特許第6581320号(P6581320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581320
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】腫瘍治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/53 20060101AFI20190912BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20190912BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   A61K31/53
   A61K31/47
   A61P35/00
   A61P43/00 121
【請求項の数】20
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2018-567437(P2018-567437)
(86)(22)【出願日】2018年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2018004007
(87)【国際公開番号】WO2018147275
(87)【国際公開日】20180816
【審査請求日】2019年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-21542(P2017-21542)
(32)【優先日】2017年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】小澤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】堀 優作
(72)【発明者】
【氏名】山田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】神山 洋
(72)【発明者】
【氏名】松木 正尋
【審査官】 大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/208576(WO,A1)
【文献】 特表2016−528162(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/204193(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/098853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とする、(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを含有する腫瘍治療用医薬組成物。
【請求項2】
(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドと組み合わせて投与されることを特徴とする、レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩を含有する腫瘍治療用医薬組成物。
【請求項3】
レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩が、レンバチニブメシル酸塩である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
さらに賦形剤を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩、および(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドが、それぞれ同時に、別々に、連続して、または時間差をおいて投与される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
腫瘍が乳癌、甲状腺癌、肝細胞癌、大腸癌、腎細胞癌、頭頸部癌、子宮内膜癌またはメラノーマである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
腫瘍が乳癌である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
腫瘍が甲状腺癌である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
甲状腺癌が甲状腺未分化癌である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
腫瘍が肝細胞癌である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項11】
腫瘍が大腸癌である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項12】
腫瘍が腎細胞癌である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項13】
腫瘍が頭頸部癌である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項14】
腫瘍が子宮内膜癌である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項15】
腫瘍がメラノーマである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項16】
レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とする、(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを含有する腫瘍治療剤。
【請求項17】
(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドと組み合わせて投与されることを特徴とする、レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩を含有する腫瘍治療剤。
【請求項18】
レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とする腫瘍治療用医薬組成物を製造するための、(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの使用。
【請求項19】
(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドと組み合わせて投与されることを特徴とする腫瘍治療用医薬組成物を製造するための、レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩の使用。
【請求項20】
レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩、および(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを含有する腫瘍治療用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンバチニブおよび(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの併用療法に用いる腫瘍治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レンバチニブは、血管新生阻害作用を有し(特許文献1)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1−3、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)1−4、Rearranged During Transfection(RET)、KITおよび血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)αを標的とする経口のチロシンキナーゼ阻害剤であり(特許文献2−5)、甲状腺癌、肺癌、黒色腫、子宮内膜癌、腎細胞癌、神経膠腫、肝細胞癌、卵巣癌などの種々の腫瘍に対する治療剤として知られている。レンバチニブの化合物名は、4−(3−クロロ−4−(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミドである。
【0003】
(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミド(以下、E7386と表記する場合がある)は、Wnt Pathway modulating作用を有する化合物として知られている(特許文献6)。
【0004】
これまで、レンバチニブおよび(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの併用療法が、いかなる抗腫瘍効果を示すかについては報告されていない。
【0005】
一般に腫瘍治療剤は、単独で使用した場合、全ての患者に対して有効ではない場合が多い。そこで、これまでに、複数の腫瘍治療剤を併用し、抗腫瘍効果の増強や副作用の軽減を図ることにより、治療率を向上させる試みがなされている(特許文献7−9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7253286号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004−253205号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010−105031号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009−209580号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2009−264464号明細書
【特許文献6】米国特許第9174998号明細書
【特許文献7】国際公開第2009/140549号
【特許文献8】米国特許出願公開第2004−259834号明細書
