特許第6581382号(P6581382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6581382自動閉扉用ヒンジ装置及びそれを備えたスイングドア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581382
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】自動閉扉用ヒンジ装置及びそれを備えたスイングドア
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/06 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   E05F1/06 C
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-78903(P2015-78903)
(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公開番号】特開2016-199869(P2016-199869A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155207
【氏名又は名称】株式会社明工
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】福澤 敏行
(72)【発明者】
【氏名】前田 孝利
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−207720(JP,A)
【文献】 実開平03−078879(JP,U)
【文献】 米国特許第04215449(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00 − 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピボット軸を中心に前後方向に回動操作される扉を自動的に閉扉させる機構を有する自動閉扉用ヒンジ装置であって、
前記ヒンジ装置は、枠体側に直接的又は間接的に固定される固定側下ヒンジ部品と、前記扉に直接的又は間接的に固定され、扉の開閉に連動して前記ピボット軸を中心として回転するとともに、前記固定側下ヒンジ部品の上面に設置される可動側上ヒンジ部品とからなり、
前記固定側下ヒンジ部品と前記可動側上ヒンジ部品との対面する合わせ面において、前記固定側下ヒンジ部品側は、任意位置にピボット軸を中心とする半径方向線を含むように形成した始動基点部から前方向及び後方向の開扉回転方向に向かって夫々前記ピボット軸を中心とする上り傾斜の螺旋状傾斜面を形成する一方、前記可動側上ヒンジ部品は、任意位置にピボット軸を中心とする半径方向線を含むように形成した始動基点部から前方向及び後方向の開扉回転方向に向かって夫々前記ピボット軸を中心とする上り傾斜の螺旋状傾斜面を形成し、かつ少なくとも前記固定側下ヒンジ部品の前記螺旋状傾斜面の形状と前記可動側上ヒンジ部品の前記螺旋状傾斜面の形状とは実質的に一致し、
前記固定側下ヒンジ部品において、前記始動基点部の外周側に沿って起立壁面を有し、該始動基点部を含む領域を潤滑剤貯留部としてあるとともに、前記螺旋状傾斜面の外周部に沿って潤滑剤を前記潤滑剤貯留部に戻すための還流溝が形成されていることを特徴とする自動閉扉用ヒンジ装置。
【請求項2】
前記始動基点部は、ピボット軸を中心とする半径方向線に沿って線状に形成してある請求項1記載の自動閉扉用ヒンジ装置。
【請求項3】
前記始動基点部は、ピボット軸を中心とする2つの半径方向線を両端として扇形状に形成してある請求項1記載の自動閉扉用ヒンジ装置。
【請求項4】
