(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(1)の後且つ工程(2)の前に、水溶性カルシウム塩を含有する洗浄液を通液して合成吸着剤を洗浄する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の精製アルカリプロテアーゼの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の精製アルカリプロテアーゼの製造方法は、アルカリプロテアーゼを含有する溶液を、主鎖のSP値が7〜11〔(cal/cm
3)
1/2〕の範囲内にある合成樹脂を母体とする合成吸着剤に接触させて、アルカリプロテアーゼを合成吸着剤に吸着させる工程(1)と、当該合成吸着剤に水溶性カルシウム塩を含有する有機溶媒水溶液を接触させて、アルカリプロテアーゼを溶出させる工程(2)、を含むものである。
【0010】
アルカリプロテアーゼは、アルカリ性領域に至適pHを有するプロテアーゼで、動物、植物、微生物等の任意の生物に由来するものが挙げられる。なかでも、活性中心がセリン残基である、セリンプロテアーゼが好ましく、更にバチルス属(
Bacillus)に属する微生物(例えば、
Bacillus subtilis、
Bacillus halodurans、
Bacillus clausii、
Bacillus alcalophilus、
Bacillus circulans、
Bacillus firmus、
Bacillus halmapalus等)が産生するセリンプロテアーゼが好ましい。
【0011】
アルカリプロテアーゼを産生する微生物の培養は、微生物の種類に応じて、一般的な方法に従って行うことができる。
産生されたアルカリプロテアーゼは、培養液、細胞破砕液、無細胞翻訳系等から取得することができる。本発明においては、遠心分離や精密濾過型フィルター等を用いて菌体を分離又は濃縮したその培養上清や溶菌液上清等の溶液を、工程(1)に供するアルカリプロテアーゼを含有する溶液とするのが好ましい。
【0012】
〔工程(1)〕
工程(1)では、アルカリプロテアーゼを含有する溶液を、主鎖のSP値が7〜11〔(cal/cm
3)
1/2〕の範囲内にある合成樹脂を母体とする合成吸着剤に接触させて、アルカリプロテアーゼを合成吸着剤に吸着させる。
アルカリプロテアーゼを含有する溶液のタンパク質濃度は、アルカリプロテアーゼの溶解性と安定性の点から、0.1〜15mg/mLが好ましく、0.5〜12mg/mLがより好ましく、1〜10mg/mLが更に好ましい。
【0013】
アルカリプロテアーゼを含有する溶液には、後述する水溶性カルシウム塩、好ましくは塩化カルシウムを含有させるのが好ましい。アルカリプロテアーゼを含有する溶液に水溶性カルシウム塩を含むことで、工程(2)においてアルカリプロテアーゼの回収率を一層高めることができる。
アルカリプロテアーゼを含有する溶液中の水溶性カルシウム塩の濃度は、アルカリプロテーゼの回収効率の点から、0.02〜30mMが好ましく、0.3〜15mMがより好ましく、1〜10mMが更に好ましい。
【0014】
また、アルカリプロテアーゼを含有する溶液には、酵素を安定化させる目的で、例えば、ホウ砂、ホウ酸等のホウ素化合物、アミノ酸、硫酸塩、リン酸塩等を含有させてもよい。アルカリプロテアーゼを含有する溶液中のホウ素化合物の含有量は0.05〜10wt%が好ましく、0.08〜8wt%がより好ましく、0.1〜5wt%が更に好ましい。
【0015】
アルカリプロテアーゼを吸着させる合成吸着剤は、主鎖のSP値が7〜11〔(cal/cm
3)
1/2〕の範囲内にある合成樹脂を母体とする。一般に、合成樹脂は不溶性の三次元架橋構造を有し、合成吸着剤を構成する。ここで、「主鎖」は、合成樹脂を構成するポリマー鎖のうち最も長い鎖である。また、本明細書において「SP値」とは、溶解度パラメーターを意味し、J.BRANDRUP著「POLYMER HANDBOOK 4th」(JOHN WILEY&SONS,INC 1999年発行)、VII688〜694項に示された値、又はFedorsの方法に従い、J.BRANDRUP著「POLYMER HANDBOOK 4th」、VII685〜686項に示されるパラメーターを用いて算出した値を用いることができる。
