(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581380
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】充填用容器に充填物を充填する方法および装置
(51)【国際特許分類】
B67C 3/10 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
B67C3/10
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-77712(P2015-77712)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2015-199545(P2015-199545A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2018年2月23日
(31)【優先権主張番号】10 2014 104 872.5
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508120916
【氏名又は名称】クロネス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マインツィンガー ルパルト
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第00582285(US,A)
【文献】
特開2001−261096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/00 − 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填用容器(100)を充填物で充填する方法であって、
前記充填用容器(100)を充填パイプ(2)に圧密的に接続するステップと、
前記充填用容器(100)内の初期圧(PINI)を特定するステップと、
前記充填物で前記充填用容器(100)を充填するステップと、
前記充填用容器(100)内が所定のカットオフ圧(PCUT)に達すると、前記充填用容器(100)の充填を終了するステップと、
を備えており、
前記カットオフ圧(PCUT)は、測定された前記初期圧(PINI)に基づき、所望の充填量、前記充填用容器(100)の内部空間(112)の容積、および前記充填パイプ(2)が寄与する容積を考慮して特定される、
方法。
【請求項2】
充填用容器(100)を充填物で充填する方法であって、
前記充填用容器(100)を充填パイプ(2)に圧密的に接続するステップと、
前記充填用容器(100)内の初期圧(PINI)を特定するステップと、
前記充填物で前記充填用容器(100)を充填するステップと、
前記充填用容器(100)内が所定のカットオフ圧(PCUT)に達すると、前記充填用容器(100)の充填を終了するステップと、
を備えており、
前記充填物は、前記カットオフ圧(PCUT)で供給され、前記充填用容器(100)内の前記初期圧(PINI)は、前記カットオフ圧(PCUT)に応じて調節される、
方法。
【請求項3】
前記充填物が充填される前に、絶対圧0.5バールから0.05バールの範囲になるまで、前記充填用容器(100)が排気されることを特徴とする、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記充填用容器(100)に充填される前記充填物は、絶対圧1バールから9バールの範囲とされることを特徴とする、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記充填用容器(100)に前記充填物を充填している間、当該充填物は、前記カットオフ圧(PCUT)よりも高い圧力とされることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記充填用容器(100)内の圧力変化が測定され、前記カットオフ圧(PCUT)に達すると充填が終了されることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記充填用容器(100)内の圧力変化が測定され、圧力の時間微分値(dP/dt)が所定値に達すると充填が終了されることを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
