特許第6581389号(P6581389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メモリ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6581389-半導体装置の製造装置及び製造方法 図000002
  • 特許6581389-半導体装置の製造装置及び製造方法 図000003
  • 特許6581389-半導体装置の製造装置及び製造方法 図000004
  • 特許6581389-半導体装置の製造装置及び製造方法 図000005
  • 特許6581389-半導体装置の製造装置及び製造方法 図000006
  • 特許6581389-半導体装置の製造装置及び製造方法 図000007
  • 特許6581389-半導体装置の製造装置及び製造方法 図000008
  • 特許6581389-半導体装置の製造装置及び製造方法 図000009
  • 特許6581389-半導体装置の製造装置及び製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581389
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   H01L21/60 311T
   H01L21/60 311Q
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-97594(P2015-97594)
(22)【出願日】2015年5月12日
(65)【公開番号】特開2016-213384(P2016-213384A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】東芝メモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176599
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100205095
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 啓一
(74)【代理人】
【識別番号】100208775
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 雅章
(72)【発明者】
【氏名】三浦 正幸
【審査官】 石丸 昌平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−219334(JP,A)
【文献】 特開2002−057190(JP,A)
【文献】 特開平09−153522(JP,A)
【文献】 特開2005−353696(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/152479(WO,A1)
【文献】 特開2016−062960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属バンプまたは金属電極が設けられた基板を保持可能なステージと、
前記ステージと対向して配置され、前記基板に金属バンプが設けられたときは金属電極が設けられ、前記基板に金属電極が設けられたときは金属バンプが設けられた半導体素子を保持可能なヘッド部と
前記ヘッド部と前記ステージと交差する第一方向に沿って、前記ヘッド部を移動させるとともに、前記ヘッド部に荷重を加えることが可能な駆動部と、
前記ヘッド部の荷重値を検知する荷重センサと、
前記ヘッド部を加熱可能な加熱手段と、
前記ヘッド部を冷却可能な冷却手段と、
前記ヘッド部の前記第一方向の位置を検知する位置センサと、
前記駆動部を駆動することで、
前記金属電極と前記金属バンプとが接触する近傍位置まで前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけさせる第一の動作と、
前記荷重値が第一の値になるまで前記ヘッド部を加圧させるように前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけさせる第二の動作と、
前記荷重値が前記第一の値より小さい第二の値になるまで前記ヘッド部を減圧させるように前記ヘッド部と前記ステージとの距離を遠ざけ、前記ヘッド部を第一の位置とする第三の動作と、
前記加熱手段により、前記ヘッド部の温度を上昇させる第四の動作と、
前記金属バンプの溶融後、前記ヘッド部の温度上昇による高さ寸法の変化に合わせて前記ヘッド部と前記ステージとの距離を遠ざける第五の動作と、
前記ヘッド部の加熱を停止し、冷却を開始する第六の動作と、
