特許第6581008号(P6581008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581008
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】スライド型可変抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 10/00 20060101AFI20190912BHJP
   H01C 10/38 20060101ALI20190912BHJP
   H01C 10/44 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   H01C10/00 Q
   H01C10/00 B
   H01C10/38 A
   H01C10/44 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-25538(P2016-25538)
(22)【出願日】2016年2月15日
(65)【公開番号】特開2017-147251(P2017-147251A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】信濃 正紹
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−168527(JP,A)
【文献】 実開昭61−112542(JP,U)
【文献】 特開昭61−099304(JP,A)
【文献】 実開昭59−135603(JP,U)
【文献】 特開2011−077316(JP,A)
【文献】 実開昭57−083702(JP,U)
【文献】 米国特許第04518369(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 10/00
H01C 10/38
H01C 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長孔が形成されたケースと、前記長孔から突出する操作部を有すると共に、前記長孔の長手方向に沿ってスライド移動可能に前記ケース内に保持されたスライダと、前記スライダに固定された摺動子と、前記摺動子が摺接する抵抗体パターンが設けられた絶縁基板と、を備えたスライド型可変抵抗器であって、
前記スライダには、当該スライダのスライド方向において前記操作部と対向する対向部が変位可能に設けられていると共に、前記対向部が前記操作部側に変位させられた時に前記対向部を復帰させるような弾性力を作用させる付勢部が設けられている、
ことを特徴とするスライド型可変抵抗器。
【請求項2】
前記対向部と前記付勢部とが、同一部材によって構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスライド型可変抵抗器。
【請求項3】
前記スライダには、弾性を有する金属板材からなる金属部材が一体化されており、前記対向部及び前記付勢部が前記金属部材によって構成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のスライド型可変抵抗器。
【請求項4】
前記金属部材は、前記スライド方向に延びる第1延在部と、当該第1延在部から折り曲げられて前記操作部の突出する方向に延びる第2延在部と、を有し、前記第2延在部が前記対向部を構成している、
ことを特徴とする請求項3に記載のスライド型可変抵抗器。
【請求項5】
前記スライダは、合成樹脂材料によって構成され、
前記金属部材に前記摺動子が一体に形成されていると共に、前記金属部材には、前記対向部と前記摺動子との間に基部が設けられており、
前記基部が、前記スライダに固定されている、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のスライド型可変抵抗器。
【請求項6】
前記スライド方向と直交する方向における前記スライダの外周の一方の面には、前記ケースの一側面と弾接する弾性部が設けられ、当該ケースの一側面に対する前記弾性部の弾性力が、前記付勢部の弾性力よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載のスライド型可変抵抗器。
【請求項7】
