特許第6581486号(P6581486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581486
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05C 1/04 20060101AFI20190912BHJP
   E05B 15/02 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   E05C1/04 D
   E05B15/02 C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-234340(P2015-234340)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-101430(P2017-101430A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 典継
(72)【発明者】
【氏名】金森 英晃
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 恵未
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−086667(JP,A)
【文献】 特開2003−336469(JP,A)
【文献】 特開2005−127076(JP,A)
【文献】 特開平10−280850(JP,A)
【文献】 米国特許第06135510(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/04−1/06
E05B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠材を組んでなり開口部に設置される枠体と、枠体の左右の縦枠材に対してそれぞれ開閉自在に支持される一方の障子及び他方の障子と、一方の障子の召合框の小口端部から出没自在に設けられるロッド棒を有する開閉規制手段と、を備え、
一方の障子は、召合框の小口を覆うとともにロッド棒が挿通される樹脂製の端部キャップを有し、
端部キャップは、召合框の端部に挿入される外周壁と、ロッド棒が挿通される挿通筒部と、小口面を覆うキャップ部と、挿通筒部の外周面から外周壁に対して放射状に伸びる複数の連結壁部を有し、外周壁は、召合框の内周面と対向する凹壁を有している
ことを特徴とする両開き建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建物開口部に設けられる枠体の左右両縦枠に対して、親障子及び子障子がそれぞれ開閉自在に設けられる両開きの建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物開口部に設けられる両開き建具においては、その少なくとも一方の障子にフランス落等の固定具を設けて閉鎖位置に固定しておき、通常は、他方の障子の開閉によって開口部の開閉を行っていた。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−86667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような両開きの建具においては、例えば風等による外力は一方の障子と他方の障子の両方にかかることになるが、両障子にかかる外力を一方の障子に設けられたフランス落等のロッド棒によって受けることになるため、ロッド棒に荷重が集中してロッド棒が曲がったり、また、ロッド棒にかかる荷重により召合せ框が変形するなどしてロッド棒を框材の内部に収納ができなくなる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑みたものであり、障子の縦框に設けられたフランス落等のロッド棒が風等の外力により曲がったり、ロッド棒を収容している框材が変形することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、枠材を組んでなり開口部に設置される枠体と、枠体の左右の縦枠材に対してそれぞれ開閉自在に支持される一方の障子及び他方の障子と、一方の障子の召合框の小口端部から出没自在に設けられるロッド棒を有する開閉規制手段と、を備え、一方の障子は、召合框の小口を覆うとともにロッド棒が挿通される樹脂製の端部キャップを有し、端部キャップは、召合框の端部に挿入される外周壁と、ロッド棒が挿通される挿通筒部と、小口面を覆うキャップ部と、挿通筒部の外周面から外周壁に対して放射状に伸びる複数の連結壁部を有し、外周壁は、召合框の内周面と対向する凹壁を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、框材の端部において、ロッド棒を確実に案内することができ、かつ、ロッド棒にかかる外力を効率的に框材に伝達して、ロッド棒及び框材の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る両開き窓の外観図である。
