特許第6581503号(P6581503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581503
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】穿刺装置用のプッシュ型装填機構
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/151 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   A61B5/151 200
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-532070(P2015-532070)
(86)(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公表番号】特表2015-531660(P2015-531660A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】US2013059638
(87)【国際公開番号】WO2014043457
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年8月30日
(31)【優先権主張番号】61/700,634
(32)【優先日】2012年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506413133
【氏名又は名称】ファセット テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Facet Technologies, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】カン,ギル
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/091401(WO,A1)
【文献】 特表2005−511191(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009055874(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010004370(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/15−5/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺ストローク動作によってランセットを推進させる穿刺装置であって、前記穿刺装置は:
軸方向穴を含むハウジングと;
ランセットキャリア及び駆動バネを含む駆動機構であって、前記ランセットキャリアは、前記ランセットを保持し、且つ前記穿刺ストローク動作によって前記ハウジング内で軸方向に平行移動可能であり、及び前記駆動バネは、前記穿刺ストローク動作によって前記ランセットキャリアを推進させるように適合されている、駆動機構と;
前記ランセットキャリアを装填位置に後退させるように適合され、且つ装填ボタン、運動変換部材、及び第1のカム係合面を含む装填機構であって、前記装填ボタンは第2のカム係合面を含み、前記第1のカム係合面は、前記駆動機構の一部分によって形成され、及び前記運動変換部材は、前記第1のカム係合面及び前記第2のカム係合面によってそれぞれ係合される第1及び第2のカム面を含み、及び第1の軸方向における前記装填ボタンの運動を、前記第1の軸方向とほぼ反対の第2の軸方向における前記ランセットキャリアの運動に変換し、前記ランセットキャリアを前記装填位置まで後退させるように構成されている、装填機構と
を含む穿刺装置。
【請求項2】
前記運動変換部材が、前記第1の軸方向における前記装填ボタンの運動に応答して、前記第1及び第2の軸方向に対しほぼ横断する方向の第1の横断方向において動く、請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項3】
前記第1の軸方向における前記装填ボタンの作動によって現在軸方向に動いている前記第2のカム係合面を前記第2のカム面と相互作用させ、前記運動変換部材を前記第1の横断方向に動かし、及び現在横断するように動いている前記第1のカム面を前記第1のカム係合面と相互作用させることによって、前記第2の軸方向に前記ランセットキャリアを動かし、前記ランセットキャリアを前記装填位置に後退させる、請求項2に記載の穿刺装置。
【請求項4】
前記第1のカム係合面を形成する前記駆動機構の前記部分が前記ランセットキャリアである、請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項5】
前記装填ボタン、及び前記第1のカム係合面を形成する前記駆動機構の前記部分が、横方向に拘束されて、前記ハウジングに対して軸方向に平行移動するように装着される、請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項6】
前記装填ボタンが、押し出し位置と押し下げられた位置との間で可動であり、及び前記押し出し位置の方へバネ付勢される、請求項5に記載の穿刺装置。
【請求項7】
前記運動変換部材が、前記押し下げられた位置から前記押し出し位置へ動く前記装填ボタンに応答して、前記第1及び第2の軸方向に対しほぼ横断する方向の第1の横断方向とほぼ反対の第2の横断方向に動く、請求項6に記載の穿刺装置。
【請求項8】
前記運動変換部材が軸方向に拘束されて、前記ハウジングに対して横断方向に平行移動するように装着される、請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項9】
