特許第6581065号(P6581065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581065
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/36 20060101AFI20190912BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   E02F3/36 C
   E02F9/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-214582(P2016-214582)
(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公開番号】特開2018-71258(P2018-71258A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 孝太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏孝
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一馬
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−190843(JP,U)
【文献】 特開2008−196245(JP,A)
【文献】 特開2006−283352(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101581105(CN,A)
【文献】 特開2015−40455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/36
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械本体、前記作業機械本体の前部に回動可能に連結された作業腕、及び前記作業腕の先端に回動可能に連結された油圧アクチュエータ付きの作業具を備えた作業機械において、
前記作業腕に一端が回動可能に連結された第1リンクと、
前記第1リンク及び前記作業具に両端が回動可能に連結された第2リンクと、
前記第1リンク及び前記第2リンクの少なくとも一方と前記作業腕とに両端が回動可能に連結された作業具シリンダと、
前記第1リンクに固定したベースフレームと、
前記ベースフレームに支持されたシャフトと、
前記シャフトに装着され、少なくとも一方が前記シャフトに沿ってスライド可能な第1滑車及び第2滑車と、
前記シャフトに装着され、前記第1滑車及び前記第2滑車を離反させる方向にばね力を作用させるバネと、
前記作業腕及び前記作業具に設けた配管継手を繋ぎ前記作業具の油圧アクチュエータに対して給排される作動油を通す管路であって、前記第1滑車及び第2滑車に掛け回された可撓性の油圧ホースを備えたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記シャフトは前記第1リンクの延在方向に延び、前記第1リンクの一端に近い側に前記第1滑車が、前記第1リンクの他端に近い側に前記第2滑車が装着されており、
前記油圧ホースは、前記作業腕に設けた配管継手との接続部を基端として、前記第1滑車に掛け回して前記第1滑車と前記第2滑車の間を通し、前記第2滑車に掛け回して前記作業具に設けた配管継手に接続してあることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、前記第1滑車及び第2滑車の半径が前記油圧ホースの最小曲げ半径以上であることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータを搭載したフォークグラップル等のアタッチメントを装着した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械の作業腕には、アタッチメントとして用途に応じて様々な作業具が装着される。フォークグラップル等のように油圧アクチュエータを備えた作業具を装着する場合、作業具に備わった配管継手を作業腕の配管継手に油圧ホースで接続する。この油圧ホースには作業具シリンダの伸縮に伴う作業具の回動を許容するために長さの余裕が必要である。その一方で、油圧ホースの弛みが大きいと鉄筋等の周囲の障害物等に油圧ホースが引っ掛かることがある。