(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基礎樹脂(a)は、前記ポリアミド(a−1)50重量%〜90重量%および前記ポリフェニレンエーテル(a−2)10重量%〜50重量%を含む、請求項2に記載の塗装成形品。
前記スチレン系エラストマー(b−1)は、芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物からなるブロック共重合体、芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物からなるブロック共重合体を水素添加してなる水素添加ブロック共重合体、前記ブロック共重合体をα,β−不飽和ジカルボン酸とα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のグループから選ばれた化合物で変性した変性ブロック共重合体、ならびに前記水素添加ブロック共重合体をα,β−不飽和ジカルボン酸とα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のグループから選ばれた化合物で変性した変性水素添加ブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装成形品。
前記相溶化剤(d)は、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸ヒドラジド、ジクロロマレイン酸無水物、フマル酸、不飽和ジカルボン酸、クエン酸、クエン酸無水物、リンゴ酸およびアガリシン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項5に記載の塗装成形品。
【背景技術】
【0002】
プラスチック素材は、金属やセラミック素材に比べて、耐熱性、難燃性等の特性が落ちる一方で、軽量性、デザイン自由度および成形加工性等の長所により、生活用品から自動車、電気、電子および産業用分野等の工業用材料として広範囲で用いられている。
【0003】
プラスチック素材の種類もまた多様で、一般汎用プラスチック(commodityplastics)からエンジニアリングプラスチック(engineeringplastics)まで数多くの種類が開発されている。プラスチック素材は、多様な機能および性能が求められる分野で広く応用されている。
【0004】
このうち、ポリフェニレンエーテルは、電気的性質および機械的性質に優れ、高い熱変形温度を有するため、エンジニアリングプラスチック素材として幅広い分野に用いることができる。
【0005】
ポリフェニレンエーテルは、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社で開発され、優れた耐熱性を基盤として高衝撃ポリスチレンとのブレンド形態で有用な産業素材になっている。最近では、非相溶系ブレンドを化学的な方法で相溶化させる反応押出技術によるポリアミド/ポリフェニレンエーテル、相溶化剤を第3成分として添加するポリプロピレン/ポリフェニレンエーテル等のアロイ(alloy)形態で活用されている。
【0006】
特に、ポリアミド/ポリフェニレンエーテルは、各構成樹脂の短所を効果的に補完し、耐熱性、耐衝撃性および耐化学性等の物性をバランスよく発現し、ホイールキャップ(wheel cap)、ジャンクションボックス(junction box)等の自動車外部部品、アンダーフード(under the hood)部品に活用している。
【0007】
最近、他の金属素材部品と同時に静電塗装できるオンライン静電塗装が可能なプラスチック外装部品素材が求められている。このような用途に適用するためにゼネラル・エレクトリック社は、伝導性を有するポリアミド/ポリフェニレンエーテルを開発し、これを自動車フェンダー(fender)部品用途に適用することに成功した(特許文献1:EP685527B1)。
【0008】
伝導性のあるポリアミド/ポリフェニレンエーテルの開発により、他の金属素材部品と同時に静電塗装することが可能となり、別途の塗装工程の必要がなくなるため、生産コストを抑えることができた。
【0009】
ポリアミド/ポリフェニレンエーテルに伝導性を具現する方法として、炭素繊維やカーボンブラック等の伝導性フィラーを添加する方法(特許文献2:JP H04−300956 A)が提案されたが、炭素繊維を用いると製品の成形性に優れず、通常のカーボンブラックを用いると静電塗装に適用するために、必要な伝導性を達成するために多量のカーボンブラックを添加する必要がある。このため、耐衝撃性、成形性等が不十分になるという問題があった。
【0010】
耐衝撃性、成形性の問題を解決するために、大きさを調節してナノ単位の炭素繊維(カーボンフィブリル)や伝導性カーボンブラックを用いたが、ポリアミド/ポリフェニレンエーテルの相溶性が低下する問題が発生した(特許文献3:JP2756548B2)。
【0011】
このような相溶性の低下により、ポリアミド/ポリフェニレンエーテルに塗料を塗装する際、塗料が均一にコーティングされなっかたり、塗料の密着力が落ちったり、成形品の外観が優れなかった。
【0012】
相溶性が低下する問題を解決し、優れた物性を有するポリアミド/ポリフェニレンエーテルを製造するためには、押出加工時にポリフェニレンエーテルとポリアミド、および相溶化剤との間に発生する相溶化反応が円滑に行われることが重要である。
【0013】