前記可動側上ヒンジ部品において、前記始動基点部に隣接又は近接する前記螺旋状傾斜面に対して、窪み状の潤滑剤ポケットを形成し、扉の開操作に伴う前記可動側上ヒンジ部品の回転によって、前記潤滑剤ポケット内に滞留している潤滑剤を螺旋状傾斜面に掻き上げるようにしてある請求項1〜3いずれかに記載の自動閉扉用ヒンジ装置。
【請求項5】
前記扉の上端及び下端のいずれか一方又は両方に、上記請求項1〜4いずれかに記載の自動閉扉用ヒンジ装置を備えたスイングドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピボット軸を中心に前後方向に回動操作される扉を自動的に閉扉させる自動閉扉用ヒンジ装置及びそれを備えたスイングドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター、飲食店などにおいて、売り場や飲食場所と調理場やバックヤードとの間の間仕切り用扉としてスイングドアが用いられている。
【0003】
この種のスイングドアでは、店舗などにおける搬入搬出の際、荷物を積んだ台車などによって扉の前方又は後方のいずれの方向から押し当てても開けることができ、通過後は扉が自動的に閉じる機構を備えたヒンジ装置によって扉が前後方向に回動自在に支持されている。
【0004】
このような機構を備えたヒンジ装置として、下記特許文献1においては、上部および下部ピン手段をそれらのピンを通る軸線が扉の一側縁と上方に開いた小さな角度をなすように設けるとともに、ローラとカム斜面とを組み合わせ、扉を開いたときに、扉の自重で発生する垂直方向の荷重を回転方向の力に変換して、扉が内側に倒れ込むようにして閉まるようにしたものが開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2においては、上部ヒンジが、下端がドア板に固定されて、該ドア板の回動軸となるシャフトと、前記シャフトの上端を、該シャフトと直交し、かつ、前記ドア板の面に直交する方向に貫通するローラー軸と、前記ローラー軸の両端に回動可能に支持されて、前記シャフトの周囲を回転するローラーと、前記ローラー軸が前記ドア板の面と直交する方向となるように、前記ローラーを案内するカム溝が形成されたカムプレートとを備えたスイングドアが開示されている。
【0006】
さらに、下記特許文献3において、下ヒンジ部として扉部材の上下動作及び自重により扉部材を戻り回動させるグラビティヒンジ機構を備えてなり、ブラケットに下ヒンジ軸を立設するとともに、下ヒンジ軸に斜面状の上カム面をもつカム体を取付け、扉部材の底面に取付板を介して前記カム体に貫通して斜面状の底カム面をもつカム受筒体を取り付けて構成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭43−9160号公報
【特許文献2】特開2012−202091号公報
【特許文献3】特開2013−124466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、2記載のヒンジ装置では、ローラが支持板のV型断面状に形成されたカム溝内に嵌り込むことによって、扉が閉じた状態に保持されるため、扉が自動的に閉まったときローラがカム溝に嵌り込む際に大きな衝撃が発生するとともに、扉を開操作するときにもローラがカム溝から抜け出る際に大きな衝撃が発生し、スムーズに扉の開閉を行うことができなかった。
【0009】
また、上記特許文献1、2記載のヒンジ装置では、扉が自動的に閉じたとき、ローラが支持板上を回転し、最終的にローラがカム溝内に嵌り込んで急停止することによってピボット軸の回転が停止するが、その反動で扉全体が大きく振動する問題があった。スイングドアに用いられる扉は、比較的薄肉で減衰効果が小さく、長い間振動が継続し収束しにくいため、次に扉を開けるときに悪影響を及ぼすおそれがあるとともに、扉から不快な音が発せられる場合もあった。
【0010】
