特許第6581260号(P6581260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6581260
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】エレベータの注意喚起システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20190912BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   B66B3/00 L
   B66B3/00 P
   B66B3/00 F
   B66B3/00 G
   B66B11/02 P
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-142714(P2018-142714)
(22)【出願日】2018年7月30日
【審査請求日】2018年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 裕
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−124189(JP,A)
【文献】 特開2007−230733(JP,A)
【文献】 特開2000−026037(JP,A)
【文献】 特開2010−195537(JP,A)
【文献】 特開2006−209585(JP,A)
【文献】 特開2017−077929(JP,A)
【文献】 特開2011−068440(JP,A)
【文献】 再公表特許第2017/056183(JP,A1)
【文献】 特開2016−037387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00─ 3/02
B66B 11/00─11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのカゴに乗車した乗客を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段により撮影された画像を保持する画像格納手段と、
前記撮像手段により新たに撮影された画像を前記画像格納手段が保持する画像と照合することにより、前記カゴに乗車した乗客の忘れ物の有無を推定する画像処理手段と、
前記カゴに乗車した乗客が忘れ物をしていると推定された場合に、忘れ物の確認を促すメッセージを出力するメッセージ出力手段と、を備え
前記画像格納手段は、前記撮像手段により撮影された画像のうち、乗客の顔と手荷物とが映った画像を保持し、
前記画像処理手段は、前記撮像手段により新たに撮影された撮影画像に映る乗客と同一人物を映していると推定される画像を参照画像として前記画像格納手段から取り出し、前記参照画像に映っている手荷物が前記撮影画像に映っていない場合に、乗客が忘れ物をしていると推定することを特徴とするエレベータの注意喚起システム。
【請求項2】
前記撮像手段は前記カゴに設置された複数のカメラを含み、これら複数のカメラにより前記カゴに乗車した乗客を異なる方向から撮影することを特徴とする請求項1に記載のエレベータの注意喚起システム。
【請求項3】
前記メッセージ出力手段は、前記メッセージを前記カゴに設置されたスピーカから音声出力する、または、前記メッセージを前記カゴに乗車した乗客の携帯端末に送信して表示させることを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータの注意喚起システム。
【請求項4】
前記画像処理手段は、さらに、前記画像格納手段が保持する画像を用いた統計処理により忘れ物となることが多い物体を予測し、該物体の忘れ物が多い旨のメッセージをエレベータの乗場に設置された表示装置に表示させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエレベータの注意喚起システム。
【請求項5】
前記画像処理手段は、さらに、前記新たに撮影された画像を解析することにより、前記カゴに乗車した乗客の特徴が予め登録された不審人物の特徴と一致するか否かを判定し、一致する場合はエレベータ管理者に対して所定の通知を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエレベータの注意喚起システム。
【請求項6】
前記画像処理手段は、さらに、前記新たに撮影された画像を解析することにより、前記カゴに乗車した乗客が、事前に取得した天気情報により示される天気に適した用品を所持しているか否かを判定し、