本発明では、上記問題点を解決するために、ポリアミド/ポリフェニレンエーテルが本来持っている優れた特性を維持し、物性および経済性を改善した伝導性ポリアミド/ポリフェニレンエーテルを製造するための研究を実施した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の利点および特徴、そして、それらを達成する方法は、詳細に後述している実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示されている実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現することができ、単に本実施例は、本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるもので、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。明細書全体に亘って同一参照符号は、同一構成要素を指称する。
【0038】
他の定義がなければ、本明細書で用いられる全ての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に共通的に理解される意味で用いられている。また、一般的に用いられる辞典に定義されている用語は、明白かつ特に定義されていない限り、理想的または過度に解釈されない。
【0039】
以下、本発明の塗装成形品について説明する。
【0040】
一実施形態に係る塗装成形品は、塗料組成物および射出成形熱可塑性樹脂組成物を含んでなり、上記射出成形熱可塑性樹脂組成物で形成された成形部の少なくとも一部に上記塗料組成物が付着される。具体的に、射出成形熱可塑性樹脂組成物で形成された成形品に塗料組成物が塗装されてもよい。
【0041】
本発明において、相溶化ブレンド(compatibilized blend)は、相溶化剤と物理的または化学的に相溶化された組成物を指称する。
【0042】
相溶性は、相溶化される程度を意味するものであり、相溶性が高いということは、相溶化が上手くなされるということであり、相溶性が低いということは、相溶化が難しいということを意味する。
【0043】
射出成形熱可塑性樹脂組成物
射出成形熱可塑性樹脂組成物は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとを含む基礎樹脂、衝撃補強剤およびカーボンフィブリルを含む。
【0044】
以下、本発明の一実施形態に係る塗装成形品を構成する射出成形熱可塑性樹脂組成物をなす各成分について具体的に説明する。
【0045】
(a)基礎樹脂
基礎樹脂(a)は、ポリアミド(a−1)とポリフェニレンエーテル(a−2)とを含んでもよい。
【0046】
本発明の射出成形熱可塑性樹脂組成物は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとのブレンドを含み、ポリアミドは、マトリックス相(matrix phase)を形成し、ポリフェニレンエーテルは、マトリックス相内にドメイン相(domain phase)を形成できる。
【0047】
ここで、マトリックス相(matrix phase)は、分散されている相を囲んだ連続している相を指し、ドメイン相(domain phase)は、マトリックス相と対立するもので、非連続相を指す。マトリックス相とドメイン相はそれぞれ、連続相(continuous phase)と分散相(dispersed phase)とも称し、本明細書では、マトリックス相と連続相、ドメイン相と分散相はそれぞれ同義で使用することができる。
【0048】
(a−1)ポリアミド
ポリアミド(a−1)は、アミノ酸、ラクタムまたはジアミンとジカルボン酸を主たる単量体成分原料として得ることができる。
【0049】
上記単量体成分の代表的な例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム;テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等の脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン;またはアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸を挙げられる。それらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーをそれぞれ、単独または混合物の形態で用いることができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係るポリアミドの具体的な例としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/612、ポリアミドMXD6、ポリアミド6/MXD6、ポリアミド66/MXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド6/6T、ポリアミド6/6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6/6T/6I、ポリアミド66/6T/6I、ポリアミド9T、ポリアミド9I、ポリアミド6/9T、ポリアミド6/9I、ポリアミド66/9T、ポリアミド6/12/9T、ポリアミド66/12/9T、ポリアミド6/12/9Iまたはポリアミド66/12/6Iから選ばれたポリアミドを単独で、または2種以上を適正の比率で混合して用いることができる。
