特許第6581013号(P6581013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581013
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】ガス検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20190912BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   G01N27/26 371A
   G01N27/416 376
   G01N27/416 331
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-28246(P2016-28246)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2017-146205(P2017-146205A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中埜 吉博
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−221299(JP,A)
【文献】 特開2012−233775(JP,A)
【文献】 特開2001−242127(JP,A)
【文献】 特開2013−221931(JP,A)
【文献】 特開2009−133846(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/132804(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質体と、前記固体電解質体上に配置される一対の電極と、前記固体電解質体を加熱するヒータとを備え、電源から前記ヒータへの電力供給がパルス幅変調によって制御されることにより前記固体電解質体の温度が制御されるとともに、被検出雰囲気内における検出対象ガスの濃度に応じて前記一対の電極の間に起電力が生じるガスセンサの前記起電力を用いて、前記検出対象ガスの濃度を検出するガス検出装置であって、
前記パルス幅変調による前記ヒータへの電力供給に起因して発生する前記起電力の変動量を算出する変動量算出部と、
前記変動量算出部により算出された前記変動量を用いて、前記ガスセンサで生じた前記起電力を補正する補正部とを備える
ことを特徴とするガス検出装置。
【請求項2】
前記被検出雰囲気内における酸素の濃度を検出する酸素検出部を備え、
前記変動量算出部は、更に、前記酸素検出部により検出された酸素の濃度に基づいて、前記変動量を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記補正部は、
前記ガスセンサで生じた前記起電力から、前記変動量算出部で算出された前記変動量を減算することにより、前記起電力を補正する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記補正部は、
前記パルス幅変調により前記ヒータへの通電がオンからオフへ切り替わった時点から、予め設定された検出時間が経過した後における前記起電力を用いて、前記起電力を補正する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出雰囲気中に存在するガスの濃度を検出するガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する技術として、尿素SCR(選択触媒還元)システムが注目されている。尿素SCRシステムは、アンモニア(NH)と窒素酸化物(NOx)とを化学反応させて、窒素酸化物を窒素(N)に還元することにより、排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化するシステムである。
【0003】
この尿素SCRシステムでは、窒素酸化物に対して供給されるアンモニアの量が過剰になると、未反応のアンモニアが排気ガスに含まれたまま外部に放出されるおそれがあった。このようなアンモニアの放出を抑制するために、排気ガスに含まれるアンモニアの濃度を含む複数種類のガス濃度を測定可能なマルチガスセンサが尿素SCRシステムに用いられている。
【0004】
このようなマルチガスセンサとして、参照電極と検知電極との間に固体電解質体を挟んで構成されたアンモニアセンサをNOxセンサに取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−221930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス濃度を検出することが可能な状態となる活性化温度までアンモニアセンサを加熱するために、パルス幅変調で通電制御されるヒータを用いる場合には、ヒータへの通電のオンとオフとが切り替わるときにグランドレベルが瞬間的に変動する。アンモニアセンサを構成する固体電解質体は参照電極と検知電極との間でインピーダンス(抵抗成分および容量成分)を有する。このため、グランドレベルが瞬間的に変動すると、参照電極と検知電極との間に生じる起電力は所定の時定数遅れて変動することとなり、これにより、アンモニアセンサの検出精度が低下してしまう恐れがあった。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、ガス濃度の検出精度を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明は、固体電解質体と、固体電解質体上に配置される一対の電極と、固体電解質体を加熱するヒータとを備え、電源からヒータへの電力供給がパルス幅変調によって制御されることにより固体電解質体の温度が制御されるとともに、被検出雰囲気内における検出対象ガスの濃度に応じて一対の電極の間に起電力が生じるガスセンサの起電力を用いて、検出対象ガスの濃度を検出するガス検出装置である。なお、被検出雰囲気とは、ガス検出装置の検出対象となるガス雰囲気をいう。
