特許第6581444号(P6581444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581444
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 20/00 20060101AFI20190912BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20190912BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20190912BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20190912BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   F15B20/00 G
   F15B11/02 M
   F15B11/17
   E02F9/20 Q
   E02F9/22 E
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-176331(P2015-176331)
(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-53386(P2017-53386A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】清水 自由理
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
(72)【発明者】
【氏名】秋山 悠基
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−185401(JP,A)
【文献】 特開2014−205977(JP,A)
【文献】 特開2015−138365(JP,A)
【文献】 実開昭52−082926(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 20/00
F15B 11/02
F15B 11/17
E02F 9/20 − 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の油圧ポンプと、
複数の油圧アクチュエータと、
前記複数の油圧ポンプと前記複数の油圧アクチュエータとを接続する流路で構成された複数の油圧回路と、
前記複数の油圧ポンプのそれぞれを前記複数の油圧アクチュエータのいずれか1つに選択的に接続する複数の切換弁と、
前記複数の油圧アクチュエータを操作するための操作装置とを備えた作業機械において、
前記操作装置の操作指令値と前記複数の油圧ポンプと前記複数の油圧アクチュエータと前記複数の切換弁との予め設定された関係に基づき、前記操作装置の操作指令値に応じて、前記複数の切換弁のうち流通状態とする切換弁を選択し、選択された切換弁が流通状態となり、かつ選択されなかった切換弁が遮断状態となるように流路切換回路制御信号を設定する流路選択部と、
前記流路選択部で設定した前記流路切換回路制御信号を通信線を介して送信する信号送信部とを有する上位制御装置と、
前記複数の切換弁のうち同一の油圧ポンプに接続された切換弁毎に設けられ、前記複数の切換弁とは制御信号線で接続され、前記上位制御装置とは前記通信線を介して接続された複数の機器制御装置とを備え、
前記機器制御装置は、前記上位制御装置からの前記流路切換回路制御信号を前記通信線を介して受信する信号受信部と、前記流路切換回路制御信号を基に前記複数の切換弁を駆動させる指令信号を生成し、前記制御信号線を介して出力する流路制御部を備え、
前記上位制御装置は、前記複数の機器制御装置が故障しているか否かを判定する故障判定部を更に備え、
前記流路選択部は、前記故障判定部が前記複数の機器制御装置のうち一の機器制御装置を故障と判定した場合に、前記複数の油圧アクチュエータのうち前記一の機器制御装置に接続された一の切換弁を介して作動油が供給されていた油圧アクチュエータに、前記一の切換弁に代えて、前記一の機器制御装置とは異なる他の機器制御装置に接続された他の切換弁を介して作動油が供給されるように前記流路切換回路制御信号を再設定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記複数の油圧ポンプは、複数の両傾転油圧ポンプであり、
前記作業機械は、複数の片傾転油圧ポンプを更に備え、
前記複数の油圧回路は、前記複数の両傾転油圧ポンプのそれぞれと前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれとを閉回路状に接続する流路で構成された複数の閉回路と、前記複数の両傾転油圧ポンプのそれぞれと前記複数の閉回路を構成する流路とを接続する複数の合流流路とを有する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
通信線を介して前記上位制御装置と接続され、表示部と信号受信部とを有する表示装置を備え、
前記故障判定部は、前記一の機器制御装置を故障と判定した場合に、前記一の機器制御装置の情報を取得し
前記信号送信部は、前記故障判定部で取得した前記一の機器制御装置の情報を前記通信線を介して前記表示装置へ送信し、
前記表示装置の前記信号受信部は、前記一の機器制御装置の情報を受信し、前記表示部は、受信した前記一の機器制御装置の情報を表示する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に係り、更に詳しくは油圧アクチュエータを駆動する油圧駆動装置の制御装置を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械の分野では、油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータからの戻り油をタンクに戻す油圧回路(以下、開回路という)を用いた作業機械が主流であるが、近年、燃料消費率低減のために、油圧アクチュエータの油圧回路の絞り要素を減らすと共に、片傾転油圧ポンプからの吐出流量制御で油圧アクチュエータの駆動速度を制御し、油圧アクチュエータからの戻り油をタンクへ排出する油圧回路が特許文献1に開示されている。(このような油圧回路を以下「開回路ポンプ直接制御回路」という)。
【0003】
また、両傾転油圧ポンプと油圧アクチュエータとを閉回路状に接続し、油圧ポンプからの吐出流量制御で油圧アクチュエータの駆動速度を制御して、油圧アクチュエータからの戻り油を両傾転油圧ポンプに戻す閉回路の開発が進められている。このような閉回路に開回路ポンプを追加併設した油圧回路が特許文献2に開示されている。(このような油圧回路を以下「開回路/閉回路ポンプ直接制御回路」という)。
【0004】
上述した開回路ポンプ直接制御回路及び開回路/閉回路ポンプ直接制御回路では、片傾転ポンプもしくは両傾転ポンプである油圧ポンプと油圧アクチュエータを流路で直接接続して構成している。このような構成の場合、油圧ポンプの吐出流量の大きさには搭載性やコストの面で限界があるため、油圧ポンプの吐出流量が不足すると、油圧アクチュエータを十分な速度で駆動できないという問題が生じる。このため、油圧ポンプと油圧アクチュエータを接続する流路上に、流路切換回路を設け、複数台の油圧ポンプの吐出した作動油を選択的に合流させて油圧アクチュエータを高速で駆動させる構成が特許文献1及び2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/031851号