【特許文献9】米国特許第6217866号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況の中、さらに新しい腫瘍治療剤の併用療法の開発が待たれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を進めた結果、レンバチニブおよび(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの併用投与は、予想外の抗腫瘍効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[33]を提供する。
[1] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とする、(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを含有する医薬組成物。
[2] (6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドと組み合わせて投与されることを特徴とする、レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
[3] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とする、(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを含有する腫瘍治療用医薬組成物。
[4] (6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドと組み合わせて投与されることを特徴とする、レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩を含有する腫瘍治療用医薬組成物。
[5] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とする、(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを含有する腫瘍治療剤。
[6] (6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドと組み合わせて投与されることを特徴とする、レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩を含有する腫瘍治療剤。
[7] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩、および(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを、それらを必要とする患者に投与する腫瘍の治療方法。
[8] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とする腫瘍治療用医薬組成物を製造するための、(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの使用。
[9] (6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドと組み合わせて投与されることを特徴とする腫瘍治療用医薬組成物を製造するための、レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩の使用。
[10] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩と組み合わせて投与されることを特徴とする、腫瘍を治療するための(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミド。
[11] (6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドと組み合わせて投与されることを特徴とする、腫瘍を治療するためのレンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩。
[12] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩を含有する製剤、および(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを含有する製剤を備えることを特徴とするキット。
[13] キットが腫瘍治療用キットである、[12]に記載のキット。
[14] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩、および(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを含有する医薬組成物。
[15] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩、および(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを含有する腫瘍治療用医薬組成物。
[16] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩、および(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドを含有する腫瘍治療剤。
[17] 腫瘍の治療に使用される、レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩、および(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミド。
[18] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩と組み合わせて、腫瘍の治療に使用される、(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミド。
[19] (6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドと組み合わせて、腫瘍の治療に使用される、レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩。
[20] 腫瘍治療用医薬組成物を製造するためのレンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩、および(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの使用。
[21] さらに賦形剤を含有する、上記医薬組成物または腫瘍治療剤。
[22] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩が、レンバチニブメシル酸塩である、上記医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[23] レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩、および(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドが、それぞれ同時に、別々に、連続して、または時間差をおいて投与される、上記医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[24] 腫瘍が乳癌、甲状腺癌、肝細胞癌、大腸癌、腎細胞癌、頭頸部癌、子宮内膜癌またはメラノーマである、上記医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[25] 腫瘍が乳癌である、[24]に記載の医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[26] 腫瘍が甲状腺癌である、[24]に記載の医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[27] 甲状腺癌が甲状腺未分化癌である、[26]に記載の医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[28] 腫瘍が肝細胞癌である、[24]に記載の医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[29] 腫瘍が大腸癌である、[24]に記載の医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[30] 腫瘍が腎細胞癌である、[24]に記載の医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[31] 腫瘍が頭頸部癌である、[24]に記載の医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[32] 腫瘍が子宮内膜癌である、[24]に記載の医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
