特許第6581332号(P6581332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6581332交互に噛みあった指状部の共押出成形のための構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581332
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】交互に噛みあった指状部の共押出成形のための構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20190912BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20190912BHJP
【FI】
   H01M4/02 Z
   H01G11/26
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-255650(P2013-255650)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-130810(P2014-130810A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2016年12月9日
(31)【優先権主張番号】13/727,937
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502096543
【氏名又は名称】パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】コリエ・リン・コブ
【審査官】 立木 林
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−525674(JP,A)
【文献】 特表2010−528424(JP,A)
【文献】 特開2012−009431(JP,A)
【文献】 特開2013−077513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
H01G 9/04− 9/06
H01G 11/26−11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性電極材料からなる第1の材料と多孔性の材料からなる第2の材料とを少なくとも含む交互に噛み合った層を含み、前記第2の材料が、前記第1の材料より高い導電性または同様の導電性を有し、前記第1の材料よりもイオン伝導性が高く、この2つの材料の断面が長方形ではなく、前記交互に噛み合った層が電極の主面の面方向に積層されており、
前記第2の材料は、犠牲材料が取り除かれた領域が電解質材料で満たされたものである、電極構造。
【請求項2】
活性電極材料からなる第1の材料と多孔性の材料からなる第2の材料とを少なくとも含む交互に噛み合った層を含み、前記第2の材料が、前記第1の材料より高い導電性または同様の導電性を有し、前記第1の材料よりもイオン伝導性が高く、この2つの材料の断面が長方形ではなく、前記交互に噛み合った層が電極の主面の面方向に積層されており、
前記交互に噛み合った層が、波模様またはうね模様のいずれかを含む、電極構造。
【請求項3】
前記第2の材料が電解質を含む、請求項2に記載の構造。
【請求項4】
前記第1の材料が、カソード材料またはアノード材料のどちらかである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造。
【請求項5】
前記長方形ではない断面の角が、尖った形状を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造。
【請求項6】
前記長方形ではない断面の角が、丸められた形状を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造。
【請求項7】
前記第2の材料が、前記第1の材料よりも空隙率が大きい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、電池に関し、より詳細には、共押出成形印刷ヘッドからの材料の細片から形成される電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池、燃料電池、電気的な相互接続、ウルトラキャパシタなどが、密に配置された交互に噛み合った異種の材料の細片から得られるような多くの用途が存在する。これらの材料は、米国特許公開第2012/0156364号に開示されているように、米国特許第7,799,371号に示される類似しているが代わりとなる印刷ヘッドを有する共押出成形印刷ヘッドを用いて共押出成形することができる。この観点で、共押出成形するとは、材料が流れるにつれて混合しないことを意味する。しかし、得られた構造は、断面形態が長方形の幾何形状を有し、交互に噛み合った幾何形状に垂直な方向にまっすぐで均一な印刷物を有する。
