特許第6581170号(P6581170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581170
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20190912BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   B23Q11/00 Q
   B23Q11/08 A
   B23Q11/08 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-238424(P2017-238424)
(22)【出願日】2017年12月13日
(65)【公開番号】特開2019-104084(P2019-104084A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2019年5月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】淺野 佳太
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−205542(JP,A)
【文献】 実開昭59−191238(JP,U)
【文献】 特開2001−87964(JP,A)
【文献】 特開2000−15577(JP,A)
【文献】 特開2010−23202(JP,A)
【文献】 実開平4−70447(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/255066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、前記ベッドに対しサドルを第1の方向に移動させる移動機構および前記サドルに対しテーブルを第1の方向とは交差する第2の方向に移動させる移動機構のそれぞれを保護する伸縮可能なカバーと、前記ベッドに取り付けられ前記サドル、前記テーブルおよび前記カバーを囲うスプラッシュガードと、を有する工作機械であって、
前記スプラッシュガードは、
前記カバーの端部が当接する第1側壁部と、
前記第1側壁部から前記カバーの伸縮方向に沿って前記スプラッシュガードの内部側に向かうほど低くなるように傾斜し、前記第1側壁部と前記カバーの端部との間を伝わる切削液を前記スプラッシュガードの内部側に向けて下方に流す傾斜部と、
前記傾斜部から下方に垂直に延びる第2側壁部と、
前記第2側壁部から前記傾斜部の下端よりも前記スプラッシュガードの内部側に水平に延び、前記切削液を受ける底部と、を有し、
前記工作機械は、
前記傾斜部の下端よりも前記スプラッシュガードの内部側に配置され、前記傾斜部から落ちる前記切削液を前記底部に誘導する誘導部
を備える、工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械であって、
前記誘導部は、前記傾斜部の下端から前記カバーの伸縮方向に沿って前記スプラッシュガードの内部側に向かうほど高くなるように傾斜する傾斜部位と、
前記傾斜部位と前記傾斜部の下端との連結部分に設けられる貫通孔と、を有する、工作機械。
【請求項3】
請求項2に記載の工作機械であって、
前記誘導部の前記傾斜部位の傾斜角度は、前記傾斜部の傾斜角度よりも大きい、工作機械。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の工作機械であって、
前記誘導部は、上下方向に延び、前記傾斜部から落ちる切削液が前記スプラッシュガードの内部側に向かうことを防ぐ防壁部を有する、工作機械。
【請求項5】
請求項4に記載の工作機械であって、
前記防壁部の下端は前記傾斜部の傾斜の延長線よりも下方に位置し、前記防壁部の上端は前記延長線よりも上方に位置する、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物の切削により生じる切粉や切屑等の切削片を切削液により機外に流す機構を有する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ベッドと、ベッド上に立設されたコラムと、互いに直交するX、YおよびZ軸方向に移動可能にコラムに支持された主軸頭と、主軸頭に回転可能に支持された主軸と、ベッド上に配置されたテーブルとを備えた工作機械が開示されている。
