特許第6581309号(P6581309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581309
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】一体化されたコリオリ質量流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/84 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   G01F1/84
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-526809(P2018-526809)
(86)(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公表番号】特表2018-535419(P2018-535419A)
(43)【公表日】2018年11月29日
(86)【国際出願番号】US2016063398
(87)【国際公開番号】WO2017091608
(87)【国際公開日】20170601
【審査請求日】2018年12月20日
(31)【優先権主張番号】62/259,611
(32)【優先日】2015年11月24日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510179283
【氏名又は名称】マレマ エンジニアリング コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】MALEMA ENGINEERING CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラン エム.ヤング
(72)【発明者】
【氏名】リン ジエンレン
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−519878(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0201260(US,A1)
【文献】 特表2005−510703(JP,A)
【文献】 特表2003−525437(JP,A)
【文献】 特開昭63−18219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの管状脚部を有する流れ感知部材と、
前記流れ感知部材上にオーバモールドされた支持体と
を備え、
前記管状脚部のそれぞれは、前記支持体を貫通し、前記支持体の剛性は、前記管状脚部の剛性を上回り、前記支持体は、前記管状脚部のそれぞれを挟持する、一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項2】
前記流れ感知部材は管状の横断面を有する請求項1に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項3】
前記流れ感知部材の壁の厚さは1mm未満である請求項2に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項4】
前記流れ感知部材は管状の流れ感知部材である請求項1に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項5】
前記管状の流れ感知部材は、単一材料で構成された一体型流れ感知部材である請求項4に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項6】
前記管状の流れ感知部材は、隅部を含まない形状を有する請求項4に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項7】
前記管状の流れ感知部材は、曲線の形状を有する請求項4に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項8】
前記管状の流れ感知部材は、高分子材料で構成される請求項4に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項9】
前記高分子材料は、ペルフルオロアルコキシアルカン類(PFAs)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびフッ素化エチレンプロピレン(FEP)からなる群から選択される請求項8に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項10】