【0009】
そして、本発明のガス検出装置は、変動量算出部と、補正部とを備える。変動量算出部は、電源の出力電圧の変動に起因して発生する起電力の変動量を算出する。補正部は、変
動量算出部により算出された変動量を用いて、ガスセンサで生じた起電力を補正する。
【0010】
これにより、本発明のガス検出装置は、電源の出力電圧の変動に起因して発生する起電力の変動の影響を低減することができ、ガス濃度の検出精度を向上させることができる。
また本発明のガス検出装置では、被検出雰囲気内における酸素の濃度を検出する酸素検出部を備え、変動量算出部は、更に、酸素検出部により検出された酸素の濃度に基づいて、変動量を補正するようにしてもよい。
【0011】
これにより、本発明のガス検出装置は、被検出雰囲気内における酸素の濃度に応じてガスセンサのインピーダンスが変化することに起因して発生する起電力の変動の影響を低減することができ、ガス濃度の検出精度を更に向上させることができる。
【0012】
また本発明のガス検出装置では、補正部が、ガスセンサで生じた起電力から、変動量算出部で算出された変動量を減算することにより、起電力を補正するようにしてもよい。
これにより、本発明のガス検出装置は、ガスセンサで生じた起電力から変動量を減算するという簡便な演算により起電力を補正することができ、ガス検出装置の演算処理負荷を低減することができる。
【0013】
また本発明のガス検出装置では、補正部が、パルス幅変調によりヒータへの通電がオンからオフへ切り替わった時点から、予め設定された検出時間が経過した後における起電力を用いて、起電力を補正するようにしてもよい。
【0014】
このように構成された本発明のガス検出装置は、ヒータへの通電が行われていないときにおける起電力を用いて、検出対象ガスの濃度を検出する。このため、本発明のガス検出装置は、ヒータに電流が流れていることに起因して発生する起電力の変動の影響を低減することができ、ガス濃度の検出精度を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】マルチガスセンサ2の内部構造を示す断面図である。
図2】センサ素子部5と制御部3の概略構成を示す図である。
図3】第1アンモニア検出部102と第2アンモニア検出部103の構造を示す断面図である。
図4】アンモニア濃度算出処理を示すフローチャートである。
図5】ヒータ160の印加電圧とアンモニア起電力の時間変化を示すグラフである。
図6】電源の出力電圧毎にアンモニア起電力と酸素濃度との対応関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
本発明が適用された実施形態のマルチガス検出装置1は、車両に搭載され、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムに用いられるものである。より具体的には、マルチガス検出装置1は、排気ガスに含まれるNOxとアンモニア(尿素)とを反応させた後の排気ガスに含まれる一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)およびアンモニアの濃度を測定する。以下、マルチガス検出装置1を搭載する車両を自車両という。
【0017】
マルチガス検出装置1は、図1に示すマルチガスセンサ2と、図2に示す制御部3とを備える。
マルチガスセンサ2は、図1に示すように、センサ素子部5と、主体金具10と、セパレータ34と、接続端子38とを備える。なお、以下の説明では、マルチガスセンサ2の
センサ素子部5が配置されている側(図1の下側)を先端側、接続端子38が配置されている側(図1の上側)を後端側という。
【0018】
センサ素子部5は、軸線O方向に延びる板形状を有する。センサ素子部5の後端には電極端子部5A,5Bが配置されている。図1においては、図示を容易にするために、センサ素子部5に形成された電極端子部を、電極端子部5Aおよび電極端子部5Bのみとしているが、実際には、後述するNOx検出部101、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103が有する電極等の数に応じて複数の電極端子部が形成されている。
【0019】
主体金具10は、マルチガスセンサ2をディーゼルエンジンの排気管に固定するネジ部11が外表面に形成された筒状の部材である。主体金具10は、軸線O方向に貫通する貫通孔12と、貫通孔12の径方向内側に突出する棚部13とを備える。棚部13は、貫通孔12の径方向外側から中心に向かって先端側へ近づく傾きを有する内向きのテ―パ面として形成されている。