そこで、作業具と作業腕を連結するリンクにホースガイドを設け、このホースガイドに油圧ホースを通すことによって障害物等に油圧ホースが引っ掛かり難くしたものがある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−40455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、油圧ホースに用いる高耐圧性のホースには最小曲げ半径が定められており、最小曲げ半径で定義される曲率を超えて油圧ホースを曲げることはできない。そのため、単に作業具の回動を許容する以上に油圧ホースの長さに余裕を持たせなければならない場合があり、リンクに設けたホースガイドで油圧ホースの中間部を押えるだけでは油圧ホースの弛みを十分に抑えられないこともある。
【0005】
本発明の目的は、油圧アクチュエータを備えた作業具と作業腕を接続する油圧ホースの弛みを十分に抑え、油圧ホースの障害物等との干渉の発生を抑えることができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、作業機械本体、前記作業機械本体の前部に回動可能に連結された作業腕、及び前記作業腕の先端に回動可能に連結された油圧アクチュエータ付きの作業具を備えた作業機械において、前記作業腕に一端が回動可能に連結された第1リンクと、前記第1リンク及び前記作業具に両端が回動可能に連結された第2リンクと、前記第1リンク及び前記第2リンクの少なくとも一方と前記作業腕とに両端が回動可能に連結された作業具シリンダと、前記第1リンクに固定したベースフレームと、前記ベースフレームに支持されたシャフトと、前記シャフトに装着され、少なくとも一方が前記シャフトに沿ってスライド可能な第1滑車及び第2滑車と、前記シャフトに装着され、前記第1滑車及び前記第2滑車を離反させる方向にばね力を作用させるバネと、前記作業腕及び前記作業具に設けた配管継手を繋ぎ前記作業具の油圧アクチュエータに対して給排される作動油を通す管路であって、前記第1滑車及び第2滑車に掛け回された可撓性の油圧ホースを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、油圧アクチュエータを備えた作業具と作業腕を接続する油圧ホースの弛みを十分に抑え、油圧ホースの障害物等との干渉の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る作業機械の側面図である。
図2図1に示した作業機械に備えられた作業具の拡大図である。
図3図1に示した作業機械において作業具シリンダを伸ばした状態における作業腕と作業具を抜き出して表した側面図である。
図4図1に示した作業機械に備えられたアームの先端部の上面と共に緊張装置の構成を表した平面図である。
図5図1に示した作業機械に備えられた緊張装置の斜視図である。
図6図1に示した作業機械に備えられた緊張装置の分解図である。
図7図1に示した作業機械において作業具シリンダを縮めた状態における作業腕と作業具を抜き出して表した側面図である。
図8】一比較例に係る作業機械において作業具シリンダを伸ばした状態における作業腕と作業具を抜き出して表した側面図である。
図9】一比較例に係る作業機械において作業具シリンダを縮めた状態における作業腕と作業具を抜き出して表した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
1.作業機械
図1は本発明の一実施形態に係る作業機械の側面図である。以降、運転席に着いた作業者の前側(図1中の左側)、後側(同右側)、左側(同図中の紙面直交方向手前側)、右側(同億側)を作業機械の前、後、左、右として、それぞれ単に前側、後側、左側、右側と記載する。図1では繁雑防止のため後述する緊張装置を図示省略している。同図に示した作業機械は油圧ショベルをベースマシンとし、作業腕21(後述)に対して作業用のアタッチメントである作業具22としてフォークグラップルを装着した形態を例示している。
【0011】
作業機械は、作業機械本体10及びこの作業機械本体10に取り付けた作業機(フロント作業機)20を備えている。
【0012】
作業機械本体10は、走行体11及び旋回体12を備えている。走行体11作業機械の基部構造体をなすものであり、左右の履帯を備えたクローラ式の走行体である。左右の履帯はそれぞれ個別の走行モータにより駆動される。旋回体12は、走行体11上に旋回輪13を介して設けられており、旋回輪13を旋回モータ(不図示)で駆動することによって鉛直に延びる旋回中心を支点に走行体11に対して旋回する。旋回体12は運転室14を備え、運転室14内には、オペレータが座る運転席(不図示)、及びオペレータが操作する操作装置(不図示)が配置されている。走行モータや旋回モータは油圧モータであるが電動モータを用いても良い。
