【文献】
The Journal of Immunology,1995年,vol. 155,p. 4955-4962
【文献】
Mol Immunol,2007年,vol. 44,p. 2697-2706
【文献】
Cancer Immunol Res,2015年 7月27日,vol. 3, no. 12,p. 1325-1332
【文献】
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【文献】
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J Immunol,2007年,vol. 178,p. 5991-5998
【文献】
Cancer Res,2004年,vol. 64,p. 6310-6318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
補体因子H(CFH)タンパク質に結合することができる単離された抗体またはその抗体フラグメントであって、前記単離された抗体またはその抗体フラグメントが、CFHタンパク質のショートコンセンサスリピート(SCR)19内のPIDNGDIT(配列番号3)のエピトープに結合し、前記抗体が、
a) 配列番号73のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号84のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン;
b) 配列番号74のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号83のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン;
c) 配列番号75のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号85のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン;
d) 配列番号78のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号88のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン;
e) 配列番号79のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号89のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン;
f) 配列番号76のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号86のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン;または
g) 配列番号77のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号87のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメイン
を含む、前記単離された抗体または抗体フラグメント。
補体因子H(CFH)タンパク質に免疫特異的に結合する単離された抗体またはその抗体フラグメントであって、前記単離された抗体またはその抗体フラグメントが、CFHタンパク質のショートコンセンサスリピート(SCR)19内のPIDNGDIT(配列番号3)のエピトープに結合し、前記抗体が、
a) 配列番号73のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインの3つのCDRおよび配列番号84のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインの3つのCDR;
b) 配列番号74のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインの3つのCDRおよび配列番号83のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインの3つのCDR;
c) 配列番号75のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインの3つのCDRおよび配列番号85のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインの3つのCDR;
d) 配列番号78のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインの3つのCDRおよび配列番号88のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインの3つのCDR;
e) 配列番号79のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインの3つのCDRおよび配列番号89のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインの3つのCDR;
f) 配列番号76のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインの3つのCDRおよび配列番号86のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインの3つのCDR;または
g) 配列番号77のアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインの3つのCDRおよび配列番号87のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインの3つのCDR
を含む、前記単離された抗体またはその抗体フラグメント。
単離された抗体または抗体フラグメントが、全身性エリテマトーデス自己抗原SSA、SSB、スフィンゴミエリン(Sm)、リボヌクレオタンパク質(RNP)、硬化症自己抗原(Scl-70)、ヒスチジンtRNAリガーゼ(Jo-1)、二本鎖DNA(dsDNA)、セントロメアB(CentB)およびヒストンの少なくとも1つと交差反応しない、請求項1〜4のいずれか1つに記載の単離された抗体または抗体フラグメント。
単離された抗体または抗体フラグメントが、ヒト抗体、免疫グロブリン分子、ジスルフィド結合Fv、モノクローナル抗体、親和性成熟抗体、scFv、キメラ抗体、単一ドメイン抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、ヒト化抗体、多重特異性抗体、Fab、二重特異性抗体、DVD、TVD、Fab’、二重特異性抗体、F(ab’)2およびFvからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の単離された抗体または抗体フラグメント。
単離された抗体または抗体フラグメントが、ヒトIgM定常ドメイン、ヒトIgG4定常ドメイン、ヒトIgG1定常ドメイン、ヒトIgE定常ドメイン、ヒトIgG2定常ドメイン、ヒトigG3定常ドメインおよびヒトIgA定常ドメインからなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の単離された抗体または抗体フラグメント。
補体因子H(CFH)タンパク質に結合することができる抗体または抗体フラグメントをコードする単離された核酸であって、前記抗体またはその抗体フラグメントが、CFHタンパク質のショートコンセンサスリピート(SCR)19内のPIDNGDIT(配列番号3)のエピトープに結合し、前記単離された核酸が、可変重鎖ドメインをコードするヌクレオチド配列および可変軽鎖ドメインをコードするヌクレオチド配列を含み、
a) 可変重鎖ドメインが配列番号73のアミノ酸配列を含み、かつ、可変軽鎖ドメインが配列番号84のアミノ酸配列を含む;
b) 可変重鎖ドメインが配列番号74のアミノ酸配列を含み、かつ、可変軽鎖ドメインが配列番号83のアミノ酸配列を含む;
c) 可変重鎖ドメインが配列番号75のアミノ酸配列を含み、かつ、可変軽鎖ドメインが配列番号85のアミノ酸配列を含む;
d) 可変重鎖ドメインが配列番号78のアミノ酸配列を含み、かつ、可変軽鎖ドメインが配列番号88のアミノ酸配列を含む;
e) 可変重鎖ドメインが配列番号79のアミノ酸配列を含み、かつ、可変軽鎖ドメインが配列番号89のアミノ酸配列を含む;
f) 可変重鎖ドメインが配列番号76のアミノ酸配列を含み、かつ、可変軽鎖ドメインが配列番号86のアミノ酸配列を含む;または
g) 可変重鎖ドメインが配列番号77のアミノ酸配列を含み、かつ、可変軽鎖ドメインが配列番号87のアミノ酸配列を含む、
前記単離された核酸。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本開示は、補体因子H(CFH)阻害薬に関する。特に、本開示は、CFHのSCR19ドメイン内のエピトープまたは領域を標的とする阻害薬に関する。肺癌に対する治療薬を開発するために、癌における体液性免疫応答を特徴付けることによって、この特定のエピトープまたは領域が見出された。CFHに対する自己抗体は初期の非転移性非小細胞肺癌(NSCLC)に関連する。補体依存性腫瘍細胞溶解を促進する肺癌治療薬開発に向けてそれらを評価するために、CFHに対するNSCLC患者の自己抗体の機能解析を行った。
【0030】
本開示は、肺癌患者における、CFHの腫瘍結合型である(あるいはそれを模倣する)ことができるCFHの還元型をin vitroで認識する抗体を記述する。抗CFH抗体が患者血清からアフィニティ精製され、エピトープマッピングされた。これらの抗体の大部分によって認識される共通のエピトープは、C3bと相互作用するCFHの機能性ドメイン内に位置していた。精製されたCFH自己抗体は、腫瘍細胞へのC3b沈着を増加させ、腫瘍細胞の補体依存性溶解を増加させた。この発見は、癌治療のための治療標的を提供するものである。
【0031】
本開示はまた、抗CFH抗体にも関する。特に、本開示は、CFHのSCR19ドメイン内のエピトープまたは領域を標的とする抗CFH抗体に関する。本開示は、CFHの腫瘍結合型である(あるいはそれを模倣する)ことができるCFHの還元型をin vitroで認識する抗体を記述する。これらの抗体の大部分によって認識される共通のエピトープは、C3bと相互作用するCFHの機能性ドメイン内に位置していた。この発見は、癌治療のための治療標的を提供するものである。
【0032】
1.定義
特記しない限り、本明細書で用いられるすべての学術用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。矛盾がある場合は、定義を含む本文書が優先する。好ましい方法および材料を以下に記すが、本明細書に記載のものと同様あるいは等価な方法および材料は、本発明の実施または試験に用いることができる。本明細書に記載されているすべての公報、特許出願、特許および他の引用文献は、全て参照として包含される。本明細書に開示された材料、方法および実施例は、単に例示であって限定を意味するものではない。
【0033】
本明細書において、用語“含む(comprise(s))”、”含む(include(s))”、”有している(having)”、”有する(has)”、“できる(can)”、“含有する(contain(s))”およびそれらの異形は、付加的な作用あるいは構造の可能性を排除しないオープンエンドな移行句、用語、言葉を意味するものとする。単数形“ある(a)”、“および(and)”および“その(the)”は、文脈により明確に否定されない限りは複数指示を含む。本開示はまた、明記されていてもいなくても、本明細書に記載の実施形態または要素”を含んでいる(comprising)”、“からなる(consisting of)”および“から本質的になっている(consisting essentially of)”他の実施形態を考える。
【0034】
本明細書に記載されている数値範囲の記述に関しては、それらの間にある同じ精度の各数値が考えられることは明らかである。例えば、範囲6〜9に関しては、6および9に加えて、数値7および8が考えられ、範囲6.0〜7.0に関しては、数値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0が考えられることは明らかである。
【0035】
本明細書において、用語”投与”または“投与すること”は、所望の効果を得るために任意の適切な経路でCFH阻害薬を提供、接触および/または送達することをいう。これらの薬剤は、限定するものではないが、経口、経眼、経鼻、静脈内、局所、エアゾール、座剤などを含む多くの方法で被験者に投与することができ、また併用することができる。
【0036】
本明細書において、”親和性成熟抗体”は、改変(単数または複数)を含まない親抗体と比較して、標的抗原に対する抗体の親和性(すなわちKD、kdまたはka)の改善をもたらす、1以上のCDRにおける1以上の改変を有する抗体を指すために用いられる。例示的な親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはさらにはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体を製造するための種々の手順は当該技術分野で公知であり、それらにはバイオディスプレイ(bio-display)を用いて調製されたコンビナトリー抗体ライブラリー(combinatory antibody library)のスクリーニングが含まれる。例えば、Marks et al., BioTechnology, 10: 779-783 (1992) は、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和性成熟を記載している。相補性決定領域(CDR)および/またはフレームワーク残基のランダム変異誘発は、Barbas et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91: 3809-3813 (1994); Schier et al., Gene, 169: 147-155 (1995); Yelton et al., J. Immunol., 155: 1994-2004 (1995); Jackson et al., J. Immunol., 154(7): 3310-3319 (1995);およびHawkins et al, J. Mol. Biol., 226: 889-896 (1992) によって記載されている。選択的変異誘発位置および接触もしくは超変異位置における活性増強アミノ酸残基による選択的変異は、米国特許第6,914,128 B1号に記載されている。
【0037】
本明細書において、”第二経路”は、”補体第二経路”としても知られ、標的細胞をオプソニン化し、それを殺す3つの補体経路の1つのことをいう。第二経路は、C3bタンパク質が標的細胞に直接的に結合するときに引き起こされる。宿主細胞は、細胞表面C3bを蓄積しないため(これは、補体制御タンパク質によって阻害されるため)、補体の活性化を制限する補体制御タンパク質の表面発現に基づいて、補体第二経路は、自己と非自己とを区別することができる。一般に、異種細胞、病原体および異常な表面は補体制御タンパク質を有さないことによってC3bが多量に付着でき、それによって最終的に細胞の溶解がもたらされる。
【0038】
本明細書において、”抗体(単数および複数)”とは、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体(全部または一部がヒト化されている)、動物抗体、例えば限定するものではないが、鳥(例えばカモもしくはガチョウ)、サメ、クジラおよび、非霊長類(例えばウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウスなど)もしくは非ヒト霊長類(例えばサル、チンパンジーなど)を含む哺乳動物、組換え抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(“scFv”)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、例えばラクダ科の動物由来のH鎖可変ドメイン(“VHH”;別名“VHHフラグメント”)(VHHおよびその製造方法は、Gottlin et al., Journal of Biomolecular Screeing, 14:77-85 (2009)) に記載されている)およびVNARフラグメント、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab')2フラグメント、ジスルフィド連結Fvs(“sdFv”)および抗イディオタイプ(“抗Id”)抗体、二重ドメイン抗体、二重可変ドメイン(DVD)もしくは三重可変ドメイン(TVD)抗体(二重可変ドメイン免疫グロブリンおよびその製造方法は、Wu, C., et al., Nature Biotechnology, 25(11):1290-1297 (2007)およびPCT国際出願WO第2001/058956号に記載されている(それぞれの内容は参照により本願に組み込まれる))ならびに上記のいずれかの機能的に活性なエピトープ結合性フラグメントのことをいう。特に、抗体は、免疫グロブリン分子および、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性なフラグメント、すなわち、被検化合物結合部位を含む分子を含む。免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであることができる。簡単にするために、被検化合物に対する抗体は、本明細書においては、しばしば”抗被検化合物抗体”または単に“被検化合物抗体”(例えば抗CFH抗体またはCFH抗体)のいずれかで呼ぶ。
【0039】
本明細書において、”抗体フラグメント”とは、抗原結合部位または可変領域を含む無傷の抗体の一部のことをいう。この部分は、無傷の抗体のFc領域のH鎖定常ドメイン(すなわち抗体アイソタイプに応じてCH2、CH3またはCH4)を含まない。抗体フラグメントの例は、限定するものではないが、Fabフラグメント、Fab'フラグメント、Fab'-SHフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、ダイアボディ、一本鎖Fv(scFv)分子、ただ1つのL鎖可変ドメインを含む一本鎖ポリペプチド、L鎖可変ドメインの3つのCDRを含む一本鎖ポリペプチド、ただ1つのH鎖可変領域を含む一本鎖ポリペプチド、H鎖可変領域の3つのCDRを含む一本鎖ポリペプチドおよびVHHを含む。
【0040】
本明細書において、”自己抗体”、”患者抗体”、”患者のCFH自己抗体”または“患者のCFH抗体”は同義で使用され、個体自身の自己タンパク質、炭水化物または核酸に指向性を示す、個体によって産生される免疫グロブリン、抗原特異的B細胞表面受容体(表面免疫グロブリン)または抗原特異的T細胞受容体のことをいう。
【0041】
本明細書において、“CFHタンパク質に対する自己抗体“とは、CFHタンパク質または、前記タンパク質のバリアントもしくはフラグメントに、前記バリアントもしくは前記フラグメントが機能的に同等である、すなわち前記自己抗体によって認識されることが可能であるという条件で反応することができる自己抗体のことをいう。例えば、CFHタンパク質に対する自己抗体は、IgGまたはIgMであることができる。
【0042】
”結合定数”は、本明細書で説明されている。本明細書において、用語“結合速度定数”、”k
on”または“k
a”とは、以下の反応式:
抗体(Ab)+抗原(Ag)→Ab-Ag
に示される、抗体とその標的抗原との結合速度または抗体と抗原との複合体形成速度を示す数値のことをいう。
【0043】
本明細書において、用語“解離速度定数”、“k
off”または“k
d”は同義で使用され、以下の反応式:
抗体(Ab)+抗原(Ag)←Ab-Ag
によって示される、抗体とその標的抗原との解離速度またはAb-Ag複合体の遊離抗体および抗原への経時的解離を示す数値のことをいう。
【0044】
結合および解離速度定数を測定する方法は当該分野で公知である。蛍光ベースの技術を用いれば、平衡時の生理的緩衝液において試料を試験するための高い感度および能力が得られる。他の実験的アプローチおよび器械、例えばBIAcore(登録商標)(生体分子の相互作用解析)アッセイを用いることができる(例えばBIAcore International AB社、GEヘルスケア社、ウプサラ、スウェーデンから入手できる器械)。さらに、Sapidyne Instruments社(ボイシ、アイダホ州)から入手できるKinExA(登録商標)(結合平衡除外アッセイ(Kinetic Exclusion Assay))アッセイもまた用いることができる。
【0045】
本明細書において、用語“有効用量”または“有効量”は同義で使用され、所望の治療結果を得るために必要な期間有効な薬物の用量を意味する。当業者は、有効量を決定することができ、個体の病状、年齢、性別および体重ならびに個体において所望の応答を誘発する薬物の能力などの要素に従って変えることができる。本明細書において、この用語はまた、動物、哺乳動物またはヒトにおいて所望のin vivo効果を得るのに有効な量、例えばエストロゲン受容体を低下または抑制するのに有効な量を指すことができる。治療的有効量は、1以上の投与、塗布または用量で投与することができ(例えば薬剤は、症状の前後に任意の疾患進行のステージで予防処置または治療処置のために投与することができる)、特定の製剤、配合または投与経路に限定されるものではない。被験者の治療コース中に、種々の回数SERMを投与することができることは、本開示の範囲内である。投与回数および使用用量は、いくつかの要素、例えば治療目的(例えば治療か予防か)、被験者の状態などに左右されるが、当業者は容易に決定することができる。
【0046】
本明細書において、用語“平衡解離定数”、”Kd”、”K
d”または“K
D”は同義で使用され、解離速度(koff)を結合速度(kon)で割って得られる値のことをいう。結合速度、解離速度および平衡解離定数は、抗原に対する抗体の結合親和性を表すために用いられる。
【0047】
本明細書において、”結合タンパク質”は、結合パートナー、例えばポリペプチド、抗原、化学化合物もしくは他の分子または任意の種類の基質に結合するかまたはそれと複合体を形成する単量体または多量体のタンパク質を指すために用いられる。結合タンパク質は結合パートナーに特異的に結合する。結合タンパク質は、抗体およびその抗原結合フラグメントならびに、当該技術分野で公知であり、本明細書に以下に記載されているそれらの他の種々の形態おおよび誘導体ばかりでなく、抗原分子に結合する1以上の抗原結合性ドメインまたは抗原分子上の特定の部位(エピトープ)を含む他の分子もまた含む。従って、結合タンパク質は、限定するものではないが、抗体、四量体免疫グロブリン、IgG分子、IgG1分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、親和性成熟抗体および、抗原に結合する能力を保持する任意のこのような抗体のフラグメントを含む。
【0048】
本明細書において、”二重特異性抗体”は、クアドローマ技術(Milstein et al., Nature, 305(5934): 537-540 (1983)を参照のこと)、2つの異なるモノクローナル抗体の化学結合(Staerz et al., Nature, 314(6012): 628-631 (1985)を参照のこと)または、Fc領域に変異を導入するノブ・イントゥー・ホール(knob-into-hole)もしくは同様なアプローチ(複数の異なる免疫グロブリン種が得られるが、そのうちのただ1つが機能性二重特異性抗体である)(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90(14): 6444-6448 (1993))によって作製される完全長抗体を指すために用いられる。二重特異性抗体は、その2つの結合アーム(HC/LCの1つの対)の1つで1つの抗原(またはエピトープ)に結合し、その第二のアーム(HC/LCの他の対)で他の抗原(またはエピトープ)に結合する。この定義によれば、二重特異性抗体は、(2つの特異性およびCDR配列に)2つの異なる抗原結合性アームを有し、それに結合する各抗原に対しては一価である。
【0049】
本明細書において、”C3b”とは、C3コンベルターゼ酵素複合体による補体第3成分(C3)の切断または血液中での自発的切断によって形成される2つのエレメントの大きい方のものをいう。C3bは、微生物体における微生物細胞表面に共有結合し、表面結合したC3コンベルターゼおよびさらなるC3b成分の産生とマクロファージによるその微生物のオプソニン化をもたらす。C3コンベルターゼ酵素複合体によって流体相中でC3から生成されるC3bは、因子Hおよび因子Iによって急速に不活化される。C3の内部チオエステルが細胞または病原体の表面上の分子のヒドロキシル基またはアミン基と反応する場合、その時表面に共有結合しているC3bは、因子H媒介不活化から保護され、次にB因子と結合してC3bBを形成することができる。
【0050】
本明細書において、”癌”または“腫瘍”は同義で使用され、体内での異常細胞の無制限な制御されない増殖のことをいう。癌は、身体の近くの部位に侵入することができ、またリンパ系または血流を介して身体のより遠くの部位に転移することもできる。本明細書において、”癌細胞”または“腫瘍細胞”は同義で使用され、異常に分裂および複製され、無制限な増殖を行う細胞のことをいう。癌細胞は、離脱し、身体の他の部位に移動して、転移と呼ばれる他の部位を形成することができる。癌細胞または癌性細胞は悪性細胞とも呼ばれる。癌細胞または癌細胞株は癌由来のものであることができる。例えば、癌細胞株は、ヒト肺腺癌上皮細胞株であるA549細胞株(“A549”)であることができる。
【0051】
癌は、副腎皮質癌、肛門癌、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、カルチノイド腫瘍、原発巣が不明な消化器癌、子宮頚癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓外胆管癌、ユーイングファミリー腫瘍(PNET)、頭蓋外胚細胞腫瘍、眼内黒色腫眼癌、胆嚢癌、胃癌(腹部)、性腺外胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、頭頸部癌、下咽頭癌、島細胞癌、腎癌(腎細胞癌)、喉頭癌、急性リンパ性白血病、白血病、急性骨髄性、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、口唇癌および口腔癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、エイズ関連リンパ腫、中枢神経系(原発)リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病リンパ腫、非ホジキン病リンパ腫、悪性中皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、原発不明の転移性頸部扁平上皮癌、多発性骨髄腫および他の形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、脊髄増殖性疾患、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、上皮性卵巣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、膵臓癌、外分泌腺、膵臓癌、島細胞癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、形質細胞腫瘍、前立腺癌、横紋筋肉腫、直腸癌、腎細胞癌(腎臓癌)、腎盂および尿管の移行上皮癌、唾液腺癌、セザリー症候群、皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、精巣癌、悪性胸腺腫、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、小児にはまれな癌、膣癌、外陰癌ならびにウイルムス腫瘍を含むことができる。