【0020】
主体金具10は、センサ素子部5の先端側を、貫通孔12から先端側に突出させ、センサ素子部5の後端側を貫通孔12の後端側に突出させた状態で保持する。
主体金具10の貫通孔12の内部には、先端側から後端側に向かって順に、センサ素子部5の径方向周囲を取り囲む筒状の部材であるセラミックホルダ14と、粉末充填層である滑石リング15,16と、セラミックスリーブ17とが積層されている。
【0021】
セラミックスリーブ17と主体金具10の後端側の端部との間には、加締めパッキン18が配置されている。セラミックホルダ14と主体金具10の棚部13との間には、金属ホルダ19が配置されている。金属ホルダ19は、滑石リング15とセラミックホルダ14を保持する。主体金具10の後端側の端部は、加締めパッキン18を介してセラミックスリーブ17を先端側に向かって押し付けるように加締められる部分である。
【0022】
主体金具10の先端側の端部には、外部プロテクタ21および内部プロテクタ22が設けられている。外部プロテクタ21および内部プロテクタ22は、先端側の端部が閉塞されたステンレス鋼などの金属材料から形成された筒状の部材である。内部プロテクタ22は、センサ素子部5の先端側の端部を覆った状態で主体金具10に溶接され、外部プロテクタ21は、内部プロテクタ22を覆った状態で主体金具10に溶接されている。
【0023】
主体金具10の後端側の端部には、筒状に形成された外筒31の先端側の端部が固定されている。さらに、外筒31の後端側の端部である開口には、この開口を閉塞するグロメット32が配置されている。
【0024】
グロメット32には、リード線41が挿入されるリード線挿入孔33が形成されている。リード線41は、センサ素子部5の電極端子部5Aおよび電極端子部5Bに電気的に接続される。
【0025】
セパレータ34は、センサ素子部5の後端側に配置された筒状に形成された部材である。セパレータ34の内部に形成された空間は、軸線O方向に貫通する挿入孔35である。セパレータ34の外表面には、径方向外側に突出する鍔部36が形成されている。
【0026】
セパレータ34の挿入孔35には、センサ素子部5の後端部が挿入され、電極端子部5A,5Bがセパレータ34の内部に配置される。
セパレータ34と外筒31との間には、筒状に形成された保持部材37が配置されている。保持部材37は、セパレータ34の鍔部36と接触するとともに、外筒31の内面と
接触することにより、セパレータ34を外筒31に対して固定した状態で保持する。
【0027】
接続端子38は、セパレータ34の挿入孔35内に配置される部材であり、センサ素子部5の電極端子部5Aおよび電極端子部5Bと、リード線41とをそれぞれ独立に電気的に接続する導電部材である。なお、図1では、図示を容易にするために、2つの接続端子38のみが図示されている。
【0028】
マルチガス検出装置1の制御部3は、図2に示すように、自車両に搭載された電子制御装置200と電気的に接続されている。電子制御装置200は、制御部3で算出された排気ガス中のNO濃度、NO濃度およびアンモニア濃度を示すデータを受信し、受信データに基づいてディーゼルエンジンの運転状態の制御処理を実行したり、触媒に蓄積されたNOxの浄化処理を実行したりする。
【0029】
センサ素子部5は、NOx検出部101と、第1アンモニア検出部102と、第2アンモニア検出部103(図3を参照)を備える。第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103は、NOx検出部101の長手方向(図2の左右方向)における基準電極143と略同位置において、NOx検出部101の幅方向(図2の奥行き方向)における位置が互いに異なるように並列に配置されている。このため、図2では、第1アンモニア検出部102と第2アンモニア検出部103のうち、第1アンモニア検出部102のみを示している。
【0030】
NOx検出部101は、絶縁層113、セラミック層114、絶縁層115、セラミック層116、絶縁層117、セラミック層118、絶縁層119および絶縁層120が順次積層されて構成されている。絶縁層113,115,117,119,120は、アルミナを主体として形成されている。
【0031】
NOx検出部101は、セラミック層114とセラミック層116との間に形成される第1測定室121を備える。NOx検出部101は、第1測定室121に隣接するようにしてセラミック層114とセラミック層116との間に配置された拡散抵抗体122を介して、外部から第1測定室121の内部に排気ガスを導入する。拡散抵抗体122は、アルミナ等の多孔質材料で形成されている。
【0032】
NOx検出部101は、第1ポンピングセル130を備える。第1ポンピングセル130は、固体電解質層131と、ポンピング電極132,133を備える。
固体電解質層131は、酸素イオン導電性を有するジルコニアを主体として形成されている。第1測定室121と接触する領域における一部分のセラミック層114が除去され、セラミック層114の代わりに固体電解質層131が充填されている。
【0033】