前記支持体のための材料は、第2の高分子材料である請求項8に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項11】
前記支持体のための材料はガラス充填ポリカーボネートである請求項8に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項12】
前記支持体は、前記管状脚部を挟持するポート延長部を備える請求項1に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項13】
前記支持体は、前記管状脚部の熱膨張係数に実質上等しいかそれ未満の熱膨張係数を有する請求項1に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項14】
追加的な2つの管状脚部を有する追加的な流れ感知部材をさらに備え、
前記管状脚部の全ては平行であり、前記支持体は、前記追加的な流れ感知部材上にオーバモールドされ、前記管状脚部の全ては、前記支持体を貫通し、前記支持体は、前記管状脚部のそれぞれを挟持する請求項1に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項15】
前記支持体は、前記流れ感知部材の振動の境界条件を確立する隔離板を備える請求項14に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項16】
2つの管状脚部を有する流れ感知部材と、
前記流れ感知部材上にオーバモールドされた支持体と
を備え、
前記支持体の減衰係数は、前記管状脚部の減衰係数よりも小さい減衰係数を有し、前記支持体は、前記管状脚部のそれぞれを挟持する、一体化されたコリオリ質量流量計。
【請求項17】
前記流れ感知部材は、高分子材料で構成され、前記支持体は、前記管状脚部の熱膨張係数に実質的に等しいか、またはそれよりも小さい熱膨張係数を有する、請求項16に記載の一体化されたコリオリ質量流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、コリオリ質量流量計に関し、より詳細には、流れ感知部材と支持構造が一体化された、一体化されたコリオリ質量流量計に関し、また、そのようなコリオリ質量流量計を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2015年11月24日に出願し「Method of Manufacturing a Weld−Less Coriolis Mass Flow Rate Sensor from a Polymeric Material」と題した米国特許仮出願第62/259,611号明細書の利益を主張するものである。
【0003】
コリオリ質量流量計(本明細書では「流量計」とも呼ばれる)は、コリオリの原理に基づいて管を流れる流体の質量流量を測定する。典型的な構成は、それを通って流体が流れまた制御された態様で振動される、1つまたは2つの管を用いる。コリオリの力によって誘導された偏向、または管に対するそのような偏向による影響は、センサを通じて流れる流体の流体質量流量を計算するために測定される。さらに、流体密度に対するセンサの共振周波数の変化を測定することにより、流体密度も(質量流量とは独立に)測定することができる。
【0004】
一部の従来の流量計は、流れ感知要素として金属合金製の流管を使用する。一部の従来の方法は、接着剤を使用して、ペルフルオロアルコキシアルカン類(PFAs)製の管状の流れ感知要素を金属製の支持体に取り付ける。しかし、流れ感知要素の継続的な振動は、接着剤接合部を時間とともに劣化させ、したがって、これらの従来の流量計の完全性を低下させる。さらに、これらの流量計の様々な個別の構成要素は、通常、異なる熱膨張特性を有する異なる材料で作られる。流れ感知要素と支持体との間の結合は、その完全性を失い、それにより、制御されない振動がもたらされ、また、これらのデバイスの性能が含まれる。
【0005】
エッチングを用いて流量計を製造する一部の従来の方法は、グリコール−ジエーテルを含む加熱された槽内に管を沈めて穏やかに攪拌することを必要とする。デバイスの製作に対して費用および複雑さを追加する一方で、このエッチングプロセスは、常に流量計製作に適切な管を得られるとは限らない。
【0006】
