。
【0024】
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(c)としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が使用可能であり、たとえばo−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、またイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ノルボヌレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族のイソシアネートなどが挙げられ、また、これらイソシアネート化合物の一種類以上のビュレット体、または、ヌレート体等のポリイソシアネート原料も使用することができる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0025】
これらの中でも、得られたアミドイミド樹脂の溶媒への溶解性の点から、1分子中に2個〜4個のイソシアネート基を有することが好ましく、脂環式構造を有する化合物であることがさらに好ましく、中でもイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0026】
1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物(a)、カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(c)を必須成分とする混合物の反応においては、(多価カルボン酸化合物(a)+カルボン酸無水物構造を有する化合物(b))1モルに対し、イソシアネート化合物(c)を0.75モル以下とすることが好ましい。より好ましくは0.73モル以下、さらに好ましくは0.71モル以下である。これら以下で使用することで、アミドイミド樹脂の分子量を適度な範囲に制御できるため、溶媒への溶解性がより良好となる。また、(多価カルボン酸化合物(a)+カルボン酸無水物構造を有する化合物(b))1モルに対し、イソシアネート化合物(c)を0.45モル以上とすることが好ましい。より好ましくは0.5モル以上、さらに好ましくは0.55モル以上である。これら以上で使用することで残存する多価カルボン酸化合物(a)やカルボン酸無水物構造を有する化合物(b)が低減できるため、低分子量物による耐熱性低下を引き起こすことがない。
【0027】
また、カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)1モルに対し、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物(a)を0.5モル以下とすることが好ましい。より好ましくは0.4モル以下、さらに好ましくは0.3モル以下である。また、カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)1モルに対し、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物(a)を0.01モル以上とすることが好ましい。より好ましくは0.02モル以上、さらに好ましくは0.03モル以上である。これらの範囲で使用することで、イミド結合(酸無水物基とイソシアネート基との反応により生成)やアミド結合(カルボキシル基とイソシアネート基との反応により生成)の量を適度な範囲に制御できるため、溶媒への溶解性や耐熱性が共に良好となる。
【0028】
アミドイミド樹脂の好ましい製造方法としては、後述する有機溶剤中で、多価カルボン酸化合物(a)、カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(c)を、温度50〜250℃で、好ましくは130〜180℃で、1〜30時間反応させればよい。
【0029】
本発明においては、上記で得られたアミドイミド樹脂とカルボキシル基と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物とを反応させて、高分子量化アミドイミド樹脂とすることもできる。
【0030】
詳しくは、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸化合物(a)、カルボン酸無水物構造を有する化合物(b)、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物(c)を反応させ、さらにカルボキシル基と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物とを反応させる。
【0031】
カルボキシル基と反応し得る官能基を有する化合物としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。具体的には、エポキシ化合物としてはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等が、オキサゾリン化合物としては1,3−フェニレンビスオキサゾリン等が挙げられる。これらの中でも、得られるアミドイミド樹脂の特性、保存安定性の点から、脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
【0032】
また、カルボキシル基を有するアミドイミド樹脂とカルボキシル基と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物との反応は、アミドイミド樹脂が有するカルボキシル基1モルに対し、カルボキシル基と反応し得る官能基を0.9モル以下とすることが好ましい。より好ましくは0.8モル以下、さらに好ましくは0.7モル以下である。これら以下で使用することで、得られる高分子量化アミドイミド樹脂の分子量を適度な範囲(好ましくは重量平均分子量が1000以上100000以下)に制御できるため、有機溶剤への溶解性を損なうことがない。また、アミドイミド樹脂が有するカルボキシル基1モルに対し、カルボキシル基と反応し得る官能基を0.1モル以上とすることが好ましい。より好ましくは0.15モル以上、さらに好ましくは0.2モル以上である。これら以上で使用することで低分子量で残存するアミドイミド樹脂が低減できるため、耐熱性低下を引き起こすことがない。
【0033】
ここでも、後述する有機溶剤中で、必要によりトリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のリン化合物、金属の有機酸塩または無機酸塩(塩化リチウム等)あるいはキレート化合物等の反応触媒を添加して反応させることができる。
【0034】