さらに、ローラが支持板を回転する機構を備えたヒンジ装置では、理論上はローラが支持板に線接触することによって扉の重量を支えているため、圧力が集中し、扉をスムーズに開閉できない場合もあった。
【0011】
また、上記特許文献3記載のヒンジ装置では、カム体の上カム面とカム受筒体の底カム面とが面接触し、扉の開閉時にこれらの面同士が摺動するため、長期の使用に伴う経年劣化によって、摺動面の動きが悪くなったり、摩耗によってガタが生じたりするおそれがあった。また、摺動面の動きを良くするため、これらの接触面を単に潤滑剤によって潤滑しただけでは、潤滑剤が外周に漏出して直ぐに無くなってしまい、潤滑効果が維持できないおそれがあった。
【0012】
そこで本発明の主たる課題は、スムーズな扉の開閉が長期に亘って維持できるようにした自動閉扉用ヒンジ装置及びそれを備えたスイングドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、ピボット軸を中心に前後方向に回動操作される扉を自動的に閉扉させる機構を有する自動閉扉用ヒンジ装置であって、
前記ヒンジ装置は、枠体側に直接的又は間接的に固定される固定側下ヒンジ部品と、前記扉に直接的又は間接的に固定され、扉の開閉に連動して前記ピボット軸を中心として回転するとともに、前記固定側下ヒンジ部品の上面に設置される可動側上ヒンジ部品とからなり、
前記固定側下ヒンジ部品と前記可動側上ヒンジ部品との対面する合わせ面において、前記固定側下ヒンジ部品側は、任意位置にピボット軸を中心とする半径方向線を含むように形成した始動基点部から前方向及び後方向の開扉回転方向に向かって夫々前記ピボット軸を中心とする上り傾斜の螺旋状傾斜面を形成する一方、前記可動側上ヒンジ部品は、任意位置にピボット軸を中心とする半径方向線を含むように形成した始動基点部から前方向及び後方向の開扉回転方向に向かって夫々前記ピボット軸を中心とする上り傾斜の螺旋状傾斜面を形成し、かつ少なくとも前記固定側下ヒンジ部品の前記螺旋状傾斜面の形状と前記可動側上ヒンジ部品の前記螺旋状傾斜面の形状とは実質的に一致し、
前記固定側下ヒンジ部品において、前記始動基点部の外周側に沿って起立壁面を有し、該始動基点部を含む領域を潤滑剤貯留部としてあるとともに、前記螺旋状傾斜面の外周部に沿って潤滑剤を前記潤滑剤貯留部に戻すための還流溝が形成されていることを特徴とする自動閉扉用ヒンジ装置が提供される。
【0014】
上記請求項1記載の発明では、扉を自動的に閉扉させる機構を有するヒンジ装置として、前記固定側下ヒンジ部品と可動側上ヒンジ部品とを上下に対面配置したものを用いている。具体的には、前記固定側下ヒンジ部品と前記可動側上ヒンジ部品との対面する合わせ面において、前記固定側下ヒンジ部品は、任意位置にピボット軸を中心とする半径方向線を含むように形成した始動基点部から前方向及び後方向の開扉回転方向に向かって夫々ピボット軸を中心とする上り傾斜の螺旋状傾斜面を形成する一方、前記可動側上ヒンジ部品は、任意位置にピボット軸を中心とする半径方向線を含むように形成した始動基点部から前方向及び後方向の開扉回転方向に向かって夫々ピボット軸を中心とする上り傾斜の螺旋状傾斜面を形成している。そして、少なくとも前記固定側下ヒンジ部品の前記螺旋状傾斜面の形状と前記可動側上ヒンジ部品の前記螺旋状傾斜面の形状とが実質的に一致するように構成している。
【0015】
このように構成されたヒンジ装置では、扉を前方側又は後方側に開操作することによって、前記可動側上ヒンジ部品が前記ピボット軸を中心に回転すると同時に、前記可動側上ヒンジ部品の回転方向の螺旋状傾斜面が前記固定側下ヒンジ部品の同じ方向の螺旋状傾斜面を摺動しながら上昇することにより、前記可動側上ヒンジ部品が前記ピボット軸の軸方向に沿って上方に移動する。このとき、前記可動側上ヒンジ部品が上昇した分だけ扉が上方に持ち上がる。その後、扉の開操作が解除されると、扉の自重によって、前記可動側上ヒンジ部品が固定側下ヒンジ部品の螺旋状傾斜面を摺動しながら下降することにより、前記可動側上ヒンジ部品がピボット軸に沿って下方に移動すると同時に、前記可動側上ヒンジ部品が前記ピボット軸を中心に閉扉方向に回転し、扉を自動的に閉扉する。そして、固定側下ヒンジ部品の合わせ面形状が可動側上ヒンジ部品の合わせ面形状に合わさった位置で、扉が閉扉状態に保持される。このように、扉の開操作時及び自動的な閉扉時に、大きな衝撃が発生せず、扉をスムーズに開閉できるようになる。