充填用容器(100)を充填物で充填する装置(1)であって、
充填バルブ(50)を介して充填物供給部(5)と連通可能であり、前記充填用容器(100)と圧密的に接続するための充填パイプ(2)と、
前記充填用容器(100)内の初期圧(PINI)を特定するための圧力計(4)と、 前記初期圧(PINI)が特定された後に前記充填バルブ(50)を開き、前記充填用容器(100)内が所定のカットオフ圧(PCUT)に達すると前記充填バルブ(50)を閉じるように構成された制御装置と、
を備えており、
前記カットオフ圧(PCUT)は、測定された前記初期圧(PINI)に基づき、所望の充填量、前記充填用容器(100)の内部空間(112)の容積、および前記充填パイプ(2)が寄与する容積を考慮して特定される、
装置。
【請求項9】
充填用容器(100)を充填物で充填する装置(1)であって、
充填バルブ(50)を介して充填物供給部(5)と連通可能であり、前記充填用容器(100)と圧密的に接続するための充填パイプ(2)と、
前記充填用容器(100)内の初期圧(PINI)を特定するための圧力計(4)と、 前記初期圧(PINI)が特定された後に前記充填バルブ(50)を開き、前記充填用容器(100)内が所定のカットオフ圧(PCUT)に達すると前記充填バルブ(50)を閉じるように構成された制御装置と、
を備えており、
前記充填物は、前記カットオフ圧(PCUT)で供給され、前記充填用容器(100)内の前記初期圧(PINI)は、前記カットオフ圧(PCUT)に応じて調節される、
装置。
【請求項10】
複数の充填パイプ(2)が設けられており、当該複数の充填パイプ(2)の各々が前記圧力計(4)を備えていることを特徴とする、
請求項8または9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填用容器に充填物を充填する(特に飲料充填設備において容器に飲料を充填する)方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料充填設備においては、充填エレメントによって容器に充填物を充填することが知られている。この場合、各充填要素は、充填用容器に接続されうる充填パイプを備えている。当該充填パイプには、当該容器に充填物を送り込むために、充填バルブを介して充填物が装填されうる。当該充填バルブを開閉することにより、充填用容器への充填物の流れが制御される。これにより、当該容器に導入される充填物の量が規制される。
【0003】
特に容器に炭酸を含む充填物(例えば、ビール、ミネラルウォーター、ソフトドリンクのような炭酸飲料)が充填される場合、充填パイプは、充填用容器に対して圧密的に接続される。充填用容器に炭酸を含む充填物が充填される前に、当該充填用容器は、過剰圧になるように、加圧ガスで予圧される。予圧がなされると、充填物による容器の充填が行なわれる。加圧ガスとしては、例えば二酸化炭素が使用される。したがって、二酸化炭素が結合した炭酸入り充填物は、充填用容器内の二酸化炭素圧が高められた状態で充填される。これにより、充填物からの二酸化炭素の放出が抑制あるいは完全に防止されうる。このようにして、充填用容器内の充填物の発泡を抑制あるいは防止でき、充填工程が全体として短縮される。この方法は、カウンタープレッシャー充填法としても知られている。
【0004】
充填バルブの閉塞は、所定量の充填物を計量可能な流量メータにより制御されうる。充填物が所定量に達すると、充填エレメントが閉塞されうる。
【0005】
充填用容器に導入される充填物を投入室へ予備投入することも知られている。通常、投入室は、較正された体積を有している。投入室に収容された充填物は、すべて充填用容器へ排出され、当該充填用容器を充填する。投入室から全ての充填物が流出すると、充填バルブが閉塞される。
【0006】
所定の充填量で充填用容器を充填する上述の方法に加え、所定の充填高さまで充填用容器を充填する方法も知られている。これを遂行するための様々な手法が知られている。例えば、高さプローブを充填用容器に挿入することが知られている。この高さプローブは、充填物が所定の高さに達すると、例えば電気回路を通じて充填バルブを閉じる。
