(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一端から前記他端に向けて10cmの位置から、前記一端から前記他端に向けて59.8cmの位置までの領域に、厚み方向の断面形状が楔状である部分を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る合わせガラス用中間膜(本明細書において、「中間膜」と略記することがある)は、合わせガラスに用いられる。
【0024】
本発明に係る中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る中間膜は、1層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る中間膜は、2層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。本発明に係る中間膜は、単層の中間膜であってもよく、多層の中間膜であってもよい。
【0025】
本発明に係る中間膜は、一端と、上記一端の反対側に他端とを有する。上記一端と上記他端とは、中間膜において対向し合う両側の端部である。本発明に係る中間膜では、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きい。
【0026】
本発明に係る中間膜は、例えば、ヘッドアップディスプレイの表示領域に対応する表示対応領域を有する。上記表示対応領域は、情報を良好に表示させることができる領域である。
【0027】
本発明に係る中間膜において、上記表示対応領域の上記一端側の端部から上記他端に向けて4cmの位置を始点、上記表示対応領域の上記他端側の端部から上記一端に向けて4cmの位置を終点として2mm間隔毎に地点を選択する。このとき、一端側の端部から地点の選択を開始し、一端側から他端側にむけて2mm間隔の地点が選択できる位置まで地点を選択する。選択された各地点を中心とする上記一端と上記他端とを結ぶ方向の80mmの各領域を、各領域(X)とする。中間膜の上記一端側に最も近い領域(X)は、上記表示対応領域の上記一端側の端部から上記他端に向けて0cm〜8cmの領域(X)であり、次の領域(X)は、表示対応領域の上記一端側の端部から上記他端に向けて0.2cm〜8.2cmの領域(X)である。この領域(X)が選択可能な位置まで、地点を選択する。隣り合う2つの領域(X)は、上記一端と上記他端とを結ぶ方向において、78mm互いに重複する。
【0028】
各領域(X)のそれぞれにおいて、厚み変化量(各領域(X)において測定される厚み変化量を、厚み変化量(X)とする)を測定する。この厚みの変化量(X)は、各領域(X)における厚みの最大値と最小値との差の絶対値である。
【0029】
本発明に係る中間膜では、上記厚みの変化量(X)の値のうちの最大値と、上記厚みの変化量(X)の値のうちの最小値との差の絶対値が、32μm以下である。
【0030】
本発明に係る中間膜において、中間膜の上記一端から上記他端に向けて10cmの位置から、2mm間隔毎に250の地点を選択する。具体的には、上記一端から上記他端に向けて10cmの位置から、上記一端から上記他端に向けて59.8cmまでの位置まで、2mm間隔毎に250の地点を選択する。選択された250の各地点を中心とする上記一端と上記他端とを結ぶ方向の80mmの250の各領域を、250の各領域(X1)とする。中間膜の上記一端側に最も近い領域(X1)は、上記一端から6cm〜14cmの領域であり、次の領域(X1)は、上記一端から6.2cm〜14.2cmの領域である。中間膜の上記一端側から最も遠い領域(X1)は、上記一端から55.8〜63.8cmの領域である。隣り合う2つの領域(X1)は、上記一端と上記他端とを結ぶ方向において、78mm互いに重複する。250の領域(X1)は、上記一端から(6+0.2×A)cm〜(14+0.2×A)cmの各領域(X1)(Aは0〜249の整数)である。
【0031】
250の各領域(X1)のそれぞれにおいて、厚み変化量(250の各領域(X1)において測定される厚み変化量を、厚み変化量(X1)とする)を測定する。この厚みの変化量(X1)は、250の各領域(X1)における厚みの最大値と最小値との差の絶対値である。
【0032】
本発明に係る中間膜では、250の上記厚みの変化量(X1)の値のうちの最大値と、250の上記厚みの変化量(X1)の値のうちの最小値との差の絶対値が、32μm以下である。
【0033】
本発明に係る中間膜は、上記の構成を備えているので、合わせガラスにおける二重像をかなり抑えることができる。本発明では、表示ユニットから表示情報を合わせガラスに反射させたときに、二重像の発生がかなり抑えられる。
【0034】
二重像を効果的に抑える観点からは、上記領域(X)における全ての厚み変化量(X)の値のうちの最大値は好ましくは160μm以下、より好ましくは140μm以下、更に好ましくは120μm以下である。二重像を効果的に抑える観点からは、上記領域(X1)における250の厚み変化量(X1)の値のうちの最大値は好ましくは160μm以下、より好ましくは140μm以下、更に好ましくは120μm以下である。
【0035】
二重像を効果的に抑える観点からは、上記領域(X)における全ての上記厚み変化量(X1)の値のうちの最小値(厚み変化量の最小値)は好ましくは8μm以上、より好ましくは16μm以上、更に好ましくは24μm以上である。二重像を効果的に抑える観点からは、上記領域(X1)における250の上記厚み変化量(X1)の値のうちの最小値(厚み変化量の最小値)は好ましくは8μm以上、より好ましくは16μm以上、更に好ましくは24μm以上である。
【0036】
二重像を効果的に抑える観点からは、全ての上記厚みの変化量(X)の値のうちの最大値と、全ての上記厚みの変化量(X)の値のうちの最小値との差の絶対値は好ましくは1.6μm以上である。二重像を効果的に抑える観点からは、250の上記厚みの変化量(X1)の値のうちの最大値と、250の上記厚みの変化量(X1)の値のうちの最小値との差の絶対値は好ましくは1.6μm以上である。
【0037】
二重像をより一層効果的に抑える観点からは、上記一端から上記他端に向けて6cmの位置から、上記一端から上記他端に向けて63.8cmの位置までの領域の80%以上(より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)の領域において、上記一端から上記他端に向けて、厚みが増加していることが好ましい。上記一端から上記他端に向けて10cmの位置から、上記一端から上記他端に向けて59.8cmの位置までの領域の80%以上(より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上)の領域において、上記一端から上記他端に向けて、厚みが増加していることがより好ましい。
【0038】