合成吸着剤は、イオン交換基のような官能基を実質的に持たないもので、そのイオン交換能は1meq/g未満が好ましい。
【0016】
合成樹脂の主鎖のSP値は、アルカリプロテーゼの回収効率の点から、7〜11〔(cal/cm
3)
1/2〕、8〜10〔(cal/cm
3)
1/2〕、更に9〜10〔(cal/cm
3)
1/2〕が好ましい。
【0017】
SP値が7〜11〔(cal/cm
3)
1/2〕の範囲内にある主鎖(括弧内はSP値を示す)としては、例えば、ポリスチレン鎖(8.5)、ポリメタクリル酸メチル鎖(9.1)、ポリメタクリル酸エチル鎖(9.0)、アクリル酸エチル鎖(9.5)等が挙げられる。
これらの主鎖を有する合成樹脂は、単独重合体、共重合体、架橋重合体等のいずれでもよいが、架橋重合体であることが好ましい。
【0018】
なかでも、合成吸着剤は、アルカリプロテーゼの回収効率の点から、その樹脂母体が、ポリスチレン、架橋ポリスチレン等のスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂であることが好ましく、更にスチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチルであることが好ましい。
また、合成吸着剤は、その樹脂母体が、側鎖にブロモ基やブチル基、フェニル基等の疎水性の官能基を有さないことが好ましい。
これらの例としては、例えば、アンバーライトXAD4、アンバーライトXAD16HP、アンバーライトXAD1180、アンバーライトXAD2000(以上、オルガノ社)、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンHP20SS、ダイヤイオンHP21、セパビーズSP850、セパビーズSP825、セパビーズSP700、セパビーズSP70(以上、三菱化学社)、VPOC1062(Bayer社)等のスチレン系合成吸着剤;ダイヤイオンHP1MG、ダイヤイオンHP2MG、セパビーズSP2MGS(以上、三菱化学社)等のメタクリル系合成吸着剤;アンバーライトXAD7HP(オルガノ社)等のアクリル系合成吸着剤が挙げられる。
合成吸着剤の形態は、球形、不均一形状等のいずれの形状であってもよいが、分離効率の点から、球形が好ましい。
【0019】
合成樹脂の平均粒子径(D32)は、アルカリプロテーゼの回収効率の点から、30〜1000μmが好ましく、更に50〜500μm、更に70〜250μmが好ましい。ここで、本明細書において「平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱法により測定したものであって、ザウター粒子径(D32)を平均粒子径としたものである。
【0020】
アルカリプロテアーゼを含有する溶液と合成吸着剤との接触は、バッチ方式、連続方式のいずれも用いることができる。工業的には、合成吸着剤を充填したカラムにアルカリプロテアーゼを含有する溶液を通液して接触させる連続方式を採用することが好ましい。
【0021】
合成吸着剤を充填したカラムにアルカリプロテアーゼを含有する溶液を通液する前においては、予め吸着剤を洗浄して、合成吸着剤中の不純物を除去するのが好ましい。
例えば、通液速度(空間速度、SV)が0.5〜5/hr、合成吸着剤の全容量に対する通液倍数(BV)が4〜10の通液条件で水をカラムに通液して洗浄する方法が挙げられる。また、有機溶媒水溶液を通液した後、水を通液してもよい。洗浄に用いる有機溶媒水溶液は、10〜90%(v/v)エタノール水溶液が好ましい。
【0022】
合成吸着剤の使用量は、アルカリプロテーゼの回収効率と使用する液量の点から、アルカリプロテアーゼを含有する溶液のタンパク質量に対して、1〜50mgタンパク質/mL−吸着剤が好ましく、10〜40mgタンパク質/mL−吸着剤がより好ましく、15〜30mgタンパク質/mL−吸着剤が更に好ましい。
【0023】
アルカリプロテアーゼを含有する溶液と合成吸着剤との連続方式での接触条件は、アルカリプロテーゼの回収効率の点から、SVが0.25〜10/hrであり、BVが1〜20であることが好ましく、更にSVが1〜5/hrであり、BVが2〜10であることが好ましい。これにより、アルカリプロテアーゼを合成吸着剤に十分吸着させることができる。
【0024】
〔洗浄工程〕