[33] 腫瘍がメラノーマである、[24]に記載の医薬組成物、腫瘍治療剤、治療方法、使用、化合物またはキット。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、レンバチニブおよび(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの併用療法に用いる腫瘍治療用医薬組成物を提供する。かかる腫瘍治療用医薬組成物は、それを必要とする患者に対し、予期せぬ抗腫瘍効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】トランスジェニックマウス(MMTV−Wnt−1)自然発症乳癌の継代移植モデルにおけるE7386 12.5mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の*および***は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、***:p<0.001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図2】トランスジェニックマウス(MMTV−Wnt−1)自然発症乳癌の継代移植モデルにおけるE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図3】トランスジェニックマウス(MMTV−Wnt−1)自然発症乳癌の継代移植モデルにおけるE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の***および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(***:p<0.001、****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図4】マウス乳癌4T1同所性移植モデルにおけるE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の*および**は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、**:p<0.01;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図5】ヒト乳癌MDA−MB−231移植モデルにおけるE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の*および***は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、***:p<0.001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図6】ヒトメラノーマ細胞株SEKI移植モデルにおけるE7386 12.5mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の*および**は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、**:p<0.01;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図7】ヒトメラノーマ細胞株SEKI移植モデルにおけるE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の*および***は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、***:p<0.001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図8】ヒト甲状腺未分化癌細胞株HTC/C3移植モデルにおけるE7386 12.5mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の**および***は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(**:p<0.01、***:p<0.001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図9】ヒト甲状腺未分化癌細胞株HTC/C3移植モデルにおけるE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の***および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(***:p<0.001、****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図10】ヒト甲状腺未分化癌細胞株HTC/C3移植モデルにおけるE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の**および***は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(**:p<0.01、***:p<0.001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図11】ヒト肝細胞癌株SNU398移植モデルにおけるE7386 12.5mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の*および**は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、**:p<0.01;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図12】ヒト肝細胞癌株SNU398移植モデルにおけるE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の**は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(**:p<0.01;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図13】ヒト肝細胞癌株SNU398移植モデルにおけるE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図14】ヒト肝細胞癌株HepG2移植モデルにおけるE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の**および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(**:p<0.01、****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図15】ヒト大腸癌株Colo−205移植モデルにおけるE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の**および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(**:p<0.01、****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図16】ヒト腎細胞癌株A−498皮下移植モデルにおけるE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による抗腫瘍効果を示すグラフである。グラフ中の****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
図17】マウス乳癌4T1の同所性移植モデルにおける、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用による微小血管抑制効果を、CD31/α−SMA共染色した10倍拡大免疫染色により示した写真である。(a)は対照群、(b)はE7386単独投与群(25mg/kg)、(c)はレンバチニブメシル酸塩単独投与群(10mg/kg)、(d)はE7386(25mg/kg)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg)の併用投与群の写真である。
図18】マウス乳癌4T1の同所性移植モデルにおける、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用によるPericyte Coverage(血管周皮細胞による血管の被覆)抑制効果を、CD31/α−SMA共染色した200倍拡大免疫染色により示した写真である。(a)は対照群、(b)はE7386単独投与群(25mg/kg)、(c)はレンバチニブメシル酸塩単独投与群(10mg/kg)、(d)はE7386(25mg/kg)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg)の併用投与群の写真である。黒矢印で示しているのは、CD31で染色された微小血管である。白抜き矢印で示しているのは、CD31/α−SMA両陽性血管である。
図19】マウス乳癌4T1の同所性移植モデルにおけるE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による微小血管抑制効果を示すグラフである。グラフ中の*および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に微小血管を抑制したことを示す(*:p<0.05、****:p<0.0001;Dunnett’s type multiple comparison)。
図20】マウス乳癌4T1の同所性移植モデルにおけるE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用によるPericyte Coverage(血管周皮細胞による血管の被覆)抑制効果を示すグラフである。グラフ中の*および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意にPericyte Coverageを抑制したことを示す(*:p<0.05、****:p<0.0001;Dunnett’s type multiple comparison)。
図21】ヒト肝細胞癌HepG2の皮下移植モデルにおけるE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用による微小血管抑制効果を示すグラフである。グラフ中の**および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に微小血管を抑制したことを示す(**:p<0.01、****:p<0.0001;Dunnett’s type multiple comparison)。
図22】ヒト肝細胞癌HepG2の皮下移植モデルにおけるE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用によるPericyte Coverage(血管周皮細胞による血管の被覆)抑制効果を示すグラフである。グラフ中の****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意にPericyte Coverageを抑制したことを示す(****:p<0.0001;Dunnett’s type multiple comparison)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
【0013】
レンバチニブとは、4−(3−クロロ−4−(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)−7−メトキシ−6−キノリンカルボキサミドを意味し、その構造式を以下の式に示す。