本発明に係る中間膜は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)である合わせガラスに好適に用いられる。本発明に係る中間膜は、HUD用中間膜であることが好ましい。
【0039】
本発明に係る中間膜は、HUDの表示領域に対応する表示対応領域を有することが好ましい。二重像をより一層効果的に抑える観点からは、本発明に係る中間膜では、上記一端から上記他端に向けて6cmの位置から、上記一端から他端に向けて63.8cmの位置までの領域に、上記表示対応領域を有することが好ましい。本発明に係る中間膜では、上記一端から上記他端に向けて10cmの位置から、上記一端から上記他端に向けて59.8cmの位置までの領域に、上記表示対応領域を有することがより好ましい。
【0040】
二重像を効果的に抑える観点からは、上記一端から上記他端に向けて6cmの位置から、上記一端から上記他端に向けて63.8cmの位置までの領域において、中間膜は、厚み方向の断面形状が楔状である部分を有することが好ましい。上記一端から上記他端に向けて10cmの位置から、上記一端から上記他端に向けて59.8cmの位置までの領域において、中間膜は、厚み方向の断面形状が楔状である部分を有することがより好ましい。
【0041】
本発明に係る中間膜は、シェード領域を有していてもよい。上記シェード領域は、上記表示対応領域と離れていてもよい。上記シェード領域は、例えば、太陽光線又は屋外照明等により、運転中のドライバーが眩しさを感じるのを防ぐことなどを目的として設けられる。上記シェード領域は、遮熱性を付与するために設けられることもある。上記シェード領域は、中間膜の縁部に位置することが好ましい。上記シェード領域は帯状であることが好ましい。
【0042】
シェード領域においては、色及び可視光線透過率を変えたりするために、着色剤又は充填剤を用いてもよい。着色剤又は充填剤は、中間膜の厚み方向の一部の領域にのみ含まれていてもよく、中間膜の厚み方向の全体の領域に含まれていてもよい。
【0043】
表示をより一層良好にし、視野をより一層広げる観点からは、上記表示対応領域の可視光線透過率は好ましくは80%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上である。上記表示対応領域の可視光線透過率は、上記シェード領域の可視光線透過率よりも高いことが好ましい。上記表示対応領域の可視光線透過率は、上記シェード領域の可視光線透過率よりも低くてもよい。上記表示対応領域の可視光線透過率は、上記シェード領域の可視光線透過率よりも、好ましくは50%以上高く、より好ましくは60%以上高い。
【0044】
なお、例えば、表示対応領域及びシェード領域の中間膜において、可視光線透過率が変化している場合には、表示対応領域の中心位置及びシェード領域の中心位置にて、可視光線透過率が測定される。
【0045】
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3211(1998)に準拠して、得られた合わせガラスの波長380〜780nmにおける上記可視光線透過率を測定することができる。なお、ガラス板として、厚み2mmのクリアガラスを用いることが好ましい。
【0046】
上記表示対応領域は、長さ方向と幅方向とを有することが好ましい。中間膜の汎用性に優れるので、上記表示対応領域の幅方向が、上記一端と上記他端とを結ぶ方向であることが好ましい。上記表示対応領域は、帯状であることが好ましい。
【0047】
上記中間膜は、MD方向とTD方向とを有することが好ましい。中間膜は、例えば、溶融押出成形により得られる。MD方向は、中間膜の製造時の中間膜の流れ方向である。TD方向は、中間膜の製造時の中間膜の流れ方向と直交する方向であり、かつ中間膜の厚み方向と直交する方向である。上記一端と上記他端とが、TD方向の両側に位置していることが好ましい。
【0048】
表示をより一層良好にする観点からは、中間膜は、厚み方向の断面形状が楔状である部分を有することが好ましい。表示対応領域の厚み方向の断面形状が楔状であることが好ましい。
【0049】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0050】
図1(a)及び(b)に、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図及び正面図で示す。
図1(a)は、
図1(b)中のI−I線に沿う断面図である。なお、
図1及び後述する図における中間膜の大きさ及び寸法は、図示の便宜上、実際の大きさ及び形状から適宜変更している。
【0051】
図1(a)では、中間膜11の厚み方向の断面が示されている。なお、
図1(a)及び後述の図では、図示の便宜上、中間膜及び中間膜を構成する各層の厚み、並びに楔角θは、実際の厚み及び楔角とは異なるように示されている。
【0052】
中間膜11は、第1の層1(中間層)と、第2の層2(表面層)と、第3の層3(表面層)とを備える。第1の層1の第1の表面側に、第2の層2が配置されており、積層されている。第1の層1の第1の表面とは反対の第2の表面側に、第3の層3が配置されており、積層されている。第1の層1は、第2の層2と第3の層3との間に配置されており、挟み込まれている。中間膜11は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11は、合わせガラス用中間膜である。中間膜11は、多層中間膜である。
【0053】
中間膜11は、一端11aと、一端11aの反対側に他端11bとを有する。一端11aと他端11bとは対向し合う両側の端部である。第2の層2及び第3の層3の厚み方向の断面形状は楔状である。第1の層1の厚み方向の断面形状は矩形である。第2の層2及び第3の層3の厚みは、他端11b側のほうが一端11a側よりも大きい。従って、中間膜11の他端11bの厚みは一端11aの厚みよりも大きい。従って、中間膜11は、厚みの薄い領域と、厚みの厚い領域とを有する。
【0054】
中間膜11は、ヘッドアップディスプレイの表示領域に対応する表示対応領域R1を有する。中間膜11は、表示対応領域R1の隣に周囲領域R2を有する。本実施形態では、表示対応領域R1が、一端11aから他端11bに向けて6cmの位置から、一端11aから他端11bに向けて63.8cmの位置までの領域である。
【0055】
中間膜11は、表示対応領域R1と離れて、シェード領域R3を有する。シェード領域R3は、中間膜11の縁部に位置している。
【0056】
図2(a)及び(b)に、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図及び正面図で示す。
図2(a)は、
図2(b)中のI−I線に沿う断面図である。
図2(a)では、中間膜11Aの厚み方向の断面が示されている。
【0057】
図2に示す中間膜11Aは、第1の層1Aを備える。中間膜11Aは、第1の層1Aのみの1層の構造を有し、単層の中間膜である。中間膜11Aは、第1の層1Aである。中間膜11Aは、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11Aは、合わせガラス用中間膜である。