【0016】
また、本ヒンジ装置では、可動側上ヒンジ部品が固定側下ヒンジ部品の螺旋状傾斜面を摺動しながら下降した後、その慣性力によって、閉扉位置を越えて一旦反対側の螺旋状傾斜面を若干上昇するという動作を繰り返すことによって、閉扉直前に扉が前後に揺動しながら慣性力を減衰させ、扉が閉扉状態に納まるようになっている。従って、急停止による扉自体の振動が発生しないとともに、閉扉状態に速やかに収束するようになる。
【0017】
さらに、本ヒンジ装置では、可動側上ヒンジ部品の螺旋状傾斜面と固定側下ヒンジ部品の螺旋状傾斜面とが面接触することによって扉の重量を支えているため、圧力が分散でき、動きが滑らかとなる。
【0018】
また、本ヒンジ装置では、前記固定側下ヒンジ部品において、前記始動基点部の外周側に沿って起立壁面を有し、該始動基点部を含む領域を潤滑剤貯留部としてあるとともに、前記螺旋状傾斜面の外周部に沿って潤滑剤を前記潤滑剤貯留部に戻すための還流溝を形成している。従って、前記固定側下ヒンジ部品の螺旋状傾斜面と前記可動側上ヒンジ部品の螺旋状傾斜面との間が常に潤滑剤によって潤滑されるようになり、長期の使用に伴うこれらの螺旋状傾斜面の経年劣化が極めて小さく抑えられ、スムーズな扉の開閉が長期に亘って維持できるようになる。また、前記固定側下ヒンジ部品の螺旋状傾斜面に還流溝を形成しているため、螺旋状傾斜面の潤滑剤が前記還流溝を通じて潤滑剤貯留部に戻され、外周に漏れ出るのが防止できるようになる。このため、スムーズな扉の開閉が長期に亘って維持できるようになる。
【0019】
請求項2に係る本発明として、前記始動基点部は、ピボット軸を中心とする半径方向線に沿って線状に形成してある請求項1記載の自動閉扉用ヒンジ装置が提供される。
【0020】
請求項3に係る本発明として、前記始動基点部は、ピボット軸を中心とする2つの半径方向線を両端として扇形状に形成してある請求項1記載の自動閉扉用ヒンジ装置が提供される。
【0021】
上記請求項2、3記載の発明では、前記始動基点部の形状として、ピボット軸を中心とする半径方向線に沿って線状に形成した場合と、ピボット軸を中心とする2つの半径方向線を両端として扇形状に形成した場合について規定している。
【0022】
請求項4に係る本発明として、前記可動側上ヒンジ部品において、前記始動基点部に隣接又は近接する前記螺旋状傾斜面に対して、窪み状の潤滑剤ポケットを形成し、扉の開操作に伴う前記可動側上ヒンジ部品の回転によって、前記潤滑剤ポケット内に滞留している潤滑剤を螺旋状傾斜面に掻き上げるようにしてある請求項1〜3いずれかに記載の自動閉扉用ヒンジ装置が提供される。
【0023】
上記請求項4記載の発明では、前記可動側上ヒンジ部品において、前記始動基点部に隣接又は近接する螺旋状傾斜面に対して、窪み状の潤滑剤ポケットを形成し、扉の開操作に伴う可動側上ヒンジ部品の回転によって、潤滑剤貯留部内に滞留している潤滑剤を螺旋状傾斜面に掻き上げるようにしてあるため、潤滑剤が螺旋状傾斜面に拡散し、スムーズな扉の開閉が維持できるようになる。
【0024】
請求項5に係る本発明として、前記扉の上端及び下端のいずれか一方又は両方に、上記請求項1〜4いずれかに記載の自動閉扉用ヒンジ装置を備えたスイングドアが提供される。
【発明の効果】
【0025】
以上詳説のとおり本発明によれば、スムーズな扉の開閉が長期に亘って維持できる自動閉扉用ヒンジ装置及びそれを備えたスイングドアが提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るスイングドア1の正面図である。
