特許第6581009号(P6581009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581009
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】振動締固め機用前後進切換ハンドポンプ
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/34 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   E01C19/34 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-26711(P2016-26711)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-145578(P2017-145578A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175386
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】永澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康太
(72)【発明者】
【氏名】笠松 洋
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−270423(JP,A)
【文献】 特開平04−081343(JP,A)
【文献】 特開2003−328314(JP,A)
【文献】 米国特許第04269282(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動締固め機の機体内に搭載される起振装置と油圧ホースを介して接続されて用いられる振動締固め機用前後進切換ハンドポンプであって、
シリンダと、シリンダの内部に挿入された駆動ピストンと、駆動ピストンの後方側に形成されたオイルタンクとを有し、
駆動ピストンは、シリンダの内周面と摺接する外筒部と、外筒部の内側に配置された内挿部とによって構成され、
駆動ピストンの後方側には、前後進レバーが接続されるとともに先端にローラが枢着されたカムが配置され、
駆動ピストンの内挿部の後半部には、ローラの前方側と後方側を押さえて内側に保持するリンク機構部が形成され、
駆動ピストン内に、シリンダの油圧ホース側とオイルタンク側とを連通させる流通路、及び、当該流通路を開閉するチェック弁が形成され、
チェック弁は、内挿部において形成されたオイルタンク側の弁体と、外筒部において形成された油圧ホース側の弁座とによって構成され、外筒部と内挿部との間に配置されているチェック弁スプリングによって、オイルタンク側の弁体が油圧ホース側の弁座に押し付けられて、チェック弁が閉じる方向へ常時付勢され
チェック弁スプリングとして、起振装置側から作用する機械的押し戻し力よりも大きな付勢力を有するものを用いることを特徴とする振動締固め機用前後進切換ハンドポンプ。
【請求項2】
駆動ピストン内に、前記流通路を開閉するリリーフ弁が配置され、
リリーフ弁が、オイルタンク側の弁体と、油圧ホース側の弁座とによって構成され、リリーフ弁スプリングによって、オイルタンク側の弁体が油圧ホース側の弁座に押し付けられて、リリーフ弁が閉じる方向に常時付勢されていることを特徴とする、請求項1に記載の振動締固め機用前後進切換ハンドポンプ。
【請求項3】
リリーフ弁スプリングとして、起振装置側から作用する機械的押し戻し力よりも大きな付勢力を有するものを用いることを特徴とする、請求項に記載の振動締固め機用前後進切換ハンドポンプ。
【請求項4】
チェック弁の弁体としてボール型のものを用いることにより、チェック弁をボールバルブとして構成したことを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の振動締固め機用前後進切換ハンドポンプ。
【請求項5】
リンク機構部が、ローラの前方側と後方側を押さえるだけでなく、左右両側をも取り囲む枠型形状に構成され、ローラがこの枠型形状のリンク機構部の内側に挿入されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の振動締固め機用前後進切換ハンドポンプ。
【請求項6】
カムの先端に、ボールベアリング又はニードルベアリングを介して、ローラが枢着されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の振動締固め機用前後進切換ハンドポンプ。
【請求項7】