【0007】
いわゆる真空充填法も知られている。当該方法においては、予め真空排気された充填用容器に炭酸を含まない流体が導入される。充填物で満たされた容器内に吸引チューブを差し込み、当該吸引チューブに負圧を印加することによって、当該吸引チューブの下端により定まる所望の充填高さに達するまで、充填物を容器から引き出すことにより、充填高さの正確な調節が行なわれる。この場合、吸引チューブは、負圧が印加された充填物リザーバ中の充填物と連通しており、吸引による流体の急速抜き取りを可能にしている。また、充填物が滴ることなく吸引チューブ内に保持されることを可能にしている。そのような真空充填の例は、特許文献1と2に記載されている。
【0008】
これらの真空充填装置と真空充填方法は、炭酸飲料の充填には用いられていない。負圧や真空の適用は、当該炭酸飲料内の二酸化炭素を直ちに放出してしまうからである。結果として、充填工程において発泡が生じやすくなり、充填時間が長くなる。したがって、上記の先行技術においては、炭酸飲料の充填を真空充填法の対象外としている。
【0009】
充填重量の判断によって充填用容器の充填を制御することも知られている。この場合、充填用容器は秤量セルと結合される。秤量セルは、充填用容器に導入された充填物の重量を測定する。所定の充填重量に達すると、充填バルブが閉じられる。充填物の密度が既知であれば、当該充填重量から充填されている量も推定されうる。この場合、所定の充填量に達すると、充填バルブが閉じられる。
【0010】
これまで説明した充填用容器を充填する方法は、流量計、ドージングチャンバ、高さプローブ、戻り空気チューブ、秤量セルなどの追加コンポーネントを必要とする。この場合、装置が全体として複雑となり、追加的な清掃や保守が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国実用新案第8308618U1号公報
【特許文献2】独国実用新案第8308806U1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記に鑑み、本発明は、充填の終了を判断する別手法を提供するための、充填用容器を充填物で充填する方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する方法により達成される。さらなる有利な構成は、従属請求項に記載の特徴により得られる。
【0014】
ここに提案される方法は、充填用容器を充填物で充填する方法であって、
前記充填用容器を充填パイプに圧密的に接続するステップと、
前記充填用容器内の初期圧を特定するステップと、
前記充填物で前記充填用容器を充填するステップと、
前記充填用容器内が所定のカットオフ圧に達すると、前記充填用容器の充填を終了するステップと、
を備えている。
【0015】
充填用容器の充填は、充填用容器内が所定のカットオフ圧に達すると終了される。そのため、良好な充填正確性が達成されうる。この場合における充填正確性は、充填物の流量および充填時間に依存しない。開始時において初期圧のみが考慮されるからである。充填正確性は、充填される量にも依存しない。本方法は、特に0.2Lから0.5Lといった少量の充填物を容器に充填する場合にも適用できる。また、本方法によれば、充填用容器への充填物の充填が突発的になされる場合でも、所望の充填量に達した際に確実に充填を終了できる。
【0016】
本方法を遂行するにあたっては、充填用容器内の圧力を特定することのみが必要である。そのため、装置の構成を簡略化できる。好適な実施形態においては、例えば、中央圧力計が設けられてもよいし、飲料充填設備における各充填エレメント(ロータリフィラーなど)ごとに圧力計が設けられてもよい。
【0017】
充填物の充填前に充填用容器が排気される場合、あるいは充填物供給部内の充填物に対して充填用容器内が負圧とされる場合、充填バルブが開かれると直ちに充填物が充填用容器内へ突発的に放出される。これにより、充填中に充填用容器の圧力が上昇する。
【0018】
例えば、絶対圧0.5バールから0.05バールの範囲になるまで、好ましくは絶対圧0.3バールから0.1バールの範囲になるまで、より好ましくは絶対圧0.1バールになるまで、充填物の充填前に充填用容器が排気されると、まず充填物は、大気圧(絶対圧1バール)に致るまで、残存気体に占められていないスペースに充填される。