ポンピング電極132,133は、白金を主体として形成されている。ポンピング電極132は、固体電解質層131において第1測定室121と接触する面上に配置される。ポンピング電極133は、固体電解質層131を挟んでポンピング電極132とは反対側で固体電解質層131の面上に配置される。ポンピング電極133が配置された領域とその周辺の領域の絶縁層113は除去され、絶縁層113の代わりに多孔質体134が充填される。多孔質体134は、ポンピング電極133と外部との間でガス(酸素)の出入りを可能とする。
【0034】
NOx検出部101は、酸素濃度検出セル140を備える。酸素濃度検出セル140は、固体電解質層141と、検知電極142と、基準電極143を備える。
固体電解質層141は、酸素イオン導電性を有するジルコニアを主体として形成されている。固体電解質層131よりも後端側(図2の右側)の領域における一部分のセラミッ
ク層116が除去され、セラミック層116の代わりに固体電解質層141が充填されている。
【0035】
検知電極142と基準電極143は、白金を主体として形成されている。検知電極142は、固体電解質層141における第1測定室121と接触する面上に配置される。基準電極143は、固体電解質層141を挟んで検知電極142とは反対側で固体電解質層141の面上に配置される。
【0036】
NOx検出部101は、基準酸素室146を備える。基準酸素室146は、基準電極143が配置された領域とその周辺の領域の絶縁層117が除去されることにより形成された貫通孔である。
【0037】
NOx検出部101は、第2測定室148を備える。第2測定室148は、検知電極142および基準電極143よりも後端側で固体電解質層141および絶縁層117を貫通して形成される。NOx検出部101は、第1測定室121から排出された排気ガスを第2測定室148の内部に導入する。
【0038】
NOx検出部101は、第2ポンピングセル150を備える。第2ポンピングセル150は、固体電解質層151と、ポンピング電極152,153を備える。
固体電解質層151は、酸素イオン導電性を有するジルコニアを主体として形成されている。基準酸素室146および第2測定室148と接触する領域とその周辺の領域のセラミック層118が除去され、セラミック層118の代わりに固体電解質層151が充填されている。
【0039】
ポンピング電極152,153は、白金を主体として形成されている。ポンピング電極152は、固体電解質層151において第2測定室148と接触する面上に配置される。ポンピング電極153は、基準酸素室146を挟んで基準電極143とは反対側で固体電解質層151の面上に配置される。基準酸素室146の内部において、ポンピング電極153を覆うように多孔質体147が配置されている。
【0040】
NOx検出部101は、ヒータ160を備える。ヒータ160は、白金を主体として形成され、通電されることで発熱する発熱抵抗体であり、絶縁層119と絶縁層120との間に配置される。
【0041】
第1アンモニア検出部102は、NOx検出部101の外表面、より具体的には、絶縁層120の上に形成されている。第1アンモニア検出部102は、NOx検出部101における基準電極143と軸線O方向(図2の左右方向)に略同位置に配置されている。
【0042】
第1アンモニア検出部102は、絶縁層120の上に形成される第1基準電極211と、第1基準電極211の表面および側面を覆う第1固体電解質体212と、第1固体電解質体212の表面に形成される第1検知電極213とを備える。そして第1アンモニア検出部102は、第1基準電極211と第1検知電極213との間の起電力変化によって、排気ガスに含まれるアンモニアの濃度を検出する。
【0043】
同様に、第2アンモニア検出部103は、図3に示すように、絶縁層120の上に形成される第2基準電極221と、第2基準電極221の表面および側面を覆う第2固体電解質体222と、第2固体電解質体222の表面に形成される第2検知電極223とを備える。そして第2アンモニア検出部103は、第2基準電極221と第2検知電極223との間の起電力変化によって、排気ガスに含まれるアンモニアの濃度を検出する。
【0044】
第1基準電極211および第2基準電極221は、電極材として白金(Pt)を主体に構成されており、具体的には、Ptおよび酸化ジルコニウム(ZrO)を含む材料から構成されている。第1固体電解質体212および第2固体電解質体222は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)等の酸素イオン伝導性材料で構成されている。第1検知電極213および第2検知電極223は、電極材として金(Au)を主体に構成されており、具体的には、Auおよび酸化ジルコニウム(ZrO)を含む材料から構成されている。なお、第1検知電極213および第2検知電極223の電極材は、アンモニアに対する感度とNOxに対する感度との比が第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103において異なるように、選択されている。
【0045】
また、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103は、多孔質からなる保護層230によって一体に覆われている。保護層230は、第1検知電極213および第2検知電極223への被毒物質の付着を防止するとともに、外部から第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103に流入するアンモニアの拡散速度を調整するものである。