一部の従来の方法は、射出成形法を介して流量計を製作し、かつ、中子型から流路を形成する。中子型は、典型的には、ビスマス、鉛、スズ、カドミウム、およびインジウムの混合物を含む、融点が約華氏117度(摂氏47.22度)の低融点可溶性金属合金から作られる。流れ感知部材を製作するときに、高温のプラスチックが、5000psi(34.4737MPa)を超える圧力において華氏350度(摂氏176.67度)を超え得る温度で、型内に射出される。これは、比較的細くかつ曲がりやすい可溶性金属中子を劣化させ得る。結果的に、流れ感知部材は、変形する可能性が高く、それにより、デバイス自体が使用に適さないものにされる。さらに、金属原子が、射出されるプラスチックと混ざり合ってその中に埋め込まれる可能性が高く、それにより、流れ感知部材が恒久的に汚染される。これは、デバイスを半導体、製剤、または生物製剤の用途などの高純度プロセスを必要とする用途に適さないものにする可能性がある。さらに、従来の射出成形プロセスによって製作される流量計の様々な構成要素は、全てが同様の厚さを有さなければならないが、このことは、流量計の性能に悪影響を与えかつ/またはそれを限定し得る、構造上および/または動的な設計の限界または妥協をもたらす可能性がある。
【0007】
一部の従来の製作プロセスは、流体通路を製造するために、2次的な操作を用いる。例えば、一部のプロセスは、高分子材料の単一部品から機械加工された全体的な構造に流体通路を穿孔する。あるいは、一部の方法は、型内に用いられる中実中子および/またはその型から部品が取り出された後の2次的な穿孔操作の組合せにより、流れ通路を形成する。コアリングまたは穿孔による外部の穴は、溶接または他の適切な手順によって埋められる。型内の中実中子および/または穿孔により流れ通路を形成することは、必然的により厚い肉厚を流体通路が有することを必要とする場合があり、そのことが、これらのデバイスの柔軟性と低流量における測定感度とを制限する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらなる従来の方法は、流れ感知部材を支持体に溶接して、流量計を製造する。流れ感知要素および支持体は、典型的には、同一の高分子材料から製作される。しかし、これらの支持体は、典型的には、多量の高分子材料を含み、使用される材料の費用を増加させる。また、適用限界により、いくつかの内径を変更することが必要とされ、それにより、スラリー固形物および/または同伴された気体/気泡の集積がもたらされ得る。さらに、管−支持体間の溶接プロセスにおけるばらつきは、寸法の差異、および支持体から延在する流れ感知要素の剛性のばらつきを導入して、流量計の2つの半体を設計された通りに振動させなくする可能性がある。最後に、溶接接合は、流れ感知要素の境界条件に悪影響を与える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態は、一体化されたコリオリ質量流量計、および、そのような一体化されたコリオリ質量流量計を製造する方法を含む。一体化された流量計が、支持体、および、支持体と一体化された1つまたは複数の流れ感知部材を含む。1つまたは1つの流れ感知部材は、支持体にしっかりと固定されかつ支持体を貫通する。支持体の前面から延在する1つまたは複数の流れ感知部材の部分は、振動するように構成される。流れ感知要素は、一部の例では、比較的薄い壁(例えば、1mm以下)を持つ高分子管から製作される。結果的に、本明細書で説明される流量計は、流体流速が低いときでさえ、向上された流れおよび密度の測定感度を有する。流体経路は流れ感知部材だけからなり、また、流体経路に沿った寸法(例えば、直径)の変化が存在しないので、本明細書で説明される流量計は、正確な測定を実現する。
【0010】
支持体は、流量計の構造上支持を提供する。支持体は、流れ感知部材を挟持する。支持体は、流れ感知部材の外表面上に支持体材料をオーバモールドする射出成形プロセスを用いて形成される。射出成形プロセス中に流れ感知部材を所定の位置に保持するために、ツーリングが使用され得る。流れ感知部材が横断面を変形させるのを防ぐために、流れ感知部材に金属棒が挿入され得る。支持体のための材料および流れ感知部材のための材料は、高分子材料であることが好ましい。金属汚染の危険性は排除され、本明細書で説明される流量計は、高純度の用途に適したものにされ得る。
【0011】
支持体は、1つまたは複数のポート延長部、および隣り合ったポート延長部を接続する隔離板などの、一体化された特徴を含み得る。隔離板は、流れ感知部材の振動の境界条件を確立する。流れ感知部材は、第1の熱膨張係数(「CTE」)を有する第1の材料から製作される。支持体は、第2のCTEを有する第2の材料を流れ感知部材の外表面上にオーバモールドすることによって製作される。第2のCTEは、第1のCTEにほぼ近いかまたはそれよりも小さい。温度が変化したときでさえ、支持体は流れ感知部材を挟持し続けて、それらの相対位置を維持する。第2の材料はまた、第1の材料のそれを上回る剛性(すなわち、硬さまたは弾性係数)および/または第1の材料のそれよりも小さい加湿係数(dampening coefficient)を有し得る。流れ感知部材は溶接接合部または接着剤接合部などの接合部を何も伴わずに支持体と一体化されるので、流量計の完全性および信頼性が確保される。したがって、本明細書で説明される流量計は、従来の流量計と比べて向上された信頼性を有する。