【0019】
充填用容器内の初期圧と充填用容器の容積が既知であるため、大気圧に至るまでに当該充填用容器内に導入される充填物の量は、当該情報から容易に特定できる。このようにして、容器への充填量は、当該容器内の初期圧のみに基づいて特定されうる。充填物が大気圧で供給される場合、充填用容器の初期圧から直接的かつ容易に充填量が推定されるため、充填量の特定が特に容易になる。充填量は、充填用容器の初期圧の変化によって変わりうる。
【0020】
例えば、全容量の5%がヘッドスペースとして必要である場合、充填用容器を0.05バールまで排気し、次いで大気圧になるまで充填物を充填すれば、当該結果が正確に達成されうる。カットオフ圧は大気圧であり、充填物供給部と容器の間で平衡状態が形成される。しかしながら、この計算は、充填パイプの容量を考慮していない。より正確な充填量の特定のためには、これを考慮する必要がある。
【0021】
このようにして得られた充填量が所望の充填量に至っていない場合、既知である充填用容器の初期圧に基づき、カットオフ圧を特定できる。カットオフ圧は、残存気体を圧縮しつつ所望の追加量を容器に導入するために、さらに上昇させることを要する圧力である。
【0022】
平衡状態に達するために充填物がカットオフ圧で供給される場合、カットオフ圧に達すると、充填物の圧力を経時的に変化させる必要がある。充填物が容器に加える圧力は、充填物が供給される際の圧力のみならず、充填物の静水圧(すなわち、容器に加わる流体柱の圧力)にも依存するからである。しかしながら、特に充填物供給部が充填物リザーバ(リングボウル、セントラルべセルなど)を介する場合、この流体柱は変化しうる。
【0023】
カットオフ圧は、測定された初期圧に基づき、所望の充填量、充填用容器の内部空間の容積、および前記充填パイプが寄与する容積を考慮して特定されることが好ましい。
【0024】
充填用容器に充填される充填物は、絶対圧1バールから9バールの範囲、好ましくは絶対圧2.5バールから6バールの範囲、より好ましくは絶対圧2.8バールから3.3バールの範囲とされて供給されることが好ましい。これにより、充填物と充填用容器内の初期圧の間の圧力勾配が、充填用容器への充填物の充填を迅速に(より好ましくは突発的に)する。
【0025】
充填用容器内の初期圧は、カットオフ圧に応じて調節されることが特に好ましい。これにより、所望の充填量が達成されうる。換言すると、充填物の圧力がカットオフ圧になるように変化すると、容器内の排気状態の変化により、所望量の充填物が充填されうる。
【0026】
さらに好適な実施形態においては、充填用容器に充填物を充填している間、当該充填物は、カットオフ圧よりも高い圧力とされる。よって、所望の充填量に達しても、充填物の流れは容器内の圧力が平衡状態に達することによっては静止せず、積極的に終了させることを要する。したがって、充填工程は、所定のカットオフ圧に達すると、例えばバルブを閉じることによって、積極的に終了される。
【0027】
さらに好適な実施形態においては、充填用容器内の圧力変化が測定され、圧力上昇と圧力の時間微分値の少なくとも一方が所定値に達すると充填が終了され、好ましくは充填バルブが閉じられる。よって、例えば圧力が非常にゆっくりと上昇し、充填工程がもはや効率的に遂行できない場合に、充填を終了できる。圧力上昇は、初期圧と所望の充填量に基づいて特定され、所定のカットオフ圧に対応する。
【0028】
また、上記の目的は、請求項10に記載の特徴を有する装置によって達成される。この場合においても、さらなる有利な構成は、従属請求項に記載の特徴により得られる。
【0029】
本装置は、充填用容器を充填物で充填する装置であって、
充填バルブを介して充填物供給部と連通可能であり、前記充填用容器と圧密的に接続するための充填パイプと、
前記充填用容器内の初期圧を特定するための圧力計と、
前記初期圧が特定された後に前記充填バルブを開き、前記充填用容器内が所定のカットオフ圧に達すると前記充填バルブを閉じるように構成された制御装置と、
を備えている。
【0030】