【特許文献2】特開2013−245787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載されている流路切換回路は、複数台の切換弁で構成され、制御装置からの制御信号線を介した電気的な制御信号で制御されている。流路切換回路は、全ての油圧ポンプと油圧アクチュエータを接続する流路の組み合わせを切換弁で実現させるため、通常の油圧ショベルに比べると電子制御する切換弁の搭載数が多くなる。このため、切換弁の制御に必要である長い制御信号線の本数が増え、制御信号線のコスト増加と信頼性低下が問題となる。
【0007】
制御信号線の長さを短くするために、制御装置を分散配置し、制御対象をとなる切換弁の近くに機器制御用の制御装置(以下、「機器制御装置」という)を設置する方法が考えられる。しかし、このようにした場合でも、機器制御装置が故障すると、流路切換回路は全て動作不能となり、油圧ポンプからの圧油を油圧アクチュエータに供給できなくなる。その結果、油圧ショベルは動作不能となり、製品の稼働率が低下してしまう。
【0008】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、流路切換回路を有する開回路/閉回路ポンプ直接制御回路又は開回路ポンプ直接制御回路を備える作業機械において、機器制御装置故障時の油圧ショベルの動作不能を防ぎ、作業を継続できる稼働率の高い作業機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、複数の油圧ポンプと、複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧ポンプと前記複数の油圧アクチュエータとを接続する流路で構成された複数の油圧回路と、前記複数の油圧ポンプのそれぞれを前記複数の油圧アクチュエータのいずれか1つに選択的に接続する複数の切換弁と、前記複数の油圧アクチュエータを操作するための操作装置とを備えた作業機械において、前記操作装置の操作指令値と前記複数の油圧ポンプと前記複数の油圧アクチュエータと前記複数の切換弁との予め設定された関係に基づき、前記操作装置の操作指令値に応じて、前記複数の切換弁のうち流通状態とする切換弁を選択し、選択された切換弁が流通状態となり、かつ選択されなかった切換弁が遮断状態となるように流路切換回路制御信号を設定する流路選択部と、前記流路選択部で設定した前記流路切換回路制御信号を通信線を介して送信する信号送信部とを有する上位制御装置と、前記複数の切換弁のうち同一の油圧ポンプに接続された切換弁毎に設けられ、前記複数の切換弁とは制御信号線で接続され、前記上位制御装置とは前記通信線を介して接続された複数の機器制御装置とを備え、前記機器制御装置は、前記上位制御装置からの前記流路切換回路制御信号を前記通信線を介して受信する信号受信部と、前記流路切換回路制御信号を基に前記複数の切換弁を駆動させる指令信号を生成し、前記制御信号線を介して出力する流路制御部を備え、前記上位制御装置は、前記複数の機器制御装置が故障しているか否かを判定する故障判定部を更に備え、前記流路選択部は、前記故障判定部が前記複数の機器制御装置のうち一の機器制御装置を故障と判定した場合に、前記複数の油圧アクチュエータのうち前記一の機器制御装置に接続された一の切換弁を介して作動油が供給されていた油圧アクチュエータに、前記一の切換弁に代えて、前記一の機器制御装置とは異なる他の機器制御装置に接続された他の切換弁を介して作動油が供給されるように前記流路切換回路制御信号を再設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油圧ポンプと油圧アクチュエータを流路で接続して構成した複数の油圧回路を備えた作業機械において、いずれかの機器制御装置が故障しても、一部の流路切換回路のみを停止するだけで作業を継続できる稼働率の高い作業機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の作業機械の第1の実施の形態である油圧ショベルを示す側面図である。
図2】本発明の作業機械の第1の実施の形態を構成する油圧駆動装置を示す概略図である。
図3】本発明の作業機械の第2の実施の形態を構成する油圧駆動装置を示す概略図である。
図4】本発明の作業機械の第3の実施の形態を構成する油圧駆動装置を示す概略図である。
図5】本発明の作業機械の第4の実施の形態を構成する油圧駆動装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の作業機械の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の作業機械の第1の実施の形態である油圧ショベルを示す側面図、図2は本発明の作業機械の第1の実施の形態を構成する油圧駆動装置を示す概略図である。
【0014】
従来技術の流路切換回路を備えた開回路ポンプ直接制御回路においては、流路切換回路を駆動する制御装置が故障した場合、流路切換回路は動作不能となるため、油圧ポンプからの圧油を油圧アクチュエータに供給できず、油圧ショベルは動作不能になる。そこで、本発明の作業機械の第1の実施の形態においては、開回路ポンプ直接制御回路を複数備えた油圧回路と、オペレータの操作装置の操作量に応じた流路切換回路への制御指令を演算し送信する上位制御装置と、開回路ポンプ直接制御回路毎に設けた複数の機器制御装置とを備え、各機器制御装置と上位制御装置とを通信線で接続した構成とした。このことにより、いずれかの機器制御装置が故障して停止しても、一部の流路切換回路のみが停止するだけであり、他の機器制御装置により、油圧アクチュエータへ圧油を供給できる。この結果、動作を停止することなく作業を継続できる稼働率の高い油圧ショベルを提供できる。
【0015】
図1において、油圧ショベル100は、左右方向の両側にクローラ式の走行装置8a,8bを備えた下部走行体103と、下部走行体103の上に旋回可能に取付けられた本体としての上部旋回体102とを備えている。上部旋回体102上にはオペレータが搭乗する操作室としてキャブ101が設けられている。下部走行体103と上部旋回体102とは、旋回油圧モータ7を介して旋回可能とされている。
【0016】
上部旋回体102の前側には、例えば掘削作業等を行うための作動装置であるフロント作業機104の基端部が回動可能に取り付けられている。ここで、前側とは、キャブ101に搭乗するオペレータが向く方向(図1中の左方向)をいう。
【0017】
フロント作業機104は、上部旋回体102の前側に基端部が俯仰動可能に連結されたブーム2を備えている。ブーム2は、供給される流体としての作動油(圧油)にて駆動する片ロッド式油圧シリンダであるブームシリンダ1を介して動作する。ブームシリンダ1は、ブームロッド1bの先端部が上部旋回体102に連結され、ブームヘッド1aの基端部がブーム2に連結されている。
【0018】
ブーム2の先端部には、アーム4の基端部が俯仰動可能に連結されている。アーム4は、片ロッド式油圧シリンダであるアームシリンダ3を介して動作する。アームシリンダ3は、アームロッド3bの先端部がアーム4に連結され、アームシリンダ3のアームヘッド3aがブーム2に連結されている。
【0019】
アーム4の先端部には、バケット6の基端部が俯仰動可能に連結されている。バケット6は、供給される作動油にて駆動する油圧アクチュエータとしての片ロッド式油圧シリンダであるバケットシリンダ5を介して動作する。バケットシリンダ5は、バケットロッド5bの先端部がバケット6に連結され、バケットシリンダ5のバケットヘッド5aの基端がアーム4に連結されている。
【0020】
次に、図2に示す概略図における油圧駆動装置のシステム構成を説明する。