前記第1及び第2のカム面が、前記運動変換部材のスロットによって形成され、前記第1のカム係合面が、前記駆動機構の前記部分にある隆起部によって形成され、及び第2のカム係合面が、前記装填ボタンにある隆起部によって形成される、請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項10】
前記運動変換部材が、第1の側面、及び前記第1の側面に対向する第2の側面を含み、前記それぞれの第1及び第2の側面に前記第1及び第2のカムスロットが形成されている、請求項9に記載の穿刺装置。
【請求項11】
前記第1及び第2のカム面が、構成は実質的に同様であるが、ほぼ鏡像式に互いに対向して配置されている、請求項1に記載の穿刺装置。
【請求項12】
前記第1及び第2のカム面が、穿刺ストローク軸に対して互いに約180度ずれて配置されている、請求項11に記載の穿刺装置。
【請求項13】
前記第1のカム面が、穿刺ストローク軸から第1の角度にあり、前記第2のカム面が、穿刺ストローク軸から第2の角度にあり、及び前記第1及び第2の角度は、ほぼ同じ絶対値を有するが、互いに負である、請求項11に記載の穿刺装置。
【請求項14】
前記第1及び第2のカム面がほぼ直線であり、十字パターンを形成する、請求項11に記載の穿刺装置。
【請求項15】
穿刺ストローク動作によってランセットを推進させる穿刺装置の為の装填機構であって、前記穿刺装置は、軸方向穴を含むハウジングと、前記穿刺ストローク動作によって前記ハウジング内で軸方向に平行移動するランセットキャリアであって、前記ランセットが結合されているランセットキャリアと、前記穿刺ストローク動作によって前記ランセットキャリアを推進させる駆動バネとを含み、前記装填機構は:
横方向に拘束されて前記ハウジングに対して軸方向に平行移動するように装着されていて、及び第2のカム係合面を含む、装填ボタンと;
前記ランセットによって形成される第1のカム係合面であって、横方向に拘束されて、前記ハウジングに対して軸方向に平行移動するように装着された第1のカム係合面と;
軸方向に拘束されて、前記ハウジングに対して横断方向に平行移動するように装着された運動変換部材であって、前記運動変換部材は、前記第1のカム係合面及び前記第2のカム係合面によってそれぞれ係合された第1及び第2のカム面を含み、及び第1の軸方向に押す方向の前記装填ボタンの運動を、前記第1の軸方向に押す方向とほぼ反対の第2の軸方向に引く方向の前記ランセットキャリアの運動に変換し、前記ランセットキャリアを装填位置まで後退させるように構成され、前記運動変換部材は、前記第1の軸方向に押す方向における前記装填ボタンの運動に応答して、前記第1及び第2の軸方向に対しほぼ横断する方向の第1の横断方向に動き、及び前記第1及び第2のカム面は、構成が実質的に同様であるが、ほぼ鏡像式に互いに対向して配置されている、運動変換部材と
を含み、
前記第1の軸方向に押す方向に前記装填ボタンを押して作動させることによって、前記装填ボタン現在軸方向に動いている前記第2のカム係合面を、前記装填ボタンの前記第2のカム面と相互作用させ、前記運動変換部材を前記第1の横断方向に動かし、及び前記装填ボタン現在横断するように動いている前記第1のカム面を前記ランセットキャリアの前記第1のカム係合面と相互作用させることによって、前記第2の軸方向に引く方向における前記ランセットキャリアの運動を生じ、前記ランセットキャリアを前記装填位置まで後退させる、装填機構。
【請求項16】
前記装填ボタンが、押し出し位置と押し下げられた位置との間で可動であり、及び前記押し出し位置の方へバネ付勢される、請求項15に記載の装填機構。
【請求項17】
前記運動変換部材が、前記押し下げられた位置から前記押し出し位置へ動く前記装填ボタンに応答して、前記第1の横断方向とほぼ反対の第2の横断方向に動く、請求項16に記載の装填機構。
【請求項18】
前記第1及び第2のカム面が、前記運動変換部材のスロットによって形成され、前記第1のカム係合面が、前記ランセットキャリアにある隆起部によって形成され、及び第2のカム係合面が、前記装填ボタンにある隆起部によって形成され、及び前記運動変換部材は、第1の側面と、前記第1の側面に対向する第2の側面とを含み、前記第1及び第2のカムスロットは、前記それぞれの第1及び第2の側面に形成されている、請求項15に記載の装填機構。
【請求項19】
前記第1及び第2のカム面が、ほぼ直線であり、十字パターンを形成し、前記第1及び第2のカム面は、穿刺ストローク軸に対して互いに約180度ずれて配置され、及び前記第1のカム面は、前記穿刺ストローク軸から第1の角度にあり、前記第2のカム面は、前記穿刺ストローク軸から第2の角度にあり、及び前記第1及び第2の角度は、ほぼ同じ絶対値を有するが、互いに負である、請求項15に記載の装填機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年9月13日出願の米国仮特許出願第61/700,634号明細書の優先権の利益を主張し、その全体をあらゆる目的において参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、概して医療機器の分野に関し、より詳細には、血液を採取及び検査する為の、革新的な装填機構を有する穿刺(lancing)装置に関する。
【背景技術】
【0003】
血液型の判定や血糖検査におけるような医療検査用に血液や他の体液の試料を得る為、穿刺部位においてヒト又は動物である対象の皮膚に貫入する為の穿刺装置が使用される。公知の穿刺装置は、一般に、駆動機構を含むハウジングと、駆動機構のバネ又は他の駆動手段を付勢する装填機構と、作動すると駆動機構を解除する解除機構とを含む。(特許文献1)((特許文献2))及び(特許文献3)((特許文献4))(これらを参照により本明細書に援用する)は、例示的な穿刺装置を示す。
【0004】