【0012】
図は、単に例示の目的のために本開示の様々な実施形態を示すものである。当業者であれば、本明細書で例示された構造および方法の代替的実施形態が、本明細書で説明される原理から逸脱することなく用いられ得ることを、以下の論述から容易に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】1つの実施形態による例示的な一体化されたコリオリ質量流量計の側面斜視図である。
図1B】1つの実施形態による例示的な一体化されたコリオリ質量流量計の背面斜視図である。
図2】別の実施形態による例示的な一体化されたコリオリ質量流量計の正面斜視図である。
図3A】1つの実施形態による追加的な一体化された特徴を含む支持体の正面斜視図である。
図3B】1つの実施形態による図3Aの追加的な一体化された特徴を含まない支持体の正面斜視図である。
図4A】1つの実施形態による形状を有する例示的な流れ感知部材の平面図である。
図4B】1つの実施形態による形状を有する例示的な流れ感知部材の平面図である。
図4C】1つの実施形態による形状を有する例示的な流れ感知部材の平面図である。
図4D】1つの実施形態による形状を有する例示的な流れ感知部材の平面図である。
図5A】1つの実施形態による一体化されたコリオリ質量流量計を製造する例示的なプロセスの図である。
図5B】1つの実施形態による一体化されたコリオリ質量流量計を製造する例示的なプロセスの図である。
図5C】1つの実施形態による一体化されたコリオリ質量流量計を製造する例示的なプロセスの図である。
図5D】1つの実施形態による一体化されたコリオリ質量流量計を製造する例示的なプロセスの図である。
図5E】1つの実施形態によるコリオリ質量流量計を製造する例示的なプロセスの流れ図である。
図6A】追加的な実施形態による一体化されたコリオリ質量流量計を製造する例示的なプロセスの図である。
図6B】追加的な実施形態による一体化されたコリオリ質量流量計を製造する例示的なプロセスの図である。
図7】1つの実施形態による例示的な一体化されたコリオリ質量流量計組立体の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
例示的なコリオリ質量流量計
図1Aおよび1Bは、1つの実施形態による例示的なコリオリ質量流量計100の側面および背面の斜視図を示す。コリオリ質量流量計(本明細書では、「流量計」とも呼ばれる)100は、図5Aから6に関連して以下でさらに説明される方法に従って製造され得る。流量計100は、流れ感知部材102a〜bと、流れ感知部材102a〜bを保持する動的応答性支持体(本明細では、「支持体」とも呼ばれる)104とを含む。流れ感知部材102〜bは、中空であり、かつ、流体が流れるのを可能にする管状の横断面を有する。示された例では、流れ感知部材102a〜bは、それぞれ、曲線の形状を有し、かつ、同一のものである。この例では、それらは、支持体によって保持される真っ直ぐな管状脚部を含むU字形状のものである。曲線形状の流れ感知部材を使用することの1つの利点は、隅部が存在せず、そのため流体経路に沿った突然の方向の変化が存在しないことである。したがって、圧力降下の増大をもたらすかまたは支持体からの流れ感知部材の遊離をもたらし得る流れ感知部材内でのスラリー固形物の蓄積の可能性が、排除される。
【0015】
流れ感知部材102a〜bは、第1の熱膨張係数(「CTE」)を有する第1の材料で作られる。様々な実施形態において、流れ感知部材102a〜bは、市販のものまたは特注生産のものであり得る高分子材料で作られる。例示的な高分子材料には、ペルフルオロアルコキシアルカン類(PFAs)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびフッ素化エチレンプロピレン(FEP)が含まれるが、これらに限定されない。流れ感知部材102a〜bは、比較的薄い壁を持つ管であることが好ましい。各流れ感知部材102aまたは102bの壁の厚さ103は、予め定められた閾値未満(例えば、1mm未満)である。比較的薄い壁を持つ流れ感知部材は、より柔軟である。したがって、薄い壁を持つ流れ感知部材を使用する流量計は、流体流速が低いときでさえ、向上された流れおよび密度の測定感度を有する。
【0016】