図2において、動力源であるエンジン9の駆動軸は、動力を配分する動力伝達装置10に接続されている。動力伝達装置10には、開回路ポンプである第1片傾転ポンプ11と第2片傾転ポンプ12とが接続されている。
【0021】
第1片傾転ポンプ11と第2片傾転ポンプ12は、それぞれ流量調整手段として一対の入出力ポートを持つ傾転斜板機構と、斜板の傾斜角を調整してポンプ押しのけ容積を調整するするレギュレータ11a,12aを備えている。レギュレータ11a,12aは、上位制御装置33から通信線を介して受信したポンプ吐出流量指令値に従って、第1片傾転ポンプ11と第2片傾転ポンプ12の吐出流量を制御する。
【0022】
第1片傾転ポンプ11の吐出ポートは、流路20を介して流路切換回路としての切換弁14,15に接続されている。切換弁14,15は第1機器制御装置18からの制御信号線を介した信号により、流路の流通及び切換方向が制御され、信号が無い場合は遮断状態に制御される。第1片傾転ポンプ11の吸入ポートは、流路22を介して切換弁14,15及びタンク32に接続されている。
【0023】
切換弁14は、流路21,23を介してブームシリンダ1に接続されていて、切換弁14が流通状態になると、第1片傾転ポンプ11はブームシリンダ1と流路20,21,23,22を介して接続されている。
【0024】
切換弁15は、流路28,29,25,27を介してアームシリンダ3に接続されていて、切換弁15が流通状態になると、第1片傾転ポンプ11はアームシリンダ3と流路20,22,28,29,25,27を介して接続されている。
【0025】
同様に、第2片傾転ポンプ12の吐出ポートは、流路24を介して流路切換回路としての切換弁16,17に接続されている。切換弁16,17は第2機器制御装置19からの制御信号線を介した信号により、流路の流通及び切換方向が制御され、信号が無い場合は遮断状態に制御される。第2片傾転ポンプ12の吸入ポートは、流路26を介して切換弁16,17およびタンク32に接続されている。
【0026】
切換弁16は、流路30,31,21,23を介してブームシリンダ1に接続されていて、切換弁16が流通状態になると、第2片傾転ポンプ12はブームシリンダ1と流路24,26,30,31,21,23を介して接続されている。
【0027】
切換弁17は、流路25,27を介してアームシリンダ3に接続されていて、切換弁17が流通状態になると、第2片傾転ポンプ12はアームシリンダ3と流路24,25,27,26を介して接続されている。
【0028】
また、本実施の形態における油圧駆動装置は、操作系統として、上位制御装置33に接続された操作レバー式の操作装置34a,34bを備えている。操作装置34aの上下操作がブームシリンダ1の操作に対応し、操作装置34aの左右操作が旋回油圧モータ7の操作に対応し、操作装置34bの上下操作がアームシリンダ3の操作に対応し、操作装置34bの左右操作がバケットシリンダ5の操作に対応する。なお、操作装置34a,34bの操作方向と各油圧アクチュエータの操作との対応は他の方式であっても良い。
【0029】
上位制御装置33は、流路選択部33aと、故障判定部33bと、信号送信部33cとを備えている。上位制御装置33は、操作装置34a,34bから制御信号線を介して入力された操作指令値を演算処理し、演算処理後の制御信号を第1/第2機器制御装置18,19、レギュレータ11a,12aに通信線を介して出力してこれらを制御する。
【0030】
流路選択部33aは、オペレータが操作装置34a,34aを操作した際の操作指令値に基づいて、第1/第2片傾転ポンプ11,12、切換弁14〜17の制御量であるポンプ吐出流量指令値と流路切換回路制御信号を演算する。演算方法は、例えば、操作指令値と操作対象である第1/第2片傾転ポンプ11,12と切換弁14〜17との関係を予め設定した表に基づいてポンプ吐出流量指令値と流路切換回路制御信号を決定する。
【0031】
故障判定部33bは、上位制御装置33と通信線を介して接続された機器制御装置18,19の故障による誤作動、および停止を検知する。第1/第2機器制御装置18,19の故障検知手段としては、例えば、第1/第2機器制御装置18,19から一定時間間隔で上位制御装置33へ稼働状態信号を送信させるように構成し、故障判定部33bがこの稼働状態信号を受信できたかどうかを判定するようにしても良い。
【0032】
上位制御装置33が稼働状態信号を受信できた場合、故障判定部33bは、第1/第2機器制御装置18,19が正常な稼動状態である判定する。上位制御装置33が稼働状態信号を受信できなかった場合、故障判定部33bは、第1/第2機器制御装置18,19のいずれか又は全てが故障状態であると判定する。具体的には、第1/第2機器制御装置18,19のいずれか又は全てが停止した場合や、通信線が断線した場合等が考えられる。
【0033】
信号送信部33cは、流路選択部33aが演算した第1/第2片傾転ポンプ11,12のポンプ吐出流量指令値と切換弁14〜17の流路切換方向である流路切換回路制御信号を、レギュレータ11a,12aと第1/第2機器制御装置18,19に通信線を介して送信する。
【0034】
第1機器制御装置18は、信号受信部18aと流路制御部18bとを備え、第2機器制御装置19は、信号受信部19aと流路制御部19bとをそれぞれ備えている。
【0035】
第1機器制御装置18において、信号受信部18aは通信線を介して上位制御装置33から流路切換回路制御信号を受信する。流路制御部18bは、受信した流路切換回路制御信号に基づき、制御信号線を介して切換弁14,15を制御し、流路20と流路21,23,28,29との間を、遮断状態もしくは流通状態にする。同様に、第2機器制御装置19は切換弁16,17を制御し、流路24と流路25,27,30,31との間を、遮断状態もしくは流通状態にする。
【0036】
以上のように構成した油圧駆動装置における、油圧アクチュエータを駆動させる一連の動作について説明する。
まず、ブームシリンダ1とアームシリンダ3の停止状態について説明する。
【0037】
操作装置34a,34bが非操作の場合、上位制御装置33の流路選択部33aは、制御信号線を介して操作装置34a,34bの各操作量(操作量ゼロ)を受けとり、例えば予め設定しておいた表に基づいて、操作量に応じた第1/第2片傾転ポンプ11,12のポンプ吐出流量指令値を0に決定し、切換弁14〜17の流路切換方向である流路切換回路制御信号を全て遮断と決定する。
【0038】
故障判定部33bは、第1/第2機器制御装置18,19の稼働もしくは故障状態を判定する。信号送信部33cは、通信線を介してポンプ吐出流量指令値をレギュレータ11a,12aに送信し、レギュレータ11a,12aは受信したポンプ吐出流量指令値に基づいて、第1/第2片傾転ポンプ11,12の吐出流量を制御する。
【0039】
また、信号送信部33cは、流路切換回路制御信号を第1/第2機器制御装置18,19に通信線を介して送信し、第1/第2機器制御装置18,19の信号受信部18a,19aは流路切換回路制御信号を受信する。流路制御部18bは受信した流路切換回路制御信号に基づき、切換弁14,15を遮断状態に制御する。また、流路制御部19bは受信した流路切換回路制御信号に基づき、切換弁16,17を遮断状態に制御する。
【0040】
第1/第2片傾転ポンプ11,12の吐出流量が0であり、かつ、切換弁14〜17も遮断状態に制御されているため、ブームシリンダ1とアームシリンダ3は停止する。
【0041】
次に、ブームシリンダ1を伸展動作させる場合について説明する。
【0042】
