特許第6581110号(P6581110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6581110パッチポンプのためのカテーテル挿入機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581110
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】パッチポンプのためのカテーテル挿入機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20190912BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20190912BHJP
   A61M 5/46 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   A61M5/158 500T
   A61M5/142 522
   A61M5/46
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-563988(P2016-563988)
(86)(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公表番号】特表2017-515548(P2017-515548A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】US2015027361
(87)【国際公開番号】WO2015164648
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年2月15日
(31)【優先権主張番号】61/983,969
(32)【優先日】2014年4月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル コール
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−507227(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/011879(WO,A2)
【文献】 特表2004−501721(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0088509(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0099521(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 5/142
A61M 5/20
A61M 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスハウジング、および、前記デバイスハウジングの中に摺動可能に捕捉されているボタンと、
前記ボタンに捕捉されることによって、前記デバイスハウジングの中を摺動可能カテーテルと、
第1の部分と第2の部分を有する前記ボタンを摺動可能に受け入れるための前記デバイスハウジング内のチャネルと、
複数の結合された円筒形状の開口部と、
前記ボタンに解放可能に固定されているイントロデューサニードルサブアセンブリと
前記デバイスハウジングと前記イントロデューサニードルサブアセンブリとの間に配設されているばねと、
を含み、
前記ボタンは、前記イントロデューサニードルサブアセンブリを第1の線形位置から、前記カテーテルを移動するために移動させる前記イントロデューサニードルサブアセンブリの位置である第2の線形位置へ移動させ、前記カテーテルを移動し、前記イントロデューサニードルサブアセンブリを前記ボタンから解放し、
前記第1の部分において、前記イントロデューサニードルサブアセンブリの上部表面に設置された外向きに平行移動するように付勢されている干渉ピースが、前記デバイスハウジングの壁部によって拘束され、前記第2の部分において、前記干渉ピースが前記壁部の拡大した部分に到達して、前記拡大した部分の中へ摺動することによって、前記イントロデューサニードルサブアセンブリが前記ボタンから解放され、
前記ばねは、前記第2の線形位置から、前記第1の線形位置を過ぎて、前記イントロデューサニードルサブアセンブリが前記ボタンから解放された第3の線形位置へ、付勢し、
前記ボタンは、前記複数の結合された円筒形状の開口部の第1の円筒形状の開口部の中に配設されており、
前記ばねは、前記複数の結合された円筒形状の開口部の第2の円筒形状の開口部の中に配設されていることを特徴とするカテーテル挿入デバイス。
【請求項2】
前記イントロデューサニードルサブアセンブリに配設されているボスであって、前記円筒形状の開口部の中に前記ばねと同心状に配設されている、ボス
をさらに含むことを特徴とする請求項に記載のカテーテル挿入デバイス。
【請求項3】
前記デバイスハウジングは、
前記ボタンを摺動可能に受け入れるためのチャネルを含む機構ハウジングであって、前記チャネルは、前記イントロデューサニードルサブアセンブリを前記ボタンに固定するように構成されている第1の部分と、前記イントロデューサニードルサブアセンブリを前記ボタンから解放するように構成されている第2の部分とを有している、機構ハウジング
を含み、
前記第1の部分において、前記イントロデューサニードルサブアセンブリの上部表面に設置された外向きに平行移動するように付勢されている干渉ピースが、前記デバイスハウジングの壁部によって拘束され、前記第2の部分において、前記干渉ピースが拡大した部分に到達することによって、前記イントロデューサニードルサブアセンブリが前記ボタンから解放されることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル挿入デバイス。
【請求項4】
前記イントロデューサニードルサブアセンブリは、
前記ボタンに捕捉されることによって、前記デバイスハウジングの中を摺動可能なボタンセプタムと、
少なくとも1つのサイドポートを含む中空のカニューレであって、前記カニューレの端部は、前記第3の線形位置において前記カテーテルに流体連通しているままである、中空のカニューレと
を含み、
前記ボタンは、サイドポートを含み、前記中空のカニューレは、前記ボタンセプタムの中に配設されており、前記中空のカニューレの前記サイドポートおよび前記ボタンの前記サイドポートは、前記第の線形位置において位置合わせすることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル挿入デバイス。
【請求項5】
前記デバイスハウジングの中空のセプタムが、前記第の線形位置において、前記ボタンの前記サイドポートに位置合わせすることを特徴とする請求項に記載のカテーテル挿入デバイス。