【0013】
作業機20は、作業腕21と油圧アクチュエータ付きの作業具22を備えている。本実施形態における作業腕21は、ブーム23、アーム24、ブームシリンダ25、アームシリンダ26、及び作業具シリンダ27を含む多関節型の作業装置である。ブーム23は旋回体12のベースフレーム(旋回フレーム15)の前部に左右に延びる軸を介して上下方向に回動可能に連結されている。アーム24はこのブーム23の先端に左右に延びる軸を介して回動可能に連結されている。ブームシリンダ25は旋回体12及びブーム23に、アームシリンダ26はブーム23及びアーム24に、それぞれ両端が連結されている。作業具シリンダ27は、基端がアーム24の基部側に連結される一方、先端が第1リンク28及び第2リンク29に連結されている。ブームシリンダ25、アームシリンダ26及び作業具シリンダ27はいずれも油圧シリンダである。
【0014】
第1リンク28の一端は左右に延びる軸を介してアーム24に回動可能に連結されている。アーム24に対する第1リンク28の連結位置は、アーム24の作業具22との連結位置(図2のピン穴36)よりもアーム基端側に位置する。第1リンク28の他端は左右に延びる軸を介して第2リンク29及び作業具シリンダ27に回動可能に連結されている。アーム24及び作業具22を下方に向けた図1の姿勢では、第1リンク28の他端はアーム24より前側に位置している。第2リンク29は作業具22に一端が、第1リンク28の他端及び作業具シリンダ27に他端がそれぞれ回動可能に連結されている。第2リンク29と作業具22の連結位置は、図1の姿勢では第2リンク29とアーム24との連結位置より前側に位置している。図1では作業具シリンダ27が第1リンク28及び第2リンク29の双方に同軸で連結された構造を例示しているが、第1リンク28及び第2リンク29のいずれか一方に回動可能に連結された構成であっても良い。本実施形態ではこのような第1リンク28及び第2リンク29がアーム24の左右両側に一組ずつ設けられている。
【0015】
2.作業具
図2は作業具の拡大図である。同図に示す作業具22はフォークグラップルであり、ブラケット31、旋回装置32、フレーム33、フォーク34及び油圧シリンダ35を備えている。ブラケット31はピン穴36,37を有している。ピン穴36にはアーム24の先端が、ピン穴37には第2リンク29の一端が、それぞれ回動可能に連結される(図1参照)。これにより作業具22がアーム24の先端に回動可能に連結され、作業具シリンダ27の伸縮に伴って第1リンク28及び第2リンク29を介して作業具22が回動する。フレーム33はブラケット31に旋回装置32を介して取り付けられている。旋回装置32は図示していないが旋回輪と旋回モータからなる。フレーム33にはフォーク34が取り付けられる。フォーク34は、それぞれ複数本を一組とした爪38,39からなる。爪38,39はそれぞれフレーム33にピン41,42を介して回動自在に取り付けてある。上記油圧シリンダ35の一端はピン43を介してフレーム33に、他端はピン44を介して爪39に連結されている。また、爪38,39は連動用リンク45で連結されている。油圧シリンダ35の伸縮に伴って爪39が回動し、爪39の回動に伴って爪38が回動する。これによりフォーク34が開閉する構造である。旋回装置32の旋回モータと油圧シリンダ35が、作業具22に備わった油圧アクチュエータである。
【0016】
3.油圧ホース
図3は作業腕と作業具を抜き出して表した側面図である。図3では作業具シリンダ27を図示省略している。同図に示すように、アーム24の左側面には少なくとも1つ(本例では3つ)の配管継手51が設けられている。配管継手51は旋回体12に搭載されたコントロールバルブ(不図示)を介して油圧ポンプ(不図示)及び作動油タンク(不図示)に接続されている。作業具22のブラケット31の左側面にも少なくとも1つの配管継手52が設けられている。図3では配管継手52を1つだけ図示しているが、配管継手52は作業具22に搭載された旋回モータや油圧シリンダ35(図2)に個別に接続されるため、少なくとも2つは必要である。配管継手51,52は少なくとも1本の可撓性の油圧ホース53によって繋がれる。油圧ホース53は作業具22に備わった油圧アクチュエータ(旋回モータや油圧シリンダ35)に対して給排される作動油を通す管路である。本実施形態では油圧ホース53を1本のみ図示しているが、作業具22の旋回機能と爪開閉機能の双方を用いる場合には少なくとも2本の油圧ホース53で配管継手51,52が接続される。油圧ホース53の長さは、作業具シリンダ27が伸長して配管継手51,52の距離が最長になった場合の配管継手51,52の間隔より長い。この油圧ホース53は緊張装置60に掛け回れている。