【0058】
中間膜11Aは、一端11aと、一端11aとは反対側に他端11bとを有する。一端11aと他端11bとは対向し合う両側の端部である。中間膜11Aの他端11bの厚みは一端11aの厚みよりも大きい。従って、中間膜11A及び第1の層1Aは、厚みの薄い領域と、厚みの厚い領域とを有する。
【0059】
中間膜11A及び第1の層1Aは、厚み方向の断面形状が矩形である部分11Aa,1Aaと厚み方向の断面形状が楔状である部分11Ab,1Abとを有する。
【0060】
中間膜11Aは、ヘッドアップディスプレイの表示領域に対応する表示対応領域R1を有する。中間膜11Aは、表示対応領域R1の隣に周囲領域R2を有する。
【0061】
中間膜11Aは、表示対応領域R1と離れて、シェード領域R3を有する。シェード領域R3は、中間膜11Aの縁部に位置している。
【0062】
上記中間膜は、厚み方向の断面形状が楔状である部分を有することが好ましい。上記中間膜は、一端から他端に向かって、厚みが次第に大きくなる部分を有することが好ましい。中間膜の厚み方向の断面形状は、楔状であることが好ましい。中間膜の厚み方向の断面形状としては、台形、三角形及び五角形等が挙げられる。
【0063】
二重像を抑制するために、合わせガラスの取付角度に応じて、中間膜の楔角θを適宜設定することができる。二重像をより一層抑制する観点からは、中間膜の楔角θは、好ましくは0.01mrad(0.0006度)以上、より好ましくは0.2mrad(0.0115度)以上、好ましくは2mrad(0.1146度)以下、より好ましくは0.7mrad(0.0401度)以下である。上記中間膜の楔角θは、中間膜における最大厚み部分と最小厚み部分との中間膜の第1の表面部分を結んだ直線と、中間膜における最大厚み部分と最小厚み部分との中間膜の第2の表面部分を結んだ直線との交点における内角である。
【0064】
二重像をより一層抑制する観点からは、上記領域(X)及び上記領域(X1)での楔角θは、好ましくは0.01mrad(0.0006度)以上、より好ましくは0.2mrad(0.0115度)以上、好ましくは2mrad(0.1146度)以下、より好ましくは0.7mrad(0.0401度)以下である。
【0065】
上記領域(X)及び上記領域(X1)での楔角θは、上記領域(X)又は上記領域(X1)における最大厚み部分と最小厚み部分との中間膜の第1の表面部分を結んだ直線と、上記領域(X)又は上記領域(X1)における最大厚み部分と最小厚み部分との中間膜の第2の表面部分を結んだ直線との交点における内角である。
【0066】
上記中間膜の厚みは特に限定されない。上記中間膜の厚みは、中間膜を構成する各層の合計の厚みを示す。よって、多層の中間膜11の場合には、該中間膜の厚みは、第1の層1と第2の層2と第3の層3との合計の厚みを示す。
【0067】
中間膜の最大厚みは好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは0.8mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。
【0068】
一端と他端との間の距離をXとしたときに、中間膜は、一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域に最小厚みを有し、他端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域に最大厚みを有することが好ましく、中間膜は、一端から内側に向かって0X〜0.1Xの距離の領域に最小厚みを有し、他端から内側に向かって0X〜0.1Xの距離の領域に最大厚みを有することがより好ましい。中間膜は一端に最小厚みを有し、中間膜は他端に最大厚みを有することが好ましい。
【0069】
中間膜11,11Aは、他端11bに最大厚みを有し、一端11aに最小厚みを有する。
【0070】
実用面の観点、並びに接着力及び耐貫通性を充分に高める観点からは、表面層の最大厚みは好ましくは0.001mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.8mm以下である。
【0071】
実用面の観点、並びに耐貫通性を充分に高める観点からは、2つの表面層の間に配置される層(中間層)の最大厚みは、0.001mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.2mm以上、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.6mm以下、更に好ましくは0.3mm以下である。
【0072】
上記中間膜の一端と他端との距離Xは、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下、特に好ましくは1.5m以下であり、好ましくは0.5m以上、より好ましくは0.8m以上、特に好ましくは1m以上である。
【0073】
以下、多層の中間膜の各層、並びに単層の中間膜を構成する材料の詳細を説明する。
【0074】
(熱可塑性樹脂)
中間膜(各層)は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(0)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(0)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(0)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂(1)と上記熱可塑性樹脂(2)と上記熱可塑性樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、遮音性がより一層高くなることから、上記熱可塑性樹脂(1)は、上記熱可塑性樹脂(2)及び上記熱可塑性樹脂(3)と異なっていることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(2)と上記ポリビニルアセタール樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、遮音性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)と異なっていることが好ましい。上記熱可塑性樹脂(0)、上記熱可塑性樹脂(1)、上記熱可塑性樹脂(2)及び上記熱可塑性樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(0)、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0076】
上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス部材又は他の中間膜に対する本発明に係る中間膜の接着力がより一層高くなる。