チェック弁が、駆動ピストン内の略中心付近に配置されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の振動締固め機用前後進切換ハンドポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤等の締固め作業に用いられる振動締固め機用のハンドポンプに関し、特に、起振装置における一対の偏心振子のうち、一方の偏心振子の回転の位相を変化させて、その合成ベクトルにより機体を前後進させるように構成された振動締固め機において用いられる前後進切換ハンドポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、起振装置における一対の偏心振子のうち、一方の偏心振子の回転の位相(他方の偏心振子に対する位相)を変化させ、その合成ベクトルによって機体を前進或いは後進させることができるように(前後進を切り換えることができるように)構成された振動締固め機が知られている。この種の振動締固め機は、操作ハンドルに取り付けられた前後進レバーを回動させることによって油圧動力を発生させ、この油圧動力によって偏心振子の位相を自在に変更できるように構成されていることが多い。
【0003】
より具体的には、起振装置の前後進切換軸(一方の偏心振子の位相を変更する軸)を動作させる油圧シリンダ(従動ピストンを内蔵)と、機体の操作ハンドルに設けられた前後進切換ハンドポンプ(以下、単に「ハンドポンプ」と称する。)の油圧シリンダ(駆動ピストンを内蔵)との間が、油圧ホースによって接続され、ハンドポンプの駆動ピストンと起振装置の従動ピストンとが油圧力によって連動するように構成されており、ハンドポンプに取り付けられた前後進レバーを回動操作(前傾〜後傾)すると、ハンドポンプの駆動ピストンが動作するとともに、起振装置の従動ピストン(及び前後進切換軸)が動作し、これによって偏心振子の位相が変更され、前後進の切り換え及び速度調節が行われるようになっている。
【0004】
このような振動締固め機のうち、機体重量が200kg以下のいわゆる軽量級の振動締固め機においては、操作の簡便性等を考慮して、操作者が前後進レバーから手を放すと、最終的に機体の進行方向と速度が「全速前進」となる仕組みが採られている。つまり、起振装置において偏心振子が回転している際、起振装置の従動ピストンは、偏心振子の回転によって生じる反力(機械的押し戻し力)により、常にハンドポンプ(駆動ピストン)側へ作動油を吐出する方向に付勢されており、操作者が前後進レバーから手を放すと、この機械的押し戻し力によって起振装置からハンドポンプ側へ作動油が押し出されることになる。そしてこの状態を継続すると、最終的にハンドポンプの油圧シリンダ内に最大量の作動油が流入し、駆動ピストンが後方側(油圧ホースとは反対側)へ押し込まれ、機体の進行方向と速度は「全速前進」となる。
【0005】
前後進レバーが「全速前進」の位置にある状態(駆動ピストンがハンドポンプ内の最も後方側に押し込まれた状態)から、操作者が前後進レバーを操作すると、その操作量に応じてハンドポンプ内の駆動ピストンが油圧ホース側へ移動し、ハンドポンプから作動油が吐出されるとともに、起振装置の油圧シリンダ内に作動油が流入し、偏心振子の回転による機械的押し戻し力に抗して従動ピストンが後方側(油圧ホースとは反対側)へ押し込まれ、偏心振子の位相が変更される。その結果、機体の進行方向が切り換えられ、速度調節が行われる。
【0006】
尚、この種の振動締固め機においては、ハンドポンプの駆動ピストン内にチェック弁が配置されることがある。このチェック弁は、開放時において、ハンドポンプの油圧シリンダにおける駆動ピストンの前方側(油圧ホース側)と後方側(オイルタンク側)とを連通させ、作動油中に混入した空気を、駆動ピストンの後方側に形成されるオイルタンクへ逃がすとともに、オイルタンクから駆動ピストンの前方側へ作動油を補充するためのものであり、操作者が前後進レバーから手を放した場合に、チェック弁スプリングの反発力によって弁体が弁座から離れて開放される構造となっている。
【0007】
このようなチェック弁が駆動ピストン内に配置されている場合、操作者が前後進レバーから手を放すと、チェック弁が開放されることにより、駆動ピストンが起振装置側から作用する機械的押し戻し力(従動ピストンからの油圧力)から解放されて、前後進レバーが「全速前進」の位置へ復帰しなくなってしまう。このため、駆動ピストン内にチェック弁が配置される場合には、前後進レバーの非操作時に駆動ピストンを「全速前進」位置へ復帰させるための動作力(起振装置側からの機械的押し戻し力)をバックアップするために、機械的押し戻し力と同方向の付勢力を駆動ピストンに与える補助スプリングを、駆動ピストンの前方側(油圧ホース側)に配置しているものが多い(特開2000−17607号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−17607号公報
【特許文献2】特開2002−317405号公報
【特許文献3】特開2002−339313号公報
【特許文献4】特開2005−179976号公報