【化1】
レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩は、特許文献1に記載された方法により製造することができる。レンバチニブの薬剤学的に許容される塩の一例は、レンバチニブメシル酸塩である。レンバチニブメシル酸塩は、E7080またはレンビマ(Lenvima)(登録商標)とも称する。
【0014】
(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの構造式を以下の式に示す。
【化2】
(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドは、特許文献6に記載された方法により製造することができる。(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドは、E7386とも称する。
【0015】
「薬剤学的に許容される塩」とは、特定の塩の種類に限定されないが、例えば、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩、酸性または塩基性アミノ酸との塩などがあげられる。
【0016】
無機酸との塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などとの塩があげられる。有機酸との塩は、例えば、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ステアリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩があげられる。
【0017】
無機塩基との塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられる。有機塩基との塩は、例えば、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、メグルミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩があげられる。
【0018】
酸性アミノ酸との塩は、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩があげられる。塩基性アミノ酸との塩は、例えば、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩があげられる。
【0019】
レンバチニブの薬剤学的に許容される塩は、例えば、有機酸との塩であり、その一態様は、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)である。
【0020】
本発明のレンバチニブまたは(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドに、溶媒和物および光学異性体が存在する場合には、それらの溶媒和物および光学異性体が含まれる。溶媒和物は、例えば、水和物、非水和物などをあげることができる。溶媒は、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール)、ジメチルホルムアミドなどをあげることができる。
【0021】
また、本発明のレンバチニブまたは(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドは、結晶でも無結晶でもよい。結晶多形が存在する場合には、それらのいずれかの結晶形の単一物であっても混合物であってもよい。
【0022】
レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩の投与量は、症状の程度、副作用の発現、患者の年齢、性別、体重、感受性差、投与方法、投与時期、投与間隔、医薬製剤の種類などに応じて、適宜選択することができる。
【0023】
レンバチニブまたはその薬剤学的に許容される塩の投与量は、特に限定されないが、通常、成人(体重60kg)または小児に対して経口投与する場合、1日あたり0.1〜500mg、0.5〜300mg、もしくは1〜100mgであるか、または、1日あたり0.1〜500mg/m(体表面積、以下同じ)、0.5〜300mg/m、もしくは1.0〜100mg/mである。これを通常、1日1回、または2〜3回に分けて投与することができる。患者が過度の毒性を経験した場合は、投与量の減少が必要となる。投与量および投与計画は、本発明の併用療法に加えて、1またはそれ以上の追加の化学療法剤が使用される場合に変更してもよい。投与計画は、特定の患者を治療している医師により決定することができる。
【0024】
(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの投与量および投与計画は、特定の疾病症状および患者の全症状にしたがって変更することができる。年齢、性別、症状、体重または副作用の発現などに応じて適宜減量することもできる。
【0025】
(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの投与量は、特に限定されないが、通常、成人(体重60kg)または小児に対して経口投与する場合、1日あたり0.1〜5000mg、0.5〜3000mg、または1.0〜1000mgである。これを通常、1日もしくは複数日の間に1回、または1日に2〜6回に分けて投与することができる。投与量および投与計画は、1またはそれ以上の追加の化学療法剤が使用される場合に変更してもよい。投与計画は、特定の患者を治療している医師により決定することができる。
【0026】
本発明の併用投与におけるレンバチニブまたは(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの投与量は、それぞれ、通常単独で投与される場合と同じ投与量またはそれより低い投与量に設定することができる。具体的な投与量、投与経路、投与頻度、投与サイクルなどは、患者の年齢、性別、症状または副作用の発現などを考慮して適宜決定される。
【0027】
本発明におけるレンバチニブおよび(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの投与形態は、特に限定されず、投与時に、レンバチニブおよび(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドが組み合わせて投与されていればよい。例えば、レンバチニブおよび(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドは、それぞれ同時に、別々に、連続して、または時間差をおいて患者に投与される。ここで、「同時に」とは、それぞれの成分が、同じ期間内もしくは厳密に同時に、または同一の投与経路で投与されることを意味する。「別々に」とは、それぞれの成分が、異なる投与間隔もしくは投与頻度で、または異なる投与経路で投与されることを意味する。「連続して」とは、それぞれの成分が、同一または異なる投与経路で、一定期間内に任意の順序で投与されることを意味する。「時間差をおいて」とは、それぞれの成分が、同一または異なる投与経路で、それぞれの成分の投与ごとに間隔をあけて投与されることを意味する。レンバチニブおよび(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの組み合わせの投与においては、前述の(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドの投与の1サイクルの期間中または当該サイクルが繰り返されている期間中にレンバチニブが投与された場合に、当該組み合わせての投与がされているものと判断される。本発明の併用投与における投与形態の一つとしては、レンバチニブおよび(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミドは、経口により投与される。また、本発明の併用投与は、レンバチニブおよび(6S,9aS)−N−ベンジル−8−({6−[3−(4−エチルピペラジン−1−イル)アゼチジン−1−イル]ピリジン−2−イル}メチル)−6−(2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジル)−4,7−ジオキソ−2−(プロプ−2−エン−1−イル)ヘキサヒドロ−2H−ピラジノ[2,1−c][1,2,4]トリアジン−1(6H)−カルボキサミド以外の腫瘍治療用医薬組成物の投与と同時に、別々に、連続して、または時間差をおいて行われても良い。
【0028】
本発明の腫瘍治療用医薬組成物は、例えば、第十六改正日本薬局方(JP)、米国薬局方(USP)または欧州薬局方(EP)に記載された方法で製剤化することができる。
【0029】
本発明において対象となる腫瘍は、具体的には、例えば、乳癌、甲状腺癌、肝細胞癌(HCC)、大腸癌(CRC)、腎細胞癌(RCC)、頭頸部癌、子宮内膜癌またはメラノーマであるが、特にこれらに限定されない。本発明の一態様において対象となる腫瘍は、甲状腺癌である。また、本発明の一態様において対象となる甲状腺癌は、甲状腺未分化癌(ATC)である。本発明の別の態様において対象となる腫瘍は、肝細胞癌である。
【実施例】
【0030】
以下に、具体的な例をもって本発明を示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0031】
[実施例1]トランスジェニックマウス(MMTV−Wnt−1)自然発症乳癌の継代移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
乳腺上皮細胞に局所的にWnt−1を発現させたトランスジェニックマウス(MMTV−Wnt−1、Jackson Laboratories)の自然発症乳癌を採取し、背景系統となるマウス(C57BL/6J、日本チャールズリバー)にトラカールで移植継代した。移植継代した腫瘍が1.5g程度になった時点で摘出し、30mg程度の断片にし、対照群、E7386 12.5、25または50mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 12.5、25または50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群5例のマウス(C57BL/6J)の体側皮下に移植した。腫瘍の生着を確認した後、E7386(12.5、25または50mg/kg、1日2回、14日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)を単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には、0.1mol/L塩酸(1日2回、14日間)を投与した。