【0051】
上記ポリアミドは、融点が、220℃〜360℃であり、好ましくは230℃〜320℃であり、さらに好ましくは240℃〜300℃である。
【0052】
上記ポリアミドは、相対粘度が2以上、好ましくは2〜4であるものが、樹脂組成物の優れた機械的物性や耐熱性面において好ましく使用できる。ここで、相対粘度とは、m−クレゾールにポリアミドを1重量%添加して25℃で測定した値である。
【0053】
上記ポリアミドの含量は、ポリフェニレンエーテルを含む基礎樹脂100重量%に対して50重量%〜90重量%であることが好ましく、55重量%〜80重量%であることがより効果的である。上記範囲から外れる場合、機械的物性や耐熱性が落ちる問題が発生するおそれがある。
【0054】
(a−2)ポリフェニレンエーテル
ポリフェニレンエーテル(a−2)は、ポリフェニレンエーテル重合体、ポリフェニレンエーテル重合体とビニル芳香族重合体との混合物、またはポリフェニレンエーテル重合体に反応性単量体が反応した変性ポリフェニレンエーテル重合体であってもよく、これらのうち2種以上を混合して使用してもよい。
【0055】
上記ポリフェニレンエーテル重合体としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテルの共重合体またはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリ(2,3,6−トリエチル−1,4−フェニレン)エーテルの共重合体から選ばれた単独または2種以上のポリフェニレンエーテル重合体が用いられてもよい。
【0056】
この中から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルまたはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルとポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテルの共重合体を用いることが好ましく、より好ましくは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを用いることができる。
【0057】
上記ビニル芳香族重合体としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、および4−n−プロピルスチレンから選ばれた単独または2種以上のビニル芳香族単量体を重合したものを用いることができ、このうち、好ましくは、スチレンおよびα−メチルスチレンから選ばれた単独またはそれらを組合わせたビニル芳香族単量体を重合したものが効果的である。
【0058】
上記反応性単量体は、不飽和カルボン酸もしくはその無水物基等を含む化合物、または反応して不飽和カルボン酸またはその無水物基で変性されるものであって、本発明の一実施形態に係るポリフェニレンエーテル重合体と反応して変性されたポリフェニレンエーテル重合体を形成する役割を果たすことができる。
【0059】
上記反応性単量体としては、クエン酸、クエン酸無水物、マレイン酸無水物、マレイン酸、無水イタコン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、およびそれらの組合わせからなる群より選ばれるものを用いることができる。
【0060】
上記反応性単量体と反応した変性ポリフェニレンエーテル重合体の製造方法については、特に制限されないが、作業温度が比較的高いことを勘案すると、ホスファイト系熱安定剤を用いて溶融混練状態でグラフト反応させることが効果的である。
【0061】
本発明の一実施形態に係るポリフェニレンエーテルの固有粘度は特に制限されないが、25℃のクロロホルム溶媒で測定した際の固有粘度が0.2dl/g〜0.8dl/gであることが好ましく、0.3dl/g〜0.6dl/gであることがより好ましい。
【0062】
上記範囲の固有粘度を有する場合に、耐熱性および機械的強度に優れ、加工が容易である。
【0063】
上記ポリフェニレンエーテルの含量は、ポリアミドを含む基礎樹脂100重量%に対して10重量%〜50重量%であることが好ましく、20重量%〜45重量%であることがより効果的である。上記範囲内の含量を超える場合には柔軟性および耐化学性が落ちるか、加工が難しいおそれがある。
【0064】
(b)衝撃補強剤
衝撃補強剤(b)は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる機能を有し、ドメイン相を形成できる。
【0065】
衝撃補強剤としては、スチレン系エラストマー(b−1)またはオレフィン系エラストマー(b−2)を用いることができ、スチレン系エラストマーとオレフィン系エラストマーとを組合わせて用いることもできる。上記衝撃補強剤は、基礎樹脂100重量部に対して3重量部〜20重量部を含み、好ましくは5重量部〜18重量部、より好ましくは6重量部〜15重量部を含むことが効果的である。
【0066】
(b−1)スチレン系エラストマー