前記メッセージ出力手段は、前記カゴに乗車した乗客が前記用品を所持していないと判定された場合に、前記用品の所持を促すメッセージをさらに出力することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエレベータの注意喚起システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの注意喚起システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータのカゴ内や乗場でカメラにより撮影された画像を処理し、得られた情報を用いてエレベータの動作を制御することが行われている。近年では、画像処理技術の進展に伴って、カメラにより撮影された画像から多くの情報を精度よく得られるようになってきている。そこで、こうした画像処理により得られる情報を、エレベータの動作制御のみならず、エレベータの乗客の利便性を向上させるための様々な用途で利用することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−114586号公報
【特許文献2】特開2004−10303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、エレベータのカゴに乗車した乗客を撮影した画像を処理することで得られる情報を利用して乗客に対する注意喚起を行うことで、乗客の利便性を向上させることができる、エレベータの注意喚起システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るエレベータの注意喚起システムは、撮像手段と、画像格納手段と、画像処理手段と、メッセージ出力手段と、を備える。撮像手段は、エレベータのカゴに乗車した乗客を撮影する。画像格納手段は、前記撮像手段により撮影された画像を保持する。画像処理手段は、前記撮像手段により新たに撮影された画像を前記画像格納手段が保持する画像と照合することにより、前記カゴに乗車した乗客の忘れ物の有無を推定する。メッセージ出力手段は、前記カゴに乗車した乗客が忘れ物をしていると推定された場合に、忘れ物の確認を促すメッセージを出力する。前記画像格納手段は、前記撮像手段により撮影された画像のうち、乗客の顔と手荷物とが映った画像を保持し、前記画像処理手段は、前記撮像手段により新たに撮影された撮影画像に映る乗客と同一人物を映していると推定される画像を参照画像として前記画像格納手段から取り出し、前記参照画像に映っている手荷物が前記撮影画像に映っていない場合に、乗客が忘れ物をしていると推定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は、エレベータのカゴ内の様子を示す図である。
図3図3は、撮影画像と参照画像の一例を示す図である。
図4図4は、撮影画像と参照画像の一例を示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの動作例を示すフローチャートである。
図6図6は、第2実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの構成例を示すブロック図である。
図7図7は、第3実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの構成例を示すブロック図である。
図8図8は、乗場操作盤の液晶インジケータに表示するメッセージの表示例を示す図である。
図9図9は、第4実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの動作例を示すフローチャートである。
図10図10は、第5実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、本発明を適用したエレベータの注意喚起システムの実施形態について詳細に説明する。実施形態の注意喚起システムは、エレベータのカゴに乗車した乗客を撮影した画像を用いて乗客の忘れ物の有無を推定し、乗客が忘れ物をしていると推定された場合に、忘れ物の確認を促すメッセージを出力する。以下では、いくつかの実施形態を例示するが、これらの実施形態を適宜組み合わせて実施してもよい。なお、以下の説明において、同様の機能を持つ構成要素については同一の符号を付して、重複した説明を適宜省略する。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの構成例を示すブロック図であり、図2は、エレベータのカゴ内の様子を示す図である。本実施形態に係るエレベータの注意喚起システムは、図1に示すように、カメラ1A,1B(撮像手段)と、画像ストレージ2(画像格納手段)と、画像処理エンジン3(画像処理手段)と、音声案内装置4(メッセージ出力手段)とを備える。
