(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
繊維とマトリックスとの間の界面剪断応力は、優れた機械特性を有する複合材料を得るために重要な因子である。界面剪断応力は、繊維−マトリックス系のそれぞれにおける界面粘着力を推定するために用いられる。界面接着力は、繊維の集束(サイジング)の化学的性質及びマトリックスの化学的組成に強く依存する。したがって、両立可能な化学的特性により、より強い界面接着力と、それによる組成物の優れた機械的特性がもたらされると期待される。
【0011】
本明細書において、ポリマー材料を含むマトリックスと、ポリエーテルイミドで集束された繊維、エポキシで集束された繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの集束された繊維と、を含む複合材料が説明される。少なくとも1つの集束された繊維は、ポリマー材料を含むマトリックスに埋め込まれる。
【0012】
ポリマー材料は、芳香族ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリスルホン(PSU)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)のポリマー及びコポリマーを含んでもよい。上記のポリマー材料の任意のポリマーとコポリマーの双方が用いられてもよい。
【0013】
芳香族ポリケトンは、ポリアリールエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトンを含む任意の芳香族ポリケトンであってもよい。芳香族ポリケトンは、式(I)の繰り返し単位を含む。
【化1】
ここで、Arは、それぞれ個々に、6〜30の炭素を有する置換又は非置換の単環式又は多環式芳香族基である。Ar基の例は、フェニル、トリル、ナフチル、及びビフェニルを含む。更なる芳香族基は国際公開第WO02/02158号に開示される。芳香族ポリケトンは、ポリアリールエーテルケトンであってもよい。この場合、芳香族ポリケトンは、式(I)の繰り返し単位及び式(II)の繰り返し単位を含む。
【化2】
ここで、Arは、上記で定義された通りである。式(I)及び式(II)におけるArは、同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
ある実施の形態において、芳香族ポリケトンは、ポリエーテルエーテルケトンを含む。ポリエーテルエーテルケトンは、式(III)の繰り返し単位を含む。
【化3】
ここで、Arは、上記で定義された通りであり、Ar
1及びAr
2は、それぞれ個々に、6〜30の炭素を有する置換又は非置換の単環又は多環芳香族基である。Ar、Ar
1、及びAr
2は、互いに同一であっても異なってもいてもよい。また、Ar、Ar
1、及びAr
2のうちの2つが互いに同一であって、3つ目が異なっていてもよい。ある実施の形態において、Ar、Ar
1、及びAr
2は、フェニル基である。
【0015】
芳香族ポリケトンは、既知であり、市販されている。市販されている芳香族ポリケトンの例は、VICTREXによるPEEK(登録商標)ポリマーを含む。
【0016】
ポリベンゾイミダゾールは、下記の式IV及びVの繰り返し単位を含む。式IVは、
【化4】
ここで、Rは、4価の芳香族核であり、芳香族核の隣接する炭素原子、すなわちオルト位の炭素原子上で対になってベンゾイミダゾール環を形成する窒素原子により、好ましくは対称的に置換され、Rは、(1)芳香環、(2')アルキレン基(好ましくは、4〜8個の炭素原子を有するもの)、及び(3')(a)ピリジン、(b)ピラジン、(c)フラン、(d)キノリン、(e)チオフェン、及び(f)ピランからなる類からの複素環、からなる類の要素である。式Vは、
【化5】
ここで、Zは、芳香族核の隣接する炭素原子上で対になってベンゾイミダゾール環を形成する窒素原子を有する芳香族核である。
【0017】
芳香族ベンゾイミダゾールは、好ましくは、例えば、実質的に、Rが芳香環又は複素環である式IV及びVの繰り返し単位からなるポリマーから選択される。ポリベンゾイミダゾールについては、米国特許第3,699,038号に更に記載される。
【0018】
本明細書において使用される「ポリカーボネート」は、式(1)の繰り返し構造カーボネート単位を有するポリマー又はコポリマーを意味する。
【化6】
ここで、R
1基の総数の少なくとも60%は芳香族であり、又は、それぞれのR
1は少なくとも1つのC
6−30の芳香族基を含む。具体的には、それぞれのR
1は、式(2)の芳香族ジヒドロキシ化合物又は式(3)のビスフェノールなどのジヒドロキシ化合物の誘導体であってもよい。
【化7】
式(2)において、R
hは、それぞれ個々に、臭素などのハロゲン原子、C
1−10アルキル、ハロゲン置換C
1−10アルキル、C
6−10アリール、又はハロゲン置換C
6−10アリールなどのC
1−10ヒドロカルビル基であり、nは0〜4である。
【0019】
式(3)において、R
a及びR
bは、それぞれ個々に、ハロゲン、C
1−12アルコキシ基、又はC
1−12アルキル基であり、p及びqは、それぞれ個々に、0〜4の整数であり、p又はqが4未満である場合は、環のそれぞれの炭素の原子価は水素により満たされる。ある実施の形態において、p及びqはそれぞれ0であり、又は、p及びqがそれぞれ1で、R
a及びR
bはそれぞれC
1−3アルキル基、具体的には、それぞれのアリーレン基におけるヒドロキシ基のメタに位置するメチル基である。X
aは、2つのヒドロキシ置換芳香族基を結合させる架橋基であり、架橋基とそれぞれのC
6アリーレン基のヒドロキシ置換基は、C
6アリーレン基において、互いに、オルト、メタ、又はパラ(とくに、パラ)に位置する。X
aは、例えば、単結合、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)
2−、−C(O)−、又は環式又は非環式、芳香族又は非芳香族のC
1−18有機基であり、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、又はリンなどのヘテロ原子を更に含んでもよい。例えば、X
aは、置換又は非置換のC
3−18シクロアルキリデン基;式−C(R
c)(R
d)であって、R
c及びR
dは、それぞれ個々に、C
1−12アルキル基、C
1−12シクロアルキル基、C
7−12アリールアルキル基、C
1−12ヘテロアルキル基、又は環式C
7−12ヘテロアリールアルキル基であるC
1−25アルキリデン基;又は式−(C(=Re)−であって、R
eは、2価のC
1−12炭化水素基である基であってもよい。
【0020】
具体的なジヒドロキシ化合物は、レゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」又は「BPA」、式(3)において、それぞれのA
1及びA
2がp−フェニレンで、Y