【0052】
本明細書において、”補体因子Hタンパク質”、”CFHタンパク質”または“CFH”は、補体活性化調節因子ファミリーのメンバーの1つであり、補体制御タンパク質であるおおよそ150kDaのタンパク質(UniProt P08603)のことをいう。CFHは、ヒト血漿中を循環し、補体系が病原体または他の危険な物質に向けられ、宿主組織を損傷しないこと確実にするように補体系第二経路を制御するのに役立つ大きな可溶性糖タンパク質である。CFHは、因子IによるC3bの不活化における補因子であり、補体第二経路におけるC3bBb複合体(C3コンベルターゼ)および(C3b)NBB複合体(C5コンベルターゼ)の解離速度を増加させるように機能する。一般に宿主細胞上に存在するが、病原体表面には通常存在しないグリコサミノグリカンにCFHは結合する。
【0053】
CFHは、20のショートコンセンサスリピート(SCR)から構成される。その一部は細胞接着において機能し、他はC3bを細胞表面から排除するように機能する。CFHを構成する20のSCRは、それぞれおおよそ60アミノ酸長であり、ヘッドトゥテールに配置され、モジュールあたり2つのジスルフィド結合を形成する4つのシステイン残基を含む。C3b結合ドメインは、C3bに結合するCFHの部分を指すことができる。SCR19および20はC3b結合に関与する。
【0054】
本明細書において、抗体の”誘導体”とは、真の抗体もしくは親抗体と比較してそのアミノ酸配列に1以上の改変を有し、改変ドメイン構造を示す抗体を指すことができる。これらの誘導体は、天然抗体に見られる典型的なドメイン配置およびアミノ酸配列を採用することができ、これらは標的(抗原)に特異的に結合することができる。抗体誘導体の典型的な例は、他のポリペプチドに結合された抗体、再配列された抗体ドメインまたは抗体のフラグメントである。これらの誘導体は、少なくとも1つのさらなる化合物、例えばタンパク質ドメインであって、共有結合または非共有結合によって結合された前記タンパク質ドメインを含むこともできる。これらの結合は、当該技術分野で公知の方法による遺伝子融合に基づくことができる。本発明に従って用いられる抗体を含む融合タンパク質中に存在するさらなるドメインは、好ましくは、柔軟性リンカー、有利にはペプチドリンカーであって、さらなるタンパク質ドメインのC末端と該抗体のN末端間(逆もまた同様)の距離をつなぐのに十分な長さの複数の親水性のペプチド結合したアミノ酸を含む前記ペプチドリンカーによって結合されることができる。該抗体は、生物活性に適した配座を有するか、あるいは固体担体、生物活性物質(例えばサイトカインもしくは成長ホルモン)、化学薬剤、ペプチド、タンパク質薬物などへの選択的結合を有するエフェクター分子に結合されることができる。
【0055】
本明細書において、”二重特異性抗体”は、その2つの結合アーム(一対のHC/LC)のそれぞれで2つの異なる抗原(またはエピトープ)に結合することができる完全長抗体を指すために用いられる(国際公開番号WO02/02773を参照のこと)。従って、二重特異性結合タンパク質は、同一の特異性および同一のCDR配列を有する2つの同一の抗原結合性アームを有し、それが結合する各抗原に対しては二価である。
【0056】
本明細書において、”二重可変ドメイン”または“DVD”は同義で使用され、結合タンパク質上の2以上の抗原結合部位を指すために用いられ、これらは二価(2つの抗原結合部位)、四価(4つの抗原結合部位)または多価結合タンパク質であることができる。DVDは、単一特異性である(すなわち1つの抗原(もしくは1つの特定のエピトープ)に結合する)こともできるし、多重特異性である(すなわち2以上の抗原(すなわち同じ標的抗原分子の2以上のエピトープもしくは異なる標的抗原の2以上のエピトープ)に結合する)こともできる。好ましいDVD結合タンパク質は2つのH鎖DVDポリペプチドおよび2つのL鎖DVDポリペプチドを含み、”DVD免疫グロブリン”または“DVD-Ig”と呼ばれる。従って、このようなDVD-Ig結合タンパク質は四量体であり、IgG分子をほうふつさせるが、IgG分子よりも多い抗原結合部位を提供する。従って、四量体DVD-Ig分子のそれぞれ半分はIgG分子の二分の一をほうふつさせ、H鎖DVDポリペプチドおよびL鎖DVDポリペプチドを含むが、単一の抗原結合性ドメインを提供するIgG分子の一対のH鎖およびL鎖とは異なり、DVD-Igの一対のH鎖およびL鎖は2以上の抗原結合部位を提供する。
【0057】
DVD-Ig結合タンパク質の各抗原結合部位は、ドナー(“親”)モノクローナル抗体由来であることができ、すなわち抗原結合部位あたり、抗原結合性に関与する合計6つのCDRを有するH鎖可変ドメイン(VH)およびL鎖可変ドメイン(VL)を含むことができる。従って、2つの異なるエピトープ(すなわち、異なる2つの抗原分子の2つの異なるエピトープまたは同じ抗原分子の2つの異なるエピトープ)に結合するDVD-Ig結合タンパク質は、第1親モノクローナル抗体由来の抗原結合部位および第2親モノクローナル抗体の抗原結合部位を含む。
【0058】
好ましい実施形態において、本発明によるDVD-Ig結合タンパク質は、その親モノクローナル抗体によって結合される同じ標的分子に結合するばかりでなく、その親モノクローナル抗体の1以上の望ましい特性もまた1以上含む。好ましくは、このようなさらなる特性は、親モノクローナル抗体の1以上の抗体パラメータである。その親モノクローナル抗体の1以上からDVD-Ig結合タンパク質に寄与しうる抗体パラメータは、限定するものではないが、抗原特異性、抗原親和性、効力、生物学的機能、エピトープ認識、タンパク質の安定性、タンパク質の溶解性、産生効率、免疫原性、薬動力学、バイオアベイラビリティー、組織の交差反応性およびオーソロガス抗原結合性を含む。
【0059】
DVD-Ig結合タンパク質は、CFHの少なくとも1つのエピトープに結合する。DVD-Ig結合タンパク質の限定するものではない例は、CFHの1以上のエピトープに結合するDVD-Ig結合タンパク質、ヒトCFHのエピトープおよび他の種(例えばマウス)のCFHのエピトープに結合するDVD-Ig結合タンパク質ならびにヒトCFHのエピトープおよび他の標的分子のエピトープに結合するDVD-Ig結合タンパク質を含む。
【0060】
”エピトープ(単数もしくは複数)”または“目的とするエピトープ”とは、認識され、その特異的結合パートナー上の相補的部位(単数または複数)に結合することができる任意の分子上の部位(単数または複数)を指す。該分子および特異的結合パートナーは特異的結合対の部分である。例えば、エピトープは、ポリペプチド、タンパク質、ハプテン、炭水化物抗原(例えば限定するものではないが、糖脂質、糖タンパク質もしくはリポ多糖)または多糖上にあることができる。その特異的結合パートナーは、限定するものではないが、抗体であることができる。
【0061】
本明細書において、”F(ab')2フラグメント”とは、全IgG抗体のペプシン消化によってFc領域の大部分を除去し、ヒンジ領域の一部を無傷で残すことによって作製される抗体のことをいう。F(ab')2フラグメントは、ジスルフィド結合によって繋ぎ合わされる2つの抗原結合性F(ab)部位を有し、従って二価であり、約110kDaの分子量を有する。二価の抗体フラグメント(F(ab')2フラグメント)は、全IgG分子よりも小さく、組織へのより優れた浸透性が可能となり、従って免疫組織化学におけるより優れた抗原認識を容易にする。F(ab')2フラグメントの使用はまた、生細胞またはプロテインA/G上のFc受容体への非特異的結合を回避する。F(ab')2フラグメントは、抗原に結合し、沈殿させることができる。
【0062】
本明細書において、”フレームワーク”(FR)または“フレームワーク配列”は、可変領域からCDRを引いた残りの配列を意味することができる。CDR配列の正確な定義は、種々のシステムによって決定されることが可能なので(例えば上記参照)、フレームワーク配列は種々の解釈に応じて決まる。6つのCDR(L鎖のCDR-L1、-L2および-L3ならびにH鎖のCDR-H1、-H2、および-H3)はまた、L鎖およびH鎖上のフレームワーク領域を各鎖上で4つのサブ領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)に分割し、ここでCDR1はFR1とFR2の間に位置し、CDR2はFR2とFR3の間に位置し、CDR3はFR3とFR4の間に位置する。特定のサブ領域をFR1、FR2、FR3またはFR4と特定せず、他でも述べられているように、フレームワーク領域は、単一の天然に存在する免疫グロブリン鎖の可変領域内の組み合わされたFRsを表す。本明細書において、FRは、4つのサブ領域の1つを表し、FRsは、フレームワーク領域を構成する4つのサブ領域の2以上を表す。
【0063】
ヒトH鎖およびL鎖のFR配列は、当該技術分野で公知の技術を用いて非ヒト抗体をヒト化するための、H鎖およびL鎖の”受容体”フレームワーク配列(または単に”受容体”配列)として用いることができることは当該技術分野で公知である。一実施形態において、ヒトH鎖およびL鎖受容体配列は、公に入手可能なデータベース、例えばV-base(ハイパーテキスト・トランスファー・プロトコル://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)または国際ImMunoGeneTics(登録商標)(IMGTR)情報システム(ハイパーテキスト・トランスファー・プロトコル://imgt.cines.fr/texts/IMGTrepertoire/LocusGenes/)に列挙されているフレームワーク配列から選択される。
【0064】
本明細書において、”機能性抗原結合部位”は、標的抗原に結合することができる結合タンパク質(例えば抗体)上の部位を意味することができる。抗原結合部位の抗原結合親和性は、抗原結合部位が由来する親結合タンパク質、例えば親抗体と同等程度に強い必要はないが、抗原に結合する能力は、抗原に対して結合するタンパク質、例えば抗体を評価するための公知の種々の方法のいずれか1つを用いて測定可能でなければならない。さらに、本明細書において、多価タンパク質、例えば多価抗体の抗原結合部位のそれぞれの抗原結合親和性は定量的に同じである必要はない。
【0065】
本明細書において、”ヒト化抗体”は、非ヒト種(例えばマウス)からのH鎖およびL鎖可変領域配列を含むが、そのVHおよび/またはVL配列の少なくとも一部が、より”ヒト様”である、すなわちヒト生殖系列可変領域配列に、より類似したように改変された抗体を記述するために用いられる。”ヒト化抗体”は、目的とする抗原に免疫特異的に結合し、実質的にヒト抗体のアミノ酸配列を有するフレームワーク(FR)領域および実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む、抗体またはそのバリアント、誘導体、アナログもしくはフラグメントである。本明細書において、CDRとの関係において、用語“実質的に”とは、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するCDRのことをいう。ヒト化抗体は、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリン(すなわちドナー抗体)のCDR領域に一致し、フレームワーク領域の全部または実質的に全部がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域に一致する、少なくとも1つ、一般的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab'、F(ab')2、FabC、Fv)の実質的に全部を含む。一実施形態において、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、L鎖ばかりでなく、少なくともH鎖の可変ドメインを含む。該抗体はまた、H鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4領域を含むこともできる。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化L鎖のみを含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化H鎖のみを含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、L鎖および/またはH鎖のヒト化可変ドメインのみを含む。
【0066】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、IgYおよびIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラスならびに、限定するものではないがIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のアイソタイプから選択されることができる。ヒト化抗体は、2以上のクラスまたはアイソタイプからの配列を含むことができ、特定の定常ドメインは、当該分野で公知の技術を用いて所望のエフェクター機能を最適化するために選択されることができる。
【0067】
ヒト化抗体のフレームワーク領域およびCDRは、親配列に正確に一致する必要はなく、例えば、ドナー抗体のCDRまたはコンセンサスフレームワークは、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入および/または欠失によって、その部位におけるCDRまたはフレームワーク残基が、ドナー抗体またはコンセンサスフレームワークのいずれかに一致しないように変異させることができる。しかしながら、好ましい実施形態において、このような変異は大規模ではない。通例、ヒト化抗体残基の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が親FRおよびCDR配列の残基と一致する。本明細書において、用語“コンセンサスフレームワーク”とは、コンセンサス免疫グロブリン配列におけるフレームワーク領域のことをいう。本明細書において、用語“コンセンサス免疫グロブリン配列”とは、関連免疫グロブリン配列のファミリーにおいて最も頻繁に見出されるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列のことをいう(例えば、Winnaker, From Genes to Clones (Verlagsgesellschaft, Weinheim, 1987)を参照のこと)。このように、“コンセンサス免疫グロブリン配列”は、“コンセンサスフレームワーク領域(単数または複数)”および/または“コンセンサスCDR(単数または複数)”を含むことができる。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列における各位置は、そのファミリーにおけるその位置において最も頻繁に見出されるアミノ酸によって占められる。2つのアミノ酸が同等に見出される場合は、いずれもそのコンセンサス配列に含めることができる。
【0068】
本明細書において、2以上のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列との関係において、“同一”または“一致”は、特定の領域にわたって同じである残基の特定の百分率を有する配列を意味することができる。この百分率は、2つの配列を最適にアラインメントし、特定の領域にわたって2つの配列を比較し、両方の配列において同一の残基が見出される位置の数を決定して、一致した位置数を得、一致した位置数をその特定の領域における位置の総数によって割り、その結果を100倍して配列同一性の百分率を得ることによって算出することができる。2つの配列が異なる長さであるか、またはアラインメントによって1以上の互い違いに配置された末端を生じ、特定の比較領域が単一の配列のみを含む場合、その単一の配列の残基は分母には含めるが、その計算の分子には含めない。
【0069】
“連結配列”または“連結ペプチド配列”とは、1以上の目的とするポリペプチド配列(例えば完全長、フラグメントなど)に連結される天然または人工のポリペプチド配列のことをいう。用語“連結された”とは、目的とするポリペプチド配列に連結配列を連結されることをいう。このようなポリペプチド配列は、好ましくは、1以上のペプチド結合によって連結される。連結配列は、約4〜約50アミノ酸の長さを有することができる。好ましくは、連結配列の長さは約6〜約30アミノ酸である。人工の連結配列を作製するために、アミノ酸置換、付加または欠失によって天然の連結配列を改変することができる。例示的な連結配列は、限定するものではないが:(i)HHHHHH(配列番号116)のアミノ酸配列を有し、目的とするポリペプチドおよび抗体の分離精製を容易にするための連結配列として有用な6X Hisタグなどのヒスチジン(His)タグ;(ii)目的とするタンパク質および抗体の分離精製に用いられるHisタグなどのエンテロキナーゼ切断部位、を含む。多くの場合、エンテロキナーゼ切断部位は、目的とするタンパク質および抗体の分離精製におけるHisタグと共に用いられる。種々のエンテロキナーゼ切断部位が当該技術分野で公知である。エンテロキナーゼ切断部位の例は、限定するものではないが、アミノ酸配列DDDDK(配列番号117)およびその誘導体(例えばADDDDK(配列番号118)など);(iii)を含む。一本鎖可変領域フラグメントのL鎖および/またはH鎖可変領域を結合または連結させるために種々の配列を用いることができる。他の連結配列の例は、Bird et al., Science 242: 423-426 (1988); Huston et al., PNAS USA 85: 5879-5883 (1988);およびMcCafferty et al., Nature 348: 552-554 (1990) において見出すことができる。連結配列はまた、さらなる機能、例えば薬物の結合または固体担体への結合のために改変されることができる。本開示においては、CFH阻害薬、例えば抗CFH抗体は、例えばHisタグ、エンテロキナーゼ切断部位またはその両方などの連結配列を含むことができる。
【0070】
本明細書において、“肺癌”とは、肺に発生する癌のことをいう。例えば、肺癌は、肺の癌、例えば小細胞肺癌、別名小細胞肺癌腫および燕麦細胞癌、非小細胞肺癌(“NSCLC”)、腺腫、カルチノイド腫瘍および未分化癌であることができる。
【0071】
本明細書において、“非小細胞肺癌”または“NSCLC”は同義で使用され、小細胞肺癌以外の任意のタイプの上皮肺癌のことをいう。NSCLCの3つの主要なサブタイプは、腺癌(細気管支肺胞癌を含む)、扁平上皮細胞肺癌および肺大細胞癌である。NSCLCは、化学療法に対しては比較的非感受性である。
【0072】
本明細書において、“モノクローナル抗体”とは、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体、すなわち少量存在しうる天然に存在する可能な変異を除けば同一である個々の抗体のことをいう。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原に指向性を示す。さらにまた、一般的には、種々の決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を含むポリクローナル抗体製剤と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に指向性を示す。本明細書において、モノクローナル抗体は、特に、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に、H鎖および/またはL鎖の一部が同一であるかもしくは相同性を示し、他の種に由来するかまたは他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に、その鎖(単数または複数)の残りの部分が同一であるかもしくは相同性を示す“キメラ”抗体を含み、さらに、所望の生物学的特性を示す限りは、このような抗体のフラグメントもまた含む。
【0073】
本明細書において、“多価結合タンパク質”は、2以上の抗原結合部位(本明細書においては“抗原結合性ドメイン”とも呼ぶ)を含む結合タンパク質を指すために用いられる。好ましくは、多価結合タンパク質は、3以上の抗原結合部位を有するように操作され、一般に天然に存在する抗体ではない。用語“多重特異性結合タンパク質”とは、同じ標的分子の2以上の異なるエピトープに結合することができる結合タンパク質を含む、2以上の関連するもしくは類縁性のない標的に結合することができる結合タンパク質のことをいう。
【0074】
“組換え抗体(単数および複数)”は、1以上のモノクローナル抗体の全部または一部をコードする核酸配列の、組換え技術による適切な発現ベクターへのクローニングおよびそれに続く該抗体の適切な宿主細胞内での発現を含む1以上の段階によって製造される抗体を指す。この用語は、限定するものではないが、本明細書において(i)に記載されている、組換えにより製造されるモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体(完全または部分ヒト化)、抗体フラグメントから形成された多重特異性または多価構造、二機能性抗体、異種結合Ab、DVD-IgRおよび他の抗体を含む(Dual-variable domain immunoglobulins and methods for making them are described in Wu, C., et al., Nature Biotechnology, 25:1290-1297 (2007))。本明細書において、用語“二機能性抗体”とは、ある抗原部位に対して特異性を有する第1アームおよび、異なる抗原部位に対する特異性を有する第2アームを含む抗体のことをいう。すなわち、二機能性抗体は二重特異性を有する。
【0075】
本明細書において、“試料”、“試験試料”、“検体”、“被験者からの試料”および“患者試料”は交換可能であり、血液、組織、尿、血清、血漿、羊水、脳脊髄液、胎盤細胞もしくは組織、内皮細胞、白血球または単球の試料であることができる。該試料は、患者から得られたものを直接的に用いることもでき、あるいは、本明細書に記載の方法または当該技術分野で公知の他の方法によって該試料の性質を改変するために、例えば濾過、蒸留、抽出、濃度、遠心分離、干渉成分の不活化、試薬の添加などによって前処理することもできる。
【0076】
試料を得るために任意の細胞型、組織または体液を用いることができる。このような細胞型、組織および液体は、組織切片、例えば生検および剖検試料、組織学的目的のために採取される凍結切片、血液(例えば全血)、血漿、血清、痰、大便、涙、粘液、唾液、気管支肺胞洗浄(BAL)液、体毛、皮膚、赤血球、血小板、間質液、眼球レンズ液、脳脊髄液、汗、鼻腔液、滑液、月経分泌物、羊水、精液などを含むことができる。細胞型および組織はまた、リンパ液、腹水、婦人科液、尿、腹膜液、脳脊髄液、膣内洗浄により採取した液体または膣内フラッシングにより採取した液体を含むことができる。組織または細胞型は、動物から細胞試料を取り去ることによって得ることもできるが、以前に単離された(例えば他人によって、他の時点で、かつ/または他の目的で単離された)細胞によって達成されることもできる。アーカイブ組織、例えば治療歴またはアウトカム履歴を有するものもまた使用することができる。タンパク質またはヌクレオチドの単離および/または精製は、必要がない場合がある。
【0077】
“小コンセンサスリピート(small consensus repeat)”または“SCR”は、本明細書において同義で使用され、1つの面は、その中央に水素結合して三本鎖領域を形成する3つのβストランドからなり、別の面は2つの別々のβストランドから形成されるβ-サンドイッチ配置に基づく構造のことをいう。SCRは、補体制御タンパク質(CCP)モジュールおよびスシドメインとも呼ばれる。SCRは、さまざまな補体および接着タンパク質中に存在する。本明細書において、”SCR19”とはショートコンセンサスリピートドメイン19のことをいい、“SCR19-20”とは、親分子であるCFHと同様に互いに共有結合したショートコンセンサスリピートドメイン19および20のことをいう。
【0078】
本明細書において、“特異的結合”または“特異的に結合する”は、抗体、タンパク質またはペプチドと第2の化学種との相互作用であって、その化学種上の特定の構造(例えば抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存する前記相互作用を指すことができる。例えば、抗体は、一般に、タンパク質よりはむしろ特定のタンパク質構造を認識し、それに結合する。抗体がエピトープ“A”に特異的である場合、標識“A”および該抗体を含有する反応において、エピトープA(すなわち無標識の非標識A)を含む分子の存在によって、抗体に結合する標識Aの量は減少するであろう。
【0079】
本明細書において“被験者”と“患者”は同義であり、限定するものではないが、哺乳動物(例えばウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス、非ヒト霊長類(例えばサル、例えばカニクイザルもしくはアカゲザル、チンパンジーなど)ならびにヒト)を含む任意の脊椎動物のことをいう。いくつかの実施形態において、被験者はヒトまたは非ヒトであることができる。被験者または患者は、他の種類の治療を受けていることができる。
【0080】
“標的領域”と“分子標的”は本明細書において同義で使用され、例えば抗CFH抗体などのCFH阻害薬が結合することができるCFHの領域のことをいう。例えば、標的領域は、SCR19および/またはアミノ酸配列PIDNGDIT(配列番号3)を含むことができる。標的領域は、GPPPPIDNGDITSFP(配列番号114)の15マーペプチドを含むことができる。
【0081】
“治療する”、”治療すること”または“治療”は、本明細書においてそれぞれ、このような用語が適用される疾患の進行またはこのような疾患の1以上の症状を制限、緩和または抑制することを記述するために同義で使用される。この用語はまた、被験者の状態によっては疾患の予防のこともいい、疾患の発症の予防または疾患に関連する症状の予防を含む。治療は、短期または長期のいずれでも行うことができる。この用語はまた、疾患により苦痛を受ける前に、このような疾患に関連する疾患または症状の重症度を低減することもいう。苦痛を受ける前の疾患の重症度のこのような予防または低減は、疾患により苦痛を受けている投与時ではない、被験者への本発明の抗体または医薬組成物の投与のことをいう。“予防すること”はまた、疾患またはこのような疾患に関連する1以上の症状の再発を予防することもいう。上記で定義されている“治療すること”と同様に、“治療”および“治療上”は治療する行為を指す。
【0082】