操作装置34aがブームシリンダ1を進展させる方向に操作され、操作装置34bが非操作の場合、上位制御装置33の流路選択部33aは、制御信号線を介して操作装置34a,34bの各操作量を受けとり、例えば予め設定しておいた表に基づいて、第1片傾転ポンプ11のポンプ吐出流量指令値を操作量に応じたある正の値に、第2片傾転ポンプ12のポンプ吐出流量指令値を0に決定する。
また、切換弁14の流路切換回路制御信号を流路20と流路21が流通状態になるように決定し、切換弁15〜17の流路切換回路制御信号を全て遮断と決定する。
【0043】
故障判定部33bは、第1/第2機器制御装置18,19の稼働もしくは故障状態を判定する。信号送信部33cは、ポンプ吐出流量指令値を通信線を介してレギュレータ11a,12aに送信し、レギュレータ11a,12aは受信したポンプ吐出流量指令値に基づいて、第1片傾転ポンプ11の吐出流量をある正の値にして、流路20側に作動油を吐出するよう制御し、第2片傾転ポンプ12の吐出流量を0に制御する。
【0044】
また、信号送信部33cは、流路切換回路制御信号を第1/第2機器制御装置18,19に通信線を介して送信し、第1/第2機器制御装置18,19の信号受信部18a,19aは、流路切換回路制御信号をそれぞれ受信する。流路制御部18bは、受信した流路切換回路制御信号に基づき、切換弁14を流路20と流路21が流通状態になるよう制御し、切換弁15を遮断状態に制御する。また、流路制御部19bは、受信した流路切換回路制御信号に基づき、切換弁16,17を遮断状態に制御する。
【0045】
第1片傾転ポンプ11が作動油を吐出し、かつ、切換弁14が流通状態であるため、第1片傾転ポンプ11が吐出した作動油は流路20、切換弁14、流路21を介して、ブームヘッド1a側の油室に流入し、ブームシリンダ1は伸展する。ブームシリンダ1が伸展すると、ブームロッド1b側の油室から作動油が流路23、切換弁14、流路22を介してタンク32と第1片傾転ポンプ11へと流出する。この際、アームシリンダ3は停止している。
【0046】
次に、第1機器制御装置18が故障して停止したときに、ブームシリンダ1を伸展動作させる場合について説明する。
【0047】
操作装置34aがブームシリンダ1を進展させる方向に操作され、操作装置34bが非操作の場合、上位制御装置33の流路選択部33aは、制御信号線を介して操作装置34a,34bの各操作量を受けとり、例えば予め設定しておいた表に基づいて、第1片傾転ポンプ11のポンプ吐出流量指令値を操作量に応じたある正の値に、第2片傾転ポンプ12のポンプ吐出流量指令値を0に決定する。また、切換弁14の流路切換回路制御信号を流路20と流路21が流通状態になるように決定し、切換弁15〜17の流路切換回路制御信号を全て遮断と決定する。
【0048】
故障判定部33bは、第1/第2機器制御装置18,19の稼働もしくは故障状態を判定する。故障状態の判定方法は、例えば、第1機器制御装置18から通信線を介した稼働状態信号が、故障判定部33bに送られてきている場合は、正常な稼動状態と判定し、一定時間、信号が送られてこない場合、第1機器制御装置18は故障状態と判定する。第1機器制御装置18が故障して停止すると、故障判定部33bは第1機器制御装置18を故障状態と判定する。
【0049】
第1機器制御装置18を故障状態と判定した故障判定部33bは、操作装置34aの操作量に応じた第1片傾転ポンプ11のポンプ吐出流量指令値を0に、第2片傾転ポンプ12のポンプ吐出流量指令値をある正の値に再設定する。また、切換弁16の流路切換回路制御信号を流路24と流路31が流通状態になるように再設定し、切換弁14,15,17の流路切換回路制御信号を全て遮断と再設定する。
【0050】
信号送信部33cは、通信線を介してレギュレータ11a,12aにポンプ吐出流量指令値を送信し、レギュレータ11a,12aは受信したポンプ吐出流量指令値に基づいて、第2片傾転ポンプ12の吐出流量をある正の値にし、流路24側に作動油を吐出するよう制御し、第1片傾転ポンプ11の吐出流量を0に制御する。また、信号送信部33cは、流路切換回路制御信号を第1/第2機器制御装置18,19に通信線を介して送信する。
【0051】
第1/第2機器制御装置18,19の信号受信部18a,19aは、通信線を介して流路切換回路制御信号を受信する。流路制御部19bは、受信した流路切換回路制御信号に基づき、切換弁16を流路24と流路31が流通状態、切換弁17を遮断状態にそれぞれ制御する。このとき、流路制御部18bは、故障しているため、流路切換回路制御信号を受信できず、切換弁14,15は制御されずに、初期状態である遮断状態となる。
【0052】
第2片傾転ポンプ12が作動油を吐出し、かつ、切換弁16が流通状態であるため、第2片傾転ポンプ12が吐出した作動油は流路24、切換弁16、流路31、21を介して、ブームヘッド1a側の油室に流入し、ブームシリンダ1は伸展する。ブームシリンダ1が伸展すると、ブームロッド1b側の油室から作動油が流路23、30、切換弁16、流路26を介してタンク32と第2片傾転ポンプ12へと流出する。この際、アームシリンダ3は停止している。
【0053】
ところで、図2に示す概略図において、例えば、第1機器制御装置18と第2機器制御装置19の機能が1台の制御装置で構成され、この制御装置から制御信号線を介して切換弁14〜18が接続されていた場合には、この制御装置が故障すると、切換弁14〜18を制御することができなくなり、切換弁14〜18は全て初期状態である遮断状態となる。そのため、第1/第2片傾転ポンプ11,12の吐出した作動油は、ブームシリンダ1,アームシリンダ3のいずれにも流入させることができず、ブームシリンダ1,アームシリンダ3は停止状態となり、油圧ショベルは稼働不能となってしまう。
【0054】
本実施の形態では、第1/第2機器制御装置18,19のいずれが故障して停止すると、流路切換回路である切換弁14〜17の内の数台が制御不能となる。しかし、制御可能である機器制御装置と切換弁とを用いて、第1/第2片傾転ポンプ11,12のいずれかの吐出作動油を、対象となる油圧シリンダであるブームシリンダ1もしくはアームシリンダ3に流入させることができる。したがって、いずれかの機器制御装置が故障しても、動作を停止することなく、作業を継続できる稼働率の高い油圧ショベルを提供できる。
【0055】
上述した本発明の作業機械の第1の実施の形態によれば、油圧ポンプ11,12と油圧アクチュエータ1,3を流路で接続して構成した複数の油圧回路を備えた作業機械100において、いずれかの機器制御装置18,19が故障しても、一部の流路切換回路のみを停止するだけで作業を継続できる稼働率の高い作業機械を提供できる。
【0056】
また、上述した本発明の作業機械の第1の実施の形態によれば、例えば、開回路ポンプ直接制御回路を備えた油圧ショベルにおいて、いずれかの機器制御装置18,19が故障して停止しても、一部の流路切換回路のみが停止するだけであり、油圧ショベルの停止を必要としないので、稼働率の高い油圧ショベルを提供することができる。
【0057】
なお、本実施の形態においては、ブームシリンダ1とアームシリンダ3の油圧駆動装置を例に説明したが、これに限るものではない。ブーム,アーム,バケット,油圧モータのいずれの開回路に適用しても良く、油圧アクチュエータの種類は問わない。
【0058】
また,本実施の形態においては、第1機器制御装置18が故障した場合に、ブームシリンダ1を駆動させるパターンについて述べたが、これに限るものではない。アームシリンダ3を伸長、縮退させる場合も同様に、正常動作する機器制御装置に接続されている流路切換回路と、制御可能な流路切換回路に流路で接続された片傾転ポンプの吐出流量を制御することで、アームシリンダ3を駆動することができる。
【0059】