1がイソプロピリデン)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(N−フェニルフェノールフタレインビスフェノール、「PPPBP」、又は3,3'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルイソインドリン−1−オンとしても知られる)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)、及びビスフェノールAから、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンビスフェノール)を含む。
【0021】
ポリ(フェニレンエーテル)は、式(VI)の繰り返し構造単位を含む。
【化8】
ここで、それぞれの構造単位において、Z
1は、それぞれ個々に、ハロゲン原子、置換又は無置換の三級ヒドロカルビル基ではないC
1−C
12のヒドロカルビル基、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、又は少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基であり、Z
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換の三級ヒドロカルビル基ではないC
1−C
12のヒドロカルビル基、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、又は少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基である。
【0022】
ポリ(フェニレンエーテル)は、アミノアルキル含有末端基を有する分子を含んでもよい。アミノアルキル含有末端基は、典型的には、ヒドロキシ基に対してオルト位に位置する。典型的にはテトラメチルジフェニルキノン(TMDQ)副生成物が存在する反応混合物から得られるテトラメチルジフェニルキノン末端基もよく存在する。
【0023】
ポリ(フェニレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、アイオノマー、又はブロックコポリマーの形態であってもよく、これらの少なくとも1つを含む組み合わせであってもよい。ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を含み、オプションで2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と組み合わされたポリフェニレンエーテルを含む。
【0024】
ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−キシレノール、及び/又は、2,3,6−トリメチルフェノールなどの1価ヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングにより調整されてもよい。一般に、このようなカップリングには触媒系が用いられる。触媒は、銅、マンガン、又はコバルト化合物などの重金属化合物を含んでもよく、通常、第二級アミン、第三級アミン、ハロゲン化合物、又はこれらの2以上の組み合わせなどの他の様々な物質と組み合わされる。
【0025】
ポリエーテルイミドは、ポリエーテルイミドなどのポリエーテルイミドホモポリマー、ポリエーテルイミドスルホンなどのポリエーテルイミドコポリマー、及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。ポリエーテルイミドは、既知のポリマー、例えば、SABIC Innovative Plastics社から、Ultem、Extem、及びSiltemブランド(SABIC Innovative Plastics IP B.V.社の商標)として市販されているものを含むが、それらに限られない。
【0026】
1つの実施の形態において、ポリエーテルイミドは、式(4)のものである。
【化9】
ここで、aは1より大きく、例えば10〜1000又はそれ以上であり、より具体的には10〜500である。式(1)におけるV基は、エーテル基(本明細書においては「ポリエーテルイミド」)、又はエーテル基及びアリーレンスルホン基の組み合わせ(「ポリエーテルイミドスルホン」)を含む4価のリンカーである。このようなリンカーは、(a)5〜50個の炭素原子を有し、エーテル基、アリーレンスルホン基、又はエーテル基とアリーレンスルホン基の組み合わせにより置換された、飽和、不飽和、又は芳香族の単環式及び多環式基、及び(b)1〜30個の炭素原子を有し、エーテル基、又はエーテル基、アリーレンスルホン基、及びアリーレンスルホン基の組み合わせにより置換された、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和のアルキル基、又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせを含むが、これらに限られない。更なる好適な置換基は、アミド基、エステル基、及び上記の少なくとも1つを含む組み合わせを含むが、これらに限られない。
【0027】
式(4)のR基は、置換又は非置換の2価の有機基、例えば、(a)6〜20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基及びそれらのハロゲン化誘導体、(b)2〜20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基、(c)3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、(d)式(5)の2価基などを含むが、これらに限られない。
【化10】
ここで、Q
1は、−O−、−S−、−C(O)−、−SO
2−、−SO−、−C
yH
2y−(yは1〜5の整数)、及びパーフルオロアルキレン基を含むそれらのハロゲン化誘導体などの2価部分を含むが、これらに限られない。
【0028】
ある実施の形態において、リンカーVは、式(6)の4価芳香族基を含むが、これらに限られない。
【化11】
ここで、Wは、−O−、−SO
2−、又は式−O−Z−O−の基を含む2価部分であり、−O−又は−O−Z−O−基の2価の結合は、3,3'、3,4'、4,3',又は4,4'位であり、Zは、式(7)の2価基を含むが、これらに限られない。
【化12】
ここで、Qは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO
2−、−SO−、−C
yH
2y−(yは1〜5の整数)、及びパーフルオロアルキレン基を含むそれらのハロゲン化誘導体などを含む2価部分を含むが、これらに限られない。
【0029】
具体的な実施の形態において、ポリエーテルイミドは、1個より多く、具体的には10〜1000個、より具体的には10〜500個の、式(8)の構造単位を含む。
【化13】
ここで、Tは、−O−、又は式−O−Z−O−の基であり、−O−又は−O−Z−O−基の2価の結合は、3,3'、3,4'、4,3',又は4,4'位であり、Zは、上記で定義した式(7)の2価基であり、Rは、上記で定義した式(4)の2価基である。
【0030】
