【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、各評価項目は、以下の方法に従った。
【0032】
[耐熱性]
幅100mm、長さ100mmの大きさの試験片を2枚採取した。採取した試験片の1枚を広口試薬瓶(共栓付250mL瓶、硬質ガラス製)の中に試験片を試薬瓶の側面に沿わせて入れ、110℃に調整された乾燥機内に400時間静置して熱処理した。熱処理後、試薬瓶を乾燥機から取り出し室温まで冷却した後、試薬片を試薬瓶から取り出した。
熱処理前(熱処理していない方の試験片)および熱処理後の試験片について、変退色用グレースケールにて判定した。
【0033】
[耐摩擦堅牢性]
幅30mm、長さ250mmの試験片を3枚採取した。
該試験片を学振型摩擦試験機(株式会社大栄科学精器製作所製)に、両面テープを用いて緩みがないように取り付けた。50mm四方の2種類の白綿布を、試験機の摩擦子(20mm四方の平板)にそれぞれかぶせ、付属の冶具で固定した。なお、2種類の白綿布とは、1つは乾布、1つは人工酸性汗液に10分間浸漬後、軽く絞ったもの、である。
試験は、摩擦子に試験機付属の錘を載せ、摩擦子に荷重1.96Nをかけた状態で、ストロークを100mmとし、30回(往復)/minサイクルにて100回摩擦した。
試験終了後、摩擦子にかぶせた2種類の白綿布を外した。摩擦処理前(摩擦処理していない方の試験片)および2種類の白綿布の汚染状態を、汚染用グレースケールにて判定した。
【0034】
[実施例1]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬に84dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)、ミドル筬とバック筬に84dtex/36fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を導糸して、以下に示す組織1で編成して、72コース/25.4mm、41ウエル/25.4mmのトリコット編地を得た。
【0035】
得られたトリコット編地をヒートセッターにて190℃で1分間熱処理してプレセットした後、下記処方1に従い調製した樹脂溶液を、トリコット編地に、紗厚150μm、柄面積10%のロータリースクリーンプリント機を用いて、付与量が固形分換算で10g/m
2となるようにプリントした。次いで、ヒートセッターにて130℃で2分間熱処理して乾燥して、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色4級であり、耐摩擦堅牢性は乾布4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。
【0036】
[組織1]
フロント:1−0/3−4
ミドル :1−0/1−2
バック :2−3/1−0
【0037】
[処方1]
1)商品名「サンアクリルNH−18」;60質量部
(アクリル樹脂、固形分44質量%、株式会社村山化学研究所製)
2)商品名「チタンペースト 55%」;5質量部
(顔料、固形分55質量%、林化学工業株式会社製)
3)商品名「RYUDYE−W RED FFGR」;2質量部
(顔料、固形分25質量%、DIC株式会社製)
4)水;33質量部
調製:処方1に従い、各原料をミキサーにて混合し、粘度を20,000mPa・s(BM型粘度計、ローターNo.4、東機産業株式会社製、25℃)になるように、水で調整した。
【0038】
[実施例2]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬とミドル筬に、167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)、バック筬に84dtex/36fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を導糸して、上記に示す組織1で編成して、45コース/25.4mm、28ウエル/25.4mmのトリコット編地を得た以外は実施例1と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色4級であり、耐摩擦堅牢性は乾布4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。
【0039】
[実施例3]
下記処方2に従い調製した樹脂溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色5級であり、耐摩擦堅牢性は乾布5級、人工酸性汗液浸漬布5級であった。
【0040】
[処方2]
1)商品名「サンアクリルNH−18」;60質量部
(アクリル樹脂、固形分44質量%、株式会社村山化学研究所製)
2)水;40質量部
調製:処方2に従い、各原料をミキサーにて混合し、粘度を20,000mPa・s(BM型粘度計、ローターNo.4、東機産業株式会社製、25℃)になるように、水で調整した。
【0041】
[
参考例1]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬とミドル筬に、167dtex/48fのポリエステルマルチフィラメントアイボリーカラー原着加工糸、バック筬に84dtex/36fのポリエステルマルチフィラメントアイボリーカラー原着加工糸を導糸して、上記に示す組織1で編成して、45コース/25.4mm、28ウエル/25.4mmのトリコット編地を得た。
【0042】