また、第2機器制御装置19が故障して停止し、第1機器制御装置18が稼働している場合も、正常動作する第1機器制御装置18に接続されている流路切換回路と、制御可能な流路切換回路に流路で接続された第1片傾転ポンプ11の吐出流量を制御することで、アームシリンダ3を駆動することができる。
【実施例2】
【0060】
以下、本発明の作業機械の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図3は本発明の作業機械の第2の実施の形態を構成する油圧駆動装置を示す概略図である。図3において、図1及び図2に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0061】
本実施の形態においては、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ1、アームシリンダ3と、第1/第2両傾転ポンプ35,36とをそれぞれ油圧閉回路で接続した回路に、第1/第2片傾転ポンプ11,12を油圧閉回路のシリンダヘッド側の流路に接続して、両傾転ポンプと片傾転ポンプを連動させて油圧アクチュエータを駆動する複数の開回路/閉回路ポンプ直接制御回路を設けたことと、開回路/閉回路ポンプ直接制御回路ごとに機器制御装置を複数備えたことを特徴とする。
【0062】
図3に示す本発明の作業機械の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
本実施の形態においては、油圧アクチュエータとしてブームシリンダ1、アームシリンダ3を第1/第2両傾転ポンプ35,36とそれぞれ油圧閉回路で接続した回路を備える。第1/第2両傾転ポンプ35,36は、動力伝達装置10に接続されていて、それぞれ流量調整手段として一対の入出力ポートを持つ両傾転斜板機構、および斜板の傾斜角を調整してポンプ押しのけ容積を調整するレギュレータ35a,36aを備えている。レギュレータ35a,36aは、上位制御装置33から通信線を介して受信したポンプ吐出流量指令値に従って、第1/第2両傾転ポンプ35,36の吐出流量を制御する。
【0063】
流路切換回路としては、切換弁37,38,39,40,41,43を備えている。切換弁37は流路20〜23に接続され、切換弁38は流路20,22,28,29に接続されている。切換弁37,38は第1機器制御装置18からの制御信号線を介した信号により、流路の流通/遮断が制御され、信号が無い場合は遮断状態に制御される。また、切換弁39は流路24,26,30,31に接続され、切換弁40は流路24〜27に接続されている。切換弁39,40は第2機器制御装置19からの制御信号線を介した信号により、流路の流通/遮断が制御され、信号が無い場合は遮断状態に制御される。
【0064】
切換弁37は、流路21,23を介してブームシリンダ1に接続されていて、切換弁37が流通状態になると、第1両傾転ポンプ35はブームシリンダ1と流路20,21,23,22を介して接続されている。
【0065】
切換弁38は、流路28,29,25,27を介してアームシリンダ3に接続されていて、切換弁38が流通状態になると、第1両傾転ポンプ35はアームシリンダ3と流路20,22,28,29,25,27を介して接続されている。
【0066】
切換弁39は、流路30,31,21,23を介してブームシリンダ1に接続されていて、切換弁39が流通状態になると、第2両傾転ポンプ36はブームシリンダ1と流路24,26,30,31,21,23を介して接続されている。
【0067】
切換弁40は、流路25,27を介してアームシリンダ3に接続されていて、切換弁40が流通状態になると、第2両傾転ポンプ36はアームシリンダ3と流路24,25,27,26を介して接続されている。
【0068】
また、第1片傾転ポンプ11の吐出ポートは、切換弁41と流路42を介して流路20へと接続されている。切換弁41は第1機器制御装置18からの制御信号線を介した信号により、流路の流通/遮断が制御され、信号が無い場合は遮断状態に制御される。第1片傾転ポンプ11の吸入ポートは、流路を介してタンク32に接続されている。同様に、第2片傾転ポンプ12の吐出ポートは、切換弁43と流路44を介して流路24へと接続されている。切換弁43は第2機器制御装置19からの制御信号線を介した信号により、流路の流通/遮断が制御され、信号が無い場合は遮断状態に制御される。第2片傾転ポンプ12の吸入ポートは、流路を介してタンク32に接続されている。
【0069】
なお、本実施の形態においては、第1/第2片傾転ポンプ11,12の吐出ポートは、流路20,24へと接続されているが、これに限るものではなく、流路22,26へそれぞれ接続されていても良い。
【0070】
流路21と流路23には、チェック弁45aとフラッシング弁46aとが接続されていて、流路25と流路27には、チェック弁45bとフラッシング弁46bとが接続されている。チェック弁45aは、流路21,23の圧力がタンク32の圧力以下まで下がると、タンク32の作動油を回路に吸い込み、回路のキャビテーションを防止する。同様にチェック弁45bは、流路25,27の圧力に応じて動作する。フラッシング弁46a,46bは、流路21と23、もしくは流路25と27の圧力の低い流路をタンク32に接続し、閉回路内の余剰作動油を排出する。
【0071】
また、第1機器制御装置18は、制御信号線を介して切換弁37,38,41に接続されていて、通信線を介して上位制御装置33に接続されている。第2機器制御装置19も同様に、制御信号線を介して切換弁39,40,43に接続されていて、通信線を介して上位制御装置33に接続されている。
【0072】
次に、本実施の形態における、油圧アクチュエータを駆動させる一連の動作について説明する。
まず、ブームシリンダ1とアームシリンダ3の停止状態について説明する。
【0073】
操作装置34a,34bが非操作の場合、上位制御装置33の流路選択部33aは、制御信号線を介して操作装置34a,34bの各操作量(操作量ゼロ)を受けとり、例えば予め設定しておいた表に基づいて、操作量に応じた第1/第2両傾転ポンプ35,36、及び第1/第2片傾転ポンプ11,12のポンプ吐出流量指令値を0に決定し、切換弁37〜41,43の流路切換方向である流路切換回路制御信号を全て遮断と決定する。
【0074】
故障判定部33bは、第1/第2機器制御装置18,19の稼働もしくは故障状態を判定する。信号送信部33cは、通信線を介してポンプ吐出流量指令値をレギュレータ35a,36a,11a,12aに送信し、レギュレータ35a,36a,11a,12aは受信したポンプ吐出流量指令値に基づいて、第1/第2両傾転ポンプ35,36、及び第1/第2片傾転ポンプ11,12の吐出流量を制御する。
【0075】
また、信号送信部33cは、流路切換回路制御信号を第1/第2機器制御装置18,19に通信線を介して送信し、第1/第2機器制御装置18,19の信号受信部18a,19aは流路切換回路制御信号を受信する。流路制御部18bは受信した流路切換回路制御信号に基づき、切換弁37,38,41を遮断状態に制御する。また、流路制御部19bは受信した流路切換回路制御信号に基づき、切換弁39,40,43を遮断状態に制御する。
【0076】
第1/第2両傾転ポンプ35,36、及び第1/第2片傾転ポンプ11,12の吐出流量が0であり、かつ、切換弁37〜41,43も遮断状態に制御されているため、ブームシリンダ1とアームシリンダ3は停止する。
【0077】
次に、ブームシリンダ1を伸展動作させる場合について説明する。
【0078】