【0017】
なお、図3では図示していないが、配管継手51,52、油圧ホース53及び緊張装置60は左右一組ずつ設けられており、作業腕21のアーム24及び作業具22のブラケット31の左側面だけではなく、右側面にも同様に設けられている。
【0018】
4.緊張装置
図4はアーム先端部の上面と共に緊張装置の構成を表した平面図、図5は緊張装置の斜視図、図6は緊張装置の分解図である。前述した通り緊張装置60はアーム24の左右両側に各1つ設けられており、左右のもの同士は左右対称である点を除いて同一構成である(図4参照)。図5及び図6では左側の緊張装置60を図示している。緊張装置60は油圧ホース53の弛みを吸収する装置であり、ベースフレーム61、シャフト62、第1滑車63、第2滑車64、バネ65を備えている。
【0019】
ベースフレーム61は緊張装置60の基部フレームであり、アーム24の左右方向の外側(左側の緊張装置60であれば左側)に延びるようにして第1リンク28に固定されている。従って、例えば左側の緊張装置60のベースフレーム61は左側の第1リンク28から左向きに延在し、右側の緊張装置60のベースフレーム61は右側の第1リンク28から右向きに延在している。本実施形態では第1滑車63及び第2滑車64の間に1本のベースフレーム61を配置した構成を例示しているが、例えば第1滑車63及び第2滑車64を挟んで2本のベースフレーム61を設ける構成としても良い。
【0020】
なお、第1リンク28に直交する姿勢で固定したバー状のベースフレーム61を図示しているが、後述するように第1滑車63及び第2滑車64の間には油圧ホース53が通る。従って、第1滑車63及び第2滑車64の間を通る油圧ホース53と干渉しないように、ベースフレーム61の形状、配置、寸法等は適宜設定される。単純なバー状のベースフレーム61を第1滑車63及び第2滑車64の間に配置したのでは油圧ホース53との干渉が避けられない場合、例えば油圧ホース53を通す開口やスリットを有するような形状にベースフレーム61を形成すれば良い。
【0021】
シャフト62は左右の緊張装置60でそれぞれ左右に並んで2本ずつ備わっており、第1リンク28の延在方向に延びる姿勢で各ベースフレーム61に2本ずつ固定され支持されている。本実施形態では2本のシャフト62は長手方向の中間部がベースフレーム61によって支持されている。シャフト62の断面形状は限定されないが、本実施形態では円形である。また、本実施形態において1つの緊張装置60に設けられる2本のシャフト62は同一長さであり、両端に雄ねじが切ってある。
【0022】
第1滑車63及び第2滑車64は、それぞれプーリ66と支持部材67からなる。第1滑車63及び第2滑車64の半径は油圧ホース53の最小曲げ半径(油圧ホース53の仕様で定められた値)以上である。プーリ66は油圧ホース53を掛ける円板であり、本実施形態ではVプーリが用いられている。各プーリ66の回転軸は第1リンク28の軸(例えばアーム24と連結する軸)の延在方向と同じ方向(つまり左右方向)に延びており、プーリ66は鉛直面に沿っている。支持部材67はプーリ66の回転軸を回転自在に支持する支持部材であり、プーリ66の両側に配置されて回転軸の両端を支持している。支持部材67にはシャフト62を通す貫通孔が備わっている。第1滑車63の2つの支持部材67は第1リンク28の一端(アーム24に連結された側)からそれぞれシャフト62に装着される。第2滑車64の2つの支持部材67は第1リンク28の他端(第2リンク29に連結された側)からそれぞれシャフト62に装着される。つまり、第1滑車63はシャフト62の一方側(第1リンク28の一端に近い側)にスライド可能に装着され、第2滑車64はシャフト62の他方側(第1リンク28の他端に近い側)にスライド可能に装着されている。
【0023】