【請求項6】
前記デバイスハウジングに係合するように前記ボタンに配設されている第1の移動止めであって、前記ボタンに加えられる活性化力が要求される閾値を超えるまで、前記第1の線形位置に前記ボタンを固定するように構成されている、第1の移動止め
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル挿入デバイス。
【請求項7】
前記ボタンに係合するように前記デバイスハウジングに配設されている第2の移動止めであって、活性化力が前記ボタンに加えられた後に、前記第2の線形位置に前記ボタンを固定するように構成されている、第2の移動止め
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル挿入デバイス。
【請求項8】
複数の結合された円筒形状の開口部を含むデバイスハウジングと、
前記複数の結合された円筒形状の開口部の第1の円筒形状の開口部の中に摺動可能に配設されているボタンと、
前記複数の結合された円筒形状の開口部の第2の円筒形状の開口部の中に配設されている後退ばねと、
前記ボタンに捕捉されることによって、前記デバイスハウジングの中を摺動可能カテーテルと、
前記ボタンに解放可能に固定されているイントロデューサニードルサブアセンブリと
を含み、
前記ボタンは、前記イントロデューサニードルサブアセンブリを第1の線形位置から、前記カテーテルを移動するために移動させる前記イントロデューサニードルサブアセンブリの位置である第2の線形位置へ移動させ、前記カテーテルを移動し、前記イントロデューサニードルサブアセンブリを前記ボタンから解放し、
前記イントロデューサニードルサブアセンブリが前記ボタンから解放されるとき、前記ばねは、前記第2の線形位置から、前記第1の線形位置を過ぎて、第3の線形位置へ、前記イントロデューサニードルサブアセンブリを付勢することを特徴とするカテーテル挿入デバイス。
【請求項9】
前記ボタンは、前記イントロデューサニードルサブアセンブリを前記第1の線形位置から前記第2の線形位置へ移動させ、前記カテーテルを移動すると、前記イントロデューサニードルサブアセンブリが、同時に前記ボタンから解放されることを特徴とする請求項に記載のカテーテル挿入デバイス。
【請求項10】
前記ボタンは、前記イントロデューサニードルサブアセンブリを前記第1の線形位置から前記第2の線形位置へ移動させ、前記カテーテルを移動し、同時に、前記イントロデューサニードルサブアセンブリを前記ボタンから解放することを特徴とする請求項1またはに記載のカテーテル挿入デバイス。
【請求項11】
前記デバイスハウジングと前記イントロデューサニードルサブアセンブリとの間に配設されている複数のばねをさらに含み、前記ばねは、前記第2の線形位置から、前記第1の線形位置を過ぎて、前記イントロデューサニードルサブアセンブリが前記ボタンから解放された第3の線形位置へ、付勢することを特徴とする請求項1またはに記載のカテーテル挿入デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、インスリン注入デバイスまたは挿入デバイスなどのような、医療用注入システムに関し、単純でロープロファイルで少ない部品点数の手動挿入デバイスには、挿入デバイスハウジングの中の複数のバレル形状のガイドおよび少なくとも1つのガイディングボスを使用して実装された後退ばね、ならびに、中空のセプタム構成が設けられ、それは、単一のバレル構成におけるものよりもはるかに小さい後退ばねが使用されることを可能にし、また、完全なカテーテル挿入のポイントにおいて、セプタム開口部、サイドポート開口部、およびカテーテル開口部の位置合わせを通して、流体経路を提供し、それは、挿入の間に移動可能なカテーテルへのチュービング接続、および、そのようなチュービングがその中を進行することとなる必要な広いスペースに対する必要性を排除する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下で、2014年4月24日に米国特許商標庁に出願された米国特許仮出願第61/983,969号明細書の利益を主張し、その出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0003】
糖尿病は、必要とされるときに糖尿病患者が適正なレベルのインスリン産生を維持することができないことから結果として生じる、高いレベルの血中グルコースによって特徴付けられる疾患のグループである。糖尿病を患う人は、彼らのグルコースレベルの制御を維持するために、いくつかの形態の毎日のインスリン療法を必要とすることとなる。糖尿病は、糖尿病が治療されない場合には、罹患患者にとって危険になり得、糖尿病は、重大な健康上の合併症および時期尚早の死につながる可能性がある。しかし、そのような合併症は、1または複数の治療の選択肢を利用することによって最小限に抑えられ、糖尿病を抑制することを助け、合併症のリスクを低減することが可能である。
【0004】
糖尿病患者のための治療の選択肢は、特殊な食事療法、経口薬療法、および/またはインスリン療法を含む。糖尿病治療の主な目標は、糖尿病患者の血中グルコースレベルまたは血糖レベルを制御することである。しかし、適正な糖尿病管理を維持することは、糖尿病患者の活動とバランスを取らなければならないので、複雑である可能性がある。
【0005】
タイプ1の糖尿病の治療に関して、毎日のインスリン療法の2つの主要な方法が存在している。第1の方法では、糖尿病患者は、必要とされるときにインスリンを自己注射するために、シリンジまたはインスリンペンを使用する。この方法は、それぞれの注射のためにニードルスティックを必要とし、糖尿病患者は、3回から4回の注射を毎日必要とする可能性がある。インスリンを注射するために使用されるシリンジおよびインスリンペンは、使用するのが比較的簡単であり、コスト効率が高い。
【0006】
インスリン療法および糖尿病を管理するための別の効果的な方法は、注入療法または注入ポンプ療法であり、注入療法または注入ポンプ療法では、インスリンポンプが使用される。インスリンポンプは、インスリンの連続的な注入を糖尿病患者にさまざまなレートで提供することが可能であり、必要とされるインスリンを産生する非糖尿病者の適正に動作する膵臓の機能および挙動に、より厳密にマッチするようになっており、また、インスリンポンプは、糖尿病患者の個人のニーズに基づいて、糖尿病患者が彼/彼女の血中グルコースレベルを目標範囲の中に維持することを助けることが可能である。
【0007】
注入ポンプ療法は、典型的に、注入ニードルまたは可撓性のカテーテルの形態の、注入カニューレを必要とし、注入カニューレは、糖尿病患者の皮膚を突き刺し、それを通して、インスリンの注入が起こる。注入ポンプ療法は、インスリンの連続的な注入、正確な投与、および、プログラム可能な送出スケジュールの利点を提供する。