【0077】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%の範囲内である。
【0078】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0079】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0080】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3〜5であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。
【0081】
上記アルデヒドは特に限定されない。一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0082】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0083】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは17モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは22モル%以上、好ましくは28モル%以下、より好ましくは27モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、特に好ましくは24モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の機械強度がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率が20モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また28モル%以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0084】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは25モル%以上、より好ましくは28モル%以上、より好ましくは30モル%以上、より一層好ましくは31.5モル%以上、更に好ましくは32モル%以上、特に好ましくは33モル%以上、好ましくは38モル%以下、より好ましくは37モル%以下、更に好ましくは36.5モル%以下、特に好ましくは36モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0085】
遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値は、及び上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、及び、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。
【0086】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0087】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0088】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、より一層好ましくは7モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは24モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が0.1モル%以上、25モル%以下であると、耐貫通性に優れる。
【0089】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0090】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0091】
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0092】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは47モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0093】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0094】
上記アセタール化度は、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
【0095】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396−92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0096】
(可塑剤)
中間膜の接着力をより一層高める観点からは、本発明に係る中間膜は、可塑剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。中間膜に含まれている熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、中間膜(各層)は、可塑剤を含むことが特に好ましい。ポリビニルアセタール樹脂を含む層は、可塑剤を含むことが好ましい。
【0097】
上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0099】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0100】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0101】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0102】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0103】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0105】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数6〜10の有機基であることが好ましい。
【0106】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)又はトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0107】
上記中間膜における上記熱可塑性樹脂(0)100重量部に対する上記可塑剤(0)の含有量は、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは60重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。上記可塑剤(0)の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤(0)の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0108】