操作装置34aがブームシリンダ1を進展させる方向に操作され、操作装置34bが非操作の場合、上位制御装置33の流路選択部33aは、制御信号線を介して操作装置34a,34bの各操作量を受けとり、例えば予め設定しておいた表に基づいて、第1両傾転ポンプ35のポンプ吐出流量指令値を流路20側に吐出する操作量に応じた値に、第1片傾転ポンプ11のポンプ吐出流量指令値を操作量に応じたある正の値に、第2両傾転ポンプ36と第2片傾転ポンプ12のポンプ吐出流量指令値を0に決定する。また、流路選択部33aは、切換弁37の流路切換回路制御信号を流路20と流路21が流通状態になるように決定し、切換弁41の流路切換回路制御信号を流路42と流通状態になるように決定する。さらに、切換弁38〜40,43の流路切換回路制御信号を全て遮断と決定する。
【0079】
故障判定部33bは、第1/第2機器制御装置18,19の稼働もしくは故障状態を判定する。信号送信部33cは、ポンプ吐出流量指令値を通信線を介してレギュレータ35a,36a,11a,12aに送信し、レギュレータ35a,36a,11a,12aは受信したポンプ吐出流量指令値に基づいて、第1両傾転ポンプ35の吐出流量を流路20側に吐出する様に制御し、第1片傾転ポンプ11の吐出流量をある正の値にして、流路42側に作動油を吐出するよう制御する。また、第2両傾転ポンプ36と第2片傾転ポンプ12の吐出流量を0に制御する。
【0080】
また、信号送信部33cは、流路切換回路制御信号を第1/第2機器制御装置18,19に通信線を介して送信し、第1/第2機器制御装置18,19の信号受信部18a,19aは、流路切換回路制御信号をそれぞれ受信する。流路制御部18bは、受信した流路切換回路制御信号に基づき、切換弁37を流路20と流路21が流通状態になるよう制御し、切換弁41を流路42と流通状態になるように制御し、切換弁38を遮断状態に制御する。また、流路制御部19bは、受信した流路切換回路制御信号に基づき、切換弁39,40,43を遮断状態に制御する。
【0081】
第1両傾転ポンプ35が作動油を流路20側に吐出し、かつ、切換弁37が流通状態であるため、第1両傾転ポンプ35が吐出した作動油は流路20、切換弁37、流路21を介して、ブームヘッド1a側の油室に流入する。また、第1片傾転ポンプ11が流路42側へ作動油を吐出し、かつ、切換弁41が流通状態であるため、第1両傾転ポンプ11が吐出した作動油は流路42を介して流路20へ合流し、ブームヘッド1a側の油室に流入する。このことにより、ブームシリンダ1は伸展する。ブームシリンダ1が伸展すると、ブームロッド1b側の油室から作動油が流路23、切換弁37、流路22を介して第1両傾転ポンプ35へと流入する。この際、アームシリンダ3は停止している。
【0082】
次に、第1機器制御装置18が故障して停止したときに、ブームシリンダ1を伸展動作させる場合について説明する。
【0083】
操作装置34aがブームシリンダ1を進展させる方向に操作され、操作装置34bが非操作の場合、上位制御装置33の流路選択部33aは、制御信号線を介して操作装置34a,34bの各操作量を受けとり、例えば予め設定しておいた表に基づいて、第1両傾転ポンプ35のポンプ吐出流量指令値を流路20側に吐出する操作量に応じた値に、第1片傾転ポンプ11のポンプ吐出流量指令値を操作量に応じたある正の値に、第2両傾転ポンプ36と第2片傾転ポンプ12のポンプ吐出流量指令値を0に決定する。また、切換弁37の流路切換回路制御信号を流路20と流路21が流通状態になるように決定し、切換弁41の流路切換回路制御信号を流路42と流通状態になるように決定する。さらに、切換弁38〜40,43の流路切換回路制御信号を全て遮断と決定する。
【0084】
故障判定部33bは、第1/第2機器制御装置18,19の稼働もしくは故障状態を判定する。故障状態の判定方法は、例えば、第1機器制御装置18から通信線を介した稼働状態信号が、故障判定部33bに送られてきている場合は、正常な稼動状態と判定し、一定時間、信号が送られてこない場合、第1機器制御装置18は故障状態と判定する。第1機器制御装置18が故障して停止すると、故障判定部33bは第1機器制御装置18を故障状態と判定する。
【0085】
第1機器制御装置18を故障状態と判定した故障判定部33bは、第1両傾転ポンプ35と第1片傾転ポンプ11のポンプ吐出流量指令値を0に再設定し、第2両傾転ポンプ36のポンプ吐出流量指令値を流路24側に吐出する操作量に応じた値に、第2片傾転ポンプ12のポンプ吐出流量指令値を操作量に応じたある正の値に再設定する。また、切換弁39の流路切換回路制御信号を流路24と流路31が流通状態になるように再設定し、切換弁43の流路切換回路制御信号を流路44と流通状態になるように再設定し、切換弁37,38,40,41の流路切換回路制御信号を全て遮断と再設定する。
【0086】
信号送信部33cは、通信線を介してレギュレータ35a,36a,11a,12aにポンプ吐出流量指令値を送信し、レギュレータ35a,36a,11a,12aは受信したポンプ吐出流量指令値に基づいて、第2両傾転ポンプ36の吐出流量を流路24側に吐出する様に制御し、第2片傾転ポンプ12の吐出流量をある正の値にして、流路44側に作動油を吐出するよう制御する。また、第1両傾転ポンプ35と第1片傾転ポンプ11の吐出流量を0に制御する。
【0087】
また、信号送信部33cは、流路切換回路制御信号を第1/第2機器制御装置18,19に通信線を介して送信し、第1/第2機器制御装置18,19の信号受信部18a,19aは、流路切換回路制御信号をそれぞれ受信する。流路制御部19bは、受信した流路切換回路制御信号に基づき、切換弁39を流路24と流路31が流通状態になるよう制御し、切換弁43を流路44と流通状態になるように制御し、切換弁40を遮断状態に制御する。一方、流路制御部18bは、故障しているため信号を受信できず、切換弁37,38,41は制御されずに、初期状態である遮断状態となる。
【0088】
第2両傾転ポンプ36と第2片傾転ポンプ12が作動油を吐出し、かつ、切換弁39,43が流通状態であるため、第2両傾転ポンプ36が吐出した作動油は流路24、切換弁39、流路31、21を介して、第2片傾転ポンプ12が吐出した作動油は切換弁43、流路44を介してブームヘッド1a側の油室に流入し、ブームシリンダ1は伸展する。ブームシリンダ1が伸展すると、ブームロッド1b側の油室から作動油が流路23、30、切換弁39、流路26を介して第2両傾転ポンプ36へと流入する。この際、アームシリンダ3は停止している。
【0089】
ところで、図3に示す概略図において、例えば、第1機器制御装置18と第2機器制御装置19の機能が1台の制御装置で構成され、この制御装置から制御信号線を介して切換弁37〜41,43が接続されていた場合には、この制御装置が故障すると、切換弁37〜41,43を制御することができなくなり、切換弁37〜41,43は全て初期状態である遮断状態となる。そのため、第1/第2両傾転ポンプ35,36及び第1/第2片傾転ポンプ11,12の吐出した作動油は、ブームシリンダ1,アームシリンダ3のいずれにも流入させることができず、ブームシリンダ1,アームシリンダ3は停止状態となり、油圧ショベルは稼働不能となってしまう。
【0090】
本実施の形態では、開回路/閉回路ポンプ直接制御回路毎に機器制御装置を設けたので、第1/第2機器制御装置18,19のいずれが故障して停止すると、流路切換回路である切換弁37〜41,43の内の数台が制御不能となる。しかし、制御可能である機器制御装置と切換弁とを用いて、第1/第2両傾転ポンプ35,36及び第1/第2片傾転ポンプ11,12のいずれかの吐出作動油を、対象となる油圧シリンダであるブームシリンダ1もしくはアームシリンダ3に流入させることができる。したがって、いずれかの機器制御装置が故障しても、動作を停止することなく、作業を継続できる稼働率の高い油圧ショベルを提供できる。