得られたトリコット編地をヒートセッターにて190℃で1分間熱処理してプレセットした後、下記処方3に従い調製した樹脂溶液を、リバースコーター機にて、布速5m/分、ロール回転速度12m/分にて、乾燥後の樹脂塗布量が30g/m2になるように布帛表面に塗布した。次いで、ヒートセッターにて100℃にて10分間乾燥した。次いで、エンボス加工機によりロール温度160℃、ロール圧力588N/cm、布速3m/分にてエンボス加工を行い、
参考例1の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は変色4級であり、耐摩擦堅牢性は乾布5級、人工酸性汗液浸漬布5級であった。
【0043】
[処方3]
1)商品名「スーパーフレックス460」;80質量部
(ウレタン樹脂、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社)
2)水;20質量部
調製:処方3に従い、各原料をミキサーにて混合し、粘度を1,000mPa・s(BM型粘度計、ローターNo.4、東機産業株式会社製、25℃)になるように、水で調整した。
【0044】
[
参考例2]
実施例1で得られたトリコット編地をヒートセッターにて190℃で1分間熱処理してプレセットした後、上記処方3に従い調製した樹脂溶液を、リバースコーター機にて、布速5m/分、ロール回転速度12m/分にて乾燥後の樹脂塗布量が30g/m
2になるように布帛表面に塗布した。次いで、ヒートセッターにて100℃にて10分間乾燥した。次いで、平板ホフマンプレス機を使用し、圧力4.9N/cm
2にて1分間、樹脂表面をプレスし、
参考例2の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色5級であり、耐摩擦堅牢性は乾布4級、人工酸性汗液浸漬布5級であった。
【0045】
[実施例6]
ポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸のカーボンブラック含有量を10質量%とした以外は全て実施例1と同様にして、トリコット編地を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布4級、人工酸性汗液浸漬布3−4級であった。なお、黒原着糸の紡糸性がやや悪く、また、得られた編物の風合いがやや粗硬なものであった。
【0046】
[実施例7]
ポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸のカーボンブラック含有量を15質量%とした以外は全て実施例1と同様にして、トリコット編地を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布3−4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。なお、黒原着糸の紡糸性がやや悪く、また、得られた編物の風合いがやや粗硬なものであった。
【0047】
[
参考例3]
タテ糸に167dtex/144fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)、ヨコ糸に167dtex/48f、1320dtex/384fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径1.5質量%含有)で、タテ170本/25.4mm、ヨコ90本/25.4mmでジャガード織機にて製織した織物を用いた以外は全て実施例4と同様に加工を行い、
参考例3の織物を得た。
得られた織物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱性は退色5級、耐摩擦堅牢性は、乾布5級、人工酸性汗液浸漬布4−5級であった。
【0048】
[実施例9]
ポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸のカーボンブラック含有量を0.1質量%とした以外は全て実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は変色4−5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布5級、人工酸性汗液浸漬布5級であった。なお、得られた編物は、所望の色は得られたが、ブラックの視覚濃度は実施例3の編物より低かった。また、耐熱老化性は合格レベルではあったが、編物のブラックの視覚濃度が低い分、樹脂そのものの黄変が見え、実施例3より若干劣るものであった。
【0049】
[実施例10]
ポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸のカーボンブラック含有量を2.5質量%とした以外は全て実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布4−5級、人工酸性汗液浸漬布4級であった。合格レベルではあったが、実施例3より若干の耐摩擦堅牢度の低下が見られた。
【0050】
[実施例11]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬に84dtex/36f(単繊度0.14dtex)のポリエステル黒原着割繊糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を使用した以外は、実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色4級であり、耐摩擦堅牢度は乾布3−4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。合格レベルではあったが、実施例3より若干の耐摩擦堅牢度の低下が見られた。