図2】上ヒンジ装置4の正面図である。
図3】上ヒンジ装置4の下面図である。
図4】上ヒンジ装置4の側面図である。
図5】固定側下ヒンジ部品7を示す、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は下面図、(D)は側面図である。
図6】固定側下ヒンジ部品7を示す、(A)は上方からの斜視図、(B)は下方からの斜視図である。
図7】可動側上ヒンジ部品8を示す、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は下面図、(D)は側面図である。
図8】可動側上ヒンジ部品8を示す、(A)は上方からの斜視図、(B)は下方からの斜視図である。
図9】可動側上ヒンジ部品8と扉3との固定状態を示す、(A)は上面図、(B)は正面図である。
図10】下ヒンジ装置5を示す正面図である。
図11図10のXI−XI線矢視図である。
図12】閉扉時の固定側下ヒンジ部品7と可動側上ヒンジ部品8との関係を示す正面図である。
図13】開扉時の固定側下ヒンジ部品7と可動側上ヒンジ部品8との関係を示す正面図である。
図14】閉扉時の固定側下ヒンジ部品7と可動側上ヒンジ部品8との関係を示す斜視図である。
図15】開扉示の固定側下ヒンジ部品7と可動側上ヒンジ部品8との関係を示す斜視図である。
図16】他の形態例に係る固定側下ヒンジ部品7の斜視図である。
図17】他の形態例に係る固定側下ヒンジ部品7の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0028】
本発明に係るスイングドア1は、上枠2A及び左右の縦枠2B、2Bからなる枠体2に対し、両開きの左右の扉3、3が、上端及び下端を夫々上ヒンジ装置4及び下ヒンジ装置5によって前後方向に回動自在に支持されたものである。
【0029】
〔上ヒンジ装置4〕
前記扉3の上端を支持する上ヒンジ装置4は、図2に示されるように、ピボット軸6を中心に前後方向に回動操作される扉3を自動的に閉扉させる機構を有する自動閉扉用ヒンジ装置である。
【0030】
前記上ヒンジ装置4は、詳細には図2図4に示されるように、枠体2側に直接的又は間接的に固定される固定側下ヒンジ部品7と、扉3に直接的又は間接的に固定され、扉3の開閉に連動してピボット軸6を中心として回転するとともに、前記固定側下ヒンジ部品7の上面に設置される可動側上ヒンジ部品8とを備え、前記固定側下ヒンジ部品7の上面と可動側上ヒンジ部品8の下面とが対面した状態で設置されている。
【0031】
前記ピボット軸6は、上面部9a及び側面部9bからなるL字型の固定金具9に対し、前記上面部9aの中央部に回動不能に垂設されている。前記固定金具9は、上面部9a及び側面部9bがそれぞれ枠体2の上枠2A及び縦枠2Bにビス止めされる。
【0032】
前記ピボット軸6は、軸方向が鉛直方向と一致するように設置されている。これにより、扉3が鉛直軸回りに床面に対し垂直な状態を保持したまま回動するため、扉3を開けたときの外観が良好となる。
【0033】
前記ピボット軸6は、図2に示されるように、円柱状の本体軸部6aと、前記本体軸部6aの下端に突出する略四角柱状のヒンジ部品固定用軸部6bと、前記本体軸部6aの上端に突出する略四角柱状の金具固定用軸部6cとから構成されている。
【0034】
前記固定側下ヒンジ部品7は、図2に示されるように、前記ピボット軸6の下端部に、回動不能かつ軸方向に沿って上下動不能に固定されている。前記固定側下ヒンジ部品7は、図5及び図6に示されるように、平面視略円形状の部材であり、上面の中央部に前記ピボット軸6の本体軸部6aを挿入する円形の軸挿通部7aが形成されるとともに、下面の中央部に前記ピボット軸6のヒンジ部品固定用軸部6bを挿入する略四角形の開口7bが形成され、前記軸挿通部7aと前記開口7bとが軸方向に連通している。また、前記固定側下ヒンジ部品7の下面には、図5(C)に示されるように、前記開口7bより大きな平面形状で形成された凹陥部7cが設けられている。前記凹陥部7cには、図2に示されるように、中央部に前記ピボット軸6のヒンジ部品固定用軸部6bを挿入する略四角形の開口が形成された当て板10が嵌装されるようになっている。