上記熱可塑性樹脂(1)100重量部に対する上記可塑剤(1)の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)は、好ましくは50重量部以上、より好ましくは55重量部以上、更に好ましくは60重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下、更に好ましくは85重量部以下、特に好ましくは80重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0109】
上記熱可塑性樹脂(2)100重量部に対する上記可塑剤(2)の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)、並びに上記熱可塑性樹脂(3)100重量部に対する上記可塑剤(3)の含有量(以下、含有量(3)と記載することがある)はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、特に好ましくは24重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、更に好ましくは32重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0110】
合わせガラスの遮音性を高めるために、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましい。
【0111】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0112】
(遮熱性化合物)
上記中間膜は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第1の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第2の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第3の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記遮熱性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0113】
上記遮熱性化合物は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は遮熱粒子を含むことが好ましい。この場合に、上記成分Xと上記遮熱粒子との双方を含んでいてもよい。
【0114】
成分X:
上記中間膜は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むことが好ましい。上記第1の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記成分Xは遮熱性化合物である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0115】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
【0116】
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
【0117】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
【0118】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0119】
上記中間膜100重量%中又は上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0120】
遮熱粒子:
上記中間膜は、遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記遮熱粒子は遮熱性化合物である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0121】
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
【0122】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0123】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB
6)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0124】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0125】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs
0.33WO
3で表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0126】
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
【0127】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA−EX150」)等を用いて測定できる。
【0128】
上記中間膜100重量%中又は上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の各含有量(特に酸化タングステン粒子の含有量)は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
【0129】
(金属塩)
上記中間膜は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びマグネシウム塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記金属塩Mの使用により、中間膜とガラス板などの合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0130】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。中間膜中に含まれている金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0131】
また、上記金属塩Mは、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ土類金属塩又は炭素数2〜16の有機酸のマグネシウム塩であることがより好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
