特許第6581391号(P6581391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581391
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】ワーク搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   B25J15/08 K
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-104697(P2015-104697)
(22)【出願日】2015年5月22日
(65)【公開番号】特開2016-215340(P2016-215340A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 秀士
(72)【発明者】
【氏名】竹林 潤
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】宇都 達博
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 眞一
(72)【発明者】
【氏名】岡 光信
(72)【発明者】
【氏名】水本 裕之
【審査官】 松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02489864(US,A)
【文献】 国際公開第2012/101953(WO,A1)
【文献】 米国特許第06257636(US,B1)
【文献】 特開平07−052070(JP,A)
【文献】 実開平05−000389(JP,U)
【文献】 実開平02−040455(JP,U)
【文献】 特開平05−023989(JP,A)
【文献】 実公昭47−041806(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
B66C 1/00−3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク本体、前記ワーク本体から突出する円柱状の把持部、および前記把持部の先端面に取り付けられた係合板、を含むワークと、
前記把持部を当該把持部の径方向から掴む3つの爪を含むチャック装置と、
前記チャック装置が取り付けられるロボットと、を備え、
前記係合板は、前記把持部の先端面に沿って前記把持部から張り出す張り出し部を含み、前記張り出し部には、前記把持部の径方向外向きに開口し、前記3つの爪の1つが嵌まり込む係合溝が形成されている、ワーク搬送システム。
【請求項2】
ワーク本体、前記ワーク本体から突出する円柱状の把持部、および前記把持部の先端面に取り付けられた係合板、を含むワークと、
前記把持部を当該把持部の径方向から掴む3つの爪を含むチャック装置と、
前記チャック装置が取り付けられるロボットと、を備え、
前記係合板は、前記把持部の先端面に沿って前記把持部から張り出す張り出し部を含み、前記張り出し部には、前記3つの爪の1つが嵌まり込む係合溝が形成されており、
前記係合板は、前記張り出し部が前記把持部から前記3つの爪の1つに向かう方向のみに張り出し、残りの2つの爪に対応する領域では前記把持部の輪郭内に収まる形状を有する、ワーク搬送システム。
【請求項3】
前記ロボットは、複数の自由度を持つ多関節アームを含む、請求項1または2に記載のワーク搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを用いたワーク搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロボットを用いたワーク搬送システムが提案されている。例えば、特許文献1には、ロボットにチャック装置が取り付けられたワーク搬送システムが開示されている。特許文献1では、チャック装置が、円柱状のワークを掴む、ワーク当接面にV字状の窪みが形成された一対の爪を有している。ただし、チャック装置としては、ワーク当接面がフラットな3つの爪を有するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−156086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワークには、比較的に大型のものもある。このようなワークをロボットにより搬送する場合には、ワーク本体に円柱状の把持部を設け、この把持部をチャック装置の3つの爪で掴むことが考えられる。
【0005】
しかしながら、そのような構成の場合には、ワーク本体の重心が必ずしも把持部の中心に位置するとは限らない。そのため、ロボットによってワークを搬送したときに、加速時または減速時の慣性力によって、ワークに把持部回りの回転力が作用する。このため、3つの爪で把持部を掴んだだけでは、ワークが回転する(すなわち、ワークを正規の位置に搬送できない)おそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ワーク本体および把持部を含むワークをロボットにより搬送する際にワークの回転を防止することができるワーク搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のワーク搬送システムは、ワーク本体、前記ワーク本体から突出する円柱状の把持部、および前記把持部の先端面に取り付けられた係合板、を含むワークと、前記把持部を当該把持部の径方向から掴む3つの爪を含むチャック装置と、前記チャック装置が取り付けられるロボットと、を備え、前記係合板は、前記把持部の先端面に沿って前記把持部から張り出す張り出し部を含み、前記張り出し部には、前記3つの爪の1つが嵌まり込む係合溝が形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、チャック装置の1つの爪が係合板の係合溝に嵌り込むことによって、ワークの回転を防止することができる。しかも、把持部に係合板を取り付けるという簡単な構成で上記の効果を得ることができる。
【0009】
前記係合板は、前記張り出し部が前記把持部から前記3つの爪の1つに向かう方向のみに張り出し、残りの2つの爪に対応する領域では前記把持部の輪郭内に収まる形状を有してもよい。この構成によれば、係合板を最小化することができる。
【0010】