前記ヘッド部の温度下降による高さ寸法の変化に合わせて前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけ、前記荷重値が0よりも大きい第三の値になったところで、前記半導体素子と前記ヘッド部とを切り離す第七の動作と、を備え、
前記第一の動作から前記第五の動作はこの順番にて行われる、
半導体装置の製造装置。
【請求項2】
金属バンプまたは金属電極が設けられた基板を保持可能なステージと、
前記ステージと対向して配置され、前記基板に金属バンプが設けられたときは金属電極が設けられ、前記基板に金属電極が設けられたときは金属バンプが設けられた半導体素子を保持可能なヘッド部と
前記ヘッド部と前記ステージと交差する第一方向に沿って、前記ステージを移動させるとともに、前記ヘッド部に荷重を加えることが可能な駆動部と、
前記ヘッド部の荷重値を検知する荷重センサと、
前記ヘッド部を加熱可能な加熱手段と、
前記ヘッド部を冷却可能な冷却手段と、
前記ヘッド部の前記第一方向の位置を検知する位置センサと、
前記駆動部を駆動することで、
前記金属電極と前記金属バンプとが接触する近傍位置まで前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけさせる第一の動作と、
前記荷重値が第一の値になるまで前記ヘッド部を加圧させるように前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけさせる第二の動作と、
前記荷重値が前記第一の値より小さい第二の値になるまで前記ヘッド部を減圧させるように前記ヘッド部と前記ステージとの距離を遠ざけ、前記ヘッド部を第一の位置とする第三の動作と、
前記加熱手段により、前記ヘッド部の温度を上昇させる第四の動作と、
前記金属バンプの溶融後、前記ヘッド部の温度上昇による高さ寸法の変化に合わせて前記ヘッド部と前記ステージとの距離を遠ざける第五の動作と、
前記ヘッド部の加熱を停止し、冷却を開始する第六の動作と、
前記ヘッド部の温度下降による高さ寸法の変化に合わせて前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づける第七の動作と、
前記荷重値が0よりも大きい第三の値になったところで、前記半導体素子と前記ヘッド部とを切り離す第八の動作と、を備え、
前記第一の動作から前記第五の動作はこの順番にて行われる、
半導体装置の製造装置。
【請求項3】
前記荷重値が前記第三の値のとき前記金属バンプは一部のみが凝固している請求項1または2記載の半導体装置の製造装置。
【請求項4】
前記第七の動作において前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけることは、前記第六の動作よりも前に開始される請求項1または2記載の半導体装置の製造装置。
【請求項5】
金属バンプまたは金属電極が設けられた基板を保持可能なステージと、
前記ステージと対向して配置され、前記基板に金属バンプが設けられたときは金属電極が設けられ、前記基板に金属電極が設けられたときは金属バンプが設けられた半導体素子を保持可能なヘッド部と、
前記ヘッド部と前記ステージと交差する第一方向に沿って、前記ヘッド部と前記ステージとを近づけるまたは遠ざけるとともに、前記ヘッド部又は前記ステージの少なくとも何れか一つに荷重を加えることが可能な駆動部と、
前記ヘッド部の荷重値を検知する荷重センサと、
前記ヘッド部を加熱可能な加熱手段と、
前記ヘッド部を冷却可能な冷却手段と、
前記ヘッド部の前記第一方向の位置を検知する位置センサと、
を有する半導体装置の製造装置を用いた製造方法であって、
前記駆動部を駆動することで、
前記金属電極と前記金属バンプとが接触する近傍位置まで前記ヘッド部を前記ステージとの距離を近づけさせる第一の工程と、
前記荷重値が第一の値になるまで前記ヘッド部を加圧させるように前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけさせる第二工程と、
前記荷重値が前記第一の値より小さい第二の値になるまで前記ヘッド部を減圧させるように前記ヘッド部と前記ステージとの距離を遠ざけ、前記ヘッド部を第一の位置とする第三の工程と、
前記加熱手段により、前記ヘッド部の温度を上昇させる第四の工程と、
前記金属バンプの溶融後、前記ヘッド部の温度上昇による高さ寸法の変化に合わせて前記ヘッド部と前記ステージとの距離を遠ざける第五の工程と、
前記ヘッド部の加熱を停止し、冷却を開始する第六の工程と、
前記ヘッド部の温度下降による高さ寸法の変化に合わせて前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけ、前記荷重値が0よりも大きい第三の値になったところで、前記半導体素子と前記ヘッド部とを切り離す第七の工程と、を備え、
前記第一の工程から前記第五の工程はこの順番にて行われる、