【0008】
注入療法では、インスリン投与は、典型的に、基礎レートおよびボーラス投与で行われる。インスリンが基礎レートで投与されるとき、インスリンは、24時間にわたって連続的に送出され、食事と休息との間で、典型的に夜間に、糖尿病患者の血中グルコースレベルを安定した範囲内に維持するようになっている。また、インスリンポンプは、インスリンの基礎レートを、昼および夜の異なる時間に従って変化させるようにプログラムすることが可能である。それとは対照的に、ボーラス投与は、糖尿病患者が食事を取るときに典型的に行われ、また、一般的に、摂取された炭水化物のバランスを取るように単一の追加的なインスリン注射を提供する。インスリンポンプは、糖尿病患者が取る食事の量またはタイプに従って、糖尿病患者がボーラス投与の容量をプログラムすることを可能にするように構成され得る。加えて、インスリンポンプは、糖尿病患者が、取ることとなる特定の食事に関するボーラス投与量を計算している時に、低い血中グルコースレベルを補償するために、糖尿病患者が補正的なまたは補助的なインスリンのボーラス投与量を注入することを可能にするように構成され得る。
【0009】
インスリンポンプは、有利には、単一の注射においてというよりも、長時間にわたってインスリンを送出し、典型的に、推奨されている血中グルコース範囲の中で、より少ない変動を結果として生じさせる。加えて、インスリンポンプは、糖尿病患者が我慢しなければならないニードルスティックの数を低減することが可能であり、糖尿病管理を改善し、糖尿病患者の生活の質を向上させる。
【0010】
典型的に、糖尿病患者が複数の直接注射(MDIs)を使用するかまたはポンプを使用するかにかかわらず、糖尿病患者は、眠りから覚めるときに空腹時の血中グルコース薬剤(FBGM)を服用し、また、それぞれの食事中または食事後に、血液中のグルコースをテストし、補正投与が必要とされるかどうかを決定する。加えて、糖尿病患者は、たとえば、寝る前に軽食を取った後など、寝る前に血液中のグルコースをテストし、補正投与が必要とされるかどうかを決定することが可能である。
【0011】
注入療法を促進させるために、一般的に、2つのタイプのインスリンポンプ、すなわち、従来型ポンプおよびパッチポンプが存在している。従来型ポンプは、ポンプの中のリザーバからユーザの皮膚の中へインスリンを搬送する、典型的に、注入セット、チュービングセット、またはポンプセットと称される、使い捨ての構成部品の使用を必要とする。注入セットは、ポンプコネクタ、長いチュービング、および、ハブまたはベースから構成され、中空の金属注入ニードルまたは可撓性のプラスチックカテーテルの形態のカニューレが、ハブまたはベースから延在している。ベースは、典型的に、接着剤を有しており、接着剤は、使用の間に、皮膚表面の上にベースを保持する。カニューレは、手動で、または、手動挿入デバイスもしくは自動挿入デバイスの助けを借りて、皮膚の上に挿入され得る。挿入デバイスは、ユーザによって必要とされる別個のユニットであることが可能である。
【0012】
別のタイプのインスリンポンプは、パッチポンプである。従来型の注入ポンプおよび注入セットの組み合わせとは異なり、パッチポンプは、流体リザーバ、ポンピング機構、および、カニューレを自動的に挿入するための機構を含む、流体構成部品のほとんどまたはすべてを、単一のハウジングの中で組み合わせた一体型のデバイスであり、単一のハウジングは、患者の皮膚の上の注入部位に接着して取り付けられ、また、パッチポンプは、別個の注入セットまたはチュービングセットの使用を必要としない。インスリンを含むパッチポンプは、皮膚に付着し、一体型の皮下カニューレを介して長期間にわたってインスリンを送出する。いくつかのパッチポンプは、(ブランド名OmniPod(登録商標)でInsulet Corporationによって販売されている1つのデバイスのように)別個のコントローラーデバイスと無線で通信することが可能であるが、一方、他のパッチポンプは、完全に自己完結型である。インスリンリザーバが空になったときに、または、その他に、カニューレもしくは注入部位の中の制限などのような、面倒な事態が起こり得るときに、そのようなデバイスは、たとえば3日毎などに頻繁に交換される。
【0013】
パッチポンプは、糖尿病患者によって着用される自己完結型ユニットとなるように設計されており、自己完結型ユニットは、ユーザの活動を妨げないように可能な限り小さいことが好ましい。したがって、ユーザに対する不快感を最小限に抑えるために、パッチポンプの全体的な厚さを最小化することが好ましいこととなる。しかし、パッチポンプの厚さを最小化するために、パッチポンプの構成部品は、可能な限り低減されるべきである。1つのそのような部品は、カニューレをユーザの皮膚の中へ自動的に挿入するための挿入機構である。
【0014】
挿入機構の高さを最小化するために、いくつかの従来型の挿入機構は、皮膚の表面から鋭角で、たとえば30〜45度で、カニューレを挿入するように構成されている。しかし、皮膚の表面に対して垂直に、または、皮膚の表面に対して垂直近くで、カニューレを挿入することが好ましい可能性がある。その理由は、これが、カニューレ挿入に必要な長さを最小にすることとなるからである。換言すれば、ユーザの皮膚の中へ挿入されているカニューレの長さを最小にすることで、ユーザは、より大きい安心感を得ることができ、また、カニューレの時期尚早のよじれなどのような面倒な事態を経験することをより少なくすることができる。しかし、皮膚の表面に対して垂直にカニューレを挿入するように挿入機構を構成することに伴う1つの問題は、これが、挿入機構の全体的な高さ、ひいては、パッチポンプ自体の全体的な高さを増加させ得ることである。
【0015】
したがって、パッチポンプなどのような、挿入機構が組み込まれるデバイスの全体的な高さを低減するために、その高さを最小化または低減しながら、ユーザの皮膚の表面の中へ垂直方向にまたは垂直方向近くにカニューレをコスト効率が高いように挿入することができる、たとえばパッチポンプの中など、限られたスペース環境の中で使用するための改善された挿入機構に対する必要性が存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、上記の問題および他の問題に実質的に対処することであり、挿入デバイスの構築および使用に必要とされる構成部品の数を低減しながら、留置カテーテルまたは軟質カテーテル挿入を促進させ、また、イントロデューサニードルを後退させる、進歩して改善された新規の挿入デバイスの構成部品およびエレメントを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、少なくとも自動的なイントロデューサニードル後退を伴う手動挿入デバイスを提供することであり、例示的な実施形態の部品点数が低下するようになっており、それは、部品製造コストを低く維持し、デバイスの組み立てを簡易化する役割を果たす。