スチレン系エラストマー(b−1)は、芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物からなるブロック共重合体;芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物からなるブロック共重合体を水素添加してなる水素添加ブロック共重合体;上記ブロック共重合体をα,β−不飽和ジカルボン酸とα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のグループから選ばれた化合物で変性した変性ブロック共重合体、および上記水素添加ブロック共重合体をα,β−不飽和ジカルボン酸とα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のグループから選ばれた化合物で変性した変性水素添加ブロック共重合体でもよい。場合によっては、2種以上を組合わせて用いることができる。
【0067】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ブロモスチレンまたはクロロスチレンであってもよく、これら2つ以上を組合わせてもよい。ここで最も好ましい実施形態はスチレンである。
【0068】
上記スチレン系エラストマーは、芳香族ビニル化合物から誘導され、その形態は、ジブロック(A−Bブロック)、トリブロック(A−B−Aブロック)、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)およびペンタブロック(A−B−A−B−Aブロック)構造を含む線形構造だけでなく、計6個以上のAおよびBブロックを含有する線形構造を含んでもよい。
【0069】
スチレン系エラストマーの好ましい具体的な例としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン共重合体またはスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体が挙げられ、上記の物質はそれぞれ、α,β−不飽和ジカルボン酸とα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体のグループから選ばれた化合物で変性させた変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、変性スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、変性スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、変性スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、変性スチレン−エチレン共重合体または変性スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体でもよい。場合によっては、2種以上を混合して用いることも可能である。最も好ましい実施形態は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体である。
【0070】
(b−2)オレフィン系エラストマー
オレフィン系エラストマー(b−2)は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体およびそれらの組合わせからなる群より選ぶことができる。また、上述の物質はそれぞれ、α,β−不飽和ジカルボン酸またはα,β−不飽和ジカルボン酸誘導体の少なくとも一つの化合物で変性させた変性高密度ポリエチレン、変性低密度ポリエチレン、変性線形低密度ポリエチレン、変性エチレン−α−オレフィン共重合体であってもよい。場合によっては、2種以上を混合して用いることも可能である。
【0071】
上記オレフィン系エラストマーは、オレフィン系単量体で重合された共重合体またはオレフィン系単量体およびアクリル系単量体の共重合体であってもよい。
【0072】
上記オレフィン系単量体としては、C1〜C19のアルキレンを用いてもよく、具体的な例として、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレンまたはオクテンを用いることができ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0073】
上記アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルまたは(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。このとき、上記アルキルは、C1〜C10のアルキルを意味するものであって、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートであり、好ましくはメチル(メタ)アクリレートである。
【0074】
上記オレフィン系エラストマーは、ポリアミドと反応できる反応性基を含むことが好ましく、オレフィン系エラストマーは、オレフィン系単量体またはオレフィン系単量体およびアクリル系単量体の共重合体からなる主鎖に反応性基がグラフトされた構造を有し得る。
【0075】
上記反応性基としては、マレイン酸無水物基またはエポキシ基が効果的である。
【0076】
反応性基を含むオレフィン系エラストマーの好ましい実施形態としては、マレイン酸無水物基がグラフトされた変性エチレン−α−オレフィン共重合体または変性低密度ポリエチレンが効果的である。これは、ポリフェニレンエーテルおよびポリアミドの相溶性を向上させる。
【0077】
(c)カーボンフィブリル(carbon fibril)