【0046】
図2に示すように、制御部3は、制御回路180と、マイクロコンピュータ190(以下、マイコン190という)を備える。
制御回路180は、回路基板上に配置されたアナログ回路である。制御回路180は、Ip1ドライブ回路181、Vs検出回路182、基準電圧比較回路183、Icp供給回路184、Vp2印加回路185、Ip2検出回路186、ヒータ駆動回路187および起電力検出回路188を備える。
【0047】
そして、ポンピング電極132、検知電極142およびポンピング電極152は、基準電位に接続される。ポンピング電極133は、Ip1ドライブ回路181に接続される。基準電極143は、Vs検出回路182とIcp供給回路184に接続される。ポンピング電極153は、Vp2印加回路185とIp2検出回路186に接続される。ヒータ160は、ヒータ駆動回路187に接続される。
【0048】
Ip1ドライブ回路181は、ポンピング電極132とポンピング電極133との間に電圧Vp1を印加して第1ポンピング電流Ip1を供給するとともに、供給した第1ポンピング電流Ip1を検出する。
【0049】
Vs検出回路182は、検知電極142と基準電極143との間の電圧Vsを検出し、検出した結果を基準電圧比較回路183へ出力する。
基準電圧比較回路183は、基準電圧(例えば、425mV)とVs検出回路182の出力(電圧Vs)とを比較し、比較結果をIp1ドライブ回路181へ出力する。そしてIp1ドライブ回路181は、電圧Vsが基準電圧と等しくなるように、第1ポンピング電流Ip1の流れる向きと第1ポンピング電流Ip1の大きさとを制御するとともに、第1測定室121内の酸素濃度を、NOxが分解しない程度の所定値に調整する。
【0050】
Icp供給回路184は、検知電極142と基準電極143との間に微弱な電流Icpを流す。これにより、酸素が第1測定室121から固体電解質層141を介して基準酸素室146に送り込まれるため、基準酸素室146は、基準となる所定の酸素濃度に設定される。
【0051】
Vp2印加回路185は、ポンピング電極152とポンピング電極153との間に、一定電圧Vp2(例えば、450mV)を印加する。これにより、第2測定室148では、第2ポンピングセル150を構成するポンピング電極152,153の触媒作用によって、NOxが解離(還元)される。この解離により得られた酸素イオンがポンピング電極1
52とポンピング電極153との間の固体電解質層151を移動することにより第2ポンピング電流Ip2が流れる。Ip2検出回路186は、第2ポンピング電流Ip2を検出する。
【0052】
ヒータ駆動回路187は、発熱抵抗体であるヒータ160の一端にヒータ通電用の正電圧を印加するともに、ヒータ160の他端にヒータ通電用の負電圧を印加することにより、ヒータ160を駆動する。
【0053】
起電力検出回路188は、第1基準電極211と第1検知電極213との間の起電力(以下、第1アンモニア起電力という)と、第2基準電極221と第2検知電極223との間の起電力(以下、第2アンモニア起電力という)を検出し、検出結果を示す信号をマイコン190へ出力する。
【0054】
マイコン190は、CPU191、ROM192、RAM193および信号入出力部194を備える。
CPU191は、ROM192に記憶されたプログラムに基づいて、センサ素子部5を制御するための処理を実行する。信号入出力部194は、Ip1ドライブ回路181、Vs検出回路182、Ip2検出回路186、ヒータ駆動回路187および起電力検出回路188に接続される。CPU191は、信号入出力部194を介してヒータ駆動回路187へ駆動信号を出力することにより、ヒータ160に供給する電力をパルス幅変調(Pulse Width Modulation)により通電制御して、ヒータ160が目標の温度になるようにしている。
【0055】
またCPU191は、ROM192から各種データを読み込み、第1ポンピング電流Ip1の値、第2ポンピング電流Ip2の値、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力から種々の演算処理を行う。
【0056】
ROM192は、「第1アンモニア起電力−第1アンモニア濃度出力関係式」、「第2アンモニア起電力−第2アンモニア濃度出力関係式」、「第1ポンピング電流(Ip1)−酸素濃度出力関係式」、「第2ポンピング電流(Ip2)−NOx濃度出力関係式」、「第1アンモニア濃度出力&第2アンモニア濃度出力&酸素濃度出力−補正アンモニア濃度出力関係式」(補正式(1):下記参照)、「第1アンモニア濃度出力&第2アンモニア濃度出力&酸素濃度出力−補正NO濃度出力関係式」(補正式(2))、「NOx濃度出力&補正アンモニア濃度出力&補正NO濃度出力−補正NOx濃度出力関係式」(補正式(3))を記憶する。
【0057】
なお、各種データは、上述のように所定の関係式として設定されていてもよいし、センサの出力から各種ガス濃度を算出するものであればよく、例えばテーブルとして設定されていてもよい。その他にも、予めガス濃度が既知のガスモデルを用いて得られた値(関係式およびテーブルなど)とされていてもよい。
【0058】