図2】本発明の実施形態に係る両開き窓の縦断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る両開き窓の召合せ部の図であり、(a)は召合せ部の平面図、(b)は召合せ部の上端における室外からの拡大正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る両開き窓において使用される端部キャップの図であって、(a)は上方から見た斜視図であり、(b)は下方から見た斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る両開き窓において、一方の障子(子障子)の召合框に端部キャップを装着した状態を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は室内から拡大正面図である。
図6】本発明の実施形態に係る両開き窓において、子障子の召合せ框に端部キャップを装着した状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(建具の全体構成)
本発明の建具を、建物開口部に取り付けられる両開き窓の実施形態を用いて説明する。
本発明の実施形態に係る両開き窓は、図1に示すように、上枠11,下枠12及び左、右縦枠13,14を四周に組んでなり、建物開口部に配置される枠体1に対して、上框21,下框22及び左、右縦框23,24を四周に組んで内周にガラス等パネルを装着してなる一方の障子(子障子)2、及び、上框31,下框32及び左、右縦框33,34を四周に組んで内周にガラス等パネルを装着してなる他方の障子(親障子)3が開閉自在に支持されており、子障子2の右縦框24と親障子3の左縦框33を召合せ框として、両開き窓を形成している。
そして、子障子2の召合せ框である右縦框24には、子障子2の閉鎖状態を維持するロッド棒7を備えた開閉規制手段が設けられており、子障子2の右縦框24の上下端には、ロッド棒7を摺動自在に挿通する端部キャップ5が装着されている。
【0010】
図2に示すように、枠体1を構成する上枠11は、建物開口部に固定され枠体1の内周面を形成する上枠本体部111と、上枠本体部111の室内側下面より垂下される室内側垂下壁部112と、上枠本体部111の室外側下面より垂下される気密材取付壁部113とからなり、室内側垂下壁部112の室外側面下端には気密材s1が取り付けられているとともに、気密材取付壁部113の下端には下方に向けて気密材s2が取り付けられている。
下枠12は、建物開口部に固定され枠体1の内周面を形成するとともに室外側下方に中空の水切り部を有する下枠本体部121と、下枠本体部121の室内側に立ち上がる中空構造の立上壁122とから構成されている。
【0011】
子障子2及び親障子3を構成する上框21,31は、子障子2、親障子3の上方外周面を形成する中空部からなる上框本体部211,311と、上框本体部211,311の外周面の室外側端より上方に延設される上框室外壁部212,312とを有しており、子障子2、親障子3を構成する下框22,32は、子障子2、親障子3の下方外周面を形成する中空部からなる下框本体部221,321と、下框本体部221,321の外周面の室外側端より下方に垂下される下框外壁部222,322とから構成されている。
図3(a)、(b)に示すように、子障子2の召合せ框である右縦框24は、中空略矩形の右縦框本体部241と、右縦框本体部241の室外側内周面より延設される右縦框室外壁部242と、右縦框本体部241の反開放面側である室内側の外周部より親障子3側に向けて延設される召合せ受部243とを有しており、右縦框本体部241の吊元側内周面には、長手方向に沿って補強材6が配置されている。そして、右縦框24の内周面の上端部分に上框21の端面が右縦框室外壁部242に飲み込まれるように突き合わされ、補強材6とともに、右縦框本体部241に対してビス等の固定手段bにより固着されている。補強材6の上方位置には、後述する端部キャップ5の係止片511bが係止される係止孔6aが形成されている。
【0012】
親障子3の召合せ框である左縦框33は、中空略矩形の左縦框本体部331と、左縦框本体部331の室外側内周面より延設される左縦框室外壁部332と、左縦框本体部331の室外側の外周部より子障子2側に向けて突出する召合せ片部333とを有している。左縦框33の内周面の上端部分には上框31の端面が左縦框室外壁部332に飲み込まれるように突き合わされて、ビス等固定手段bにより連結されている