半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記荷重値が前記第三の値のとき前記金属バンプは一部のみが凝固している請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第七の工程において前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけることは、前記第六の工程よりも前に開始される請求項5記載の半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、はんだバンプが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−324702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の製造を容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る半導体装置の製造装置は、金属バンプまたは金属電極が設けられた基板を保持可能なステージと、前記ステージと対向して配置され、前記基板に金属バンプが設けられたときは金属電極が設けられ、前記基板に金属電極が設けられたときは金属バンプが設けられた半導体素子を保持可能なヘッド部と前記ヘッド部と前記ステージと交差する第一方向に沿って、前記ヘッド部を移動させるとともに、前記ヘッド部に荷重を加えることが可能な駆動部と、前記ヘッド部の荷重値を検知する荷重センサと、前記ヘッド部を加熱可能な加熱手段と、前記ヘッド部を冷却可能な冷却手段と、前記ヘッド部の前記第一方向の位置を検知する位置センサと、前記駆動部を駆動することで、 前記金属電極と前記金属バンプとが接触する近傍位置まで前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけさせる第一の動作と、前記荷重値が第一の値になるまで前記ヘッド部を加圧させるように前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけさせる第二の動作と、前記荷重値が前記第一の値より小さい第二の値になるまで前記ヘッド部を減圧させるように前記ヘッド部と前記ステージとの距離を遠ざけ、前記ヘッド部を第一の位置とする第三の動作と、前記加熱手段により、前記ヘッド部の温度を上昇させる第四の動作と、前記金属バンプの溶融後、前記ヘッド部の温度上昇による高さ寸法の変化に合わせて前記ヘッド部と前記ステージとの距離を遠ざける第五の動作と、前記ヘッド部の加熱を停止し、冷却を開始する第六の動作と、
前記ヘッド部の温度下降による高さ寸法の変化に合わせて前記ヘッド部と前記ステージとの距離を近づけ、前記荷重値が0よりも大きい第三の値になったところで、前記半導体素子と前記ヘッド部とを切り離す第七の動作と、を備える制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る半導体装置の製造装置の概略的な構成図。
図2】実施形態に係る半導体装置の製造方法の流れを示すフロー図。
図3】実施形態に係る半導体装置の加工前の状態と加工後の状態を示す模式的な断面図。
図4】実施形態に係る半導体装置の製造方法の各段階を示す模式的な断面図。
図5】実施形態に係る半導体装置の製造方法の各段階を示す模式的な断面図。
図6】実施形態に係る半導体装置の製造方法の各段階を示す模式的な断面図。
図7】ヘッド部の温度、ヘッド部の荷重値、及びヘッド部15の高さの時間推移を示した図。
図8】ヘッド部の温度とヘッド部の高さ寸法との関係を示した図。
図9】半導体装置の他の実施形態を示す模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図1図8を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実ものとは必ずしも一致しない。また、上下左右の方向についても、後述する半導体基板における回路形成面側を上または下とした場合の相対的な方向を示し、必ずしも重力加速度方向を基準としたものとは一致しない。
【0008】
図1は、半導体装置の製造装置5の概念的な構成を示した模式的な図である。製造装置5は、その下側にセラミックなどを用いたステージ10を有し、ステージ10の上部にヘッド部15を有する。製造装置5は、ヘッド部15を支持する支持部20を有する。製造装置5は、ステージ10、ヘッド部15、支持部20を制御する制御装置80を有する。図ではステージ10は離れているが、図示しない外部の構成を介して、製造装置5は全体を一体の構成として設けられてもよい。また、ヘッド部15は、支持部20と一体としてヘッド部15を構成できる。なお、以下の説明では、上下方向をZ軸方向、水平方向をXY軸方向と称する。
【0009】