「第1アンモニア起電力−第1アンモニア濃度出力関係式」および「第2アンモニア起電力−第2アンモニア濃度出力関係式」は、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103から出力されたアンモニア起電力と、排気ガス中のアンモニア濃度を示すアンモニア濃度出力との関係を表す式である。
【0059】
「第1ポンピング電流−酸素濃度出力関係式」は、第1ポンピング電流と、排気ガス中の酸素濃度との関係を表す式である。「第2ポンピング電流−NOx濃度出力関係式」は、第2ポンピング電流と、排気ガス中のNOx濃度との関係を表す式である。
【0060】
「第1アンモニア濃度出力&第2アンモニア濃度出力&酸素濃度出力−補正アンモニア濃度出力関係式」は、酸素濃度およびNO濃度の影響を受けたアンモニア濃度出力(第1、第2)と、酸素濃度およびNO濃度の影響を除去した補正アンモニア濃度出力との関係を表す式である。「第1アンモニア濃度出力&第2アンモニア濃度出力&酸素濃度出力−修正NO濃度出力関係式」は、酸素濃度およびアンモニア濃度の影響を受けたNO濃度出力と、酸素濃度およびアンモニア濃度の影響を除去した補正NO濃度出力との関係を表す式である。「NOx濃度出力&補正アンモニア濃度出力&補正NO濃度出力−補正NOx濃度出力関係式」は、アンモニア濃度およびNO濃度の影響を受けたNOx濃度出力と、アンモニア濃度およびNO濃度の影響を除去、修正した正確な補正NOx濃度出力の関係を表す式である。
【0061】
次に、マイコン190のCPU191において実行される、第1ポンピング電流Ip1、第2ポンピング電流Ip2、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力から、NOx濃度およびアンモニア濃度を求める演算処理について説明する。
【0062】
CPU191は、第1ポンピング電流Ip1、第2ポンピング電流Ip2、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力が入力されると、酸素濃度出力、NOx濃度出力、第1アンモニア濃度出力および第2アンモニア濃度出力を求める演算処理を行う。具体的には、ROM192から「第1アンモニア起電力−第1アンモニア濃度出力関係式」、「第2アンモニア起電力−第2アンモニア濃度出力関係式」、「第1ポンピング電流Ip1−酸素濃度出力関係式」、「第2ポンピング電流Ip2−NOx濃度出力関係式」を呼び出し、当該関係式を用いて各濃度出力を算出する処理を行う。そして、酸素濃度出力、NOx濃度出力、第1アンモニア濃度出力および第2アンモニア濃度出力が求められると、CPU191は、以下に説明する補正式を用いた演算を行うことで、排気ガス中のアンモニア濃度およびNOx濃度を求める。
【0063】
補正式(1):x=F(A,B,D)
=(eA−c)*(jB−h−fA+d)/(eA−c−iB+g)+fA−d
補正式(2):y=F’(A,B,D)
=(jB−h−fA+d)/(eA−c−iB+g)
補正式(3):z=C−ax+by
ここで、xはアンモニア濃度であり、yはNO濃度であり、zはNOx濃度である。また、Aは第1アンモニア濃度出力であり、Bは第2アンモニア濃度出力であり、CはNOx濃度出力であり、Dは酸素濃度出力である。そして、式(1)のFは、xが(A,B,D)の関数であることを表し、式(2)のF’ は、yが(A,B,D)の関数であることを表す。さらに、a,bは補正係数であり、c,d,e,f,g,h,i,jは酸素濃度出力Dを用いて計算される係数(すなわち、Dによって決まる係数)である。
【0064】
CPU191は、上述の補正式(1)〜(3)に、第1アンモニア濃度出力(A)、第2アンモニア濃度出力(B)、NOx濃度出力(C)および酸素濃度出力(D)を代入して演算することによって、排気ガス中のアンモニア濃度およびNOx濃度を求める。
【0065】
なお、補正式(1)および補正式(2)は、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103の特性に基づいて定まる式であり、補正式(3)はNOx検出部101の特性に基づいて定まる式である。また補正式(1)〜(3)は、あくまでも補正式の一例を示したものであり、ガス検知特性に応じて、他の補正式および係数等を適宜変更してもよい。
【0066】
NO濃度、NO濃度を演算するための公知の手法は、例えば、特開2015−034
814号公報に記載されているため、ここでの詳細説明は省略する。
そして、マイコン190は、排気ガス中のアンモニア濃度を算出するアンモニア濃度算出処理を実行する。ここで、アンモニア濃度算出処理の手順を説明する。このアンモニア濃度算出処理は、マイコン190が起動した直後に、その処理を開始する。
【0067】
このアンモニア濃度算出処理が実行されると、マイコン190のCPU191は、図4に示すように、まずS10にて、センサ素子部5が活性化したか否かを判断する。ここで、センサ素子部5が活性化していない場合には、S10の処理を繰り返すことにより、センサ素子部5が活性化するまで待機する。そして、センサ素子部5が活性化すると、S20にて、ヒータ160への通電がオンからオフへ切り替わった時点から予め設定された検出時間が経過したか否かを判断する。検出時間は、パルス幅変調の変調周期の2分の1より小さくなるように設定されている。すなわち、検出時間は、ヒータ160への通電がオンからオフへ切り替わってから更にオンに切り替わるまでの時間より短い。ここで、検出時間が経過していない場合には、S20の処理を繰り返すことにより、検出時間が経過するまで待機する。