別の具体的な実施の形態において、ポリエーテルイミドスルホンは、エーテル基及びスルホン基を含むポリエーテルイミドであり、式(4)のリンカーV及びR基の少なくとも50モル%は、2価のアリーレンスルホン基を含む。例えば、全てのリンカーVがアリーレンスルホン基を含み、R基は全く含まなくてもよいし、全てのR基がアリーレンスルホン基を含み、リンカーVは全く含まなくてもよいし、アリーレンスルホン基がリンカーV及びR基の一部に存在し、アリールスルホン基を含むV及びR基の総モル分率が50モル%以上であってもよい。
【0031】
更に具体的には、ポリエーテルイミドスルホンは、1個より多く、具体的には10〜1000個、より具体的には10〜500個の、式(9)の構造単位を含む。
【化14】
ここで、Yは、−O−、−SO
2−、又は式−O−Z−O−の基であり、−O−、−SO
2−、又は−O−Z−O−基の2価の結合は、3,3'、3,4'、4,3',又は4,4'位であり、Zは、上記で定義した式(7)の2価基であり、Rは、上記で定義した式(4)の2価基であり、式(2)のYのモル数とRのモル数の和の50モル%超が−SO
2−基を含む。
【0032】
ポリエーテルイミド及びポリエーテルイミドスルホンは、オプションで、エーテル基、又は、エーテル基及びスルホン基を含まない、例えば式(10)のようなリンカーVを含んでもよい。
【化15】
このようなリンカーを含むイミド単位は、一般に、単位の総数の0〜10モル%、具体的には0〜5モル%の量で存在する。1つの実施の形態において、ポリエーテルイミド及びポリエーテルイミドスルホン中に、更なるリンカーVは存在しない。
【0033】
別の具体的な実施の形態において、ポリエーテルイミドは、式(8)の構造単位を10〜500個含み、ポリエーテルイミドスルホンは、式(9)の構造単位を10〜500個含む。
【0034】
ポリエーテルイミド及びポリエーテルイミドスルホンは、式(11)のビス(フタルイミド)の反応を含む様々な方法により調整することができるが、これに限られない。
【化16】
ここで、Rは、上述した通りであり、Xは、ニトロ基又はハロゲン原子である。ビス(フタルイミド)(11)は、例えば、式(12)の対応する無水物と、式(13)の有機ジアミンとの凝縮により生成することができる。
【化17】
ここで、Xは、ニトロ基又はハロゲン原子である。
【化18】
ここで、Rは、式(4)に関連して上述した通りである。
【0035】
式(13)のアミン化合物の例は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサミチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、N−メチル−ビス(3−アミノプロピル)アミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、ビス(3−アミノプロピル)スルフィド、1,4−シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレン−ジアミン、5−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレン−ジアミン、ベンジジン、3,3'−ジメチルベンジジン、3,3'−ジメトキシベンジジン、1,5−ジアミノナフタレン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(2−クロロ−4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,4−ビス(b−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−b−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−b−メチル−o−アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p−b−メチル−o−アミノペンチル)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、及び1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンを含む。これらのアミンの混合物が用いられてもよい。スルホン基を含む式(10)のアミン化合物の例は、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)及びビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン(BAPS)を含むが、これらに限られない。上記の任意のアミンを含む組み合わせが用いられてもよい。
【0036】
ポリエーテルイミドは、相間移動触媒の存在又は不存在下における、ビス(フタルイミド)(11)と、式OH−V−OHのジヒドロキシ置換芳香族炭化水素のアルカリ金属塩との反応により合成されてもよい。ここで、Vは、上述した通りである。好適な相間移動触媒は、米国特許第5,229,482号に開示される。具体的には、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素は、ビスフェノールAなどのビスフェノールである。ビスフェノールのアルカリ金属塩と、別のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素のアルカリ金属塩との組み合わせが用いられてもよい。
【0037】
1つの実施の形態において、ポリエーテルイミドは、式(8)の構造単位を含み、Rは、それぞれ個々に、p−フェニレン又はm−フェニレン又は上記の少なくとも1つを含む混合物であり、Tは、式−O−Z−O−の基であり、−O−Z−O−の基の2価の結合は、3,3'位であり、Zは、2,2−ジフェニレンプロパン基(ビスフェノールA基)である。1つの実施の形態において、ポリエーテルイミドスルホンは、式(9)の構造単位を含み、R基の少なくとも50モル%は、式(7)のものであり、Qは、−SO
2−であり、残りのR基は、個々に、p−フェニレン又はm−フェニレン又は上記の少なくとも1つを含む組み合わせであり、Tは、式−O−Z−O−の基であり、−O−Z−O−の基の2価の結合は、3,3'位であり、Zは、2,2−ジフェニレンプロパン基である。
【0038】
ポリエーテルイミド及びポリエーテルイミドスルホンは、単独で、又は、互いに、及び/又は、本発明のポリマー成分の製造において開示された他のポリマー物質と組み合わせて用いられてもよい。1つの実施の形態において、ポリエーテルイミドのみが用いられる。1つの実施の形態において、ポリエーテルイミド:ポリエーテルイミドスルホンの重量比は、99:1〜50:50であってもよい。
【0039】
シロキサンポリエーテルイミドは、ブロックコポリマーの総重量を基準として、0より多く40より少ない重量%(wt%)の量のシロキサンを有するポリシロキサン/ポリエーテルイミドブロックコポリマーを含んでもよい。ブロックコポリマーは、式(14)のシロキサンブロックを含む。
【化19】
ここで、R