他の実施形態は、図4Aから4Dにそれぞれ示されるように、四角形または矩形の形態402、三角形の形態404、楕円形の形態406、および直線の形態408などの、他の形態に成形された流れ感知部材を含み得る。流量計は、任意の数の流れ感知部材を含み得る。例えば、図2に示された例示的な流量計200は、「U」形状の管状流れ感知部材102を1つだけ含む。
【0017】
図1では、流れ感知部材102a〜bは、単一の材料で構成された一体構成要素であり、かつ、支持体104と一体化されてもいる。流れ感知部材102a〜bは、支持体104に固定されかつ支持体104を貫通する、平行な管状脚部を有する。具体的には、各流れ感知部材に対して、各直線脚部分の一セグメントが、支持体104に固定され、曲線部分、および直線脚部分の残りの部分が、支持体104から延在する。支持体104の前方端部から延在する流れ感知部材102a〜bの部分は、振動するように構成される。流体物質が、支持体104の後方端部から延在する流れ感知部材102a〜bの部分に向けられる。示されるように、流体物質は、水力学的に平行な態様で流れ感知部材内を流れる。あるいは、流体物質は、水力学的に直列の態様で流れ感知部材を流れてもよい。
【0018】
例示的な動的応答性支持体
支持体104は、流量計100のための構造上の支持を提供する。支持体104は、流れ感知部材102a〜bを保持し、かつ、流れ感知部材102a〜bと一体化される。下記のオーバモールド製造法においては、支持体104は、各流れ感知部材102a〜bの2つの脚部の外表面を挟持するように、しかし別体の接着剤の使用を伴わずに、流れ感知部材102a〜bと一体化される。支持体104は、第2のCTEを有する第2の材料で作られる。支持体104は、流れ感知部材の脚部上に第2の材料を成形するオーバモールドプロセスを使用することによって製作される。したがって、支持体104は、第2の材料の単体部品(single monolithic piece)で構成される。支持体104は、流れ感知部材102a〜bが貫通する管状のチャネルを含む。支持体104は、流れ感知部材102a〜bが通過することを可能にする、前方端部および後方端部上のポートをさらに含む。例えば、図1Bに示されるように、支持体104の後方端部は、ポート107を含む。図3Bに示されるように、支持体104の前方端部は、ポート109を含む。
【0019】
支持体104は、流れ感知部材102a〜bを挟持する。第2の材料の第2のCTEは第1の材料の第1のCTEにほぼ近いかまたはそれよりも小さいので、温度が上昇すると、支持体104は流れ感知部材102a〜bよりも低速度で膨張して、流れ感知部材102a〜bへの挟持力を維持する。挟持力は、温度降下時でも維持される。第2の材料はまた、第1の材料と同一であってもよいし異なっていてもよい高分子材料であることが好ましい。1つの実施形態では、第2の材料は、ガラス充填ポリカーボネートである。本明細書で説明されるように、ほぼ近いとは、第1のCTEと第2のCTEとの間の差異が、当業者には受け入れられるであろう所定の許容差に含まれることを意味する。様々な実施形態において、所定の許容差は、例えば、1%の許容差、2%の許容差、5%の許容差などであり得る。示された図における線のうちのいくつかは、製図ソフトウェアのアーチファクトであるかまたは図示を容易にするために含まれるものであり、また、別々の構成要素間の継目を表さない−支持体104は、全ての図において単一の一体構成要素である。いくつかの実施形態では、第2の材料は、第1の材料のそれを上回る剛性(すなわち、硬さまたは弾性係数)を有する。第2の材料はまた、第1の材料のそれよりも小さい加湿係数を有する。これは、管状の流れ感知部材の振動を終了させるためにより揺るぎなくかつ一定の境界条件を支持体が提供することを確実にするためである。
【0020】
支持体104はまた、流量計100の動的応答特性に影響する追加的な一体化された特徴を含み得る。例えば、支持体104の前方端部は、各流れ感知部材102a〜bの2つの脚部を挟持する、1つまたは複数の一体化されたポート延長部108を含む。支持体104の前方端部は、隣り合ったポート延長部108を接続する隔離板106をさらに含む。隔離板106は、ポート延長部108と一体化され、その両方が支持体104と一体化される。各ポート延長部108の内表面が、対応する流れ感知部材の脚部の外表面に接触する。いくつかの実施形態では、ポート延長部108を含めて支持体104によって挟持される流れ感知部材の脚部の外表面は、粗面化される。隔離板106は、流れ感知部材102a〜bの振動の境界条件を確立する。流れ感知部材102a〜bは、音叉と同様に正反対の位相(すなわち、「逆相」)に振動することができ、または、調和して一緒に(すなわち、対照的に「同相」)振動することができる。