バネ65は内側にシャフト62を通すコイルばねであり、シャフト62に装着されて第1滑車63及び第2滑車64を離反させる方向にばね力を作用させている。本実施形態の場合、第1滑車63及び第2滑車64の各支持部材67とベースフレーム61との間にそれぞれバネ65が介在しており、1つの緊張装置60に4本のバネ65が用いられている。各バネ65はベースフレーム61から離れる方向に支持部材67を付勢している。なお、各シャフト62の両端にはそれぞれナット68(図4参照、他図面では省略)が装着されており、支持部材67のベースフレーム61から離れる方向へのスライド可能範囲を制限している。これらナット68を締め込んだり緩めたりすることで、第1滑車63及び第2滑車64のスライド可能範囲を調整することができる。
【0024】
第1滑車63及び第2滑車64には上記油圧ホース53が掛け回される。第1滑車63及び第2滑車64に対する油圧ホース53の巻回経路を説明するに当たり、本実施形態では作業腕21のアーム24に設けた配管継手51との接続部を油圧ホース53の基端とする。基端側から油圧ホース53の配管経路を説明すると、油圧ホース53はまず第2滑車64から遠い側から第1滑車63に掛け回され、更に第1滑車63と第2滑車64の間を通って第2滑車64に掛け回され、最後に作業具22に設けた配管継手52に接続される。つまり、図3に示したように左側から見て、アルファベットのSを左右反転させたような経路で第1滑車63及び第2滑車64に対して油圧ホース53が掛け回されている。右側から見れば第1滑車63及び第2滑車64に対する油圧ホース53の掛かり方はS字状である。第1滑車63及び第2滑車64の直径、間隔及びその可変量は、作業具シリンダ27が収縮して配管継手51,52の距離が最短になっても油圧ホース53が第1滑車63及び第2滑車64から外れないように設定してある。
【0025】
5.動作
作業具シリンダ27の伸長に伴って鉛直面内でアーム24に対して作業具22が回動する。例えば図3のように作業具シリンダ27を伸ばした状態から作業具シリンダ27を収縮させると、図7のように作業具22が上側(ショベルで言うダンプ側)に回動する。第1リンク28はアーム24に連結された一端側を支点にして他端がアーム先端側に向かう姿勢(図3)からアーム基端側に向かう姿勢(図7)に回動する。作業具シリンダ27を伸長させる場合は逆の動作をする。このように作業具22が回動すると第1リンク28と一体となって緊張装置60も回動する。その際、第1滑車63及び第2滑車64は油圧ホース53に転動しながら、油圧ホース53から受ける力に応じたバネ65の伸縮動作によって互いの距離を変化させる。これにより油圧ホース53に常時適当な張力が作用する。
【0026】
6.効果
(1)油圧ホースの弛み抑制
図8及び図9は一比較例に係る作業機械に備えられた作業腕と作業具を抜き出して表した側面図である。図8及び図9図3及び図7に対応している。比較例に係る構成では緊張装置60が備わっていない。油圧ホースHはアームAに対する作業具Bの回動を許容するためにアームA及び作業具Bの配管継手C,Dの間隔の最大値よりも長くする必要がある。そのため、例えば作業具Bをショベルで言うクラウド側(図8)からダンプ側(図9)に作業具Bを回動させると、図9に示したように配管継手C,Dが近付き、油圧ホースHの弛みが大きくなる。図9では左右方向から見て弛んだ油圧ホースHがアームAの外形から下側に大きくはみ出している。このような状態では、例えば旋回体12を旋回させた際等に鉄筋等の周囲の障害物等に油圧ホースが引っ掛かり易い。
【0027】
それに対し、本実施形態においては、バネ65で弾性的に支持されて間隔が変化する第1滑車63及び第2滑車64に油圧ホース53を掛け回し、油圧ホース53に常時適当な張力を与えている。これにより、図3及び図7に示したように作業具22の回動に伴って大きさが変化する油圧ホース53の弛みを吸収することができる。従って、油圧アクチュエータを備えた作業具22と作業腕21を接続する油圧ホース53の弛みを十分に抑え、油圧ホース53の障害物等との干渉の発生を抑えることができる。
【0028】
(2)油圧ホースの長さ抑制
仮に緊張装置60をアーム24に直接取り付けてアーム24に対して回動しない構成とすると、作業具22の回動運動に伴う作業具22の配管継手52のアーム24に対する変位量が配管継手52と緊張装置60の相対的な位置関係に直接的に反映される。そのため、油圧ホース53で結ばれる緊張装置60から配管継手52までの距離の変化量が大きく、第1滑車63及び第2滑車64の間隔の可変量を大きくする必要からバネ65を長くする必要がある。
【0029】