本明細書において、“バリアント”とは、アミノ酸の挿入、欠失または保存的置換によってアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物活性を保持しているペプチドまたはポリペプチドを記述するために用いられる。“生物活性”の典型的な例は、特異的抗体に結合する能力または免疫応答を促進する能力を含む。本明細書において、バリアントは、少なくとも1つの生物活性を保持するアミノ酸配列を有する参照タンパク質と実質的に同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質を記述するためにも用いられる。アミノ酸の保存的置換、すなわち、あるアミノ酸と、類似した特性(例えば親水性、程度および荷電領域の分布)を有する別のアミノ酸との置換は、当該技術分野では一般的に、微小変化を有する置換と認められる。これらの微小変化は、当該技術分野で公知のように、アミノ酸のハイドロパシー指数(hydropathic index)を考慮することによってある程度同定することができる。Kyte et al., J. Mol. Biol. 157:105-132 (1982)。アミノ酸のハイドロパシー指数は、その疎水性および荷電に関する考察に基づく。類似したハイドロパシー指数のアミノ酸は、置換してもなおタンパク質機能を保持することができることは当該技術分野で公知である。一側面において、±2のハイドロパシー指数を有するアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性は、生物学的機能を保持するタンパク質をもたらすと考えられる置換を明らかにするために用いることもできる。ペプチドとの関係においてアミノ酸の親水性を考察することによって、抗原性および免疫原性とよく相関することが報告されている有用な尺度である、そのペプチドの最大局所平均親水性(greatest local average hydrophilicity)の算出が可能となる。米国特許第554,101号は、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。類似した親水性値を有するアミノ酸による置換によって、当該技術分野で公知のように、生物活性、例えば免疫原性を保持するペプチドを生じることができる。置換は、互いに±2以内の親水性値を有するアミノ酸を用いて行うことができる。アミノ酸の疎水性指数および親水性値は、共に、そのアミノ酸の特定の側鎖によって影響を受ける。その観察と一致して、生物学的機能と適合するアミノ酸置換は、疎水性、親水性、荷電、サイズおよび他の特性によって明らかにされる、そのアミノ酸、特にそのアミノ酸の側鎖の相対的類似性に依存することが知られている。“バリアント”はまた、対応する抗CFH抗体のフラグメントとはアミノ酸配列が異なるが、なお抗原反応性であり、CFHとの結合に関して抗CFH抗体の対応するフラグメントと競合することができる、抗CFH抗体の抗原反応性フラグメントを指すために用いることができる。“バリアント”はまた、例えばタンパク質分解、リン酸化または他の翻訳後修飾によって示差的にプロセシングされ、なおその抗原反応性を保持するポリペプチドまたはそのフラグメントを記述するために用いることもできる。
【0083】
特記しない限り、本明細書において、本開示と関連して用いられる科学および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有するものとする。例えば、細胞培養、組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質ならびに本明細書に記載されている核酸化学およびハイブリダイゼーションと関連して用いられる任意の命名法およびそれらの技術は、当該技術分野で公知であり一般的に用いられるものである。これらの用語の意味および範囲は明確でなければならない。しかしながら、潜在的多義性を有する場合には、本明細書で提供される定義が、任意の辞書または別段の定義に優先する。さらにまた、文脈上別段の必要がなければ、単数用語は複数であることを含むこととし、複数用語は単数形を含むこととする。
【0084】
2.CFH阻害薬
本明細書において、癌、例えば肺癌を治療する方法に使用するための阻害薬が提供される。本阻害薬は、CFHに特異的に結合する単離された抗体または小分子、例えばCFHの還元型またはそのフラグメントであることができる。
【0085】
a. CFH
補体因子Hは、細胞表面での細胞溶解複合体の形成に必須なタンパク質であるC3bを不活化することによって、補体第二経路による攻撃および破壊から正常細胞および腫瘍細胞の両方を保護する補体阻害因子のクラスの1つである。CFHの主要な機能は、補体媒介性溶解の第二経路を阻害することである。CFHは、(a)C3bを切断するプロテアーゼである補体因子I(CFI)の補因子として作用し、(b)その前駆体であるC3からC3bを形成する酵素の生成を抑制し、その分解を促進させる、ことによって細胞表面への補体タンパク質C3b沈着を抑制する。C3b沈着によって、細胞溶解をもたらす細胞溶解膜攻撃複合体の生成が開始される。従って、CFHによる細胞表面へのC3b沈着の抑制によって細胞溶解が防止される。CFHは、グリコサミノグリカンおよびシアル酸を含む哺乳動物細胞表面のC3b(またはC3dと呼ばれる分解C3b)と結合するが、これはこれらの基を欠く細菌表面とは対照的であり、これによって標的識別を仲介する。CFHは、正常宿主細胞を保護する以外に、NSCLC、膠芽腫および結腸癌細胞からの細胞を含む腫瘍細胞を補体攻撃から保護することが示されている。
【0086】
ヒトCFHは、以下のアミノ酸配列:MRLLAKIICLMLWAICVAEDCNELPPRRNTEILTGSWSDQTYPEGTQAIYKCRPGYRSLGNVIMVCRKGEWVALNPLRKCQKRPCGHPGDTPFGTFTLTGGNVFEYGVKAVYTCNEGYQLLGEINYRECDTDGWTNDIPICEVVKCLPVTAPENGKIVSSAMEPDREYHFGQAVRFVCNSGYKIEGDEEMHCSDDGFWSKEKPKCVEISCKSPDVINGSPISQKIIYKENERFQYKCNMGYEYSERGDAVCTESGWRPLPSCEEKSCDNPYIPNGDYSPLRIKHRTGDEITYQCRNGFYPATRGNTAKCTSTGWIPAPRCTLKPCDYPDIKHGGLYHENMRRPYFPVAVGKYYSYYCDEHFETPSGSYWDHIHCTQDGWSPAVPCLRKCYFPYLENGYNQNYGRKFVQGKSIDVACHPGYALPKAQTTVTCMENGWSPTPRCIRVKTCSKSSIDIENGFISESQYTYALKEKAKYQCKLGYVTADGETSGSITCGKDGWSAQPTCIKSCDIPVFMNARTKNDFTWFKLNDTLDYECHDGYESNTGSTTGSIVCGYNGWSDLPICYERECELPKIDVHLVPDRKKDQYKVGEVLKFSCKPGFTIVGPNSVQCYHFGLSPDLPICKEQVQSCGPPPELLNGNVKEKTKEEYGHSEVVEYYCNPRFLMKGPNKIQCVDGEWTTLPVCIVEESTCGDIPELEHGWAQLSSPPYYYGDSVEFNCSESFTMIGHRSITCIHGVWTQLPQCVAIDKLKKCKSSNLIILEEHLKNKKEFDHNSNIRYRCRGKEGWIHTVCINGRWDPEVNCSMAQIQLCPPPPQIPNSHNMTTTLNYRDGEKVSVLCQENYLIQEGEEITCKDGRWQSIPLCVEKIPCSQPPQIEHGTINSSRSSQESYAHGTKLSYTCEGGFRISEENETTCYMGKWSSPPQCEGLPCKSPPEISHGVVAHMSDSYQYGEEVTYKCFEGFGIDGPAIAKCLGEKWSHPPSCIKTDCLSLPSFENAIPMGEKKDVYKAGEQVTYTCATYYKMDGASNVTCINSRWTGRPTCRDTSCVNPPTVQNAYIVSRQMSKYPSGERVRYQCRSPYEMFGDEEVMCLNGNWTEPPQCKDSTGKCGPPPPIDNGDITSFPLSVYAPASSVEYQCQNLYQLEGNKRITCRNGQWSEPPKCLHPCVISREIMENYNIALRWTAKQKLYSRTGESVEFVCKRGYRLSSRSHTLRTTCWDGKLEYPTCAKR(配列番号1;UniProt P08603)を有することができる。CFHは、還元されていることもできるし、還元されていないこともできる。
【0087】
ヒトCFHは、配列番号1のフラグメントまたはバリアントであることができる。フラグメントまたはバリアントは、還元型であることもできるし、還元型でないこともできる。CFHフラグメントは、長さ5〜1230アミノ酸、10〜1000アミノ酸、10〜750アミノ酸、10〜500アミノ酸、50〜400アミノ酸、60〜400アミノ酸、65〜400アミノ酸、100〜400アミノ酸、150〜400アミノ酸、100〜300アミノ酸または200〜300アミノ酸であることができる。該フラグメントは、配列番号1からの連続アミノ酸数を含むことができる。
【0088】
ヒトCFHフラグメントは、配列番号1のアミノ酸1107-1165に相当する以下のアミノ酸配列:GKCGPPPPIDNGDITSFPLSVYAPASSVEYQCQNLYQLEGNKRITCRNGQWSEPPKCLH(配列番号2)を有することができる。ヒトCFHフラグメントは、以下のアミノ酸配列GPPPPIDNGDITSFP(配列番号114)を有することができる。
【0089】
(1)CFHの還元型
CFHの還元型は、潜在性エピトープまたは潜在性標的領域が現されることができる。このエピトープまたは標的領域は、腫瘍細胞の表面にのみ現されることができる。CFHは、腫瘍微小環境における潜在性エピトープの提示による自己抗原であることができる。NSCLC腫瘍は、マクロファージ遊走阻害因子のジスルフィドレダクターゼであるチオレドキシンと非タンパク質チオール、例えば還元システインおよびグルタチオンのレベル上昇を示す。これらの因子は、正常組織よりも腫瘍において、より還元的環境の形成に寄与する。従って、抗CFHエピトープ(単数または複数)は隠されているが、腫瘍内スペースにおけるタンパク質の還元時においてのみ暴露されることができる。あるいはまた、CFHの可溶型が腫瘍細胞に結合すれば、該タンパク質はアンフォールドし、腫瘍細胞特異的配座で結合して抗原性を示すようになることができる。in vitroで還元することによって、CFHを簡単にこの状態を模倣する配座にすることができる。
【0090】
(2)標的領域
CFH阻害薬、例えば抗CFH抗体の標的領域(潜在性であることができる)は、CFH機能と関連するSCR19(配列番号2)であることができる。SCR19は、C3b/C3dおよび、自己表面または自動表面に特有なポリアニオンに対する結合部位を含む。SCR19は、C3bのC3dへの結合に関与しているため、CFHの宿主細胞防御機能に関与するドメインである。標的領域は、SCR19内に存在するエピトープPIDNGDIT(配列番号3)であることができる。標的領域は、配列番号3の残基6でもある、配列番号1の残基D1119を含むことができる。標的領域は、15マーペプチドGPPPPIDNGDITSFP(配列番号114)を含むことができる。
【0091】
b. CFH認識抗体
該抗体は、CFHの還元型、そのフラグメント、CFHのエピトープまたはそれらのバリアントに結合する抗体である。該抗体は、抗CFH抗体のフラグメントまたはそれらのバリアントもしくは誘導体であることができる。該抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であることができる。該抗体は、キメラ抗体、一本鎖抗体、親和性成熟抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体もしくは抗体フラグメント、例えばFabフラグメントまたはそれらの混合物であることができる。抗体フラグメントまたは誘導体は、F(ab’)
2、FvまたはscFvフラグメントを含むことができる。該抗体誘導体は、ペプチドミメティックスによって製造することができる。該抗CFH抗体はヒト由来抗体であることができる。さらにまた、一本鎖抗体製造のために記載された技術を、一本鎖抗体を製造するために適合することができる。該抗体は、ヒトin vivo免疫応答から生成されるものであることもできるし、そうでないこともできる。例えば、該抗体は、自己抗体であることもできるし、そうでないこともできる。
【0092】
抗CFH抗体は、キメラ抗CFHであることもできるし、ヒト化抗CFH抗体であることもできる。一実施形態において、ヒト化抗体およびキメラ抗体は両方とも一価である。一実施形態において、ヒト化抗体およびキメラ抗体は、両方とも、Fc領域に結合した単一のFab領域を含む。
【0093】
ヒト抗体は、ファージディスプレイ技術によるものであることもできるし、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスによるものであることもできる。該抗体は、ヒトin vivo免疫応答の結果として生成され、単離されることができる。例えば、Funaro et al., BMC Biotechnology, 2008(8):85 を参照のこと。従って、該抗体はヒトレパートリー産物であって、動物レパートリー産物ではないことができる。該抗体はヒト由来であるため、自己抗原に対する反応性のリスクを最小限にすることができる。あるいはまた、ヒト抗CFH抗体を選択し単離するために、標準的な酵母ディスプレイライブラリーおよびディスプレイ技術を用いることができる。例えば、ヒト抗CFH抗体を選択するために、ナイーブヒト一本鎖抗体(scFv)のライブラリーを用いることができる。ヒト抗体を発現させるために、トランスジェニック動物を用いることができる。
【0094】
ヒト化抗体は、非ヒト種からの相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を1以上有する、所望の抗原に結合する、非ヒト種抗体からの抗体分子であることができる。
【0095】
該抗体は、当該技術分野で公知の抗体とは異なる生物学的機能(単数または複数)を有するという点で公知の抗体とは区別することができる。
【0096】
(1)エピトープ
CFH抗体は、配列番号1〜3、114もしくは119〜132内のエピトープ、そのフラグメントまたはそのバリアントのいずれか1つ以上の還元型または非還元型に免疫特異的に結合することができる。該抗体は、エピトープペプチドPIDNGDIT(配列番号3)またはGPPPPIDNGDITSFP(配列番号14)内の少なくとも3つのアミノ酸、少なくとも4つのアミノ酸、少なくとも5つのアミノ酸、少なくとも6つのアミノ酸または少なくとも7つのアミノ酸を免疫特異的に認識し、それに結合することができる。該抗体は、配列番号1または2の少なくとも3つの連続アミノ酸、少なくとも4つの連続アミノ酸、少なくとも5つの連続アミノ酸、少なくとも6つの連続アミノ酸、少なくとも7つの連続アミノ酸、少なくとも8つの連続アミノ酸、少なくとも9つの連続アミノ酸または少なくとも10の連続アミノ酸を有するエピトープを免疫特異的に認識し、それに結合するができる。該連続アミノ酸は、配列番号1のアミノ酸D1119を含むことができる。
【0097】
(2)抗体結合性
該抗体は、CFH(配列番号1)、SCR19(配列番号2)、アミノ酸配列PIDNGDIT(配列番号3)、アミノ酸配列GPPPPIDNGDITSFP(配列番号114)、そのフラグメントまたはそのバリアントに免疫特異的に結合することができ、約1.0x10
-4s
-1以下、約1.0x10
-5s
-1以下、約5.0x10
-6s
-1以下、約1.0x10
-6s
-1以下、約5.0x10
-7s
-1以下、約1.0x10
-7s
-1以下、約5.0x10
-8s
-1以下、約1.0x10
-8s
-1以下、約1.0x10
-9s
-1以下、約1.0x10
-10s
-1以下、約1.0x10
-11s
-1以下、約1.0x10
-12s
-1以下の解離速度(kd)を有することができ、約1.0x10
-12s
-1〜約1.0x10
-4s
-1、約1.0x10
-12s
-1s〜約1.0x10
-5s
-1、約1.0x10
-12s
-1〜約1.0x10
-6s
-1、約1.0x10
-12s
-1〜約1.0x10
-7s
-1、約1.0x10
-12s
-1〜約1.0x10
-8s
-1、約1.0x10
-12s
-1〜約1.0x10
-9s
-1、約1.0x10
-12s
-1〜約1.0x10
-10s
-1、約1.0x10
-10s
-1〜約1.0x10
-4s
-1、約1.0x10
-10s
-1〜約1.0x10
-5s
-1、約1.0x10
-10s
-1〜約1.0x10
-6s
-1、約1.0x10
-10s
-1〜約1.0x10
-7s
-1、約1.0x10
-10s
-1〜約1.0x10
-8s
-1、約1.0x10
-8s
-1〜約1.0x10
-4s
-1s、約1.0x10
-8s
-1〜約1.0x10
-5s
-1s、約1.0x10
-8s
-1s〜約1.0x10
-6s
-1、約1.0x10
-8s
-1〜約1.0x10
-7s
-1、約1.0x10
-7s
-1〜約1.0x10
-4s
-1、約1.0x10
-7s
-1〜約1.0x10
-5s
-1または約1.0x10
-7s
-1〜約1.0x10
-6s
-1の範囲のkdを有することができる。該フラグメントは、配列番号114または配列番号115であることができる。
【0098】
該抗体は、CFH(配列番号1)、SCR19(配列番号2)、アミノ酸配列PIDNGDIT(配列番号3)、アミノ酸配列GPPPPIDNGDITSFP(配列番号114)、そのフラグメントまたはそのバリアントに免疫特異的に結合することができ、少なくとも約1.0x10
3M
-1s
-1、少なくとも約1.0x10
4M
-1s
-1、少なくとも約5.0x10
4M
-1s
-1、少なくとも約1.0x10
5M
-1s
-1、少なくとも約2.0x10
5M
-1s
-1、少なくとも約3.0x10
5M
-1s
-1、少なくとも約4.0x10
5M
-1s
-1、少なくとも約5.0x10
5M
-1s
-1、少なくとも約6.0x10
5M
-1s
-1、少なくとも約1.0x10
6M
-1s
-1、少なくとも約1.0x10
7M
-1s
-1、少なくとも約1.0x10
8M
-1s
-1の結合速度(ka)を有することができ、約1.0x10
3M
-1s
-1〜約1.0x10
8M
-1s
-1、約1.0x10
4M
-1s
-1〜約1.0x10
8M
-1s
-1、約1.0x10
5M
-1s
-1〜約1.0x10
8M
-1s
-1、約1.0x10
6M
-1s
-1〜約1.0x10
8M
-1s
-1、約1.0x10
7M
-1s
-1〜約1.0x10
8M
-1s
-1、約1.0x10
3M
-1s
-1〜約1.0x10
7M
-1s
-1、約1.0x10
4M
-1s
-1〜約1.0x10
7M
-1s
-1、約1.0x10
5M
-1s
-1〜約1.0x10
7M
-1s
-1、約1.0x10
6M
-1s
-1〜約1.0x10
7M
-1s
-1、約1.0x10
4M
-1s
-1〜約1.0x10
7M
-1s
-1、約1.0x10
4M
-1s
-1〜約1.0x10
6M
-1s
-1、約1.0x10
4M
-1s
-1〜約1.0x10
5M
-1s
-1、約1.0x10
5M
-1s
-1〜約1.0x10
7M
-1s
-1、または約1.0x10
5M
-1s
-1〜約1.0x10
6M
-1s
-1の範囲のkaを有することができる。該フラグメントは、配列番号114または配列番号115であることができる。
【0099】
該抗体は、CFH(配列番号1)、SCR19(配列番号2)、アミノ酸配列PIDNGDIT(配列番号3)、アミノ酸配列GPPPPIDNGDITSFP(配列番号114)、そのフラグメントまたはそのバリアントに免疫特異的に結合することができ、少なくとも約1.0x10
-15M、少なくとも約1.0x10
-14M、少なくとも約1.0x10
-13M、少なくとも約1.5x10
-13M、少なくとも約1.0x10
-12M、少なくとも約1.6x10
-12M、少なくとも約1.7x10
-12M、少なくとも約1.8x10
-12M、少なくとも約1.9x10
-12M、少なくとも約2.0x10
-12M、少なくとも約2.1x10
-12M、少なくとも約2.2x10
-12M、少なくとも約2.3x10
-12M、少なくとも約2.4x10
-12M、少なくとも約2.5x10
-12M、少なくとも約2.6x10
-12M、少なくとも約2.7x10
-12M、少なくとも約2.8x10
-12M、少なくとも約2.9x10
-12M、少なくとも約3.0x10
-12M、少なくとも約5.0x10
-12M、少なくとも約1.0x10
-11M、少なくとも約1.5x10
-11M、少なくとも約5.0x10
-11M、少なくとも約1.0x10
-10M、少なくとも約5.0x10
-10M、少なくとも約1.0x10
-9Mの親和性(KD)を有することができ、約1.0x10
-15M〜約1.0x10
-9M、約1.0x10
-15M〜約1.0x10
-10M、約1.0x10
-15M〜約1.0x10
-11M、約1.0x10
-15M〜約1.0x10
-12M、約1.0x10
-15M〜約1.0x10
-13M、約1.0x10
-14M〜約1.0x10
-9M、約1.0x10
-14M〜約1.0x10
-10M、約1.0x10
-14M〜約1.0x10
-11M、約1.0x10
-14M〜約1.0x10
-12M、約1.0x10
-14M〜約1.0x10
-13M、約1.0x10
-13M〜約1.0x10
-9M、約1.0x10
-13M〜約1.0x10
-10M、約1.0x10
-13M〜約1.0x10
-11M、約1.0x10
-13M〜約1.0x10
-12M、約1.0x10
-12M〜約1.0x10
-9M、約1.0x10
-12M〜約1.0x10
-10Mまたは約1.0x10
-12M〜約1.0x10
-11Mの範囲のKDを有することができる。該フラグメントは配列番号114または配列番号115であることができる。
【0100】
CFHに対する抗体の結合は、CFHの還元型に対して感受性を有し得る。CFHの還元型に対して感受性を有する抗体とは、CFHに対する抗体の結合親和性が、CFHが還元型であるか、または還元型ではないかに応じて変化することを意味する。例えば、その結合が、還元型であるかまたは還元型ではないCFHに対して感受性を有する抗体は、CFHが還元型ではない場合にCFHに対するより低い結合親和性を有し得る。あるいはまた、その結合が、還元型であるかまたは還元型ではないCFHに対して感受性を有する抗体は、CFHが還元型である場合にCFHに対するより低い結合親和性を有し得る。CFHが還元型であるか、または還元型ではないかに関して非感受性である抗体とは、CFHに対する抗体の結合親和性が、還元型であるかまたは還元型ではないかによって変化しないことを意味する。
【0101】
c. H鎖およびL鎖配列
該抗体は、CFH(配列番号1)、SCR19(配列番号2)、アミノ酸配列PIDNGDIT(配列番号3)、アミノ酸配列GPPPPIDNGDITSFP(配列番号114)、そのフラグメントまたはそのバリアントに免疫特異的に結合することができ、表1および2に示すH鎖可変領域(VH)および/またはL鎖可変領域(VL)を含むことができる。該抗体は、表1および2における下線部のアミノ酸残基によって示されるHCDR3領域を有することができる。該抗体のL鎖は、κ鎖(VL
K)またはλ鎖(VL
L)であることができる。
【0106】
該抗体またはそのバリアントもしくは誘導体は、配列番号4〜31の1以上と95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%または50%を超えて同一である1以上のアミノ酸配列を含むことができる。該抗体またはそのバリアントもしくは誘導体は、配列番号32〜48の1以上と95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%または50%を超えて同一である1以上の核酸配列によってコードされることができる。ポリペプチドの相同性および同一性は、例えば、Wilbur, W.J. and Lipman, D.J., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 80, 726-30 (1983) というレポートに記載されているアルゴリズムによって決定することができる。本明細書に記載の抗体、バリアントまたはその誘導体は、配列番号32〜48の1以上の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされることができる。本明細書に記載の抗体、バリアントまたはその誘導体は、配列番号4〜31の1以上をコードする1以上の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされることができる。
【0107】
該抗体は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY分子クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであることができる。
【0108】
d. ヌクレオチド配列
本明細書において、CFH、そのフラグメントまたはそのバリアントに免疫特異的に結合する抗体をコードする単離された核酸が提供される。該単離された核酸は、表1および2に示す、H鎖またはL鎖配列を含む抗体をコードする核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むことができる。該単離された核酸は、表3および4に示すヌクレオチド配列を含むことができる。
【0122】
抗体の作製/産生
抗体は、種々の技術のいずれかで作製することができる。一般に、抗体は、慣用法によるかまたは、抗体の産生を可能にするための、抗体遺伝子、H鎖、および/またはL鎖の適切な細菌または哺乳動物細胞宿主へのトランスフェクションによるモノクローナル抗体の作製を含む細胞培養技術によって産生することができ、該抗体は組換えられていることができる。用語“トランスフェクション”の種々の方式は、原核もしくは真核宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に用いられるさまざまな技術、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAEデキストラン形質転換などを含むものとする。原核宿主細胞または真核宿主細胞のいずれにおいても、本発明の抗体を発現させることは可能ではあるが、真核細胞における抗体の発現が好ましく、哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。なぜなら、このような真核細胞(および特に哺乳動物細胞)は、正しく折りたたまれ、免疫学的に活性な抗体をアセンブルし、分泌するためには、原核細胞よりもより好ましいからである。
【0123】
本発明の組換え抗体を発現するための例示的な哺乳動物宿主細胞は、例えばKaufman and Sharp, J. Mol. Biol., 159: 601-621 (1982) の記載に従ってDHFR選択マーカーと共に用いるチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4216-4220 (1980) に記載されているdhfr-CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、HEK293T細胞およびSP2細胞を含む。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されるとき、宿主細胞内での抗体の発現を可能にするのに十分な期間、より好ましくは、宿主細胞が生育する培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって抗体が産生される。標準的なタンパク質精製方法を用いて、培地から抗体を回収することができる。
【0124】
宿主細胞は、機能性抗体フラグメント、例えばFabフラグメントまたはscFv分子を産生させるために用いることもできる。当然のことながら、上記手順の変形は本発明の範囲内である。例えば、本発明の抗体のL鎖および/またはH鎖のいずれかの機能性フラグメントをコードするDNAで宿主細胞をトランスフェクトすることが望ましい場合がある。組換えDNA技術は、目的とする抗原への結合に必要ではないL鎖およびH鎖の一方または両方をコードするDNAの一部または全部を除去するために用いることもできる。このような短縮型DNA分子から発現される分子もまた、本発明の抗体に含まれる。さらに、標準的な化学的架橋方法を用い、本発明の抗体と第2抗体とを架橋させることによって、あるH鎖とL鎖が本発明の抗体であり(すなわちヒトCFHに結合し)、もう1つのH鎖とL鎖がヒトCFH以外の抗原に特異的である二機能性抗体を産生させることができる。
【0125】