1−6は、それぞれ個々に、5〜30個の炭素原子を有する置換又は非置換、飽和、不飽和、又は芳香族単環式基、5〜30個の炭素原子を有する置換又は非置換、飽和、不飽和、又は芳香族多環式基、1〜30個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルキル基、及び2〜30個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルケニル基からなる群から選択され、Vは、5〜50個の炭素原子を有する置換又は非置換、飽和、不飽和、又は芳香族単環式及び多環式基、2〜30個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルケニル基、及び上記のリンカーの少なくとも1つを含む組み合わせからなる群から選択された4価のリンカーであり、gは1〜30であり、dは2〜20である。市販されたシロキサンポリエーテルイミドは、SABIC Innovative Plastics社から、ブランド名SILTEM(SABIC Innovative Plastics IP B.V.社の商標)として入手可能である。
【0040】
ポリエーテルイミド樹脂は、例えば米国特許第3,875,116号、6,919,422号、及び6,355,723号などに記載されたポリエーテルイミド、例えば米国特許第4,690,997号、4,808,686号などに記載されたシリコンポリエーテルイミド、米国特許第7,041,773号に記載されたポリエーテルイミドスルホン樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。これらの特許公報のそれぞれは、全体が本明細書に援用される。
【0041】
ポリエーテルイミドは、p−クミルフェノール、脂肪族アミン、又は芳香族アミンなどのエンドキャップ剤により終端(エンドキャップ)されてもよい。
【0042】
ポリエーテルイミドは、様々な量のヒドロキシル基を有してもよい。ヒドロキシル基の量は、100ppm以上600ppm以下であってもよい。具体的には、ヒドロキシル基の量は200〜600ppm、又は、より具体的には、400〜600ppmであってもよい。
【0043】
ポリエーテルイミドは、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)が、5000〜100000g/モルであってもよい。ある実施の形態において、Mwは、10000〜80000であってもよい。本明細書において、分子量は、絶対重量平均分子量(Mw)を指す。
【0044】
ポリエーテルイミドは、m−クレゾール中25℃で測定した固有粘度が0.2dl/g以上であってもよい。この範囲内で、m−クレゾール中25℃で測定した固有粘度は、0.35〜1.0dl/gであってもよい。
【0045】
ポリエーテルイミドは、ASTM試験D3418により示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定したガラス転移温度が、180℃超、具体的には200〜500℃であってもよい。ある実施の形態において、ポリエーテルイミド、とくに、ポリエーテルイミドは、240〜350℃のガラス転移温度を有する。
【0046】
ポリエーテルイミドは、340〜370℃で、6.7kgの重りを用いて、米国材料試験協会(ASTM)DI238により測定したメルトインデックスが、0.1〜10g/分であってもよい。
【0047】
ポリエーテルイミド樹脂は、ベンジル水素を実質的に含まなくてもよい(100ppm未満)。ポリエーテルイミド樹脂は、ベンジル水素を含まなくてもよい。ポリエーテルイミド樹脂は、100ppm未満の量のベンジル水素を有してもよい。1つの実施の形態において、ベンジル水素の量は、0より多く100ppmよりも少ない範囲である。別の実施の形態において、ベンジル水素の量は、検出不可能である。
【0048】
ポリエーテルイミド樹脂は、ハロゲン原子を実質的に含まなくてもよい(100ppm未満)。ポリエーテルイミド樹脂は、ハロゲン原子を含まなくてもよい。ポリエーテルイミド樹脂は、100ppm未満の量のハロゲン原子を有してもよい。1つの実施の形態において、ハロゲン原子の量は、0より多く100ppmよりも少ない範囲である。別の実施の形態において、ハロゲン原子の量は、検出不可能である。
【0049】
繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、及びそれらの組み合わせを含む。繊維は、円形又は非円形の断面を有してもよい。1つの実施の形態において、扁平ガラス繊維が用いられてもよい。繊維は、S−ガラス、E−ガラス、ガラス長繊維、工業用炭素繊維、航空機用炭素繊維、炭素長繊維、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。繊維の量は、アプリケーションに依存して変化しうるが、繊維及びポリマー材料の合計重量を基準として、0より多く60重量%以下の範囲であってもよい。
【0050】
ポリエーテルイミドで集束された繊維は、繊維の総重量を基準として、0〜7重量%超の集束剤(サイジング百分率)、より具体的には、0〜5重量%の集束剤(サイジング百分率)を有してもよい。
【0051】
ポリエーテルイミドで集束された繊維は、1〜20μm、又は、より具体的には、2〜15μmの直径を有してもよい。
【0052】
ポリエーテルイミドで集束された繊維は、0.5〜7g/cm
3、又は、より具体的には、1〜4g/cm
3の密度を有してもよい。
【0053】
エポキシで集束された繊維は、繊維の総重量を基準として、0〜7重量%のサイジング百分率、又は、より具体的には、0〜5重量%のサイジング百分率を有してもよい。
【0054】
エポキシで集束された繊維は、1〜20μm、又は、より具体的には、2〜15μmの直径を有してもよい。
【0055】
エポキシで集束された繊維は、0.5〜7g/cm
3、又は、より具体的には、1〜4g/cm
3の密度を有してもよい。
【0056】
ポリエーテルイミドマトリックスは、塩素置換ポリエーテルイミドマトリックスであってもよい。炭素繊維は、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維であってもよい。塩素置換ポリエーテルイミドマトリックス及びポリエーテルイミドで集束された炭素繊維を含む複合材料は、65〜500メガパスカル(MPa)、又は、より具体的には、66〜300MPa、又は、より具体的には、68〜120MPaの界面剪断応力を有してもよい。
【0057】
炭素繊維は、エポキシで集束された炭素繊維であってもよい。塩素置換ポリエーテルイミドマトリックス及びエポキシで集束された炭素繊維を含む複合材料は、65〜500MPa、又は、より具体的には、70〜300MPa、又は、更に具体的には、73〜120MPaの界面剪断応力を有してもよい。
【0058】
ポリエーテルイミドマトリックスは、p−クミルフェノール末端ポリエーテルイミドであってもよい。炭素繊維は、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維であってもよい。p−クミルフェノール末端ポリエーテルイミドマトリックス及びポリエーテルイミドで集束された炭素繊維を含む複合材料は、57〜500MPa、又は、より具体的には、60〜300MPa、又は、更に具体的には、60〜120MPaの界面剪断応力を有してもよい。