前記対向部の、前記スライド方向と直交する方向における一方側の端部には、弧状に形成された曲面部を有し、前記曲面部と対向する位置にある前記操作部の外周面が弧状に形成されている、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載のスライド型可変抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド型可変抵抗器に関し、特に位置検出精度の優れたスライド型可変抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどではオートフォーカスによるピント合わせのために、鏡筒部の移動が自動的に行われるように構成されている。この鏡筒部の移動を制御する為にはピントを合わせようとするレンズが設けられた鏡筒部の位置を検出する必要がある。
【0003】
昨今、鏡筒部の位置検出のためにスライド型可変抵抗器が用いられるようになった。スライド型可変抵抗器は、スライド移動可能に配置されたスライダの一部である操作部が、被検出体である鏡筒部の外周に設けられたガイド溝内に挿入された状態で配設される。ガイド溝はガイド溝自身の長手方向が上述した鏡筒部の回転方向に対して斜めになる様に形成され、スライド型可変抵抗器は、スライダのスライド方向がガイド溝の長手方向に対して斜めになるように配置されている。
【0004】
スライド型可変抵抗器では、スライダのスライド方向がガイド溝の長手方向に対して斜めになるように配置されているため、操作部がスライド方向に対して斜め方向に押圧されることにより、スライダがスライド移動を行なう。スライド型可変抵抗器はスライダの位置に対応した結果を出力することで被検出体である鏡筒部の位置を検出することができる。
【0005】
従来のスライド型可変抵抗器としては、下記の特許文献1に記載のスライド型可変抵抗器900が知られている。図13を用いて、スライド型可変抵抗器900について説明する。
【0006】
スライド型可変抵抗器900は、一方の面に抵抗体パターン911aと導電体パターン911bとが並んで延設された絶縁基板911と、抵抗体パターン911aおよび導電体パターン911bに摺接する摺動子912と、操作部913bを有し、摺動子912を保持するとともに絶縁基板911の長手方向に沿ってスライド移動可能なスライダ913と、絶縁基板911と離間した状態で対向配置されるとともに長孔914bが設けられた天面914aと天面914aから絶縁基板911側に向かって天面914aの長手方向に沿って設けられた互いに対向する一対の側壁914cとを有するケース914と、を備え、操作部913bが長孔914bに挿通された状態で、スライダ913がスライド移動するスライド型可変抵抗器である。スライダ913には、一方の側壁914cに弾接しスライダ913を他方の側壁914cに圧接させる弾性部913cが設けられている。尚、絶縁基板911は、ケース914と一体化される取付け板916に支持されている。
【0007】
このような構成によって、スライド方向に対して斜め方向の操作力を受けて操作された場合でも、位置検出精度の良いスライド型可変抵抗器900を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−168527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
スライド型可変抵抗器900のような構造の場合、このスライド型可変抵抗器900が取り付けられたデジタルカメラ等の電子機器の可動部材を回転移動させることによって、操作部913bを電子機器に設けられたガイド溝内で円滑に移動させるためには、操作部913bとガイド溝との間に、ある程度のクリアランスが必要となる。しかしながら、このクリアランスが必要以上に大きくなると、それがガタツキの原因となり、可動部材の回転位置検出の精度が高められないという課題があった。また、回転位置検出の精度を上げるために、クリアランスを小さくすると、部品寸法のバラツキにより、スライド型可変抵抗器900のスライダ913が駆動しない、もしくは部品が削れる等の不具合が生じる可能性があった。
【0010】
本発明はこのような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、操作部が係合する被検出体のガイド溝と操作部との間のガタツキを低減して、位置検出精度の優れたスライド型可変抵抗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明のスライド型可変抵抗器は、長孔が形成されたケースと、前記長孔から突出する操作部を有すると共に、前記長孔の長手方向に沿ってスライド移動可能に前記ケース内に保持されたスライダと、前記スライダに固定された摺動子と、前記摺動子が摺接する抵抗体パターンが設けられた絶縁基板と、を備えたスライド型可変抵抗器であって、前記スライダには、当該スライダのスライド方向において前記操作部と対向する対向部が変位可能に設けられていると共に、前記対向部が前記操作部側に変位させられた時に前記対向部を復帰させるような弾性力を作用させる付勢部が設けられている、という特徴を有する。