【0018】
本発明の別の目的は、後退ばね構成を使用した少なくとも自動的なイントロデューサニードル後退を伴う手動挿入デバイスを提供することであり、後退ばね構成は、挿入デバイスハウジングの中の複数のバレル形状のガイドおよび少なくとも1つのガイディングボスを使用して実装され、それは、はるかに小さい後退ばねが使用されることを可能にし、デバイスが、より小さく、よりコンパクトになるようになっている。
【0019】
本発明の別の目的は、セプタム開口部、サイドポート開口部、およびカテーテル開口部の位置合わせを使用した、少なくとも自動的なイントロデューサニードル後退を伴う手動挿入デバイスを提供することであり、好ましくは、完全なカテーテル挿入のポイントにおいて、流体経路を提供し、それは、挿入の間に移動可能なカテーテルへのチュービング接続、および、そのようなチュービングがその中を進行することとなる必要な広いスペースに対する必要性を排除する。
【0020】
本発明の別の目的は、少なくとも自動的なイントロデューサニードル後退を伴い、ニードル遮蔽を提供し、カテーテルの挿入を維持するためにロックする挿入ボタンを備える、手動挿入デバイスを提供することである。
【0021】
これらの目的および他の目的は、挿入デバイスハウジングの中の複数のバレル形状のガイドおよび少なくとも1つのガイディングボスを使用して実装される後退ばねおよび中空のセプタム構成を備える挿入デバイスを提供することによって実質的に実現され、挿入デバイスは、完全なカテーテル挿入のポイントにおいてだけ、セプタム開口部、サイドポート開口部、およびカテーテル開口部の位置合わせを通して、流体経路を提供する。挿入デバイスのボタンは、第1のバレルのイントロデューサニードルおよびカテーテルを皮膚表面の中へ手動で挿入するために使用され、同時に、隣接する第2のバレルの中に配設されている後退ばねに荷重を掛けるために使用される。イントロデューサニードルおよびカテーテルが完全に挿入されると、イントロデューサニードルハブは解放され、後退ばねによって自動的に後退され、ユーザの身体の中にカテーテルを残す。このポイントにおいて、ボタンおよびイントロデューサニードルの中に設けられている複数のセプタムおよびサイドポート開口部が位置合わせされ、それによって、リザーバまたはポンプとカテーテルとの間に、途切れない流体経路を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の例示的な実施形態のさまざまな目的、利点、および新規の特徴は、添付の図面とともに読むと、以下の詳細な説明からより容易に理解されることとなる。
図1】本発明の実施形態による、活性化前の状態の例示的な挿入デバイスの図である。
図2】本発明の実施形態による、活性化後の状態の図1の挿入デバイスの図である。
図3】本発明の実施形態による、図1の挿入デバイスの分解図である。
図4】本発明の実施形態による、活性化前の状態の図1の挿入デバイスの拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態による、活性化前の状態の図1の挿入デバイスの別の拡大断面図である。
図6】本発明の実施形態による、活性化前の状態の挿入ボタンを保持する移動止めを図示する、図1の挿入デバイスの別の拡大断面図である。
図7】本発明の実施形態による、図1の挿入デバイスの別の拡大断面図であり、複数の干渉ピースが、イントロデューサニードルサブアセンブリ、挿入ボタン、および、挿入ボタンバレルの壁部の間に配設されており、それによって、活性化前の状態において、イントロデューサニードルサブアセンブリを挿入ボタンに固定することを図示する図である。
図8】本発明の実施形態による、図1の挿入デバイスの別の拡大断面図であり、複数の干渉ピースが、活性化の間に、挿入ボタンバレルの拡張された部分に到達することを図示する図である。
図9】本発明の実施形態による、図1の挿入デバイスの挿入ボタンの拡大図であり、複数の干渉ピースがその中に摺動可能に配設される傾斜したスロットと、挿入ボタンを保持する移動止めと、サイドポートと、その中のボタンセプタムとを図示する図である。
図10】本発明の実施形態による、図1の挿入デバイスの別の拡大断面図であり、複数の干渉ピースが、活性化の間に、挿入ボタンバレルの拡張された部分の中へ摺動可能な変位を始めることを図示する図である。
図11】本発明の実施形態による、図1の挿入デバイスの別の拡大断面図であり、イントロデューサニードルサブアセンブリによる後退ばねバレルの中の後退ばねの圧縮を図示する図である。
図12】本発明の実施形態による、図1の挿入デバイスの別の拡大断面図であり、複数の干渉ピースが、活性化後の状態において、挿入ボタンバレルの拡張された部分の中へ摺動可能に変位されており、それによって、イントロデューサニードルサブアセンブリを挿入ボタンから解放し、また、複数の干渉ピースが、後退ばねバレルの後退ばねによって挿入ボタンの中心開口部の中で後退されていることを図示する図である。
図13】本発明の実施形態による、図1の挿入デバイスの別の拡大断面図であり、イントロデューサニードルサブアセンブリが挿入ボタンの中心開口部の中に後退されていること、ならびに、活性化後の状態のときに、完全なカテーテル挿入のポイントにおける、セプタム開口部、サイドポート開口部、およびカテーテル開口部の位置合わせを図示する図である。
図14】本発明の実施形態による、図1の挿入デバイスの別の拡大断面図であり、活性化後の状態のときに、完全なカテーテル挿入のポイントにおける、セプタム開口部、サイドポート開口部、およびカテーテル開口部の位置合わせを図示する図である。
図15】本発明の実施形態による、図1の挿入デバイスの別の拡大断面図であり、活性化後の状態の挿入ボタンを保持する移動止めを図示する図である。
図16】ロープロファイルのカニューレ挿入デバイスを組み込むパッチポンプの斜視図である。
図17図16のパッチポンプのさまざまな構成部品の分解図である。
図18】カバーなしで図示されている、可撓性のリザーバを有するパッチポンプに関する代替的な設計の斜視図である。
図19図18のパッチポンプのパッチポンプ流体アーキテクチャおよび計量サブシステムダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面の全体を通して、同様の参照番号は、同様の部品、構成部品、および構造を参照することが理解されることとなる。
【0024】