本発明の抗体またはその抗原結合部分の好ましい発現系において、リン酸カルシウム法によるトランスフェクションによって、抗体H鎖と抗体L鎖の両方をコードする組換え発現ベクターがdhfr-CHO細胞に導入される。該組換え発現ベクター内では、遺伝子の高レベルの転写を促進させるために、抗体H鎖およびL鎖遺伝子は、それぞれ、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節因子に作動可能に連結されている。該組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を用いて、該ベクターにトランスフェクトされたCHO細胞を選択することを可能にするDHFR遺伝子を有する。選択された形質転換宿主細胞は、該抗体のH鎖およびL鎖を発現させるために培養され、その培地から無傷の抗体が回収される。標準的な分子生物学技術を用いて、組換え発現ベクターを作製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換細胞を選択し、宿主細胞を培養し、その培地から抗体を回収する。さらにまた、本発明は、本発明の組換え抗体が合成されるまで、適切な培地中で本発明の宿主細胞を培養することによる、本発明の組換え抗体の合成方法を提供する。本方法はさらに、培地から組換え抗体を単離することを含むことができる。
【0126】
モノクローナル抗体の作製方法には、所望の特異性を有する抗体を産生することができる不死化細胞株の作製が含まれる。このような細胞株は、免疫動物から得られる脾臓細胞から製造されることができる。該動物は、CFHまたはそのフラグメントおよび/またはバリアントで免疫されることができる。例えば、動物に免疫性を与えるために、配列番号1〜3もしくは119〜132または配列番号1〜3もしくは119〜132のバリアントのいずれかを用いることができる。免疫抗原は、還元されていることもできるし、還元されていないこともできる。次いで、該脾臓細胞は、例えば、骨髄腫細胞融合パートナーとの融合によって不死化されることができる。種々の融合技術を用いることができる。例えば、該脾臓細胞と骨髄腫細胞を非イオン性界面活性剤と数分間混合し、次いで、雑種細胞の増殖は維持するが、骨髄腫細胞の増殖は維持しない選択培地上に低密度にプレーティングすることができる。このような技術の1つは、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン(HAT)選択を用いる。もう1つの技術は電気融合を含む。十分な時間後、通例約1〜2週間後、雑種のコロニーが観察される。単一コロニーが選択され、該ポリペプチドに対する結合活性についてそれらの培養上清が試験される。高い反応性および特異性を有するハイブリドーマが用いられることができる。
【0127】
増殖しているハイブリドーマコロニーの上清からモノクローナル抗体を単離することができる。さらに、収率を高めるために、例えば、適切な脊椎動物宿主、例えばマウスの腹腔に該ハイブリドーマ細胞株を注射するなどの種々の技術を用いることができる。次いで、腹水または血液からモノクローナル抗体を採取することができる。慣用法、例えばクロマトグラフィー、ゲル濾過、沈殿および抽出によって、抗体から不純物を除去することができる。アフィニティークロマトグラフィーは、該抗体を精製するためのプロセスに用いることができる方法の1例である。
【0128】
タンパク質分解酵素パパインは、IgG分子を選択的に切断していくつかのフラグメントを生じるが、それらのうちの2つ(F(ab)フラグメント)は、それぞれ、無傷の抗原結合部位を含む共有結合したヘテロ二量体を含む。酵素ペプシンは、IgG分子を切断して、両方の抗原結合部位を含むF(ab’)2フラグメントを含むいくつかのフラグメントを提供することができる。
【0129】
Fvフラグメントは、IgM免疫グロブリン分子の選択的タンパク質切断によって製造されることができるが、まれにはIgGまたはIgA免疫グロブリン分子の選択的タンパク質切断によって製造される場合もある。Fvフラグメントは、組換え技術を用いて誘導されることもできる。Fvフラグメントは、天然抗体分子の抗原認識および抗原結合能の多くを保持する抗原結合部位を含む非共有結合VH::VLヘテロ二量体を含む。
【0130】
該抗体、抗体フラグメントまたは誘導体は、CDRに対する支持体を提供し、互いに対するCDRの空間的関係を限定するH鎖およびL鎖フレームワーク(“FR”)セット間にそれぞれ挿入されたH鎖およびL鎖の相補性決定領域(“CDR”)セットを含むことができる。DRセットは、H鎖V領域またはL鎖V領域の3つの超可変領域を含むことができる。H鎖またはL鎖のN末端から順に、これらの領域はそれぞれ“CDR1”、“CDR2”および“CDR3”と呼ばれる。従って、抗原結合部位は、H鎖V領域およびL鎖V領域のそれぞれからのCDRセットを含む6つのCDRを含むことができる。単一のCDR(例えばCDR1、CDR2、またはCDR3)を含むポリペプチドは、“分子認識単位”と呼ばれることができる。抗原抗体複合体の結晶解析から、CDRのアミノ酸残基は、結合抗原との間に強い接触を生じ、その中で、最も強い抗原接触はH鎖CDR3ととの間に生じることが明らかにされている。このように、該分子認識単位は、主として、抗原結合部位の特異性に関与することができる。一般に、CDR残基は、直接的かつ最も実質的に、抗原結合性への影響に関与する。
【0131】
限定するものではないが、当該技術分野で公知の方法を用いて、例えば種々の販売会社、例えばCambridge Antibody Technologies社(ケンブリッジシャー、英国)、MorphoSys社(マーチンスリード/プラネグ、デラウェア州)、Biovation社(アバディーン、スコットランド、英国)BioInvent社(ルンド、スウェーデン)から入手できるペプチドまたはタンパク質ライブラリー(例えば限定するものではないが、バクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNA、酵母などのディスプレイライブラリー)から組換え抗体を選択する方法を含む、必要な特異性の抗体を産生または単離する他の適切な方法を用いることができる。米国特許第4,704,692号;第5,723,323号;第5,763,192号;第5,814,476号;第5,817,483号;第5,824,514号;第5,976,862号を参照のこと。当該技術分野で公知でありかつ/または本明細書に記載されている、ヒト抗体のレパートリーを産生することができる別の方法は、トランスジェニック動物(例えばSCIDマウス、Nguyen et al. (1997) Microbiol. Immunol. 41:901-907; Sandhu et al. (1996) Crit. Rev. Biotechnol. 16:95-118; Eren et al. (1998) Immunol. 93:154-161) の免疫化に依存する。このような技術は、限定するものではないが、リボソームディスプレイ(Hanes et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:4937-4942; Hanes et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:14130-14135); 単一細胞抗体産生技術(例えば選択的リンパ球抗体法(“SLAM”)(米国特許第5,627,052号、Wen et al. (1987) J. Immunol. 17:887-892; Babcook et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843-7848);ゲル微小滴およびフローサイトメトリー(Powell et al. (1990) Biotechnol. 8:333-337; One Cell Systems, (Cambridge, Mass).; Gray et al. (1995) J. Imm. Meth. 182:155-163; Kenny et al. (1995) Bio/Technol. 13:787-790);B細胞選択(Steenbakkers et al. (1994) Molec. Biol. Reports 19:125-134 (1994))を含む。特に、CFHに対するヒト抗体は、Liao et al. (2013) Immunity 38(1): 176-186; Bonsignori et al. (2012) J Virol 86(21): 11521-11532; Moody et al. (2012) J Virol 86(14): 7496-7507; Gray et al. (2011) J Virol 85(15): 7719-7729; Morris et al. (2011) PLoS ONE 6(9): e23532;およびLiao et al. (2009) J Virol Methods 158(1-2): 171-179 に記載の方法を用いて、ヒト末梢Bリンパ球から誘導され、配列決定され、特性決定されることができる。
【0132】
親和性成熟抗体は、当該技術分野で公知のいくつかの手順のいずれか1つによって産生されることができる。例えば、Marks et al., BioTechnology, 10: 779-783 (1992)(VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和性成熟を記載している)を参照のこと。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム変異誘発は、Barbas et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91: 3809-3813 (1994); Schier et al., Gene, 169: 147-155 (1995); Yelton et al., J. Immunol., 155: 1994-2004 (1995); Jackson et al., J. Immunol., 154(7): 3310-3319 (1995); Hawkins et al, J. Mol. Biol., 226: 889-896 (1992)に記載されている。選択的変異誘発位置および接触もしくは超変異位置における活性増強アミノ酸残基による選択的変異は、米国特許第6,914,128 B1号に記載されている。
【0133】
本発明の抗体バリアントは、例えばこのような抗体をその乳中に産生するトランスジェニック動物または哺乳動物、例えばヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなどを得るために、適切な宿主に本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドを送達することによって製造することもできる。これらの方法は当該技術分野で公知であり、例えば米国特許第5,827,690号;第5,849,992号;第4,873,316号;第5,849,992号;第5,994,616号;第5,565,362号;および第5,304,489号に記載されている。
【0134】
抗体バリアントは、このような抗体、特定の部分またはバリアントを植物部分またはそれから培養された細胞内に産生する、トランスジェニック植物および培養植物細胞(例えば限定するものではないがタバコ、トウモロコシおよびウキクサ)を得るために本発明のポリヌクレオチドを送達することによって製造することもできる。例えば、Cramer et al. (1999) Curr. Top. Microbiol. Immunol. 240:95-118 およびその引用文献は、例えば誘導性プロモーターを用いて大量の組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉の製造を記載している。他の組換え系で産生されたかまたは自然源から精製されたものと等価な生物活性を有する哺乳動物のタンパク質を商業生産レベルで発現させるために、トランスジェニックトウモロコシが用いられてきている。例えば、Hood et al., Adv. Exp. Med. Biol. (1999) 464:127-147 およびその引用文献を参照のこと。抗体バリアントは、抗体フラグメント、例えば一本鎖抗体(scFv's)を含めて、タバコ種子およびジャガイモ塊茎を含むトランスジェニック植物種子から大量に製造されてもいる。例えば、Conrad et al. (1998) Plant Mol. Biol. 38:101-109 およびその引用文献を参照のこと。このように、本発明の抗体は、トランスジェニック植物を用い、公知の方法に従って製造することもできる。
【0135】
抗体誘導体は、例えば、免疫原性を調節するために、あるいは結合、親和性、結合速度、解離速度、アビディティ、特異性、半減期もしくは任意の他の適切な特性を低減、増強もしくは調節するために、外因性配列を加えることによって製造することができる。一般に、非ヒトまたはヒトCDR配列の一部または全部が維持されるが、可変領域および定常領域の非ヒト配列は、ヒトまたは他のアミノ酸によって置換される。
【0136】
小さな抗体フラグメントは、フラグメントが、同じポリペプチド鎖(VH VL)内にH鎖可変ドメイン(VH)をL鎖可変ドメイン(VL)に連結させて含む、2つの抗原結合部位を有するダイアボディであることができる。例えば、EP 404,097; WO 93/11161; およびHollinger et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 を参照のこと。同じ鎖にある2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを用いることによって、これらのドメインは、もう1つの鎖の相補的ドメインと対合するように強いられ、2つの抗原結合部位が作成される。親抗体の超可変領域に挿入された1以上のアミノ酸を有し、標的抗原に対する親抗体の結合親和性よりも少なくとも約2倍強い標的抗原に対する結合親和性を有する抗体バリアントを開示する、Chenらへの米国特許第6,632,926号(参照によってその全体が本願に組み込まれる)もまた参照のこと。
【0137】
該抗体は、直鎖抗体であることができる。直鎖抗体を製造する手順は当該技術分野で公知であり、Zapata et al. (1995) Protein Eng. 8(10):1057-1062 に記載されている。簡潔に言えば、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖抗体は、二重特異性であることもできるし、単一特異性であることもできる。
【0138】
限定するものではないが、プロテインA精製、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈殿、酸抽出法、アニオンもしくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む公知の方法によって、組換え細胞培養物から該抗体を回収し、精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(“HPLC”)もまた精製に用いることができる。
【0139】
検出または治療のために該抗体を標識することも有用であることができる。これらの薬剤に抗体を結合する方法は当該技術分野で公知である。例示目的に過ぎないが、抗体は、検出可能部分、例えば放射性原子、発色団、フルオロフォアなどで標識されることができる。このような標識抗体は、in vivoまたは単離された試験試料のいずれにおいても診断法に用いることができる。抗体はまた、例えば、医薬品、例えば化学療法薬または毒素に結合されることができる。抗体はまた、サイトカイン、リガンド、他の抗体に結合されることができる。抗腫瘍効果を得るために抗体に結合させる適切な薬剤は、サイトカイン、例えばインターロイキン2(IL-2)および腫瘍壊死因子(TNF);光線力学的療法に使用するための光増感剤(アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホネート、ヘマトポルフィリンおよびフタロシアニンを含む);放射性核種、例えばヨウ素131(131I)、イットリウム90(90Y)、ビスマス212(212Bi)、ビスマス213(213Bi)、テクネチウム99m(99mTc)、レニウム186(186Re)、およびレニウム188(188Re);抗生物質、例えばドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、メトトレキサート、ダウノマイシン、ネオカルチノスタチンおよびカルボプラチン;細菌、植物および他の毒素、例えばジフテリア毒素、シュードモナス外毒素A、ブドウ球菌エンテロトキシンA、アブリンA毒素、リシンA(脱グリコシル化されたリシンAおよび天然リシンA)、TGF-α毒素、タイワンコブラ(ナジャ・ナジャ・アトラ(naja naja atra))からのサイトトキシンおよびゲロニン(植物毒素);植物、細菌および真菌からのリボソーム不活性化タンパク質、例えばレストリクトシン(アスペルギルス・レストリクタス(Aspergillus restrictus)によって産生されるリボソーム不活性化タンパク質)、サポリン(サポナリア・オフィキナリス(Saponaria officinalis)からのリボソーム不活性化タンパク質)およびRNアーゼ;チロシンキナーゼ阻害薬;ly207702(二フッ素化プリンヌクレオシド);抗嚢胞剤(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、毒素をコードするプラスミド、メトトレキサートなど)を含むリポソーム;ならびに他の抗体または抗体フラグメント、例えばF(ab)を含む。
【0140】
該抗体は、配列決定され、組換えまたは合成手段によって複製されることができる。該抗体はまた、さらに、それらをコードするヌクレオチドの線状配列の配列決定に用いることもできる。従って、本発明は、本発明の抗体の配列をコードする前述のポリヌクレオチドを、単独で、あるいは担体、ベクターまたは宿主細胞と組み合わせて提供する。
【0141】
ハイブリドーマ技術の使用による抗体産生、選択リンパ球抗体法(SLAM)、トランスジェニック動物および組換え抗体ライブラリーは、以下にさらに詳細に説明される。
【0142】
(1)ハイブリドーマ技術を用いる抗CFHモノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換えおよびファージディスプレイ法技術またはそれらの組み合わせの使用を含む当該技術分野で公知のさまざまな技術を用いて製造することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当該技術分野で公知であり、例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, second edition, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 1988); Hammerling, et al., In Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, (Elsevier, N.Y., 1981) に教示されているハイブリドーマ技術を用いて製造することができる。用語“モノクローナル抗体”は、本明細書において、ハイブリドーマ技術によって製造される抗体のみに限定されないこともまた指摘される。用語“モノクローナル抗体”とは、任意の真核、原核またはファージクローンを含む単一のクローン由来の抗体のことであって、それが製造される方法のことではない。
【0143】
一実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体を製造する方法ばかりでなく、該方法によって製造される抗体もまた提供する。該方法は、本発明の抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を培養することを含むことができる。該方法において、好ましくは、ハイブリドーマは、骨髄腫細胞と、CFHで免疫した動物、例えばラットまたはマウスから単離された脾細胞とを融合させ、次いで、ポリペプチド、例えばGPPPPIDNGDITSFP(GGGK-ビオチン)(配列番号15)と結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンについて融合体から得られたハイブリドーマをスクリーニングすることによって作製される。簡潔に言えば、ラットはCFH抗原で免疫することができる。好ましい実施形態において、CFH抗原は、免疫応答を刺激するためのアジュバントと共に投与される。このようなアジュバントは、完全もしくは不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)またはISCOM(免疫刺激複合体)を含む。このようなアジュバントは、ポリペプチドを限局性沈着物中に封鎖することによって、そのポリペプチドの急速な分散を防ぐことができるし、このようなアジュバントは、免疫系のマクロファージおよび他の成分の走化性因子を分泌させるために宿主を刺激する物質を含むこともできる。ポリペプチドが投与される場合、好ましくは、免疫化スケジュールは、数週間の間を置いた、該ポリペプチドの2回以上の投与を含むであろう。しかしながら、該ポリペプチドの単回投与もまた用いることができる。
【0144】
CFH抗原を用いて動物を免疫化した後、その動物から抗体および/または抗体産生細胞を得ることができる。その動物を出血させるかまたは屠殺することによって、抗CFH抗体を含有する血清が得られる。該血清は、該動物から得られたものをそのまま用いることもできるし、該血清から免疫グロブリンフラクションを得ることもできるし、該血清から抗CFH抗体を精製することもできる。このように得られた血清または免疫グロブリンはポリクローナルであり、従って特性が不均一なアレイを有する。
【0145】
免疫応答が検出されれば、例えば抗原CFHに特異的な抗体がラット血清中に検出されれば、そのラットの脾臓が摘出され、脾細胞が単離される。次いで、公知の技術によって、該脾細胞は任意の適切な骨髄腫細胞、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC、マナッサス、バージニア州、米国)から入手できるSP20細胞株からの細胞に融合される。ハイブリドーマは、限界希釈法によって選択され、クローニングされる。次いで、CFHに結合することができる抗体を分泌する細胞について、当該技術分野で公知の方法によってハイブリドーマクローンがアッセイされる。陽性のハイブリドーマクローンでラットを免疫することにより、一般に高レベルの抗体を含有する腹水を作製することができる。
【0146】
他の実施形態において、免疫動物から抗体産生不死化ハイブリドーマを作製することができる。免疫化の後、その動物をサクリファイスし、その脾臓B細胞は、当該分野で公知の方法で不死化骨髄腫細胞に融合される。例えば、前出のHarlow and Laneを参照のこと。好ましい実施形態において、骨髄腫細胞は、免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌細胞株)。融合および抗生物質選択の後、CFHもしくはその部分(例えばGPPPPIDNGDITSFP(GGGK-ビオチン)(配列番号15))またはCFHを発現する細胞を用いてハイブリドーマをスクリーニングする。好ましい実施形態において、酵素免疫抗体法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)、好ましくはELISAを用いて一次スクリーニングが行われる。ELISAスクリーニングの例は、国際公開番号WO00/37504で提供されている。
【0147】
抗CFH抗体産生ハイブリドーマは、頑強なハイブリドーマ増殖、高い抗体産生および望ましい抗体特性を含む望ましい特性について選択され、クローニングされ、さらにスクリーニングされる。ハイブリドーマは、同系動物において、免疫系を欠く動物、例えばヌードマウスにおいてin vivoで、または細胞培養においてin vitroで培養し、増殖させることができる。ハイブリドーマを選択し、クローニングし、増殖させる方法は当業者に公知である。
【0148】
好ましい実施形態において、ハイブリドーマはラットハイブリドーマである。他の実施形態において、ハイブリドーマは、非ヒト、非ラット種、例えばマウス、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ウサギまたはウマにおいて製造される。さらに他の好ましい実施形態において、ハイブリドーマは、抗CFH抗体を発現するヒト細胞にヒト非分泌骨髄腫が融合されたヒトハイブリドーマである。
【0149】
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術によって作製されることができる。例えば、本発明のFabおよびF(ab')2フラグメントは、酵素、例えばパパイン(2つの同一のFabフラグメントを生じる)またはペプシン(F(ab')
2フラグメントを生じる)を用い、免疫グロブリン分子のタンパク質切断によって製造することができる。IgG分子のF(ab')2フラグメントは、両方のL鎖(L鎖可変領域およびL鎖定常領域を含む)、H鎖のCH1ドメインならびに親IgG分子のジスルフィド形成ヒンジ領域を含むより大きな(“親”)IgG分子の2つの抗原結合部位を保持している。従って、F(ab')2フラグメントは、なお、親IgG分子と同様に抗原分子に架橋することができる。
【0150】
(2)SLAMを用いる抗CFHモノクローナル抗体
本発明の他の側面において、組換え抗体は、米国特許第5,627,052号;国際公開番号WO92/02551;およびBabcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93: 7843-7848 (1996) の記載に従って、当該技術分野で選択リンパ球抗体法(SLAM)と呼ばれる手順を用い、単離された単一のリンパ球から作製される。本方法において、抗原CFH、CFHのサブユニットまたはそのフラグメントが、リンカー、例えばビオチンを用いてヒツジ赤血球に連結され、CFHに特異的な抗体を分泌する単一細胞を同定するために用いられる抗原特異的溶血プラークアッセイを用いて、目的とする抗体を分泌する単一細胞、例えば免疫動物のいずれか1つ由来のリンパ球がスクリーニングされる。目的とする抗体分泌細胞を同定した後、逆転写酵素PCR(RT-PCR)によって該細胞からH鎖およびL鎖可変領域cDNAがレスキューされ、次いで、これらの可変領域が、哺乳動物宿主細胞、例えばCOSまたはCHO細胞において、適切な免疫グロブリン定常領域(例えばヒト定常領域)との関連で発現されることができる。in vivoで選択されたリンパ球由来の増幅された免疫グロブリン配列でトランスフェクトされた宿主細胞は、次いで、in vitroで、例えばCFHに対する抗体を発現する細胞を単離するために、パニングによってさらなる分析および選択を行うことができる。増幅された免疫グロブリン配列はさらに、in vitroで、in vitro親和性成熟法で操作されることができる。例えば、国際公開番号WO97/29131および国際公開番号WO00/56772を参照のこと。
【0151】
(3)トランスジェニック動物を用いる抗CFHモノクローナル抗体
本発明の他の実施形態において、非ヒト動物をヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部または全部を含むCFH抗原で免疫することによって抗体が産生される。一実施形態において、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きなフラグメントを含み、マウス抗体産生に欠陥のある操作されたマウス系統であるXENOMOUSE(登録商標)、トランスジェニックマウスである。例えば、Green et al., Nature Genetics, 7: 13-21 (1994) ならびに米国特許第5,916,771号;第5,939,598号;第5,985,615号;第5,998,209号;第6,075,181号;第6,091,001号;第6,114,598号;および第6,130,364号を参照のこと。同様に、国際公開番号WO91/10741;WO94/02602;WO96/34096;WO96/33735;WO98/16654;WO98/24893;WO98/50433;WO99/45031;WO99/53049;WO00/09560;およびWO00/37504を参照のこと。XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスは、完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトモノクローナル抗体を作製する。XENOMOUSE(登録商標)トランスジェニックマウスは、ヒトH鎖遺伝子座およびL鎖遺伝子座のメガベースサイズの生殖系列構造YACフラグメントの導入によって、ヒト抗体レパートリーのおおよそ80%を含有する。Mendez et al., Nature Genetics, 15: 146-156 (1997), Green and Jakobovits, J. Exp. Med., 188: 483-495 (1998) を参照のこと(参照によって、これらの開示は本願に組み込まれる)。