カーボンフィブリル(c)は、射出成形熱可塑性樹脂組成物に伝導性を付与することができる伝導性フィラーである。
【0078】
カーボンフィブリルは、炭素原子の質量含有率が、90重量%以上からなる繊維形態の炭素材料である。カーボンフィブリルのうち、好ましくはカーボンナノチューブ(carbonnano tube)が用いられ得る。カーボンナノチューブは、アスペクト比と比表面積が大きく、機械的特性、電気的特性および熱的特性に優れるため、エンジニアリングプラスチック素材の効果的な材料である。
【0079】
カーボンナノチューブは、層をなす個数によってシングルウォール、ダブルウォール、マルチウォールカーボンナノチューブに分類でき、グラフェン(graphene)の面が巻かれる角度によってジグザグ(zigzag)、アームチェア(armchair)、キラル(chiral)構造に分類でき、種類および構造に制限されなく多様に用いることができるが、好ましくは、マルチウォールカーボンナノチューブが効果的である。
【0080】
上記カーボンナノチューブの大きさは特に制限されず、直径が、0.5nm〜100nmであり、好ましくは1nm〜10nmである、長さが、0.01μm〜100μmであり、好ましくは0.5μm〜10μmである。上記直径および長さの範囲において、伝導性および加工性により優れる。
【0081】
また、カーボンナノチューブは、上記のような大きさによってアスペクト比(aspect ratio)(L/D)が大きい値を有するが、L/Dが100〜1,000のカーボンナノチューブを用いると伝導性向上効果に優れる。
【0082】
カーボンフィブリルは、凝集体(agglomerates)を含み、上記凝集体は、平均凝集体の大きさが30μm
2〜10,000μm
2であってもよく、100μm
2〜8,000μm
2であることが好ましい。
【0083】
平均凝集体の大きさは、塗装後に外観に大きく影響を及ぼし、カーボンフィブリルの凝集体が上記範囲から外れる場合には、カーボンフィブリルが熱可塑性樹脂組成物内に上手く分散されず、表面ピット(surface pits)として肉眼で観察でき、上記熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品の外観不良を招くおそれがある。
【0084】
カーボンフィブリルは、ドメイン相よりマトリックス相に分散されたカーボンフィブリルの含量が多いことが好ましく、より好ましくは、熱可塑性樹脂組成物に含まれている全体カーボンフィブリルのうち、マトリックス相に分散されているカーボンフィブリルが51重量%〜100重量%である。
【0085】
ドメイン相に分散されているカーボンフィブリルがマトリックス相に分散されているカーボンフィブリルの含量より多い場合、熱可塑性樹脂組成物で形成された成形部の塗装時に塗料組成物の塗装密着性が劣り得る。
【0086】
カーボンフィブリルは、上記基礎樹脂100重量部に対して0.1重量部〜3.5重量部であり、好ましくは0.5重量部〜1.5重量部である。カーボンフィブリルが、0.1重量部未満の場合には、伝導性向上効果が僅かであり、3.5重量部を超える場合には、熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品の外観および耐衝撃性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0087】
また、基礎樹脂を構成するポリアミド重量に対するカーボンフィブリルの重量比は、0.006〜0.03であってもよく、好ましくは0.01〜0.03である。カーボンフィブリルが上記範囲から外れる場合には、カーボンフィブリルがドメイン相に主に分布するようになり、熱可塑性樹脂組成物の伝導性が大きく劣る。
【0088】
(d)相溶化剤(compatibilizer)
上記射出成形熱可塑性樹脂組成物は、相溶化剤(d)をさらに含んでもよい。
【0089】
相溶化剤(d)は、2種類の官能基を含む化合物、または反応して2種類の官能基を含む化合物で変性される化合物でもよい。上記官能基のうちの一つは、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合であり、他の一つは、カルボキシル基、酸無水物、エポキシ基、イミド基、アミド基、エステル基、酸性塩化物またはその機能的等価物の官能基の中から選ぶことができる。
【0090】
相溶化剤の具体的な例としては、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸ヒドラジド(maleic hydrazide)、ジクロロマレイン酸無水物、フマル酸、不飽和ジカルボン酸、クエン酸、クエン酸無水物、リンゴ酸(malicacid)またはアガリシン酸(agaricicacid)を用いることができる。場合によっては、これを混合して用いることができる。
【0091】
相溶化剤の好ましい実施例は、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、クエン酸、クエン酸無水物であり、特に、マレイン酸無水物とクエン酸無水物が効果的である。
【0092】
上記相溶化剤または上記相溶化剤の変性物が、ポリフェニレンエーテルおよびポリアミドと反応すると、ポリフェニレンエーテルとポリアミドブロック共重合体を生成する。
【0093】