【0003】
この工作機械では、テーブルの前後左右の計4箇所に設けられるテレスコピックカバーと、ベッドの周囲を取り囲むスプラッシュガードと、スプラッシュガードの側壁から内部に延びる斜板カバーとによって、トラフに切削液が導かれ、機械前方から機械後方に延びる斜板カバーによって機械後方に切削液が流れ出るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−94280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のテレスコピックカバーは、スプラッシュガードの側面壁とテレスコピックカバーの端部とが当接するように配置されているが、当該テレスコピックカバーの端部と側面壁との間を切削液が伝わる場合がある。この場合、切削液がベッド上に落ち、意図しないベッドとスプラッシュガードとの間から機外に切削液が流れ出てしまうことが問題として懸念される。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、意図しない個所から機外に切削液が流れ出ることを抑制し得る工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、ベッドと、前記ベッドに対しサドルを第1の方向に移動させる移動機構および前記サドルに対しテーブルを第1の方向とは交差する第2の方向に移動させる移動機構のそれぞれを保護する伸縮可能なカバーと、前記ベッドに取り付けられ前記サドル、前記テーブルおよび前記カバーを囲うスプラッシュガードと、を有する工作機械であって、前記スプラッシュガードは、前記カバーの端部が当接する第1側壁部と、前記第1側壁部から前記カバーの伸縮方向に沿って前記スプラッシュガードの内部側に向かうほど低くなるように傾斜し、前記第1側壁部と前記カバーの端部との間を伝わる切削液を前記スプラッシュガードの内部側に向けて下方に流す傾斜部と、前記傾斜部から下方に垂直に延びる第2側壁部と、前記第2側壁部から前記傾斜部の下端よりも前記スプラッシュガードの内部側に水平に延び、前記切削液を受ける底部と、を有し、前記工作機械は、前記傾斜部の下端よりも前記スプラッシュガードの内部側に配置され、前記傾斜部から落ちる前記切削液を前記底部に誘導する誘導部を備える。
【発明の効果】
【0008】
この工作機械では、カバーの端部と第1側壁部との間を切削液が伝わることで、カバーの下方に切削液が漏れた場合、その切削液は傾斜部を流れ、誘導部によって底部に落ちるように誘導される。したがって、カバーの端部と第1側壁部との間を切削液が伝わってもその切削液がベッド上に落ちることを抑制することができる。この結果、ベッドとスプラッシュガードとの接続部分等の意図しない個所から機外に切削液が流れ出ることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態における工作機械の構成を示す概略図である。
図2図1に示す工作機械の一部を側方からみた概略図である。
図3】変形例1の誘導部を図2と同じ視点で示す概略図である。
図4】変形例2の誘導部を図2と同じ視点で示す概略図である。
図5】変形例3の誘導部を図2と同じ視点で示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る工作機械について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0011】
〔実施の形態〕
図1は、実施の形態における工作機械10の構成を示す概略図である。工作機械10は、主軸12に取り付けられた切削用の工具14により図示しない加工対象物を加工する。なお、加工対象物はワークとも呼ばれる。
【0012】
工作機械10は、主軸12と、上下方向に平行な回転軸を中心に主軸12を支持する主軸頭16と、主軸頭16を上下方向に移動させるコラム18と、加工対象物を固定して支持するテーブル20と、テーブル20を第1の方向および第1の方向とは交差する第2の方向に移動させるテーブル駆動部22とを備える。
【0013】