ステージ10は、上面に図3(b)に示されるような基板25を保持可能である。基板25は、例えば、セラミック基板やガラスエポキシ基板等である。ステージ10は、ステージヒータ30及び温度センサ35を有する。ステージヒータ30は、ステージ10を加熱し、ステージ10の上面に保持された基板25を所定の温度で加熱可能である。温度センサ35は、ステージ10の温度を検知可能である。温度センサ35は、例えば、ステージ10の温度を検知することで、間接的にステージ10の上面に保持された基板25の温度を検知することができる。
【0010】
ステージヒータ30はステージ10を加熱することで、図3(b)に示される基板25に設けられたはんだバンプ25aを融点よりも低い一定温度(例えば150℃)に加熱することができる。ステージヒータ30は、温度センサ35が検知した温度に基づいて、制御される。
【0011】
ヘッド部15は、下面部分にボンディングツール40を有する。ヘッド部15は、例えば、図3(a)に示される半導体素子45等の半導体素子を吸着し、保持することが可能である。ヘッド部15は、ヘッドヒータ50及び温度センサ55を有する。ヘッド部15は、内部に孔60を有する。孔60は、例えば冷却用の高圧エア等を流すことが可能である。
【0012】
ヘッドヒータ50は、例えば、電流により、発熱が可能である。ヘッドヒータ50の発熱により、ヘッド部15は昇温が可能である。また、ヘッドヒータ50は、ボンディングツール40を加熱し、ボンディングツール40に保持される半導体素子45を加熱することが可能である。
【0013】
ヘッド部15及びヘッドヒータ50の加熱を停止する際には、例えば、ヘッドヒータ50への電流は遮断される。電流が遮断されることにより、加熱を止める事が出来る。
【0014】
また、孔60に冷却用の高圧エアが流れることで、ヘッド部15を急速に冷却することが可能である。
【0015】
温度センサ55は、ヘッド部15の温度を検知可能である。温度センサ55は、例えば、ボンディングツール40の温度を検知することで、間接的にボンディングツール40に保持される半導体素子45の温度を検知することができる。
【0016】
支持部20は、駆動部65、位置センサ70、荷重センサ75を有する。
【0017】
駆動部65は、ヘッド部15をZ軸方向(上下方向)に移動させることができる。つまり、駆動部65は、ヘッド部15をステージ10の方向に移動させることができ、ヘッド部15とステージ10の距離を近づけたり、遠ざけたりすることができる。さらに、駆動部65は、ヘッド部15にステージ10の方向へ荷重を加えさせることが可能である。
【0018】
位置センサ70は、ヘッド部15のZ軸方向の位置を検知する。なお、位置センサ70は、間接的に位置を検知しても構わない。例えば、位置センサ70は、駆動部65の駆動量や、支持部20のZ軸方向の位置や、支持部20の移動量等から、ヘッド部15の位置を検知しても構わない。
【0019】
荷重センサ75は、ヘッド部15の荷重値を検知する。例えば、ヘッド部15を下降させた際、駆動部65又はヘッド部15はボンディングツール40に保持される半導体素子45を介して、ヘッド部15はステージ10へ荷重を加える。荷重センサ75は、このステージ10への荷重を検知することができる。なお、荷重センサ75は、間接的に荷重を検知しても構わない。例えば、荷重センサ75は、駆動部65の駆動に要する力等から、荷重を検知しても構わない。
【0020】
なお、位置センサ70と駆動部65、又は荷重センサ75と駆動部65は、一体として設けられていても構わない。
【0021】
制御装置80は、位置センサ70の信号から、ヘッド部15のZ軸方向の位置を検知することで、ヘッド部15のZ軸方向の位置を制御することができる。そして、この位置センサ70による制御は、例えば、高速なヘッド部15の移動に向いている。
【0022】
他方、制御装置80は、荷重センサ75の信号から、ヘッド部15の荷重値を検知することで、荷重値の大きさに基づいて、ヘッド部15のZ軸方向の位置を制御することができる。そして、この荷重センサ75による制御は、微細な移動や、ヘッド部15の荷重に基づいた移動に向いている。
【0023】
言い換えれば、ヘッド部15は、位置センサ70の検知信号に基づく制御と、荷重センサ75の検知信号に基づく制御が可能である。
【0024】
制御装置80は、例えば、CPUやメモリ等を有し、プログラムにしたがって装置全体の制御を行う。制御装置80は、後述するプログラムにしたがって、ステージ10、ヘッド部15、支持部20等の各部の動きを制御する。
【0025】
なお、製造装置5は、図示しない位置検出カメラをさらに備える。位置検出カメラは、ステージ10上の基板25や、ヘッド部15のボンディングツール40に保持された半導体素子45のXY軸方向(水平方向)の位置を検知することができる。制御装置80は、位置検出カメラの検知した画像に基づいて、ヘッド部15をXY方向及び水平面内の回転方向に移動制御できる。