本装置は、充填用容器内の初期圧を特定する圧力計を必要とするのみであり、プラント全体の構成、特に所望量の充填物を充填用容器に充填できるようにするための部品が、大幅に単純化されうる。圧力計は、各充填エレメントの充填パイプに配置されて充填用容器の内圧および充填中の圧力が計測できるようにしてもよい。あるいは、充填前の容器と充填中の容器の圧力を特定できるように、複数の充填エレメント(好ましくは全ての充填エレメント)が単一の圧力計によって動作されうる構成としてもよい。
【0031】
例えば、充填が行なわれる前に、充填用容器に負圧をもたらす真空装置に充填パイプを接続してもよい。この真空装置は、全ての充填エレメントを対象とする中央装置でありうる。したがって、すべての充填エレメントに負圧をもたらす真空ラインは、単一の圧力計でモニタされうる。この圧力計により測定される圧力は、各容器に提供される圧力とみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明のさらなる好適な実施形態と態様は、以下に列挙する図面と以降の記載を通じてより詳細に説明される。
【0033】
【
図1】充填用容器とともに充填用容器を充填する装置(第一状態)を示している。
【
図2】
図1から第二状態に至った装置を示している。
【
図3】前図から第三状態に至った装置を示している。
【
図4】充填工程中の充填物の流量変化と容器内圧を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面の補助を得つつ、好適な実施形態の例が以下に記載される。各図においては、同一または同様の要素、あるいは同一の効果を奏する要素は、同一の参照符号により指示される。これらの要素について繰り返しとなる説明の一部は、冗長性を避けるために省略される。
【0035】
図1において、充填用容器100を充填物で充填する装置1が示されている。装置1は、充填パイプ2を備えている。充填パイプ2は、把持蓋20を有している。把持蓋20には充填用容器100の口110が圧密的に収容されうる。これにより、充填用容器100の内部空間112が充填パイプ2と圧密的に接続される。
【0036】
真空ライン3が設けられている。真空ライン3は、真空バルブ30を介して充填パイプ2と接続されうる。結果として、真空ライン3は、充填用容器100の内部空間112とも接続されうる。真空ライン3は、絶対圧0.5バールから0.05バール(好ましくは0.3バールから0.1バール、より好ましくは0.1バール)の範囲の負圧をもたらす。結果として、絶対圧0.5バールから0.05バール(好ましくは0.3バールから0.1バール、より好ましくは0.1バール)の対応する負圧が、充填用容器100の内部空間112に形成される。
【0037】
充填用容器100が
図1に模式的に示された状態、すなわち真空バルブ30が開かれた状態にあるとき、初期圧P
INIとして計測される所定の負圧がもたらされうる。計測は、例えば圧力計4(模式的に示すのみ)によってなされる。圧力計4は、充填パイプ2と連通しており、よって充填用容器100の内部空間112とも連通している。これにより、圧力計4は、真空バルブ30が閉じられた後における充填用容器100の内部空間112の圧力を特定するためにも用いられうる。
【0038】
あるいは、圧力計4は、真空ライン3または不図示の真空源(例えば真空ポンプ)自体に設けられうる。圧力計4は、まず充填用容器100内の初期圧P
INIを測定するためだけに機能する。圧力計4が真空ライン3または真空源に配置されている場合、真空ライン3における圧力または真空源によりもたらされる圧力は、わずかに遅れて充填用容器100の内部空間112に達すると考えられる。真空ライン3または真空源に圧力計4が配置される手法によれば、充填用容器100の内部空間112の圧力が確実に特定されうる。
【0039】
図2において、充填用容器100を充填する装置1は、本方法の第二状態にある。真空バルブ30は閉じられ、充填バルブ50が開かれている。これにより、充填パイプ2を介して、充填物供給部5と充填用容器100の内部空間112の接続が形成される。したがって、充填物供給部5内の充填物が容器100内に進入できる。
【0040】
充填物供給部5内の充填物は、充填用容器100内の初期圧P
INIに対して正圧状態(例えば、絶対圧1バールから9バール)にあることが特に好ましい。
【0041】
これにより、供給される充填物を大気圧に対応する正圧(例えば絶対圧1バール)にできる。よって、当該正圧は、充填用容器100内に形成された負圧に対しても正圧とされる。結果として、供給される充填物と容器100の間に圧力勾配が生じる。