【0152】
(4)組換え抗体ライブラリーを用いる抗CFHモノクローナル抗体
本発明の抗体を製造するために、in vitro法もまた用いることができる。該方法において、所望のCFH結合特異性を有する抗体を同定するために、抗体ライブラリーがスクリーニングされる。このような組換え抗体ライブラリーのスクリーニング方法は当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5,223,409号(Ladnerら);国際公開番号WO92/18619(Kangら);国際公開番号WO91/17271(Dowerら);国際公開番号WO92/20791(Winterら);国際公開番号WO92/15679(Marklandら);国際公開番号WO93/01288(Breitlingら);国際公開番号WO92/01047(McCaffertyら);国際公開番号WO92/09690(Garrardら);Fuchs et al., Bio/Technology, 9: 1369-1372 (1991); Hay et al., Hum. Antibod. Hybridomas, 3: 81-85 (1992); Huse et al., Science, 246: 1275-1281 (1989); McCafferty et al., Nature, 348: 552-554 (1990); Griffiths et al., EMBO J., 12: 725-734 (1993); Hawkins et al., J. Mol. Biol., 226: 889-896 (1992); Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991); Gram et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 3576-3580 (1992); Garrard et al., Bio/Technology, 9: 1373-1377 (1991); Hoogenboom et al., Nucl. Acids Res., 19: 4133-4137 (1991); Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 7978-7982 (1991);米国特許出願公開第2003/0186374号;ならびに国際公開番号WO97/29131に記載されている方法を含む(それぞれの内容は、参照により本願に組み込まれる)。
【0153】
組換え抗体ライブラリーは、CFHまたはCFHの一部で免疫した被験者からのものであることができる。あるいはまた、組換え抗体ライブラリーは、ナイーブな被験者からのもの、すなわちCFHで免疫されていないもの、例えばヒトCFHで免疫されてないヒト被験者からのヒト抗体ライブラリーであることができる。本発明の抗体は、ヒトCFHを含むペプチドで組換え抗体ライブラリーをスクリーニングし、それによってCFHを認識する抗体を選択することによって選択される。このようなスクリーニングおよび選択を実施する方法は当該分野で公知であり、例えば前節における参考文献に記載されている。CFHに対して特定の結合親和性を有する抗体、例えば、特定のK
off速度定数でヒトCFHから解離する抗体を選択するために、当該分野で公知の表面プラズモン共鳴法を用いて、所望のK
off速度定数を有する抗体を選択することができる。hCFHに対して特定の中和活性を有する本発明の抗体、例えば特定のIC
50を有する本発明の抗体を選択するために、CFH活性の阻害を評価するための当該技術分野で公知の標準法を用いることができる。
【0154】
一側面において、本発明は、ヒトCFHに結合する単離された抗体またはその抗原結合部分に関する。好ましくは、該抗体は中和抗体である。種々の実施形態において、該抗体は組換え抗体またはモノクローナル抗体である。
【0155】
例えば、本発明の抗体は、当該技術分野で公知の種々のファージディスプレイ法を用いて作製することもできる。ファージディスプレイ法において、機能性抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面に提示される。このようなファージを用いて、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えばヒトまたはマウス)から発現される抗原結合性ドメインを提示させることができる。目的とする抗原に結合する抗原結合性ドメインを発現するファージは、抗原、例えば標識抗原または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉された抗原を用いて選択または同定することができる。これらの方法に用いられるファージは、一般的には、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換え融合されたFab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを提示する、ファージから発現されるfdおよびM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。本発明の抗体を製造するために用いることができるファージディスプレイ法の例は、Brinkmann et al., J. Immunol. Methods, 182: 41-50 (1995); Ames et al., J. Immunol. Methods, 184:177-186 (1995); Kettleborough et al., Eur. J. Immunol., 24: 952-958 (1994); Persic et al., Gene, 187: 9-18 (1997); Burton et al., Advances in Immunology, 57: 191-280 (1994);国際公開番号WO92/01047;国際公開番号WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;ならびに米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号;および第5,969,108号に開示されているものを含む。
【0156】
上記の引用文献の記載に従って、例えば以下に詳細に説明されているように、ファージ選択後、ファージからの抗体コード領域を単離し、ヒト抗体もしくは任意の他の所望の抗原結合フラグメントを含む全長抗体を作製するために用い、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含む任意の所望の宿主中で発現させることができる。当該技術分野で公知の方法、例えば、国際公開番号WO92/22324; Mullinax et al., BioTechniques, 12(6): 864-869 (1992); Sawai et al., Am. J. Reprod. Immunol., 34: 26-34 (1995);およびBetter et al., Science, 240: 1041-1043 (1988) に開示された方法を用い、例えば、Fab、Fab'およびF(ab')2フラグメントを組換えによって産生する技術を用いることもできる。一本鎖Fvおよび抗体を産生するために用いることができる技術の例は、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号; Huston et al., Methods in Enzymology, 203: 46-88 (1991); Shu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7995-7999 (1993); and Skerra et al., Science, 240: 1038-1041 (1988)に記載されているものを含む。
【0157】
ファージディスプレイ法による組換え抗体ライブラリーのスクリーニングに代わる選択肢として当該技術分野で公知の他の方法を、本発明の抗体の同定に使用することができる。代替発現系のタイプの1つは、国際公開番号WO98/31700(Szostak and Roberts)およびRoberts and Szostak、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94: 12297-12302 (1997) の記載に従って、組換え抗体ライブラリーがRNAタンパク質融合体として発現されるものである。この系において、3'末端にペプチドアクセプター(peptidyl acceptor)抗生物質であるピューロマイシンを有する合成mRNAのin vitro翻訳によって、共有結合融合体は、mRNAおよびそれがコードするペプチドもしくはタンパク質の間に形成される。従って、コードされるペプチドまたはタンパク質、例えば抗体の特性、例えば抗体またはその部分の二重特異性抗原への結合に基づいて、mRNAの複雑な混合物(例えばコンビナトリアルライブラリー)から特定のmRNAを富化することができる。このようなライブラリーのスクリーニングから回収された、抗体またはその部位をコードする核酸配列は、前述の組換え手段によって(例えば哺乳動物宿主細胞において)発現することができ、さらに、変異が元の選択配列(単数または複数)に導入されたmRNA-ペプチド融合体のスクリーニングのさらなるラウンドかまたは、前述の組換え抗体のin vitro親和性成熟についての他の方法のいずれかによって、さらなる親和性成熟に供することができる。この方法論の好ましい例は、PROfusionディスプレイ技術である。
【0158】
他のアプローチにおいて、本発明の抗体は、当該技術分野で公知の酵母ディスプレイ法を用いて作製することもできる。酵母ディスプレイ法において、抗体ドメインを酵母細胞壁につなぎ、それらを酵母の表面にディスプレイする遺伝学的手法が用いられる。特に、このような酵母は、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えばヒトまたはマウス)から発現される抗原結合性ドメインをディスプレイするために用いることができる。本発明の抗体の製造に用いることができる酵母ディスプレイ法の例は、米国特許第6,699,658号(Wittrup et al.)(参照により本願に組み込まれる)に開示されているものを含む。
【0159】
f.組換えCFH抗体の産生
本発明の抗体は組換え抗体であることができ、当該技術分野で公知のいくつかの技術のいずれかによって製造することができる。例えば、H鎖およびL鎖をコードする発現ベクター(単数または複数)が標準法によって宿主細胞にトランスフェクトされる、宿主細胞からの発現である。用語“トランスフェクション”の種々の方式は、原核または真核宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に用いられるさまざまな技術、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAEデキストラン形質転換などを含むものとする。原核宿主細胞または真核宿主細胞のいずれにおいても、本発明の抗体を発現させることは可能ではあるが、真核細胞における抗体の発現が好ましく、哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。なぜなら、このような真核細胞(および特に哺乳動物細胞)は、正しく折りたたまれ、免疫学的に活性な抗体をアセンブルし、分泌するためには、原核細胞よりもより好ましいからである。
【0160】
本発明の組換え抗体を発現するための例示的な哺乳動物宿主細胞は、例えばKaufman and Sharp, J. Mol. Biol., 159: 601-621 (1982) の記載に従ってDHFR選択マーカーと共に用いるチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4216-4220 (1980) に記載されているdhfr-CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されるとき、宿主細胞内での抗体の発現を可能にするのに十分な期間、より好ましくは、宿主細胞が生育する培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって抗体が産生される。標準的なタンパク質精製方法を用いて、培地から抗体を回収することができる。
【0161】
宿主細胞は、機能性抗体フラグメント、例えばFabフラグメントまたはscFv分子を産生させるために用いることもできる。当然のことながら、上記手順の変形は本発明の範囲内である。例えば、本発明の抗体のL鎖および/またはH鎖のいずれかの機能性フラグメントをコードするDNAで宿主細胞をトランスフェクトすることが望ましい場合がある。組換えDNA技術は、目的とする抗原への結合に必要ではないL鎖およびH鎖の一方または両方をコードするDNAの一部または全部を除去するために用いることもできる。このような短縮型DNA分子から発現される分子もまた、本発明の抗体に含まれる。さらに、標準的な化学的架橋方法を用い、本発明の抗体と第2抗体とを架橋させることによって、あるH鎖とL鎖が本発明の抗体であり(すなわちヒトCFHに結合し)、もう1つのH鎖とL鎖がヒトCFH以外の抗原に特異的である二機能性抗体を産生させることができる。
【0162】
本発明の抗体またはその抗原結合部分の好ましい発現系において、リン酸カルシウム法によるトランスフェクションによって、抗体H鎖と抗体L鎖の両方をコードする組換え発現ベクターがdhfr-CHO細胞に導入される。該組換え発現ベクター内では、遺伝子の高レベルの転写を促進させるために、抗体H鎖およびL鎖遺伝子は、それぞれ、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節因子に作動可能に連結されている。該組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を用いて、該ベクターにトランスフェクトされたCHO細胞を選択することを可能にするDHFR遺伝子を有する。選択された形質転換宿主細胞は、該抗体のH鎖およびL鎖を発現させるために培養され、その培地から無傷の抗体が回収される。標準的な分子生物学技術を用いて、組換え発現ベクターを作製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換細胞を選択し、宿主細胞を培養し、その培地から抗体を回収する。さらにまた、本発明は、本発明の組換え抗体が合成されるまで、適切な培地中で本発明の宿主細胞を培養することによる、本発明の組換え抗体の合成方法を提供する。本方法はさらに、培地から組換え抗体を単離することを含むことができる。
【0163】
ヒト化抗体
ヒト化抗体は、目的とする抗原に免疫特異的に結合し、実質的にヒト抗体のアミノ酸配列を有するフレームワーク(FR)領域ならびに実質的に非ヒト抗体のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)を含む抗体またはそのバリアント、誘導体、アナログもしくは部分であることができる。ヒト化抗体は、非ヒト種からの1以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する所望の抗原に結合する非ヒト種抗体からのものであることができる。
【0164】
本明細書において、CDRとの関係において、用語“実質的に”とは、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するCDRのことをいう。ヒト化抗体は、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリン(すなわちドナー抗体)のCDR領域に一致し、フレームワーク領域の全部または実質的に全部がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域に一致する、少なくとも1つ、一般的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab'、F(ab')2、FabC、Fv)の実質的に全部を含む。一側面によれば、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、L鎖ばかりでなく、少なくともH鎖の可変ドメインの両方を含む。該抗体はまた、H鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4領域を含むこともできる。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化L鎖のみを含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化H鎖のみを含む。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、L鎖および/またはH鎖のヒト化可変ドメインのみを含む。
【0165】
該ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラスならびに、限定するものではないがIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のアイソタイプから選択されることができる。該ヒト化抗体は、2以上のクラスまたはアイソタイプからの配列を含むことができ、特定の定常ドメインは、当該分野で公知の技術を用いて所望のエフェクター機能を最適化するために選択されることができる。
【0166】
ヒト化抗体のフレームワーク領域およびCDR領域は、親配列に正確に一致する必要はなく、例えば、ドナー抗体のCDRまたはコンセンサスフレームワークは、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入および/または欠失によって、その部位におけるCDRまたはフレームワーク残基が、ドナー抗体またはコンセンサスフレームワークのいずれかに一致しないように変異させることができる。しかしながら、一実施形態において、このような変異は大規模ではない。通例、ヒト化抗体残基の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%が親FRおよびCDR配列の残基と一致する。本明細書において、用語“コンセンサスフレームワーク”とは、コンセンサス免疫グロブリン配列におけるフレームワーク領域のことをいう。本明細書において、用語“コンセンサス免疫グロブリン配列”とは、関連免疫グロブリン配列のファミリーにおいて最も頻繁に見出されるアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列のことをいう(例えば、Winnaker, From Genes to Clones (Verlagsgesellschaft, Weinheim, Germany 1987)を参照のこと)。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列における各位置は、そのファミリーにおけるその位置において最も頻繁に見出されるアミノ酸によって占められる。2つのアミノ酸が同等に見出される場合は、いずれもそのコンセンサス配列に含めることができる。
【0167】
該ヒト化抗体は、ヒトレシピエントにおけるげっ歯類抗ヒト抗体の治療用途の持続期間および有効性を限定する、これらの部分に対する好ましくない免疫応答を最小限にするために設計されることができる。該ヒト化抗体は、非ヒト起源のものに1以上のアミノ酸残基を導入したものであることができる。これらの非ヒト残基は、多くの場合、“輸入”残基と呼ばれ、一般的にはそれは可変ドメインから採られる。ヒト化は、対応するヒト抗体の配列に超可変領域配列を置換することによって行うことができる。従って、このような“ヒト化”抗体は、実質的に無傷ではないヒト可変ドメインが非ヒト種からの対応する配列によって置換されたキメラ抗体である。例えば、米国特許第4,816,567号(その内容は参照により本願に組み込まれる)を参照のこと。該ヒト化抗体は、いくつかの超可変領域残基、および場合によりいくつかのFR残基が、げっ歯類抗体における類似した部位からの残基によって置換されたヒト抗体であることができる。本発明の抗体のヒト化または工学は、任意の公知の方法、例えば限定するものではないが、米国特許第5,723,323号;第5,976,862号;第5,824,514号;第5,817,483号;第5,814,476号;第5,763,192号;第5,723,323号;第5,766,886号;第5,714,352号;第6,204,023号;第6,180,370号;第5,693,762号;第5,530,101号;第5,585,089号;第5,225,539号;および第4,816,567号に記載の方法を用いて実施することができる。
【0168】
該ヒト化抗体は、CFHに対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を保持することができる。該ヒト化抗体は、親配列および、親およびヒト化配列の三次元モデルを用いた種々の概念上のヒト化産品の分析のプロセスによって製造することができる。三次元免疫グロブリンモデルが一般に入手可能である。選択された免疫グロブリン候補配列の予想される三次元立体配座構造を図示し表示するコンピュータプログラムが入手可能である。これらの表示を観察することによって、免疫グロブリン候補配列の官能基化における残基の推定される役割の分析、すなわち、その抗原に結合する免疫グロブリン候補の能力に影響する残基の分析が可能になる。このようにして、所望の抗体特性、例えばCFHに対する親和性の増加が達成されるように、FR残基を選択し、レシピエントおよび輸入配列から組み合わせることができる。一般に、超可変領域残基は、直接的にかつ最も実質的に抗原結合性への影響に関与することができる。
【0169】
ヒト化に代わるものとして、ヒト抗体(本明細書においては“完全ヒト抗体”とも呼ぶ)を作製することができる。例えば、PROfusionおよび/または酵母関連技術によるライブラリーからヒト抗体を単離することが可能である。関連性のある抗体、配列を産生する患者からの抗体産生B細胞を単離し、次いで免疫グロブリンをクローニングすることもまた可能である。トランスジェニック動物(例えば免疫化によって、内因性免疫グロブリンを産生せずにヒト抗体の完全レパートリーを産生することが可能なマウス)を製造することもまた可能である。例えば、キメラおよび生殖系列変異マウスにおける抗体H鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生の完全な抑制をもたらす。このような生殖系列変異マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの導入は、抗原チャレンジに対するヒト抗体の産生をもたらすであろう。ヒト化抗体または完全ヒト抗体は、米国特許第5,770,429号;第5,833,985号;第5,837,243号;第5,922,845号;第6,017,517号;第6,096,311号;第6,111,166号;第6,270,765号;第6,303,755号;第6,365,116号;第6,410,690号;第6,682,928号;および第6,984,720号に記載の方法に従って製造することができる(それぞれの内容は参照により本願に組み込まれる)。
【0170】
g.小分子
C3bに対するCFH結合を阻害するために、CFHの標的領域に対する阻害薬として小分子を用いることができる。該小分子は、酵素の基質または生物過程の調節剤として役立つことができる、低分子量、例えば、800ダルトン未満の有機または無機化合物であることができる。該小分子は、1nm未満のサイズを有することができる。該小分子は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ジヌクレオチド、アミノ酸、ペプチド、単糖および二糖を含むことができる。
【0171】
3.医薬組成物
CFH阻害薬、例えば抗CFH抗体を、医薬組成物の成分とすることができる。該医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。本発明のCFH阻害薬を含む医薬組成物は、限定するものではないが、疾患の診断、検出もしくはモニタリング、疾患もしくはその1以上の症状の抑制、治療、管理もしくは緩和ならびに/または研究に使用するためのものである。特定の実施形態において、該組成物は本発明の1以上のCFH阻害薬を含む。他の実施形態において、該医薬組成物は、標的CFHの活性が有害である疾患を治療するための、本発明の1以上のCFH阻害薬および、本発明のCFH阻害薬以外の1以上の予防または治療薬を含む。他の実施形態において、該予防または治療薬は、疾患もしくはその1以上の症状の予防、治療、管理もしくは改善に有用であるか、それに使用されてきたか、または現在それに使用されていることが知られている。これらの実施形態によれば、該組成物は、さらに、担体、希釈剤または賦形剤を含むことができる。
【0172】
本発明のCFH阻害薬、例えば抗CFH抗体は、被験者への投与に適した医薬組成物に組み込まれることができる。一般的には、該医薬組成物は、本発明のCFH阻害薬および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において、”薬学的に許容される担体”は、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどならびにそれらの組み合わせの1以上を含む。多くの場合、該組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール例えばマンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムが含有されるのが好ましいであろう。薬学的に許容される担体は、CFH阻害薬の保存期限または有効性を増加させるための少量の補助物質、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤または緩衝液をさらに含むことができる。
【0173】