【0026】
次に、製造装置5による半導体装置の製造工程について説明する。
【0027】
図3(a)は前述した半導体素子45の模式的な断面図である。半導体素子45は、半導体基板の表面に種々の加工工程による集積回路が作りこまれたものである。半導体素子45の表面(上面)には、金属パッド45aが複数個配置されている。金属パッド45aは、外部と電気的に接続可能な金属電極である。
【0028】
図3(b)は、基板25の模式的な断面図である。基板25は、例えばリジッド基板、フレキシブル基板等である。より具体的には、例えば、基板25は、セラミック基板、ガラスエポキシ基板等の各種プリント基板である。基板25の表面(上面)には、図示しない電極パターンと、電極パターン上にはんだバンプ25aと、が配置される。後述するように、基板25は、はんだバンプ25aを介して、半導体素子45の金属パッド45aと電気的に接続可能である。なお、基板25の表面あるいは裏面には、外部回路と接続するためのはんだバンプ25a以外の各種の端子部などが配置されていてもよい。
【0029】
図3(c)は、前述した基板25に半導体素子45を実装した状態の模式的な断面図である。半導体素子45と基板25は、距離dだけ離れて配置されている。基板25のはんだバンプ25aは、実装の際に溶融され押しつぶされるため、はんだ25bとなる。はんだ25bは、半導体素子45の金属パッド45aと電気的に接続している。
【0030】
図2及び図4図8を参照して製造装置5による基板25への半導体素子45の実装の工程について説明する。
【0031】
図2は、製造装置5の制御装置80による実装工程の制御動作を概略的に示す工程の流れ図である。図7は、一連の工程の動作の流れに伴うヘッド部15の温度の推移、ヘッド部15の荷重値の推移、及びヘッド部15の高さの推移を示している。この図2及び図7にそって、各ステップS1〜S11について説明する。なお、図7の時間(sec)の進行は、一例である。また、ヘッド部15の温度は、製造装置側の設定温度を意味しており、実際のヘッド部15の温度は図7と必ずしも一致しなくともよい。
【0032】
図4は、ステップS1を示した模式的な断面図である。
【0033】
ステップS1において、図4に示されるように、ヘッド部15は、ステージ10と離れた位置に配置される。半導体素子45は、ヘッド部15のボンディングツール40に配置される。半導体素子45は、例えば、制御装置80の制御による吸引により、ボンディングツール40に保持される。金属パッド45aは、下方のステージ10側に配置される。
【0034】
ステップS2において、基板25は、ステージ10の上面に配置される。基板25は、例えば、制御装置80の制御による吸引により、ステージ10の上面に保持される。はんだバンプ25aは、上方のヘッド部15側に配置される。なお、ステップS1とステップS2とは順不同である。
【0035】
ステップS3において、制御装置80により、ステージ10とヘッド部15との間の空間領域に位置検出カメラが配置される。位置検出カメラは、Z軸方向の上下に位置する基板25および半導体素子45を撮影し、両者の位置を検出する。この後、制御装置80は、検出した位置に基づいて、ステージ10あるいはヘッド部15をXY軸方向(水平方向)および水平面内の回転方向に相対的に移動させる。この移動により、基板25のはんだバンプ25aと、半導体素子45の金属パッド45aとは、対向する位置に配置される。
【0036】
ステップS4において、制御装置80は、ヘッド部15をステージ10と近接した位置まで下降させる。図5は、ステップS4を示した模式的な断面図である。
【0037】
まず、ヘッド部15の下降は、位置センサ70の検知信号に基づき、位置制御により制御される。はんだバンプ25aと半導体素子45の金属パッド45aとが接触する少し前の位置が、制御装置80にあらかじめ設定される。そして、制御装置80は、設定された位置までヘッド部15を下降させることで、ヘッド部15は急速に下降される。
【0038】
次に、ヘッド部15の下降は、荷重値制御により制御される。つまり、制御装置80は、荷重センサ75の検知信号に基づいてヘッド部15の下降を制御する。荷重センサ75の検知信号に対する閾値が、制御装置80にあらかじめ設定される。そして、ヘッド部15は、はんだバンプ25aと金属パッド45aとが接触(ヘッド部15がステージ10に接地)するまで下降される。この接触は、荷重センサの15の検知する荷重値が設定された閾値を超える、または荷重値の時間当たりの変化量が設定された閾値を超えることにより検知される。
【0039】
なお、ステップS4で加圧していない状態でのヘッド部の高さ寸法をA0、ステージ10の高さ寸法をB0とする。また、ステップS4のヘッド部15の下降の制御は、位置センサ70の位置制御なしで荷重値制御のみで行うことも可能である。