第1の方向と第2の方向とは互いに直交しているものとし、第1の方向はY方向とし、第2の方向はX方向とする。また、Y方向およびX方向に直交する方向はZ方向とする。なお、重力が働く方向である下方向は−Z方向であり、上方向は+Z方向である。主軸12のZ方向への移動と、テーブル20のX方向およびY方向への移動とによって、工作機械10は、3次元に加工対象物に対して加工を行うことができる。
【0014】
工具14は、工具ホルダ24に保持されている。工具ホルダ24は、主軸12に着脱可能であり、工具14は、工具ホルダ24を介して主軸12に取り付けられる。工具ホルダ24が主軸12の先端部に設けられた装着穴(図示略)に挿入されることによって、工具14が主軸12に取り付けられる。工具14は、主軸12と一緒に回転する。工作機械10は、主軸12に取り付ける工具14を自動工具交換装置26により交換可能なマシニングセンタとして構成されている。自動工具交換装置26は、各々が工具ホルダ24に保持された複数の工具14を収納(保持)可能なツールマガジン28を有する。工具14としては、例えば、ヘール工具、ドリル、エンドミル、フライス等が挙げられる。
【0015】
テーブル20は、主軸12の下方に配置されている。テーブル20の上面には、X方向に直線状に延びたロック溝30がY方向に沿って所定の間隔をあけて複数形成されている。加工対象物は、図示しないワーク固定治具を介してテーブル20に固定されてもよい。ワーク固定治具は、ロック溝30を利用してテーブル20の上面に固定できるように構成される。
【0016】
テーブル駆動部22は、ベッド32に支持されている。テーブル駆動部22は、Y軸スライド部34、サドル36、および、X軸スライド部38を有する。サドル36は、Y軸スライド部34を介してベッド32に対してY方向に移動可能に支持されている。テーブル20は、X軸スライド部38を介してサドル36に対してX方向に移動可能に支持されている。
【0017】
サドル36には、ベッド32に対してサドル36をY方向に移動させる図示しないY軸用の移動機構が接続されており、テーブル20には、サドル36に対してテーブル20をX方向に移動させる図示しないX軸用の移動機構が接続されている。このY軸用の移動機構およびX軸用の移動機構の各々は、例えば、サーボモータの回転運動を直進運動に変換してサドル36およびテーブル20に伝達する機構である。各々の移動機構は、例えばボールネジおよびナット等を有する。Y軸用の移動機構およびX軸用の移動機構は、周知のものを用いることができる。
【0018】
工作機械10には、工作機械10の加工領域を囲い、加工によって発生した切粉や切屑等の切削片および切削液が周囲に飛散することを防止するためのスプラッシュガード40が設けられている。なお、加工領域には、上記の主軸12、主軸頭16、コラム18、テーブル20およびテーブル駆動部22の他に、加工時に工具14に向けて切削液を吐出するノズル(図示略)が設けられている。
【0019】
ここで、工作機械10には、加工時に発生した切粉および切削液から、上述したY軸用の移動機構およびX軸用の移動機構を保護するために、Y軸用の移動機構およびX軸用の移動機構のそれぞれを上方側から覆い隠す複数のテレスコピックカバーが設けられている。
【0020】
図2は、工作機械10の一部を側方からみた概略図である。Y軸用の移動機構を覆い隠すテレスコピックカバー50は、テーブル20(サドル36)のY方向の移動に応じて伸縮する。図2では、テーブル20(サドル36)のY方向の移動に応じて伸縮するテレスコピックカバー50の一部が示され、テーブル20(サドル36)のX方向の移動に応じて伸縮するテレスコピックカバーは省略されている。
【0021】
本実施の形態では、説明を簡単にするために、テレスコピックカバー50は3つのカバー片51a〜51cを有し、これら3つのカバー片51a〜51cが順次入れ子状に組み入れられることで、伸縮可能なテレスコピックカバー50が構成されているものとする。
【0022】
テレスコピックカバー50の端部は、加工領域の四方を囲うスプラッシュガード40における4つの側面カバーのなかの1つの側面カバーに当接する。具体的には、コラム18に対して+Y方向または−Y方向の側面カバーである。なお、テレスコピックカバー50の先端に何らかの部材が取り付けられ、その部材が側面カバーに当接する場合、テレスコピックカバー50の端部はその部材を含む。