【0035】
前記固定側下ヒンジ部品7の前記可動側上ヒンジ部品8と対面する合わせ面、つまり固定側下ヒンジ部品7の上面は、図5及び図6に示されるように、任意位置に前記ピボット軸6を中心とする半径方向線を含むように形成した始動基点部11から、前方向及び後方向の開扉方向に向かって夫々前記ピボット軸6を中心とする上り傾斜の螺旋状傾斜面12、12が形成されている。すなわち、前記固定側下ヒンジ部品7の上面には、前記始動基点部11から両側に夫々、ピボット軸6の軸方向に沿って右巻き螺旋の螺旋状傾斜面12及び左巻き螺旋の螺旋状傾斜面12が形成されている。そして、図示例では、始動基点部11のピボット軸6と反対側において、両者の螺旋状傾斜面12、12同士を突き合わせた、ピボット軸6を中心とする半径方向に沿って線状の稜線が形成されている。
【0036】
前記螺旋状傾斜面とは、前記ピボット軸6を中心として渦巻き状に回転しながら軸方向に移動する成分を有する傾斜面のことであって、傾斜面の任意位置における半径方向線が回転中心軸と直交するように形成された傾斜面のことである。
【0037】
前記始動基点部11は、閉扉状態の扉を開操作して前後方向に開扉する際の始動の基点となる部分のことであり、固定側下ヒンジ部品7の始動基点部11と後段で詳述する可動側上ヒンジ部品8の始動基点部14とを合わせた状態で、固定側下ヒンジ部品7の螺旋状傾斜面12、12と可動側上ヒンジ部品8の螺旋状傾斜面15、15とがそれぞれ対面するように形成されている。
【0038】
前記始動基点部11は、図5及び図6に示されるように、前記ピボット軸6を中心とする2つの半径方向線を両端として扇形状に形成している。前記始動基点部11を扇形状に形成した場合、この始動基点部11は全面に亘ってほぼ平坦に形成するのが好ましいが、潤滑剤貯留用の窪みを設けてもよい。
【0039】
一方、前記可動側上ヒンジ部品8は、図2に示されるように、前記ピボット軸6に対し回動自在及び上下動自在に前記固定側下ヒンジ部品7の上面に設置されている。前記可動側上ヒンジ部品8は、図7及び図8に示されるように、平面視略円形状の部材であり、中央部に前記ピボット軸6の本体軸部6aに挿通される円形の軸挿通部8aが形成されている。また、上面には、扉3に連結するための連結部材16が係合する平面視略四角形の係合凸部8bが設けられるとともに、前記連結部材16をビス止めするためのネジ孔8c、8cが形成されている。
【0040】
前記可動側上ヒンジ部品8の前記固定側下ヒンジ部品7と対面する合わせ面、つまり可動側上ヒンジ部品8の下面は、図7及び図8に示されるように、任意位置にピボット軸6を中心とする半径方向線を含むように形成した始動基点部14から前方向及び後方向の開扉回転方向に向かって夫々前記ピボット軸を中心とする上り傾斜の螺旋状傾斜面15、15が形成されている。
【0041】
少なくとも、前記固定側下ヒンジ部品7の螺旋状傾斜面12の形状と前記可動側上ヒンジ部品8の螺旋状傾斜面15の形状とは実質的に一致している。すなわち、扉3の閉扉状態で、固定側下ヒンジ部品7の螺旋状傾斜面12、12と可動側上ヒンジ部品8の螺旋状傾斜面15、15とが夫々面接触している。また、前記固定側下ヒンジ部品7の始動基点部11の形状と可動側上ヒンジ部品8の始動基点部14の形状とは、実質的に一致することによって、扉3の閉扉状態で前記始動基点部11、15同士が全面に亘って面接触するようにしてもよいし、前記始動基点部11、15の両方又はいずれか一方に窪み部を設けることによって、閉扉状態で始動基点部11、15同士が全面に亘って面接触しないようにしてもよい。