【0132】
上記炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチル酪酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム及び2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0133】
上記金属塩Mを含む中間膜、又は上記金属塩Mを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜とガラス板との接着性又は中間膜における各層間の接着性をより一層良好に制御できる。
【0134】
(紫外線遮蔽剤)
上記中間膜は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0135】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0136】
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾトリアゾール化合物)、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾフェノン化合物)、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤(トリアジン化合物)、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤(マロン酸エステル化合物)、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤(シュウ酸アニリド化合物)及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾエート化合物)等が挙げられる。
【0137】
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0138】
上記紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤であり、より好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤である。
【0139】
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0140】
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
【0141】
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等が挙げられる。紫外線を遮蔽する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤は、ハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
【0142】
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0143】
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA−F70」及び2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0144】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2−(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2−(p−メトキシベンジリデン)−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル4−ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0145】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B−CAP、Hostavin PR−25、Hostavin PR−31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0146】
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−フェニル)シュウ酸ジアミド、2−エチル−2’−エトキシ−オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0147】
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0148】
期間経過後の可視光線透過率の低下をより一層抑制する観点からは、上記中間膜100重量%中又は上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量及びベントトリアゾール化合物の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。特に、上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスの期間経過後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0149】
(酸化防止剤)
上記中間膜は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0150】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0151】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0152】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0153】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、及び2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0154】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0155】
中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記中間膜100重量%中又は酸化防止剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記中間膜100重量%中又は上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
【0156】
(他の成分)