アルカリプロテアーゼを合成吸着剤に吸着させた後は、工程(2)の前に、合成吸着剤を洗浄液で洗浄する工程を行うのが好ましい。合成吸着剤を洗浄する洗浄液には、水、有機溶媒水溶液を使用できるが、後述する水溶性カルシウム塩、好ましくは塩化カルシウムを含有する洗浄液を用いるのが、溶解性の点から好ましい。
洗浄液中の水溶性カルシウム塩の濃度は、アルカリプロテーゼの回収効率の点から、0.02〜30mM、更に0.3〜15mM、更に1〜10mMが好ましい。
また、洗浄液として有機溶媒水溶液を用いる場合の有機溶媒の種類としては、SP値が12〜20〔(cal/cm
3)
1/2〕の範囲内のアルコール、ポリオール類等が挙げられ、エタノール、メタノール、エチレングリコールが好ましい。洗浄液中の有機溶媒の濃度は、アルカリプロテーゼの脱離の点から、10%(v/v)以下が好ましい。
洗浄の回数は、1回又は複数回行ってもよいが、アルカリプロテーゼの脱離の点から1回が好ましい。
【0025】
〔工程(2)〕
工程(2)では、アルカリプロテアーゼを吸着した合成吸着剤に水溶性カルシウム塩を含有する有機溶媒水溶液を接触させて、アルカリプロテアーゼを溶出させる。
水溶性カルシウム塩を含有する有機溶媒水溶液を溶離液として使用することにより、アルカリプロテアーゼを高収率で回収できる。
【0026】
本発明で用いられる水溶性カルシウム塩は、水溶液に溶解するカルシウム塩であり、例えば、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、酢酸カルシウム等の有機塩;硝酸カルシウム、塩化カルシウム等の無機塩が挙げられる。
なかでも、溶解性の点から、塩化カルシウムが好ましい。
【0027】
有機溶媒水溶液中の水溶性カルシウム塩の濃度は、0.02〜30mM、更に0.3〜15mM、更に1〜10mMが好ましい。
【0028】
有機溶媒水溶液における有機溶媒としては、ポリオール、炭素数4以下の一価アルコール等が挙げられる。なかでも、アルカリプロテーゼの回収効率と安定性の点から、ポリオールが好ましい。
ポリオールは、炭化水素の2個以上の水素を水酸基で置換したアルコール類の総称であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール等のアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類等が挙げられる。ポリエチレングリコールの重量平均分子量は、200〜20,000のものが好ましい。
なかでも、ポリオールは、SP値が7〜20〔(cal/cm
3)
1/2〕の範囲内、好ましくはSP値が9〜18〔(cal/cm
3)
1/2〕の範囲内にあるポリオールが好ましい。
このようなポリオール(括弧内はSP値を示す)としては、プロピレングリコール(12.6)、ポリエチレングリコール400(9.4)、グリセリン(16.5)が好ましく、更にプロピレングリコール(12.6)、ポリエチレングリコール400(9.4)が好ましい。
【0029】
有機溶媒水溶液における有機溶媒の濃度は、アルカリプロテーゼの回収効率と安定性の点から、20〜80%(v/v)、更に40〜80%(v/v)が好ましい。
また、有機溶媒水溶液のSP値は15〜22〔(cal/cm
3)
1/2〕、更に16〜20〔(cal/cm
3)
1/2〕であることが好ましい。
【0030】
有機溶媒水溶液の通液条件は、アルカリプロテーゼの回収効率と液量の点から、SVが0.25〜10/hrであり、BVが1〜10であることが好ましく、更にSVが1〜5/hrであり、BVが2〜8であることが好ましい。
【0031】
溶出工程は、1回又は複数回行うことができる。
溶出工程を複数回行う場合、各溶出工程で使用する有機溶媒水溶液における有機溶媒の濃度は、順次高めることが好ましく、例えば、1段階目の溶出工程を20〜60%(v/v)の有機溶媒水溶液を用いて行い、2段階目の溶出工程を40〜80%(v/v)の有機溶媒水溶液を用いて行う手法などが好ましい。
なお、溶出工程を複数回行う場合も、全ての溶出段階で前述した水溶性カルシウム塩を含有する有機溶媒水溶液を使用することが好ましい。
【0032】
このような処理の結果、アルカリプロテアーゼが精製され、清澄な精製アルカリプロテアーゼが得られる。精製アルカリプロテアーゼは、そのまま、又は濃縮・希釈してもよい。