ランセットは、一般に、ハウジング内の後退位置から押し出し(extended)位置まで駆動機構によって推進され、その押し出し位置において、ランセットの鋭い先端部分がハウジングから突出して、所望の穿刺部位において対象の皮膚に突き刺す。多くの公知の穿刺装置は、駆動機構を後退位置まで引くことによって装填又は付勢される駆動機構を使用する。このため、使用者は、穿刺装置の本体から離れるように装填機構を引くことによって装填手順を行う必要がある。穿刺装置の本体から離れるように装填機構を引くことによる駆動機構の装填は、手先の器用さが劣った使用者に課題となることがあり、及び対象者又は使用者は、両手を使用して、装置本体を保持し、且つ装置が装填されて作動準備が整うまでハンドルを引く必要があり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第13/005,181号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0196261号明細書
【特許文献3】米国特許出願第12/641,674号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/0160942号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、穿刺装置を装填する為のシステム及び方法の改良が求められていることが分かる。本発明は、主に、改良型の穿刺装置並びにその動作及び使用方法の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例示的な実施形態では、本発明は、改良型の装填機構を有する穿刺装置に関する。装填機構は、使用者が外部から押す動作を、内部の引く動作に変換し、それにより、穿刺ストローク動作で用いるランセットを後退させ、且つ装填するように動作する。
【0008】
一実施形態では、装填機構は、2つのカム面を備えるカム駆動型運動変換部材によってランセットキャリアを後退させ、且つ装填する。装填機構は、軸方向にのみ動くように拘束されたアクチュエータ部材及び反転装填部材と、それらの間に可動式に装着され、且つ横断方向にのみ動くように拘束された変換部材とを含む。軸方向に押す方向にアクチュエータ部材を押して作動することによって、カム面の一方が変換部材の横断運動を生じ、これによって同様に、カム面の他方が反転装填部材を軸方向に押す方向において後退させ、それにより、それに結合されたランセットキャリアを装填位置まで後退させる。
【0009】
別の実施形態では、装填機構は、同じ押して引く機能性をもたらすラックアンドピニオン式のギヤ機構によってランセットキャリアを後退させ、且つ装填する。この実施形態では、装填機構は、1つのピニオンギヤに係合する2つのラックギヤを含む。軸方向に押す方向にアクチュエータ部材を押して作動することによって、ラックギヤの一方がピニオンギヤを回転させ、それにより同様に、ラックギヤ面の他方が反転装填部材を軸方向に押す方向において後退させ、それにより、それに結合されたランセットキャリアを装填位置まで後退させる。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、ランセットを保持するランセットキャリアを備える駆動機構を有する穿刺装置に含める為の装填機構に関する。装填機構は、ランセットキャリアを装填位置に後退させて装填し、そこで、装填位置に確実に保持する為に駆動機構と相互作用する。装填機構は、本明細書で説明するように、カム駆動型又はラックアンドピニオン型とし得るか、又は使用者が外部から押す動作を、内部の引く動作に変換し、穿刺ストローク動作で用いるランセットを後退させ、且つ装填する、別のタイプとし得る。
【0011】
また、別の実施形態では、本発明は、穿刺装置の装填方法に関する。方法は、穿刺装置の一部分に装填機構を摺動式に装着することと、装填機構の一部分に変換部材を可動式に装着することと、ランセットキャリアの一部分を変換部材に可動式に装着することと、装填機構を穿刺装置に押し付けることと、装填機構の運動方向に対して横断する方向に変換部材を強制的に動かすことと、ランセットキャリアを装填機構の運動方向とほぼ反対方向に動かして、穿刺装置を装填することとを含む。
【0012】
本発明のこれらの及び他の態様、特徴、及び利点は、本明細書の図面及び詳細な説明を参照して理解され、及び添付の特許請求の範囲で特に指摘した様々な要素及び組み合わせによって実現され得る。上記の概要並びに以下の図面の簡単な説明及び本発明の詳細な説明は双方とも、本発明の好ましい実施形態の例示及び説明であり、必ずしも特許請求の範囲で述べたように本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の例示的な実施形態による穿刺装置の斜視的な前面図である。
図2図1の穿刺装置の斜視的な後面図である。
図3】内部構成要素を示す為に、図1の穿刺装置を、そのハウジングの複数の部分が除去された状態で示す。
図4】装填機構を示す、図3の穿刺装置の部分的な分解図である。
図5図4の装填機構の別の分解図である。
図6図5の装填機構の斜視的な底面分解図である。
図7図5の装填機構の運動変換部材の上面図である。
図8図1の穿刺装置の分解図である。
図9A】乃至
図9D図1の穿刺装置の上面図であり、そのハウジングの複数の部分が除去された状態で、穿刺ストローク動作の中立位置、装填位置、準備位置、及び完全な押し出し位置の間の装填機構の順次的な動作運動を示す。
図10】本発明の第2の例示的な実施形態による穿刺装置の斜視的な前面図であり、その内部構成要素を示す為に、その外部ハウジングの複数の部分が取り除かれている。
図11図10の穿刺装置の分解図である。
図12A】乃至