【0042】
前記可動側上ヒンジ部品8を扉3に固定するには、図9に示されるように、扉3の上端に上ヒンジ装置取付用の切り込み部を設けるとともに、この切り込み部の周縁に沿って正面視略コの字形の定着部材17を扉3の前後方向の一方面側に配置し、コの字形の裏板18を扉3の他方側に配置し、これら定着部材17、扉3及び裏板18を一体的に貫通するボルトによって前記定着部材17を扉3に固定しておき、前記定着部材17の上端に備えられた固定用フランジ17a、17aに夫々、前記可動側上ヒンジ部品8の上面に固設された前記連結部材16をボルトで固定することによって行われる。
【0043】
〔下ヒンジ装置5〕
一方、前記扉3の下端を支持する下ヒンジ装置5は、図10及び図11に示されるように、扉3の下端に切り込みが設けられるとともに、この切り込み部を含む部分が扉3の外面側にくの字状に屈曲する屈曲部19aを備えた下ヒンジ用プレート19、19を扉3の前後面に固設することにより、扉3の下端側に開口する開口部20を形成するとともに、前記開口部20に床面側から立設されたピボット軸21を挿入することにより、前記ピボット軸21を中心に扉3を回動可能に支持している。前記ピボット軸21は、下面部22a及び側面部22bからなるL字型の固定金具22に対し、前記下面部22aに立設した状態で固設され、前記固定金具22の下面部22aが床面に固定されるとともに、側面部22bが枠体2の縦枠2Bに固定されることにより、床面側から鉛直方向に立設している。
【0044】
〔作動状態〕
次いで、自動閉扉用の上ヒンジ装置4の作動状態について説明する。図1に示される扉3の閉扉状態では、前記上ヒンジ装置4は、図12及び図14に示されるように、固定側下ヒンジ部品7と可動側上ヒンジ部品8の合わせ面同士が合わさっている。
【0045】
この状態から扉3を前方側又は後方側に開操作すると、図13及び図15に示されるように、扉3の回転に連動して扉3に固定された可動側上ヒンジ部品8がピボット軸6を中心に回転すると同時に、可動側上ヒンジ部品8の回転方向の螺旋状傾斜面15が固定側下ヒンジ部品7の同じ方向の螺旋状傾斜面12を摺動しながら上昇することによって、可動側上ヒンジ部品8がピボット軸6の軸方向に沿って上方に移動する。このとき、可動側上ヒンジ部品8が上昇した分だけ扉3が上方に持ち上がる。
【0046】
その後、扉3の開操作が解除されると、前記扉3は、扉3の自重によって、可動側上ヒンジ部品8が固定側下ヒンジ部品7の螺旋状傾斜面12を摺動しながら下降することによって、可動側上ヒンジ部品8がピボット軸6に沿って下方に移動すると同時に、可動側上ヒンジ部品8がピボット軸6を中心に閉扉方向に回転し、自動的に閉扉するようになる。
【0047】
前記扉3は、固定側下ヒンジ部品7と可動側上ヒンジ部品8の合わせ面同士が合わさって閉扉状態が保持されるため、自動的に閉扉する際や、扉3を開操作した際に、大きな衝撃が発生せず、スムーズな開閉が可能となる。
【0048】
また、扉3の閉扉直前の動作について、より詳細に説明すると、可動側上ヒンジ部品8が固定側下ヒンジ部品7の螺旋状傾斜面12を摺動しながら下降した後、その慣性力によって、閉扉位置を越えて一旦反対側の螺旋状傾斜面12を若干上昇するという動作を繰り返すことによって、閉扉直前に扉3が前後に揺動しながら慣性力を減衰させ、扉3が閉扉状態に納まるようになる。従って、急停止による扉3自体の振動が発生しないとともに、閉扉状態に速やかに収束するようになる。
【0049】
さらに、前記上ヒンジ装置4では、可動側上ヒンジ部品8の螺旋状傾斜面15と固定側下ヒンジ部品7の螺旋状傾斜面12とが面接触することによって扉3の重量を支えているため、ヒンジ装置にかかる圧力が分散され、動きが滑らかとなり、スムーズな扉3の開閉が可能となる。
【0050】