投与開始日を1日とし、以下、4日、8日、11日、および15日に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径を、デジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定した。
以下の式に従って、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出した。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0032】
RTVの結果を表1ならびに図1図2および図3に示した。表1中の数字は、RTVの平均値±標準偏差(SD)を意味する。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、トランスジェニックマウス(MMTV−Wnt−1)自然発症乳癌の継代移植モデルにおいて、優れた抗腫瘍効果を示した。図1図2および図3中の*、***および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、***:p<0.001、****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
【0033】
【表1】
【0034】
[実施例2]マウス乳癌4T1の同所性移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
マウス乳癌4T1細胞(ATCC)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むRPMI1640培地(SIGMA社)を使用して培養した。細胞が約80%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収した。ハンクス緩衝塩類溶液を加え、1.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386 25mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群5例のマウス(C57BL/6J、日本チャールズリバー)の右第3乳腺脂肪体に移植した。移植後9日目より、E7386(25mg/kg、1日2回、14日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)を単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には薬剤を投与しなかった。
投与開始日を1日とし、以下3日、6日、9日および14日に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径を、デジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定した。
以下の式に従って、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出した。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0035】
RTVの結果を表2および図4に示した。表2中の数字は、RTVの平均値±標準偏差(SD)を意味する。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、マウス乳癌4T1の同所性移植モデルにおいて、優れた抗腫瘍効果を示した。図4中の*および**は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、**:p<0.01;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
【0036】
【表2】
【0037】
[実施例3]ヒト乳癌MDA−MB−231移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
ヒト乳癌MDA−MB−231細胞(ATCC)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むRPMI1640培地(SIGMA社)を使用して培養した。細胞が約80%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収した。この細胞に、50%マトリゲル含有ハンクス緩衝塩類溶液を加え、10.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386 25mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群5例のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植した。移植後6日目より、E7386(25mg/kg、1日2回、10日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、10日間、経口投与)を単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には薬剤を投与しなかった。
投与開始日を1日とし、以下4日、7日および10日に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径を、デジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定した。
以下の式に従って、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出した。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0038】
RTVの結果を表3および図5に示した。表3中の数字は、RTVの平均値±標準偏差(SD)を意味する。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、ヒト乳癌MDA−MB−231移植モデルにおいて、優れた抗腫瘍効果を示した。図5中の*および***は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、***:p<0.001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
【0039】
【表3】
【0040】
[実施例4]ヒトメラノーマ細胞株SEKI移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
ヒトメラノーマ細胞株SEKI(JCRB細胞バンク)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むRPMI1640培地(SIGMA社)を使用して培養した。細胞が約80%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収した。この細胞に、50%マトリゲル含有ハンクス緩衝塩類溶液を加え、5.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386 12.5または25mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 12.5または25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群6例のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植した。移植後13日目より、E7386(12.5または25mg/kg、1日2回、14日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)を、単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には、0.1mol/L塩酸(1日2回、14日間)を投与した。
投与開始日を1日とし、以下、4日、8日、11日、および15日に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径を、デジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定した。
以下の式に従って、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出した。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0041】
RTVの結果を表4ならびに図6および図7に示した。表4中の数字は、RTVの平均値±標準偏差(SD)を意味する。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、ヒトメラノーマ細胞株SEKI移植モデルにおいて、優れた抗腫瘍効果を示した。図6および図7中の*、**および***は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
【0042】
【表4】
【0043】
[実施例5]ヒト甲状腺未分化癌細胞株HTC/C3移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