図12D図10の穿刺装置の上面図であり、そのハウジングの複数の部分が除去された状態で、穿刺ストローク動作の中立位置、装填位置、準備位置、及び完全な押し出し位置の間の装填機構の順次的な動作運動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、本開示の一部をなす添付図面と併せて以下の本発明の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解され得る。本発明は、本明細書に説明及び/又は図示する具体的な装置、方法、条件又はパラメータに限定されるものではないこと、及び本明細書で使用される専門用語は、例示として特定の実施形態を説明する為のものに過ぎず、且つ特許請求する発明を不必要に限定するものではないことを理解されたい。本明細書で特定される一切の特許及び他の刊行物は、本明細書で十分に説明されるかのように、参照により援用される。
【0015】
また、添付の特許請求の範囲を含め、本明細書では、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、単数形「a」、「an」及び「the」は複数形を含み、及び特定の数値の言及は、少なくともその特定の値を含む。本明細書では、範囲は、「約」若しくは「およそ」ある特定の値から及び/又は「約」若しくは「およそ」別の特定の値までと表現され得る。そのような範囲で表現されるとき、別の実施形態は、ある特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用することによって値が近似値として表現されるとき、特定の値が別の実施形態を形成することを理解されたい。
【0016】
ここで図面を参照すると、同様の参照符号は、幾つかの図面を通して、対応する部分を表し、図1〜9Dは、本発明の第1の例示的な実施形態による穿刺装置10を示す。穿刺装置10は、装填機構、アクチュエータ機構、駆動機構、及びこれらの構成要素の為のハウジング20を含む。駆動機構は、ランセット89を運ぶランセットキャリア80を含む。装填機構は、駆動機構を装填するように動作可能であり、及びアクチュエータ機構は、装填駆動機構によって駆動されるランセットキャリアを解除し、穿刺ストローク動作によってランセットキャリア(それゆえランセット)を推進させるように動作可能である。
【0017】
本明細書に図示及び説明するハウジング20、ランセットキャリア80、アクチュエータ機構、及び駆動機構の詳細は代表的なものであり、本発明を限定するものではない。それゆえ、他の従来のハウジング、ランセットキャリア、アクチュエータ機構、及び/又は駆動機構は、装填機構によってもたらされる押して引く機能性を可能にし、且つそれに干渉しない協働する特徴を含むように修正される限り、良好な結果で使用できる。
【0018】
主に図1〜3を参照すると、図示の実施形態では、ハウジング20は細長く、それにより縦軸を規定する。ハウジング20は、上部及び下部ハウジングシェル22a、22b、及びランセット用開口部を規定する前端部又は近位端部24を含み、ランセット用開口部を通って、ランセットの少なくとも鋭い先端部分が穿刺ストロークの押し出し位置において突出して、対象の皮膚に貫入する。ハウジング20はランセットキャリア80を保持し、ランセットキャリアはハウジングに可動式に装着されて、穿刺ストローク分動く。一形態では、ハウジング20は、その前端部又は近位端部24とその後端部又は遠位端部26との間の軸方向に縦寸法を有し、この縦寸法は、横断寸法におけるその左右の幅よりも大きく、この幅は、同様に、最上部から最下部までのその厚さとほぼ等しいか又はそれよりも大きい。ハウジングは、実質的に剛性であり且つ耐久性のある材料、例えばプラスチックや複合体から構成できる。他の例示的な実施形態では、ハウジングは、他の形状及び形態を有し得る(例えば、ディスク形状、シェル部片が1つのみ又は3つ以上など)。
【0019】
主に図1〜2及び図8を参照すると、穿刺装置10は、任意選択的に取り外し可能なエンドキャップ40及び/又はランセット排出機構50を含む。エンドキャップ40を取り外すことにより、例えば排出機構50を作動させることによって、使用後にランセット89を除去及び交換する為にアクセスできるようにする。更に任意選択的に、エンドキャップ40は、そこを通って突出するランセットの先端部の貫入の深さを調整でき、エンドキャップの一部分は、エンドキャップ又はハウジングの別の部分に対して動く(例えば、回転する)ことができ、ランセットの先端部の貫入の深さが調整可能であるようにする。例示的な形態では、排出機構50は、ハウジング20の側面に沿って細長い開口部内に可動式に装着し、且つハウジング内に延在して、使用後にランセット89を選択的に係合及び排出する。例えば、排出機構50は細長いフィンガー52を含むことができ、このフィンガーは、そこから全体的に横断する方向に突出する歯54と一緒に延在する。歯54は、内側駆動コア70の規定されたチャンネル内及びカラー82のチャンネル内に留まる。排出機構50が作動されて、歯54をカラー82内のランセット89に押し付け、それにより、ランセットをそこから排出させる。他の実施形態では、従来のエンドキャップ及び/又は排出機構が穿刺装置に組み込まれ得る。
【0020】
主に図3〜6及び図8を参照して、以下、駆動機構の詳細を説明する。図示の実施形態では、駆動機構は、1つ以上の相互係合面特徴25、74によってハウジング20内の定位置に係合される内側駆動コア70を含む。例えば、図4に詳細に示すように、相互係合特徴は、ハウジング20内に形成された保持チャンネル25、及び内側駆動コア70から延出し、且つチャンネル内に保持されて駆動コアをハウジングに対して定位置に保持する1つ以上のタブ74を含み得る。内側駆動コア70は、ハウジング20に組み立てられた別個の部分によって提供され得るか、又はその特徴はハウジングに組み込まれて、従って、それとの一体部分を形成し得る。他の実施形態では、雄型/雌型相互係合特徴は逆にされ/切り替えられ、及び/又は内側駆動コアは、タブ及びスロット、ピン及び孔、又は他の従来の固定構造などの他の相互係合特徴によって、ハウジング内の定位置に係合される。