精製アルカリプロテアーゼは、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上という高い収率で回収することができる。なお、収率の上限は特に限定されず、100%であってもよい。
【0033】
本発明で得られる精製アルカリプロテアーゼは、様々な製品に使用することができる。とりわけ、洗剤用酵素、更に液体洗剤用酵素として有用である。
【実施例】
【0034】
〔平均粒径の測定〕
合成樹脂の平均粒子径の測定には、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置LS 13 320(ベックマン・コールター製)を用い、ザウターの平均粒子径を使用した。
【0035】
〔タンパク質濃度の測定〕
粗酵素溶液又は精製酵素溶液を蒸留水で任意に希釈したものを、クイックプロテインアッセイキット(バイオラッド製)にて測定した。標準タンパク質として、BSA(ウシ血清アルブミン)を用いて濃度の算出を行った。
【0036】
〔アルカリプロテアーゼ回収率の算出方法〕
アルカリプロテアーゼ回収率の算出については、粗酵素溶液、精製酵素溶液のタンパク質の定量結果を基に、粗酵素溶液に含まれるタンパク質はほとんどがアルカリプロテアーゼであったため、以下の算出式(1)にて算出を行った。
アルカリプロテアーゼの回収率(%)={(精製酵素溶液のタンパク質濃度)×(精製酵素溶液の回収量)}/{(粗酵素溶液のタンパク質濃度)×(粗酵素溶液の通液量)}×100 (1)
【0037】
〔吸着工程、水洗工程のアルカリプロテアーゼ回収率の算出方法〕
吸着工程、水洗工程のアルカリプロテアーゼ回収率の算出は以下の算出式(2)〜(3)にて算出を行った。
吸着工程のアルカリプロテアーゼ回収率(%)=100−{(吸着工程透過液のタンパク質濃度)×(吸着工程透過液の回収量)}/{(粗酵素溶液のタンパク質濃度)×(粗酵素溶液の通液量)}×100 (2)
水洗工程のアルカリプロテアーゼ回収率(%)=吸着工程のアルカリプロテアーゼ回収率−{(水洗工程透過液のタンパク質濃度)×(水洗工程透過液の回収量)}/{(粗酵素溶液のタンパク質濃度)×(粗酵素溶液の通液量)}×100 (3)
【0038】
実施例1
バチルス エスピーKSM−9865(FERM P−18566号)を培養し、アルカリプロテアーゼの生産を行った。培養液を遠心分離して菌体を分離した後、精密ろ過膜モジュール(中空糸状精密濾過膜、旭化成(株)、PSP−113L)により除菌し、粗酵素溶液を得た。粗酵素溶液のタンパク質濃度は3.16mg/mLであった。
【0039】
カラム(内径23mm、高さ3.6cm、体積15mL)に吸着剤としてセパビーズSP2MGS(三菱化学(株)製)をスラリー充填法にて15mL充填した。蒸留水を流量0.5mL/分、SV=2/hr、BV=5で通液し、平衡化を行った。
次いで、塩化カルシウムを2mM添加溶解させた粗酵素溶液90mLを平衡化後のカラムに対して流量0.5mL/分、SV=2/hr、BV=6で通液し、吸着を行った。吸着工程のアルカリプロテアーゼ回収率は99.4%であった。
次いで、洗浄液として2mM塩化カルシウム水溶液15mLを、流量0.5mL/分、SV=2/hr、BV=1で通液し水洗を行った。水洗工程のアルカリプロテアーゼ収率は99.4%であった。
【0040】
水洗後のカラムに対して、溶出液として、2mM塩化カルシウムを含む40%(v/v)プロピレングリコール(PG)水溶液(SP値19.1)45mL、2mM塩化カルシウムを含む80%(v/v)プロピレングリコール水溶液(SP値19.9)45mLをそれぞれ流量0.5mL/分、SV=2/hr、BV=3で順次通液し、脱離を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は90.7%であった。
【0041】
実施例2
粗酵素溶液中及びプロピレングリコール水溶液中の塩化カルシウムの濃度を0.5mMに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は80.2%であった。
【0042】
実施例3
粗酵素溶液中及びプロピレングリコール水溶液中の塩化カルシウムの濃度を10mMに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は95.2%であった。