ヒト甲状腺未分化癌細胞株HTC/C3(JCBR細胞バンク)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むD−MEM High Glucose培地(Wako)を使用して培養した。細胞が約80%コンフルエントの状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収した。この細胞に、50%マトリゲル含有ハンクス緩衝塩類溶液を加え、1.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386 12.5、25または50mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 12.5、25または50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群5例のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植した。移植後11日目より、E7386(12.5、25、または50mg/kg、1日2回、14日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)を単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には、0.1mol/L塩酸(1日2回、14日間)を投与した。
投与開始日を1日とし、以下4日、8日、11日、および15日に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径を、デジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定した。
以下の式にしたがって、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出した。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0044】
RTVの結果を表5ならびに図8図9および図10に示した。表5中の数字は、RTVの平均値±標準偏差(SD)を意味する。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、ヒト甲状腺未分化癌細胞株HTC/C3移植モデルにおいて、優れた抗腫瘍効果を示した。図8図9および図10中の**、***および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較し、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(**:p<0.01、***:p<0.001、****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
【0045】
【表5】
【0046】
[実施例6]ヒト肝細胞癌SNU398移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
ヒト肝細胞癌SNU398(ATCC)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むRPMI1640培地(SIGMA社)を使用して培養する。細胞が約80%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収する。この細胞に、50%マトリゲル含有ハンクス緩衝塩類溶液を加え、5.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製する。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386単独投与群、レンバチニブメシル酸塩単独投与群、ならびにE7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用投与群の各群のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植する。腫瘍形成後、E7386(経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(経口投与)を、単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与する。
投与開始日から定期的に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径をデジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定し、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出する。RTVの結果から、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果を評価することができる。
腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)は、以下の式に従って算出する。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0047】
[実施例6−1]ヒト肝細胞癌株SNU398移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
ヒト肝細胞癌株SNU398細胞(ATCC)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むRPMI1640培地(WAKO社)を使用して培養した。細胞が約80%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収した。この細胞に、50%マトリゲル含有ハンクス緩衝塩類溶液を加え、5.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386 50mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 12.5、25または50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群8例のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植した。移植後9日目より、E7386(12.5、25または50mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)を単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には薬剤を投与しなかった。
投与開始日を1日とし、以下6日、9日、12日および15日に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径を、デジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定した。
以下の式に従って、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出した。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0048】
RTVの結果を表6ならびに図11図12および図13に示した。表6中の数字は、RTVの平均値±標準偏差(SD)を意味する。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、ヒト肝細胞癌株SNU398移植モデルにおいて、優れた抗腫瘍効果を示した。図11図12および図13中の*、**および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(*:p<0.05、**:p<0.01、****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
【0049】
【表6】
【0050】
[実施例7]ヒト肝細胞癌株HepG2皮下移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
ヒト肝細胞癌株HepG2細胞(JCRB細胞バンク)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むDMEM−Low glucose培地(WAKO社)を使用して培養した。細胞が約80%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収した。この細胞に、50%マトリゲル含有リン酸緩衝生理食塩水を加え、10.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386 50mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群5例のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植した。移植後12日目より、E7386(50mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)を単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には薬剤を投与しなかった。
投与開始日を1日とし、以下4日、7日、9日、13日および15日に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径を、デジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定した。
以下の式に従って、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出した。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0051】
RTVの結果を表7ならびに図14に示した。表7中の数字は、RTVの平均値±標準偏差(SD)を意味する。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、ヒト肝細胞癌株HepG2移植モデルにおいて、優れた抗腫瘍効果を示した。図14中の**および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(**:p<0.01、****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
【0052】
【表7】
【0053】
[実施例8]ヒト大腸癌株Colo−205移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