【0021】
駆動機構は、ランセット89を運ぶランセットキャリア80を更に含む。ランセットキャリア80は、内側駆動コア70を通って又はそれに沿って縦方向に延在する軸方向穴又はチャンネル内を平行移動式に摺動する。図示の実施形態では、ランセットキャリア80は、その近位/前端部にカラー又はスリーブ82を有してランセット89を解除式に係合し、且つそれにほぼ対向する遠位/後端部は、弾性的に曲がるフィンガー83を含み、スプリングリテーナ86との係合をもたらす(図5〜6参照)。代替的な実施形態では、ランセットキャリアは、従来のタイプのものである。例えば、一部の実施形態では、ランセット及びキャリアは、交換式(多数回使用の実施形態において)及び/又は非交換式(使い捨ての実施形態において)である単一部分である。及び他の実施形態では、ランセットキャリアは、カートリッジ内の一連のランセットを連続して係合する。
【0022】
更に、駆動機構は、穿刺ストロークの前進部分によってランセットキャリア80を前方に推進させる駆動バネ92と、穿刺ストロークの戻し部分によってランセットキャリアを後方に後退させる戻しバネ94とを更に含む。例示的な実施形態では、駆動バネ92及び戻しバネ94は、外側に突出するウィング84を規定するランセットキャリアの内側部分と、ランセットキャリアの弾性的に曲がるフィンガー83に結合されたスプリングリテーナ86との間で、ランセットキャリア80上に保持される(図8参照)。例えば、駆動バネ92は、ウィング84の遠位端部と内側駆動コア70の遠位壁(図示せず)との間に保持でき、及び戻しバネ94は、反転動作装填部材102の横断アーム103(図4参照)とスプリングリテーナ86との間に係合され得る。他の実施形態では、単一のバネが設けられ、このバネは、ランセットを駆動して後退させ、且つ従来のバネ抑制構造によって適所に装着される。
【0023】
ランセットキャリア80は、反転装填部材102に装着され、且つそれと一緒に軸方向に移動する。反転装填部材102は、例えば、図示のL字形状のリンク、又はランセットキャリアを装填機構に動作可能に接続する別のリンクによって設けられ得る。図示の実施形態では、ランセットキャリア80の細長い遠位部分は、反転装填部材102(図5〜6参照)の横断アーム103の穴104(図8参照)を通って延在し、ランセットキャリアの細長い遠位部分の弾性的に曲がるフィンガー83は、ランセットキャリア上に反転装填部材を保持する。下記でより詳細に説明するように、反転装填部材102の一部分は係合する為、装填ボタン60が作動されるとランセットキャリア80を後退させる装填機構の一部分を形成する。反転装填部材102は、ランセットキャリア80に組み立てられた別個の部品によって設けられ得るか(図示の通り)、又はその特徴はランセットキャリアに組み込まれ、それとの一体部分を形成し得る。それゆえ、本明細書で使用されるように、反転装填部材は、ランセットキャリアの一部として含まれるとみなされる為、ランセットキャリアとの装填機構の相互作用は、反転装填部材との相互作用を広く含む。
【0024】
主に図6及び図8を参照すると、アクチュエータ機構は、穿刺装置10を作動させて、穿刺ストローク動作によってランセットキャリア80上のランセット89をハウジング20内の後退/装填位置から押し出し/穿刺位置(図9Dに示す)まで推進させ、ランセットの少なくとも鋭い先端部分90がハウジングの近位/前端部においてランセット用開口部の外側に突出するように、動作可能である。アクチュエータ機構は、装填位置にあるランセットキャリア80を解除するように使用者によって作動される解除アクチュエータ30を含む為、装填駆動機構によって駆動されて、穿刺ストローク動作によってランセットキャリアを推進させ得る。
【0025】
解除アクチュエータ30は、一般に、ハウジング20の遠位/後方開口部を通って突出するバネ付勢式の押しボタンの形態であり、駆動機構の一部分を解除式に係合する(図6図8参照)。解除ボタン30は、ランセットキャリア80に直接係合するか(図示の通り)、又は駆動機構の別の部分を介して間接的に係合する。解除ボタン30は、押し下げられないときには駆動機構を装填位置に保持し、及び押し下げられると駆動機構を解除する。図示の実施形態では、解除ボタン30は、ほぼリング形状であり、且つそれを貫通する第1の軸方向穴32を規定し、その内部にランセットキャリア80を受け入れる。解除ボタン30の一部分には第2の横方向穴34が形成され(ハウジングシェル22aを通って突出する作動部分にほぼ対向する)、ランセットキャリア80の底部側から突出する突起85に係合する(図6参照)。そのようなものとして、ランセットキャリア80が後退することによって、第2の横方向穴34が突起85を係合し、且つ保持するようにし、それゆえ、ランセットキャリア80を装填位置に保持する。その上又はその代わりに、解除ボタン30の一部分は、内側駆動コア70に対して付勢する為に1つ以上の弾性フィンガー36を含むことができる為、それに取り付けられたランセットキャリア80は、解除ボタン30が作動されるときに後退及び解除されると、装填状態に保持される。
【0026】
他の実施形態では、別の従来のアクチュエータ機構を含むことができる。例えば、一部の実施形態では、解除アクチュエータは、リング形状の押しボタン以外の構造の形態、例えば、L字形状のバネ付勢式の摺動部材又はバネ付勢式の押しボタンである。及び他の実施形態では、ランセットキャリア(又は駆動機構の別の部分)及びアクチュエータ機構は、ランセットキャリア上の雌型要素及び解除アクチュエータ上の協働する雄型要素など、ランセットキャリアを装填位置に解除式に保持するように協働する他の保持要素を含む。他の実施形態では、解除アクチュエータは、引く運動、摺動運動、又はねじる運動によるなど、別の方法で駆動機構を解除/作動するように構成される。更に他の実施形態では、アクチュエータ機構は、装填機構において修正され、且つそれに修正した状態で含まれ、装填ボタンの押し下げ(下記で説明する)を解除することによって、ランセットキャリアの装填を解除し、それにより、穿刺ストローク動作を開始するようにする。