上記ポリフェニレンエーテルとポリアミドブロック共重合体は、射出成形熱可塑性樹脂組成物中において、二つの成分の界面に分布して樹脂組成物の形態(morphology)を安定化させる。特に、射出成形熱可塑性樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテルがドメイン相(分散相)、ポリアミドがマトリックス相(連続相)になる形態を形成する場合、ドメイン相の粒子直径を耐衝撃性が有効な1μm程度に制御するのに上記ポリフェニレンエーテルとポリアミドブロック共重合体が重要な作用をするものと思われる(Polymer Engineering and Science,1990,vol.30,No.17,p.1056−1062)。
【0094】
上記相溶化剤は、射出成形熱可塑性樹脂組成物において、0.2重量部〜10重量部を含み得る。相溶化剤が、0.2重量部未満の場合には、衝撃強度向上効果が僅かであり、10重量部を超える場合には、衝撃強度の向上が増加されなく、残りの物性を低下させるおそれがある。
【0095】
それ以外にも、射出成形熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤、滑剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤または無機物フィラーをさらに含むことができ、最終成形品の特性によっては、2種以上を混合して用いることもできる。
【0096】
上記難燃剤は、燃焼性を減少させる物質であり、ホスフェイト(phosphate)化合物、ホスファイト(phosphite)化合物、ホスホネート(phosphonate)化合物、ポリシロキサン、ホスファゼン(phosphazene)化合物、ホスフィナート(phosphinate)化合物およびメラミン化合物のうち少なくとも一つを含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0097】
上記滑剤は、加工・成形・押出中に、射出成形熱可塑性樹脂組成物と接触する金属表面を潤滑させ、樹脂組成物の流れまたは移動を助ける物質として通常的に用いられる物質を使用することができる。
【0098】
上記可塑剤は、射出成形熱可塑性樹脂組成物の柔軟性、加工作業性能または膨張性を増加させる物質として通常的に用いられる物質を使用することができる。
【0099】
上記熱安定剤は、高温で混練または成形する場合、射出成形熱可塑性樹脂組成物の熱的分解を抑制する物質として通常的に用いられる物質を使用することができる。
【0100】
上記酸化防止剤は、射出成形熱可塑性樹脂組成物と酸素との化学的反応を抑制または遮断させることによって樹脂組成物が分解されて固有物性が喪失されることを防止する物質で、フェノール型、ホスファイト型、チオエーテル型またはアミン型酸化防止剤のうち少なくとも一つを含み得るが、これらに制限されない。
【0101】
上記光安定剤は、紫外線から射出成形熱可塑性樹脂組成物が分解されて色が変わったり、機械的性質が喪失されることを抑制または遮断させる物質として、好ましくは酸化チタンを用いることができる。
【0102】
上記着色剤としては、顔料または染料を用いることができる。
【0103】
上記添加剤は、基礎樹脂100重量部に対して0.1重量部〜10重量部で含み得、上記範囲から外れる場合、射出成形熱可塑性樹脂組成物の機械的物性が落ちる、また樹脂組成物を用いた成形品の外観不良が発生するおそれがある。
【0104】
本発明の一実施形態による射出成形熱可塑性樹脂組成物は、公知の方法で製造できるが、それぞれの構成物質として上述した物質を特定の含量で用いることによって、優れた物性を有する熱可塑性樹脂組成物を達することができ、上述した本発明の構成成分と添加剤とを混合した後に、押出機内で溶融押出してペレット形態で製造することができる。
【0105】
本発明の一実施形態による特定の構成物質および含量を有する射出成形熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、伝導性および塗料密着性に優れる。
【0106】
塗料組成物
塗料組成物は、上記射出成形熱可塑性樹脂組成物で形成された成形部の一部に付着することができ、好ましくは、射出成形熱可塑性樹脂組成物で形成された成形部に塗料組成物を塗装した形態である。
【0107】
塗料組成物は、塗料組成物を霧形態の微細粒子にして、塗装物である射出成形熱可塑性樹脂組成物で形成された成形部に電圧を加えて塗料組成物を塗装面に吸着させる静電塗装(electrostatic painting)を用いて塗装でき、上記射出成形熱可塑性樹脂組成物は伝導性に優れ、静電塗装の効率に優れる。
【0108】
好ましくは、静電塗装のうち、粉体塗装(powder coating)を用いて塗装する。
【0109】
塗料組成物は、塗料粒子を含み得る。上記塗料粒子は、液体塗料粒子または固体塗料粒子でもよい。
【0110】
上記射出成形熱可塑性樹脂組成物は、伝導性および耐衝撃性の物性に優れ、
図1に示される通り、自動車テールゲート(tail gate)(50)、自動車フューエルドア(fuel door)(41)、自動車フェンダー(fender)(10,40)ドアパネル(door panel)(20,30)等の自動車用部品に使用することができるが、適用範囲としてこれらに制限されるものではない。
【0111】
上述した自動車用成形品は、
図2に示される通り、射出成形熱可塑性樹脂組成物を用いた成形部(100)に塗料組成物(200)を塗装して自動車用成形品に適用できる。
【実施例】
【0112】