【0059】
p−クミルフェノール末端ポリエーテルイミドマトリックス及びエポキシで集束された炭素繊維を含む複合材料は、57〜500MPa、又は、より具体的には、65〜300MPa、又は、更に具体的には、68〜120MPaの界面剪断応力を有してもよい。
【0060】
ポリエーテルイミドマトリックスは、脂肪族アミン末端ポリエーテルイミドであってもよい。脂肪族アミン末端ポリエーテルイミドマトリックス及びポリエーテルイミドで集束された炭素繊維を含む複合材料は、57.7〜500MPa、又は、より具体的には、60〜300MPa、又は、更に具体的には、60〜120MPaの界面剪断応力を有してもよい。
【0061】
脂肪族アミン末端ポリエーテルイミドマトリックス及びエポキシで集束された炭素繊維を含む複合材料は、55〜500MPa、又は、より具体的には、65〜300MPa、又は、更に具体的には、70〜120MPaの界面剪断応力を有してもよい。
【0062】
ポリエーテルイミドマトリックスは、芳香族アミン末端ポリエーテルイミドであってもよい。芳香族アミン末端ポリエーテルイミドマトリックス及びエポキシで集束された炭素繊維を含む複合材料は、52〜500MPa、又は、より具体的には、60〜300MPa、又は、更に具体的には、65〜120MPaの界面剪断応力を有してもよい。
【0063】
芳香族アミン末端ポリエーテルイミドマトリックス及びポリエーテルイミドで集束された炭素繊維を含む複合材料は、52〜500MPa、又は、より具体的には、54.6〜300MPa、又は、更に具体的には、54.6〜120MPaの界面剪断応力を有してもよい。
【0064】
有利なことに、本発明に包含される複合材料は、有用な特性を提供し、多数の市場及び産業において様々な物品を製造するために使用することができる。自動車産業においては、例えば、ホイール、ボディパネル、及びボンネット内物品をこれらの複合材料で製造することができる。スポーツ用品においては、自転車のフレーム、テニスラケット、ゴルフクラブ、ボート、及びカヌーを製造するために、これらの複合材料を使用することができる。航空宇宙産業においては、マイクロエアービークル、超軽量動力機、エンジン部品、及び内装パネルを製造するために使用することができる。消費者向け製品においては、これらの複合材料は、ラップトップ、ブリーフケース、及び携帯型装置を製造するために使用することができる。このように、本発明の範囲は、ポリエーテルイミドマトリックスと、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維、エポキシで集束された炭素繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの集束された炭素繊維とを含む物品を含む。別の実施の形態において、本発明の範囲は、ホイール、ボディパネル、ボンネット内物品、自転車のフレーム、テニスラケット、ゴルフクラブ、ボート、カヌー、マイクロエアービークル、超軽量動力機、エンジン部品、内装パネル、ラップトップ、ブリーフケース、及び携帯型装置から物品が選択され、この物品のそれぞれは、ポリエーテルイミドマトリックスと、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維、エポキシで集束された炭素繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの集束された炭素繊維とを含む実施の形態を含む。
【0065】
[実施例]
本発明は、下記の例示的な実施例において更に説明される。実施例において、全ての部及び百分率は、別段の指示がない限り、重量による。
【0066】
[実施例1〜15]
材料:使用した繊維、及び記載した繊維の物理的特性を下記の表1に示す。
【表1】
【0067】
使用した樹脂を下記の表2に示す。
【表2】
【0068】
3つの異なる炭素繊維材料及び5つの熱可塑性樹脂により、後述する温度の概要にしたがって、単繊維複合材料を調整した。その後、繊維マトリックスの剪断応力を、単繊維引抜法により試験した。
【0069】
繊維表面分析:炭素繊維の表面の粗さは、樹脂と繊維との間の良好な接着をもたらす機械的結合に寄与するため、重要である。原子間力顕微鏡(AFM)の高さ及び位相画像は、炭素長繊維(LCF)の表面形態を示す。サイジングされていないLCFは、隆起及び溝のある滑らかな表面を示す。
【0070】
PEIでサイジングされたLCF及びエポキシでサイジングされたLCFは、表面形態において非均一なサイジングのコーティングを示す。表面は、長さ方向の隆起及び溝も示す。コーティング物質の凝集がない領域の粗さは約30nmであり、コーティング物質の凝集がある領域の粗さはそれよりもかなり高い。
【0071】
サイジングの化学的分析:昇温脱離ガス分析法(TDS)及びATR/FTIR画像法を用いて、化学的分析を行った。分析は、炭素繊維上に存在するサイジングの種類の示唆を与えた。興味深いことに、炭素繊維の表面上に、アーモスリップ18としても知られ、潤滑剤として一般に使用される脂肪族長鎖13−ドコセン酸アミドが、更なる化合物として確認された。これは、炭素繊維の表面にわたって均一に分散されるというよりも、小さなドメインに局在していた。これは、炭素繊維の取扱を更に容易にし、取扱中の損傷を防ぐために用いられたのかもしれない。
【0072】
複合材料試料調整:複合材料の調整中に泡が形成されるのを防ぐために、樹脂の細粒をより小さな欠片にカットして、150℃で5時間乾燥させた。乾燥後、樹脂の細粒/小片をシリカゲルと共に小さな容器に保存した。試験装置に嵌め込むために設計された金属基材を340℃に加熱した。樹脂の小片を配置し、泡のない完全な小滴が形成されるまで、360℃に加熱した。
【0073】
1つの繊維セグメントからなる単繊維複合材料試料を、試料ホルダーに固定されたポリマーの小滴に直立するように埋め込んだ。
図1は、試料ホルダー105に配置された熱可塑性ポリマーの小滴104に埋め込まれた炭素繊維103の概略的な画像である。繊維103は、繊維ホルダー102に、接着剤により固定される。繊維ホルダー102は、引っ張り方向101に、小滴104から離れるように引っ張ることが可能である。
【0074】
炭素単繊維を小滴に埋め込むために、
図1に示す繊維の方向に炭素単繊維を浸した(これは、顕微鏡下で確認した)。埋め込んだ後、毎分約20〜30K(K/分)の冷却速度で、単繊維複合材料を約5分間で室温まで冷却した(空気の流れは制御しなかった)。
【0075】
得られた試料の埋め込み長は、約18μmから180μmまで異なる。より長い埋め込み長は、繊維を引き抜く代わりに繊維の破壊を発生させる力をもたらす。
【0076】
試料の調整後、24時間以内には試験しなかった。それぞれの試料の繊維の直径は、較正された光学顕微鏡により透過光モードで測定した。
【0077】
単繊維複合材料は、下記の温度で調整した。
繊維CF−A、CF−B、CF−Cと樹脂Aを340℃で、
繊維CF−A、CF−B、CF−Cと樹脂Bを340℃で、