本実施形態では第1滑車63及び第2滑車64に対して油圧ホース53をS字状(左側から見れば厳密には逆S字状)に掛け回し、油圧ホース53の基端から経路を辿ると最終的に第2滑車64を介して配管継手52に油圧ホース53が接続する。このとき、緊張装置60を第1リンク28に設けたことで第1リンク28と共に緊張装置60が回動し、作業具22の回動に伴う配管継手52の変位に追従して第2滑車64が移動する。第2滑車64は第2リンク29の他端に対して一定の位置関係にあるため、配管継手52から見れば第2滑車64は作業具22に支点を持つ第2リンク29に伴って揺動することになる。配管継手52は第2リンク29の一端に対して一定の位置関係にあるため、作業具22の回動に伴う配管継手52と第2滑車64の間隔の変動は小さい。従って、上記仮定(アーム24に緊張装置60を固定する場合)に比べてバネ65の長さを短くすることができ、緊張装置60をコンパクトに構成することができる。
【0030】
(3)油圧ホースの耐久性の確保
本実施形態では第1滑車63及び第2滑車64の外周に沿って油圧ホース53を折り返す構成であるが、第1滑車63及び第2滑車64の半径は油圧ホース53の最小曲げ半径以上に設定してある。これにより最小曲げ半径で定義される曲率を超えて油圧ホース53が曲がることがなく、油圧ホース53の仕様に応じた耐久性を確保することができる。
【0031】
7.変形例
上記実施形態では図5等では第1滑車63及び第2滑車64に断面V字状の溝を有するプーリ66を例示したが、滑車の溝の断面形状はV型に限定されず平プーリ等を用いても良い。また、溝が1本のみのプーリ66を例示したが、複数本の油圧ホースを掛けることを想定する場合、複数本の溝を有するプーリを用いても良い。
【0032】
第1滑車63及び第2滑車64の双方ともシャフト62に対してスライドする構成を例示したが、第1滑車63及び第2滑車64のいずれか一方がシャフト62に固定された構成としても良い。
【0033】
また、緊張装置60のシャフト62を第1リンク28に沿って伸びる構成を例示したが、第1リンク28に対して傾斜した方向にシャフト62が延びる構成としても良い。
【0034】
支持部材61が第1滑車63及び第2滑車64の間に介在し、支持部材61を基点にして第1滑車63及び第2滑車64をバネ65で付勢する構成としているが、この構成にも限定されない。例えばシャフト62の両端を支持部材で支持する構成とした場合、第1滑車63及び第2滑車64の間の支持部材61は省略できる。この場合、1本のシャフト62につき第1滑車63及び第2滑車64の間に1本のバネ65を介在させ、このバネ65によって第1滑車63及び第2滑車64を付勢する構成とすることができる。第1滑車63及び第2滑車64のスライド範囲を制限するナット68は両端の支持部材よりもシャフト62の長手方向の中央側に配置すれば良い。
【0035】
作業具22として廃材のスクラップ処理や運搬等に用いるフォークグラップルを例示したが、油圧アクチュエータを搭載した他種の作業具を作業腕21に装着した場合にも本発明は適用可能であり、その場合にも緊張装置60は有効に機能する。油圧アクチュエータを搭載した他種の作業具としては、解体現場で用いる小割用の破砕機、岩盤やコンクリート等の掘削や破砕等に用いるブレーカ等が例示できる。但し、油圧ホース53が必要なくなるため緊張装置60は機能しないが、土砂やコンクリートガラ等の掘削や運搬等に用いるバケット等の油圧アクチュエータ非搭載の作業具も上記実施形態の作業機械には装着できる。
【0036】
また、作業腕を1本のみ有する油圧ショベルをベースマシンとした作業機械に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、2本の作業腕を有する双腕型の作業機械にも本発明は適用可能である。基部構造体としてクローラ式の走行体11を備えた作業機械を例示したが、ホイール式の走行体を備えた作業機械にも本発明は適用可能である。船体を基部構造体とした作業機械にも本発明は適用可能である。その他、地面に固定したポスト等の固定式の基部構造体の上部に旋回体を設けた定置式の作業機械にも本発明は適用可能である。また、油圧ショベルをベースマシンとした作業機械に限らず、油圧アクチュエータを搭載した作業具を作業腕に装着し得る他種の作業機械、例えばホイールローダにも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…作業機械本体、21…作業腕、22…作業具、28…第1リンク、29…第2リンク、51,52…配管継手、53…油圧ホース、61…ベースフレーム、62…シャフト、63…第1滑車、64…第2滑車、65…バネ、ディスク66、支持部材67、ナット68
図1
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図9