【0012】
このように構成されたスライド型可変抵抗器は、スライダに設けられている対向部が操作部側に変位させられたとき、対向部は復帰しようとして、操作部から遠ざかるような弾性力が付勢部によって作用するので、操作部と対向部とを被検出体のガイド溝に挿入することで、操作部とガイド溝との間のガタツキを低減して、被検出体の位置検出の精度を高めることができる。
【0013】
また、上記の構成において、前記対向部と前記付勢部とが、同一部材によって構成されている、という特徴を有する。
【0014】
このように構成されたスライド型可変抵抗器は、部品点数を少なくすることができる。
【0015】
また、上記の構成において、前記スライダには、弾性を有する金属板材からなる金属部材が一体化されており、前記対向部及び前記付勢部が前記金属部材によって構成されている、という特徴を有する。
【0016】
このように構成されたスライド型可変抵抗器は、耐久性を高めることができる。
【0017】
また、上記の構成において、前記金属部材は、前記スライド方向に延びる第1延在部と、当該第1延在部から折り曲げられて前記操作部の突出する方向に延びる第2延在部と、を有し、前記第2延在部が前記対向部を構成している、という特徴を有する。
【0018】
このように構成されたスライド型可変抵抗器は、金属部材を構成する金属板材をL字状に折り曲げることによって、対向部に弾性力を作用させる付勢部を容易に構成することができる。
【0019】
また、上記の構成において、前記スライダは、合成樹脂材料によって構成され、前記金属部材に前記摺動子が一体に形成されていると共に、前記金属部材には、前記対向部と前記摺動子との間に基部が設けられており、前記基部が、前記スライダに固定されている、という特徴を有する。
【0020】
このように構成されたスライド型可変抵抗器は、対向部を構成している金属部材で摺動子を形成しているので、部品点数の増加を抑制することができる。また、対向部と摺動子との間に位置する金属部材の基部がスライダに固定されているので、対向部が弾性力に抗して変位した場合でも、その影響を摺動子に及ぼしにくくすることができる。その結果、検出精度を維持することができる。
【0021】
また、上記の構成において、前記スライド方向と直交する方向における前記スライダの外周の一方の面には、前記ケースの一側面と弾接する弾性部が設けられ、当該ケースの一側面に対する前記弾性部の弾性力が、前記付勢部の弾性力よりも大きい、という特徴を有する。
【0022】
このように構成されたスライド型可変抵抗器は、弾性部を設けることによって、スライド方向と直交する方向におけるスライダのケース内におけるガタツキを抑制できるので、精度の良い検出が可能となる。
【0023】
また、上記の構成において、前記対向部の、前記スライド方向と直交する方向における一方側の端部には、弧状に形成された曲面部を有し、前記曲面部と対向する位置にある前記操作部の外周面が弧状に形成されている、という特徴を有する。
【0024】
このように構成されたスライド型可変抵抗器は、操作部と対向部とが挿入される被検出体のガイド溝の角度が変化しても、その角度の変化に対応することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のスライド型可変抵抗器は、スライダに設けられている対向部が操作部側に変位させられたとき、対向部は復帰しようとして、操作部から遠ざかるような弾性力が付勢部によって作用するので、操作部と対向部とを被検出体のガイド溝に挿入することで、操作部とガイド溝との間のガタツキを低減して、被検出体の位置検出の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態におけるスライド型可変抵抗器を構成する各部材を示す分解斜視図である。
図2】スライド型可変抵抗器の外観を示す斜視図である。
図3】スライド型可変抵抗器の平面図と正面図である。
図4】絶縁基板の構造を示す斜視図である。
図5】摺動子が固定されたスライダを示す斜視図である。
図6】絶縁基板にスライダが載置された状態を示す斜視図である。
図7】スライド型可変抵抗器の使用方法の一例を示す模式図である。
図8】金属部材の構造を示す斜視図である。
図9】スライダの構造を示す斜視図である。
図10】金属部材が固定された状態のスライダの構造を示す斜視図である。
図11】スライド型可変抵抗器とガイド溝との関係を示す拡大模式図である。
図12】スライド型可変抵抗器の断面図である。
図13】従来例に係るスライド型可変抵抗器の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[実施形態]