【0091】
さらに、本実施の形態においては、第1両傾転ポンプ35と連動する第1片傾転ポンプ11に接続された切換弁37,38,41で構成された流路切換回路を同一の第1機器制御装置18で制御し、第2両傾転ポンプ36と連動する第2片傾転ポンプ12に接続された切換弁39,40,43で構成された流路切換回路を同一の第2機器制御装置19で制御することで、機器制御装置の故障時における油圧アクチュエータの誤作動を抑制することができる。
【0092】
例えば、図3に示す概略図において、閉回路/開回路ポンプ直接制御回路では、第1両傾転ポンプ35と第1片傾転ポンプ11の吐出流量の比を、接続する油圧シリンダの受圧面積比を合わせることで、油圧シリンダのシリンダヘッドとシリンダロッドとの入出力流量差を吸収して油圧シリンダの操作性を向上させている。このような状況で、切換弁37,38と切換弁41が別々の機器制御装置で制御されていたと仮定すると、切換弁41側の機器制御装置が故障しても、切換弁37,38は制御可能であるため、第1両傾転ポンプ35が作動油を吐出して、ブームシリンダ1を駆動することはできるが、切換弁41を制御することはできなくなる。このことにより、第1片傾転ポンプ11の作動油を第1両傾転ポンプ35側に合流させることができなくなる。この結果、第1両傾転ポンプ35は油圧シリンダの受圧面積比に合わせた入出力流量差を吸収できなくなり、油圧シリンダの挙動が不安定になり、操作性が低下してしまう。
【0093】
本実施の形態においては、第1機器制御装置18が故障して停止した場合、切換弁37,38,41は遮断状態となり、第2両傾転ポンプ36と第2片傾転ポンプ12によってブームシリンダ1を駆動できるため、ブームシリンダ1の受圧面積比に合わせた入出力流量差を第2両傾転ポンプ36と第2片傾転ポンプ12で吸収できる。この結果、第1機器制御装置18が故障しても油圧ショベルの操作性は低下しない。
【0094】
上述した本発明の作業機械の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
また、上述した本発明の作業機械の第2の実施の形態によれば、開回路/閉回路ポンプ直接制御回路毎に機器制御装置を設けたので、機器制御装置の故障時における油圧アクチュエータの誤作動を抑制することができる。
【0096】
なお、本実施の形態においては、ブームシリンダ1とアームシリンダ3の油圧駆動装置を例に説明したが、これに限るものではない。ブーム,アーム,バケット,油圧モータのいずれの開回路に適用しても良く、油圧アクチュエータの種類は問わない。
【0097】
また,本実施の形態においては、第1機器制御装置18が故障した場合に、ブームシリンダ1を駆動させるパターンについて述べたが、これに限るものではない。アームシリンダ3を伸長、縮退させる場合も同様に、正常動作する機器制御装置に接続されている流路切換回路と、制御可能な流路切換回路に流路で接続された両傾転ポンプと片傾転ポンプの吐出流量を制御することで、アームシリンダ3を駆動することができる。
【0098】
また、第2機器制御装置19が故障して停止し、第1機器制御装置18が稼働している場合も、正常動作する第1機器制御装置18に接続されている流路切換回路と、制御可能な流路切換回路に流路で接続された第1両傾転ポンプ35及び第1片傾転ポンプ11の吐出流量を制御することで、アームシリンダ3を駆動することができる。
【実施例3】
【0099】
以下、本発明の作業機械の第3の実施の形態を図面を用いて説明する。図4は本発明の作業機械の第3の実施の形態を構成する油圧駆動装置を示す概略図である。図4において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0100】
図4に示す本発明の作業機械の第3の実施の形態は、大略第2の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
本実施の形態においては、予備機器制御装置47を備えた点が異なる。予備機器制御装置47は通信線を介して上位制御装置33に接続されると共に、制御信号線を介して切換弁37〜41,43に接続されている。また予備機器制御装置47は、信号受信部47aと、制御切換部47bと、流路制御部47cを備えている。
【0101】
次に、本実施の形態における、機器制御装置が故障した場合の油圧アクチュエータを駆動させる一連の動作について説明する。なお、機器制御装置が故障していない場合の停止時及びブームシリンダ1の駆動方法については、第2の実施の形態と同様なので省略する。
まず、第1機器制御装置18が故障して停止したときに、ブームシリンダ1を伸展動作させる場合について説明する。
【0102】
操作装置34aがブームシリンダ1を進展させる方向に操作され、操作装置34bが非操作の場合、上位制御装置33の流路選択部33aは、制御信号線を介して操作装置34a,34bの各操作量を受けとり、例えば予め設定しておいた表に基づいて、第1両傾転ポンプ35のポンプ吐出流量指令値を流路20側に吐出する操作量に応じた値に、第1片傾転ポンプ11のポンプ吐出流量指令値を操作量に応じたある正の値に、第2両傾転ポンプ36と第2片傾転ポンプ12のポンプ吐出流量指令値を0に決定する。また、切換弁37の流路切換回路制御信号を流路20と流路21が流通状態になるように決定し、切換弁41の流路切換回路制御信号を流路42と流通状態になるように決定する。さらに、切換弁38〜40,43の流路切換回路制御信号を全て遮断と決定する。
【0103】
故障判定部33bは、第1/第2機器制御装置18,19の稼働もしくは故障状態を判定する。故障状態の判定方法は、例えば、第1機器制御装置18から通信線を介した稼働状態信号が、故障判定部33bに送られてきている場合は、正常な稼動状態と判定し、一定時間、信号が送られてこない場合、第1機器制御装置18は故障状態と判定し、故障した第1機器制御装置18のIDを故障機器制御装置IDとして設定する。ここでIDは例えば機器制御装置の固有の製造番号等である。
【0104】
信号送信部33cは、通信線を介してレギュレータ35a,36a,11a,12aにポンプ吐出流量指令値を送信し、レギュレータ35a,36a,11a,12aは受信したポンプ吐出流量指令値に基づいて、第1両傾転ポンプ35の吐出流量を流路20側に吐出する様に制御し、第1片傾転ポンプ11の吐出流量をある正の値にして、流路42側に作動油を吐出するよう制御する。また、第2両傾転ポンプ36と第2片傾転ポンプ12の吐出流量を0に制御する。
【0105】
また、信号送信部33cは、故障機器制御装置IDと流路切換回路制御信号を第1/第2機器制御装置18,19と予備機器制御装置47に通信線を介して送信する。第1/第2機器制御装置18,19と予備機器制御装置47の信号受信部18a,19a,47aは、故障機器制御装置IDと流路切換回路制御信号をそれぞれ受信する。
【0106】
予備機器制御装置47の流路選択部47bは、受信した故障機器制御装置IDと流路切換回路制御信号に基づき、駆動制御対象を切換弁37,38,41と選択する。このとき、駆動制御対象への制御信号線の接続は、ソフトウエアによる切換えや、リレー回路を用いた電気回路による切換えでも、いずれの方法でも良い。流路制御部47cは、流路選択部47bが選択した駆動制御対象に基づいて、切換弁37と42を流通状態に、切換弁38を遮断状態に制御する。一方、流路制御部18bは、故障しているため信号を受信できず、切換弁37,38,41に対して制御信号を出力しない。
【0107】
