(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581336
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
B60C13/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-125582(P2014-125582)
(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-2938(P2016-2938A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年2月15日
【審判番号】不服2018-6652(P2018-6652/J1)
【審判請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 誠
【合議体】
【審判長】
須藤 康洋
【審判官】
加藤 友也
【審判官】
渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0032569(US,A1)
【文献】
特開昭59−190010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイド部に標章を有する空気入りタイヤであって、
前記サイド部は、その外表面から窪み、その開口縁から徐々に内側に向かって傾斜する傾斜面を含む、前記標章を構成する表示底面を有する凹部を備え、
前記表示底面に、前記開口縁よりも内側にオフセットさせて彩色領域を形成し、
前記彩色領域は、前記開口縁からのオフセット量を相違させたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
サイド部に標章を有する空気入りタイヤであって、
前記サイド部は、その外表面から窪み、その開口縁から徐々に内側に向かって傾斜する傾斜面を含む、前記標章を構成する表示底面を有する凹部を備え、
前記表示底面に、前記開口縁よりも内側にオフセットさせて彩色領域を形成し、
前記彩色領域は、前記開口縁からのオフセット量をタイヤ径方向で相違させたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
サイド部に標章を有する空気入りタイヤであって、
前記サイド部は、その外表面から窪み、その開口縁から徐々に内側に向かって傾斜する傾斜面を含む、前記標章を構成する表示底面を有する凹部を備え、
前記表示底面に、前記開口縁よりも内側にオフセットさせて彩色領域を形成し、
前記彩色領域は、前記開口縁からのオフセット量をタイヤ周方向で相違させたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記標章は、タイヤ断面高さの30から75%の範囲に形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記標章は、タイヤ径方向に、タイヤ断面高さの15〜45%の長さを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤとして、サイドウォール部の外表面に、並列に延在するように配列された複数本のリッジを含むセレーション加工部を形成し、このセレーション加工部のリッジ間に位置する谷部内に有彩色層を配置するようにした構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の空気入りタイヤでは、有彩色層(彩色領域)をサイド面に配置したのみであるので、耐久性・耐候性が弱く、装飾性が維持できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−19367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高精度の位置合わせを必要とすることなく、タイヤのサイド部に形成する標章を、損傷しにくく、しかも立体的で視認性に優れた状態で表示できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
サイド部に標章を有する空気入りタイヤであって、
前記サイド部は、その外表面から窪み、
その開口縁から徐々に内側に向かって傾斜する傾斜面を含む、前記標章を構成する表示底面を有する凹部を備え、
前記表示底面に、
前記開口縁よりも内側にオフセットさせて彩色領域を形成し、
前記彩色領域は、
前記開口縁からのオフセット量を相違させたことを特徴とする空気入りタイヤを提供する。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
サイド部に標章を有する空気入りタイヤであって、
前記サイド部は、その外表面から窪み、
その開口縁から徐々に内側に向かって傾斜する傾斜面を含む、前記標章を構成する表示底面を有する凹部を備え、
前記表示底面に、
前記開口縁よりも内側にオフセットさせて彩色領域を形成し、
前記彩色領域は、
前記開口縁からのオフセット量をタイヤ径方向で相違させたことを特徴とする空気入りタイヤを提供する。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
サイド部に標章を有する空気入りタイヤであって、
前記サイド部は、その外表面から窪み、
その開口縁から徐々に内側に向かって傾斜する傾斜面を含む、前記標章を構成する表示底面を有する凹部を備え、
前記表示底面に、
前記開口縁よりも内側にオフセットさせて彩色領域を形成し、
前記彩色領域は、
前記開口縁からのオフセット量をタイヤ周方向で相違させたことを特徴とする空気入りタイヤを提供する。
【0009】
これらの構成により、彩色領域を、凹部の開口縁よりも内側の表示底面に形成しているので、高精度の位置合わせを必要とすることがな
く、立体的で視認性に優れている。また彩色領域を凹部内の表示底面に形成しているので、損傷を受けにくくすることができ、たとえ彩色領域が剥離等により除去されたとしても、凹部の形状によって標章としての機能を維持することができる
。また、凹部の表示底面内に於ける彩色部分の占有位置を変化させて輝度差を持たせ、立体感を含めた視認性の変化をもたらすことができる。
【0014】
前記標章は、タイヤ断面高さの30から75%の範囲に形成するのが好ましい。
【0015】
前記標章は、タイヤ径方向に、タイヤ断面高さの15〜45%の長さを有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タイヤに形成する標章をサイド部の凹部で構成し、凹部の表示底面に、その外縁から内側にオフセットさせて彩色領域を形成するようにしている。したがって、彩色領域を位置決め精度を高めることなく簡単に形成することができ、損傷しにくい上、立体感を持たせた視認性を確保することが可能となる。またたとえ、彩色領域が剥離等したとしても、凹部自身の形状によって標章自体の識別性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るタイヤの概略を示す子午線方向での半断面図である。