ここでの反応温度は50〜150℃が好ましい。より好ましい反応温度上限は130℃、さらに好ましくは120℃で、この温度以下で反応させることで、副反応に起因するゲル化懸念をより低減できる。また、より好ましい反応温度下限は55℃、さらに好ましくは60℃である。この温度以上とすることで、速やかに反応が進行する。
【0035】
本発明では、アミドイミド樹脂や高分子量化アミドイミド樹脂が有するカルボキシル基に対して、カルボキシル基と反応し得る官能基を有するラジカル重合性モノマーを反応させて、ラジカル重合性不飽和結合を含有するアミドイミド樹脂とすることもできる。
【0036】
カルボキシル基と反応し得る官能基としては、イソシアネート基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキサゾリン基、アジリジン基、オキセタニル基等が挙げられ、ラジカル重合性モノマーの具体例としては、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、N−(メタ)アクリロイルアジリジン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0037】
本発明のアミドイミド樹脂組成物の溶媒として用いる有機溶剤としては、環境への負担軽減の点から、窒素原子および硫黄原子のいずれも含まない極性溶剤を主成分(好ましくは全有機溶剤中90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上100質量%以下)として含むことが好ましい。このような汎用溶媒を使用することで、電気電子産業等の各種分野での適用が容易となる。
【0038】
本発明における有機溶剤としては、環境面、カルボン酸無水物やイソシアネート基と反応しない、有機溶剤を含むアミドイミド樹脂組成物の取扱い性、保存安定性の点から、例えば水酸基を有さないエーテル系、エステル系、ケトン系等の溶剤が挙げられ、特にエーテル系溶剤が好ましい。
【0039】
エーテル系溶剤としては、公知のものが使用可能であるが、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;等が挙げられる。
【0040】
有機溶剤の使用量は、本発明のアミドイミド樹脂100質量部に対し、900質量部以下、より好ましくは500質量部以下である。好ましい下限値としては、アミドイミド樹脂100質量部に対し、30質量部以上、より好ましくは60質量部以上である。上記数値範囲に制御することで、組成物の取り扱い性や保存安定性、さらには塗布作業時の効率が向上する。
【0041】
本発明のアミドイミド樹脂組成物は、本発明の製造方法によりアミドイミド樹脂を得る工程と、アミドイミド樹脂と他の成分とを配合する工程(配合工程)とを有する製造方法により得ることができる。
【0042】
本発明においては、アミドイミド樹脂と有機溶剤とを含んでなる樹脂組成物を塗布、乾燥して使用することもできるが、さらに反応性希釈剤を含有する組成物としてもよい。このような組成物とすることで、熱や光反応を経て架橋構造を有する塗膜(硬化物)が得られることとなり、より優れた特性となる。
【0043】
反応性希釈剤としては、ラジカル重合性樹脂とラジカル重合性モノマーとが挙げられる。
【0044】
ラジカル重合性樹脂としては、不飽和ポリエステル、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等が使用できる。
【0045】
ラジカル重合性モノマーとしては、単官能モノマー(ラジカル重合性二重結合が1個)と多官能モノマー(ラジカル重合性二重結合が2個以上)のいずれも使用可能である。ラジカル重合性モノマーは重合に関与するため、得られる硬化物の特性を改善する上に、各種反応時の溶媒としても使用でき、さらには、樹脂組成物の粘度を調整することもできる。ラジカル重合性樹脂及び/又はラジカル重合性モノマーを使用する場合の好ましい使用量は、本発明のアミドイミド樹脂100質量部に対し、300質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。好ましい下限値としては、アミドイミド樹脂100質量部に対し、5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。
【0046】
ラジカル重合性モノマーの具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルメチルマレイミド、N−(2,4,6−トリブロモフェニル)マレイミド、N−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]マレイミド、N−オクタデセニルマレイミド、N−ドデセニルマレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(1−ヒドロキシフェニル)マレイミド等のN−置換マレイミド基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリアジン、デンドリチックアクリレート等の(メタ)アクリル系単量体;n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等の(ヒドロキシ)アルキルビニル(チオ)エーテル;(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のラジカル重合性二重結合を有するビニル(チオ)エーテル;無水マレイン酸等の酸無水物基含有単量体あるいはこれをアルコール類、アミン類、水等により酸無水物基を開環変性した単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル系単量体;アリルアルコール、トリアリルシアヌレート等、ラジカル重合可能な二重結合を1個以上有する化合物が挙げられる。
【0047】
これらは、用途や要求特性に応じて適宜選択され、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
本発明のアミドイミド樹脂組成物と反応性希釈剤とを含んでなる組成物は、ベンゾイルパーオキサイドやクメンハイドロパーオキサイド等の公知の熱重合開始剤や公知の光重合開始剤を使用することにより、熱や光によるラジカル重合が可能となる。
【0049】
本発明のアミドイミド樹脂組成物には、さらに必要に応じて、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、着色用顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤等の公知の添加剤を添加してもよい。また、各種強化繊維を補強用繊維として用い、繊維強化複合材料とすることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、下記実施例において、物性の評価は次のようにして行なった。