下記に説明されている本発明の例示的な実施形態は、皮膚表面の中へ最大6mmまでカテーテルを挿入するように構成された1または複数の挿入デバイスエレメントを提供する新規の手段を提供するが、実施形態は、それに限定されない。挿入デバイスは、カテーテルおよびイントロデューサニードルの手動挿入のための挿入ボタンと、イントロデューサニードルの自動的な後退のための後退ばねと、チューブレスの流体経路確立のための中空のセプタム、サイドポート付きのイントロデューサニードル、および、サイドポート付きの挿入ボタン本体部とを提供し、それは、挿入デバイスハウジングの中の複数のバレル形状のガイドおよび少なくとも1つのガイディングボスを使用して実装され、かつ、チューブレスの流体経路を確立するために、完全なカテーテル挿入のポイントにおいてのみ位置合わせされるセプタム開口部、サイドポート挿入ボタン、およびイントロデューサニードル開口部を使用して実装される。
【0025】
挿入デバイスのボタンは、イントロデューサニードルおよびカテーテルを、挿入ボタンバレルを通して皮膚表面の中へ手動で挿入するために使用され、また、好ましくは、同時に、隣接する後退ばねバレルの中に配設されている後退ばねに荷重を掛けるために使用される。イントロデューサニードルおよびカテーテルが完全に挿入されると、イントロデューサニードルハブは解放され、後退ばねによって自動的に後退され、ユーザの身体の中にカテーテルを残す。イントロデューサニードルのサイドポート付きの遠位端部は、カテーテルの中に残され、また、完全なカテーテル挿入およびイントロデューサニードル後退のポイントにおいて、挿入ボタンの中に設けられたセプタムおよびサイドポート開口部のうちの1または複数に位置合わせし、それによって、リザーバまたはポンプとユーザの身体の中のカテーテルとの間に、途切れない流体経路を生成する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態による、活性化前の状態の例示的な挿入デバイスの図であり、図2は、活性化後の状態の図1の挿入デバイスの図である。図3は、図1の挿入デバイスの分解図である。
【0027】
挿入デバイスは、上部ハウジング100およびベース102を含む。上部ハウジング100は、上部表面を通して開口部104を有するように示されており、ユーザアクセス可能でユーザ作動可能な手動挿入ボタン200が、開口部104から摺動可能に延在している。以下の実施形態では、上部ハウジング100、ボタン200、およびベース102は、ABSまたはPETGなどのような、プラスチック材料から製造され得るが、実施形態は、それに限定されない。
【0028】
挿入デバイスの挿入ボタン200は、ベース102の上に提供される機構ハウジング106の中に摺動可能に含まれる。機構ハウジング106は、好ましくは、2つの結合されたシリンダー、ガイド、またはバレルから構成されており、図4に図示されているように、挿入ボタン200を摺動可能に受け入れてガイドする挿入ボタンバレル、または第1のバレル108と、後退ばね202を拘束する隣接する後退ばねバレル、または第2のバレル110とを含む。ばね202は、CSCステンレス70065などのようなステンレス鋼などの金属を使用して製造され得るが、実施形態は、それに限定されず、プラスチックまたは任意の適切な材料を使用して製造され得る。
【0029】
第1のバレル108および隣接する第2のバレル110は、ベース102と上部ハウジング100との間に延在しており、また、それぞれの間にアクセスを提供するように結合されている。下記により詳細に説明されているように、挿入ボタン200が、第1のバレル108の中に摺動可能に捕捉されており、ばね102が、隣接する第2のバレル110の中に圧縮可能に捕捉されており、イントロデューサニードルハブ206が、挿入ボタン係合のための第1のバレル108と、後退ばね係合のための第2のバレル110との両方に、アクセスするように延在している。
【0030】
挿入デバイスの挿入ボタン200が使用されて、イントロデューサニードル204およびカテーテル220を、第1のバレル108を通して皮膚表面の中へ手動で挿入し、同時に、隣接する第2のバレル110の中に配設されている後退ばね202に荷重を掛ける。そうするために、挿入デバイスは、挿入ボタン200に解放可能に固定されているイントロデューサニードルサブアセンブリを含む。イントロデューサニードルサブアセンブリは、カニューレまたはイントロデューサニードル204を使用して形成されており、カニューレまたはイントロデューサニードル204は、イントロデューサニードルハブ206に圧入され、接着され、または、別の方法で固定されている。イントロデューサニードル204は、304ステンレス鋼を使用して製造されている中空の27Gニードルまたはカニューレであることが可能であり、また、イントロデューサニードルハブ206は、PETGを使用して製造され得るが、実施形態は、それに限定されない。
【0031】
イントロデューサニードルハブ206は、ニードル端部を含み、ニードル端部は、イントロデューサニードル204をイントロデューサニードルハブ206に固定させており、イントロデューサニードルハブ206は、挿入ボタン200の中の溝部またはスロット208の中に摺動可能に配設されており、イントロデューサニードルハブ206および挿入ボタン200は、第1のバレル108の中に一緒に摺動可能に配設されている。反対側端部において、イントロデューサニードルハブ206は、ばね端部を含み、ばね端部は、第2のバレル内径に摺動可能にフィットするように構成されている丸みを帯びたプロファイルを有しており、また、ボス210を有しており、ボス210は、ばね端部から第2のバレル110の中へ延在している。ボス210は、第2のバレル110の中に後退ばね202を拘束するように構成されており、また、圧縮の間にばね202の中間を通って平行移動し、ばね202が曲がることを防止する。
【0032】
挿入デバイスの挿入ボタン200が、イントロデューサニードルおよびカテーテルを第1のバレル108を通して皮膚表面の中へ手動で挿入し、同時に、隣接する第2のバレル110の中に配設されている後退ばね202に荷重を掛けることを可能にするために、イントロデューサニードルハブ206は、挿入ボタン200によって解放可能に保持され、挿入ボタン200に対して摺動可能に移動することを防止されている。図7図8図10、および図12に示されているように、干渉ピース212が、イントロデューサニードルハブ206の上部表面の上に設置されており、イントロデューサニードルハブ206およびピース212が、挿入ボタン200のスロット214の中に設置されている。次いで、挿入ボタン200およびイントロデューサニードルハブ206は、機構ハウジング106の第1のバレル108の中に設置される。同時に、イントロデューサニードルハブ206の反対側端部は、後退ばね202の上で、機構ハウジング106の第2のバレル110の中に設置される。図7は、イントロデューサニードルハブ206、挿入ボタン200、および、第1のバレル108の壁部の間に配設されており、それによって、活性化前の状態でイントロデューサニードルサブアセンブリを挿入ボタンに固定している、干渉ピース212を図示する拡大断面図である。図8は、活性化の間に第1のバレル108の拡張された部分112に到達する干渉ピース212を図示しており、図10は、活性化の間に第1のバレル108の拡張された部分112の中への摺動可能な変位を始めている干渉ピース212を図示している。図12は、活性化後の状態において、第1のバレル108の拡張された部分112の中へ摺動可能に変位され、それによって、イントロデューサニードルハブ206を挿入ボタン200から解放し、また、第2のバレル110の後退ばね202によって挿入ボタン200の中心開口部208の中に後退されている、干渉ピース212を図示している。