【0042】
また、充填物の正圧は、当該充填物の飽和圧に対応しうる。当該正圧は、絶対圧1.1バールから6バールの範囲であることが好ましい。飽和圧に対応する正圧により、炭酸入り充填物内の二酸化炭素の放出を抑制できる。
【0043】
別例においては、充填物の正圧は、当該充填物の飽和圧よりも高い。当該正圧は、絶対圧1.6バールから9バールの範囲であることが好ましい。特に充填物の飽和圧を上回る程度に正圧を高くすることにより、充填物中の二酸化炭素を飽和状態にすることが可能であり、充填物と充填用容器100の間の圧力勾配を大きくできる。これにより、充填工程がさらに短縮される。
【0044】
充填用容器100の内部空間112内に負圧が形成され、充填物供給部5内の充填物が正圧で供給されるため、充填用容器100の充填は、突発的に行なわれうる。充填用容器100内が所定のカットオフ圧P
CUTに達し、所望量の充填物が得られると、直ちに充填バルブ50が閉じられる。
【0045】
充填工程の完了時を判断するために、不図示の制御装置は、充填バルブ50が開かれる前に測定された充填用容器100内の初期圧P
INIに基づいて演算を行なう。充填物の一部は、圧力平衡が形成されるまで、あるいは所定のカットオフ圧P
CUTに達するまで、充填用容器100へ導入可能である。
【0046】
換言すると、充填工程中における充填用容器100内の圧力変化は、充填工程の開始時における充填用容器100内の初期圧P
INIに(すなわち、容器100内に残存する気体に)依存する。容器100の充填物による充填は、充填物が残存気体とスペースを共有するようになされる。したがって、容器100の内圧は上昇する。得られる圧力曲線は、容器100の現在の充填状態を特定する手段となりうる。例えば、未充填状態の容器100内の初期圧P
INIに基づいて、充填工程が終了に至る点も特定されうる。
【0047】
例えば、充填用容器100が500mLの呼び容積を有し、容器のヘッドスペースが20mLであり、バルブ30、50、60より下方の充填パイプ2内の空間が5mLである場合、全容積は525mLとなる。真空バルブ30が開かれると、まずこの値が求められる。
【0048】
図2に示されるように、真空バルブ30が閉じられて充填バルブ50が開かれると、525mLの全容積が、充填物供給部5からの充填物により満たされる。本例においては、充填物供給部5内の充填物に対して充填用容器100内が負圧であるため、充填物は充填用容器100内に放出される。この充填物が炭酸入りである場合、圧力差に起因して発泡が生じやすい。充填物内の泡は、充填パイプ2、ヘッドスペースH、および容器の内部空間112を含む全容積にわたって生ずる。
【0049】
例えば0.1バールの絶対圧この全容積が求められると、充填前の充填用容器100内に存在していた体積52.5mLの残存気体が残る。充填用容器100の前処理に応じて、残存気体は、二酸化炭素、他の不活性ガス、空気、あるいは他の混合気体である。
【0050】
したがって、充填物供給部5を通じて、充填量472.5mLの充填物が、常圧(すなわち大気圧)に達するまで充填用容器100に供給されうる。
【0051】
例えば510mLの呼び容量に到達するために、充填物は充填物供給部5を通じて充填用容器100に流入し続けることを要する。そして当該充填物は、残存気体を圧縮し、大気圧下で52.5mLの体積を置き換える。これにより、所望の呼び容量である510mLに到達するために、37.5mLの不足充填量が圧力により押し込まれうる。
【0052】
したがって、残存気体の適度な圧縮を可能にするために、充填物は、少なくとも1.4バールの絶対圧充填物供給部5を通じて充填されることを要する。充填物供給部5内の充填物がこの圧力であれば、充填物供給部5、充填パイプ2、充填用容器100の内部空間112の間で圧力平衡が得られる。これにより、1.4バールの絶対圧充填用容器100への総充填量が510mLとなる。
【0053】
充填用容器100を充填物で充填する前に充填用容器100の内圧を特定することにより、充填用容器100を充填物で充填する装置1は、容器100内が所定のカットオフ圧P
CUTに達すると、充填を終了できる。上述の実施形態においては、既にカットオフ圧P