1.化学構造;FT−IR(サーモサイエンティック社製、NEXUS670)を用いて分析した。
2.酸価;各溶液約0.3gを精秤し、アセトン90g/水10g混合溶媒に溶解し、0.1規定のKOH水溶液を滴定液として用いて、自動滴定装置(平沼産業社製)により酸価を測定した。
3.重量平均分子量(Mw);ポリスチレンを標準物質とし、テトラヒドロフランを溶離液としてHLC−8220GPC(東ソー社製)によるGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法にて重量平均分子量(Mw)を測定した。
4.熱機械特性(TMA);各溶液100部に、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(エポキシ当量209.9、軟化点95.5℃)19.3部(固形分重量比で70/30)、トリフェニルホスフィン(硬化触媒)0.6部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート41.5部を混合して熱硬化性樹脂溶液を調製した。ポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥後の膜厚が約80μmになるように塗布し、70℃で20分間乾燥させ、200℃で1時間硬化させて冷却した後、剥離した硬化塗膜を幅5mmに切り出して測定用試料とした。サーモメカニカルアナライザーBruker AXS TMA 4000(ブルカー・エイエックスエス(株))を用い、チャック間距離20mmで引っ張りモードにより熱分析し、150〜200℃における線膨張率(CTE
150〜200)により評価した。
5.屈曲性;熱機械特性(TMA)評価のときと同様に熱硬化性樹脂溶液を調製した。厚さ0.5mmの銅板上に乾燥後の膜厚が約20μmになるように塗布し、70℃で20分間乾燥させ、200℃で1時間硬化させて試験基板とした。この試験基板を用いて、円筒形マンドレル法によりマンドレル径φ10mmにおける硬化塗膜の屈曲性を評価した。
合成例1
攪拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート247g、アジピン酸4g(0.03mol)、無水トリメリット酸162g(0.84mol)、およびイソホロンジイソシアネート133g(0.6mol)を加え、140℃まで昇温し、この温度で20時間反応させた。系内は褐色クリア液体となり、赤外スペクトル測定によりイソシアネート基の特性吸収である2260cm−1の消滅を確認した。ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55gを加え、本発明のアミドイミド樹脂A−1を45%含むジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート溶液を得た。酸価124mgKOH/g(固形分換算)、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)1600であった。
合成例2
合成例1と同様の装置を用い、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート198g、アジピン酸22g(0.15mol)、無水トリメリット酸115g(0.6mol)、およびイソホロンジイソシアネート100g(0.45mol)を加え、140℃まで昇温し、この温度で20時間反応させた。系内は褐色クリア液体となり、赤外スペクトル測定によりイソシアネート基の特性吸収である2260cm−1の消滅を確認した。ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート44gを加え、本発明のアミドイミド樹脂A−2を45%含むジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート溶液を得た。酸価170mgKOH/g(固形分換算)、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)1300であった。
比較合成例1
合成例1と同様の装置を用い、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート248g、ピロメリット酸二無水物6g(0.03mol)、無水トリメリット酸162g(0.84mol)、およびイソホロンジイソシアネート133g(0.6mol)を加え、140℃まで昇温し、この温度で20時間反応させた。系内は褐色クリア液体となり、赤外スペクトル測定によりイソシアネート基の特性吸収である2260cm−1の消滅を確認した。ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート55gを加え、比較用アミドイミド樹脂B−1を45%含むジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート溶液を得た。酸価122mgKOH/g(固形分換算)、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)1200であった。
比較合成例2
合成例1と同様の装置を用い、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート282g、アジピン酸66g(0.45mol)、無水トリメリット酸115g(0.6mol)、およびイソホロンジイソシアネート167g(0.75mol)を加え、140℃まで昇温した。約10時間反応させたところで系内に不溶析出物が多量に生成し、不均一となったため、反応を打ち切った。
合成例で得た本発明のアミドイミド樹脂A−1〜A−2、比較合成例1で得た比較用アミドイミド樹脂B−1を用いて、熱機械特性、屈曲性を評価した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
a:多価カルボン酸化合物のモル数(mol)
b:カルボン酸無水物構造を有する化合物のモル数(mol)
c:イソシアネート化合物のモル数(mol)
CTE
150〜200:150〜200℃における線膨張率(ppm/K)
本発明のアミドイミド樹脂A−1〜A−2は熱機械特性が良好であり、多価カルボン酸化合物を使用していない比較用アミドイミド樹脂B−1よりも屈曲性が良好であることがわかった。また、比較合成例2のように多価カルボン酸化合物が多過ぎると溶剤溶解性が不足して目的の樹脂が得られないことから、使用割合として適切な領域があることがわかった。