【0033】
図7および図9により詳細に示されているように、ボタン200のスロット214は、傾斜した上側表面226を有しており、傾斜した上側表面226は、干渉ピース212の傾斜した上側表面と対になっており、また、完全な挿入位置にあるときに、第1のバレル108の拡張された部分112の傾斜した上側表面に位置合わせする。図9は、図1の挿入デバイスの挿入ボタンの拡大図であり、本発明の実施形態に従って、複数の干渉ピースがその中に摺動可能に配設されている傾斜したスロット、挿入ボタンを保持する移動止め、サイドポート、および、その中のボタンセプタムを図示している。
【0034】
挿入ボタン200が第1のバレル108の中に摺動可能に配設されているときに、スロット214の中の干渉ピース212は、傾斜部226に沿って外向きの位置に向かって摺動することを防止されており、圧縮されている後退ばね202によってそのように摺動することを強制されるときでも防止されている。干渉ピース212は、外向きに平行移動するように付勢されているが、挿入の間に第1のバレル108の壁部によって拘束されている。挿入ボタン200、干渉ピース212、およびイントロデューサニードルハブ206が、第1のバレル108の中を下向きに進行するときに、完全な挿入において、干渉ピース212は、第1のバレル108の拡大した部分112に到達し、第1のバレル108の拡大した部分112の中へ摺動し、それによって、連結が切り離される。連結が切り離されると、ばねは、イントロデューサニードルを後退させる。
【0035】
例示的な実施形態では、挿入ボタン200は、内径またはチャネル208を含み、内径またはチャネル208の中に、イントロデューサニードルハブ206が摺動可能に配設されている。イントロデューサニードルハブ206は、初期には、挿入ボタン200の内側チャネル208の中を摺動することを干渉ピース212によって防止されており、干渉ピース212は、挿入ボタン200の下向きの移動の間に、第1のバレル108の壁部によって拘束されており、イントロデューサニードル204およびカテーテル220の挿入のために、カテーテル220およびイントロデューサニードル204およびハブ206を下向きに同時に移動させるように、挿入ボタン200が使用され得るようになっている。
【0036】
干渉ピース212は、第1のバレル108の内径の中を進行し、傾斜部を使用して挿入ボタン200に係合されており、後退ばね202の圧縮(図11に図示されている)が、干渉ピース212が第1のバレル108の壁部に対して外向きに平行移動するように付勢されることを、結果として生じさせるようになっている。カテーテルの完全な挿入に対応するポイントにおいて、第1のバレル108の壁部が拡張しており、干渉ピース212を付勢することが、挿入ボタン200の傾斜部および拡張されたチャネル112の傾斜部に沿って、拡張されたチャネル112の中へ干渉ピース212を摺動可能に移動させることを可能にし、イントロデューサニードルハブ206を解放する。解放されると、圧縮された後退ばね202は、イントロデューサニードルハブ206を後退させ、インサータボタン200およびカテーテル220を適切な場所に残す。本発明の例示的な実施形態では、適切な場所にあるインサータボタン200およびカテーテル220は、図15に関して下記により詳細に説明されているように適切な場所にロックされ得る。
【0037】
組み立ての間に、ばね202は、イントロデューサニードルハブ206のボス210と、機構ハウジング106の第2のバレル110の底部との間に捕捉される。そうする際に、ばね202は、イントロデューサニードルハブ206と機構ハウジング106のバレル110の底部との間に、拡張力を働かせる。丸みを帯びたボス210は、動作の間にばね202を中心に合わせて位置合わせさせるための直径および長さを提供されている。ばね202は、挿入デバイスの組み立ての間に部分的に予荷重を掛けられ、イントロデューサニードルの完全な後退を確実にすることが可能である。たとえば、後退ばね202は、使用の前に最小荷重を掛けられ、イントロデューサニードル202がデバイスの中へ完全に後退することを確実にすることが可能である。ばね202は、挿入の間にさらに荷重を掛ける。最小荷重を掛けられたばね、および、完全には荷重を掛けられていないばねを、挿入デバイスの中に設けることは、荷重を掛けられたばねの殺菌および保管に関連付けられるリスクを低減し、設計を簡易化する。
【0038】
下記に説明されている例示的な実施形態では、サイドポート付きのイントロデューサニードル204の遠位端部は、カテーテル220の中に残され、完全なカテーテル挿入およびイントロデューサニードル後退のポイントにおいて、挿入ボタンの中に設けられているセプタムおよびサイドポート開口部のうちの1または複数に位置合わせし、それによって、リザーバまたはポンプとユーザの身体の中のカテーテルとの間に途切れない流体経路を生成させる。
【0039】
図3および図9に示されているように、挿入ボタン200は、サイドポート216をさらに含み、サイドポート216は、その中にサイドポート挿入ボタンセプタム218を有しており、また、挿入ボタン200は、そこから延在するカテーテル220を含み、カテーテル220は、たとえば、FEPを使用して製造されている24Gプラスチックカテーテルなどであるが、実施形態は、それに限定されない。活性化後の状態において、完全なカテーテル220の挿入およびイントロデューサニードル204の後退のときに流体経路を完成させるために、ベース102は、チュービングコネクタ部材222および中空のセプタム224をさらに含む。
【0040】