以下では、本発明の塗装成形品の優れた効果を立証するための実験を実施した結果を表す。
【0113】
下記実施例および比較例の射出成形熱可塑性樹脂組成物に用いられた構成成分は下記の通りである。射出成形熱可塑性樹脂組成物は、塗装成形品の成形部を構成する。
【0114】
(a)基礎樹脂
(a−1)アセンド・パフォーマンス・マテリアルズ(Ascend Performance Materials)社のポリアミド66製品であるVYDYNE 22HSPを使用した。
【0115】
(a−2)旭化成ケミカルズ(Asahi Kasei ChemicalsCorp.)社のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル製品であるXYRON S201Aを使用した。
【0116】
(b)衝撃補強剤
(b−1)スチレン系エラストマー
クレイトンポリマー(KRATON polymers)社のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)製品であるKRATON G1651を使用した。
【0117】
(b−2)オレフィン系エラストマー
マレイン酸無水物変性低密度ポリエチレン(maleic anhydride modified lowdensity polyethylene)を使用した。
【0118】
(c)カーボンフィブリル
ナノシル(Nanocyl)社の炭素ナノチューブ製品であるNC7000を使用した。
【0119】
(c’)カーボンブラック
アクゾノーベル(Akzo Nobel)社のカーボンブラック(ケッチェンブラック)製品であるEC−600JDを使用した。
【0120】
(d)相溶化剤
シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)社のクエン酸無水物を使用した。
【0121】
実施例および比較例の熱可塑性樹脂組成物を製造するために、マスターバッチ(master batch)を用いており、マスターバッチは、下記表1に記載されている成分含量比によって製造された。ポリアミド(a−1)100重量部を基準としてカーボンフィブリル(c)とカーボンブラック(c’)の含量を記載した。
【0122】
表1のメイン供給に記載されている成分を乾式混合して二軸押出機TEX−40(JSW社製造)のメイン供給ポート(main feeding port)に投入し溶融混練してペレット形態のマスターバッチを製造し、生産速度は1時間当たり約60kgであった。
【0123】
【表1】
【0124】
実施例および比較例の熱可塑性樹脂組成物は、下記表2に記載されている成分含量比によって製造された。下記表2において、MBは、上記表1で製造されたマスターバッチを言い、表2の各成分別の数値は重量比である。
【0125】
表2のメイン供給に記載されている各成分を乾式混合し、二軸押出機TEX−40(JSW社製造)のメイン供給ポート(main feeding port)に定量的に連続投入した。表2のサイド供給に記載されている成分は、二軸押出機のサイド供給ポート(side feeding port)に定量的に連続投入して溶融混練した。次いで、押出機によってペレット化された樹脂組成物を収得した。
【0126】
ここで、サイド供給ポートは、押出機のダイ(die)側に近いところに位置したポートを意味する。
【0127】
【表2】
【0128】
上記表2による実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例4の各成分の含量比と、ポリアミド(a−1)に対するカーボンフィブリル(c)とカーボンブラック(c’)の重量比は、下記の表3の通りである。基礎樹脂であるポリアミド(a−1)およびポリフェニレンエーテル(a−2)は合わせて100重量部であり、これを基準として重量部を表した。
【0129】
【表3】
【0130】
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例4の射出成形熱可塑性樹脂組成物に対して、表面抵抗、ダート落下衝撃強度、塗料接着強度(paint adhesion strength)および表面ピット(surface pits)を評価した。評価項目の評価方法は下記の通りであり、評価結果は下記の表4に記載した。
【0131】
<表面抵抗評価>
表面抵抗測定のための試片は、熱圧縮成形によって製造した。実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例4の熱可塑性樹脂組成物ペレット約6gを100mm×100mm×0.5mmのキャビティー(cavity)を有するモールド(mold)に入れ、モールドを一対の金属プレート(plate)の間に入れた後、約300℃に設定されている熱圧縮成形基に挿入した。モールドと金属プレートに約50kg/cm
2の圧力を3分間加えた後、熱圧縮成形機械から取り出し約25℃に設定されている冷却圧縮成形機に挿入した。モールドと金属プレートに約50kg/cm
2の圧力を2分間加えた後、冷却圧縮成形機から取り出し表面抵抗を測定するために、約100mm×100mm×0.5mmの試片をモールドおよび一対の金属プレートから分離した。圧縮成形された試片は、約6時間、温度約23℃、相対湿度約50%の環境で状態調整した。
【0132】