第1両傾転ポンプ35と第1片傾転ポンプ11が作動油を吐出し、かつ、切換弁37,41が流通状態であるため、第1両傾転ポンプ35が吐出した作動油は流路20、切換弁37、流路21を介して、ブームヘッド1a側の油室に流入する。また、第1片傾転ポンプ11が流路42側へ作動油を吐出し、かつ、切換弁41が流通状態であるため、第1両傾転ポンプ11が吐出した作動油は流路42を介して流路20へ合流し、ブームヘッド1a側の油室に流入する。このことにより、ブームシリンダ1は伸展する。ブームシリンダ1が伸展すると、ブームロッド1b側の油室から作動油が流路23、切換弁37、流路22を介して第1両傾転ポンプ35へと流入する。この際、アームシリンダ3は停止している。
【0108】
ところで、第2の実施の形態においては、いずれかの機器制御装置が故障した場合に、正常動作している機器制御装置を用いて、油圧アクチュエータを駆動させるが、ブームシリンダ1とアームシリンダ3の同時駆動操作は、考慮されていなかった。このため、正常動作している油圧ショベルに比べると操作性が低下するという課題があった。
【0109】
本実施の形態では、予備機器制御装置47を設けたので、第1/第2機器制御装置18,19のいずれが故障して停止しても、故障した機器制御装置の代わりに予備機器制御装置47を用いて、該当の流路切換回路を制御することができる。このため、機器制御装置が故障した場合でも、ブームシリンダ1とアームシリンダ3の同時操作が可能になる。したがって、いずれの機器制御装置が故障しても、動作を停止することなく、機器制御装置の故障前の操作性を維持したまま作業を継続できる稼働率の高い油圧ショベルを提供できる。
【0110】
上述した本発明の作業機械の第3の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
また、上述した本発明の作業機械の第3の実施の形態によれば、予備機器制御装置47を設けたので、いずれの機器制御装置が故障しても、動作を停止することなく、機器制御装置の故障前の操作性を維持したまま作業を継続できる稼働率の高い油圧ショベルを提供できる。
【実施例4】
【0112】
以下、本発明の作業機械の第4の実施の形態を図面を用いて説明する。図5は本発明の作業機械の第4の実施の形態を構成する油圧駆動装置を示す概略図である。図5において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0113】
図5に示す本発明の作業機械の第4の実施の形態は、大略第2の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。
本実施の形態においては、表示装置48を備えた点が異なる。表示装置48は通信線を介して上位制御装置33に接続されていて、信号受信部48aと、表示部48bとを備えている。
【0114】
次に、本実施の形態における、機器制御装置が故障した場合の油圧アクチュエータを駆動させる動作について説明する。なお、機器制御装置が故障していない場合の停止時及びブームシリンダ1の駆動方法、及び機器制御装置が故障した場合のブームシリンダ1の駆動方法については、第2の実施の形態と同様なので省略する。
まず、第1機器制御装置18が故障して停止したときに、ブームシリンダ1を伸展動作させる場合について説明する。
【0115】
上位制御装置33の故障判定部33bは、第1/第2機器制御装置18,19の稼働もしくは故障状態を判定する。故障状態の判定方法は、例えば、第1機器制御装置18から通信線を介した稼働状態信号が、故障判定部33bに送られてきている場合は、正常な稼動状態と判定し、一定時間、信号が送られてこない場合、第1機器制御装置18は故障状態と判定し、故障した第1機器制御装置18のIDを故障機器制御装置IDとして設定する。ここでIDは例えば機器制御装置の固有の製造番号等である。
【0116】
上位制御装置33の信号送信部33cは、故障機器制御装置IDと流路切換回路制御信号を第1/第2機器制御装置18,19と表示装置48に通信線を介して送信する。第1/第2機器制御装置18,19と表示装置48の信号受信部18a,19a,48aは、故障機器制御装置IDと流路切換回路制御信号をそれぞれ受信する。
【0117】
表示装置48の表示部48bは、受信した故障機器制御装置IDを画面に表示する。表示部48bは、ディスプレイやLCDなどの表示器であり、故障機器制御装置IDをオペレータが認識できるものであれば良い。
【0118】
ところで、第2の実施の形態においては、いずれかの機器制御装置が故障した場合に、オペレータもしくはメンテナンス実施作業者では、故障した機器制御装置の特定は困難であった。このため、別途、故障機器制御装置の特定作業と、故障機器制御装置の交換作業など、時間のかかるメンテナンス作業が発生するという課題があった。
【0119】
本実施の形態では、表示装置48を設けたので、第1/第2機器制御装置18,19のいずれが故障して停止しても、故障した機器制御装置を特定することが容易となり、故障機器制御装置の交換等のメンテナンスを早急に実施することができる。このため、機器制御装置が故障した場合でも、ブームシリンダ1とアームシリンダ3の同時操作が可能になる。したがって、いずれの機器制御装置が故障しても、早急にメンテナンスを実施し、正常な機器制御装置に交換することで、油圧ショベルの動作をすぐに正常に復帰することができる。このことにより、油圧ショベルの作業量の低下時間を抑制でき稼働率の高い油圧ショベルを提供できる。
【0120】
上述した本発明の作業機械の第4の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0121】
また、以上の実施の形態では、ブームシリンダ1とアームシリンダ3を駆動させる油圧回路を中心に述べているが、この技術思想は旋回油圧モータ7とバケットシリンダ5の閉回路および開回路にも適用可能である。例えば、ブーム,アーム、バケット、旋回を駆動する4つの閉回路と流路切換回路を備えた開閉ポンプ直接制御回路に本発明を適用して、4台の機器制御装置を備えても有効である。
【0122】
なお、本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施の形態では、本発明を油圧ショベルに適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は油圧ショベル以外の建設機械にも適用可能である。例えば、油圧式クレーン等、作業装置で複数の油圧アクチュエータを閉回路によって駆動する油圧装置を備えた作業機械の全般に本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0123】
1:ブームシリンダ、1a:ブームヘッド、1b:ブームロッド、2:ブーム、3:アームシリンダ、3a:アームヘッド、3b:アームロッド、4:アーム、5:バケットシリンダ、6:バケット、7:旋回油圧モータ、9:エンジン、10:動力伝達装置、11:第1片傾転ポンプ、12:第2片傾転ポンプ、11a,12a:レギュレータ、14〜17:切換弁(流路切換回路)、18:第1機器制御装置、19:第2機器制御装置、18a,19a:信号受信部、18b,19b:流路制御部、20〜31:流路、32:タンク、33:上位制御装置、33a:流路選択部、33b:故障判定部、33c:信号送信部、34a,34b:操作装置、35:第1両傾転ポンプ、36:第2両傾転ポンプ、35a,36a:レギュレータ、37〜41,43:切換弁(流路切換回路)、42,44:流路、45:チェック弁、46:フラッシング弁、47:予備機器制御装置、47a:信号受信部、47b:制御切換部、47c:流路制御部、48:表示装置、48a:信号受信部、48b:表示部、100:油圧ショベル、101:キャブ、102:上部旋回体、104:フロント作業機
図1
図2
図3
図4
図5