【0009】
カメラ1A,1Bは、カゴ10に乗車する乗客を撮影する。カメラ1A,1Bは、エレベータのカゴ10に乗車した乗客を互いに異なる方向から撮影できるように、例えばカゴ10内の天井付近に設置される(図2参照)。なお、本実施形態では2つのカメラ1A,1Bを用いているが、乗客を撮影するカメラの数は任意である。ただし、カゴ10内の乗客やその乗客が所持する手荷物を精度よく識別するには、カメラの数が多いほどよい。本実施形態のように2つのカメラ1A,1Bを用いる場合は、互いの撮影方向が直交するように設置するとよい。カメラ1A,1Bは、カゴ10に乗客が乗車するたびに撮影を行って、画像を画像処理エンジン3に送る。
【0010】
画像ストレージ2は、カメラ1A,1Bにより撮影された画像を保持するストレージ装置である。画像ストレージ2としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などを用いることができる。本実施形態では、画像処理エンジン3が、カメラ1A,1Bにより撮影された乗客の画像のうち、手荷物を所持していると判断した乗客の顔と手荷物とが映った画像を、その画像が撮影された時刻を示すタイムスタンプとともに画像ストレージ2に格納する。なお、画像そのものではなく、画像から抽出される乗客の顔や手荷物の特徴量、あるいは、その特徴量に基づいて識別される乗客や手荷物の名前や識別番号などを表すラベルを画像ストレージ2に格納してもよいし、これらの情報を画像とともに画像ストレージ2に格納してもよい。また、カメラ1A,1Bにより撮影された画像を加工(例えば、トリミング、切り出し、合成、再構成など)して画像ストレージ2に格納してもよい。画像ストレージ2が保持する画像は、例えばカメラ1A,1Bにより撮影されてから所定時間(例えば10時間)が経過すると自動的に削除される構成としてもよい。
【0011】
画像処理エンジン3は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサが所定のプログラムに従って動作することにより、様々な画像処理を実行する。特に、本実施形態の画像処理エンジン3は、カメラ1A,1Bにより新たに撮影された画像を画像ストレージ2が保持する画像と照合することにより、カゴ10に乗車した乗客の忘れ物の有無を推定する。この推定処理の詳細は後述する。また、画像処理エンジン3は、上述のように画像ストレージ2に対する画像の格納を制御する。なお、画像処理エンジン3のプロセッサとしては、プログラムに従って動作する汎用のプロセッサだけでなく、目的に応じて設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などを用いてもよい。
【0012】
音声案内装置4は、カゴ10に乗車した乗客が忘れ物をしていると画像処理エンジン3によって推定された場合に、例えば「忘れ物はありませんか」といった、乗客に対して忘れ物の確認を促すメッセージを、カゴ10内に設置されたカゴ内スピーカ11(図2参照)から音声出力する。なお、忘れ物と推定される手荷物が何であるかも画像処理エンジン3によって識別される場合は、例えば「○○をお忘れではありませんか」といったメッセージをカゴ内スピーカ11から音声出力してもよい。
【0013】
ここで、カゴ10に乗車した乗客の忘れ物の有無を推定する処理の具体例について説明する。カメラ1A,1Bは、上述のように、カゴ10に乗客が乗車するたびに撮影を行って、画像処理エンジン3に画像を送る。画像処理エンジン3は、カゴ10に乗客が乗車するたび、つまりカメラ1A,1Bにより新たに画像が撮影されるたびに、新たに撮影された画像(以下、これを「撮影画像」と呼ぶ)を画像ストレージ2が保持する画像と照合する。
【0014】
すなわち、画像処理エンジン3は、まず、画像ストレージ2が保持する画像の中から、撮影画像に映る乗客と同一人物を映していると推定される画像を探索する。この探索には、例えば、撮影画像や画像ストレージ2が保持する各画像から顔領域を検出し、その顔領域の画像から抽出される特徴量間の距離が閾値以下のものを探すなど、公知の方法を採用できる。そして、撮影画像と同じ乗客を映していると推定される画像が見つかった場合は、その画像を参照画像として画像ストレージ2から取り出す。このとき、撮影画像と同じ乗客を映していると推定される画像が複数見つかった場合は、タイムスタンプが現在時刻に最も近い画像を参照画像として取り出す。