以下、本発明のスライド型可変抵抗器100の実施形態について図面を参照しながら説明する。スライド型可変抵抗器100は、スライド型可変抵抗器100自身が取り付けられたデジタルカメラ等の電子機器の可動部材を回転移動させることによって、操作部21が当該電子機器に設けられたガイド溝GD内で移動可能となるように構成されたスライド型可変抵抗器である。スライド型可変抵抗器100からの出力結果によって操作部21の位置、即ち、電子機器の可動部材の回転移動位置を検出することができる。尚、本発明のスライド型可変抵抗器100の用途はこれに限定されず、例えば、直線的に移動する可動部材の位置検出に用いることもできる。また、本明細書では、特に断りの無い限り、各図面の+X側を右側、−X側を左側、+Y側を後側、−Y側を前側、+Z側を上側、−Z側を下側として説明する。
【0028】
最初に、図1乃至図6を参照して、スライド型可変抵抗器100の全体構成及び各構成部材について簡単に説明する。図1は、スライド型可変抵抗器100を構成する各部材を示す分解斜視図であり、図2は、スライド型可変抵抗器100の外観を示す斜視図である。図3は、図3(a)がスライド型可変抵抗器100の平面図であり、図3(b)がスライド型可変抵抗器100の正面図である。また、図4は、絶縁基板30の構造を示す斜視図であり、図5は、摺動子17が固定された状態のスライダ20を、下側から見た斜視図である。また、図6は、絶縁基板30にスライダ20が載置された状態を示す斜視図である。尚、図4及び図6において、抵抗体パターン31には、導電体パターン33との差を明確にするため、ハッチングを施している。
【0029】
図1に示すように、スライド型可変抵抗器100は、絶縁基板30と、端子35と、金属部材10と、スライダ20と、ケース40と、取付け板49と、を備えて構成されている。
【0030】
図2図3(a)及び図3(b)に示すように、ケース40は、抜き加工および曲げ加工された金属板からなり、矩形状の天面41と天面41に対して垂直方向に向かって天面41の長手方向に沿って設けられた互いに対向する一対の側壁45とを有する。天面41には天面41の長手方向に沿って開口した長孔43が形成されている。
【0031】
ケース40には絶縁性を有した板材から形成された絶縁基板30が取り付けられている。絶縁基板30には、図4に示すように、上側の面に抵抗体パターン31と導電体パターン33とが、並んだ状態で延設されている。抵抗体パターン31は、所定の抵抗値を有するカーボン等の抵抗体が絶縁基板30上に印刷又は塗布されて形成され、導電体パターン33は、銀等の導電性の良い金属粒子を含有した塗膜が絶縁基板30上に印刷又は塗布されて形成されている。
【0032】
また、絶縁基板30には図4に示すように、抵抗体パターン31及び導電体パターン33に接続された複数(本実施形態では3本)の端子35が取り付けられている。端子35は、図3(b)に示すように、絞り加工および曲げ加工された導電性を有した金属材料からなり、位置検出結果を出力するために、被検出体である電子機器(図示せず)に接続される。
【0033】
取付け板49は、抜き加工および曲げ加工された金属板からなり、略長方形状に形成されている。図2及び図3(b)に示すように、取付け板49上に絶縁基板30が重ねて配設される。そして、絶縁基板30、ケース40、及び取付け板49が一体になるように、取付け板49にケース40の係止片が折り曲げられて係止されることでスライド型可変抵抗器100が形成される。スライド型可変抵抗器100は、取付け板49によってデジタルカメラ等の電子機器に取り付けられる。
【0034】
スライド型可変抵抗器100は、長孔43の長手方向に沿ってスライド移動可能にケース40内に保持されたスライダ20を有している。スライダ20は、合成樹脂材料によって構成され、図5及び図6に示すように、その本体である基台部23が略直方体形状に形成されている。基台部23の上側の面(+Z面)には、図2及び図3(b)に示すように、外部からの操作を受ける操作部21及び、操作部21と対向する対向部13が長孔43から突出するように形成されている。スライダ20は、図6に示すように、絶縁基板30の抵抗体パターン31及び導電体パターン33が形成されている側に配置される。
【0035】
図5に示すように、摺動子17は、スライダ20の基台部23の下側の面(−Z面)側に突き出すように設けられている。スライダ20には、弾性を有する金属板材からなる金属部材10が一体化されている。摺動子17は、抜き加工および曲げ加工された金属部材10の一部として形成されている。即ち、金属部材10に摺動子17が一体に形成されている。摺動子17は、金属部材10の基部19(図8(a)参照)から片持ち梁状に延出され先端が二股に分割された一対の摺接片17aを備えている。摺接片17aの先端において円弧状に腕曲している部分が、前述した絶縁基板30に設けられた抵抗体パターン31又は導電体パターン33と摺接する。尚、スライダ20及び金属部材10の詳細な構造については、後に説明する。
