特許第6581261号(P6581261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セーレン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581261
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】布帛
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20190912BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20190912BHJP
   D01F 1/04 20060101ALI20190912BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20190912BHJP
【FI】
   D06M15/263
   D04B21/00 B
   D01F1/04
   D06M101:32
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-147496(P2018-147496)
(22)【出願日】2018年8月6日
(65)【公開番号】特開2019-143278(P2019-143278A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2018-25019(P2018-25019)
(32)【優先日】2018年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】窪田 和実
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−107611(JP,A)
【文献】 特開2006−037254(JP,A)
【文献】 特開平01−118678(JP,A)
【文献】 特開昭55−132715(JP,A)
【文献】 特開平11−012848(JP,A)
【文献】 特開昭63−264977(JP,A)
【文献】 特開2007−254905(JP,A)
【文献】 特開平08−120574(JP,A)
【文献】 特開2017−012067(JP,A)
【文献】 特開平11−137099(JP,A)
【文献】 特開2006−207087(JP,A)
【文献】 特開2016−035127(JP,A)
【文献】 特開2002−059773(JP,A)
【文献】 特開2003−89756(JP,A)
【文献】 特開平9−87947(JP,A)
【文献】 特開2004−270058(JP,A)
【文献】 特開2008−240196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B1/00−43/00
D04B1/00−1/28
21/00−21/20
D03D1/00−27/18
D06M13/00−15/715
D04D1/00−11/00
D06Q1/00−1/14
B60R13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が付与されてなる布帛であって、前記布帛は編物であり、少なくとも前記樹脂と接触する部分を構成する繊維が原着ポリエステル繊維であり、前記樹脂は布帛のウラ面には付与されず、布帛のオモテ面に部分的に付与され、且つ前記樹脂は布帛の最表面に露出している、布帛。
【請求項2】
前記布帛のオモテ面を構成する繊維が前記原着ポリエステル繊維である、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記布帛を構成する繊維全てが前記原着ポリエステル繊維である、請求項1に記載の布帛。
【請求項4】
前記原着ポリエステル繊維の総量に対する顔料の含有量が0.1〜10質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項5】
前記原着ポリエステル繊維の単糸繊度が0.1dtex以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は布帛に関する。詳しくは、樹脂が付与されてなる布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、優れた強度を有し、かつ生産量が多いため、汎用性が高く、様々な分野でポリエステル繊維が用いられている。ポリエステル繊維は、分子の結晶性が高く構造が緻密であるため染色しにくい繊維である。このため、ポリエステル繊維の染色には分散染料が用いられる。分散染料は、繊維の非晶部分の隙間から染料分子が繊維内部に拡散していくことで着色するものである。
【0003】
このように分散染料はポリエステル樹脂と化学的に結合しているわけではない。このため、分散染料で着色されたポリエステル繊維からなる布帛(以後、ポリエステル繊維布帛ということがある)に、例えば、風合加工やコーティング、プリント等により樹脂を付与した場合、分散染料が樹脂に対して溶解性、親和性を有するため、分散染料が布帛から樹脂層へ移行すること、いわゆる染料の移行昇華により、染料のブリード、耐熱性の低下、摩擦堅牢度の低下等の課題がある。
【0004】
このようなポリエステル繊維布帛の樹脂加工物の染料移行を抑制する方法として、特許文献1には、ポリエステル系繊維材料表面にバリアー層としてフッ素系樹脂、シラン樹脂などの撥水樹脂を処理する方法が開示されている。しかしながら、風合が粗硬になったり、着座感が悪くなったりするうえ、車輌用途に十分な染料移行抑制効果は得られていない。また、特許文献2には、ポリエステル系繊維材料表面を改質する方法としてオゾン処理を行なう方法が開示されている。しかしながら、車輌用途に十分な染料移行抑制効果は得られていない。さらに、特許文献3には、コーティング樹脂中に分散染料を吸着させる物質として微多孔性の無機物微粒子を含有させる方法が開示されている。しかしながら、風合が粗硬になったり、色が白くなるため所望の色を再現しにくくなったりするうえ、車輌用途に十分な染料移行抑制効果は得られていない。
【0005】
一方、特許文献4には、樹脂層と接する面を、カチオン染料で染色されたポリエステル繊維で編成する方法が開示されている。しかしながら、糸が熱に弱く脆化するため、車輌用途に十分な耐熱性がないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−174776号公報