【特許文献5】特開2005−200830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような機械的押し戻し力と同方向の付勢力を有する補助スプリングは、前後進レバーを「全速前進」位置から、「低速前進」、「中立」、或いは、「後進」側へ向かって操作する場合の負荷を増大させることになり、操作者に対して過大な負担を生じさせることになる。
【0010】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、少ない部品点数で構成することができ、また、操作力を低減し、操作者への負担を軽減し、操作追従性を向上させることができる振動締固め機用前後進切換ハンドポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る振動締固め機用前後進切換ハンドポンプは、振動締固め機の機体内に搭載される起振装置と油圧ホースを介して接続されて用いられるものであって、シリンダと、シリンダの内部に挿入された駆動ピストンと、駆動ピストンの後方側に形成されたオイルタンクとを有し、駆動ピストンは、シリンダの内周面と摺接する外筒部と、外筒部の内側に配置された内挿部とによって構成され、駆動ピストンの後方側には、前後進レバーが接続されるとともに先端にローラが枢着されたカムが配置され、駆動ピストンの内挿部の後半部には、ローラの前方側と後方側を押さえて内側に保持するリンク機構部が形成され、駆動ピストン内に、シリンダの油圧ホース側とオイルタンク側とを連通させる流通路、及び、当該流通路を開閉するチェック弁が形成され、チェック弁は、内挿部において形成されたオイルタンク側の弁体と、外筒部において形成された油圧ホース側の弁座とによって構成され、外筒部と内挿部との間に配置されているチェック弁スプリングによって、オイルタンク側の弁体が油圧ホース側の弁座に押し付けられて、チェック弁が閉じる方向へ常時付勢されていることを特徴としている。
【0012】
尚、チェック弁スプリングとしては、起振装置側から作用する機械的押し戻し力よりも大きな付勢力を有するものを用いることが好ましく、また、駆動ピストン内に、前記流通路を開閉するリリーフ弁(オイルタンク側の弁体と、油圧ホース側の弁座とによって構成され、起振装置側から作用する機械的押し戻し力よりも大きな付勢力を有するリリーフ弁スプリングによって、オイルタンク側の弁体が油圧ホース側の弁座に押し付けられて、リリーフ弁が閉じる方向に常時付勢されている)を配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の振動締固め機用前後進切換ハンドポンプは、従来のように、前後進レバーの非操作時に駆動ピストンを「全速前進」位置へ復帰させるために、起振装置側からの機械的押し戻し力と同方向の付勢力を駆動ピストンに与える補助スプリングを配置する必要が無く、少ない部品点数で構成することができるほか、操作力を低減し、操作者への負担を軽減し、操作追従性を向上させることができる。また、必要に応じて、油圧回路内のエア抜きや作動油の補充を簡単に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係るハンドポンプ1の内部構造を示す断面図であって、機体が「全速前進」となる状態を示す図である。
図2図2は、本発明に係るハンドポンプ1の内部構造を示す断面図であって、機体の進行方向が「中立」となる状態を示す図である。
図3図3は、本発明に係るハンドポンプ1の内部構造を示す断面図であって、機体が「全速後進」となる状態を示す図である。
図4図4は、本発明に係るハンドポンプ1の内部構造を示す拡大断面図であって、チェック弁54が閉じている状態を示す図である。
図5図5は、本発明に係るハンドポンプ1の内部構造を示す拡大断面図であって、チェック弁54が開いた状態を示す図である。
図6図6は、本発明に係るハンドポンプの他の構成例における内部構造を示す拡大断面図である。
図7図7は、図2に示すハンドポンプ1のリンク機構部52a及びローラ7を下方の視点から見た状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に沿って本発明「振動締固め機用前後進切換ハンドポンプ」(以下、単に「ハンドポンプ」と称する。)の実施形態について説明する。本発明に係るハンドポンプは、振動締固め機(図示せず)の後方に突設される操作ハンドル(図示せず)の上部に装着され、振動締固め機の機体内に搭載される起振装置(図示せず)側の油圧シリンダ(従動ピストンが内挿され、前後進切換軸を軸線方向へ移動させて一方の偏心振子の位相を変更する)と油圧ホース(図示せず)を介して接続されて用いられる。
【0016】
図1は、本発明に係るハンドポンプ1の内部構造を示す断面図である。図示されているようにこのハンドポンプ1は、ケーシング2内に、シリンダ3(油圧シリンダ)と、オイルタンク4が形成されている。
【0017】