【0015】
なお、撮影画像と同じ乗客を映していると推定される画像が見つからない場合は、画像処理エンジン3は、撮影画像を解析することにより、その撮影画像に映る乗客が手荷物を所持しているか否かを確認する。そして、撮影画像に映る乗客が手荷物を所持している場合は、その撮影画像を後に参照画像として利用可能にするために画像ストレージ2に格納する。撮影画像に映る乗客が手荷物を所持していなければ、その撮影画像は破棄される。
【0016】
次に、画像処理エンジン3は、撮影画像を画像ストレージ2から取り出した参照画像と比較して、乗客が所持する手荷物の変化を確認する。そして、画像処理エンジン3は、参照画像に映っている手荷物が撮影画像に映っていない場合、乗客が忘れ物をしていると推定する。例えば図3(a)に示す撮影画像と図3(b)に示す参照画像を比較する場合、図3(b)の参照画像に映る手荷物が、図3(a)の撮影画像には映っていないため、乗客が忘れ物をしていると推定する。
【0017】
なお、複数の乗客が同時にカゴ10に乗車する場合は、これらの乗客が手荷物を持ち替えることも想定される。この場合、これら複数の乗客がカゴ10に再乗車したときに個々の乗客が所持する手荷物が変化していたとしても、忘れ物はない。そこで、画像処理エンジン3は、個々の乗客が所持する手荷物の変化ではなく、あくまで参照画像に映っている手荷物が撮影画像に映っていない場合に、乗客が忘れ物をしていると推定する。例えば図4(a)に示す撮影画像と図4(b)に示す参照画像を比較する場合、これらの画像間では個々の乗客が所持する手荷物は変化しているが、図4(b)の参照画像に映る手荷物はすべて図4(a)の撮影画像に映っているため、忘れ物はない推定する。
【0018】
画像処理エンジン3は、以上の処理によってカゴ10に乗車した乗客が忘れ物をしていると推定した場合、音声案内装置4に対してメッセージの出力を指示する。これにより、カゴ内スピーカ11から例えば「忘れ物はありませんか」といったメッセージが音声出力される。
【0019】
次に、本実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの動作について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの動作例を示すフローチャートであり、カゴ10に乗客が乗車するたびに実施される処理の流れを示している。
【0020】
カゴ10に乗客が乗車すると、まず、カメラ1A,1Bが、カゴ10に乗車した乗客を撮影する(ステップS101)。次に、画像処理エンジン3が、ステップS101で撮影された撮影画像を画像ストレージ2が保持する画像と照合し(ステップS102)、画像ストレージ2が保持する画像の中に、撮影画像に映る乗客と同一の乗客を映した画像があるか否かを判定する(ステップS103)。
【0021】
ここで、画像ストレージ2が保持する画像の中に、撮影画像に映る乗客と同一の乗客を映した画像がなければ(ステップS103:No)、画像処理エンジン3は、ステップS101で撮影された撮影画像を解析することにより、その撮影画像に映る乗客が手荷物を所持しているか否かを確認する(ステップS104)。そして、撮影画像に映る乗客が手荷物を所持している場合は(ステップS104:Yes)、その撮影画像を画像ストレージ2に格納して(ステップS105)、処理を終了する。一方、撮影画像に映る乗客が手荷物を所持していなければ(ステップS104:No)、その撮影画像を破棄して処理を終了する。
【0022】
また、画像ストレージ2が保持する画像の中から、撮影画像に映る乗客と同一の乗客を映した画像が見つかった場合は(ステップS103:Yes)、画像処理エンジン3は、その画像を参照画像として画像ストレージ2から取り出して、撮影画像と参照画像とを比較することにより、参照画像に映っているが撮影画像には映っていない手荷物があるか否かを判定する(ステップS106)。ここで、参照画像に映っているが撮影画像には映っていない手荷物がなければ(ステップS106:No)、そのまま処理を終了する。一方、参照画像に映っているが撮影画像には映っていない手荷物があれば(ステップS106:Yes)、画像処理エンジン3は、カゴ10に乗車した乗客が忘れ物をしていると推定し、音声案内装置4に対してメッセージの出力を指示する。これにより、カゴ内スピーカ11から忘れ物の確認を促すメッセージが音声出力される(ステップS107)。