【0040】
ステップS5において、金属パッド45aとはんだバンプ25aを介してステージ10に荷重を加えつつ、ヘッド部15はさらに下降される。そして、ヘッド部15によるステージ10への荷重が第一荷重値(図7では約190N)になるまで、ヘッド部15は下降される(時刻t1)。図6は、ステップS5を示した模式的な断面図である。
【0041】
金属パッド45aがはんだバンプ25aに 押し付けられ、はんだバンプ25aは圧縮変形される。そして、両者が接触するそれぞれの表面に生成されている自然酸化膜は破れるため、両者は電気的に導通する。
【0042】
このステップS5において、荷重が第一荷重値になった状態では、ヘッド部15及びステージ10は荷重が加えられており、加圧されているため、圧縮される。すなわち、図6に示されるように、ヘッド部15の高さ寸法は、A0よりも小さいA1(<A0)に圧縮され、ステージ10の高さ寸法はB0よりも小さいB1(<B0)に圧縮される。
【0043】
なお、ステップS5において、荷重が加わることで、徐々に金属パッド45a、はんだバンプ25aが変形する。この変形により、時刻t1からt2において、ヘッド部15は緩やかにその位置が下がる。
【0044】
仮に、この状態で、ヘッド部15のヘッドヒータ50により加熱を行うと、ボンディングツール40および半導体素子45の金属パッド45aを通じて、基板25のはんだバンプ25aが加熱され、はんだバンプ25aは溶融する。はんだバンプ25aの溶融により、ヘッド部15およびステージ10への荷重は開放される。つまり、ヘッド部15及びステージ10は、減圧されるため、元の高さ寸法A0、B0に変化する。さらに、ヘッド部15は加熱により膨張するため、ヘッド部15の高さ寸法は、元の高さ寸法A0よりも大きい寸法へと変化する可能性がある。この加熱により、ヘッド部15およびステージ10の高さ寸法がA1、B1より大きくなると、種々の不良が起きる可能性がある。例えば、はんだバンプ25aが過剰に押しつぶされ、隣接するはんだバンプ25aとショートする可能性がある。または、はんだバンプ25aと金属パッド45aが変形し、意図しないショートやオープンを起こす可能性がある。さらには、ヘッド部15とステージ10が接触し、ヘッド部15やステージ10が損傷する可能性がある。
【0045】
そこで、本実施形態は、ステップS6として、制御装置80は、荷重センサ75により荷重量を検知しつつ、ヘッド部15の荷重を低減させる。すなわち、ヘッド部15を減圧させる。そして、所定の荷重量になった時点で、制御装置80は、ヘッド部15の荷重を低減させることを停止する(時刻t2、図7では約10N)。ヘッド部15の荷重を低減させることで、ヘッド部15及びステージ10への圧力は低減し、ヘッド部15及びステージ10は、例えば、元の高さ寸法A0、B0、又は少なくともA1,B1よりも大きい寸法となる。つまり、ヘッド部15及びステージ10の高さ寸法を予め元の寸法に近い寸法に近づけておくことで、昇温時にヘッド部15及びステージ10の高さ寸法が大きくなる量を低減できる。さらに、所定の荷重量で減圧を停止させることで、はんだバンプ25aと金属パッド45aの接触状態を保持させることができる。すなわち、はんだバンプ25aと金属パッド45aの表面に、酸化膜が形成されることを低減できる。
【0046】
ステップS7として、制御装置80は、ヘッドヒータ50を昇温させることで、ヘッド部15を昇温させる。(時刻t3)。ヘッド部15は昇温することで、前述の通り、高さ寸法がA0よりも長い寸法へと熱膨張する。
【0047】
図8は、ヘッド部15の温度と、高さ寸法との関係を示すグラフの一例である。
【0048】
図8の縦軸は、ヘッド部15のZ軸方向の変位量を示し、横軸はヘッド部15の温度を示す。ヘッド部15の温度が175℃のときのZ軸方向の変位量を基準として「0」としている。温度が240℃のときの変位量は8.0μm、温度が310℃のときの変位量は18.6μmである。つまり、ヘッド部15は高温なほど、ヘッド部15の変位量は増加する。
【0049】
ステップS8として、制御装置80は、昇温によるヘッド部15の高さ寸法の変化に合わせて、ヘッド部15の位置を上昇させる(時刻t4)。ヘッド部15の上昇は、位置センサ70の検知信号による位置制御による。
【0050】
時刻t3の後に、時間をおいてからヘッド部15を上昇させるのは、二つの理由による。1つ目は、はんだバンプ25aが溶融するまで、はんだバンプ25aと金属パッド45aの間を密着させておくためである。密着させておくことで、はんだバンプ25aと金属パッド45aの表面に酸化膜が形成され、オープンすることを防ぐことができる。2つ目は、ヘッド部15の熱膨張は、ヘッド部15の温度の上昇よりも遅れる場合があるためである。