CUTにある充填物供給部5内の充填物を供給することにより、所定のカットオフ圧P
CUTが達成される。よって、充填用容器100の充填は、充填用容器100の内部空間112の圧力と充填物供給部5内の圧力が平衡するまでの間のみ継続する。
【0054】
よって、充填物圧の計測と供給の少なくとも一方は、カットオフ圧P
CUTとの組合せにより、充填工程が始まる前であっても、充填用容器に導入される充填物の体積を特定する。
【0055】
充填用容器100への充填物の正確な充填を可能にするために、上述の実施形態においては、気体ロックを充填パイプ2か充填物供給部5に導入する必要がある。気体ロックは、ほぼ満たされた容器100と充填物供給部5の間で圧力が平衡した際に、残存気体が容器100から充填物供給部5へ逆流することを防止するためのものである。そのような充填物供給部5への残存気体の逆流を許容すると、容器100に充填物が充填され過ぎてしまう。したがって、容器100からの残存気体の逆流は、さらに正確な充填結果を得るために防止されねばならない。
【0056】
充填用容器100の内部空間112の圧力と充填物供給部5の圧力の間で平衡状態が形成される平衡法によれば、始めは充填が素早くなされるものの、平衡状態が実際に形成される前には充填速度が下がり、平衡状態に達すると充填が止まる。
【0057】
一変形例においては、上述のカットオフ圧P
CUTが、測定された充填用容器100の初期圧P
INIから再特定される。例えば、絶対圧1.4バールのカットオフ圧P
CUTは、絶対圧0.1バールの初期圧P
INIに基づいて再特定される。しかしながら、この変形例の場合、充填物供給部5内の充填物は、非常に高い圧力(好ましくは絶対圧1.5バールから9バール)とされる。
【0058】
充填物供給部5を通じて充填物が充填用容器に流入するとき、充填用容器100の内部空間112の圧力変化が、圧力計4によってモニタされる。そして、所定のカットオフ圧P
CUT(上記の例においては1.4バール)に達すると、充填バルブ50が閉じられうる。充填バルブ50は、充填済みの容器100内の圧力に対して高い圧力が充填物供給部5内に残っている間に閉じられる。充填物供給部5内の充填物を所定のカットオフ圧P
CUTよりも高い圧力で供給することにより、容器100の充填が素早くあるいは突発的に行なわれ、充填工程が迅速に完了されうる。
【0059】
したがって、充填物は、充填バルブ50が閉じられるまで充填用容器100内の圧力に対して正圧である。これにより、充填物の流入を迅速にできる。さらに、圧力差とこれに伴う容器100への充填物の流入により、容器100からの充填物供給部5への残存気体の逆流が防止されうる。よって、カットオフ圧P
CUTの特定に基づく圧力比に依存する容器100の充填が遂行されうる。これにより、所定の充填量が正確に達成されうる。また、一定の圧力差と容器100にのみ向かう充填物の流れによって残存気体の逆流が防止されるため、上述の気体ロックを省略できる。
【0060】
図3は、本方法の次工程を示している。充填用容器100を充填物で充填する装置1は、加圧ガス装置6を介して充填バルブ2に接続されている。加圧ガス装置6は、加圧ガスバルブ60を備えている。加圧ガスバルブ60は、残存充填物を充填パイプ2から押し出し、発泡した充填物を充填用容器100の内部空間112へ押し入れるためのものである。この手法により、主に泡の形態で充填パイプ2内に残っている充填物を排除できる。さらに、ヘッドスペースHに充填物の泡がない状態のままになるように、充填物が充填用容器100の内部空間に導入されうる。
【0061】
図4に充填工程中の各種パラメータの相互関係が模式的に示されている。x軸は時間tを示し、y軸は流量Vを示している。よって、符号Vが付された曲線は、容器100に流入する充填物の流量の時間変化を表している。
【0062】
図4のグラフは、符号Pが付された第二の曲線も示している。これは、充填パイプ2の内圧Pの時間変化を表しており、容器の内部空間112の圧力変化も表している。圧力Pの曲線と流量Vの曲線は相関しており、任意の時点での容器100への流量Vは、当該時点における容器100内の圧力Pに対応している。
【0063】
充填工程の開始時(
図4において「負圧」と記された第一フェーズ)において、流量Vは非常に高い。正圧とされた充填物が充填用容器100に導入されると、特に充填用容器内で依然として負圧とされている領域において、充填が突発的に行なわれる。この圧力差の結果として、流量が非常に高くなる。