例えばリポソームへのカプセル化、ミクロ粒子、マイクロカプセル、CFH阻害薬を発現することができる組換え細胞、受容体依存性エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu, J. Biol. Chem. 262:4429-4432 (1987) を参照のこと)、レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部としての核酸の構築などの種々のデリバリーシステムが公知であり、本発明の1以上のCFH阻害薬または、本発明の1以上のCFH阻害薬と、疾患またはその1以上の症状の予防、管理、治療もしくは緩和に有用な予防薬もしくは治療薬との組み合わせを投与するのに用いることができる。本発明の予防または治療薬を投与する方法は、限定するものではないが、非経口投与(例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下)、硬膜外投与、腫瘍内投与ならびに粘膜投与(例えば鼻腔内および経口経路)を含む。さらに、例えば、吸入器またはネブライザーおよびエアゾール噴霧剤含有製剤の使用による経肺投与を用いることができる。例えば米国特許第6,019,968号;第5,985,320号;第5,985,309号;第5,934,272号;第5,874,064号;第5,855,913号;第5,290,540号;および第4,880,078号;ならびに国際公開番号WO92/19244;WO97/32572;WO97/44013;WO98/31346;およびWO99/66903を参照のこと(そのそれぞれは参照により本願に組み込まれる)。一実施形態において、本発明のCFH阻害薬または本発明の組成物は、Alkermes AIR(登録商標)経肺ドラッグデリバリー技術(Alkermes社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)を用いて投与される。特定の実施形態において、本発明の予防または治療薬は、筋肉内、静脈内、腫瘍内、経口、鼻腔内、経肺または皮下に投与される。該予防または治療薬は、任意の適切な経路、例えば、輸液もしくはボーラス注射および、上皮または皮膚粘膜被覆細胞(例えば口腔粘膜、直腸内粘膜および腸粘膜など)を介した吸収によって投与することができ、さらに、他の生物活性剤と共に投与することができる。投与は全身または局所であることができる。
【0174】
特定の実施形態において、治療を必要とする部位に局所的に本発明のCFH阻害薬を投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、限定を意図するものではないが、注射またはインプラントの手段による局所注入によって達成することができる。前記インプラントは、膜およびマトリックス、例えばシアラスティック(sialastic)膜、ポリマー、繊維性マトリックス(例えばTissuel(登録商標))またはコラーゲンマトリックスを含む多孔質または非多孔質材料であることができる。一実施形態において、疾患またはその症状を予防、治療、管理および/または改善するために、本発明の1以上のCFH阻害薬の有効量が被験者の患部に局所投与される。
【0175】
他の実施形態において、該CFH阻害薬は、徐放性または持続放出システムによって送達されることができる。一実施形態において、徐放性または持続放出を達成するためにポンプを使用することができる(Langer(前出);Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:20; Buchwald et al., 1980, Surgery 88:507; Saudek et al., 1989, N. Engl. J. Med. 321:574 を参照のこと)。他の実施形態において、本発明の治療のための徐放性または持続放出を達成するためにポリマー材料を用いることができる(例えば、Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Fla. (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, 1983, J., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61; 同様に、Levy et al., 1985, Science 228:190; During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 7 1:105;米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号;米国特許第5,912,015号;米国特許第5,989,463号;米国特許第5,128,326号;国際公開番号WO99/15154;および国際公開番号WO99/20253を参照のこと。持続放出製剤に用いられるポリマーの例は、限定するものではないが、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)およびポリオルトエステルを含む。特定の実施形態において、持続放出製剤に用いられるポリマーは、不活性であり、浸出物がなく、貯蔵に安定であり、滅菌されており、生体内分解性である。さらに他の実施形態において、徐放性または持続放出システムは、予防または治療標的の近傍に配置することができ、従って全身投与の一部しか必要としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release、(上記)、vol. 2, pp. 115-138 (1984) を参照のこと)。
【0176】
徐放性システムは、Langer(1990,Science249:1527-1533)による概説で説明されている。本発明の1以上のCFH阻害薬を含む持続放出製剤を製造するために、当業者に公知の任意の技術を用いることができる。例えば米国特許第4,526,938号、国際公開番号WO91/05548、国際公開番号WO96/20698、Ning et al., 1996, "Intratumoral Radioimmunotherapy of a Human Colon Cancer Xenograft Using a Sustained-Release Gel," Radiotherapy &Oncology 39:179-189; Song et al., 1995, "Antibody Mediated Lung Targeting of Long-Circulating Emulsions," PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 50:372-397; Cleek et al., 1997, "Biodegradable Polymeric Carriers for a bFGF Antibody for Cardiovascular Application," Pro. Int'l. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater. 24:853-854;およびLam et al., 1997, "Microencapsulation of Recombinant Humanized Monoclonal Antibody for Local Delivery," Proc. Int'l. Symp. Control Rel. Bioact. Mater. 24:759-760 を参照のこと(それぞれは、参照により本願に組み込まれる)。
【0177】
本発明の医薬組成物は、その対象とする投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例は、限定するものではないが、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口、鼻腔内(例えば吸入)、経皮(例えば局所)、経粘膜およびお直腸投与を含む。特定の実施形態において、組成物は、ヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内、または局所投与に適合した医薬組成物として、常法に従って製剤化される。一般的には、静注のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液溶液である。必要ならば、該組成物は可溶化剤および、注射部位における痛みを緩和するための局所麻酔薬、例えばリグノカインを含有することもできる。
【0178】
本発明の組成物が局所投与される場合、該組成物は軟膏、クリーム、経皮パッチ、ローション、ゲル、シャンプー、スプレー、エアゾール、溶液、エマルションの形態または当業者に公知の他の形態で製剤化することができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences and Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 19th ed., Mack Pub. Co., Easton, Pa. (1995) を参照のこと。非スプレー局所剤形のために、一般的には、局所投与と適合する担体または1以上の賦形剤を含み、水を超える動粘度を有する粘性固体から半固体または固体が用いられる。適切な製剤は、限定するものではないが、必要に応じて、滅菌され、種々の特性、例えば浸透圧などに影響を与える助剤(例えば防腐剤、安定剤、湿潤剤、緩衝液または塩)と混合された溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、軟膏、粉末剤、リニメント剤、軟膏などを含む。他の適切な局所剤形は、例えば固体または液体の不活性担体と組み合わせされた活性成分が、加圧された揮発性物質(例えばガス状噴射剤、例えばフレオン)との混合物でパッケージングされるか、またはスクイーズ・ボトルでパッケージングされるスプレー(エアゾール)製剤を含む。必要に応じて、医薬組成物および剤形にモイスチャライザーまたは湿潤剤を添加することもできる。
【0179】
本発明の方法が組成物の鼻腔内投与を含む場合、該組成物は、エアゾール形、スプレー、ミストまたは滴剤の形態で製剤化することができる。特に、本発明の使用のための予防または治療薬は、好都合には、適切な噴射剤(例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロ-フルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を用いて、加圧した容器またはネブライザーからエアゾールスプレータイプで送達することができる。加圧エアゾールの場合は、投与単位は、所定量を送達するためのバルブを提供することによって測定することができる。該化合物と、適切な粉末基剤、例えばラクトースまたはデンプンとの粉末混合物を含む、吸入器または吹き入れ器に使用するためのカプセルおよびカートリッジ(例えばゼラチンで構成された)を製剤化することができる。
【0180】
本発明の方法が経口投与を含む場合、組成物は、錠剤、カプセル、カシェ剤、ジェルカップ、溶液、懸濁液などの経口剤型で製剤化することができる。錠剤またはカプセルは、薬学的に許容される賦形剤、例えば結合剤(例えばアルファー化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えばラクトース、微結晶セルロースもしくはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルクもしくはシリカ);崩壊剤(例えばポテトスターチもしくはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)を用いる慣用法によって製造することができる。該錠剤は、当該分野で公知の方法によってコーティングされることができる。経口投与のための液体製剤は、限定するものではないが、溶液、シロップまたは懸濁液の形態であることもできるし、使用前に水または他の適切なビヒクルで構成されるための乾燥製品として提供されることもできる。このような液体製剤は、薬学的に許容される添加剤、例えば縣濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体もしくは食用硬化油);乳化剤(例えばレシチンもしくはアカシアゴム);非水性ビヒクル(例えばアーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコールもしくは分留植物油);および防腐剤(例えばメチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸)を用いる慣用法によって製造することができる。該製剤は、必要に応じて、緩衝塩、風味剤、着色剤および甘味剤を含有することもできる。経口投与のための製剤は、予防薬または治療薬(単数または複数)の遅延放出、徐放性または持続放出のために適切に製剤化されることができる。
【0181】
本発明の方法は、例えば吸入器またはネブライザーの使用による、エアゾール噴霧剤を用いて製剤化した組成物の経肺投与を含むことができる。例えば米国特許第6,019,968号;第5,985,320号;第5,985,309号;第5,934,272号;第5,874,064号;第5,855,913号;第5,290,540号;および第4,880,078号;ならびに国際公開番号WO92/19244;WO97/32572;WO97/44013;WO98/31346;およびWO99/66903を参照のこと(それぞれは、参照により本願に組み込まれる)。特定の実施形態において、本発明のCFH阻害薬および/または本発明の組成物は、Alkermes AIR(登録商標)経肺ドラッグデリバリー技術(Alkermes社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)を用いて投与される。
【0182】
本発明の方法は、注射による(例えばボーラス注射または持続注入による)非経口投与のために製剤化された組成物の投与を含むことができる。注射剤は、添加された防腐剤を含む単位剤形(例えばアンプルまたは複数回量容器)で提供されることができる。該組成物は、油性または水性ビヒクルによる懸濁液、溶液またはエマルションとしてこのような形態をとることができ、製剤用薬剤、例えば縣濁化剤、安定化剤および/または分散剤を含有することができる。あるいはまた、該活性成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば滅菌パイロジェンフリー水)で構成されるための粉末形であることができる。本発明の方法は、さらに、デポ剤として製剤化された組成物の投与を含むことができる。このような持続性製剤は、移植(例えば皮下もしくは筋肉内)または筋注によって投与されることができる。従って、例えば、該組成物は、適切なポリマーもしくは疎水性物質(例えば許容されるオイルのエマルションとして)またはイオン交換樹脂を用いて、あるいはわずかしか溶けない誘導体(例えば難溶性塩)として製剤化されることができる。
【0183】
本発明の方法は、中性形または塩形で製剤化された組成物の投与を含む。薬学的に許容される塩は、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するアニオンとで形成される塩ならびに、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するカチオンとで形成される塩を含む。
【0184】
一般に、組成物の成分は、例えばアンプルまたは活性薬の量を示すサシェなどの密封容器中の乾燥した凍結乾燥粉末もしくは無水濃縮物として、別々に、または混合された単位剤形で提供される。投与方法が注入の場合、滅菌医薬品グレードの水または生理食塩水を含む注入ボトルに組成物を分注することができる。投与方法が注射の場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0185】
特に、本発明はまた、本発明のCFH阻害薬または医薬組成物の1以上が、アンプルまたは、CFH阻害薬の量を示すサシェなどの密封容器中にパッケージングされたものを提供する。一実施形態において、本発明のCFH阻害薬または医薬組成物の1以上は、密封容器中の乾燥した凍結乾燥粉末もしくは無水濃縮物として提供され、これは被験者への投与のために適切な濃度に再構成(例えば水または生理食塩水で)されることができる。一実施形態において、本発明のCFH阻害薬または医薬組成物の1以上は、少なくとも5mg、例えば少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mgまたは少なくとも100mgの投薬単位で、密封容器中の乾燥した滅菌凍結乾燥粉末として提供される。本発明の凍結乾燥CFH阻害薬または医薬組成物は、その元の容器中、2℃〜8℃で貯蔵されなければならない。また、本発明のCFH阻害薬または医薬組成物は、再構成後、1週間以内に、例えば5日間以内、72時間以内、48時間以内、24時間以内、12時間以内、6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内に投与されなければならない。別の実施形態において、本発明のCFH阻害薬または医薬組成物の1以上は、CFH阻害薬の量および濃度を示す密封容器中に液体形で提供される。他の実施形態において、投与される組成物の液体形は、密封容器中、少なくとも0.25mg/mlで、例えば少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/mlまたは少なくとも100mg/mlで提供される。液体形は、その元の容器中、2℃〜8℃で貯蔵されなければならない。
【0186】
本発明のCFH阻害薬は、非経口投与に適した医薬組成物に組み込まれることができる。一側面において、CFH阻害薬は、CFH阻害薬0.1〜250mg/mlを含有する注射液として調製される。注射液は、フリントバイアル、アンバーバイアル、アンプルまたはプレフィルドシリンジ中、液体または凍結乾燥剤形のいずれかで構成されることができる。緩衝液は、最適には5〜10mM、pH5.0〜7.0(最適にはpH6.0)のL-ヒスチジン(1〜50mM)であることができる。他の適切な緩衝液は、限定するものではないが、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムを含む。溶液の張度を0〜300mMの濃度(最適には液体剤形には150mM)に調節するために塩化ナトリウムを用いることができる。主としてショ糖0〜10%(最適には0.5〜1.0%)の凍結防止剤を凍結乾燥剤形に含有させることができる。他の適切な凍結防止剤はトレハロースおよびラクトースを含む。主としてマンニトール1〜10%(最適には2〜4%)の増量剤を凍結乾燥剤形に含有させることができる。主としてL-メチオニン1〜50mM(最適には5〜10mM)の安定剤を、液体および凍結乾燥剤形の両方に用いることができる。他の適切な増量剤は、グリシン、アルギニンを含み、ポリソルベート80(0〜0.05%)(最適には0.005〜0.01%)として含有されることができる。さらなる界面活性剤は、限定するものではないが、ポリソルベート20およびBRIJ界面活性剤を含む。非経口投与のための注射液として調製される本発明のCFH阻害薬を含む医薬組成物は、アジュバント、例えばCFH阻害薬の吸収または分散を増強するために用いられるアジュバントとして有用な薬剤をさらに含むことができる。特に有用なアジュバントは、ヒアルロニダーゼ、例えばHylenex(登録商標)(組換えヒトヒアルロニダーゼ)である。注射液へのヒアルロニダーゼの添加によって、非経口投与、特に皮下投与後のヒトバイオアベイラビリティーが改善される。これはまた、痛みおよび不快を低下させ、注射部位反応の発生率を最小にしながら、より多量の(すなわち1mlを超える)注射部位量を可能にする(国際公開WO04/078140および米国特許出願公開第US2006104968号(参照により本願に組み込まれる))。
【0187】
本発明の組成物は、種々の形態であることができる。これらには、例えば、液体、半固体および固体剤形、例えば液体溶液(例えば注射用および注入用溶液)、分散剤または懸濁液、錠剤、ピル、粉末剤、リポソームならびに座剤が含まれる。好ましい形態は、所期の投与方法および治療用途によって決まる。組成物は、例えば他のCFH阻害薬でのヒトの受動免疫化に用いられるものと類似した組成物である注射用または注入用溶液の形態であることができる。一実施形態において、CFH阻害薬は静脈内注入または注射によって投与される。他の実施形態において、CFH阻害薬は筋肉内または皮下注射によって投与される。
【0188】
治療用組成物は、一般的には、滅菌され、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならない。該組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散剤、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の規則構造として製剤化されることができる。滅菌注射液は、必要に応じて、上記の成分の1つまたはその組み合わせと共に活性化合物(すなわち本発明のCFH阻害薬)の必要量を適切な溶媒中に組み込み、次いで濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散剤は、基礎分散媒および、上記の成分からの所望の他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射液の製造のための滅菌凍結乾燥粉末の場合は、製造方法は、任意のさらなる所望の成分を加えた活性成分の前もって無菌濾過した溶液から粉末を調製する真空乾燥および噴霧乾燥を含む。溶液の適当な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンの使用と、分散剤における所望の粒径の維持と、界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の持続吸収は、該組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含有させることによってもたらすことができる。
【0189】
本発明のCFH阻害薬は、当該技術分野で公知の種々の方法によって投与されることができる。多くの治療用途に関して、経路/投与方法は皮下注射、静脈内注射または注入であることができる。当業者には明らかなように、経路および/または投与方法は、所望の結果に基づいて変わるであろう。特定の実施形態において、例えばインプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む徐放性製剤などのように、活性化合物は、急速な放出に対して化合物を保護する担体と共に調製されることができる。生体内分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を用いることができる。このような製剤の製造のための多くの方法に特許が与えられており、これらは一般に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978 を参照のこと。
【0190】
特定の実施形態において、例えば、不活性希釈剤または同化性可食担体を含有する本発明のCFH阻害薬は経口投与することができる。該CFH阻害薬(および必要に応じて他の成分)は、硬または軟シェルゼラチンカプセル中に封入することもできるし、錠剤に圧縮することもできるし、被験者の食事に直接に組み入れることもできる。経口治療投与のために、該CFH阻害薬は、賦形剤と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、頬内錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハーなどの形態で用いられることができる。非経口投与以外により本発明のCFH阻害薬を投与するために、CFH阻害薬をコーティングするか、または該CFH阻害薬を、その不活化を防ぐ物質と共に投与することが必要な場合がある。
【0191】
特定の実施形態において、本発明のCFH阻害薬は、当該技術分野で公知の半減期延長ビヒクルに結合される。このようなビヒクルは、限定するものではないが、Fcドメイン、ポリエチレングリコールおよびデキストランを含む。このようなビヒクルは、例えば米国特許出願第09/428,082号および国際特許出願公開WO99/25044に記載されている(目的に応じて、参照により本願に組み込まれる)。
【0192】
該医薬組成物は、CFH阻害薬の“治療的有効量”または“予防的有効量”を含むことができる。“治療的有効量”とは、所望の治療結果を得るために必要な用量および期間で有効な量のことをいう。Cは、該CFH阻害薬の治療的有効量を決定することができ、多くの因子、例えば病状、年齢、性別および個体の体重ならびにその個体において所望の応答を誘発する該CFH阻害薬の能力に応じて変えることができる。治療的有効量はまた、該CFH阻害薬の何等かの毒性または有害な影響よりも有益な治療効果がまさる場合の有効量でもある。“予防的有効量”とは、所望の予防結果を得るために必要な用量および期間で有効な量のことをいう。一般的には、予防用量は、被験者において疾患の前または早期に用いられるため、予防的有効量は治療的有効量よりも少ない。
【0193】
用法・用量は、最適の所望の応答(例えば治療または予防応答)を得るために調整することができる。例えば、単回ボーラス投与することもできるし、経時的に数回の分割量で投与することもできるし、治療状況の緊急性に応じて、用量を比例的に減少または増加させることもできる。非経口組成物を投与単位形で製剤化することは、投与の容易さと用量の均一性のために特に有利である。本明細書において、投与単位形とは、治療を受ける哺乳動物被験者のための単位投与量(所望の医薬担体と共同して所望の治療効果を生むように算出された活性化合物の所定量を含む各単位)に適した物理的に分離した単位のことをいう。投与単位形の仕様書は、(a)その活性化合物の固有の特性および達成される特定の治療または予防効果、ならびに(b)個体における感受性に応じて治療するためにこのような活性化合物を混合する当該技術分野における固有の限界、によって規定され、直接的に左右される。
【0194】
例示的な、限定するものではない該CFH阻害薬の治療的または予防的有効量の範囲は、0.1〜200mg/kg、例えば0.1〜10mg/kgの用量である。該CFH阻害薬の治療的または予防的有効量は、1〜200mg/kg、10〜200mg/kg、20〜200mg/kg、50〜200mg/kg、75〜200mg/kg、100〜200mg/kg、150〜200mg/kg、50〜100mg/kg、5〜10mg/kgまたは1〜10mg/kgであることができる。用量値は、緩和される疾患のタイプおよび重症度によって変えることができるということも注意すべきである。さらにまた、当業者は該CFH阻害薬の用量を決定することができ、因子、例えば病状、年齢、性別および個体の体重ならびにその個体において所望の応答を誘発する該CFH阻害薬の能力に応じて変えることができる。該用量はまた、該CFH阻害薬の何等かの毒性または有害な影響よりも有益な治療効果がまさる場合の有効量でもある。特定の被験者に関する特定の用法・用量は、その個体の必要性および、組成物を投与するかまたは投与を管理する人間の専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであり、また本明細書において示した投与量範囲は単に例示であって、請求された組成物の範囲または実施を限定しようとするものではないことがさらに理解されなければならない
【0195】
CFH検出
本発明はまた、異なるCFHまたはCFHエピトープの還元型に結合する前述の抗CFH抗体を用いる、試料中のCFHまたはCFHの還元型を検出し、測定する方法に関する。該方法は、前述の単離された抗体または抗体フラグメントと試料とを接触させることを含む。
【0196】
イムノアッセイ
CFHおよびCFHの還元型ならびに/またはそれらのペプチドもしくはフラグメント、すなわちCFHおよびCFHフラグメントの還元型は、イムノアッセイにおいて、前述の抗体を用いて分析することができる。CFHまたはCFHの還元型の存在または量は、抗体を用い、CFHまたはCFHの還元型への特異的結合を検出することによって測定することができる。例えば、該抗体またはその抗体フラグメントは、CFHまたはCFHの還元型に特異的に結合することができる。必要に応じて、1以上の市販のモノクローナル/ポリクローナル抗体と組み合わせて、該抗体の1以上を用いることができる。このような抗体は、会社、例えばR&D Systems社(ミネアポリス、ミネソタ州)およびEnzo Life Sciences International社(プリマスミーティング、ペンシルベニア州)から入手できる。
【0197】