シリンダ3の前方(図1において左側)には、図示しない油圧ホースと接続され、作動油が出入りする開口部3aが形成されており、シリンダ3の内部には、シリンダ3の長手方向へ往復動可能なように挿入された駆動ピストン5が配置されている。この駆動ピストン5は、シリンダ3の内周面と摺接する外筒部51と、外筒部51の内側に配置された内挿部52とによって構成されている。
【0018】
ケーシング2内(オイルタンク4内)には、水平な中心軸線C周りに回動可能なように保持されたカム6が配置されており、カム6の先端には、カム6の回動動作を駆動ピストン5へ円滑に伝達するためのローラ7が枢着されている。また、オイルタンク4内においては、駆動ピストン5の内挿部52の後半部が突出した状態となっており、この内挿部52の後半部には、ローラ7の前方側(図1において左側)と後方側(図1において右側)を押さえてローラ7を内側に保持するリンク機構部52aが形成されている。
【0019】
尚、カム6には、図示しない前後進レバーの基端部が固定されており、操作者が前後進レバーを回動させると、カム6が軸線C周りに回動し、その先端のローラ7が所定範囲内で揺動する。より具体的には、前後進レバーを前傾させるとローラ7が後方側(図1において右側)へ移動し、前後進レバーを後傾させるとローラ7が前方側(図1において左側)へ移動する。このようなローラ7の揺動動作は、ローラ7を内側に保持しているリンク機構部52aを介して、シリンダ3内における駆動ピストン5の往復動作に変換される。そして、駆動ピストン5の往復動作により、作動油が、シリンダ3内から油圧ホース側へ吐出され、或いは、油圧ホース側からシリンダ3内へ流入し、起振装置の従動ピストン及び前後進切換軸が動作して偏心振子の位相が変更され、振動締固め機の進行方向(前後進又は中立)の切り換え、及び、速度調節が行われる。
【0020】
ここで、本発明に係るハンドポンプ1の動作態様について説明する。図1は、駆動ピストン5の外筒部51が、シリンダ3内において最も後方側(オイルタンク4側)に位置した状態を示しており、この状態にあるとき、駆動ピストン5よりも前方側(油圧ホース側)のシリンダ3内の空間S(容積)が、ほぼ最大となる。この場合、油圧ホース側からシリンダ3内への作動油の流入量は最大となり、振動締固め機の機体は「全速前進」となる。
【0021】
この状態から図示しない前後進レバー後方側へ操作し、カム6を回動させて、ローラ7を図2に示す位置まで移動させる(シリンダ3側へ押し出す)と、リンク機構部52aにより、起振装置側からの機械的押し戻し力(従動ピストンからの油圧力)に抗して駆動ピストン5が前方(オイルタンク4とは反対側、図2において左側)に移動し、シリンダ3内の空間Sが半分に狭まり、シリンダ3内から油圧ホース側へキャパシティの半量の作動油が流出し、起振装置の従動ピストン及び前後進切換軸が動作して、振動締固め機の機体は「中立」となる。
【0022】
この状態から更に前後進レバーを後方側へ操作し、カム6を更に回動させて、ローラ7を図3に示す位置まで移動させる(シリンダ3側へ押し出す)と、リンク機構部52aにより、起振装置側からの機械的押し戻し力に抗して駆動ピストン5が更に前方(オイルタンク4とは反対側、図3において左側)に移動し、シリンダ3内の空間Sが最小となり、シリンダ3内から油圧ホース側への作動油の流出量が最大となり、起振装置の従動ピストン及び前後進切換軸が動作して、振動締固め機の機体は「全速後進」となる。
【0023】
そして、この状態から(或いは、図1に示す状態以外のいずれかの状態から)、前後進レバーから手を放して非操作状態とすると、起振装置側からの機械的押し戻し力に従って、油圧ホース側からハンドポンプ1のシリンダ3内へ作動油が流入し、ピストン5が後方側(オイルタンク4側)へ押し出されて、図1に示す位置(「全速前進」位置)に復帰する。
【0024】
上述の通り、従来の多くの振動締固め機のハンドポンプは、駆動ピストン内に流通路とチェック弁(シリンダ内における駆動ピストンの油圧ホース側とオイルタンク側とを連通させ、作動油中に混入した空気をオイルタンクへ逃がすとともに、オイルタンクから駆動ピストンの前方側へ作動油を補充するための流通路、及び、この流通路を開閉する弁)が配置されており、チェック弁は、操作者が前後進レバーから手を放した場合に、チェック弁スプリングによって開放され、起振装置側からの機械的押し戻し力から駆動ピストンを解放してしまうため、駆動ピストンを「全速前進」位置へ向かって付勢する補助スプリングがシリンダ内に配置されていたが、本発明に係るハンドポンプ1においては、そのような補助スプリングを用いることなく、前後進レバーの非操作時において駆動ピストン5(及び前後進レバー)を「全速前進」位置に復帰させることができる。
【0025】