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例4の熱可塑性樹脂組成物の表面抵抗は、三菱化学アナリテック(Mitsubishi Chemical Analytech)社で製造したプローブMCP−HTP14を備えた抵抗測定システムであるHiresta−UP MCP−HT450を用いて測定しており、測定時、30秒間250Vの電圧が加えられた。
【0133】
<ダート落下衝撃強度評価>
射出成形によって製造された熱可塑性樹脂組成物の試片がダート落下衝撃強度評価に用いられた。約100mm×100mm×3mmの試片キャビティー(cavity)を有する金型を備えた射出成形機SELEX−TX150(ウジンセレックス社)を射出成形に用いており、シリンダーの温度は約280℃、金型の温度は、約80℃に設定した。
【0134】
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例4の熱可塑性樹脂組成物を約100MPaの射出圧力、約5秒の圧力維持時間(holding time)、約20秒の冷却時間(cooling time)で射出成形しており、各樹脂組成物に対して20個の試片を製造した。射出成形された試片は、約6時間、温度約23℃、相対湿度約50%の環境で状態調整した。
【0135】
ダート落下衝撃強度は、状態調整した試片に対してASTM D3763に準じてダート落下衝撃試験であるFractovis Plus(CEAST社)を用いて温度約23℃、相対湿度50%の環境でダート落下衝撃強度の総エネルギー(J)を測定した。
【0136】
各樹脂組成物の衝撃強度によって重さを1kgないし10kgに調整した直径12.7mmのhead dartを各樹脂組成物試片に1mの高さで落下させ、ダート落下衝撃試験機に連結された測定装置を用いて各樹脂組成物試片の破壊エネルギーを求めた。この測定を各樹脂組成物に対して20回測定して得られた破壊エネルギーの平均値を各樹脂組成物のダート落下衝撃強度のエネルギーとした。
【0137】
<塗料接着強度評価>
塗料接着強度を評価するために同一の側面に30mm間隔で2個の射出ゲート(injection gate)が備えられた100mm×100mm×3mmの大きさのフラットプレート(flat plate)が使用された(
図3参照)。射出成形されたフラットプレートは、静電塗装システムを用いてポリエステルエポキシハイブリッド(polyester−epoxyhybrid)粉末(Kansai paint社製造)で粉体塗装され、粉体塗装されたフラットプレートを約40分間約200℃の温度で硬化させて塗装成形品を得た。
【0138】
塗装成形品の塗料接着強度は、JIS K5400−8.5のクロスカット方法(cross−cut method)によって測定した。塗装成形品の表面にカッターの刃のような適切な部材を用いてウェルドライン部分と非ウェルドライン部分に格子状の切開線(cutting line)を形成させた後、切開線領域を消しゴムで切開線の斜線方向に5回こすった。その後、試片の切開線領域にpermacel tapeを付着してから剥がした後、切開線領域を拡大鏡で観察し、剥がれた格子の数をJIS K5400−8.5で規定した等級で数値化して塗料の接着強度を記載した。数値が高いほど塗料接着強度は優れると判断した。
【0139】
<表面ピット評価>
表面ピットは、射出成形熱可塑性樹脂組成物の表面に形成された微細な溝(dimple)で、白く濁った表面欠陥の原因になる。同一側面に30mm間隔で2個の射出ゲートが備えられた100mm×100mm×3mmの大きさのフラットプレートを用いて射出成形された熱可塑性樹脂組成物の表面ピットを肉眼で観察した。観察の結果、表面ピットが観察されない場合はG(Good)、表面ピットが観察された場合はNG(Not Good)と記載した。
【0140】
【表4】
【0141】
上記表1〜表4から、実施例1〜実施例3による熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品の場合、伝導性、耐衝撃性および塗料密着性は全てに優れることが分かった。
【0142】
上記ポリアミド重量に対する上記カーボンフィブリル重量の比が、0.03を超えた比較例1の場合、熱可塑性樹脂組成物の表面抵抗が著しく減少し、伝導性が大きく劣り、表面ピットが発見された。
【0143】
上記ポリアミド重量に対する上記カーボンフィブリル重量の比が0.006未満である比較例2の場合には、塗料の接着強度が劣ることが分かった。
【0144】
伝導性フィラーでカーボンブラックを用いた比較例3および比較例4の場合、実施例に比べて耐衝撃性が劣るだけでなく、ウェルドラインが形成された部分に表面ピットが多数発見され表面欠陥があることが分かり(比較例4)、塗料の接着強度が大きく劣り、塗料密着性に優れないことが分かった(比較例3)。
【0145】
上記の実験を通じて塗装成形品を具現することにおいて、射出成形熱可塑性樹脂組成物を構成する成分および成分の含量が、伝導性、耐衝撃性、塗料との密着性および外観に大きく影響を与えることが分かった。
【0146】
本発明の権利範囲は、上述の実施例に限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲内で多様な形態の実施例で具現できる。特許請求の範囲で請求する本発明の要旨から外れることなく当該発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、誰でも変形可能な多様な範囲まで本発明の請求の範囲の記載の範囲内にあるものとみなす。