【0023】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態に係るエレベータの注意喚起システムは、エレベータのカゴ10に乗車した乗客をカメラ1A,1Bで撮影し、その画像を画像ストレージ2が保持する画像と照合することにより、乗客の忘れ物の有無を推定する。そして、乗客が忘れ物をしていると推定された場合に、忘れ物の確認を促すメッセージをカゴ内スピーカ11から音声出力するようにしている。このように、本実施形態に係るエレベータの注意喚起システムは、カゴ10に乗車した乗客が忘れ物をしていると推定される場合に忘れ物の確認を促すメッセージを出力し、乗客に対する注意喚起を行うようにしているので、乗客の利便性を向上させることができる。
【0024】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態は、忘れ物の確認を促すメッセージの出力方法が第1実施形態と異なる。つまり、上述の第1実施形態では、忘れ物の確認を促すメッセージをカゴ内スピーカ11から音声出力するようにしていたが、本実施形態では、忘れ物の確認を促すメッセージを乗客の携帯端末に送信して表示させる。
【0025】
図6は、第2実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの構成例を示すブロック図である。本実施形態では、図6に示すように、画像処理エンジン3に対して、音声案内装置4の代わりにメールサーバ5が接続されている。メールサーバ5は、予め登録された乗客の携帯端末の電子メールアドレスを記憶し、画像処理エンジン3から特定の乗客を宛先に指定したメッセージの出力指示を受けると、その乗客の携帯端末に対して、忘れ物の確認を促すテキストによるメッセージを電子メール形式で送信して表示させる。
【0026】
本実施形態の画像処理エンジン3は、撮影画像を画像ストレージ2が保持する画像と照合した結果、カゴ10に乗車した乗客が忘れ物をしていると推定した場合、例えば、撮影画像や参照画像に映る乗客の顔の特徴量を元に乗客の識別を行う。なお、画像から検出される顔の特徴量を元に個人を識別する技術は公知であるため、詳細な説明は省略する。そして、画像処理エンジン3は、撮影画像や参照画像に映る乗客が予め登録された乗客である場合、その乗客を宛先に指定して、メッセージの出力をメールサーバ5に指示する。これにより、乗客の携帯端末に、例えば「忘れ物はありませんか」といった忘れ物の確認を促すメッセージが送信され、表示される。
【0027】
なお、本実施形態では、忘れ物の確認を促すメッセージを電子メール形式で乗客の携帯端末に送信するようにしているが、乗客の携帯端末にメッセージを送信する方法は電子メール形式に限らず、様々な方法で行うことができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、カゴ10に乗車した乗客が忘れ物をしていると推定された場合に、その乗客の携帯端末に忘れ物の確認を促すメッセージを送信して表示させるようにしているので、上述の第1実施形態と同様に、乗客に対する有効な注意喚起を行って、乗客の利便性を向上させることができる。また、本実施形態では、忘れ物の確認を促すメッセージをカゴ内スピーカ11から音声出力するのではなく、利用者の携帯端末に送信して表示させるようにしているので、忘れ物をしていると推定される乗客以外の他の乗客がカゴ10に同乗している場合に、他の乗客に煩わしさを感じさせることもない。
【0029】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態は、上述の第1実施形態に対して、カゴ10に乗車する前に忘れ物の傾向を乗客に知らせる機能を付加して、乗客の利便性をさらに向上させるようにしたものである。
【0030】
図7は、第3実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの構成例を示すブロック図である。本実施形態では、図7に示すように、画像処理エンジン3に対して、エレベータが設置された建物の各階の乗場に設けられた乗場操作盤20がさらに接続されている。乗場操作盤20は、例えば図8に示すように、乗場の乗客が乗場呼びを行うために操作する乗場呼びボタン21と、各種の情報を表示する液晶インジケータ22(表示装置)とを有する。
【0031】