〔潤滑方法〕
次に、固定側下ヒンジ部品7と可動側上ヒンジ部品8との螺旋状傾斜面同士を潤滑する方法について説明する。
【0051】
前記固定側下ヒンジ部品7において、図5及び図6に示されるように、前記始動基点部11の外周側に沿って所定高さの起立壁面23を有し、該始動基点部11を含む領域を潤滑剤貯留部24とするのが好ましい。前記起立壁面23は、螺旋状傾斜面12の中間高さまで形成されている。
【0052】
前記潤滑剤貯留部24に滞留している潤滑剤が固定側下ヒンジ部品7の内周側から漏れるのを防止するため、図2及び図9(B)に示されるように、固定側下ヒンジ部品7の軸挿通部7a(図5及び図6参照。)の底面にパッキン13を設けるのが好ましい。
【0053】
前記潤滑剤としては、固体間の潤滑に用いられる公知のものを広く利用することができ、潤滑剤の粘度や流動性は特に問わない。
【0054】
前記可動側上ヒンジ部品8において、図7及び図8に示されるように、始動基点部14に隣接又は近接する螺旋状傾斜面15に対して、窪み状の潤滑剤ポケット25を形成し、扉3の開操作に伴う可動側上ヒンジ部品8の回転によって、前記潤滑剤ポケット25内に滞留している潤滑剤を固定側下ヒンジ部品7の螺旋状傾斜面12に掻き上げるようにするのが好ましい。前記潤滑剤ポケット25は、扉3の閉扉状態で、固定側下ヒンジ部品7の潤滑剤貯留部に浸漬する位置、つまり前記起立壁面23の起立高さより低い位置に設けるようにする。
【0055】
また、前記固定側下ヒンジ部品7において、図5及び図6に示されるように、前記螺旋状傾斜面12の外周部に沿って潤滑剤を潤滑剤貯留部24に戻すための還流溝26を形成するのが好ましい。前記還流溝26によって、潤滑剤が固定側下ヒンジ部品7の外周に漏れ出るのが防止できる。
【0056】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、固定側下ヒンジ部品7の始動基点部11を、ピボット軸6を中心とする2つの半径方向線を両端として扇形状に形成したが、図16に示されるように、前記ピボット軸6を中心とする半径方向線に沿って線状に形成してもよい。
【0057】
(2)図17に示されるように、前記固定側下ヒンジ部品7及び可動側上ヒンジ部品8において夫々、任意位置にピボット軸6を中心とする2つの半径方向線を両端として扇状に形成した第1始動基点部11Aを設けるとともに、この第1始動基点部11Aに対してピボット軸6の反対側に、ピボット軸6を中心とする2つの半径方向線を両端として扇状に、平面状の第2始動基点部27を設け、これら第1始動基点部11A及び第2始動基点部27を繋ぐように前記螺旋状傾斜面12、12を形成してもよい。なお、図17では、固定側下ヒンジ部品7について図示している。前記固定側下ヒンジ部品7及び可動側上ヒンジ部品8に夫々、第1始動基点部11A及び第2始動基点部27を設けることにより、扉3の開扉時に、可動側上ヒンジ部品8の第1始動基点部の少なくとも一部が固定側下ヒンジ部品7の第2始動基点部27に乗り上げて、扉3を開状態に保持することが可能となる。
【0058】
(3)上記形態例では、自動閉扉用のヒンジ装置を上ヒンジ装置4のみに用いたが、下ヒンジ装置5のみに用いてもよいし、上ヒンジ装置4及び下ヒンジ装置5の両方に用いてもよい。
(4)上記形態例では、固定側下ヒンジ部品7及び可動側上ヒンジ部品8が取り付けられるピボット軸6は、枠体側に固定したが、扉側に固定してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…スイングドア、2…枠体、3…扉、4…上ヒンジ装置、5…下ヒンジ装置、6…ピボット軸、7…固定側下ヒンジ部品、8…可動側上ヒンジ部品、11…始動基点部、12…螺旋状傾斜面、14…始動基点部、15…螺旋状傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17