生体試料中に存在するCFHまたはCFHの還元型の存在または量は、イムノアッセイ、例えばサンドイッチイムノアッセイ(例えば放射性同位体検出(ラジオイムノアッセイ(RIA))を含む、例えばモノクローナル-ポリクローナルサンドイッチイムノアッセイ)および酵素検出(エンザイムイムノアッセイ(EIA)または酵素免疫抗体法(ELISA)(例えばQuantikine ELISAアッセイ、R&D Systems社、ミネアポリス、ミネソタ州))を用いて容易に決定されることができる。化学発光ミクロ粒子イムノアッセイ、特にARCHITECT(登録商標)自動分析装置(Abbott Laboraties社、アボットパーク、イリノイ州)を用いるものは、好ましいイムノアッセイの1例である。他の方法は、例えば、質量分析法および、CFH抗体(モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、ヒトなど)またはCFHに対するその抗体フラグメントを用いる免疫組織化学(例えば組織生検からの断片を用いる)を含む。他の検出方法は、例えば、米国特許第6,143,576号;第6,113,855号;第6,019,944号;第5,985,579号;第5,947,124号;第5,939,272号;第5,922,615号;第5,885,527号;第5,851,776号;第5,824,799号;第5,679,526号;第5,525,524号;および第5,480,792号に記載されているものを含む(それぞれは、その全体が参照により本願に組み込まれる)。CFHに対する抗体の特定の免疫学的結合は、直接標識、例えば抗体に結合した蛍光性もしくは発光性タグ、金属および放射性核種、あるいは間接標識、例えばアルカリホスファターゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼによって検出することができる。
【0198】
治療方法
本明細書において、被験者における癌の治療方法が提供される。該方法は、それを必要とする被験者に、CFH阻害薬、例えば前述の抗CFH抗体または小分子を投与することを含むことができる。該CFH阻害薬は治療的有効量で投与されることができる。
【0199】
一般に、投与されるCFH阻害薬の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、一般健康状態および既往歴などの因子に応じて変えることができる。一般的には、CFH阻害薬成分、イムノコンジュゲートまたは融合タンパク質の、約1pg/kg〜10mg/kg(薬剤量/患者の体重)の範囲の用量をレシピエントに提供することが望ましいが、状況に応じてより低い用量またはより高い用量を投与することもできる。用法・用量は、所望される最適の応答(例えば治療または予防応答)を得るために調整することができる。例えば、単回でボーラス投与することもできるし、経時的に数回の分割量で投与することもできるし、治療状況の緊急性に応じて、用量を比例的に減少または増加させることもできる。非経口組成物を投与単位形で製剤化することは、投与の容易さと用量の均一性のために特に有利である。本明細書において、投与単位形とは、試験される哺乳動物被験者のための単位投与量(所望の医薬担体と共同して所望の治療効果を生むように算出された活性化合物の所定量を含む各単位)に適した物理的に分離した単位のことをいう。本発明の投与単位形の仕様書は、(a)その活性化合物の固有の特性および達成される特定の治療または予防効果、ならびに(b)個体における感受性に応じて治療するためにこのような活性化合物を配合する当該技術分野における固有の限界、によって規定され、直接的に左右される。
【0200】
例示的な、限定するものではない本発明のCFH阻害薬の治療的または予防的有効量の範囲は0.1〜20mg/kgであり、より好ましくは0.5〜10mg/kgである。用量値は、緩和される疾患のタイプおよび重症度によって変えることができるということも注意すべきである。特定の被験者に関する特定の用法・用量は、その個体の必要性および、組成物を投与するかまたはその投与を管理する人間の専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであること、また本明細書において示した投与量範囲は単に例示であって、請求された組成物の範囲または実施を限定しようとするものではないことがさらに理解されなければならない。
【0201】
患者へのCFH阻害薬の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸腔内、鞘内、眼内、水晶体内、局所カテーテルを用いた潅流または病変内直接注射によるものであることができる。注射によって治療用タンパク質を投与する場合、投与は持続注入または単回もしくは複数回ボーラスによるものであることができる。静脈内注射は、CFH阻害薬の急速な分布をもたらす完全な循環による有用な投与方法を提供する。CFH阻害薬は、例えば、不活性希釈剤または同化性可食担体と共に経口投与されることができる。該抗体および他の成分は、必要に応じて、硬または軟シェルゼラチンカプセル中に封入することもできるし、錠剤、頬内錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハーなどに圧縮することもできる。
【0202】
CFH阻害薬は、非経口で、一回投与または繰り返し投与で1用量当たり低タンパク質用量、例えばタンパク質20ミリグラム〜2グラムで投与されることができる。あるいはまた、CFH阻害薬は、1用量当たりタンパク質20〜1000ミリグラムまたは1用量当たりタンパク質20〜500ミリグラムまたは1用量当たりタンパク質20〜100ミリグラムの用量で投与されることができる。
【0203】
該CFH阻害薬は、単独で投与されることもできるし、リポソームに結合されることもできる。該CFH阻害薬はまた、該CFH阻害薬が薬学的に許容される担体との混合物に混合されている薬学的に有用な組成物を製造するために、公知の方法に従って製剤化されることもできる。レシピエント患者は、“薬学的に許容される担体”に認容性が良好であることができる。滅菌リン酸緩衝化生理食塩水は、薬学的に許容される担体の1例である。他の適切な担体は当業者に公知である。例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES、19th Ed. (1995) を参照のこと。
【0204】
治療目的では、CFH阻害薬は、薬学的に許容される担体に含まれる治療的有効量で患者に投与される。“治療的有効量”は、生理学的に有意な量である。該CFH阻害薬は、その存在が、レシピエント患者の生理学における検出可能な変化をもたらす。本文脈では、その存在が、例えば細胞の補体依存性溶解の増加、細胞へのC3b沈着および/またはC3bへのCFH結合の抑制をもたらす場合に、該CFH阻害薬は生理学的に有意であることができる。
【0205】
治療用途における抗体の作用の持続時間を調節するために、さらなる治療方法を用いることができる。徐放性製剤は、抗体複合体を形成させるかまたは抗体を吸着させるためのポリマーの使用によって製造することができる。例えば、生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)のマトリックスおよびステアリン酸二量体とセバシン酸のポリ無水物共重合体のマトリックスを含む。Sherwood et al., Bio/Technology 10:1446 (1992)。このようなマトリックスからの抗体の放出速度は、該タンパク質の分子量、マトリックス内の該抗体の量および分散粒子のサイズによって左右される。Saltzman et al., Biophys. J. 55:163 (1989); Sherwood et al.(前出)。他の固体剤形は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 19th ed. (1995) に記載されている。
【0206】
a. CFH抗体
本明細書に記載のCFH抗体は、腫瘍細胞、例えば肺癌細胞へのCFHの結合に干渉することができ、被験者における癌の治療に用いることができる。腫瘍細胞へのCFHの結合を干渉することによって、腫瘍細胞上のCFHの数が減少し、腫瘍細胞の補体依存性溶解が促進される。該CFH抗体は、肺癌細胞へのC3b沈着の増加をもたらすことができる。C3b沈着は、補体依存性細胞毒性(CDC)に必要であり、補体活性化の根拠としてしばしば利用される。
【0207】
該CFH抗体またはそのフラグメントの有効量を細胞に投与することができる。例えば、該CFH抗体またはそのフラグメントの有効量約1μg/mL〜約250μg/mL、約10μg/mL〜約250μg/mL、約25μg/mL〜約250μg/mL、約40μg/mL〜約250μg/mL、約45μg/mL〜約250μg/mL、約50μg/mL〜約250μg/mL、約60μg/mL〜約250μg/mL、約75μg/mL〜約250μg/mL、約100μg/mL〜約250μg/mL、約10μg/mL〜約200μg/mL、約25μg/mL〜約200μg/mL、約40μg/mL〜約200μg/mL、約45μg/mL〜約200μg/mL、約50μg/mL〜約200μg/mL、約60μg/mL〜約200μg/mL、約75μg/mL〜約200μg/mL、約100μg/mL〜約200μg/mL、約10μg/mL〜約150μg/mL、約25μg/mL〜約150μg/mL、約40μg/mL〜約150μg/mL、約45μg/mL〜約150μg/mL、約50μg/mL〜約150μg/mL、約60μg/mL〜約150μg/mL、約75μg/mL〜約150μg/mL、約100μg/mL〜約150μg/mL、約10μg/mL〜約120μg/mL、約25μg/mL〜約120μg/mL、約40μg/mL〜約120μg/mL、約45μg/mL〜約120μg/mL、約50μg/mL〜約120μg/mL、約60μg/mL〜約120μg/mL、約75μg/mL〜約120μg/mL、約100μg/mL〜約120μg/mL、約10μg/mL〜約100μg/mL、約25μg/mL〜約100μg/mL、約40μg/mL〜約100μg/mL、約45μg/mL〜約100μg/mL、約50μg/mL〜約100μg/mL、約60μg/mL〜約100μg/mLまたは約75μg/mL〜約100μg/mLを細胞に投与することができる。該CFH抗体はAb7960/293iまたはAb7968であることができる。
【0208】
b.癌
本明細書に記載の方法は、任意の種類の癌を有する被験者を治療するために用いることができる。該方法は、それを必要とする被験者に、CFH阻害薬、例えば前述の抗CFH抗体または小分子を投与することを含むことができる。癌は、防御機構としてCFHを利用する任意の癌であることができる。癌は、副腎皮質癌、肛門癌、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、カルチノイド腫瘍、原発巣が不明な消化器癌、子宮頚癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓外胆管癌、ユーイングファミリー腫瘍(PNET)、頭蓋外胚細胞腫瘍、眼内黒色腫眼癌、胆嚢癌、胃癌(腹部)、性腺外胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、頭頸部癌、下咽頭癌、島細胞癌、腎癌(腎細胞癌)、喉頭癌、急性リンパ性白血病、白血病、急性骨髄性、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、口唇癌および口腔癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、エイズ関連リンパ腫、中枢神経系(原発)リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病リンパ腫、非ホジキン病リンパ腫、悪性中皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、原発不明の転移性頸部扁平上皮癌、多発性骨髄腫および他の形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、脊髄増殖性疾患、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、上皮性卵巣癌、卵巣生殖細胞腫瘍、膵臓癌、外分泌腺、膵臓癌、島細胞癌、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、形質細胞腫瘍、前立腺癌、横紋筋肉腫、直腸癌、腎細胞癌(腎臓癌)、腎盂および尿管の移行上皮癌、唾液腺癌、セザリー症候群、皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、精巣癌、悪性胸腺腫、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、小児にはまれな癌、膣癌、外陰癌ならびにウイルムス腫瘍であることができる。
【0209】
(1)肺癌
本明細書に記載の方法は、肺癌を有する被験者の治療に用いることができる。該方法は、それを必要とする被験者に、CFH阻害薬、例えば前述の抗CFH抗体または小分子を投与することを含むことができる。肺癌は、小細胞肺癌(小細胞肺癌腫とも呼ばれる)ならびに燕麦細胞癌、非小細胞肺癌(“NSCLC”)、腺腫、カルチノイド腫瘍および/または未分化癌であることができる。
【0210】
(2)乳癌
本明細書に記載の方法は、乳癌を有する被験者の治療に用いることができる。該方法は、それを必要とする被験者に、CFH阻害薬、例えば前述の抗CFH抗体または小分子を投与することを含むことができる。乳癌は、乳房組織において生じる任意の癌であることができる。乳癌の2つの主要なタイプは、乳管癌(乳房から乳頭へ乳を移動させる管(導管)内で生じる)および小葉癌(小葉と呼ばれる、乳を産生する乳房の部分内で生じる)である。乳癌はまた、乳房の他の部位において生じることもできる。乳癌は、侵襲性であることもできるし,
非侵襲性であることもできる(in situ)。
【0211】
c.併用治療
前述の方法は、CFH阻害薬と他の薬物および/または他の通常の癌治療との併用治療を含むことができる。
【0212】
(1)併用薬物
該方法は、さらに、少なくとも1つの抗癌化合物または化学療法剤の有効量を投与することを含むことができる。該CFH阻害薬は、腫瘍細胞致死を増強させる、すなわち抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)および細胞媒介毒性を促進する抗癌薬または化学療法剤と併用することができる。抗癌化合物および化学療法剤の例は、アントラサイクリン、例えばドキソルビシン(アドリアマイシン、ドキシル)、エピルビシン(エレンス)およびダウノルビシン(セルビジン、ダウノキソーム)、カペシタビン(ゼローダ)、カルボプラチン(パラプラチン)、シスプラチン、シクロホスファミド(サイトキサン)、エリブリン(ハラヴェン)、フルオロウラシル(5−フルオロウラシルもしくは5-FU;アドルシルとも呼ばれる)、ゲムシタビン(ジェムザール)、イキサベピロン(イクゼンプラ)、メトトレキサート(アメトプテリン、メキサート、フォレックス)、ミトキサントロン(ノバントロン)、ムタマイシン(マイトマイシン)、タキサン系薬物、例えばパクリタキセル(タクソール、アブラキサン)およびドセタキセル(タクソテレ)、チオテパ(チオプレックス)、ビンクリスチン(オンコビン、ビンカサールPES、ビンクレックス)ならびにビノレルビン(ナベルビン)を含む。標的治療の例は、トラスツズマブ(ハーセプチン)、ラパチニブ(タイケルブ)、オナルツズマブ、リロツムマブ(AMG102)、フィクラツズマブ(AV-299)、ベバシズマブ(アバスチン)、ペルツズマブ(パージェタ)、リツキシマブ、パナツムマブ(panatumamab)およびエベロリムス(アフィニトール)を含む。該CFH阻害薬は、セツキシマブ、パージェタおよびハーセプチンと併用することができる。
【0213】
(2)従来の癌治療
従来の癌治療は、手術、放射線治療、ホルモン療法および標的治療を含むことができる。手術の例は、最大限の切除を伴う全開放開頭術と、これに続く放射線治療を含むことができる。放射線治療の例は、全脳照射、分割放射線治療および放射線手術、例えば定位放射線手術、例えばガンマナイフ放射線手術を含む。
【0214】
d.被験者
被験者は哺乳動物であることができ、該哺乳動物はヒトであることができる。被験者は、癌を有するか、または癌を発症するリスクを有することができる。被験者は癌を有することができる。被験者は、前に癌の治療を受けていることができる。
【0215】
6.細胞の補体依存性溶解を増加させる方法
本明細書に記載の方法は、細胞の補体依存性溶解を増加させるために用いることができる。本明細書に記載の方法は、CFH阻害薬、例えば前述の抗CFH抗体または小分子を細胞に投与することを含むことができる。該細胞は腫瘍細胞であることができる。例えば、該腫瘍細胞はMCF7乳癌細胞、SKBR3乳癌細胞、MDA-MB-231乳癌細胞またはA549肺癌細胞であることができる。
【0216】
以下に開示されているように、精製されたCFH抗体は、A549肺癌細胞へのC3沈着および第二経路による細胞毒性の両方に統計的に有意な効果を示した。肺腫瘍細胞は、他の種類の腫瘍細胞と同様に、CFHに加えて、MCP(CD46)、CR1(CD35)およびDAF(CD55)を含む他の膜結合型阻害薬による補体攻撃から保護されることに留意すべきである。細胞毒性の効率は、おそらくは、これらのタンパク質に対するモノクローナル抗体とCFHに対する患者抗体を併用することによって増加させることができるであろう(実施例2を参照のこと)。
【0217】
7.C3bに対する補体因子Hの結合を抑制する方法
本明細書に記載の方法は、被験者または細胞において、C3bに対するCFHの結合を抑制するために用いることもできる。該方法は、被験者または細胞に、CFH阻害薬、例えば前述の抗CFH抗体または小分子を投与することを含むことができる。該細胞は腫瘍細胞であることができる。例えば、該腫瘍細胞はMCF7乳癌細胞、SKBR3乳癌細胞、MDA-MB-231乳癌細胞またはA549肺癌細胞であることができる。
【0218】
8.細胞へのC3b沈着を増加させる方法
本明細書に記載の方法は、細胞へのC3b沈着を増加させるためにも用いることができる。該方法は、被験者または細胞に、CFH阻害薬、例えば前述の抗CFH抗体または小分子を投与することを含むことができる。該細胞は腫瘍細胞であることができる。例えば、該腫瘍細胞はMCF7乳癌細胞、SKBR3乳癌細胞、MDA-MB-231乳癌細胞またはA549肺癌細胞であることができる。
【0219】
9.腫瘍増殖を抑制する方法
本明細書に記載の方法は、被験者における腫瘍増殖を抑制するために用いることもできる。該方法は、CFH阻害薬、例えば前述の抗CFH抗体または小分子を被験者または細胞に投与することを含むことができる。腫瘍は、固形腫瘍または血液悪性腫瘍であることができる。例えば、腫瘍は肺腫瘍であることができる。
【0220】
10.送達機構
該CFH阻害薬は、その対象とする投与経路と適合するように製剤化されることができる。投与経路の例は、限定するものではないが、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口、鼻腔内(例えば吸入)、経皮(例えば局所)、経粘膜および直腸投与を含む。特定の実施形態において、該CFH阻害薬は、ヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内または局所投与に適合された医薬組成物として常法に従って製剤化される。一般的には、静注のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要ならば、該組成物は可溶化剤および、注射部位における痛みを緩和するための局所麻酔薬、例えばリグノカインを含有することもできる。
【0221】
種々のデリバリーシステム、例えばリポソームへのカプセル化、ミクロ粒子、マイクロカプセル、受容体依存性エンドサイトーシス(例えば、Wu and Wu, J. Biol. Chem. 262:4429-4432 (1987)を参照のこと)などが公知であり、1以上のSERMまたは、1以上のCFH阻害薬と、疾患またはその1以上の症状を予防、管理、治療または緩和するのに有用な予防薬または治療薬の組み合わせを投与するために用いることができる。SERM予防薬または治療薬を投与する方法は、限定するものではないが、非経口投与(例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内および皮下)、硬膜外投与、腫瘍内投与ならびに粘膜投与(例えば鼻腔内および経口経路)を含む。
【0222】
11.細胞型
本明細書に記載の方法は、試料または被験者からの細胞と共に用いることができる。該細胞は腫瘍細胞または癌細胞であることができる。該細胞は乳癌細胞または肺癌細胞であることができる。例えば、該細胞はMCF7乳癌細胞、SKBR3乳癌細胞、MDA-MB-231乳癌細胞、A549肺癌細胞、DMS79またはH226細胞株であることができる。
【0223】
12.キット
本明細書において、CFHもしくはCFHフラグメントまたはCFHの還元型もしくはCFHフラグメントの還元型の試験試料をアッセイするために用いることができるキットが提供される。該キットは、CFHまたはCFHの還元型の試験試料をアッセイするための少なくとも1つの成分ならびにCFHまたはCFHの還元型の試験試料をアッセイするための使用説明書を含む。例えば、該キットは、イムノアッセイ、例えば化学発光ミクロ粒子イムノアッセイによってCFHまたはCFHの還元型の試験試料をアッセイするための使用説明書を含むことができる。キットに含まれる使用説明書は、包装材料に貼り付けることもできるし、添付文書として含まれることもできる。該使用説明書は、一般的には書かれたものまたは印刷物であるが、これらに限定されない。このような使用説明書を保存し、それをエンドユーザーに伝達することができる任意の媒体が本開示により考えられる。このような媒体は、限定するものではないが、電子記憶媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCD ROM)などを含む。本明細書において、用語“使用説明書”は、使用説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
【0224】
該成分は、CFHまたはCFHの還元型に特異的に結合する1以上の単離された抗体またはその抗体フラグメントを含む少なくとも1つの組成物を含むことができる。該抗体は、CFHまたはCFHの還元型の捕捉用抗体および/またはCFHまたはCFHの還元型の検出抗体であることができる。好ましくは、該キットは、アッセイを行うために必要なすべての成分、すなわち試薬、標準品、緩衝液、希釈剤などを含む。該キットは、癌を治療するための他の薬物を含むこともできる。
【実施例】
【0225】
本発明は、限定するものではない以下の実施例によって例示される複数の側面を有する。
【0226】
[実施例1]
材料および方法
ドメインマッピングのためのドットブロット。Dr. Michael Pangburnの好意で提供されたドットブロットは、クローニングされ、発現され、精製されたCFHのオーバーラップするタンパク質ドメインサブセットを含んでいた。これらのタンパク質は、下記のように、TCEPで還元し、次いでニトロセルロースにスポッティングした。ヒトNSCLC血清(1:2000)および抗IgGγ鎖-HRPコンジュゲート(ミリポア社、テメキュラ、カリフォルニア州;1:5000)で該ブロットをプローブし、次いで化学発光基質で処理し、フィルムに暴露し、現像した。
【0227】
SCR19-20の精製。組み込まれたP.パストリス(P. pastoris)発現ベクター中にヒトCFHショートコンセンサスリピートドメイン19および20(SCR19-20と命名)をコードするピキア・パストリス(Pichia pastoris)クローンは、Dr. Michael Pangburn (University of Texas Health Science Center、タイラー、テキサス州)から入手した。ビバセル70遠心式濾過ユニット(Sartorius社、ゲッティンゲン、ドイツ)を用い、カットオフ分子量50,000〜5,000で遂次分別濾過し、次いでHiTrap SP FF陽イオン交換クロマトグラフィー(GE HEALTHCARE LIFE SCIENCES社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を行って、P.パストリス培地から該タンパク質を精製した。
【0228】
ヒトCFH自己抗体の精製。CFH自己抗体に関する機能的研究を実施するために抗体精製戦略を開発した。最初に、プロテインGクロマトグラフィーによって、血清からバルク免疫グロブリンを精製した。次いで、下記のように、製造業者の使用説明書に従ってTCEPで還元したSCR19-20とコンジュゲートさせたNヒドロキシスクシンイミドエステル活性化セファロース4FF(GE HEALTHCARE LIFE SCIENCES社)によるアフィニティークロマトグラフィーによって該特異的抗体を精製した。このSCR19-20カラムに免疫グロブリンを添着し、このカラムを洗浄し、3Mチオシアン酸ナトリウム、20mMトリス-HCl(pH6.8)で溶離して、結合した抗CFH抗体を回収した。PBS+10%グリセロールで希釈し、次いでアミコンウルトラ4遠心デバイス(カットオフ分子量30K)で濃縮する遂次段階で溶出緩衝液を交換し、最初の緩衝液をおおよそ6000Xに希釈した。抗CFH抗体の回収は、ELISAおよびイムノブロットの両方によって確認した。
【0229】
CFH自己抗体のELISA。MaxiSorpイムノプレート(Nunc International社、ロチェスター、ニューヨーク州)のウェルを、天然、還元、変性または還元および変性CFH 500ng(Complement Technology社、タイラー、テキサス州)でコーティングした。1mg/mlのCFHを10mMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で30分間インキュベートして還元し、次いで、そのタンパク質をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で5μg/mlに希釈し、イムノプレートに100μl/ウェルで分注した。7M尿素で変性を行い、次いで上記のようにPBSで希釈した。イムノブロットでCFH抗体陽性と評価されたヒトNSCLC血清を一次抗体として用い、抗IgGγ鎖-HRP(ミリポア)を二次抗体-酵素コンジュゲート(1:2000)とした。2,2'-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)および過酸化水素を用いてプレートを発色させ、プレートリーダー(Tecan社、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて405nmでの吸光度を読み取った。
【0230】
ヒトCFH自己抗体のエピトープマッピング。Slootstra et al., Mol Divers (1996) 1:87-96 の記載に従って、Pepscan社(オランダ)がエピトープマッピングを行った。簡潔に言えば、14アミノ酸のオーバーラップによって、SCR19-20の完全アミノ酸配列を含む15マーペプチドが合成された。ペプチドを有標ミニカードにアレイ化し、精製されたヒト抗体を一次抗体とし、抗ヒトペルオキシダーゼコンジュゲートを二次抗体として用いるELISAフォーマットでスクリーニングした。ABTSおよび過酸化水素を用いてこのミニカードを発色させた。電荷結合素子(CCD)カメラおよび画像処理システムを用いてこの発色で定量した。CCDカメラから得られる値は0〜3000mAUの範囲である。
【0231】
ペプチド競合実験。目的とする全エピトープを含むペプチドは、GenScript社(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)によって合成された。イムノブロット実験のために、アフィニティ精製された自己抗体(66.7μg/ml)を、ペプチド(1.67mg/ml)を含んだPBS中またはPBS単独中(最終容量6μl)、4℃で終夜インキュベートした。翌日、ペプチドの有り無しでの自己抗体を、0.1%の(v/v)ツイーン20および5%の(w/v)脱脂粉乳を含むPBSで最終濃度2μg/mlに希釈し、完全長CFHおよびSCR19-20を含有するブロットをプローブするために用いた。結合抗体を、抗IgGγ鎖-HRPコンジュゲート(1:5000)および化学発光基質で検出し、次いで、フィルムに暴露した。細胞アッセイにおける抗体のペプチド競合は以下で説明する。