【0051】
ただし、はんだバンプ25aが溶融した後は、前述したヘッド部15の熱膨張による不具合の危険性が増加するため、早期にヘッド部15の位置を上昇させたほうが望ましい。この時刻t4は、予め制御装置80にパラメータとして設定される。または、時刻t4は、制御装置80により、荷重センサ75の検知信号から算出されてもよい。
【0052】
なお、ヘッド部15の温度の推移と、熱膨張によるZ軸方向の変化量は必ずしも一致しない。熱膨張は時間の経過と共に直線的に増加する傾向にある。そこで、図7に示されているように、ヘッド部15のZ軸方向の位置制御もこれに合わせて行う。
【0053】
この位置制御により、ヘッド部15の下端部に位置する半導体素子45の金属パッド45aとステージ10側の基板25のはんだバンプ25aとの距離は、ほぼ同じ距離を保持した状態に保つことが可能である。
【0054】
時刻t3からt4において、ヘッド部15の荷重値が一度増加した後、低減する理由について説明する。はんだバンプ25aが溶融するまでの間にも、ヘッド部15は昇温により高さ寸法が膨張する。しかし、ヘッド部15の位置は固定されているため、ヘッド部15の高さ寸法が膨張した分、荷重値は増加する。その後、はんだバンプ25aが融解すると、ヘッド部15の荷重は開放され、荷重値は低減する。
【0055】
なお、前述の不具合を避けるため、ステップS7の荷重が増加する前までに、ヘッド部15の位置の制御は、位置センサ70の検知信号による位置制御に切り替えておく方が望ましい。
【0056】
ステップS9として、制御装置80は、ヘッドヒータ50への通電を停止してヘッド部15の加熱を停止する(時刻t5)。さらに、制御装置80は、孔60に空気を流すことで、放熱を早め、ヘッド部15を冷却させる。なお、時刻t5までの一定時間の加熱により、はんだバンプ25aは充分に溶融し、金属パッド45aとなじんでいる。
【0057】
ステップS10として、制御装置80は、ヘッド部15を下降させる。なお、図7に示されるように、ヘッド部15の下降は、時刻t5より前もって開始しても構わない。または、冷却の開始と同時か、その後の時点からヘッド部15の下降を開始しても構わない。
【0058】
ヘッド部15を下降させる理由を説明する。
【0059】
冷却に伴い、ヘッド部15及びステージ10は、収縮を始める。つまり、ヘッド部15及びステージ10の高さ寸法は短くなる。すると、ヘッド部15に固定されている金属パッド45aと、ステージ10に固定されているはんだバンプ25aとの間に、張力が加えられる。この張力ははんだバンプ25aのクラックの原因となる可能性がある。そこで、張力がかからないようにするため、ヘッド部15を下降させる必要がある。
【0060】
また、ヘッド部15の下降は、前述のヘッド部15及びステージ10の収縮する長さと合わせて行う必要がある。ヘッド部15及びステージ10の収縮する長さより、極端に大きく下降させると、金属パッド45aとはんだバンプ25aとの間には強い圧縮力が加えられる。圧縮力が加えられると、クラックや破断によるオープン不良の原因となる可能性がある。
【0061】
ステップS10のヘッド部15の下降により、半導体素子45の金属パッド45aと基板25のはんだバンプ25aとの距離は、ほぼ同じ距離に保持される。つまり、はんだバンプ25aに張力・圧縮力が及ぶのを抑制できる。
【0062】
ステップS11として、制御装置80は、ヘッド部15を押し込みつつ、荷重センサ75によりヘッド部15の荷重を検知する。制御装置80は、荷重値の変化を検出し、ヘッド部15から半導体素子45を切り離す(時刻t6)。具体的には、制御装置80は、ヘッド部15のボンディングツール40による半導体素子45の吸着状態を解除させる。そして、制御装置80は、ヘッド部15を上昇させる。ステージ10上には、図3(c)に示したように、半導体素子45の金属パッド45aがはんだバンプ25bに所定距離dを存した状態で接続された基板25が残った状態となり、ステージ10から半導体装置を取り外すことができる。
【0063】
ヘッド部15の冷却が進むと、はんだバンプ25aが凝固する。はんだバンプ25aが凝固を始めると、状態が液状から固体へと変化するため、はんだバンプ25aの体積や形状が変化する。すると、ヘッド部15に加わる荷重値が変化する。そこで、制御装置80はヘッド部15の荷重値の変化を検知し、はんだバンプ25aの凝固に合わせて切り離しを行うことができる。なお、はんだバンプ25aの凝固温度は例えば200度前後であり、はんだバンプ25aの実温がおよそ凝固温度以下になると、はんだバンプ25aは凝固を始める。
【0064】