【0023】
+Y方向または−Y方向の側面カバーは、第1側壁部42、傾斜部44、第2側壁部46および底部48を有する。第1側壁部42は、垂直に延びており、テレスコピックカバー50の端部が当接する。
【0024】
傾斜部44は、第1側壁部42とテレスコピックカバー50の端部との間を伝わる切削液をスプラッシュガード40の内部側に向かって下方に流す部位である。この傾斜部44は、第1側壁部42からテレスコピックカバー50の伸縮方向に沿ってスプラッシュガード40の内部側に向かうほど低くなるように傾斜する傾斜面Fを有する。この傾斜部44の幅は、テレスコピックカバー50の幅以上とされる。なお、傾斜部44およびテレスコピックカバー50の幅は、テレスコピックカバー50の伸縮方向とは直交する方向の長さである。
【0025】
第2側壁部46は、第1側壁部42よりもスプラッシュガード40の内部側に位置しており、傾斜部44の下端から下方に向かって垂直に延びている。
【0026】
底部48は、切削液を受ける部位であり、第2側壁部46から傾斜部44の下端よりもスプラッシュガード40の内部側に水平に延びる水平部位48aを有する。この水平部位48aは、ベッド32においてその上面の端部から上方に突出するよう形成される凸部32a上に載置されている。
【0027】
水平部位48aの先端には、下方に向かって延びる突起48bが設けられる。なお、突起48bの設置位置は、ベッド32の凸部32aよりもスプラッシュガード40の内部側であれば水平部位48aの先端以外であってもよい。また、突起48bの下端は、ベッド32と隙間を隔てているが当接していてもよい。
【0028】
工作機械10では、このようなスプラッシュガード40の内部に誘導部60が備えられる。誘導部60は、傾斜部44から落ちる切削液を底部48に誘導する部位であり、傾斜部44の下端よりもスプラッシュガード40の内部側に配置される。この誘導部60は、傾斜部44の下端からテレスコピックカバー50の伸縮方向に沿ってスプラッシュガード40の内部側に向かうほど高くなるように傾斜する傾斜部位60aを有する。この傾斜部位60aは、図示しない支持部材を介してベッド32に固定される。
【0029】
なお、傾斜部位60aの傾斜角度θ2が傾斜部44の傾斜角度θ1よりも大きい場合、切削液が傾斜部44を勢いよく流れ落ちても、その切削液をスプラッシュガード40の内部側に向かうことを抑止することができる。したがって、傾斜部位60aの傾斜角度θ2が傾斜部44の傾斜角度θ1よりも大きいことが好ましい。
【0030】
傾斜部位60aと傾斜部44との連結部分には貫通孔HLが設けられる。この貫通孔HLは、垂直に設けられていてもよく、テレスコピックカバー50側の開口の位置よりも底部48側の開口の位置が側面カバー側に近づくように斜めに設けられていてもよい。
【0031】
以上のように、本実施の形態の工作機械10では、第1側壁部42とテレスコピックカバー50の端部との間を切削液が伝わることで、テレスコピックカバー50の下方に切削液が漏れた場合、その切削液は第1側壁部42を流れて傾斜部44に至る。傾斜部44に至った切削液は傾斜部44を流れ、誘導部60によって貫通孔HLから底部48に落ちるように誘導される。
【0032】
したがって、本実施の形態の工作機械10によれば、テレスコピックカバー50の端部と第1側壁部42との間を切削液が伝わってもその切削液がベッド32上に落ちることを抑制することができる。この結果、ベッド32の凸部32aとスプラッシュガード40の底部48との間から機外に切削液が流れ出ることがなく、意図しない個所から機外に切削液が流れ出ることが抑制される。
【0033】
また、底部48では、水平部位48aからベッド32に向かって突起48bが設けられている。これにより、仮に切削液が誘導部60の貫通孔HLからベッド32上に落ちて飛散しても、その飛散した切削液がベッド32の凸部32aと底部48との間に向かうことが突起48bにより抑制される。
【0034】
〔変形例〕
以上、本発明の一例として上記実施の形態が説明されたが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0035】
[変形例1]