図4および図5に示されているように、カテーテル220は、挿入の前に、いずれの流体経路にも接続されていない。図4および図5は、本発明の実施形態による、活性化前の状態の図1の挿入デバイスの拡大断面図である。カテーテル220およびボタン200が完全な挿入位置へと移動し、イントロデューサニードルハブ206およびイントロデューサニードル204が後退されると、挿入ボタン200のサイドポート216によって生成されるセプタムウェル(septum well)、サイドポート挿入ボタンセプタム218、イントロデューサニードル204の中のサイドポート開口部228、およびカテーテル220が、図13および図14に示されているように、中空のセプタム224を介して、ポンプまたはリザーバ(図示せず)へのシールされた途切れない流体経路を形成する。図13および図14は、図1の挿入デバイスの拡大断面図であり、本発明の実施形態に従って、活性化後の状態のときに、完全なカテーテル挿入のポイントにおいて、挿入ボタンの中心開口部の中に後退されているイントロデューサニードルサブアセンブリ、ならびに、セプタム開口部、サイドポート開口部、およびカテーテル開口部の位置合わせを図示している。
【0041】
具体的には、挿入ボタン200は、半径方向の孔部またはサイドポート216を含み、孔部またはサイドポート216は、活性化後の状態において、ベース102の可撓性の中空のセプタム224に位置合わせする。挿入ボタン200の中で、位置合わせは、サイドポート挿入ボタンセプタム218、イントロデューサニードル204の中のサイドポート開口部228、およびカテーテル220の位置合わせされた開口部を含む。位置合わせされた開口部は、ポンプまたはリザーバへのシールされた途切れない流体経路を形成する。中空のセプタム224は、チュービングまたはチューブセット(図示せず)を介してリザーバまたはポンプに接続されている。イントロデューサニードル204は、サイドポート開口部228を含み、イントロデューサニードル228の近位端部は、閉じた流体経路を生成するために、閉塞され得る(図示せず)。したがって、プラスチックカテーテルを医療用デバイスに取り付けるために一般に使用される金属ウェッジの代わりに、本発明の実施形態は、釘頭状のイントロデューサニードルまたはカテーテル形状を使用することが可能である。これは、機構の全体的な高さを小さく維持することを助ける、より小さい取り付け形状を可能にする。イントロデューサニードルセプタムは、セプタムウェルをシールするために設けられ得る。
【0042】
挿入ボタン200は、挿入ボタン200の上に1または複数のボタン保持移動止め230をさらに含むことが可能であり、1または複数のボタン保持移動止め230は、図6に示されているように、事前活性化位置においてボタンを保持する。図6は、図1の挿入デバイスの拡大断面図であり、本発明の実施形態による、事前活性化状態の挿入ボタンを保持する移動止めを図示している。また、安全タブ(図示せず)は、挿入ボタン200の中のスロット208の中に位置決めされ得、安全タブは、デバイスの出荷の間、および、デバイスがパッケージングから取り出された後のハンドリングの間の偶発的な活性化を防止することとなる。安全タブは、挿入の直前に取り外されることとなる。移動止め230は、機構ハウジング106の上部において、ステップ移動止め214の中に配設され得る。さらに、スナップ232(図15に図示されている)が、ハウジング上部および挿入ボタン200に設けられ、活性化後の位置に挿入ボタン200をロックすることが可能であり、スナップ232は、皮膚の中の約6mmの深さにカテーテルを保持する。
【0043】
動作の間に、ユーザは、挿入ボタン200を上部ハウジング100の中へ押す。移動止め230の破壊または変形力の閾値を超えると、移動止め230が屈服し、ボタン200が、突然に下向きに移動し、イントロデューサニードル204およびカテーテル220を挿入し、後退ばね202に荷重を掛ける。移動止め230の最小破壊力は、カテーテルを完全に挿入するためにユーザが十分に強く押すことを確実にする。部分的な活性化は、カテーテルが完全には挿入されないこと、イントロデューサニードルが後退しないこと、および、カテーテルが活性化後の位置にロックされないことを、結果として生じさせることとなる。
【0044】
移動止め230からのボタン200の解放は、所望の量の活性化力がボタン200に加えられると起こるように構成されている。ボタン200は、移動止め230とステップ移動止め114との間の係合によって、上方の拡張した位置に解放可能に保持されているので、ユーザによってボタン200に加えられる力は、解放の前にいくらかの期間にわたって徐々に増加する。突然の解放が起こると、ボタン200に掛かる力が所望の値に到達し、したがって、ボタン200は、突然に自由に進行することに起因して、下向きに加速され、解放時に、所望の力がボタンに加えられ、その後に維持される。そのような解放は、所望の量の下向きの力、速度、滑らかさ、および角度が、ユーザによって加えられることを確実にする。そのような活性化は、加えられるユーザの力、速度、滑らかさ、および、その角度の変動を実質的に排除し、挿入失敗、および/または、ユーザに対する不快感を低減する。
【0045】
挿入デバイスを動作させるために、ユーザは、デバイスのベース102の上の接着剤を使用して、挿入デバイスを皮膚表面に貼り付ける。次いで、ユーザは、移動止め230を破壊しまたは変形させるまで、突出している挿入ボタン200を手動で押す。ここで突然に進行することが自由になった挿入ボタン200が、上部ハウジング100の中へ急速に押され、プラスチックカテーテル220およびイントロデューサニードル204をユーザ皮膚表面の中へ押して挿入する役割を果たし、後退ばね202に荷重を掛ける。ボタン200が押されているときには、イントロデューサニードルハブ206は、干渉ピース212によって拘束されている。しかし、活性化後の状態で、干渉ピース212が第1のバレル108の拡大された直径部112の中へ到達するときに、干渉ピース212は、拡大された直径部112の中へ移動し、それによって、後退ばね202がイントロデューサニードルハブ206およびイントロデューサニードル204を後退させることを可能にする。活性化後の状態では、挿入ボタン200の半径方向の孔部またはサイドポート216は、ベース102の可撓性の中空のセプタム224に位置合わせされる。挿入ボタン200の中で、位置合わせは、サイドポート挿入ボタンセプタム218、イントロデューサニードル204の中のサイドポート開口部228、およびカテーテル220の位置合わせされた開口部を含む。位置合わせされた開口部は、ポンプまたはリザーバへのシールされた途切れない流体経路を形成する。次いで、ポンプまたはリザーバは、イントロデューサニードルを通して、カテーテルの中へ、および、患者の皮下層の中へ、薬剤を注入する。
【0046】
したがって、本発明の例示的な実施形態は、中空のセプタムを使用し、プラスチックカテーテルウェルを流体経路に接続し、それは、ウェルへのチュービング接続、および、チュービングがその中を進行することとなる必要な広いスペースに対する必要性を排除する。活性化後の状態において、カテーテルが完全な挿入位置へと移動され、イントロデューサニードルが後退されているときに、セプタムウェルおよび挿入ニードルサイドポートは、中空のセプタムの流体経路に位置合わせさせ、それによって、注入ポンプコネクタまたはリザーバとカテーテルとの間に、途切れないシールされた流体経路を生成する。本発明の実施形態は、中空のセプタムを使用し、プラスチックカテーテルウェルを流体経路に接続し、それは、ウェルへのチュービング接続、および、チュービングがその中を進行することとなる必要な広いスペースに対する必要性を排除する。