ヒト大腸癌株Colo−205細胞(ATCC)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むRPMI1640培地(WAKO社)を使用して培養した。細胞が約80%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収した。この細胞に、ハンクス緩衝塩類溶液を加え、5.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386 50mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群5例のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植した。移植後8日目より、E7386(50mg/kg、1日1回、11日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、11日間、経口投与)を単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には薬剤を投与しなかった。
投与開始日を1日とし、以下4日、8日および12日に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径を、デジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定した。
以下の式に従って、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出した。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0054】
RTVの結果を表8および図15に示した。表8中の数字は、RTVの平均値±標準偏差(SD)を意味する。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、ヒト大腸癌株Colo−205移植モデルにおいて、優れた抗腫瘍効果を示した。図15中の**および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(**:p<0.01、****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
【0055】
【表8】
【0056】
[実施例9]ヒト腎細胞癌株A−498皮下移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
ヒト腎細胞癌株A−498細胞(ATCC)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むRPMI1640培地(WAKO社)を使用して培養した。細胞が約100%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収した。この細胞に、50%マトリゲル含有RPMI1640培地を加え、5.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386 50mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群6例のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植した。移植後27日目より、E7386(50mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)を単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には薬剤を投与しなかった。
投与開始日を1日とし、以下5日、8日、12日および15日に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径を、デジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定した。
以下の式に従って、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出した。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0057】
RTVの結果を表9および図16に示した。表9中の数字は、RTVの平均値±標準偏差(SD)を意味する。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、ヒト腎細胞癌株A−498皮下移植モデルにおいて、優れた抗腫瘍効果を示した。図16中の****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較して、統計学的に有意に腫瘍増殖を阻害したことを示す(****:p<0.0001;Repeated measures ANOVA followed by Dunnett’s type multiple comparison)。
【0058】
【表9】
【0059】
[実施例10]ヒト頭頸部癌SCC15移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
ヒト頭頸部癌SCC15細胞(ATCC)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むRPMI1640培地(SIGMA社)を使用して培養する。細胞が約80%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収する。この細胞に、50%マトリゲル含有ハンクス緩衝塩類溶液を加え、5.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製する。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386単独投与群、レンバチニブメシル酸塩単独投与群、ならびにE7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用投与群の各群のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植する。腫瘍形成後、E7386(経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(経口投与)を、単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与する。
投与開始日から定期的に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径をデジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定し、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出する。RTVの結果から、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果を評価することができる。
腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)は、以下の式に従って算出する。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0060】
[実施例11]ヒト子宮内膜癌HEC−151移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果
ヒト子宮内膜癌HEC−151細胞(JCRB細胞バンク)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むRPMI1640培地(SIGMA社)を使用して培養する。細胞が約80%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収する。この細胞に、50%マトリゲル含有ハンクス緩衝塩類溶液を加え、5.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製する。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386単独投与群、レンバチニブメシル酸塩単独投与群、ならびにE7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用投与群の各群のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植する。腫瘍形成後、E7386(経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(経口投与)を、単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与する。
投与開始日から定期的に、各マウスに発生した腫瘍の長径および短径をデジマチックキャリパ(Mitsutoyo)で測定し、腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)を算出する。RTVの結果から、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用による抗腫瘍効果を評価することができる。
腫瘍体積および比腫瘍体積(RTV)は、以下の式に従って算出する。
腫瘍体積(mm)=腫瘍長径(mm)×腫瘍短径(mm)/2
比腫瘍体積(RTV)=測定日の腫瘍体積/投与開始日の腫瘍体積
【0061】
[実施例12]マウス乳癌4T1の同所性移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による腫瘍血管抑制効果
マウス乳癌4T1細胞(ATCC)を、37℃の条件下で、5%炭酸ガスインキュベーター内で、10%のFBSを含むRPMI1640培地(SIGMA社)を使用して培養した。細胞が約80%コンフルエントな状態となった時に、トリプシン−EDTAを使用して、細胞を回収した。ハンクス緩衝塩類溶液を加え、1.0×10cells/mLとなるように懸濁液を調製した。得られた細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386 25mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 25mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群5例のマウス(C57BL/6J、日本チャールズリバー)の右第3乳腺脂肪体に移植した。移植後9日目より、E7386(25mg/kg、1日2回、14日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)を単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には薬剤を投与しなかった。