【特許文献2】特開平5−287673号公報
【特許文献3】特開平2−251672号公報
【特許文献4】特開2014−29050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、ポリエステル繊維からなる布帛に樹脂が付与されてなる布帛であっても、樹脂への染料移行を抑制することができ、耐熱性、耐摩擦堅牢性に優れた布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、樹脂が付与されてなる布帛であって、前記布帛は編物であり、少なくとも前記樹脂と接触する部分を構成する繊維が原着ポリエステル繊維であり、前記樹脂は布帛のウラ面には付与されず、布帛のオモテ面に部分的に付与されて、且つ前記樹脂は布帛の最表面に露出している、布帛である。

【0009】
前記布帛のオモテ面を構成する繊維が前記原着ポリエステル繊維であることが好ましい。
【0010】
前記布帛を構成する繊維全てが前記原着ポリエステル繊維であることが好ましい。
【0011】
前記原着ポリエステル繊維の総量に対する顔料含有量が0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0012】
前記原着ポリエステル繊維の単糸繊度が0.1dtex以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリエステル繊維からなる布帛に樹脂が付与されてなる布帛であっても、樹脂への染料移行を抑制することができ、耐熱性、耐摩擦堅牢性に優れた布帛を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の布帛は、樹脂が付与されてなる布帛であって、少なくとも前記樹脂と接触する部分を構成する繊維として原着ポリエステル繊維を用いてなる布帛である。
【0015】
原着ポリエステル繊維は、水や油やアルコールなどに不溶で、かつ染料よりもはるかに大きな粒径を有する着色顔料(色素粒子)が、繊維内部に分散した状態で着色している。原着ポリエステル繊維は、色目が深く、濃く、しかも、洗濯や摩擦等による色落ちや汚染や色移り、日光による変色や熱による色素の移行等の問題が、前記着色顔料(色素粒子)よりも小さな粒径を有する分散染料で染色されたポリエステル繊維に比べておきにくい。本実施形態では、少なくとも布帛の樹脂と接触する部分を構成する繊維は、原着ポリエステル繊維で構成されている。これにより、布帛に樹脂を付与しても、樹脂に着色顔料が移行することを抑制することができる。したがって、着色顔料の移行によって生ずる不具合を軽減でき、耐熱性、耐摩擦堅牢性を向上させることができる。
【0016】
本実施形態に用いられる布帛としては、例えば、織編物や不織布等が挙げられる。
【0017】
本実施形態の布帛が織編物である場合、織編物の組織は、特に限定されず、従来公知の組織を用いることができる。具体的には、織物である場合、平織、綾織、朱子織などの織組織が挙げられる。編物は、緯編と経編とに大別される。緯編の場合、平編、ゴム編、パール編、両面編などの編組織が挙げられる。経編の場合、鎖編、デンビ編、コード編、アトラス編などの編組織が挙げられる。
【0018】
本実施形態の布帛が不織布である場合、その製造工程は特に限定されず、従来公知の製造工程を用いることができる。具体的には、ウェブの形成工程は、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法等が挙げられる。ウェブの繊維間結合工程は、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法、スチームジェット法等が挙げられる。
【0019】
本実施形態の布帛を構成する糸条には、少なくとも前記樹脂と接触する部分を構成する繊維として原着ポリエステル繊維からなる糸条を用いることが肝要である。
【0020】
原着ポリエステル繊維とは、繊維製造段階で着色されたポリエステル繊維を指す。このポリエステル繊維を構成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが使用できるが、汎用性の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0021】
ポリマーを着色する手段としては、特に限定されず、ポリマーの製造から繊維化に至る段階で、顔料を添加する、あるいは、ポリマーを一度ペレット化した後、顔料を添加し、エクストルーダーのような混練機によって混和した後、再ペレット化する手段などを用いることができる。
【0022】
顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、硫化カドミウム、酸化鉄、酸化クロム、群青などの無機顔料のほか、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、アンスラキノン系、ペリレン系、ポリノン系などの有機顔料も使用可能であり、これらを単独、または複数混合して用いることができる。なかでも、耐熱性、耐摩擦堅牢性の観点から、無機顔料が好ましい。
【0023】
原着ポリエステル繊維の総量に対する顔料の含有量は、特に限定されず、所望の色となるように適宜設定すればよい。原着ポリエステル繊維の総量に対する顔料の含有量は0.1〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。原着ポリエステル繊維の総量に対する顔料の含有量が0.1質量%以上であることにより、布帛を所望の色に着色することができる。15質量%以下であることにより、紡糸性を良好なものとすることができ、10質量%以下であることにより耐摩擦堅牢性を良好なものとすることができる。
【0024】
また、顔料の平均一次粒子径は、特に限定されず、分散性と発色性の観点から、20〜100nmであることが好ましく、より好ましくは30〜60nmである。
【0025】