本実施形態の画像処理エンジン3は、撮影画像を画像ストレージ2が保持する画像と照合した結果、カゴ10に乗車した乗客が忘れ物をしていると推定した場合、音声案内装置4に対してメッセージの出力を指示することで、忘れ物の確認を促すメッセージをカゴ内スピーカ11から音声出力させるとともに、参照画像から、忘れ物と推定された手荷物の部分を切り出して、統計処理を行うための画像として画像ストレージ2に一定期間(例えば1週間)保持させる。そして、画像処理エンジン3は、所定のタイミングで画像ストレージ2が保持する手荷物の画像を統計処理することにより、忘れ物となることが多い物体を予測し、例えば乗場操作盤20の乗場呼びボタン21が操作されたタイミングに合わせてメッセージの出力を乗場操作盤20に指示することで、該物体の忘れ物が多い旨のメッセージを、乗場操作盤20の液晶インジケータ22に表示させる。
【0032】
例えば、画像処理エンジン3は、画像ストレージ2に蓄積された手荷物の画像を用いた統計処理によって傘の忘れ物が多いと予測した場合、忘れ物となることが多い物体として傘を指定したメッセージの出力を、乗場操作盤20に対して指示する。これにより、乗場操作盤20の液晶インジケータ22には、例えば図8に示すように、「最近、傘の忘れ物が多くなっております。ご注意ください。」といったメッセージが表示される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、画像ストレージ2が保持する画像の統計処理により忘れ物となることが多い物体を予測し、該物体の忘れ物が多い旨のメッセージを乗場操作盤20の液晶インジケータ22に表示させるようにしているので、乗客がカゴ10に乗車する前に乗客に対する注意喚起を行うことができ、乗客の利便性をさらに向上させることができる。
【0034】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態は、上述の第1実施形態に対して、不審人物がカゴ10に乗車した場合にエレベータ管理者に通知する機能を付加したものである。
【0035】
本実施形態の画像処理エンジン3は、カメラ1A,1Bから撮影画像が送られると、その撮影画像を解析することにより、カゴ10に乗車した乗客の特徴が、予め登録された不審人物の特徴(例えば、マスクを着用している、サングラスを着用している、フードを頭から被っているなど)と一致するか否かを判定する。そして、一致すると判定した場合、画像処理エンジン3は、エレベータ管理者に対して不審人物がカゴ10に乗車したことを示す所定の通知を行う。
【0036】
なお、エレベータ管理者に対する通知は、不審人物の乗車をエレベータ管理者に知らせることができればよく、メッセージによる通知であっても警報の発報であってもよい。例えば、不審人物が乗車したことを示すメッセージをエレベータ管理者が滞在する管理室の端末に送信して表示させたり、管理室に設置されたスピーカから音声出力したり、管理室の警報装置を動作させたりすればよい。なお、不審人物の乗車をエレベータの管理者に通知する際に、カメラ1A,1Bが撮影した画像を併せて送信してもよい。
【0037】
ここで、本実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの動作について、図9を参照して説明する。図9は、本実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの動作例を示すフローチャートであり、カゴ10に乗客が乗車するたびに実施される処理の流れを示している。
【0038】
本実施形態では、ステップS201において、カメラ1A,1Bによりカゴ10に乗車した乗客が撮影されると、画像処理エンジン3が、まず、その撮影画像から乗客の映っている領域を検出して、撮影画像に映る乗客の特徴が、予め登録された不審人物の特徴と一致するか否かを判定する(ステップS202)。そして、撮影画像に映る乗客の特徴が不審人物の特徴と一致する場合(ステップ202:Yes)、画像処理エンジン3は、不審人物の乗車をエレベータ管理者に通知する(ステップS203)。一方、撮影画像に映る乗客の特徴が不審人物の特徴と一致しない場合は(ステップ202:Yes)、エレベータ管理者に対する通知は行われない。
【0039】
その後、画像処理エンジン3は、ステップS204に進んで、撮影画像と画像ストレージ2が保持する画像との照合を行う。なお、ステップS204〜ステップS209の処理は、図5のステップS102〜ステップS107の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、カメラ1A,1Bにより撮影された撮影画像を用いて不審人物がカゴ10に乗車したか否かを判定し、不審人物が乗車した場合はエレベータ管理者に通知するようにしているので、乗客に対する注意喚起だけでなく、エレベータ管理者に対する注意喚起を行うことができ、利便性をさらに向上させることができる。
【0041】