【0036】
次に、図7を参照して、スライド型可変抵抗器100の使用方法の一例について説明する。図7は、スライド型可変抵抗器100の使用方法の一例を示す模式図である。図7(a)は、その初期状態を示す模式図であり、図7(b)は、その操作中の状態を示す模式図である。尚、図7(a)及び図7(b)において、GDは、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどの被検出体である鏡筒部(図示せず)に設けられたガイド溝である。
【0037】
図7(a)及び図7(b)に示すように、スライド型可変抵抗器100は、スライド移動可能に配置されたスライダ20の一部である操作部21及び対向部13を鏡筒部の外周に設けられたガイド溝GD内に挿入した状態で配置される。一般的に、被検出体である鏡筒部に設けられるガイド溝は、当該ガイド溝の長手方向が鏡筒部の回転方向に対して斜めになる様に形成される。スライド型可変抵抗器100では、スライダ20のスライド方向D1、即ちケース40及び長孔43の長手方向がガイド溝GDの長手方向に対して斜めになるように配置される。
【0038】
スライド型可変抵抗器100では、スライダ20のスライド方向D1がガイド溝GDの長手方向に対して斜めになるように配置されているため、鏡筒部の回転に連動して操作部21がガイド溝GDによりスライド方向D1に対して斜め方向に押圧され、スライダ20はスライド移動を行なう。
【0039】
スライド型可変抵抗器100は、スライダ20の位置に対応した出力電圧を出力することで鏡筒部の位置を検出することができる。スライダ20は、ケース40の長孔43から操作部21及び対向部13を外方に突出させ、図5で示した摺動子17の一方の摺接片17aを図6で示した抵抗体パターン31に当接させた状態で、ケース40と絶縁基板30との間にケース40の長手方向にスライド移動可能に配置されている。
【0040】
図7(a)に示す初期状態から鏡筒部が回転し、図7(b)に示すようにガイド溝GDが矢印−Y方向に移動すると、操作部21及び対向部13がガイド溝GDとの当接位置を変えながら矢印X方向へスライド移動を行い、スライド型可変抵抗器100は、スライド移動に伴って出力電圧を変化させる。
【0041】
また、スライダ20は、例えばガイド溝GDのような、モータなどを動力源として動作する構成部品の動きに連動して動作する。そのため、スライダ20を弱い動力でもスムーズに動作させることができるように、スライダ20をケース40との接触面積が大きくならないような外形形状に形成して作動力を軽くしている。このようにスライダ20を形成することで、スライダ20はスムーズに動作して位置検出を実現することができる。
【0042】
次に、図6及び図8乃至図12を参照して、金属部材10及びスライダ20それぞれの詳細な構造及びスライド型可変抵抗器100とガイド溝GDとの詳細な関係について説明する。図8は、金属部材10の構造を示す斜視図であり、図8(a)は、金属部材10を上方向から見た斜視図であり、図8(b)は、金属部材10を下方向から見た斜視図である。また、図9は、スライダ20の構造を示す斜視図であり、図10は、金属部材10が固定された状態のスライダ20の構造を示す斜視図である。図11は、スライド型可変抵抗器100とガイド溝GDとの関係を示す拡大模式図であり、図12は、図3(a)のA−A線から見たスライド型可変抵抗器100の断面図である。
【0043】
スライド型可変抵抗器100を操作するには、図6及び図12に示すように、スライダ20の操作部21を長孔43の長手方向、即ちスライド方向D1に沿ってスライド移動させる。そのことによって、スライダ20に固定された摺動子17の摺接片17aが抵抗体パターン31上及び導電体パターン33上を摺接することになる。スライダ20のスライド移動に伴って抵抗体パターン31及び導電体パターン33と摺動子17の摺接片17aとの当接位置が変化することで抵抗値が変化する。図6に示す3つの端子35のうちの、抵抗体パターン31の両端であって、抵抗体パターン31を介して導通する2つの端子35間に電子機器から電圧を印加し、他の1つの端子35から分圧された電圧を出力させることができる。
【0044】
金属部材10は、弾性を有する金属板材からなり、図8(a)及び図8(b)に示すように、前述した摺動子17が屈曲して片持ち梁状に延出されている平板状の基部19と、基部19からスライド方向D1に延びる第1延在部11と、当該第1延在部11からL字状に折り曲げられて、図6で示した操作部21の突出する方向に延びる第2延在部12と、を有している。