【0027】
主に図4〜8を参照すると、装填機構は駆動機構と協働して、ランセットキャリア80を装填位置に後退させる。装填機構は、使用者作動装填ボタン60、反転装填部材102の一部分、及びそれらを動作可能に連結する押し引き運動変換部材110を含む。装填ボタン60及び反転装填部材102は、ランセットキャリア80の穿刺ストロークの軸にほぼ平行な(これを含む)軸に沿って移動するように拘束される。例えば、ハウジング20は、装填ボタン60及び反転装填部材102を横断方向に拘束するがそれらの軸方向の平行移動を可能にする案内特徴を含み得る。そのような特徴は、タブ又はピンを摺動式に受け入れる長手方向チャンネル、並びに当技術分野で周知の他の従来の軸方向平行移動案内特徴を含む。装填ボタン60の使用者による作動部分は、穿刺ストロークの軸と一致し得るか(図示の通り)、又はそれから横方向にオフセットしている(例えば、横断方向に延在するアーム)。変換部材110は、横方向/横断方向にのみ動くように拘束される(即ち、ランセットキャリア80の穿刺ストロークにほぼ垂直な軸に沿って)。例えば、ハウジング20は案内特徴を含み、変換部材110を軸方向に拘束し得るが、その横方向/横断方向の動きは可能にし得る。そのような特徴は、ハウジングの2つの横断壁であって、それら横断壁は離間して、それらの間に変換部材を受け入れる為、変換部材は軸方向には摺動できないが横断方向に摺動できる横断壁と、当技術分野で周知の他の従来の横断案内特徴とを含む。
【0028】
装填ボタン60は、遠位/後方の準備位置に付勢され、及び使用者によって装填位置まで近位/前方向に押し下げることができる(付勢力に抗して)。図示の実施形態では、例えば、装填機構は、その係合突出部64によって装填ボタン60に保持される装填ボタンバネ96を含む(図6参照)。好ましくは、突出部64は、バネ96の一部分を保持するようなサイズにされる為、バネは、そこから延出し、且つ下部ハウジングシェル22bの停止突出部27と係合する(図4参照)。装填手順を通じて、装填ボタン60はバネ96によって遠位に後方/外側へと(即ち、下記で説明する第1の軸方向に押す方向D1にほぼ対向する方向に)付勢される。装填ボタン60が、遠位に押し出された準備位置から、押し下げられた装填位置まで押し下げられて、駆動機構の駆動バネ92を装填する為に、装填ボタンバネ96が装填される。装填ボタン60の停止要素、例えばフランジ又はリム部分61は、ハウジング20の一部分に接触して装填ボタンをハウジング上に保持し、且つ遠位に押し出された準備位置を規定する。そのようなものとして、ランセットキャリア80を装填状態に配置する装填手順の実施後、装填された状態のバネ96が、装填ボタン60を準備位置に戻し、そこで、フランジ61はハウジング20の一部分に接触してそこに装填ボタンを保持する(図2参照)。他の実施形態では、装填ボタンに対する付勢効果は、同じ又は他の従来の保持構造によって装填ボタンに対して適所に保持された板バネ、トーションバネ、又は他の弾性要素によって提供される。
【0029】
変換部材110は装填ボタン60及び反転装填部材102に可動式に装着され、使用者が装填ボタンを外部から押す動作を、反転装填部材(それゆえランセットキャリア80)での内部の引く動作に変換する。変換部材110は第1及び第2のカム面を含み、これらカム面は、反転装填部材102及び装填ボタン60の第1及び第2のカム係合面によってそれぞれ係合され、第1の軸方向に押す方向D1の装填ボタン60の第1の運動を、第2の/対向する軸方向に引く方向D2の反転装填部材の第2の運動に変換する。特に、横断方向に拘束された装填ボタン60を第1の軸方向D1に押すことによって、軸方向に拘束された変換部材110の横断方向T1の運動を生じ、これにより、横断方向に拘束された反転装填部材102がランセットキャリア80を第2の軸方向D2に後退させる。第1の軸方向D1及び第2の軸方向D2は、互いに対してほぼ対向する(但し、必ずしも共直線性ではない)。
【0030】
変換部材110は、その第1の側面111によって形成された(そこに窪んだ又はそこから延出する)第1のカム面112と、その第2の側面114によって形成された(そこに窪んだ又はそこから延出する)第2の面115とを含む。図示の実施形態では、第1のカム面はカムスロット112によって形成され、及び第1のカム係合面は、隆起部107によって形成され、この隆起部107は、反転装填部材102の脚部分106から突出し、且つ第1のカムスロットに受け入れられ、及び第2のカム面はスロット115によって形成され、及び第2のカム係合面は隆起部65によって形成され、この隆起部65は、装填ボタン60から突出し、且つ第2のカムスロットに受け入れられる。横断方向に拘束された装填ボタン60を第1の方向D1に押すことによって、隆起部65を、第2のカムスロット115内で摺動するように軸方向に駆動し、それにより、軸方向に拘束された変換部材110が横断方向T1に動くようにする。変換部材110が横断方向T1に駆動されると、横断方向に拘束された反転装填部材102の隆起部107は第1のカムスロット112内に拘束され、それにより、第2の方向D2に軸方向に駆動されて、ランセットキャリア80を第2の方向D2に後退させる。他の実施形態では、第1のカム係合面は、ランセットキャリアの別の部分又は駆動機構の他の要素に形成され、及び/又は第2のカム係合面は、装填部材の別の部分(装填部材に動作可能に結合された装填機構の別の要素を含む)に形成される。
【0031】