14日間の投与後にマウスから腫瘍組織を採取して、腫瘍組織のホルマリン固定を行い、腫瘍組織をパラフィンに包埋した。その後、パラフィン包埋腫瘍組織を、4μm厚で薄切し、スライドガラスに載せ、キシレン/エタノールで脱パラフィン処理を行った。血管周皮細胞(pericyte)のマーカーであるα平滑筋アクチン(α−SMA)抗体(SIGMA社製)および血管内皮細胞のマーカーであるCD31抗体(Dianova社製)を用いて免疫染色を行った。
【0062】
CD31/α−SMA共染色のプレパラートをスライドスキャナー(Aperio、Leica Biosystems)でデジタル画像化し、画像解析ソフト(Aperio ImageScope ver 12.3.0.5056、Leica Biosystems)を用いて、腫瘍全体における単位面積(1mm)当たりのCD31陽性血管量として微小血管密度(MVD:Microvessel Density)を測定解析した。
CD31/α−SMA共染色した10倍拡大免疫染色像(カラー写真では茶色(CD31)および赤色(α−SMA)で表示している)を図17に示す。図17の(a)、(b)、(c)および(d)はそれぞれ、対照群、E7386単独投与群、レンバチニブメシル酸塩単独投与群、ならびにE7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用投与群の免疫染色像である。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、対照群およびそれぞれを単独投与した場合と比較して、MVDが顕著に減っていることを観察した。
【0063】
200倍拡大画像上で、腫瘍切片1枚あたり0.2mm×0.2mm四方の微小血管密度が高い領域5点を血管性状解析用ホットスポットと定めた。画像解析ソフト(Aperio ImageScope ver 12.3.0.5056、Leica Biosystems)を用いて、解析用ホットスポットにおける、CD31陽性血管量に対するCD31/α−SMA両陽性血管量であるPCI(Pericyte Coverage Index)を測定解析した。PCIは、全血管に対する血管周皮細胞(pericyte)によって被覆されている血管の割合を表す。解析用ホットスポット5点のPCIの平均値をその腫瘍切片の代表値とした。
CD31/α−SMA共染色した200倍拡大免疫染色像(カラー写真では茶色(CD31)および赤色(α−SMA)で表示している)を図18に示す。図18の(a)、(b)、(c)および(d)はそれぞれ、対照群、E7386単独投与群、レンバチニブメシル酸塩単独投与群、ならびにE7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用投与群の免疫染色像である。黒矢印で示しているのは、CD31で染色された微小血管である。白抜き矢印で示しているのは、CD31/α−SMA両陽性血管である。その結果、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、対照群およびそれぞれを単独投与した場合と比較して、PCIが顕著に減っていることを観察した。
【0064】
MVDの結果を図19に示す。グラフは各投与群腫瘍切片5枚の平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す。E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、マウス乳癌4T1の同所性移植モデルにおいて、優れた微小血管抑制効果を示した。図19中の*および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較し、統計学的に有意に微小血管を抑制したことを示す(*:p<0.05、****:p<0.0001;Dunnett’s type multiple comparison)。
【0065】
PCIの結果を図20に示す。グラフは各投与群腫瘍切片5枚の平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す。E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、マウス乳癌4T1の同所性移植モデルにおいて、優れたPericyte Coverage(血管周皮細胞による血管の被覆)抑制効果を示した。図20中の*および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較し、統計学的に有意にPericyte Coverageを抑制したことを示す(*:p<0.05、****:p<0.0001;Dunnett’s type multiple comparison)。
【0066】
[実施例13]ヒト肝細胞癌HepG2の皮下移植モデルにおけるE7386とレンバチニブメシル酸塩の併用による腫瘍血管抑制効果
上記実施例7に記載されているように、ヒト肝細胞癌株HepG2細胞(JCRB細胞バンク)を用いて調製した細胞懸濁液0.1mLを、対照群、E7386 50mg/kg単独投与群、レンバチニブメシル酸塩 10mg/kg単独投与群、ならびにE7386 50mg/kgおよびレンバチニブメシル酸塩 10mg/kgの併用投与群の各群5例のヌードマウス(CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj、日本チャールズリバー)の体側皮下に移植した。移植後12日目より、E7386(50mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)およびレンバチニブメシル酸塩(10mg/kg、1日1回、14日間、経口投与)を単独で、または併用して、それぞれ単独投与群または併用投与群に投与した。投与の際に、E7386を0.1mol/L塩酸に溶解し、また、レンバチニブメシル酸塩を3mmol/L塩酸に溶解した。対照群には薬剤を投与しなかった。
14日間の投与後にマウスから採取した腫瘍組織を分割し、血管解析用の腫瘍サンプルとした。分割した腫瘍組織は、ホルマリン固定を行い、パラフィンに包埋した。その後、パラフィン包埋腫瘍組織を、4μm厚で薄切し、スライドガラスに載せ、キシレン/エタノールで脱パラフィン処理を行った。血管周皮細胞(pericyte)のマーカーであるα平滑筋アクチン(α−SMA)抗体(SIGMA社製)および血管内皮細胞のマーカーであるCD31抗体(Dianova社製)を用いて免疫染色を行った。
【0067】
CD31/α−SMA共染色のプレパラートをスライドスキャナー(Aperio、Leica Biosystems)でデジタル画像化し、画像解析ソフト(HALO v2.0.1145.38)を用いて、腫瘍全体における単位面積(1mm)当たりのCD31陽性血管量として微小血管密度(MVD:Microvessel Density)を測定解析した。その結果、E7386とレンバチニブメシル酸塩の併用は、対照群およびそれぞれを単独投与した場合と比較して、MVDが顕著に減っていることを観察した。
【0068】
200倍拡大画像上で、腫瘍切片1枚あたり0.5mm×0.5mm四方の微小血管密度が高い領域6点を血管性状解析用ホットスポットと定めた。画像解析ソフト(HALO v2.0.1145.38)を用いて、解析用ホットスポットにおける、CD31陽性血管量に対するα−SMA両陽性血管量であるPCI(Pericyte Coverage)を測定解析した。PCIは、全血管に対する血管周皮細胞(pericyte)によって被覆されている血管の割合(%)を表す。解析用ホットスポット6点のPCIの平均値をその腫瘍切片の代表値とした。その結果、PCIはレンバチニブメシル酸塩単独投与によって顕著に増加するが、レンバチニブメシル酸塩とE7386と併用する事でPCIの増加を対照群と同等のレベルまで抑制することを観察した。
【0069】
MVDの結果を図21に示す。グラフは、各投与群腫瘍切片5枚の平均値を測定後、対照群の値を基準値とした割合(%)を算出し、作成した。エラーバーは標準偏差を示す。E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、ヒト肝細胞癌HepG2の皮下移植モデルにおいて、優れた微小血管抑制効果を示した。図21中の**および****は、E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、それぞれを単独投与した場合と比較し、統計学的に有意に微小血管を抑制したことを示す(**:p<0.01、****:p<0.0001;Dunnett’s type multiple comparison)。
【0070】
PCIの結果を図22に示す。グラフは各投与群腫瘍切片5枚のPCIの割合平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す。E7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用は、ヒト肝細胞癌HepG2の皮下移植モデルにおいて、優れたPericyte Coverage(血管周皮細胞による血管の被覆)抑制効果を示した。図22の****は、レンバチニブメシル酸塩単独投与が、対照群と比較し、統計学的に有意にPericyte Coverageを増加させたこと、ならびにE7386およびレンバチニブメシル酸塩の併用が、レンバチニブメシル酸塩単独投与した場合と比較し、統計学的に有意にPericyte Coverageを抑制したことを示す(****:p<0.001;Dunnett’s type multiple comparison)。
図1
図2
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図10
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