上記実施形態によれば、金属パッド45aとはんだバンプ25aとが接合され、昇温される前に、制御装置80は駆動部65を駆動し、減圧動作(S6)を実施する。減圧動作によって、ヘッド部15およびステージ10の高さ寸法は、圧縮前の高さ寸法に近づく。予め圧縮前の高さ寸法へ近づけさせることで、はんだバンプ25aが溶融した際に、ヘッド部15およびステージ10の高さ寸法の伸びを抑制することができる。高さ寸法の伸びを抑制することで、隣り合うはんだバンプ25aのショートや、ヘッド部15に固定されたボンディングツール40のステージ10への衝突を抑制できる。
【0065】
さらに、本実施形態によれば、ヘッド部15を加熱する際に、ヘッド部15の高さ寸法の増加に合わせて、制御装置80は駆動部65を駆動し、ヘッド部15を上昇させる。加熱時にヘッド部15を上昇させることで、隣り合うはんだバンプ25aのショートや、ボンディングツール40のステージ10への衝突を抑制できる。
【0066】
さらに、本実施形態によれば、ヘッド部15を冷却する際に、ヘッド部15の高さ寸法の縮みに合わせて、制御装置80は駆動部65を駆動し、ヘッド部15を下降させる。冷却時にヘッド部15を下降させることで、はんだバンプ25aと金属パッド45aとの間の張力を低減させ、はんだバンプ25aと金属パッド45aとの間の破断を低減させることができる。
【0067】
さらに、本実施形態によれば、ボンディングツール40から半導体素子45が切り離される際に、制御装置80はヘッド部15の荷重値の変化を検知して、切り離しを行う。荷重値の変化の検出により、はんだバンプ25aが完全に凝固する前に、半導体素子45の切り離しが可能となる。完全に凝固する前に切り離すことで、はんだバンプ25aと金属パッド45aとの間に張力や圧縮力を低減することができる。また、早期に切り離しを行うことで、半導体装置の製造のスループットを向上させ、安価な半導体装置の製造が可能となる。さらに、半導体装置に比べて大きな熱容量を有するヘッド部と半導体装置が切り離されることで、半導体装置は急速に冷やすことが可能である。急速に冷やすことで、はんだバンプ25aに含まれるはんだ材料が半導体装置の内部に固相拡散することを抑制することができる。はんだ材料の固相拡散が抑制されることで、半導体装置の信頼性の向上が可能である。なお、勿論であるが、全てのはんだバンプ25aが完全に凝固する前に切り離す必要はない。一部のはんだバンプ25aが凝固していたとしても構わない。この場合も、上述のスループットを向上させることが可能である。
【0068】
(他の実施形態)
上記実施形態で説明したもの以外に次のような変形形態に適用することができる。
【0069】
上記実施形態において、はんだバンプ25aを用いて説明したが、これに限られない。例えば、金属バンプあるいは金属ボールが形成されているものであれば良い。
【0070】
金属バンプは、半導体素子45側に設けた場合でも実施可能である。つまり、基板25と半導体素子45の少なくともいずれか一方に金属バンプが設けられた構成のものに適用できる。
【0071】
半導体素子45は、図3(a)に示したものに限られない。例えば、図9に示すように積層された半導体素子45’でも構わない。図9の半導体素子45’は、基板135上に半導体チップ145及び半導体チップ155を積層したものである。半導体素子45’の金属パッド45a’は、半導体チップ155よりも基板25に離れている。半導体チップ155と基板25の衝突を避けるため、金属パッド45a’とはんだバンプ25aの接着時のより高い位置制御が求められる。
【0072】
冷却孔に空気を流す冷却は、実施しなくても構わない。また、冷却方法は、空冷以外の任意の冷却手段でも構わない。
【0073】
また、上記実施形態では、ヘッド部15が駆動部65に配置されていたが、ステージ10に駆動部65が配置されていても構わない。駆動部65は、ヘッド部15とステージ10とを近づけたり、又は遠ざけたりすることができればよい。つまり、駆動部65は、ヘッド部15をステージ10の方向へ移動させてもよいし、ステージ10をヘッド部15の方向へ移動させてもよいし、その両方であってもよい。
【0074】
同様に、位置センサ70、荷重センサ75は、ヘッド部15に配置される必要は必ずしもない。つまり、駆動部65がステージ10を移動させる場合には、位置センサ70、荷重センサ75はステージ10に配置できる。
【0075】
本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
5 製造装置
10 ステージ
15 ヘッド部
20 支持部
25 基板
25a バンプ
25b バンプ
30 ステージヒータ
35 温度センサ
40 ボンディングツール
45 半導体素子
45a 金属パッド
50 ヘッドヒータ
55 温度センサ
60 孔
65 駆動部
70 位置センサ
75 荷重センサ
80 制御装置
135 基板
145 半導体チップ
155 半導体チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9