更に、図示の変換部材110は、全体的に箱型且つ固体であり、周辺側面116が第1及び第2の側面111及び114の外縁間に延在し、且つその周辺全体に延在している。他の実施形態では、変換部材は、全体的にX字形状であり、別の規則的な又は不規則な形状を有し、及び/又は非固体のフレームのような構造を有する。例えば、それぞれ2つのカム面の一方を規定する2つのカムトラック又は他の案内構造は、一緒に組み立てることができるか、又は一体的に形成できる。
【0032】
特に図7を参照して、ここで変換部材110を詳細に説明する。カムスロット112、115は、様々な形状、形態、及び/又は構成で設けられ、装填ボタン60を押して作動させることにより、ランセットキャリア80を引いて後退させ得る。図示の実施形態では、カムスロット112、115は全体的に線形であり、それぞれチャンネルを規定し、そのチャネル内で装填部材102及び装填ボタン60のぞれぞれの隆起部107及び65が可動式に摺動する。好ましくは、カムスロット112、115は、鋭い曲がり角のない滑らかな形状にされ、ランセットキャリア80を、中立状態(図9A)から、装填の最中の状態(図9B)、装填された状態(図9C)、完全に押し出された状態(図9D)、及び中立状態(図9A)へ戻るように、滑らかに移行させる。他の実施形態では、カムスロットは非線形(例えば、湾曲又は波状/正弦曲線、他の規則的又は不規則な形状にある)であるか、又は他の形状にされて、装填機構の所望の押して引く動作をもたらす。更に他の実施形態では、カム面の一方又は双方は、変換部材の突起又は側縁によって規定され、反転装填部材及び/又は装填ボタンのスロット又は突出面によって係合される。
【0033】
図示の実施形態では、カムスロット112、115は実質的に同様であるが、ほぼ鏡像式に互いに反対向きに(例えば、縦軸に対して互いに約180度ずれて)配置され、十字パターン(互いに横方向にオフセットするが)を形成し、第1の軸方向に押す方向D1における作動によって(変換部材の横断方向T1の運動を生じる)、反転装填部材102を第2の軸方向に引く方向D2に強制的に後退させ、それによりランセットキャリア80を後退させる。換言すると、第1のカムスロット112は、縦軸から角度αにあり、及び第2のカムスロット115は、縦軸から角度βにあるとし得、角度αは、角度βとほぼ同じ(又はわずかに大きい)絶対値であるが、負である。例えば、一実施形態では、角度αは30度であり、角度βは、負の23度(即ち、337度)である。
【0034】
穿刺装置10の構造を説明したが、その動作の詳細を以下、図9A〜Dを参照して説明する。一般的に記述される、穿刺装置10の一連の動作は、中立位置(図9A)から、装填位置(図9B)へ、準備位置(図9C)へ、穿刺ストロークの完全な押し出し位置へ(図9D)へ動き、及び中立位置(図9A)へ戻るように動くランセットキャリア80を含む。中立位置(図9A)では、変換部材110は、ハウジング20内の一方の側(縦軸から横方向にオフセット)に位置決めされ、反転装填部材102の隆起部107が第1のカムスロット112に係合され、及び装填ボタン60の隆起部65が第2のカムスロット115内に係合されている。装填ボタンバネ96は、装填ボタン60を遠位に/後方に押し出し位置まで付勢し、及び装填ボタンのフランジ又はリム61がハウジング20に接触して、そこに保持されたままとなる。
【0035】
図9Bに示すように、穿刺装置10を装填する為に、装填ボタン60を第1の軸方向に押す方向D1においてハウジング20に対して前方に、押し下げられた位置まで押し、装填ボタンの隆起部65を、角度が付けられた第2のカムスロット115内で縦方向に動かし、それにより、変換部材110を横断方向T1に動かす。変換部材が横断方向T1において横方向にシフトすると、角度が付けられた第1のカムスロット112が反転装填部材102の隆起部107を後方に駆動して、ランセットキャリア80を第2の軸方向に押す方向D2に後退させる。ランセットキャリア80が後退することによって、そこから突出する突起85が、解除ボタン30の第2の穴34と係合が保持された状態まで動き、それにより、ランセットキャリア80を装填状態に保持する。
【0036】
図9Cに示すように、装填ボタン60が解除されると、装填ボタンバネ96は装填ボタンをその押し出し位置に戻す。装填ボタン60がそのように戻ると、その隆起部65は、変換部材110のカムスロット115を駆動して、変換部材を横方向T2に動かして、その元の中立位置に戻すようにする。ここで、穿刺装置10が装填され、且つ穿刺手順に使用する準備が整う。図9Dに示すように、解除ボタン30が押されて穿刺手順を開始するとき、その第2の穴34は、ランセットキャリア80の突起85との係合が解除され、それにより、駆動バネ92を自由にして、ランセットキャリアを穿刺ストロークに沿って押し出し位置まで推進させ、ランセット89の鋭い先端部分90がハウジングから突出する。この動作は、戻しバネ94を装填し、その後、ランセットキャリア80を解放して、図9Aの中立位置に戻すように後退させる。任意選択的に、エンドキャップ40を取り外すことによって、排出機構50を作動させることができ、使用済みのランセット89を取り除いて、新しいランセットと交換する。
【0037】
図10〜12Dは、本発明の第2の例示的な実施形態による穿刺装置200を示す。この実施形態の穿刺装置200は、上述の第1の実施形態の穿刺装置と実質的に同様である。それゆえ、穿刺装置200は、装填機構、アクチュエータ機構、駆動機構、及びこれらの要素の為のハウジングを含み、駆動機構は、ランセットを運ぶランセットキャリアを含み、及び装填機構を除いたこれらの構成要素は全て、上述の穿刺装置10のものと同じ又は実質的に同様である。
【0038】