そして、図2に示すように、枠体1の上枠11の室内側垂下壁部112に取り付けた気密材s1を上框21,31の室内側面に当接させるとともに、上枠11の気密材取付壁部113の下端に取り付けた気密材s2を、子障子2、親障子3の上框21,31の上框室外壁部212,312に当接、もしくは近接させることにより、枠体1と子障子2、親障子3との上辺部分における気密を行っている。
【0013】
(小口キャップの構成)
本実施形態の両開き窓の子障子2の召合せ框である右縦框24の上端小口には、ロッド棒7の先端が挿通する端部キャップ5が装着されている。
端部キャップ5は、合成樹脂等からなり、図4(a),(b)に示すようにキャップ本体部51と、キャップ本体部51の開放側(室外側)の側辺の上端より上方に設けられる当接壁部52と、キャップ本体部51の反開放側の側辺の下方位置に設けられる召合せ受部カバー53とから構成されており、全体として矩形ブロック形状をなしている。
【0014】
キャップ本体部51は、右縦框24の上端を覆うキャップ部511と、キャップ部511の下面から下方に向かって延びて右縦框24の小口に挿入される挿入部512と、キャップ部511の下面の挿入部512の戸先側位置から垂下される板状の挟持壁部513とから構成されている。
キャップ部511は、右縦框24の上端小口面と略同様の形状をなし、端部キャップ5の装着時には、右縦框24を構成する形材の端面を覆い、キャップ部511の内方部の適宜位置には開口部511aが形成されており、右縦框24の内部を外気と連通させるとともに、右縦框24内に侵入した水等の排水を可能にしている。
また、キャップ部511の吊元側下面には、端部キャップ5を右縦框24に取り付けるための係止片511bが垂下されており、係止片511bの下端には吊元側に突出する爪部が形成されている。
【0015】
小口に挿入される挿入部512は、キャップ部511の形状よりも一回り小さい断面形状を有する外周壁(見込み壁512a,見付け壁512b,512c,凹壁512d)と、挿入部512を上下方向に貫通するように形成され、図示しないフランス落しなどのロッド棒7が上下動自在に貫通する挿通筒部512eと、挿通筒部512eの外周面から外周壁の内周面に向かって伸びる複数の連結壁部512gとから構成されている。
外周壁は、右縦框24の内周面の形状に対応した戸先側の見込み壁512a及び室内外側の見付け壁512b,512cと、右縦框24の吊元側内周面と対向する凹部を形成する凹壁512dとにより構成されており、キャップ部511に設けられた係止片511bは凹壁512dにより形成された凹部内に配置されるよう構成されている。
挿通筒部512eは挿入部512の見込み方向中央位置で戸先側寄りに形成されており、ロッド棒7の頭部7aが上下方向に貫通する断面略四角形状の貫通路を形成している。挿通筒部512eはキャップ部511を貫通して上方に延び、キャップ部511の上面に突出する上方筒状部512fを形成している。
連結壁部512gは、挿通筒部512eの室内外の見付け壁512b,512cの複数箇所から見込み方向に向かって放射状に延びており、見込み方向にかかる外力に対する強度を向上させている。
本実施形態においては、最も戸先側の連結壁部gにより見込み壁512aの一部が形成されており、最も吊元側で傾斜状に延びる連結壁部gにより凹壁512dの一部が形成されている。
【0016】
挟持壁部513は、外周壁の戸先側の見込み壁512aと対向するように板状に垂下されており、戸先側の見込み壁512aと挟持壁部513との間隔は右縦框24を構成する形材が挟持できるように形材の厚みと略同程度になっている。
当接壁部52は、キャップ部511の室外側の側辺から上方に向かって設けられており、その吊元側はキャップ部511の吊元側端部より延設され、延設された当接壁部52の吊元側部分(吊元側当接壁部)52aは見込み方向に薄肉に形成されている。
そして、端部キャップ5を右縦框24の上端に装着したときに、当接壁部52の上端が親障子3の上框31の室外壁部312の上端部と略同一高さとなるように当接壁部52の高さ寸法が設定されている。
召合せ受部カバー53は、キャップ本体部51の室内側で戸先側に連続して形成されており、キャップ本体部51の室内側面に連続する壁面部53aと、壁面部53aの下端に形成されて召合せ受部243の上端を覆うカバー部53bとにより構成されている。
【0017】
(端部キャップの取付け)