【
図2】
図1に示すタイヤのサイド部分を示す正面図である。
【
図17】
図2の凹部の他の例を示す部分断面図である。
【
図18】
図2の凹部の他の例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0019】
図1は本実施形態に係る空気入りタイヤの子午面に於ける部分概略断面図である。この空気入りタイヤでは、外部構造は、トレッド部1、ショルダー部2、サイド部3およびビード部4で構成されている。なお、内部構造についてはビードコア5以外を省略している。
【0020】
(第1実施形態)
図2に示すように、サイド部3には、その外表面から窪んだ、標章を構成する凹部6が形成されている。ここでは、凹部6は、タイヤの周方向に4箇所等分で形成されている。凹部6は、タイヤ径方向に、タイヤ断面高さの15%から45%の長さを有するのが好ましい。
図2には、「T」と「O」の文字に対応する形状の凹部6が示されている。
【0021】
図3に示すように、凹部6は、開口縁から徐々に内側に向かって傾斜する傾斜面7と、その内側の平坦面8とで構成されている。傾斜面7と平坦面8とで、本発明に係る表示底面9を構成している。表示底面9には、凹部6の開口縁からオフセットして彩色領域10が形成されている。ここでは、彩色領域10は、凹部6の開口縁の幅寸法(凹文字幅)に対し、開口縁からのオフセット量が0.5%〜40%となるように印刷されている。彩色領域10の印刷方法としては、インクジェット方式のほか、パット印刷、スクリーン印刷、熱転写等が挙げられる。また彩色領域10のオフセット方法には、次のような種々のパターンが考えられる。
【0022】
図4では、彩色領域10を凹部6の外縁から全周に亘ってオフセット量を均一にした基準位置に形成している(基準タイヤ)。
図5では、彩色領域10を、
図4に示す基準位置からタイヤの外径方向にのみ位置をずらせている。
図6では、彩色領域10を、
図4に示す基準位置からタイヤの内径方向にのみ位置をずらせている。
図7では、彩色領域10を、
図4に示す基準位置からタイヤの周方向(回転方向:車両を前進させる場合の回転方向)にのみ位置をずらせている。
図8では、彩色領域10を、
図4に示す基準位置からタイヤの周方向(回転方向とは逆方向)にのみ位置をずらせている。
図9では、彩色領域10を、
図4に示す基準位置からタイヤの径方向とタイヤの周方向とに位置をずらせている。
【0023】
凹部6は、前述の通りタイヤのサイド部3に設けられているが、その位置はタイヤ断面高さの30%から75%の範囲である。例えば、225/50R18のタイヤであれば、タイヤ断面高さは112.5mmとなり、凸部6は、33.75mmから84.375mmの範囲に設ければよい。
【0024】
以下の表1に、前記
図4から
図9に示す標章を形成したタイヤの視認性の評価結果を示す。評価方法は、車両にタイヤを装着し、1m離れたところから視認性(立体感、明瞭感)について、
図4に示す基準タイヤの指数を100として評価を行った。
【0026】
表1から明らかなように、彩色領域10をタイヤの径方向および周方向のいずれの方向にオフセットした場合であっても視認性を高めることができた。特に、タイヤの径方向および周方向のいずれの方向にもオフセットすることにより最も視認性を高めることができた。
【0027】
(第2実施形態)
図10に示すように、サイド部3の外表面には標章を構成する凸部11が形成されている。凸部11の外表面には凹部6が形成されている。凹部6およびそこに形成される彩色領域10の構成は前記第1実施形態と同様であるので、対応する部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0028】
また彩色領域10のオフセット方法についても、前記第1実施形態と同様に、
図11から
図16に示す5つのパターンが考えられる。但し、
図11から
図16では、説明上、凸部11の上端面に対して、周囲傾斜面および凹部6の傾斜面7との境界線は省略している。
【0029】
図11では、彩色領域10を凹部6の外縁から全周に亘ってオフセット量を均一にした基準位置に形成している(基準タイヤ)。
図12では、彩色領域10を、
図11に示す基準位置からタイヤの外径方向にのみ位置をずらせている。
図13では、彩色領域10を、
図11に示す基準位置からタイヤの内径方向にのみ位置をずらせている。
図14では、彩色領域10を、
図11に示す基準位置からタイヤの周方向(回転方向:車両を前進させる場合の回転方向)にのみ位置をずらせている。
図15では、彩色領域10を、
図11に示す基準位置からタイヤの周方向(回転方向とは逆方向)にのみ位置をずらせている。
図16では、彩色領域10を、
図11に示す基準位置からタイヤの径方向とタイヤの周方向とに位置をずらせている。
【0030】
以下の表2に、
図11から
図16に示す標章を形成したタイヤの視認性の評価結果を示す。評価方法については、前記第1実施形態と同様である。
【0032】
表2から明らかなように、彩色領域10をタイヤの径方向および周方向のいずれの方向にオフセットした場合であっても視認性を高めることができた。特に、タイヤの径方向および周方向のいずれの方向にもオフセットすることにより最も視認性を高めることができた。
【0033】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0034】
例えば、前記実施形態では、彩色領域10を凹部6の表示底面9を構成する平坦面8に形成するようにしたが、傾斜面7に形成することも可能である。但し、平坦面8であって、傾斜面7との境界線からさらに内側にオフセットさせた位置から形成するのが好ましい。彩色領域10内にエッジ部分(境界線)が存在せず、後に彩色領域10が剥がれやすくなることがなく、長期に亘って良好な視認性を維持することができるからである。
【0035】
また前記実施形態では、彩色領域10をタイヤの径方向、周方向およびその両方にオフセットさせる場合について説明したが、各オフセット量は彩色領域10が凹部6の表示底面9に形成されるのであれば、いずれの値をも取ることができる。そして、これらの構成により、前記同様に優れた視認性を発揮させることができる。
【0036】
また前記実施形態では、標章をサイド部3の周方向に4箇所等分で設けるようにしたが、その数は自由であり、等分に配置する必要もない。
【0037】
また前記実施形態では、凹部6に凹凸のない平坦面8を形成するようにしたが、サイド部3に直接、凹部6を形成する場合には
図17に示すように、サイド部3に形成した凸部11に凹部6を形成する場合には
図18に示すように、平坦面8に凹凸を形成するようにしてもよい。凹凸は複数の突起で形成したり、平行な複数の突条で形成したりすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…トレッド部
2…ショルダー部
3…サイド部
4…ビード部
4…ビードコア
6…凹部
7…傾斜面
8…平坦面
9…表示底面
10…彩色領域
11…凸部