隔離板106は、流量計の相的周波数応答特性に大きな影響を及ぼす。支持体104の取付けの剛性、ならびに流れ感知部材102a〜bの材料および寸法に応じて、同相の振動の固有周波数は、逆相の振動のそれに(一致しない場合は)近似し得る。2つの周波数が互いに近似する場合、振動励起エネルギーが2つの振動モード間で制御不能に共有されることになるので、流量計100の不安定さの危険性も上昇する。したがって、流量計100の誤動作を防ぐには、固有周波数を十分に分離させることが重要である。隔離板106は、この目的に役立つ。隔離板106は、流れ感知要素102a〜bの様々なセグメントを同相および逆相のモードで振動させて、2つの周波数を分離させる良好に定められた振動境界条件を作り出す。隔離板106の寸法および厚さは、流量計100の周波数応答特性に従って構成され得る。支持体104の一体化された特徴を含む正面斜視図および含まない正面斜視図が、図3Aおよび3Bに示される。繰り返すが、示された図における線のうちのいくつかは、製図ソフトウェアのアーチファクトであるかまたは図示を容易にするために含まれるものであることに、留意されたい。例えば、図3Aでは、支持体104の本体、ポート延長部108、および隔離板106は、後で組み立てられる別々の構成要素ではない。むしろ、それらは、下記の成形法になどにより、1つの一体部品として形成される。
【0021】
図4Aから4Dは、様々な実施形態による、異なる形状を有する例示的な流れ感知部材の平面図を示す。示された例示的な流れ感知部材402、404、406、および408は、全て中空であり、かつ、それらを通って流体が流れることを可能にする。流れ感知部材402、404、406、および408は、それぞれ、管状の横断面を含み得る。図1Aから2に示された流量計に類似した流量計を製造するために、図1Aから3Bに関連してすでに説明された支持体104に類似した支持体が、流れ感知部材402、404、または406の2つの端部脚部の外表面上に成形される。同様に、構造的に類似した支持体が、流れ感知部材408上に成形されてもよく、この場合、流れ感知部材408の両端が、支持体から延在し、その支持体の前方端部および後方端部の両方が、隔離板を含む。あるいは、2つの支持体が流れ感知部材408上に成形されてもよく、一方の支持体は、流れ感知部材408の一方の端部上に成形され、もう一方の支持体は、流れ感知部材408のもう一方の端部上に成形される。
【0022】
流量計を製造する例示的なプロセス
図5Aから5Dは、支持体104が流れ感知部材102上にオーバモールドされ、したがって一体化されたコリオリ質量流量計を形成する、1つの実施形態による製造プロセスの斜視図を示す。図5Eは、対応する製造プロセスを示す流れ図である。図5Aに示されるように、ツーリング502が、オーバモールドプロセス中に流れ感知部材102bを所定の位置に保持550する。この例では、ツーリング502は2つの部品を含み、そのうちの一方は、流れ感知部材102の2つの脚部の端部を保持し、そのうちの一方は、流れ感知部材102のU形の曲り部(U-bend)を保持する。他のタイプのツーリングが明らかになるであろう。
【0023】
図5Bおよび5Cは、流れ感知部材102上での2つの部品からなる型504の型閉552を示す。図5Bは、支持体104を形成するためのキャビティ506が見えるように、型504の底部品のみを示す。便宜上、キャビティ506は、実際の複雑な形状ではなくおおまかな輪郭として示されている。図5Cでは、型504が閉じられて、型の両方の部品が流れ感知部材102の2つの脚部を取り囲んでいる。いくつかの実施形態では、流れ感知部材の外表面が、例えば、少なくとも部分的に、支持体によって取り囲まれるセグメントにおいて、粗面化された仕上がりを有する。外側表面は、管押出しプロセスから粗面化されてもよい。ツーリング502は、流れ感知部材102の脚部上に支持体104がオーバモールドされている間に流れ感知部材102を保持する。
【0024】
支持体104を作製するために、射出成形プロセスが使用される。支持体のための材料が、流れ感知部材102の材料のガラス転移温度よりも低い温度で型504に射出554される。材料は、流れ感知部材102のそれよりも高い温度で溶融されかつ射出される。射出された材料が冷える556につれて、支持体は、流れ感知部材の脚部上にオーバモールドされる。支持体内の管状のチャネルは冷却中に収縮し、したがって、流れ感知部材の管状の脚部を締め付ける。支持体104のための材料が流れ感知部材102のための材料と同一である場合、支持体104と流れ感知部材との間に形成される密着した結合が、挟持力を強化する。いくつかの実施形態では、流れ感知部材102の外表面上に支持体104が成形されるときに、流れ感知部材102が変形するのを防ぐため、および、横断面が管状のままであることを確実にするために、流れ感知部材102に棒が挿入され得る。これは、支持体104が流れ感知部材102をしっかりと把持するように、流れ感知部材102上に支持体104が成形されているときに、流れ感知部材102が横断方向に沿った力を受けるためである。