図3は、変形例1の誘導部70を図2と同じ視点で示す概略図である。変形例1の誘導部70は、上記実施の形態の傾斜部位60aおよび貫通孔HLに加えて、貫通孔HLを通過して落ちる切削液がスプラッシュガード40の内部側に向かうことを防ぐ防壁部70aをさらに有する。
【0036】
この防壁部70aは、第2側壁部46に沿って上下方向に延びている。また、防壁部70aは貫通孔HLを挿通しており、その挿通部分が溶接等により傾斜部位60aに固定される。この防壁部70aは板状部材とされてもよい。防壁部70aの上端は、傾斜部44の下端よりも上方に位置し、防壁部70aの下端は傾斜部44の下端よりも下方に位置している。なお、防壁部70aの下端は、底部48と隙間を隔てているが当接していてもよい。
【0037】
傾斜部44を切削液が流れた場合、その切削液は誘導部70の貫通孔HLを通過して落ちる。このとき、防壁部70aは、スプラッシュガード40の内部側に切削液が向かうことを防ぐ。したがって、変形例1の誘導部70によれば、切削液が傾斜部44を勢いよく流れ落ちても、その切削液をスプラッシュガード40の内部側に向かうことを抑止することができる。
【0038】
また、防壁部70aの下端が傾斜部44の下端よりも下方に位置していることで、底部48に落ちた切削液がベッド32に飛散することを抑えることができる。
【0039】
[変形例2]
図4は、変形例2の誘導部80を図2と同じ視点で示す概略図である。変形例2の誘導部80は、防壁部80aを有しているが、傾斜部位60aおよび貫通孔HLがない。この防壁部80aは、傾斜部44と連結されておらず、第2側壁部46に沿って上下方向に延びている。ただし、防壁部80aは傾斜部44と連結されていてもよい。防壁部80aが傾斜部44と連結される場合、その連結部分には貫通孔が形成される。傾斜部44の傾斜の延長線Lよりも上方に防壁部80aの上端が位置し、その延長線Lよりも下方に防壁部80aの下端が位置している。つまり、傾斜面Fをスプラッシュガード40の内部側に延長した場合にその延長した傾斜面よりも上方に防壁部80aの上端が位置し、当該傾斜面よりも下方に防壁部80aの下端が位置する。なお、防壁部80aの下端は、底部48と隙間を隔てているが当接していてもよい。
【0040】
変形例2の誘導部80のように傾斜部位60aおよび貫通孔HLがなくても、傾斜部44から落ちる切削液は、防壁部80aによって、スプラッシュガード40の内部側に向かうことが防止される。したがって、変形例2の誘導部80によれば、変形例1の誘導部70と同様に、切削液が傾斜部44を勢いよく流れ落ちても、その切削液をスプラッシュガード40の内部側に向かうことを抑止することができる。
【0041】
[変形例3]
図5は、変形例3の誘導部90を図2と同じ視点で示す概略図である。変形例3の誘導部90は、防壁部90aを有しているが、傾斜部位60aおよび貫通孔HLがない。この防壁部90aは、下方に向かうほど第2側壁部46に近づくように傾斜している。防壁部90aの上端は傾斜部44の上端よりも上方に位置し、防壁部90aの下端は傾斜部44の下端よりも下方に位置している。なお、防壁部90aの下端は、底部48と隙間を隔てているが当接していてもよい。
【0042】
変形例3の誘導部90では、防壁部90aが下方に向かうほど第2側壁部46に近づくように傾斜していることで、傾斜部44から落ちる切削液を底部48における第2側壁部46側に誘導することができる。したがって、防壁部90aの下端から底部48に落ちた切削液がベッド32に飛散することを抑えることができる。
【0043】
[変形例4]
上記実施の形態では、テーブル20(サドル36)のY方向の移動に応じてY方向に伸縮するテレスコピックカバー50の端部が側面カバーに当接した。しかし、テーブル20(サドル36)のX方向の移動に応じてX方向に伸縮するテレスコピックカバーの端部が側面カバーに当接してもよい。その場合、X方向に伸縮するテレスコピックカバーが当接する側面カバーには上記の第1側壁部42、傾斜部44、第2側壁部46および底部48が設けられ、スプラッシュガード40の内部側には誘導部60、70、80および90のいずれかが設けられる。
【0044】
[変形例5]