【0003】
しかし、モデリングから、長方形ではない断面幾何形状は、容量およびエネルギー密度において性能向上という利点を有する。典型的には、電極は、スロットコーティングプロセスまたは薄膜および半導体の作成技術から得られる。これらの方法は、構造化した電極の大規模製造に対し、費用対効果が高い状態にはまだ達していない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、従来技術の交互に噛みあった構造を示す。
図2図2は、交互に噛み合った構造の実施形態を示す。
図3図3は、交互に噛み合った構造の実施形態を示す。
図4図4は、交互に噛み合った構造の従来技術の実施形態を示す。
図5図5は、交互に噛み合った構造の実施形態を示す。
図6図6は、交互に噛み合った構造の実施形態を示す。
図7図7は、電池構造の実施形態を示す。
図8図8は、従来技術および本実施形態のリチウム構造のための材料の利用のプロットを示す。
図9図9は、従来技術および本実施形態のリチウム構造のための材料の利用のプロットを示す。
図10図10は、従来技術および本実施形態のリチウム構造のための放電性能のプロットを示す。
図11図11は、押出成形された材料の波模様の実施形態を示す。
図12図12は、押出成形された材料の波模様の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1〜6は、米国特許第7,799,371号に示されるような共押出成形印刷ヘッドを用いて作られた構造の種々の実施形態を示す。図1は、電極構造10の従来技術の実施形態を示す。この構造は、広い方の部分に第1の材料12を有し、第2の材料14と交互に噛み合っている。材料12は、密に充填された活性電極材料からなり、材料14は、イオン伝導性および導電性を高めるために高度に多孔性の材料からなる。材料14は、第1の材料より大きな導電性または同じ導電性を有していてもよく、イオン伝導性はおそらく第1の材料より高いだろう。
【0006】
図4は、領域34が取り除かれた犠牲材料から得られることを除き、よく似た従来技術の概要を示す。32のような密な領域のみが残る。これにより、電池電極の実施形態において、この領域を電解質で満たすことができる。
【0007】
図2〜3は、長方形ではない断面を有する、密に充填された領域18および24と、多孔性領域20および26を示す。処理条件(例えば、圧力の調整、流体の流速、流体のレオロジー)を制御することによって、構造16および22が生じるだろう。流体のレオロジーに関し、2種類の材料の粘度は、同様の密度とともに釣り合ったものであるべきである。しかし、導電性材料の濃度のため、密度は、さまざまであってもよいが、粘度の釣り合いは依然として重要なままである。
【0008】
領域18および24の長方形ではない断面によって、電極構造16および22を通る濃度勾配を良好に制御することができる。これらの構造は、多孔性領域に対して露出した密に充填された領域の表面積を大きくする。電池電極の濃度勾配が大きいほど、抵抗降下が大きくなり、電池セルのエネルギー密度および電力密度に影響を及ぼす。濃度勾配を制御することによって、大きな勾配を避けることができ、電池セルの効率を高めることができる。長方形ではない断面は、尖った角または丸くなった角を有していてもよい。
【0009】
図5および6は、密に充填された材料の長方形ではない領域38および44と、40および46のような長方形ではない空間とを有するよく似た構造36および42を示す。これらの構造において、空間は電解質材料で満たされており、電解質に対し、密に充填された材料の表面積がさらに大きく露出している。
【0010】
図7は、長方形の断面を有する実施形態と比較して、長方形ではない電極の断面の性能が向上していることを決定づけるために使用する電池モデルの単純化したブロック図を示す。構造50は、集電板の障壁52を有する。この実施形態では、アノード54は、厚みが50マイクロメートルの範囲のリチウム箔からなる。分離板56は、アノード52をカソード構造58から分離する。カソード構造58は、この実施形態では、密に充填された領域と高度に多孔性の材料が交互に並んだものからなる。図7のブロック図は、これらの領域を長方形として示しているが、実際には、図2および3の形状を有している。この実施形態では、密に充填された領域は、活性材料の濃度が70%のリチウムコバルトオキシド(LCO)と、LCOの濃度が40%の高度に多孔性の領域とからなる。
【0011】