繊維CF−A、CF−B、CF−Cと樹脂Cを310℃で、
繊維CF−A、CF−B、CF−Cと樹脂Dを340℃で、
繊維CF−A、CF−B、CF−Cと樹脂Eを340℃で。
【0078】
単繊維引抜試験:複合材料の特性は、主として、樹脂と繊維との間の境界における相互作用の関数である。界面剪断応力は、これらの相互作用の強度の示唆を与えるパラメーターである。界面剪断応力を測定するために最も利用される方法の1つは、引抜試験である。引抜試験を実行するために用いられる装置を
図2に示す。
図2は、単繊維引抜試験に用いられる微小引張試験装置200を示す。微小引張試験装置200は、圧電アクチュエーター201、及び剛性フレーム202上に配置された圧電式力変換器203を含む。力変換器203は、1mNと最大値である50Nの間の負荷を有する「Kistler 9207」タイプである。アクチュエーター201は、閉ループ制御で180のマイクロメーターを移動させることができる。双方の要素は剛性フレーム上にマウントされる。試験は、毎秒1マイクロメーターの定速度、23℃の室温で実行した。炭素繊維の樹脂小滴への埋め込み長は、18〜180マイクロメーターの間であった。
【0079】
試料を微小引張試験装置に移動し、炭素繊維の自由端を圧電式力変換器に接続された別の挿入口にスーパーグルーで接着した。試験中、炭素単繊維の引き抜きを、顕微鏡下で観察した。
【0080】
図3は、炭素単繊維を単繊維複合材料から引き抜くのに必要な力を、繊維の変位の関数として示す、微小引張試験データの例を示す。本図は、それぞれの繊維−樹脂系について取得されたデータの例である。具体的な値は、系によって顕著に異なる。それぞれのデータセットから1点のみを使用する。使用する点は力の最大値である。それぞれの繊維−樹脂系について、10回の測定を実行した。
図3のグラフにおいて、これらの10回の測定を複数の線により示す。10回の測定のそれぞれは、力の最大値を含む。これらの10回の測定から、界面剪断応力として、最大値の平均を決定することができる。
図3の具体的なデータは、塩素置換ポリエーテルイミドである樹脂Aと、エポキシで集束された炭素繊維である繊維Cを用いた引抜試験を実行することにより生成された。この繊維−樹脂系は、本開示の表3における実施例1に示される。
図3は、樹脂の小滴から単繊維を引っ張るのに必要とされる力(ニュートン:N)を、変位(mm)の関数として示す。特定の繊維−樹脂系の界面剪断応力を算出するために、力の最大値を用いた。下記に報告するように、
図3に示した特定の繊維−樹脂系C−Aの界面剪断応力の値は、76.4MPaである。
【0081】
単繊維複合材料から炭素単繊維を引き抜くのに必要な力の最大値は、Kelly-Tysonモデルを用いて繊維と樹脂との間の界面剪断応力を算出するために用いられる。
【0082】
全ての試験は、23℃の室温で実行した。剪断応力は、特注の微小引張試験装置(
図1、2を参照)により測定した。圧電アクチュエーターにより変位を生成し、圧電式力変換器により力を記録した。変換器は、最大負荷F
max=50N、力の分解能1mNを有する「Kistler 9207」である。アクチュエーターは、閉ループ制御により180μm移動させることができる。双方の要素は剛性フレーム上にマウントされる。試験中、試料ホルダーはアクチュエーターにマウントされ、繊維は力変換器に接着される。試験は、1μm/sの定速度で実行した。
【0083】
[実施例1]
本実施例の目的は、塩素置換ポリエーテルイミド(樹脂A)のポリマーマトリックス及びエポキシで集束された炭素繊維(CF−C)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、上述した複合材料試料調整方法にしたがって、エポキシで集束された炭素繊維と塩素置換ポリエーテルイミドから生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、エポキシで集束された炭素繊維が76.4MPaの界面剪断応力を有することを示した。
【0084】
[実施例2]
本実施例の目的は、塩素置換ポリエーテルイミド(樹脂A)のポリマーマトリックス及びポリエーテルイミドで集束された炭素繊維(CF−B)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、上述した試料調整方法にしたがって、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維と塩素置換ポリエーテルイミドから生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維が70.1MPaの界面剪断応力を有することを示した。
【0085】
[実施例3(比較)]
本実施例の目的は、塩素置換ポリエーテルイミド(樹脂A)のポリマーマトリックス及び集束されていない炭素繊維(CF−A)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、使用された炭素繊維が集束されていないこと以外は、実施例1の手順にしたがって生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、集束されていない炭素繊維が65.8MPaの界面剪断応力を有することを示した。表3に、実施例1〜3の結果を要約する。
【表3】
【0086】
[実施例4]
本実施例の目的は、PCP−末端ポリエーテルイミド(樹脂B)のポリマーマトリックス及びエポキシで集束された炭素繊維(CF−C)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、上述した複合材料試料調整方法にしたがって、エポキシで集束された炭素繊維とPCP−末端ポリエーテルイミドから生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、エポキシで集束された炭素繊維が70.5MPaの界面剪断応力を有することを示した。
【0087】
[実施例5]
本実施例の目的は、PCP−末端ポリエーテルイミド(樹脂B)のポリマーマトリックス及びポリエーテルイミドで集束された炭素繊維(CF−B)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、上述した試料調整方法にしたがって、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維とPCP−末端ポリエーテルイミドから生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維が61.8MPaの界面剪断応力を有することを示した。
【0088】
[実施例6(比較)]
本実施例の目的は、PCP−末端ポリエーテルイミド(樹脂B)のポリマーマトリックス及び集束されていない炭素繊維(CF−A)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、使用された炭素繊維が集束されていないこと以外は、実施例4の手順にしたがって生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、集束されていない炭素繊維が58.8MPaの界面剪断応力を有することを示した。表4に、実施例4〜6の結果を要約する。