【0051】
[実施例12]
フロント筬に84dtex/36f(単繊度0.08dtex)のポリエステル黒原着割繊糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を使用した以外は、実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色4級であり、耐摩擦堅牢度は乾布3−4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。得られた編物の風合いはソフトであったが、摩擦子で擦られることにより削れた繊維が白綿布に付着する現象が生じ、耐摩擦堅牢度は実施例3より劣るものであった。また、黒原着糸の紡糸性が悪かった。
【0052】
[実施例13]
フロント筬に84dtex/36f(単繊度0.55dtex)のポリエステル黒原着割繊糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を使用した以外は、実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色4−5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布4−5級、人工酸性汗液浸漬布4−5級であった。
【0053】
[実施例14]
フロント筬に84dtex/36f(単繊度0.45dtex)のポリエステル黒原着割繊糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を使用した以外は、実施例3と同様にして、本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色4−5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布4級、人工酸性汗液浸漬布4級であった。実施例13(単繊度0.55dtex)より若干の摩擦堅牢度の低下が見られた。
【0054】
[実施例15]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬、ミドル筬に、84dtex/48fのポリエステルマルチフィラメント黒原着加工糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)、バック筬に84dtex/36fの先染めポリエステルマルチフィラメント加工糸(商品名:DIANIX BLACK HLA、ダイスタージャパン株式会社製、6%owfにて130℃で30分染色)を使用した以外は、実施例3と同様にして本発明の編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行は認められず、耐熱老化性は退色5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布5級、人工酸性汗液浸漬布5級であった。
【0055】
[
参考例4]
単繊度0.15dtexの黒原着割繊糸(カーボンブラック:平均一次粒子径40nm、1.5質量%含有)を3mmの長さにカットし、水分散液中に分散させた。この分散液の中に、織物スクリム(167dtexのポリエステル加工糸)を挿入して抄造した後、次いで、柱状流処理による交絡処理後、130℃で乾燥し、バフ加工を行い、不織布を作製した。
【0056】
得られた不織布を下記処方4に従い調製した樹脂溶液に含浸し、乾燥後の樹脂塗布量が45g/m
2になるようにマングルにて処理した後、ヒートセッターにて130℃で10分間乾燥した。その後、エメリー起毛機にてバフ加工を行い、ヒートセッターにて130℃で2分間熱処理し、
参考例4の不織布を得た。
得られた不織布は、耐熱性は退色4−5級であり、耐摩擦堅牢度は乾布3−4級、人工酸性汗液浸漬布3級であった。
【0057】
[処方4]
1)商品名「エバファノールAPC−55」;300質量部
(ウレタン樹脂、固形分35質量%、日華化学株式会社)
2)水;700質量部
調製:処方4に従い、各原料をミキサーにて混合した。
【0058】
[比較例1]
28ゲージで3枚筬を有するトリコット編機を使用して、フロント筬に84dtex/72fのポリエステルマルチフィラメン加工糸、ミドル筬とバック筬に84dtex/36fのポリエステルマルチフィラメント加工糸を導糸して、上記に示す組織1で編成して、72コース/25.4mm、41ウエル/25.4mmのトリコット編地を得た。
得られたトリコット編地をヒートセッターにて190℃で1分間加熱処理してプレセットした後、液流染色機で分散染料としてDIANIX BLACK HLA(ダイスタージャパン株式会社製)を用い、染色濃度4.3%owf(染着量1.16質量%)にて、130℃で30分間染色した。染色後のトリコット編地をヒートセッターにて130℃で1分間熱処理して乾燥して、トリコット編地を得た。
得られたトリコット編地に実施例1と同様の樹脂プリントを行い、編物を得た。
得られた編物は樹脂への染料移行が認められ、耐熱性は変色2級であり、耐摩擦堅牢性は乾布3級、人工酸性汗液浸漬布2級であった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】