【0043】
実施例4
粗酵素溶液、洗浄液及びプロピレングリコール水溶液に、さらにホウ砂1(w/v)%をそれぞれ添加した以外は実施例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率84.4%であった。
【0044】
実施例5
40%(v/v)プロピレングリコール水溶液を40%(v/v)ポリエチレングリコール400(PEG400)水溶液(SP値17.8)、80%(v/v)プロピレングリコール水溶液を80%(v/v)ポリエチレングリコール400水溶液(SP値18.9)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は100%であった。
【0045】
実施例6
40%(v/v)プロピレングリコール水溶液を40%(v/v)グリセリン水溶液(SP値20.6)、80%(v/v)プロピレングリコール水溶液を80%(v/v)グリセリン水溶液(SP値21.2)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は66.5%であった。
【0046】
実施例7
粗酵素溶液、吸着後の洗浄液に塩化カルシウムを添加しないこと以外は実施例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は83.2%であった。
【0047】
比較例1
粗酵素溶液、吸着後の洗浄液及び溶出液に塩化カルシウムを添加しないこと以外は実施例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は7.0%であった。
【0048】
実施例8
合成吸着剤としてダイヤイオンHP2MG(三菱化学(株)製)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は69.1%であった。
【0049】
実施例9
合成吸着剤としてダイヤイオンHP2MG(三菱化学(株)製)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は72.5%であった。
【0050】
比較例2
合成吸着剤としてダイヤイオンHP2MG(三菱化学(株)製)を用いた以外は比較例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は25.9%であった。
【0051】
実施例10
吸着剤としてダイヤイオンHP20SS(三菱化学(株)製)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は48.6%であった。
【0052】
実施例11
吸着剤としてダイヤイオンHP20SS(三菱化学(株)製)を用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は61.3%であった。
【0053】
比較例3
吸着剤としてダイヤイオンHP20SS(三菱化学(株)製)を用いた以外は比較例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は32.6%であった。
【0054】
比較例4
吸着剤としてセルファインフェニル(JNC(株)製)(母体の主鎖はセルロース、側鎖はフェニル基)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、精製酵素溶液を回収した。粗酵素溶液からの精製アルカリプロテアーゼの回収率は41.2%であった。
【0055】
実施例及び比較例における製造条件、各工程でのアルカリプロテアーゼの回収率を表1及び表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1及び表2より明らかなように、所定の疎水性合成吸着剤を用い、水溶性カルシウム塩を含む有機溶媒水溶液を通液してアルカリプロテアーゼを溶出させることにより、粗酵素溶液から精製アルカリプロテアーゼを高収率で回収できることが確認された。実施例1と実施例7の対比より、粗酵素溶液にも水溶性カルシウム塩を添加することで、より高収率で精製アルカリプロテアーゼを回収できることが確認された。
また、小粒径の合成吸着剤を用いることが好ましいことが確認された。