原着ポリエステル繊維の糸繊度(総繊度)は、特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよいが、0.1〜1500dtexであることが好ましく、より好ましくは50〜1500dtexである。原着ポリエステル繊維の単糸繊度も、特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよいが、紡糸性の観点から0.1dtex以上であることが好ましく、より好ましくは0.5dtexであり、さらに好ましくは1.0dtex以上である。単糸繊度の上限値は特に限定されないが、風合の観点から5dtex以下であることが好ましい。
【0026】
本実施形態の布帛は、上述した原着ポリエステル繊維を用いて製織または製編した織編物基材または上述した原着ポリエステル繊維を用いた不織布基材に、樹脂を付与してなる。このとき、上述のように、布帛において少なくとも樹脂と接する部分を構成する繊維が、原着ポリエステル繊維で構成されていることが肝要である。布帛において樹脂と接する面(布帛のオモテ面)を構成する繊維が、上述した原着ポリエステル繊維で構成されていることが好ましい。布帛を構成する繊維全てを上述した原着ポリエステル繊維で構成することがより好ましい。
【0027】
布帛に対する樹脂の付与状態は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、布帛全体(オモテ面、ウラ面、内部)に含浸付与、布帛表面の全面(オモテ面、ウラ面)に塗布または積層付与、または布帛表面に部分的(柄状)に付与などが挙げられる。
【0028】
布帛への樹脂の付与方法は、特に限定されず、目的とする付与状態に応じて適宜選択すればよい。例えば、樹脂を含む樹脂溶液に布帛を浸漬し、これをマングルに通して搾り出すマングル−パッド法、樹脂溶液をリバースコーター、スプレーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター等の装置を用いて布帛に塗布するコーティング法などが挙げられる。
【0029】
本実施形態に用いられる樹脂としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0030】
本発明の布帛は、ポリエステル繊維からなる布帛に樹脂が付与されてなる布帛であっても、樹脂への染料移行を抑制することができ、耐熱性、耐摩擦堅牢性に優れているため、これらの性能を活かす様々な用途に用いることができる。例えば、自動車用シート、天井材、ダッシュボード、ドア内張材またはハンドルなどの自動車内装材をはじめとする各種車両のための内装材用途の他、ソファーや椅子のための表皮などのインテリア用途、靴、鞄、衣料品などに用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、各評価項目は、以下の方法に従った。
【0032】
[耐熱性]
幅100mm、長さ100mmの大きさの試験片を2枚採取した。採取した試験片の1枚を広口試薬瓶(共栓付250mL瓶、硬質ガラス製)の中に試験片を試薬瓶の側面に沿わせて入れ、110℃に調整された乾燥機内に400時間静置して熱処理した。熱処理後、試薬瓶を乾燥機から取り出し室温まで冷却した後、試薬片を試薬瓶から取り出した。
熱処理前(熱処理していない方の試験片)および熱処理後の試験片について、変退色用グレースケールにて判定した。
【0033】
[耐摩擦堅牢性]
幅30mm、長さ250mmの試験片を3枚採取した。
該試験片を学振型摩擦試験機(株式会社大栄科学精器製作所製)に、両面テープを用いて緩みがないように取り付けた。50mm四方の2種類の白綿布を、試験機の摩擦子(20mm四方の平板)にそれぞれかぶせ、付属の冶具で固定した。なお、2種類の白綿布とは、1つは乾布、1つは人工酸性汗液に10分間浸漬後、軽く絞ったもの、である。
試験は、摩擦子に試験機付属の錘を載せ、摩擦子に荷重1.96Nをかけた状態で、ストロークを100mmとし、30回(往復)/minサイクルにて100回摩擦した。
試験終了後、摩擦子にかぶせた2種類の白綿布を外した。摩擦処理前(摩擦処理していない方の試験片)および2種類の白綿布の汚染状態を、汚染用グレースケールにて判定した。
【0034】
[実施例1]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬に84dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)、ミドル筬とバック筬に84dtex/36fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を導糸して、以下に示す組織1で編成して、72コース/25.4mm、41ウエル/25.4mmのトリコット編地を得た。
【0035】
得られたトリコット編地をヒートセッターにて190℃で1分間熱処理してプレセットした後、下記処方1に従い調製した樹脂溶液を、トリコット編地に、紗厚150μm、柄面積10%のロータリースクリーンプリント機を用いて、付与量が固形分換算で10g/mとなるようにプリントした。次いで、ヒートセッターにて130℃で2分間熱処理して乾燥して、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色4級であり、耐摩擦堅牢性は乾布4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。
【0036】
[組織1]
フロント:1−0/3−4
ミドル :1−0/1−2
バック :2−3/1−0
【0037】
[処方1]
1)商品名「サンアクリルNH−18」;60質量部
(アクリル樹脂、固形分44質量%、株式会社村山化学研究所製)
2)商品名「チタンペースト 55%」;5質量部
(顔料、固形分55質量%、林化学工業株式会社製)
3)商品名「RYUDYE−W RED FFGR」;2質量部
(顔料、固形分25質量%、DIC株式会社製)
4)水;33質量部
調製:処方1に従い、各原料をミキサーにて混合し、粘度を20,000mPa・s(BM型粘度計、ローターNo.4、東機産業株式会社製、25℃)になるように、水で調整した。
【0038】