図5(a)、(b)に示すように、子障子2の右縦框24の端部小口に対して、端部キャップ5の挿入部512を挿入し、挿入部512の戸先側の見込み壁512aと挟持壁部513とで右縦框24の戸先側の一辺24aを挟持するとともに、端部キャップ5の吊元側下面に垂設された係止片511bを右縦框24に固着された補強材6の係止孔6aに係止することで、右縦框24の小口に端部キャップ5を簡単に装着することができ、右縦框24を形成する形材の端面を覆うことによって、掃除やメンテナンスの際に形材の切りっぱなし状態の端面(小口)等に手や指等が触れるなどしておこる怪我を防ぐことができる。
端部キャップ5の取付けに際しては、端部キャップ5の挿入部512を構成する吊元側の外周壁が凹壁512dにより形成され、右縦框24の内周との間に凹部が形成されているので、係止片511bと補強材6の係止孔6aによる係止手段を形成することができるとともに、右縦框24と上框21とのネジ止め等による固定部分によって端部キャップ5の挿入が阻害されることがない。
【0018】
(端部キャップによるロッド棒及び召合框の支持)
図6に、右縦框24の上端部に端部キャップ5を装着してロッド棒をガイドしている状態の縦断面図を示している。
右縦框24の上方端部に装着された端部キャップ5には、ロッド棒7の頭部7aが上下動自在に案内されており、図示しない操作部を操作することによって端部キャップ5の上端から突出して上枠11に設けられたロッド受け8に係合する閉鎖位置と、端部キャップ5及び右縦框24内に収納される解除位置とに切り換える開閉規制手段を構成している。ロッド棒7の頭部7aの断面形状は挿通筒部512eの貫通路の断面形状と略同じ断面略四角形状であり、ロッド棒7が端部キャップ5の挿通筒部512e内で回転することなく、スムーズな上下動を可能にしている。
そして、本実施形態の建具に用いられる端部キャップ5は、挿通筒部512eがキャップ本体部51を貫いて上方に延びて上方筒状部512fを形成しているので、ロッド棒7の頭部7aをロッド受け8に到るまでの広い範囲に亘って案内することができる。
【0019】
(本実施形態に用いられる端部キャップの作用・効果)
本実施形態の端部キャップ5は、ロッド棒7の頭部7aを案内する挿通筒部512eが、挿入部512の見込み方向中央位置で戸先側寄りに形成され、挿通筒部512eの見付け面と外周壁とが見込み方向に向かって放射状に延びる連結壁部512gで連結されているので、見込み方向の外力に対して効率的に対抗できる。また、反対に、右縦框24にかかる外力に対しても複数の連結壁部512gによって抵抗することができ、右縦框24の変形を防止することができるとともに、挿通筒部512eへの影響を抑制することができる。
さらに、外周壁の吊元側の外周壁が凹壁512dにより構成され、右縦框24の内周面との間に凹部を形成しているので、右縦框24の見付け寸法を大きくすることなく、右縦框24と上框21との接続部や右縦框に対する端部キャップ5の接続部を収めることができる。
【0020】
以上のように、召合せ框の端部に装着され、フランス落し等のロッド棒を上下動自在に案内する端部キャップが、召合せ框の内周面に当接する外周壁と、ロッド棒をガイドする挿通筒部と、挿通筒部の室内側見付け壁から外周壁に対して見込み方向に向かって放射状に延びる連結壁部によって連結して一体化して形成しているので、風等により建具にかかる室内外方の外力に対して有効に抵抗することができる。
そして、挿通筒部の吊元側から傾斜して延びる連結壁部によって端部キャップ5の吊元側の凹壁を形成しており、端部キャップの見付け方向全域に亘って連結壁部を形成しているので、見込み方向の強度を低下させることなく、右縦框の内周との間に固定手段等を収納する凹部を形成することができ、また、右縦框の見付け幅を大きくする必要もない。
【0021】
なお、上記の説明においては、主に、召合せ框の上端部に装着される端部キャップについて詳細に説明したが、本実施形態の建具においては、召合せ框の下端部にも同様の端部キャップを装着してロッド棒をガイドすることもできる。
【符号の説明】
【0022】
1 :枠体
2 :子障子
21 :上框
211 :上框本体部
212 :上框室外壁部
22 :下框
23 :右縦框
24 :右縦框
241 :右縦框本体部
242 :右縦框室外壁部
243 :召合せ受部
3 :親障子
31 :上框
32 :下框
33 :左縦框
34 :右縦框
5 :端部キャップ
51 :キャップ本体部
511 :キャップ部
511a :開口部
511b :係止片
512 :挿入部
512a :見込み壁
512b :見付け壁
512c :見付け壁
512d :凹壁
512e :挿通筒部
512f :上方筒状部
512g :連結壁部
513 :挟持壁部
52 :当接壁部
53 :召合せ受部カバー
6 :補強材
6a :係止孔
7 :ロッド棒
7a :頭部
8 :ロッド受け
図1
図2
図3
図4
図5
図6