【0025】
図5Dでは、型504が開かれて、一体化されたコリオリ質量流量計を解放558している。管に取り付けられた物理的に別個の隔離板を含む従来の流量計と比較すると、本明細書で説明される一体化された流量計は、隔離板と構造的に一体化された支持体を含む。1つの利点は、製造がより簡易であることである。さらに、本明細書で説明される製造方法は、管状の流れ感知要素の振動を管状の形状に関係なく終了させるために、より揺るぎなくかつ一定の境界条件を確実にする。本明細書で説明されるような一体化された流量計を作製することはまた、隔離板を管に個別に取り付けることなしに支持体が様々な管形状上に成形されることを許容する、より優れた設計の融通性(例えば、隔離板の厚さおよび離隔距離)を可能にする。
【0026】
図5Aから5Eの例は、単一の流れ感知部材を示した。しかし、同一の手法は、複数の流れ感知部材とともに使用され得る。図6Aおよび6Bは、図5Cによく似ているが、2つの流れ感知部材を含むコリオリ質量流量計のためのものである。この場合、異なる雛形(例えば、3つの部品からなる型)が使用される。図6Aでは、3つの部品は、流れ感知部材に対して1つの方向に配向されている。図6Bでは、それらは、流れ感知部材に対して垂直方向に配向されている。
【0027】
例示的なコリオリ質量流量計組立体
図7は、1つの実施形態による、一体化されたコリオリ質量流量計組立体700を示す。流量計100は、電磁駆動機器組立体によって駆動される。電磁駆動機器は、横材704に取り付けられた磁石702、および、横材708に取り付けられたコイル706を含む。横材704、708は、流量計100の流れ感知部材102a、102bにそれぞれ取り付けられる。コイル706に適切な正弦波信号が印加されると、流れ感知部材102aおよび102bは、逆相モードで振動するように駆動される。
【0028】
流れ感知部材102a、102bの両側に配置された磁石/コイル対710、714および712、716を含む運動センサ(誘導性「ピックオフ」または「速度センサ」としても知られる)が、流れ感知部材102a、102bを流れる流体によって生成されたコリオリの力を検出する。流れ感知部材102aおよび102bの運動は、横材708に取り付けられたコイル714、716において誘導的に生成される。コイル714、716は、横材704に取り付けられた対応する磁石710、712を含む運動応答性電磁コイル対の一部である。振動する流れ感知部材を1つだけ含む流量計の場合、磁石は、流れ感知部材に直接取り付けられてもよく、コイルは、しっかりと取り付けられた台(図示せず)に取り付けられてもよい。
【0029】
印加された励起運動の結果として流れ感知部材102a、102bに生成された運動を検出するとき、運動センサは、質量流によって誘導されたコリオリの力からの寄与率を表す信号を出力する。これらの運動センサからの出力信号は、例えば送信回路722を介して計器電子装置720に送信される。計器電子装置720は、受信した信号を処理し、かつ、流体物質の質量流量を示す情報を例えば信号経路526を介してディスプレイ724に出力する。光学センサなどの他のタイプの運動センサも使用することができる。
【0030】
本発明の実施形態についての上記の説明は、例示の目的で提示された。包括的であること、または開示された明確な形態に本発明を限定することは、意図されていない。上記の開示を考慮すると、多くの修正および変形が可能であることを、当業者は理解することができる。本明細書で使用された文言は、主として読みやすさおよび指導上の目的のために選択されたものであって、発明の主題を正確に記述するまたは制限するためには選択されていない場合がある。したがって、本発明の範囲はこの詳細な説明によって限定されるのではなく、本明細書に基づく出願に関して生じる任意の請求項によって限定されることが意図されている。したがって、本発明の実施形態の開示は、説明に役立つものであるが、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではないことが、意図されている。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図7