<第5実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態は、上述の第1実施形態に対して、天気に適した用品を所持することを乗客に促すメッセージを出力する機能を付加して、乗客の利便性をさらに向上させるようにしたものである。
【0042】
本実施形態に係るエレベータの注意喚起システムは、天気情報を配信するサーバに接続され、このサーバから天気情報を随時取得できる構成とされている。そして、本実施形態の画像処理エンジン3は、カメラ1A,1Bから撮影画像が送られると、その撮影画像を解析することにより、カゴ10に乗車した乗客が、事前に取得した天気情報により示される天気に適した用品(例えば傘や防寒具など)を所持しているか否かを判定する。そして、カゴ10に乗車した乗客が天気に適した用品を所持していなければ、音声案内装置4に対して、天気に適した用品の所持を促すメッセージの出力を指示する。これにより、例えば「雨が降りそうです。傘をお持ちですか」といったメッセージがカゴ内スピーカ11から音声出力される。
【0043】
ここで、本実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの動作について、図10を参照して説明する。図10は、本実施形態に係るエレベータの注意喚起システムの動作例を示すフローチャートであり、カゴ10に乗客が乗車するたびに実施される処理の流れを示している。
【0044】
本実施形態では、ステップS301において、カメラ1A,1Bによりカゴ10に乗車した乗客が撮影されると、画像処理エンジン3が、まず、その撮影画像から乗客および乗客が所持している物体が映っている領域を検出し、その撮影画像に映る乗客が、事前に取得した天気情報で示される天気に適した用品を所持しているか否かを判定する(ステップS302)。そして、撮影画像に映る乗客が天気に適した用品を所持していないと判定した場合(ステップ302:No)、画像処理エンジン3は、音声案内装置4に対して、天気に適した用品の所持を促すメッセージの出力を指示する。これにより、天気に適した用品の所持を促すメッセージがカゴ内スピーカ11から音声出力される(ステップS303)。一方、撮影画像に映る乗客が天気に適した用品を所持していると判定した場合は(ステップ302:Yes)、天気に適した用品の所持を促すメッセージの出力は行われない。
【0045】
その後、画像処理エンジン3は、ステップS304に進んで、撮影画像と画像ストレージ2が保持する画像との照合を行う。なお、ステップS304〜ステップS309の処理は、図5のステップS102〜ステップS107の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、カメラ1A,1Bにより撮影された撮影画像を用いてカゴ10に乗車した乗客が天気に適した用品を所持しているか否かを判定し、乗客が天気に適した用品を所持していなければ、その用品の所持を促すメッセージを出力するようにしているので、乗客の利便性をさらに向上させることができる。
【0047】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、エレベータのカゴに乗車した乗客を撮影した画像を処理することで得られる情報を利用して乗客に対する注意喚起を行うことで、乗客の利便性を向上させることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
1A,1B カメラ(撮像手段)、2 画像ストレージ(画像格納手段)、3 画像処理エンジン(画像処理手段)、4 音声案内装置(メッセージ出力手段)、5 メールサーバ(メッセージ出力手段)、10 カゴ、11 カゴ内スピーカ、22 液晶インジケータ(表示装置)。
【要約】
【課題】エレベータのカゴに乗車した乗客を撮影した画像を処理することで得られる情報を利用して乗客に対する注意喚起を行うことで、乗客の利便性を向上させる。
【解決手段】実施形態のエレベータの注意喚起システムは、撮像手段と、画像格納手段と、画像処理手段と、メッセージ出力手段と、を備える。撮像手段は、エレベータのカゴに乗車した乗客を撮影する。画像格納手段は、前記撮像手段により撮影された画像を保持する。画像処理手段は、前記撮像手段により新たに撮影された画像を前記画像格納手段が保持する画像と照合することにより、前記カゴに乗車した乗客の忘れ物の有無を推定する。メッセージ出力手段は、前記カゴに乗車した乗客が忘れ物をしていると推定された場合に、忘れ物の確認を促すメッセージを出力する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10