【0232】
肺癌細胞へのC3沈着。A549細胞を用い、第二経路に好都合な条件下で、CFH抗体が、腫瘍細胞表面へのC3関連フラグメントの沈着を増加させるかどうかを測定した。補体タンパク質源として、最終希釈1:8の正常ヒト血清(NHS、Complement Technology社)を用いた。バーゼン液(Versene)(Life Technologies社、グランドアイランド、ニューヨーク州)を用いて培養皿からA549細胞を剥離した。ダルベッコPBS(DPBS)で洗浄し、Mg
2+およびEGTAを含むベロナール緩衝液(Boston Bioproducts社、アッシュランド、マサチューセッツ州)に再懸濁した。精製されたC18 CFH抗体(0.1mg/ml、SantaCruz Biotecnologies社、サンタクルーズ、カリフォルニア州)または患者Eからアフィニティ精製されたCFH自己抗体(0.2mg/ml)を用い、4℃で30分間プレインキュベートしたNHSを用いて、細胞(2.5x10
5)を37℃で30分間インキュベートした。同様に、陰性対照として、熱失活NHS(HI-NHS、56℃で30分間NHSを加熱することによって調製した)または、プールしたヒトIgG(0.2mg/ml、Jackson Immunoresearch Laboratories社、ウェスト・グローブ、ペンシルベニア州)と共に4℃で30分間プレインキュベートしたNHSと共に細胞をインキュベートした。1%(w/v)BSAを含むDPBS(DPBS-BSA)で2回洗浄した後、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)結合マウス抗ヒトC3抗体(Lifespan Biosciences社、シアトル、ワシントン州)0.5μgで細胞を4℃で30分間インキュベートした。C3-FITC抗体でインキュベートした後、過剰のC3抗体を除去するために、さらに3回DPBS-BSAで細胞を洗浄した。Duke Cancer Center Core Facilityで、FACSCanto IIフローサイトメーター(BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いてフローサイトメトリーを行った。細胞表面へのC3沈着に対応するA549細胞上の平均蛍光強度は、FlowJoソフトウェア(Tree Star社、アシュランド、オレゴン州)を用いて測定した。
【0233】
ペプチド競合のために、アフィニティ精製した自己抗体(0.7mg/ml)をペプチド(1.2mg/ml)と終夜室温でプレインキュベートした。細胞への添加後、該自己抗体の濃度は0.2mg/mlであり、該ペプチド濃度は0.34mg/mlであった。
【0234】
肺癌細胞に対する補体依存性細胞毒性。C3沈着を測定するために用いた前述のアッセイ条件と本質的に同じアッセイ条件を用いて、腺癌(A549)腫瘍細胞に対する補体媒介性細胞毒性に関するCFH抗体の効果を測定した。細胞、血清および抗体をインキュベートした後、DPBS-BSAで細胞を3回洗浄し、次いで、1μg/mlのヨウ化プロピジウム(Biosource International社、カマリロ、カリフォルニア州)を含むDPBSに再懸濁した。フローサイトメトリーを行って、ヨウ化プロピジウム陽性細胞数を測定した。C3沈着アッセイについての記述と同様にしてペプチド競合を行った。
【0235】
統計解析。スチューデントのt検定を用いて、補体媒介性細胞毒性およびC3沈着実験から得られたデータを解析した。すべての実験を3連で行った。細胞毒性およびC3沈着データは平均±標準偏差で示してある。
【0236】
[実施例2]
NSCLC患者におけるCFH抗体は、還元CFHに特異的である
CFHが還元および/または変性を受けているイムノブロットにおいて、Amornsiripanitch et al., Clin. Can. Res. (2010) 16:3226-3231 の記載に従って、NSCLC患者血清中のCFHに対する抗体を用いた。
図1に示すように、ELISAフォーマットにおけるCFHの血清抗体認識は、還元剤(本例においてはTCEP)でのCFHの事前処理に左右された。反応性は、CFHの事前変性には左右されなかった。
【0237】
CFHは、豊富な遍在する血清タンパク質であるため、それに対する抗体が見いだされたことは、本当に驚くべきことであった。しかしながら、NSCLC患者の血清中に存在する抗体は、すべて、還元型のCFHに対する明確な選択性を有している。NSCLC患者の抗体が、CFHタンパク質の還元型を認識することを考慮して、自己抗体を有する患者が、CFH遺伝子における変異を有しているかどうかを試験した。このような変異によって、該タンパク質(例えばCysからSerへの変異)の還元型の構造ミミックが形成されるか、または野生型では隠されていたエピトープが暴露され、それによってその改変タンパク質が抗原性になった可能性がある。10名の患者の腫瘍試料から単離されたRNAを用いて、SCR19-20ドメインを標的とするRT-PCRを行った。試験試料のすべてが、このドメインの野生型配列を含んでいた(データは示さず)。
【0238】
IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に特異的な二次抗体を用いるELISAにおいて、CFHエピトープペプチドに対して12名の自己抗体陽性患者の血清を試験した。試験した自己抗体は、すべてIgG3であると思われる。
【0239】
[実施例3]
CFH自己抗体は、CFHのSCR19-20フラグメントに結合する。
最初のドメインマッピング実験は、クローニングされ、精製されたSCRモジュールのサブセットを含む“ドットブロット”で患者血清をインキュベートすることによって行った。3名の患者からのCFH抗体陽性血清は、SCR19およびSCR20を含むフラグメントと反応した(データは示さず)。還元SCR19-20ELISAを発色させ、それを用いて、イムノブロットにおいて完全長CFHが認識された22の血清のうち、20がELISAにおいて強いシグナルを与えたことが示された(データは示さず)。
【0240】
[実施例4]
SCR19に対するCFH自己抗体のエピトープマップ
プロテインGおよびSCR19-20親和性カラムクロマトグラフィーの遂次段階を用いて、8名の患者からCFH抗体を精製した。SCR19-20の全配列から合成したオーバーラップペプチドのライブラリーに関して、これらの抗体のうち3つをエピトープマッピングした。SCR19-20のすべてを含む115のオーバーラップペプチドからなるライブラリーを合成し、3つの自己抗体でスクリーニングした。それらのうちの1つに対するペプチドELISAシグナルデータを示す。CFH(UniProt P08603)内の始めと終わりのアミノ酸残基番号を、各ペプチドの始めと終わりに示す。太字の残基は、最も強いシグナルを示すすべてのペプチドに存在する残基である。このエピトープの一部のみを含む残基はイタリック体で示してある。抗体の1つに対するペプチド結合データを表5に示すが、これはエピトープマッピングを示している。
【0241】
表5
【0242】
3つすべての抗体がエピトープPIDNGDIT(配列番号3)を認識した。このアミノ酸配列は、C3d-SCR19-20の共結晶構造におけるC3bのC3d部分との結合面内に位置する残基であるCFH 1114-1121に相当する。C3dは、チオエステルドメインによって細胞表面への結合が存続する、C3bの切断産物である。SCR19-20のD1119G変異体はC3dに結合しなくなるので、CFH D1119は、C3dとの界面の安定性に関与している。
【0243】
配列PIDNGDITGGGK-ビオチン(配列番号120)を有するペプチドを合成し、8つの精製ヒトCFH抗体のそれぞれでプローブしたCFHおよびSCR19-20のイムノブロットにおけるコンペティターとして用いた。患者血清から8つの抗CFH抗体をアフィニティ精製し、エピトープマッピングした。8つの抗体のうち7つは、該ペプチドによって競合された。3つの抗体に対する競合を
図2に示す。これらの7つによって認識される共通のエピトープは、C3bと相互作用することが知られているCFHの機能性ドメイン内に位置している。
【0244】
[実施例5]
精製されたCHF抗体は、A549肺癌細胞へのC3沈着を増加させる
NSCLC患者のCFH自己抗体の大部分がCFH-C3b相互作用の領域と相互作用することが考えられたので、該抗体が肺腫瘍細胞へのC3b沈着を増加させることができるかどうかを確かめるために該抗体を試験した。いくつかの精製されたCFH自己抗体を、A549肺癌細胞および、補体タンパク質源としてのNHSと共にインキュベートした。FITC結合マウス抗ヒトC3抗体を用い、フローサイトメトリーによって、C3関連フラグメントの沈着を測定した。これらの抗体の1つである”抗体E”についての結果を
図3に示す。HI-NHSの代わりにNHSを用いた場合、沈着は増加したので、C3沈着は、補体タンパク質の存在に依存していた。対照IgGと比較して、NSCLC患者のCFH抗体の存在下でC3沈着の統計的に有意な増加が認められた(p=0.011)。該エピトープを含むペプチド、すなわちPIDNGDITGGGK-ビオチン(配列番号120)は、CFHに対して抗体の特異性を示す抗体の効果を効果的に中和した。CFHの還元型には結合しないでSCR20には結合するマウスモノクローナル抗体C18(データは示さず)を、これらの実験における陽性対照として用いた。C3b結合および細胞間結合の両方に関与するCFHのドメインとのその提案された相互作用とは矛盾せず、C18は腫瘍細胞へのC3沈着もまた増加させた。
【0245】
糸球体腎炎を引き起こすCFH活性の全般的弱化を示唆し、従って自己抗体の可能な副作用である腎疾患の根拠に関して26名のCFH自己抗体陽性患者の臨床記録を調査した。CFH抗体陽性患者において、文書化された腎疾患の根拠は認められず、記録されている場合は、BUNおよびクレアチニン濃度は正常であった。これらの結果は、CFH自己抗体には副作用は存在しないことを示唆している。
【0246】
[実施例6]
精製されたCHF抗体は、A549肺癌細胞に対する細胞毒性が増加している
C3沈着は、細胞毒性をもたらすと考えられるため、C3沈着が細胞毒性をもたらすことができるかどうかを測定するために、NSCLC患者の抗体を試験した。補体第二経路を促進する条件下で、A549肺癌細胞および、補体タンパク質源としてのNHSと共に、精製されたCFH抗体をインキュベートした。ヨウ化プロピジウム-フローサイトメトリーアッセイで細胞毒性を測定した。抗体Eについての結果を
図4に示す。対照IgGと比較してNSCLC患者のCFH抗体の存在下で細胞毒性の統計的に有意な増加が認められ(p=0.033)、この場合も、前記ペプチドは抗体の効果を中和した。C18は、C3bおよび内皮細胞へのCFHの結合を強力に抑制することが以前示されているため、マウスモノクローナル抗体C18を陽性対照として用いた。
図4に示すように、CFHを抑制するその能力とは矛盾せず、C18は腫瘍細胞に対する細胞毒性を増加させた。
【0247】
[実施例7]
材料および方法
モノクローナル抗体産生/ペプチド情報および配列決定。CFHに対するヒト抗体は、ヒト末梢Bリンパ球から誘導された。該抗体を誘導し、配列決定し、特性づけるために用いる方法は前述した。Liao et al. (2013) Immunity 38(1): 176-186; Bonsignori et al. (2012) J Virol 86(21): 11521-11532; Moody et al. (2012) J Virol 86(14): 7496-7507; Gray et al. (2011) J Virol 85(15): 7719-7729; Morris et al. (2011) PLoS ONE 6(9): e23532; Liao et al. (2009) J Virol Methods 158(1-2): 171-179。CFH抗体を有する初期癌個体からのB細胞を採取しプールした。CFH抗体を産生するB細胞は、リンカーを有する15マーペプチドGPPPPIDNGDITSFP(配列番号114)、特に、括弧内の残基およびビオチンがリンカーを表す標的ペプチドGPPPPIDNGDITSFP(GGGK-ビオチン)(配列番号115)を用いて単一細胞FACSで選別した。ダブルポジティブB細胞をFACS選別するために、前記15マーペプチドの四量体を用いた。標的ペプチドを認識する抗体を産生するB細胞を選別した後、個々のB細胞からその免疫グロブリン遺伝子をクローニングした。前記タンパク質/抗体を発現させるために、哺乳動物細胞内で前記免疫グロブリン遺伝子を発現させた。
【0248】
免疫ブロット法:完全長CFHおよびSCR19-20を、還元条件下または非還元条件下でSDS-PAGEによって分離し、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(ミリポア、ビレリカ、マサチューセッツ州)にブロットした。この膜を0.1%(v/v)ツイーン20(PBST)および5%(w/v)脱脂粉乳を含むリン酸緩衝化生理食塩水でブロックし、組換えヒトモノクローナル抗体各0.5μg/mlでプローブした。室温で2時間インキュベートした後、この膜をPBSTで洗浄し、1:10,000希釈のヤギ抗ヒトIgG-γ西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートで1時間インキュベートした。さらに洗浄した後、化学発光基質を用いて結合抗体を検出し、フィルムに暴露した。
【0249】
15マーペプチドに対するELISA:プロテインAのビオチン結合誘導体であるニュートラアビジン(Thermo Scientific社、ロックフォード、イリノイ州)を4℃で終夜インキュベートして高結合能96ウェルトレイのウェルに固定した。1%(w/v)ウシ血清アルブミンを含むPBSでウェルをブロッキングした後、そのウェルの半分にビオチン化15マーペプチド(配列番号115)のPBST溶液(2μg/ml)を加え、バックグラウンド測定のために残りの半分にはPBST単独を加えた。洗浄後、前記ウェルに組換えヒトモノクローナル抗体を0.5μg/mlで加え、室温で2時間インキュベートした。前記ウェルを洗浄し、1:1000希釈のヤギ抗ヒトIgG-γ西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートと共にインキュベートした。さらなる洗浄後、2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)/過酸化水素で結合抗体を検出し、405nmで吸光度を測定した。
【0250】
SCR19-20に対するELISA:ニュートラアビジンでELISAプレートをコーティングし、既述のようにブロックした。還元または非還元のSCR19-20-ビオチンをPBSTで2μg/mlに希釈し、適切なウェル中で1時間インキュベートした。SCR19-20-ビオチンを10mMトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP、Sigma-Aldrich社、セントルイス、ミズーリ州)中で30分間インキュベートすることによって還元し、サイズ排除スピンカートリッジで過剰なTCEP
を除去した。洗浄後、前記ウェルに0.2μg/mlで組換えヒトモノクローナル抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。前記ウェルを洗浄し、1:1000希釈のヤギ抗ヒトIgG-γ西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートと共にインキュベートした。さらなる洗浄後、結合抗体をABTS/過酸化水素で検出し、405nmの吸光度を測定した。
【0251】
A549 LDH細胞毒性アッセイ:A549細胞を採取し、洗浄し、計数し、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むRPMI 1640培地100μL中5×10
3細胞/ウェルで96ウェルプレートにプレーティングした。37℃、5%CO
2で24時間細胞をインキュベートした。次いで前記培地をRPMI 1640および1Xベロナール緩衝液(Lonza社、ウォーカーズビル、メリーランド州)に変えた。各実験条件に1:8希釈の正常ヒト血清(NHS)を加えた。正常ヒト血清を56℃で30分間熱失活させ(HINHS)、1:8希釈で陰性対照として用いた。NHSまたはHINHSに加えて、20、60または120μg/mlの精製された組換えヒトモノクローナル抗体で細胞を処理した。すべての条件を3連でアッセイした。
【0252】
37℃、5%CO
2で24時間後、CytoTox 96非放射性細胞毒性アッセイ(Promega社、マディソン、ウィスコンシン州)を用いて細胞毒性を測定した。製造業者のプロトコルに従って、上清50マイクロリットルで乳酸脱水素酵素(LDH)活性をアッセイした。該LDHプロトコルの推奨に従って、自発的LDH放出および最大LDH放出を測定した。各条件での細胞毒性パーセントの算出は以下のように行った:
【数1】
【0253】
[実施例8]
15マーペプチド(すなわち固定化ニュートラアビジンに結合したビオチン化19マー)(
図5)に対するELISAを用い、還元または非還元のCFHおよびSCR19-20に対するイムノブロットを用いて、クローニングした抗体を試験した
【0254】
イムノブロットにおいて、CFHおよびSCR19-20を認識するすべての抗体は、前記還元タンパク質に対して結合の増強を示した。すべての陽性抗体のプールを用いて、乳癌細胞に対する補体依存性細胞毒性(CDC)アッセイを行った。
【0255】
表6にまとめたように、CFH特異的VHおよびVL領域を発現する構築物17対を誘導した。表6に示すように、IgH_IDおよびIgK_IDであらわされるVHおよびVL構築物の各対は、H鎖およびκL鎖を含むCFH特異的モノクローナル抗体を発現した。すべての発現されたモノクローナル抗体はIgG1定常領域を含んでいる。前記ドナーB細胞に実在している抗体のアイソタイプはIgG3(n=13)またはIgM(n=2)であった。3つの異なるクローン系統における抗体は“
*”、“
a”および“
b”で示されている。H007957、H007958、H007963およびH007982は同一の配列の配列を有している;K005991、K005992、K005998およびK006018ならびにK006004は同一の配列を有している;H007960およびH007967は同一の配列の配列を有している;K005994およびK006002は同一の配列の配列を有している;H007961およびH007965は同一の配列の配列を有している;K006003およびK006000は同一の配列の配列を有している;かつH007968およびH007971は同一の配列の配列を有している。H鎖のHCDR3を決定した(表1、配列番号4〜20の下線部の残基を参照のこと)。
【0256】
表6 肺癌抗原反応性抗体Igの遺伝子情報
【0257】
表7は、表6に記載されている各クローンに関して決定されたVHおよびVLのアミノ酸およびヌクレオチド配列に対応する配列番号を明らかにする。
図5は、17の精製された抗体のELISAデータを示す。
【0258】
表7
【0259】
[実施例9]
組換え抗体
表8は、IgG1 H鎖骨格およびκL鎖定常部を用いる組換え抗体の産生のために用いた11の特有のIg VHおよびVK対を示す。3つの異なるクローン系統における抗体は“
*”、“
a”および“
b”で示されている。
【0260】
表8
【0261】
表9は、表8に記載されている各クローンに関して決定されたVHおよびVLのアミノ酸およびヌクレオチド配列に対応する配列番号を明らかにする。表2は、配列番号72〜82の下線部の残基としてHCDR3領域を示す。
表9
【0262】
15マーペプチド(すなわち固定化ニュートラアビジンに結合したビオチン化19マー)(
図6)およびSCR19-20-ビオチンペプチドに対して、ELISA用いて前記組換え抗体を試験した(
図8)。還元または非還元のCFHおよびSCR19-20に対して、イムノブロットを用いて前記組換え抗体を試験した(表10;
図7)。
【0263】
表10
【0264】
イムノブロットにおいて、CFHおよびSCR19-20を認識するすべての抗体は、前記還元タンパク質に対して結合の増強を示した(
図7)。抗体Ab7960/293iおよびAb7968を用いて、乳癌細胞に対する補体依存性細胞毒性(CDC)アッセイを行った(
図9)。
【0265】
[実施例10]
エピトープマッピング
CFH mAb結合の残基を同定するために、全7つのCFH mAbに対するアラニンスキャニングを完結した。表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、アラニン置換15マーペプチドGPPPPIDNGDITSFP(配列番号114)のパネルに対して各mAbの結合親和性を測定した。親ペプチドは、残りのCFH残基に隣接する8マーエピトープ、すなわちPIDNGDIT(配列番号3)からなることが当初同定された。15マーの各位置における元の残基にアラニンを置換して、15の異なるペプチドのパネルを作成した。親ペプチドに対する各mAbの結合親和性と、アラニン置換ペプチドに対して測定された結合親和性とを比較することによって、mAb結合にとって重要な残基が明らかになった。この研究によって、元の8マーエピトープの外側には重要な残基がないことが明らかになった。全7つのmAbの中で、全体的に、前記8マー内の重要な残基は類似していた(
図10〜16および表11)。
【0266】
表11
【0267】
[実施例11]
結合親和性
CFH mAbの1つであるAb7968の親和性は、2.5pMのオーダーであることが測定された。BIAcore装置におけるSPRを用いて、固定化15マーペプチドGPPPPIDNGDITSFP(配列番号114)に対して、25、50または100nMでmAbの結合親和性を測定した。この分析によって、解離速度(kd)5.56x10
-7s
-1;結合速度(ka)2.26x10
5M
-1s
-1;および親和性(KD)2.46x10
-12Mが明らかになった。
【0268】
[実施例12]
交差反応性試験
自己抗原のAtheNA Multi-Lyteパネルに対して全7つのmAbを試験した。核抗原パネル:全身性エリテマトーデス自己抗原SSAおよびSSB、スフィンゴミエリン(Sm)、リボヌクレオタンパク質(RNP)、硬化症自己抗原(Scl-70)、ヒスチジンtRNAリガーゼ(Jo-1)、二本鎖DNA(dsDNA)、セントロメアB(CentB)、ならびにヒストンに対するAtheNA Multi-Lyte ANA試験。4e10(抗HIV薬、NIH AIDS Reagent Program)およびSYNAGIS(登録商標)(抗RSVモノクローナル抗体パリビズマブ;“シナジス”)を対照として用いた。前記mAbのうち2つは交差反応性を少し示し(太字の数字参照)、5つは交差反応性の徴候を示さなかった(表12)。
【0269】
表12 Athenaに対する抗癌抗体
【0270】
[実施例13]
CFH mAbは、用量依存的にCDCを増加させる
CFH mAbは、肺癌細胞において、CDCの用量依存的増加を引き起こした。補体の供給源としての正常ヒト血清(NHS)に加えて、CFH mAbであるmAb7968もしくはmAb7960、または陰性対照であるIgGサブクラス適合mAbと共にA549肺癌細胞をインキュベートした。前記mAbを60または120μg/mlで試験し、LDH放出ELISAによって細胞毒性を測定した(例えば
図17を参照のこと)。CFH mAb7968は、60μg/ml(p=0.006)および120μg/ml(p=0.004)において、CDCの統計的に有意な増加を引き起こしたことを
図17は示している。
【0271】
[実施例14]
CFH抗体誘発CDCが、エピトープペプチドによってブロックされた
CFH抗体誘発CDCが、エピトープペプチド(配列番号3)によってブロックされた。本実験は、患者血清からアフィニティ精製されたCFH抗体を用い、前述のように、ヨウ化プロピジウムフローサイトメトリーアッセイを用いて細胞死を定量化したということ以外は、用量反応実施例の記載に従ったCDCアッセイと本質的に同じであった。CFH抗体または正常ヒトIgGとA549細胞をインキュベートする前に、前記抗体を、前記抗体と比較して200M過剰のエピトープペプチド(配列番号3)と共に終夜RTでインキュベートした。ペプチドプレインキュベーションは、CFH抗体によって誘発されるCDCの統計的に有意な(p=0.02)低下を引き起こした。観察されたCDCは、CFH抗体とその標的との結合によって引き起こされたと考えられる。
【0272】
[実施例15]
他の薬物との併用によるCFH mAb誘発CDC
CFH mAb誘発CDCは、セツキシマブ、パージェタおよびハーセプチンの効果に相加的であった。前記CFH mAbは、腫瘍細胞致死を増加させる、すなわち抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)および細胞媒介毒性を促進する他の抗癌薬と併用することができる。用量反応実施例の記載に従ったCDCアッセイを用いて、100μg/mlのCFH mAb7968の有り無しで80μg/mlのセツキシマブと共にA549細胞をインキュベートした。mAb7968の組み入れは、セツキシマブ単独によって誘発されるCDCレベルに統計的に有意な(p=0.04)増加を引き起こした(
図19)。陰性対照mAbは、セツキシマブ誘発CDCの増加を引き起こさなかった。
【0273】
[実施例16]
乳癌細胞株におけるCDCのCFH mAbによる誘発
CFH mAbは、乳癌細胞株におけるCDCの効果的な誘導物質であった。CFH mAbは、乳癌細胞株MCF7、SKBR3、MDA-MB-231におけるCDCの効果的な誘導物質であった(
図20)。
図20は、前述の用量反応実施例の記載に従ったCDCアッセイフォーマットを用いるSKBR3細胞株におけるCDCのプロットを示す。HER2/c-erb-2遺伝子産物を過剰発現するSKBR3乳癌細胞は、CFH mAb7968誘発CDCに感受性を示した。50または100μg/mlで、mAb7968によって、SKBR3細胞におけるCDCが誘発された。
【0274】
[実施例17]
腫瘍増殖-動物実験
胸腺欠損ヌードマウスにおいて、肺腫瘍異種植皮増殖を抑制するCFH mAbの1つ(CFH mAb7968)の能力を調べた。動物1匹あたり週2回5週間、20または200μg/用量で前記抗体を投与した。
【0275】
ハンクス緩衝生理食塩水/2%(v/v)FBSおよびマトリゲル(BD Biosciences社カタログ番号354234)50:50混合物100μl中に懸濁した200万A549細胞の皮下注射によって、胸腺欠損雌ヌードマウスに肺腫瘍異種移植片を移植した。腫瘍体積が50〜75mm
3に達したとき、マウスをコホート当たりマウス5匹の5コホートに無作為化した。週2回、以下の1つをマウスに注入した:CFH mAb7968 20μg、CFH mAb7968 200μg、サブクラス適合陰性対照IgG 20μgまたは陰性対照IgG 200μg。コホートの1つは無治療であった。すべての抗体は、容量150μlのリン酸緩衝化生理食塩水溶液で腹腔内に注入した。7日間ごとにキャリパーで腫瘍体積を測定し、式V=W
2x L/2を用いてその体積を算出した(
図21〜24)。14日目において、用量依存的な差異が一部認められたが、28日目において、陰性対照抗体と比較して、統計的に有意な増殖抑制は認められなかった(以前のCFH siRNA研究と一致)。
【0276】
前述の詳細な説明および添付の実施例は単に例示であって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定されることは言うまでもない。
【0277】
開示された実施形態に対する様々な変更および修飾は当業者には明らかであろう。限定するものではないが、本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤または使用方法に関連するものを含むこのような変更および修飾は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく行うことができる。