この点について具体的に説明すると、本発明に係るハンドポンプ1においても、図4に示すように、駆動ピストン5内に、油圧ホース側(開口部3a側)とオイルタンク4側とを連通させる流通路53、及び、この流通路53を開閉するチェック弁54(オイルタンク4側に配置された円錐状の弁体54aと、油圧ホース側に配置された円形段部形状の弁座54bとによって構成される)が形成されている。但しこのチェック弁54は、従来のものとは異なり、外筒部51と内挿部52との間に配置されているチェック弁スプリング55によって、オイルタンク4側から油圧ホース側へ向かって閉じる方向(オイルタンク4側の弁体54aが油圧ホース側の弁座54bに向かって押し付けられる方向)へ常時付勢されている。
【0026】
そして、このチェック弁スプリング55は、起振装置側からの機械的押し戻し力よりも大きな付勢力を有しているため、図3及び図4に示す状態(或いは、図1に示す状態以外のいずれかの状態)において、操作者が前後進レバーから手を放した場合、起振装置側からの機械的押し戻し力に従って油圧ホース側からシリンダ3内に作動油が流入しても、この流入した作動油によってチェック弁54が押し開かれることはなく(流通路53が連通状態とはならず)、その結果、ピストン5がオイルタンク4側へ押し出されて、「全速前進」位置(図1参照)に復帰する。
【0027】
尚、作動油中に混入した空気をシリンダ3内からオイルタンク4へ逃がし(油圧回路内のエア抜き)、或いは、オイルタンク4から駆動ピストン5の前方側へ作動油を補充しようとする場合には、駆動ピストン5の外筒部51が、シリンダ3内の最も後方側(図5に示すように、シリンダ3におけるオイルタンク4側の終端に形成されているストッパ3bに突き当たる位置)にある状態、即ち、「全速前進」位置にある状態から、前後進レバーを更に前傾させて、ローラ7を僅かに後方へ移動させる。
【0028】
そうすると、チェック弁スプリング55の付勢力に抗して内挿部52が僅かに後退し、図5に示すように、弁体54aが弁座54bから離れてチェック弁54が開放され、駆動ピストン5の油圧ホース側とオイルタンク4側とが流通路53によって連通した状態となり、その結果、作動油中に混入した空気をシリンダ3内からオイルタンク4へ逃がし、或いは、オイルタンク4から駆動ピストン5の前方側へ作動油を補充することが可能となる。
【0029】
また、前後進レバーが後進側から前進側へ急激に操作された場合、油圧回路内(ハンドポンプ1の駆動ピストン5から起振装置の従動ピストンまでの間)が負圧となるが、このとき、油圧回路内の負圧力がチェック弁スプリング55の付勢力よりも大きい場合には開放される(オイルタンク4側と連通する)ことになるため、そのような急激な切換操作によって機体に生じ得る衝撃を和らげることができる。
【0030】
更に、図6に示すように、流通路53内にリリーフ弁56(リリーフ弁スプリング57によって、オイルタンク4側の弁体が油圧ホース側の弁座に向かって押し付けられて、弁を閉じる方向に常時付勢されている)を配置した場合には、前後進レバーが前進側から後進側へ急激に操作されることによって、油圧回路内の圧力が急激に上昇したような場合に、圧力の一部をオイルタンク4側へ逃がすことができ、そのような急激な切換操作によって機体に生じ得る衝撃を和らげることができる。尚、ここで用いられるリリーフ弁スプリング57も、起振装置側から作用する機械的押し戻し力よりも大きな付勢力を有するものを用いることが好ましい。
【0031】
尚、上記実施形態においては、チェック弁54の弁体54aとして、円錐形状のものが用いられているが、ボール型の弁体を用いることにより、チェック弁54をボールバルブとすることもできる。
【0032】
また、図7図2に示すハンドポンプ1のリンク機構部52a及びローラ7を図2における下方側の視点から見た状態を示す図)に示すように、リンク機構部52aは、ローラ7の前方側と後方側を押さえるだけでなく、左右両側をも取り囲む枠型形状に構成され、ローラ7がこの枠の内側に挿入されるように構成することが好ましい。この場合、リンク機構部52aの強度及び耐久性を向上させることができる。
【0033】
更に、図7に示すように、ローラ7は、ベアリング8(ボールベアリング又はニードルベアリング)を介して、カム6の先端に枢着されることが好ましい。この場合、ローラ7とカム6との接続部における耐摩耗性を向上させることができるとともに、カム6の揺動動作を、より円滑に駆動ピストン5の往復動作へ変換することができ、前後進レバーの操作性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0034】
1:ハンドポンプ、
2:ケーシング、
3:シリンダ、
3a:開口部、
3b:ストッパ、
4:オイルタンク、
5:駆動ピストン、
6:カム、
7:ローラ、
8:ベアリング、
51:外筒部、
52:内挿部、
52a:リンク機構部、
53:流通路、
54:チェック弁、
54a:弁体、
54b:弁座、
55:チェック弁スプリング、
56:リリーフ弁、
57:リリーフ弁スプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7