【0068】
そして、検出時間が経過すると、S30にて、第1ポンピング電流Ip1の電流値(以下、第1ポンピング電流値という)を示す検出信号をIp1ドライブ回路181から取得し、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力を示す検出信号を起電力検出回路188から取得する。さらにS40にて、第1ポンピング電流値を示す検出信号と、「第1ポンピング電流Ip1−酸素濃度出力関係式」に基づいて、酸素濃度を算出する。
【0069】
次にS50にて、電源の出力電圧の電圧値を示す検出信号をヒータ駆動回路187から取得し、電源の出力電圧(ヒータ160への印加電圧でありパルス幅変調された電圧波形の波高値)と、S60で算出された酸素濃度とに基づいて、第1アンモニア検出部102のオフセット電圧(以下、第1オフセット電圧という)を算出する。
【0070】
ところで、図5に示すように、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力は、ヒータ160への通電がオンからオフに切り替わるタイミングと、ヒータ160への通電がオフからオンに切り替わるタイミングとで、その値が大きく変動する。
【0071】
図6は、ヒータ160への通電がオンからオフへ切り替わった時点から上記の検出時間が経過したときに測定された第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力と、電源の出力電圧と、酸素濃度との対応関係を示すグラフである。図6の曲線L1,L2,L3はそれぞれ、電源の出力電圧が14V,12V,10Vであるときにおけるアンモニア起電力と酸素濃度との対応関係を示す。
【0072】
図6に示す測定結果に基づいて、オフセット電圧Voと電源の出力電圧Vnと酸素濃度Coとの対応関係を示す関係式を、下式(4)に示すように設定した。下式(4)のa,b,c,d,eは、図6に示す測定結果を関係式で表すための係数である。
【0073】
Vo=(a×Co+b×Co+c)+(14−Vn)×(d×Co+e) ・・・(4)
S50では、電源の出力電圧と酸素濃度を関係式(4)に代入することにより、第1オフセット電圧を算出する。
【0074】
そしてS50の処理が終了すると、図4に示すように、S60にて、第1アンモニア起電力から、S50で算出された第1オフセット電圧を減算した減算値を、第1補正アンモニア起電力として算出する。
【0075】
またS70にて、S50と同様にして、第2アンモニア検出部103のオフセット電圧(以下、第2オフセット電圧という)を算出する。さらにS80にて、S60と同様にして、第2アンモニア起電力から、S70で算出された第2オフセット電圧を減算した減算値を、第2補正アンモニア起電力として算出する。
【0076】
そしてS90にて、第1補正アンモニア起電力と「第1アンモニア起電力−第1アンモニア濃度出力関係式」とに基づいて第1アンモニア濃度出力を算出する。またS90では、第2補正アンモニア起電力と「第2アンモニア起電力−第2アンモニア濃度出力関係式」とに基づいて第2アンモニア濃度出力を算出する。さらにS90では、第1ポンピング電流値と「第1ポンピング電流Ip1−酸素濃度出力関係式」とに基づいて酸素濃度出力を算出する。
【0077】
さらにS100にて、上述のように、S90で算出した第1アンモニア濃度出力、第2アンモニア濃度出力および酸素濃度出力と補正式(1)とに基づいて、排気ガス中のアンモニア濃度を算出して、S20に移行する。
【0078】
このように構成されたマルチガス検出装置1は、第1固体電解質体212と、第1固体電解質体212上に配置される一対の第1基準電極211および第1検知電極213と、第2固体電解質体222と、第2固体電解質体222上に配置される一対の第2基準電極221および第2検知電極223と、第1固体電解質体212および第2固体電解質体222を加熱するヒータ160とを備える。またマルチガス検出装置1は、電源からヒータ160への電力供給がパルス幅変調によって制御されることにより第1固体電解質体212の温度が制御されるとともに、排気ガス内におけるアンモニアの濃度に応じて一対の第1基準電極211と第1検知電極213との間に起電力が生じる第1アンモニア検出部102の起電力を用いて、アンモニアの濃度を検出する。またマルチガス検出装置1は、電源からヒータ160への電力供給がパルス幅変調によって制御されることにより第2固体電解質体222の温度が制御されるとともに、排気ガス内におけるアンモニアの濃度に応じて一対の第2基準電極221と第2検知電極223との間に起電力が生じる第2アンモニア検出部103の起電力を用いて、アンモニアの濃度を検出する。
【0079】
そしてマルチガス検出装置1は、電源の出力電圧の変動に起因して発生するアンモニア起電力(すなわち、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力)の変動量(すなわち、第1オフセット電圧および第2オフセット電圧)を算出する(S50,S70)。またマルチガス検出装置1は、算出された変動量を用いて、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103で生じたアンモニア起電力を補正する(S60,S80)。