この材料は、活性材料の濃度が任意の範囲にある任意の種類の電池材料であってもよいが、典型的には、高度に多孔性の領域は、密な領域よりも活性物質が少ないだろう。さらに、この材料を電池以外の他の構造に使用してもよい。使用可能な材料の例としては、リチウムコバルトオキシド(LCO)、リチウムニッケルコバルトマンガンオキシド(NCM)、またはこれら2種の混合物が挙げられる。他の材料としては、リチウムニッケルコバルトアルミニウムオキシド(NCA)、リチウムマンガンオキシド(LMO)、リチウム鉄ホスフェート(LFeP)を挙げることができる。アノード材料は、チタン酸リチウム(LTA)であってもよい。
【0012】
図8および図9は、「1C」放電後のそれぞれ図1および図2の電極構造の材料利用のプロットを示し、印加した電流密度は12.9mA/cmである。「C」放電率は、最大容量に対する電池の放電率の測定値である。「1C」率は、電池の完全な容量が1時間で放電される電流である。この構造の多孔性領域と密な領域で、質量および体積は保存され、唯一の違いは、断面の幾何形状である。図2の構造は、図1の構造に比べ、1C率では、活性な材料の利用がほぼ10%大きい。
【0013】
以下の表の容量、エネルギーおよび電力の数値は、リチウムコバルトオキシドについて実現し得るとき、絶対的な性能向上ではなく、構造間の相対的な性能向上を示す。図10は、以下の表と合わせ、長方形ではない構造を用いて作られたエネルギー、電力、容量の増加を示す。図10のグラフでは、上側の線は図2の構造であり、下側の線は図1の構造である。このプロットから、図2の構造は、図1の構造よりも実行時間が長く、電圧低下が小さいことを示す。このことは、カソード構造における活性材料の利用の増加と、濃度勾配の低下に起因するものである。
【表1】
すでに述べたように、これらの増加は、構造中の容積または質量が大きいことによるものではなく、単に、幾何形状の変化によるものである。
【0014】
ここまでで、記載内容は、電池電極構造に対する断面の幾何形状の変化に焦点をあてたものであった。しかし、すでに述べたように、処理パラメーターの制御によって、エッチングマスクおよび相互接続部として印刷ヘッドによって作られる長方形ではない構造が達成されてもよい。この環境で、図5および図6に示される構造は、犠牲材料が取り除かれたときに残される材料で構成されているだろう。この材料は、得られる構造中の材料の目的に依存して、導電性物質またはポリマーであってもよい。例えば、回路の相互接続部の場合、材料は、犠牲材料を除去した後の接点として使用される導電性の金属または導電性ポリマーであってもよい。
【0015】
米国特許公開第2012/0156364号に記載される印刷ヘッドは、「掃かれた」流路と呼ばれるものを有しており、この流路の縁および角は、材料を構築することができるデッドスポットを軽減するために角度が付けられているか、および/または斜めに切られている。この構築材料は、限界質量に達していてもよく、次いで、流路内に流れ込んでもよく、または、流路を制限してもよい。いずれの場合にも、流路を掃くことによって、まっすぐなモノリス模様において、表面に得られた材料堆積物の均一性が維持される。しかし、「掃かれていない」流路を用いることによって、または材料の流れを印刷ヘッドに圧力差または機械的な運動を利用して拍動的に流すことによって、表面にある材料をもっとランダム化し、うね模様または「波状」の流れパターンを作成することができる。
【0016】
図11は、このようなランダム化された材料模様の一例を示す。得られた堆積物は、2種類の異なる材料62および64の波線からなる。すでに述べたように、材料の1つが犠牲材料として作用し、取り除かれてもよい。取り除くことによって残される空隙は、異なる材料で満たされてもよい。または、得られる材料は、相互接続部および接続パッドを形成してもよく、またはその下にある材料のエッチングマスクを形成してもよい。
【0017】
図12は、材料模様の単純化された態様を示す。流れ方向は、材料が印刷ヘッドから流れる方向であると定義される。印刷ヘッドは、図を見ている人に最も近い模様の縁から移動し、図を見ている人から離れる方向に引っ張られている。この膜に垂直の方向は、膜の上面であろう。積み重ね方向は、印刷ヘッドを複数回動かし、示した方向に側面方向に小さな模様が積み重なることによってもっと大きな模様を作成することによって、この模様が「積み重ねられた」側面にする能力を指す。
【0018】
この様式では、長方形ではない断面を有する電極構造を作成することによって、もっと効率よく、もっと性能が高い電池の電極構造を作成することができる。長方形ではない構造は、処理パラメーターを制御することによって、掃かれた流路を有するすでに存在している印刷ヘッドから作られてもよく、またはすでに存在する印刷ヘッドと同様であるが、「掃かれていない」流路を有する印刷ヘッドから作られてもよい。同様に、接続部として使用可能なランダム化された構造またはランダム化可能なエッチングマスクを、すでに存在している印刷ヘッドを用い、または掃かれていない流路を有する印刷ヘッドを用いて処理を制御することによって作成してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12