【0047】
しかし、本発明のさらなる他の例示的な実施形態では、流体経路を完成させるための、挿入ボタンおよび中空のセプタムの中の半径方向の孔部は省略され得、イントロデューサニードルの近位端部が、可撓性のチュービングに取り付けられ得、可撓性のチュービングが、リザーバに接続されることとなる。
【0048】
機構のコンパクトさ、および、カテーテルウェッジの排除は、プラスチックカテーテルが、好ましくは皮膚に対して垂直に挿入されることを可能にする。これは、Omnipod(商標)システムまたはEros(商標)システムによって提供されるものなどのような、同じ深さまで突き通す角度付きの挿入よりも、生成される創傷が小さくなり、それは、より小さい瘢痕組織しか生成されないという利点を有している。
【0049】
追加的に、2つのボス210を有する単一のイントロデューサニードルハブ106によって作動させる1または複数のばね202を収容する、1または複数の追加的なバレル110を含むように、上記の実施形態を変更することが考えられる(図示せず)。そのような構成の利点は、少なくとも2つのばね202から生じるトルクが実質的に互いに打ち消し合い、デバイスが引っ掛かる可能性をなくすことである。
【0050】
上記の実施形態では、パッチポンプには、説明されている特徴のうちの1または複数が設けられ得る。図16は、本発明の例示的な実施形態による、パッチポンプ1の例示的な実施形態の斜視図である。図17は、固体カバー2とともに図示されている、図16のパッチポンプのさまざまな構成部品の分解図である。パッチポンプ1のさまざまな構成部品は、インスリンを貯蔵するためのリザーバ4と、リザーバ4からインスリンをポンプ送りするためのポンプ3と、1または複数のバッテリの形態の電源5と、ユーザの皮膚の中へカテーテルとともにインサータニードルを挿入するための挿入機構7と、スマートフォンを含む、リモートコントローラおよびコンピュータなどのような外側のデバイスとの随意的な通信能力を備える回路基板の形態の制御エレクトロニクス8と、ボーラス投与を含む、インスリン投与を作動させるためのカバー2の上の投与ボタン6と、上記のさまざまな構成部品が締結具91を介して取り付けられ得るベース9とを含むことが可能である。また、パッチポンプ1は、リザーバ4から注入部位へポンプ送りされるインスリンを移送するさまざまな流体コネクタラインを含む。
【0051】
上述のように、インサータ機構は、さまざまな構成であることが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、インサータ機構は、軟質カテーテルを皮膚の中へ挿入する。これらの実施形態では、典型的に、軟質カテーテルは、剛性の高い挿入ニードルの上に支持されている。挿入ニードルは、軟質カテーテルとともに皮膚の中へ挿入され、次いで、皮膚から後退され、皮膚の中に軟質カテーテルを残す。他の実施形態では、軟質カテーテルは設けられず、挿入ニードルが、皮膚の中に残ったままであり、インスリン流路の一部分を形成し、注入が終了するまでインスリンを送出する。挿入ニードルは、典型的に中空であり、また、挿入ニードルがインスリン流路の一部を形成する場合には、中空であることが必要とされる。しかし、軟質カテーテルを支持し、次いで後退する挿入ニードルは、中実であっても、中空であってもよい。挿入ニードルが、軟質カテーテルを留置し、後退するが、インスリン流路の一部のままである場合には、挿入ニードルは中空であるべきである。しかし、挿入ニードルが、軟質カテーテルを留置し、次いで後退するが、インスリン流路の一部を形成しない場合には、挿入ニードルは、中実であっても、中空であってもよい。いずれのケースでも、挿入ニードルは、確実に皮膚を突き通すために十分に剛性が高いことが好ましいが、そうでなければ、安心感をユーザに提供するために十分に可撓性にしてもよい。
【0052】
図18は、可撓性のリザーバ4Aを有するパッチポンプ1Aのための代替的な設計の斜視図であり、カバーなしで図示されている。そのような配置は、パッチポンプ1Aの外部寸法をさらに低減することが可能であり、可撓性のリザーバ4Aが、パッチポンプ1Aの中の空所を占有している。パッチポンプ1Aは、従来のカニューレ挿入デバイス7Aを備えて図示されており、従来のカニューレ挿入デバイス7Aは、ユーザの皮膚の表面において、典型的に、90度未満の鋭角でカニューレを挿入する。パッチポンプ1Aは、バッテリの形態の電源5Aと、インスリンの容量を監視し、低い容量を検出する能力を含む、計量サブシステム41と、デバイスの構成部品を制御するための制御エレクトロニクス8Aと、リザーバ4Aを充填するために補充シリンジ45を受け入れるためのリザーバ充填ポート43とをさらに含む。
【0053】
図19は、図18のパッチポンプ1Aのパッチポンプ流体アーキテクチャおよび計量サブシステムダイアグラムである。パッチポンプ1Aのための電力貯蔵サブシステムは、バッテリ5Aを含む。パッチポンプ1Aの制御エレクトロニクス8Aは、マイクロコントローラ81、センシングエレクトロニクス82、ポンプおよびバルブコントローラ83、センシングエレクトロニクス85、ならびに、パッチポンプ1Aの作動を制御する留置エレクトロニクス87を含むことが可能である。パッチポンプ1Aは、リザーバ4Aを含み得る流体サブシステムと、リザーバ4Aのための容量センサ48と、リザーバ4Aを補充するために補充シリンジ45を受け入れるためのリザーバ充填ポート43とを含む。流体サブシステムは、計量システムを含むことが可能であり、計量システムは、ポンプおよびバルブアクチュエータ411と、一体型のポンプおよびバルブ機構413とを含む。流体サブシステムは、閉塞センサと、留置アクチュエータと、ユーザの皮膚の上の注入部位の中への挿入のためのカニューレ47とをさらに含むことが可能である。図16および図17のパッチポンプに関するアーキテクチャは、図19に図示されているものと同じまたは同様である。
【0054】
本発明の数個の例示的な実施形態だけが上記で詳細に説明されてきたが、当業者は、例示的な実施形態では、本発明の新規の教示および利点から実質的に逸脱することなく、多くの変更が可能であることを容易に認識するであろう。したがって、すべてのそのような変更は、添付の特許請求の範囲および特許請求の範囲の均等物の範囲の中に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19