【0045】
金属部材10には、前述したように、スライダ20のスライド方向D1において図2に示した操作部21と対向する対向部13が変位可能に設けられていると共に、対向部13が操作部21側に変位させられた時に対向部13を復帰させるような弾性力を作用させる付勢部15が設けられている。尚、本実施形態における対向部13の変位とは、L字状に折り曲げられた第1延在部11と第2延在部12との折り曲げ部を支点として、対向部13(第2延在部12)が、傾くような変位である。
【0046】
対向部13は、上述した第2延在部12に形成されている。即ち、第2延在部12が対向部13を構成している。また、付勢部15は、第1延在部11と第2延在部12との間の折り曲げ部によって構成される。従って、対向部13と付勢部15とが、同一部材によって構成されることとなる。即ち、スライダ20には、弾性を有する金属板材からなる金属部材10が一体的に設けられていると共に、対向部13及び付勢部15が金属部材10によって構成されている。付勢部15は、金属板材からなる金属部材10をL字状に折り曲げることによって形成されているため、対向部13に弾性力を作用させることができる。尚、基部19からスライド方向D1に延設された第1延在部11は、板バネとして機能している。
【0047】
スライダ20は、合成樹脂材料によって構成されており、図9に示すように、基台部23を有していると共に、基台部23の中央部には開口部22が設けられている。前述した操作部21は、基台部23の中央部の−X側で開口部22と隣り合う位置に設けられている。操作部21は、基台部23から上方向に突出していると共に、平面視で+Y方向から略−X方向に掛けて円形の約1/4の形状を有している。即ち、操作部21の外周面21aは、弧状に形成されている。
【0048】
スライド方向D1と直交する方向におけるスライダ20の外周の一方の面(本実施形態では−Y側の面)には、両持ち梁状に形成された弾性部25が設けられている。弾性部25は弾性を有する弾性腕部25b及び突出部25aからなり、弾性腕部25bの両端が基台部23に連結されている。突出部25aは、弾性腕部25bの中央部に基台部23から離れる方向へ突出するように形成されていると共に、図2で示したケース40の側壁45に弾接するように配設される。尚、弾性部25は、基台部23の外周の−Y側の面ではなく、+Y側の面に設けられても良い。
【0049】
前述したように、スライダ20が合成樹脂材料によって構成されていると共に、図8(a)及び図8(b)に示したように、金属部材10に摺動子17が一体に形成されている。金属部材10には、対向部13と摺動子17との間に基部19が設けられており、当該基部19が、インサート成形等によってスライダ20に埋設され固定されている。従って、図10に示すように、基部19がスライダ20に固定されることによって、金属部材10はスライダ20に一体化されて、強固に保持される。そのため、操作部21と対向する対向部13及び付勢部15がスライダ20に設けられている、と言うことができる。
【0050】
金属部材10には、前述したように、スライド方向D1において操作部21と対向する対向部13が設けられており、金属部材10は、図10に示すように、対向部13がスライダ20の開口部22から上方向に突き出すようにスライダ20に設けられている。また、対向部13の、スライド方向D1と直交する方向における一方側(−Y側)の端部には、図8(a)及び図10に示すように、弧状に形成された曲面部13aを有している。
【0051】
スライド型可変抵抗器100をデジタルカメラ等の電子機器に取り付け、図11に示すように、スライダ20に設けられている操作部21と対向部13とを被検出体である鏡筒部のガイド溝GDに挿入すると、当該ガイド溝GDの一対の内壁に、スライダ20の操作部21における外周面21aと対向部13における曲面部13aとがそれぞれ当接(弾接)する。
【0052】
スライダ20の操作部21を操作すると、対向部13が操作部21側に変位させられたとき、対向部13は復帰しようとして、操作部21から遠ざかるような弾性力が付勢部15によって対向部13に作用する。その結果、操作部21における外周面21aと対向部13における曲面部13aとがそれぞれガイド溝GDの一対の内壁に当接しながら、スライダ20がケース40内をスライド方向D1に沿って移動する。尚、対向部13もガイド溝GDに当接してガイド溝GD内を移動する部位であることから、対向部13と操作部21とによってスライド型可変抵抗器100の操作体が構成されていると言うことができる。
【0053】
この時、操作部21における外周面21aと対向部13における曲面部13aとが弧状になっているため、ガイド溝GDの角度が変化しても、スライダ20における操作部21及び金属部材10をその角度の変化に対応させることができる。