上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層はそれぞれ、必要に応じて、カップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、金属塩以外の接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0157】
(合わせガラス)
図3は、
図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を示す断面図である。
【0158】
図3に示す合わせガラス21は、中間膜11と、第1の合わせガラス部材22と、第2の合わせガラス部材23とを備える。中間膜11は、第1の合わせガラス部材22と第2の合わせガラス部材23との間に配置されており、挟み込まれている。中間膜11の第1の表面に、第1の合わせガラス部材22が配置されている。中間膜11の第1の表面とは反対の第2の表面に、第2の合わせガラス部材23が配置されている。
【0159】
上記合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材がそれぞれガラス板又はPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムであり、かつ上記中間膜が、上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材として、少なくとも1枚のガラス板を含むことが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び第2の合わせガラス部材の双方がガラス板であることが特に好ましい。
【0160】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0161】
上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の各厚みは特に限定されないが、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下である。上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0162】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1,第2の合わせガラス部材の間に、上記中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりする。これにより、第1の合わせガラス部材と中間膜及び第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。
【0163】
上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましく、車両用の合わせガラスであることがより好ましい。上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。遮熱性が高くかつ可視光線透過率が高いので、上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。
【0164】
上記合わせガラスは、ヘッドアップディスプレイ(HUD)である合わせガラスである。上記合わせガラスでは、コントロールユニットから送信される速度などの計測情報等を、インストゥルメンタル・パネルの表示ユニットから、フロントガラスに映し出すことができる。このため、自動車の運転者が視野を下げることなく、前方の視野と計測情報とを同時に視認することができる。
【0165】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0166】
用いたポリビニルアセタール樹脂では、アセタール化に、炭素数4のn−ブチルアルデヒドが用いられている。ポリビニルアセタール樹脂に関しては、アセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396−92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0167】
(実施例1)
第1の層を形成するための組成物の作製:
下記の表1に示すポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部と、Tinuvin326(2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)0.2重量部と、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)0.2重量部とを添加し、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物を得た。
【0168】
第2の層及び第3の層を形成するための組成物の作製:
下記の表1に示すポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)38重量部と、Tinuvin326(2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)0.2重量部と、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)0.2重量部とを添加し、ミキシングロールで充分に混練し、第2の層及び第3の層を形成するための組成物を得た。
【0169】
中間膜の作製:
第1の層を形成するための組成物と、第2の層及び第3の層を形成するための組成物とを、共押出機を用いて共押出した。実施例1では、中間膜を押出成形した後、中間膜を100℃〜150℃に加熱して保持時間5分以内で保持し、常温に戻した。第2の層/第1の層/第3の層の積層構造を有する楔状の中間膜を作製した。なお、実施例1及び後述する実施例2〜5及び比較例1,2で得られた中間膜は、一端に最小厚みを有し、他端に最大厚みを有する。
【0170】
(実施例2〜4及び比較例1)
第1の層を形成するための組成物と第2の層及び第3の層を形成するための組成物とに用いるポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の種類と配合量とを下記の表1に示すように設定し、かつ、中間膜における最小厚み及び最大厚みを下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を得た。また、実施例2〜4及び比較例1では、実施例1と同じ種類の紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を、実施例1と同様の配合量(ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.2重量部)で配合した。
【0171】