上記実施の形態では、第2側壁部46が第1側壁部42よりもスプラッシュガード40の内部側に位置していたが、第1側壁部42を通る直線上に位置していてもよい。この場合、第2側壁部46は、傾斜部44の上端から下方に垂直に延びることになる。要するに、第2側壁部46は、傾斜部44の下方に垂直に延びていればよい。
【0045】
[変形例6]
上記実施の形態では、テレスコピックカバー50が採用されたが、移動機構を保護する伸縮可能なカバーが採用されていればテレスコピックカバー50に限定されない。
【0046】
[変形例7]
上記実施の形態および上記変形例1〜6は、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0047】
〔技術的思想〕
上記実施の形態および変形例から把握し得る技術的思想について、以下に記載する。
【0048】
工作機械(10)は、ベッド(32)と、ベッド(32)に対しサドル(36)を第1の方向に移動させる移動機構およびサドル(36)に対しテーブル(20)を第1の方向とは交差する第2の方向に移動させる移動機構のそれぞれを保護する伸縮可能なカバー(50)と、ベッド(32)に取り付けられサドル(36)、テーブル(20)およびカバー(50)を囲うスプラッシュガード(40)と、を有する。スプラッシュガード(40)は、カバー(50)の端部が当接する第1側壁部(42)と、第1側壁部(42)からカバー(50)の伸縮方向に沿ってスプラッシュガード(40)の内部側に向かうほど低くなるように傾斜し、第1側壁部(42)とカバー(50)の端部との間を伝わる切削液をスプラッシュガード(40)の内部側に向けて下方に流す傾斜部(44)と、傾斜部(44)から下方に垂直に延びる第2側壁部(46)と、第2側壁部(46)から傾斜部(44)の下端よりもスプラッシュガード(40)の内部側に水平に延び、切削液を受ける底部(48)と、を有する。工作機械(10)は、傾斜部(44)の下端よりもスプラッシュガード(40)の内部側に配置され、傾斜部(44)から落ちる切削液を底部(48)に誘導する誘導部(60、70、80、90)を備える。
【0049】
これにより、カバー(50)の端部と第1側壁部(42)との間を切削液が伝わってもその切削液がベッド(32)上に落ちることを抑制することができる。この結果、ベッド(32)とスプラッシュガード(40)との間から機外に切削液が流れ出ることがなく、意図しない個所から機外に切削液が流れ出ることが抑制される。
【0050】
誘導部(60)は、傾斜部(44)の下端からカバー(50)の伸縮方向に沿ってスプラッシュガード(40)の内部側に向かうほど高くなるように傾斜する傾斜部位(60a)と、傾斜部位(60a)と傾斜部(44)の下端との連結部分に設けられる貫通孔(HL)と、を有していてもよい。これにより、誘導部(60)は、貫通孔(HL)から底部(48)に落ちるように誘導することができる。
【0051】
誘導部(60)の傾斜部位(60a)の傾斜角度(θ2)は、傾斜部(44)の傾斜角度(θ1)よりも大きいことが好ましい。これにより、切削液が傾斜部(44)を勢いよく流れ落ちても、誘導部(60)はスプラッシュガード(40)の内部側に切削液が向かうことを抑止することができる。
【0052】
誘導部(70、80、90)は、上下方向に延び、傾斜部(44)から落ちる切削液がスプラッシュガード(40)の内部側に向かうことを防ぐ防壁部(70a、80a、90a)を有していてもよい。これにより、切削液が傾斜部(44)を勢いよく流れ落ちても、防壁部(70a、80a、90a)はスプラッシュガード(40)の内部側に切削液が向かうことを抑止することができる。
【0053】
防壁部(70a、80a、90a)の下端は傾斜部(44)の傾斜の延長線(L)よりも下方に位置し、防壁部(70a、80a、90a)の上端は延長線(L)よりも上方に位置していることが好ましい。これにより、切削液が傾斜部(44)を勢いよく流れ落ちても、防壁部(70a、80a、90a)はスプラッシュガード(40)の内部側に切削液が向かうことを抑止することができる。
【符号の説明】
【0054】
10…工作機械 20…テーブル
32…ベッド 36…サドル
40…スプラッシュガード 42…第1側壁部
44…傾斜部 46…第2側壁部
48…底部 50…テレスコピックカバー
60、70、80、90…誘導部
図1
図2
図3
図4
図5