【表4】
【0089】
[実施例7]
本実施例の目的は、脂肪族アミン官能化ポリエーテルイミド(樹脂C)のポリマーマトリックス及びエポキシで集束された炭素繊維(CF−C)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、上述した複合材料試料調整方法にしたがって、エポキシで集束された炭素繊維と脂肪族アミン官能化ポリエーテルイミドから生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、エポキシで集束された炭素繊維が74.2MPaの界面剪断応力を有することを示した。
【0090】
[実施例8]
本実施例の目的は、脂肪族アミン官能化ポリエーテルイミド(樹脂C)のポリマーマトリックス及びポリエーテルイミドで集束された炭素繊維(CF−B)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、上述した試料調整方法にしたがって、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維と脂肪族アミン官能化ポリエーテルイミドから生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維が61.4MPaの界面剪断応力を有することを示した。
【0091】
[実施例9(比較)]
本実施例の目的は、脂肪族アミン官能化ポリエーテルイミド(樹脂C)のポリマーマトリックス及び集束されていない炭素繊維(CF−A)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、使用された炭素繊維が集束されていないこと以外は、実施例7の手順にしたがって生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、集束されていない炭素繊維が57.7MPaの界面剪断応力を有することを示した。表5に、実施例7〜10の結果を要約する。
【表5】
【0092】
[実施例10]
本実施例の目的は、低分子量塩素置換ポリエーテルイミド(樹脂D)のポリマーマトリックス及びポリエーテルイミドで集束された炭素繊維(CF−B)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、上述した試料調整方法にしたがって、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維と低分子量塩素置換ポリエーテルイミドから生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維が58.6MPaの界面剪断応力を有することを示した。
【0093】
[実施例11]
本実施例の目的は、アニリン末端ポリエーテルイミド(樹脂E)のポリマーマトリックス及びエポキシで集束された炭素繊維(CF−C)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、上述した複合材料試料調整方法にしたがって、エポキシで集束された炭素繊維とアニリン末端ポリエーテルイミドから生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、エポキシで集束された炭素繊維が70.0MPaの界面剪断応力を有することを示した。
【0094】
[実施例12]
本実施例の目的は、アニリン末端ポリエーテルイミド(樹脂E)のポリマーマトリックス及びポリエーテルイミドで集束された炭素繊維(CF−B)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、上述した試料調整方法にしたがって、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維とアニリン末端ポリエーテルイミドから生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、ポリエーテルイミドで集束された炭素繊維が68.1MPaの界面剪断応力を有することを示した。
【0095】
[実施例13(比較)]
本実施例の目的は、アニリン末端ポリエーテルイミド(樹脂E)のポリマーマトリックス及び集束されていない炭素繊維(CF−A)を含む複合材料における炭素繊維の界面剪断応力を測定することである。複合材料は、使用された炭素繊維が集束されていないこと以外は、実施例13の手順にしたがって生成した。上述したように、単繊維引抜試験を実施した。結果は、集束されていない炭素繊維が54.6MPaの界面剪断応力を有することを示した。表6に、実施例11〜13の結果を要約する。
【表6】
【0096】
ヒドロキシル基の量の効果も調査した。ヒドロキシル基のレベルを変えたいくつかの樹脂Bのバッチを、上述したCF−Cを用いて試験した。結果を
図4に示す。
図4に示すように、ポリエーテルイミド中のヒドロキシル基の量を0〜600百万分率重量部(ppm)で変化させた場合、ヒドロキシル基の量が増加するにつれて、引張強度が高くなる。
【0097】
ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテルなどの他の樹脂により、いくつかの予備実験を行った。本実験の結果を
図5に示す。ポリマー中のヒドロキシル基の量の増加が、必ずしも引張強度の増加をもたらすわけではないことが分かった。とくに、ポリフェニレンエーテルは、ヒドロキシル基の量と引張強度との間で、同様の関係を示さない。炭素繊維がエポキシで集束された場合、ヒドロキシル基の量が少ないポリフェニレンエーテルは、ヒドロキシル基の量が多いポリフェニレンエーテルよりも高い引張強度を示す。
【0098】
さらに、エポキシ集束剤とポリマーとの間で反応が起こらなかったことを調査し、確認した。
【0099】
実施の形態1:ポリマー材料を含むマトリックスと、ポリエーテルイミドで集束された繊維、エポキシで集束された繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの集束された繊維と、を含み、前記繊維は前記マトリックスに埋め込まれることを特徴とする複合材料。
【0100】
実施の形態2:前記ポリマー材料は、芳香族ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニルスルホン、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルイミド、又はポリエーテルイミドコポリマーを含むことを特徴とする実施の形態1に記載の複合材料。
【0101】
実施の形態3:前記ポリマー材料は、式(4)のポリエーテルイミドを含み、
【化20】