【0054】
図12に示すように、スライダ20に操作部21と対向する対向部13及び付勢部15が設けられていることによって、対向部13が操作部21側に変位したとき、スライド方向D1における操作部21の一側面側(−X側)には、操作部21の他側面(+X側)即ち、対向部13から遠ざかるような弾性力が作用する。そして、操作部21及び対向部13がガイド溝GD内を移動するとき、摺動子17の摺接片17aが絶縁基板30上の抵抗体パターン31及び導電体パターン33を摺接する。それにより、スライド型可変抵抗器100の抵抗値を可変させることができる。
【0055】
また、スライダ20に弾性部25を設けていることにより、スライダ20がケース40の側壁45のうちの一方に弾接すると共に、側壁45の内の他方に圧接させることができる。その結果、スライダ20とケース40との間の不要な隙間をなくすことができる。これによりスライダ20をスライド移動させたときのケース40内におけるガタツキを防止し、摺動子17と抵抗体パターン31との当接位置のバラツキを小さくすることができて、精度の良い位置検出が可能となる。
【0056】
尚、ケース40の側壁45の一方からなる一側面に対するスライダ20の弾性部25の弾性力は、スライダ20に設けられた金属部材10の付勢部15の弾性力よりも大きくなるように設定されている。
【0057】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0058】
スライド型可変抵抗器100は、スライダ20に設けられている対向部13が操作部21側に変位させられたとき、対向部13は復帰しようとして、操作部21から遠ざかるような弾性力が付勢部15によって作用するので、操作部21と対向部13とを被検出体のガイド溝GDに挿入することで、操作部21とガイド溝GDとの間のガタツキを低減して、被検出体の位置検出の精度を高めることができる。
【0059】
また、対向部13と付勢部15とが、同一部材によって構成されているので、部品点数を少なくすることができる。
【0060】
また、スライダ20に金属部材10が一体化されているため、耐久性を高めることができる。
【0061】
また、金属部材10を構成する金属板材をL字状に折り曲げることによって、対向部13に弾性力を作用させる付勢部15を容易に構成することができる。
【0062】
また、対向部13を構成している金属部材10で摺動子17を形成しているので、部品点数の増加を抑制することができる。また、対向部13と摺動子17との間に位置する金属部材10の基部19がスライダ20に固定されているので、対向部13が弾性力に抗して変位した場合でも、その影響を摺動子17に及ぼしにくくすることができる。その結果、検出精度を維持することができる。
【0063】
また、弾性部25を設けることによって、スライド方向D1と直交する方向におけるスライダ20のケース40内におけるガタツキを抑制できるので、精度の良い検出が可能となる。
【0064】
また、対向部13の曲面部13a及び操作部21の外周面21aを共に、弧状に形成しているので、操作部21と対向部13とが挿入される被検出体のガイド溝GDの角度が変化しても、その角度の変化に対応することができる。
【0065】
以上説明したように、本発明のスライド型可変抵抗器は、スライダに設けられている対向部が操作部側に変位させられたとき、対向部は復帰しようとして、操作部から遠ざかるような弾性力が付勢部によって作用するので、操作部と対向部とを被検出体のガイド溝に挿入することで、操作部とガイド溝との間のガタツキを低減して、被検出体の位置検出の精度を高めることができる。
【0066】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば、操作部21の外周面21aを半円形状とし、対向部13の曲面部13aも半円弧状としても良い。また、対向部13、付勢部15、及び摺動子17を、同一の金属部材10で形成せず、複数の金属部材で構成しても良い。
【符号の説明】
【0067】
10 金属部材
11 第1延在部
12 第2延在部
13 対向部
13a 曲面部
15 付勢部
17 摺動子
17a 摺接片
19 基部
20 スライダ
21 操作部
21a 外周面
22 開口部
23 基台部
25 弾性部
25a 突出部
25b 弾性腕部
30 絶縁基板
31 抵抗体パターン
33 導電体パターン
35 端子
40 ケース
41 天面
43 長孔
45 側壁
49 取付け板
100 スライド型可変抵抗器
D1 スライド方向
GD ガイド溝
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12
図13