例えば、前記ロボットは、複数の自由度を持つ多関節アームを含んでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワーク本体および把持部を含むワークをロボットにより搬送する際にワークの回転を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るワーク搬送システムの側面図である。
図2】チャック装置がワークの把持部を把持する直前の、図1のII−II線に沿った断面平面図である。
図3図2のIII−III線に沿った断面側面図である。
図4】チャック装置がワークの把持部を把持した直後の、図1のII−II線に沿った断面平面図である。
図5図4のV−V線に沿った断面側面図である。
図6】変形例のワーク搬送システムの断面平面図である。
図7図6のVII−VII線に沿った断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明の一実施形態に係るワーク搬送システム1を示す。このワーク搬送システム1は、ワーク2と、ワーク2を搬送するロボット4を含む。
【0014】
ワーク2は、ワーク本体21と、ワーク本体21から突出する円柱状の把持部22と、把持部22の先端面22a(図3参照)に取り付けられた係合板23を含む。本実施形態では、ワーク本体21が板状をなしており、把持部22がワーク本体21のエッジの近傍でワーク本体21の厚さ方向に突出している。また、把持部22の先端面22aは、把持部22の中心軸と直交しており、係合板23は、把持部22の先端面22aと平行である。
【0015】
本実施形態では、ロボット4が、複数の自由度を持つ多関節アーム41を含む。多関節アーム41には、チャック装置3が取り付けられている。ただし、ロボット4は、多関節アーム41を含むものに限られず、例えばリニアアクチュエータのような一軸ロボットであってもよい。
【0016】
図1および図2に示すように、チャック装置3は、把持部22を当該把持部22の径方向から掴む3つの爪33と、爪33が固定された3つのスライダ32と、スライダ32を支持するチャック本体31を含む。チャック本体31には、当該チャック本体31の中心から120度間隔で径方向に延びる3つの溝が形成されており、これらの溝にスライダ32が嵌まり込んでいる。
【0017】
各爪33は、スライダ32とほぼ同じ形状を有している。ただし、チャック本体31の径方向において、各爪33の内側端部は、スライダ32よりも幅が狭くなるように先細りとなっている。3つの爪33の1つ(図2では下側の爪)は回転防止用の爪でもある。
【0018】
図3に示すように、各爪33は、チャック本体31の径方向に対して直交する、フラットなワーク当接面33aを有している。本実施形態では、チャック装置3が、ワーク当接面33aの中間位置に把持部22の先端面22aが位置する状態で把持部22を把持する。換言すれば、爪33は、把持部22における先端面22aに隣接する部分を掴む。
【0019】
上述した係合板23は、図2に示すように、把持部22の先端面22aに沿って把持部22から張り出す張り出し部24を含む。本実施形態では、係合板23が、張り出し部24が把持部22から3つの爪33の1つ(図2では下側の爪)に向かう方向のみに張り出し、残りの2つの爪33に対応する領域では把持部22の輪郭内に収まる形状を有している。
【0020】
張り出し部24には、3つの爪33の1つ(回転防止用の爪)が嵌まり込む係合溝25が形成されている。係合溝25の幅は、回転防止用の爪33の内側端部の幅とほぼ等しい。本実施形態では、把持部22の径方向における係合溝25の深さは、把持部22から張り出し部24の先端までの距離よりも大きくなっている。このため、係合溝25を通じて、把持部22の先端面22aの一部が上方に露出している。
【0021】
以上説明したワーク搬送システム1では、ロボット4がワーク2を搬送する際には、多関節アーム41がチャック装置3を把持部22の真上に移動する。その後、多関節アーム41が、チャック装置3を下降させて、把持部22の上端部を3つの爪33の内側に挿入する。これにより、3つの爪33と係合板24との位置関係は図2および図3に示すとおりとなる。
【0022】
その後、チャック装置3が3つの爪33をスライダ33と共に径方向内側に移動する。これにより、3つの爪33と係合板24との位置関係は図4および図5に示すとおりとなる。つまり、図2において下側の爪33が係合板23の係合溝25に嵌まり込む。このため、図2において下側の爪33は、位置決め用の爪としても機能する。また、3つの爪33は同期して径方向内側へ移動するため、3つの爪の径方向内側への移動により、把持部22の中心がチャック本体31の中心に自動的に一致する。
【0023】
このように、チャック装置3の1つの爪33が係合板23の係合溝25に嵌り込むことによって、ワーク2の回転を防止することができる。しかも、把持部22に係合板23を取り付けるという簡単な構成で上記の効果を得ることができる。特に、本実施形態のようにロボット4が多関節アーム41を含む場合は、搬送の加速時および減速時だけではなくワーク2の旋回時にもワーク3に慣性力が作用するため、上記の効果を顕著に得ることができる。
【0024】
さらには、3つの爪33に対して係合溝25を1つだけ設けることにより、係合溝25の幅と回転防止用の爪33の幅との公差を厳しくする(換言すれば、それらの幅を高精度で一致させる)ことができる。その結果、ワーク2の回転を極めて効果的に防止することができる。
【0025】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0026】
例えば、図6および図7に示すように、各爪33が、把持部22の先端面22aよりも下方で把持部22の側面に当接するワーク当接面33aを有するとともに、ワーク当接面33aの上方に凹部33bを有していてもよい。換言すれば、爪33は、把持部22における先端面22aから離れた部分を掴んでもよい。この場合、図6に示すように、張り出し部24は、把持部22から全周に亘って張り出していてもよい。ただし、前記実施形態のように張り出し部24が把持部22から一方向のみに張り出していれば、係合板23を最小化することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ワーク搬送システム
2 ワーク
21 ワーク本体
22 把持部
22a 先端面
23 係合板
24 張り出し部
25 係合溝
3 チャック装置
33 爪
4 ロボット
41 多関節アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7