aは1より大きく、式(4)中のV基は、(a)エーテル基により置換された5〜50の炭素原子を有する飽和、不飽和、又は芳香族単環式及び複環式基、(b)エーテル基により置換された1〜30の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和アルキル基、又は(a)及び(b)の組み合わせであり、R基は、(a)6〜20の炭素原子を有する芳香族炭化水素基及びそれらのハロゲン化誘導体、(b)2〜20の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキレン基、(c)3〜20の炭素原子を有するシクロアルキレン基、又は(d)式(5)の2価基であり、
【化21】
Q
1は、−O−、−S−、−C(O)−、−SO
2−、−SO−、C
yH
2y−を含み、yは1〜5の整数であることを特徴とする実施の形態1に記載の複合材料。
【0102】
実施の形態4:前記ポリエーテルイミドは、エンドキャップされることを特徴とする実施の形態3に記載の複合材料。
【0103】
実施の形態5:前記ポリエーテルイミドは、パラ−クミルフェノール、脂肪族アミン、又は芳香族アミンによりエンドキャップされることを特徴とする実施の形態4に記載の複合材料。
【0104】
実施の形態6:前記ポリエーテルイミドは、100ppm以上600ppm以下の量のヒドロキシル基を有することを特徴とする実施の形態3から5のいずれかに記載の複合材料。
【0105】
実施の形態7:集束された繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、及びそれらの組み合わせを含むことを特徴とする実施の形態1から6のいずれかに記載の複合材料。
【0106】
実施の形態8:前記繊維は、前記繊維の重量を基準として、0〜7重量%の百分率の集束剤を有することを特徴とする実施の形態1から7のいずれかに記載の複合材料。
【0107】
実施の形態9:前記繊維は、1〜20μmの直径を有することを特徴とする実施の形態1から8のいずれかに記載の複合材料。
【0108】
実施の形態10:前記繊維は、0.5〜7g/cm
3の密度を有することを特徴とする実施の形態1から9のいずれかに記載の複合材料。
【0109】
実施の形態11:前記ポリエーテルイミドは、200〜600ppmの量のヒドロキシル基を有し、前記集束された繊維は、エポキシで集束された炭素繊維であることを特徴とする実施の形態3に記載の複合材料。
【0110】
実施の形態12:前記繊維は、前記繊維の重量を基準として、0〜7重量%の百分率の集束剤を有することを特徴とする実施の形態11に記載の複合材料。
【0111】
実施の形態13:前記繊維は、1〜20μmの直径を有することを特徴とする実施の形態11又は12に記載の複合材料。
【0112】
実施の形態14:前記繊維は、0.5〜7g/cm
3の密度を有することを特徴とする実施の形態11から13のいずれかに記載の複合材料。
【0113】
実施の形態15:前記ポリエーテルイミドは、パラ−クミルフェノール末端ポリエーテルイミドであり、複合材料は、68〜120MPaの界面剪断応力を有することを特徴とする実施の形態11から14のいずれかに記載の複合材料。
【0114】
特定の好適なバージョンを参照して、本発明をかなり詳細に説明したが、他のバージョンも可能である。したがって、添付した特許請求の範囲の趣旨及び範囲は、本明細書に含まれる好適なバージョンの記載に限定されるべきではない。
【0115】
読者の注意は、本明細書と同時に提出され、本明細書と共に公衆の閲覧のために公開されている全ての書類及び文献に向けられ、このような書類及び文献の全ての内容は、参照により本明細書に援用される。
【0116】
この明細書(添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された全ての特長は、別段の明示がない限り、同一、均等、又は類似の目的に資する代替となる特長により置換されてもよい。したがって、別段の明示がない限り、開示されたそれぞれの特長は、包括的な一連の均等又は類似の特長の単なる一例である。
【0117】
特許請求の範囲において、特定の機能を実行する「手段(means for) 」又は特定の機能を実行する「ステップ(step for)」と明示されない全ての要素は、米国特許法第112条第6段落において規定される「means」又は「step」条項として解釈されるべきではない。とくに、本願の特許請求の範囲における「step of」の使用は、米国特許法第112条第6段落の規定の発現を意図したものではない。
【0118】
本発明は、本発明の好適な実施の形態の詳細な説明及びそれに含まれる実施例を参照することにより、より容易に理解されよう。本明細書において、全ての数値は、明示するか否かにかかわらず、「約」という語により修飾されるものと推定される。「約」という語は、一般に、記載された値に等価である(すなわち、同一の機能又は結果を有する)と当業者の一人が考えるであろう数値の範囲を指す。多くの例において、「約」という語は、最も近い有効数字に丸められた数値を含んでもよい。
【0119】
一般に、本発明は、本明細書に開示された任意の適切な要素を代わりに含んでもよく、それらの要素からなっていてもよく、又は、実質的にそれらの要素からなっていてもよい。本発明は、従来の複合材料において使用されている、又は、本発明の機能及び/又は目的の達成に必要でない任意の要素、物質、成分、補助剤、又は種を含まない、又は実質的に含まないように、追加的又は代替的に調整されてもよい。
【0120】
本明細書において開示される全ての範囲は端点を含み、端点は互いに独立して組み合わせ可能である(例えば、「25重量%まで、又は、より具体的には、5重量%から20重量%まで」の範囲は、「5重量%から25重量%まで」の範囲の間の全ての値と端点を含むなど)。「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などを含む。さらに、本明細書における「第1」、「第2」などの用語は、順序、量、又は重要性を示すものではなく、ある要素を別の要素と区別するために用いられる。本明細書における「a」及び「an」及び「the」という用語は、数量の限定を意味するのではなく、本明細書における別段の明示又は文脈により明確に否定されるのでない限り、単数と複数の双方を包含すると解釈されるべきである。本明細書において使用される「(s)」という接尾辞は、それが修飾する語の単数と複数の双方を含み、それにより、その語の1以上を含む(例えば、「the film(s)」は、1以上のフィルムを含む)ことが意図される。本明細書を通して、「1つの実施の形態」「別の実施の形態」「ある実施の形態」などの言及は、実施の形態に関連して記述された特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特質)が本明細書に記述される少なくとも1つの実施の形態に含まれ、別の実施の形態に存在する又は存在しない場合があることを意味する。さらに、記述された要素は、様々な実施の形態において、任意の好適な態様で組み合わせ可能であることが理解されよう。
【0121】
特定の実施の形態を説明したが、現在では予期しない又は予期できないような代替、修正、変更、改良、及び実質的な均等物が、本出願人又は他の当業者に生じうる。したがって、添付した特許請求の範囲は、出願時のものも、補正されたものも、これらの代替、修正、変更、改良、及び実質的な均等物の全てを包含することが意図される。