この実施形態の装填機構は、第1の実施形態の穿刺装置10のカム駆動式の押して引く機構ではなく、ラックアンドピニオン式の押して引く機構を含む。一般的に記述される、ラックアンドピニオン式の装填機構は、ラックギヤ265を備える装填ボタン260、ラックギヤ307を備える反転装填部材302(例えば、L字形状のリンク)、及びそれらの間に回転可能に係合されたピニオンギヤ310を含む。装填ボタン260を押すことによって、取り付けられたラックギヤ265を、第1の軸方向に押す方向D1に縦方向に平行移動させ、それにより、係合されたピニオンギヤ310を、第1の角度方向(例えば、反時計回り)に回転させるように駆動し、それにより今度は、反転装填部材302を、第2の対向する軸方向に引く方向D2に駆動する。ラックアンドピニオン式の装填機構の構成要素の正確な構成、サイズ、及び/又は形状は、所望の通り選択及び/又は修正できる。
【0039】
装填ボタン260は、下記で述べることを除いて、上述の第1の実施形態の装填ボタン60とほぼ同様である。図示の実施形態では、装填ボタン260は、そこから縦方向に延在する細長いガイドアーム262を含み、案内チャンネル227(例えば、ハウジングの側壁及び縦方向の内壁によって形成された)に、又は下部ハウジングシェル222bの他の係合特徴に摺動式に係合する。一形態では、細長いガイドアーム262は、チャンネル227からの案内を受けるが、ラック307がそこで動作可能なままであるような形状にされている。第1のラック265は装填ボタン260の一部分に形成され、且つそこから突出する一連の歯266を有する。任意選択的に、装填ボタン260の一部分は、装填ボタンが作動されると、ラック307が通って延在できるようなオリフィスを含み得る。例えば、駆動バネ292を装填する為にラック307が確実に完全に後退されるようにする為に、開口部267は、ラック307とボタン260との間の接触を防止する為に設けられ得る。
【0040】
反転装填部材302は、下記で述べることを除いて、上述のような反転装填部材102とほぼ同様である。図示の通り、第2のラック307は、反転装填部材302の脚部分306の一部分から、それとほぼ平行な方向に延在し、及び第1のラック265の歯266から対向/対面する方向に突出する一連の歯308を含む。ラック265、307は、そこから突出するそれぞれの歯266、308が、その間に回転式に装着されたピニオン310の歯314と係合するように構成されている。上述の通り、装填ボタン260及び反転装填部材302は軸方向に拘束されて、ランセットキャリア280の前進及び後退にほぼ平行な方向の軸に沿ってのみ動く。
【0041】
ピニオン310は、例えば下部ハウジングシェル222bから内側に延在するポスト316を受け入れる穴312によって、ハウジングに回転式に装着される。例示的な実施形態では、ポスト316は、ランセットキャリアの前進及び後退を規定する軸から横方向にオフセットしている。ピニオン310の歯314はラック265、307の歯265、308に係合する為、第2のラックの直線運動によって第1のラックの対向する直線運動が生じる。
【0042】
図12A〜Dは、穿刺装置200の順次的な動作を示す。穿刺装置200の一連の動作は、一般的に、中立位置(図12A)から、装填位置(図12B)へ、準備位置(図12C)へ、穿刺ストロークの完全な押し出し位置(図12D)へ平行移動し、及び中立位置(図12A)へ戻るように平行移動するランセットキャリア280を含む。
【0043】
中立位置(図12A)では、ピニオン310の歯314は、装填ボタン260のラック265の一部分、及び反転装填部材302のラック307の一部分の双方と係合する。装填ボタンバネ296は装填ボタン260を後方に付勢し、フランジ又はリム261はハウジングの複数の部分に接触して、そこに保持されたままとなる。図12Bから最もよく分かるように、装填ボタンの使用者作動部分が装置200に押し付けられ(第1の方向D1)、ラック265がピニオンを回転式に駆動するようにし(例えば、反時計回りの方向)、それにより、反転装填部材302のラック307を平行移動式に駆動及び後退させるようにする(第2の方向D2)。同様に上述したように、解除ボタン230は、ランセットキャリアの一部分との解除可能な係合をもたらして、準備位置(図12C)を維持し、この維持は、第2の穴234内から突起285を取り外す(図11参照)為に解除ボタンが押し込まれることによって作動されるまで続く。装填後、付勢バネ296は装填ボタン260を付勢して外側に突出するようにし、フランジ261は、ハウジング220の複数の部分に係合する。
【0044】
解除ボタン230が押されると、その第2の穴234は、突起285との係合から解放され、それにより、駆動バネ292が穿刺ストロークに沿ってランセットキャリア80を推進させ、ランセット289の鋭い先端部分290がハウジングの外部に突出する(図12D)。好ましくは、戻しバネ294又は他の付勢部材が、ランセットキャリアを中立位置(図12A)に戻るように後退させる。同じく任意選択的に、エンドキャップ240を除去することによって排出機構250を作動し、使用済みのランセットを取り除いて新しいランセットと交換することができる。
【0045】
更に例示的な実施形態では、本発明は、穿刺装置の装填方法に関する。方法は、好ましくは、穿刺装置の一部分内に装填機構を摺動式に装着すること、変換部材を装填機構の一部分に可動式に装着すること、ランセットキャリアの一部分を変換部材に可動式に装着すること、装填機構を穿刺装置に押し付けること、変換部材を、装填機構の運動に対して横断する方向に強制的に動かすこと、及びランセットキャリアを、装填機構の運動方向にほぼ対向する方向に動かし、それに続いて穿刺装置を装填することを含む。
【0046】
好ましい及び例示的な実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者には、様々な修正形態、追加形態及び省略形態が、以下の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の範囲内にあることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D