実施例2〜4では、実施例1とは異なる形状の金型を用いて中間膜を押出成形した後、中間膜を100℃〜150℃に加熱して保持時間5分以内で保持し、常温に戻した。比較例1では、実施例1と同じ形状の金型を用いて中間膜を押出成形した後、中間膜を100℃〜150℃に加熱しなかった。
【0172】
(実施例5及び比較例2)
第1の層を形成するための組成物と第2の層及び第3の層を形成するための組成物とに用いるポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の種類と配合量とを下記の表1に示すように設定し、かつ実施例1と同じ金型を用いて中間膜を押出成形する際に金型温度を変更したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を得た。また、実施例5及び比較例2では、実施例1と同じ種類の紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を、実施例1と同様の配合量(ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.2重量部)で配合した。
【0173】
実施例5及び比較例2では、中間膜を押出成形した後、中間膜を100℃〜150℃に加熱して保持時間5分以内で保持し、常温に戻した。
【0174】
(実施例6)
中間膜を形成するための組成物の作製:
下記の表2に示すポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部と、Tinuvin326(2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)0.2重量部と、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)0.2重量部とを添加し、ミキシングロールで充分に混練し、中間膜を形成するための組成物を得た。
【0175】
中間膜の作製:
中間膜を形成するための組成物を、押出機を用いて押出した。実施例6では、中間膜を押出成形した後、中間膜を100℃〜150℃に加熱して保持時間5分以内で保持し、常温に戻した。楔状の単層の中間膜を作製した。なお、実施例6及び後述する実施例7〜9及び比較例3,4で得られた中間膜は、一端に最小厚みを有し、他端に最大厚みを有する。
【0176】
(実施例7,8及び比較例3)
中間膜を形成するための組成物に用いるポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の種類と配合量とを下記の表2に示すように設定し、かつ、中間膜における最小厚み及び最大厚みを下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例6と同様にして、中間膜を得た。また、実施例7,8及び比較例3では、実施例6と同じ種類の紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を、実施例6と同様の配合量(ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.2重量部)で配合した。
【0177】
実施例7,8では、実施例6とは異なる形状の金型を用いて中間膜を押出成形した後、中間膜を100℃〜150℃に加熱して保持時間5分以内で保持し、常温に戻した。比較例3では、実施例6と同じ金型を用いて中間膜を押出成形した後、中間膜を100℃〜150℃に加熱しなかった。
【0178】
(実施例9及び比較例4)
中間膜を形成するための組成物に用いるポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤の種類と配合量とを下記の表2に示すように設定し、かつ実施例6と同じ金型を用いて中間膜を押出成形する際に金型温度を変更したこと以外は実施例6と同様にして、中間膜を得た。また、実施例9及び比較例4では、実施例6と同じ種類の紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を、実施例6と同様の配合量(ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.2重量部)で配合した。
【0179】
実施例9及び比較例4では、中間膜を押出成形した後、中間膜を100℃〜150℃に加熱して保持時間5分以内で保持し、常温に戻した。
【0180】
(評価)
(1)厚み
得られた中間膜において、中間膜の一端から(6+0.2×A)cm〜(14+0.2×A)cmの各領域(X),(X1)(Aは0〜249の整数)での厚み変化量(X),(X1)を測定した。250の厚み変化量(X),(X1)の値のうちの最大値(厚み変化量の最大値)と、250の厚みの変化量(X),(X1)の値のうちの最小値(厚み変化量の最小値)とを評価した。厚み変化量(X),(X1)の最大値と厚み変化量(X),(X1)の最小値との差の絶対値を求めた。中間膜の上記一端から上記他端に向けて10cmの位置から、上記一端から上記他端に向けて59.8cmまでの位置までの領域(X),(X1)において、最大厚みと最小厚みとの差の絶対値を求めた。
【0181】
なお、実施例及び比較例の表示対応領域は、中間膜の一端から6cm〜63.8cmの領域である。
【0182】
(2)二重像(1)
一対のガラス板(クリアガラス、510mm×910mmの大きさ、厚み2.0mm)を用意した。一対のガラス板の間に、ガラス板の大きさに対応する大きさの中間膜を挟み込んで、積層体を得た。得られた積層体を、
図4に示すように、EPDM製ゴムチューブ(枠部材)にはめ込んだ。ゴムチューブの幅は15mmである。次に、EPDM製ゴムチューブにはめ込まれた積層体を真空バッグ法により、予備圧着した。予備圧着された積層体を、オートクレーブを用いて、150℃及び1.2MPaの圧力で圧着することにより、合わせガラスを得た。
【0183】
得られた合わせガラスをフロントガラスの位置に設置した。合わせガラスの下方に設置した表示ユニットから表示情報を合わせガラスに反射させ、所定の位置(表示対応領域の中心)で二重像の有無を目視で確認した。二重像を下記の基準で判定した。
【0184】
[二重像(1)の判定基準]
○:二重像が確認されない
×:二重像が確認される
【0185】
(3)二重像(2)
上記(2)二重像(1)の評価で得られた合わせガラスを用意した。
【0186】
得られた合わせガラスをフロントガラスの位置に設置した。合わせガラスの下方に設置した表示ユニットから表示情報を合わせガラスに反射させ、所定の位置(表示対応領域の全体)で二重像の有無を目視で確認した。二重像を下記の基準で判定した。
【0187】
[二重像(2)の判定基準]
○○:二重像が確認されない
○:二重像がごくわずかに確認されるが、実使用上影響がないレベル
×:○○及び○の判定基準に相当しない
【0188】
詳細及び結果を下記の表1,2に示す。
【0191】
なお、実施例1〜5で得られた中間膜を用いた合わせガラスについて、音響透過損失により遮音性を評価した結果、遮音性に優れていることを確認した。