【0080】
これによりマルチガス検出装置1は、パルス幅変調によるヒータ160への電力供給に起因して発生するアンモニア起電力の変動の影響を低減することができ、アンモニアの検出精度を向上させることができる。
【0081】
またマルチガス検出装置1は、排気ガス内における酸素の濃度を検出する(S40)。そしてマルチガス検出装置1は、更に、検出された酸素の濃度に基づいて、オフセット電圧を補正する(S50,S70)。
【0082】
これによりマルチガス検出装置1は、排気ガス内における酸素の濃度に応じて第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103のインピーダンスが変化することに起因して発生するアンモニア起電力の変動の影響を低減することができ、アンモニア濃度の検出精度を更に向上させることができる。
【0083】
またマルチガス検出装置1は、第1アンモニア起電力から、第1オフセット電圧を減算することにより第1アンモニア起電力を補正するとともに、第2アンモニア起電力から、第2オフセット電圧を減算することにより第2アンモニア起電力を補正する。これによりマルチガス検出装置1は、アンモニア起電力からオフセット電圧を減算するという簡便な演算によりアンモニア起電力を補正することができ、マルチガス検出装置1の演算処理負荷を低減することができる。
【0084】
またマルチガス検出装置1は、パルス幅変調によりヒータ160への通電がオンからオフへ切り替わった時点から予め設定された検出時間が経過した後におけるアンモニア起電力を用いて、アンモニア起電力を補正する。
【0085】
このようにマルチガス検出装置1は、ヒータ160への通電が行われていないときにおけるアンモニア起電力を用いて、アンモニアの濃度を検出する。このため、マルチガス検出装置1は、ヒータ160に電流が流れていることに起因して発生するアンモニア起電力の変動の影響を低減することができ、アンモニア濃度の検出精度を更に向上させることができる。
【0086】
以上説明した実施形態において、マルチガス検出装置1は本発明におけるガス検出装置、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103は本発明におけるガスセンサ、第1固体電解質体212および第2固体電解質体222は本発明における固体電解質体、第1基準電極211および第1検知電極213と第2基準電極221および第2検知電極223は本発明における一対の電極である。
【0087】
また、S50,S70の処理は本発明における変動量算出部、S60,S80の処理は本発明における補正部、S40の処理は本発明における酸素検出部である。
また、排気ガスは本発明における被検出雰囲気、アンモニアは本発明における検出対象ガス、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力は本発明における起電力、第1オフセット電圧および第2オフセット電圧は本発明における変動量ある。
【0088】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、第1基準電極211、第1固体電解質体212および第1検知電極213が積層された構造を有する第1アンモニア検出部102と、第2基準電極221、第2固体電解質体222および第2検知電極223が積層された構造を有する第2アンモニア検出部103がアンモニアの濃度を検出するものを示した。しかし、本発明は、アンモニアの濃度を検出するガスセンサに限定されるものではない。すなわち、本発明は、被検出雰囲気内における検出対象ガスの濃度に応じて一対の電極の間に起電力が生じるガスセンサであれば適用可能である。
【0089】
また上記実施形態では、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103がNOx検出部101の外表面の上に形成されているものを示したが、本発明は、ガスセンサの上に形成されるものに限定されるものでなく、電気絶縁性を有する部材の上に第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103が形成されるようにしてもよい。
【0090】
また上記実施形態では、電源の出力電圧と酸素濃度を関係式(4)に代入することにより第1オフセット電圧および第2オフセット電圧を算出するものを示したが、第1オフセット電圧および第2オフセット電圧の算出方法はこれに限定されるものではない。例えば、電源の出力電圧と酸素濃度と第1オフセット電圧および第2オフセット電圧との対応関係が予め設定されたマップを参照することにより第1オフセット電圧および第2オフセッ
ト電圧を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…マルチガス検出装置、2…マルチガスセンサ、3…制御部、102…第1アンモニア検出部、103…第2アンモニア検出部、190…マイコン、211…第1基準電極、212…第1固体電解質体、213…第1検知電極、221…第2基準電極、222…第2固体電解質体、223…第2検知電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6