【0064】
この手法においては、大気圧(すなわち絶対圧1バール)に達すると同時に、容器へ導入済みの充填物の量を簡単に計算できる。充填用容器の初期圧P
INIは、充填バルブが開かれる前に計測されるので、大気圧に達する時点までに容器に導入された流体の量を、初期圧と容器内に残っている気体の圧力の差から計算できる。
【0065】
流量Vを示す曲線と常圧(1バール)を示す軸との交点から、
図4に「正圧」と記された領域における容器100の充填工程が始まる。当該領域においては、容器100内の圧力Pが常圧(1バール)を上回る。前述のように、容器100の内圧に対して充填物供給部5が正圧とされることが好ましい。あるいは、容器100の内圧に対して正圧とされた充填物を充填物供給部5が供給することが好ましい。充填パイプの把持蓋20に印加される当該正圧は、充填物供給部5内の充填物の実際の圧力と静水圧の組合せである。静水圧は、充填用容器100を充填する装置1の構成により定まる。
【0066】
充填用容器100に充填される充填物の全量は、流量Vを示す曲線の下面積(すなわち充填工程の開始から終了までの期間における流量Vの積分値)に対応する。この全量は、符号Iが付された第一充填量と符号IIが付された第二充填量に分割される。前者においては、充填用容器100の内圧が常圧以下である。後者においては、容器100の内圧が常圧を上回る。
【0067】
正圧とされた充填物は、所望量の充填物が容器100に導入されるまで、容器100内に残っている残存気体を常圧から圧縮する。所定のカットオフ圧P
CUTすなわち充填工程の終了に至ると、充填バルブ50が閉じられる。
【0068】
充填工程の終了への至り方は二通りある。
【0069】
第一の場合においては、充填パイプを介して供給される充填物が、カットオフ圧P
CUTとされた状態で供給される。この場合、容器100と充填物供給部5の圧力の間に平衡が形成されるまで充填が継続する。ここで、実際に容器へ導入される充填物の量は、充填用容器100内の初期圧P
INIに大きく左右される。平衡圧に達すると、充填バルブ50が閉じられうる。しかしながら、充填バルブ50が閉じられるタイミングは厳密ではなく、平衡到達後の任意の時点でありうる。平衡圧に達した後では、容器100内の充填量はもはや変化しないからである。
【0070】
あるいは、第二の場合として、充填物供給部内の圧力は、所定のカットオフ圧P
CUTよりも高くされる。この場合、初期圧P
INIが圧力計4によって特定されるだけでなく、充填工程中に充填用容器100内の圧力変化が測定される。所定のカットオフ圧P
CUTに達すると、充填バルブ50が閉じられる。ここで、容器100の内圧は、圧力計4によってモニタされる。これにより、カットオフ圧P
CUTが確実に特定され、正確な充填が遂行されうる。
【0071】
さらに別の実施形態においては、容器100内における初期圧P
INIからの圧力変化が充填工程中に分析されうる。そして、例えば圧力変化が所定の増加率あるいは所定の微分値dP/dt未満である場合、充填バルブ50が閉じられうる。
【0072】
容器100内の初期圧P
INIとこれに伴うカットオフ圧P
CUT(あるいはカットオフ増加率または微分値)は、各充填工程および各充填エレメントについて個別に特定されうることが非常に好ましい。圧力計4が真空装置の中央に配置される場合、初期圧P
INIは、全ての充填エレメントについて、あるいは充填カルーセルにおける複数の充填エレメント群について一括して特定されうる。または、すべての充填工程について同一の初期圧P
INIが設定されうる。
【0073】
発明の範囲から逸脱することなく可能の範囲内において、各実施形態例について記載された各特徴は、組合せと交換の少なくとも一方が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1:充填用容器を充填する装置、100:充填用容器、110:口、112:容器の内部空間、2:充填パイプ、20:把持蓋、3:真空ライン、30:真空バルブ、4:圧力計、5:充填物供給部、50:充填バルブ、6:加圧ガス装置、60:加圧ガスバルブ、H:ヘッドスペース、P
INI:初期圧、P
CUT:カットオフ圧