[実施例2]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬とミドル筬に、167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)、バック筬に84dtex/36fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を導糸して、上記に示す組織1で編成して、45コース/25.4mm、28ウエル/25.4mmのトリコット編地を得た以外は実施例1と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色4級であり、耐摩擦堅牢性は乾布4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。
【0039】
[実施例3]
下記処方2に従い調製した樹脂溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色5級であり、耐摩擦堅牢性は乾布5級、人工酸性汗液浸漬布5級であった。
【0040】
[処方2]
1)商品名「サンアクリルNH−18」;60質量部
(アクリル樹脂、固形分44質量%、株式会社村山化学研究所製)
2)水;40質量部
調製:処方2に従い、各原料をミキサーにて混合し、粘度を20,000mPa・s(BM型粘度計、ローターNo.4、東機産業株式会社製、25℃)になるように、水で調整した。
【0041】
参考例1
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬とミドル筬に、167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメントアイボリーカラー原着加工糸、バック筬に84dtex/36fのポリエステルマルチフィラメントアイボリーカラー原着加工糸を導糸して、上記に示す組織1で編成して、45コース/25.4mm、28ウエル/25.4mmのトリコット編地を得た。
【0042】
得られたトリコット編地をヒートセッターにて190℃で1分間熱処理してプレセットした後、下記処方3に従い調製した樹脂溶液を、リバースコーター機にて、布速5m/分、ロール回転速度12m/分にて、乾燥後の樹脂塗布量が30g/m2になるように布帛表面に塗布した。次いで、ヒートセッターにて100℃にて10分間乾燥した。次いで、エンボス加工機によりロール温度160℃、ロール圧力588N/cm、布速3m/分にてエンボス加工を行い、参考例1の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は変色4級であり、耐摩擦堅牢性は乾布5級、人工酸性汗液浸漬布5級であった。
【0043】
[処方3]
1)商品名「スーパーフレックス460」;80質量部
(ウレタン樹脂、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社)
2)水;20質量部
調製:処方3に従い、各原料をミキサーにて混合し、粘度を1,000mPa・s(BM型粘度計、ローターNo.4、東機産業株式会社製、25℃)になるように、水で調整した。
【0044】
参考例2
実施例1で得られたトリコット編地をヒートセッターにて190℃で1分間熱処理してプレセットした後、上記処方3に従い調製した樹脂溶液を、リバースコーター機にて、布速5m/分、ロール回転速度12m/分にて乾燥後の樹脂塗布量が30g/mになるように布帛表面に塗布した。次いで、ヒートセッターにて100℃にて10分間乾燥した。次いで、平板ホフマンプレス機を使用し、圧力4.9N/cmにて1分間、樹脂表面をプレスし、参考例2の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色5級であり、耐摩擦堅牢性は乾布4級、人工酸性汗液浸漬布5級であった。
【0045】
[実施例6]
ポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸のカーボンブラック含有量を10質量%とした以外は全て実施例1と同様にして、トリコット編地を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布4級、人工酸性汗液浸漬布3−4級であった。なお、黒原着糸の紡糸性がやや悪く、また、得られた編物の風合いがやや粗硬なものであった。
【0046】
[実施例7]
ポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸のカーボンブラック含有量を15質量%とした以外は全て実施例1と同様にして、トリコット編地を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布3−4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。なお、黒原着糸の紡糸性がやや悪く、また、得られた編物の風合いがやや粗硬なものであった。
【0047】
参考例3
タテ糸に167dtex/144fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)、ヨコ糸に167dtex/48f、1320dtex/384fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径1.5質量%含有)で、タテ170本/25.4mm、ヨコ90本/25.4mmでジャガード織機にて製織した織物を用いた以外は全て実施例4と同様に加工を行い、参考例3の織物を得た。
得られた織物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色5級、耐摩擦堅牢性は、乾布5級、人工酸性汗液浸漬布4−5級であった。
【0048】
[実施例9]
ポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸のカーボンブラック含有量を0.1質量%とした以外は全て実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は変色4−5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布5級、人工酸性汗液浸漬布5級であった。なお、得られた編物は、所望の色は得られたが、ブラックの視覚濃度は実施例3の編物より低かった。また、耐熱老化性は合格レベルではあったが、編物のブラックの視覚濃度が低い分、樹脂そのものの黄変が見え、実施例3より若干劣るものであった。
【0049】
[実施例10]
ポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸のカーボンブラック含有量を2.5質量%とした以外は全て実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布4−5級、人工酸性汗液浸漬布4級であった。合格レベルではあったが、実施例3より若干の耐摩擦堅牢度の低下が見られた。
【0050】
[実施例11]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬に84dtex/36f(単繊度0.14dtex)のポリエステル黒原着割繊糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を使用した以外は、実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色4級であり、耐摩擦堅牢度は乾布3−4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。合格レベルではあったが、実施例3より若干の耐摩擦堅牢度の低下が見られた。
【0051】
[実施例12]
フロント筬に84dtex/36f(単繊度0.08dtex)のポリエステル黒原着割繊糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を使用した以外は、実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色4級であり、耐摩擦堅牢度は乾布3−4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。得られた編物の風合いはソフトであったが、摩擦子で擦られることにより削れた繊維が白綿布に付着する現象が生じ、耐摩擦堅牢度は実施例3より劣るものであった。また、黒原着糸の紡糸性が悪かった。
【0052】
[実施例13]
フロント筬に84dtex/36f(単繊度0.55dtex)のポリエステル黒原着割繊糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を使用した以外は、実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色4−5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布4−5級、人工酸性汗液浸漬布4−5級であった。
【0053】
[実施例14]
フロント筬に84dtex/36f(単繊度0.45dtex)のポリエステル黒原着割繊糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を使用した以外は、実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色4−5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布4級、人工酸性汗液浸漬布4級であった。実施例13(単繊度0.55dtex)より若干の摩擦堅牢度の低下が見られた。
【0054】
[実施例15]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬、ミドル筬に、84dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)、バック筬に84dtex/36fの先染めポリエステルマルチフィラメント加工糸(商品名:DIANIX BLACK HLA、ダイスタージャパン株式会社製、6%owfにて130℃で30分染色)を使用した以外は、実施例3と同様にして本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布5級、人工酸性汗液浸漬布5級であった。
【0055】
参考例4
単繊度0.15dtexの黒原着割繊糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を3mmの長さにカットし、水分散液中に分散させた。この分散液の中に、織物スクリム(167dtexのポリエステル加工糸)を挿入して抄造した後、次いで、柱状流処理による交絡処理後、130℃で乾燥し、バフ加工を行い、不織布を作製した。
【0056】
得られた不織布を下記処方4に従い調製した樹脂溶液に含浸し、乾燥後の樹脂塗布量が45g/mになるようにマングルにて処理した後、ヒートセッターにて130℃で10分間乾燥した。その後、エメリー起毛機にてバフ加工を行い、ヒートセッターにて130℃で2分間熱処理し、参考例4の不織布を得た。
得られた不織布は、耐熱性は退色4−5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布3−4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。
【0057】
[処方4]
1)商品名「エバファノールAPC−55」;300質量部
(ウレタン樹脂、固形分35質量%、日華化学株式会社)
2)水;700質量部
調製:処方4に従い、各原料をミキサーにて混合した。
【0058】
[比較例1]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬に84dtex/72fのポリエステルマルチフィラメン加工糸、ミドル筬とバック筬に84dtex/36fのポリエステルマルチフィラメント加工糸を導糸して、上記に示す組織1で編成して、72コース/25.4mm、41ウエル/25.4mmのトリコット編地を得た。
得られたトリコット編地をヒートセッターにて190℃で1分間加熱処理してプレセットした後、液流染色機で分散染料としてDIANIX BLACK HLA(ダイスタージャパン株式会社製)を用い、染色濃度4.3%owf(染着量1.16質量%)にて、130℃で30分間染色した。染色後のトリコット編地をヒートセッターにて130℃で1分間熱処理して乾燥して、トリコット編地を得た。
得られたトリコット編地に実施例1と同様の樹脂プリントを行い、編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行が認められ、耐熱性は変色2級であり、耐摩擦堅牢性は乾布3級、人工酸性汗液浸漬布2級であった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】