【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、医療用画像処理デバイスが提示される。このデバイスは、
解剖学的対象物の第1及び第2の医療用画像を受信するための受信ユニットであって、第1及び第2の医療用画像の各々が解剖学的対象物の異なる視野を含み、第1の医療用画像及び第2の医療用画像が解剖学的対象物の同一又は同様の解剖学的状態を示す、受信ユニットと、
第2の医療用画像の画像空間から第1の医療用画像の画像空間への変換を決定するように構成された位置合わせユニットと、
変換済みの第2の医療用画像を受信するために、変換に基づいて第2の医療用画像を第1の医療用画像の画像空間に変換するように構成された変換ユニットと、
(第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像を融合させることなく)第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像の双方を別個に使用する全体セグメンテーションを実行するように構成されたセグメンテーションユニットであって、第1の医療用画像内の解剖学的対象物の第1のフィーチャポイントセットを識別し、変換済みの第2の医療用画像内の解剖学的対象物の第2のフィーチャポイントセットを識別し、更に第1及び第2のフィーチャポイントセットの双方に全く同一のセグメンテーションモデルを適合させることによって、第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像の双方に同時に全く同一のセグメンテーションモデルが適合される、セグメンテーションユニットと、
を備える。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、医療用画像処理方法が提示される。この方法は、
解剖学的対象物の第1の医療用画像及び第2の医療用画像を受信するステップであって、第1及び第2の医療用画像の各々が解剖学的対象物の異なる視野を含み、第1の医療用画像及び第2の医療用画像が解剖学的対象物の同一又は同様の解剖学的状態を示す、ステップと、
第2の医療用画像の画像空間から第1の医療用画像の画像空間への変換を決定するステップと、
変換済みの第2の医療用画像を受信するために、変換に基づいて第2の医療用画像を第1の医療用画像の画像空間に変換するステップと、
(第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像を融合させることなく)第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像の双方を別個に使用する全体セグメンテーションを実行するステップであって、第1の医療用画像内の解剖学的対象物の第1のフィーチャポイントセットを識別し、変換済みの第2の医療用画像内の解剖学的対象物の第2のフィーチャポイントセットを識別し、更に第1及び第2のフィーチャポイントセットの双方に全く同一のセグメンテーションモデルを適合させることによって、第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像の双方に同時に全く同一のセグメンテーションモデルが適合される、ステップと、
を備える。
【0013】
本発明の更に別の態様によれば、コンピュータ上で実行された場合に、上述の方法のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムが提案される。
【0014】
本発明の好適な実施形態は、従属クレームで規定されている。特許請求される方法及び特許請求されるコンピュータプログラムは、特許請求される医療用画像処理デバイスと同様及び/又は同一の、従属クレームで規定されるような好適な実施形態を有することは理解されよう。
【0015】
本発明は、オフライン及び通電中(live)の画像処理の双方に適用されることに留意すべきである。従って受信ユニットは、オフラインモードで、任意のタイプの内部又は外部の記憶ユニットから医療用画像を受信することができ、又は、通電画像処理モードで、例えば超音波撮像装置のような画像取得ユニットから直接に医療用画像を受信することも可能である。
【0016】
「医療用画像」という言葉は、超音波撮像、CT撮像、MR撮像、又はMRI撮像のような任意のモダリティの医療用撮像装置によって生成される患者の身体部分の画像(画像シーケンスのフレーム)を指すものとする。
【0017】
「解剖学的対象物」という言葉は、心臓、他の任意の臓器のような患者の任意の解剖学的目的物、又は胎児を指すものとする。
【0018】
医療用画像処理デバイスによって生成される医療用画像は、2D又は3D画像とすることができる。好適な実施形態によれば、医療用画像は、3D TTE画像、3D TEE画像、又は3D胎児超音波画像を含む。
【0019】
更に、本発明は第1及び第2の医療用画像の処理によって説明されることを注記しておく。「第1の」及び「第2の」という言葉は、時間に基づく範囲設定や種類に基づく範囲設定を意味するのではなく、本明細書では、2つの例示的な医療用画像を区別するために用いるものとする。実際には、提示されるデバイスによって、第1及び第2の医療用画像だけが処理される(これも可能ではあるが)のではなく、いくつかの医療用画像が処理され得ることは明らかである。
【0020】
第1の医療用画像及び第2の医療用画像が解剖学的対象物の「同一又は同様の解剖学的状態」を示すという規定は、双方の画像に示される解剖学的対象物が、時間的、解剖学的、又は運動的に同一又は同様の状態にあることを意味する。解剖学的対象物が心臓である場合、双方の画像には、例えば拡張末期フェーズ又は収縮末期フェーズのような共通の心臓フェーズ又は共通の運動状態の心臓、例えば心臓の様々なサブ構造が示される。しかしながら、第1及び第2の画像は、同一の心臓フェーズ又は運動状態の心臓を示す限り、同一の心臓サイクルに属する必要はなく、異なる心臓サイクルから導出されてもよいことに留意すべきである。
【0021】
本発明は、好ましくは解剖学的対象物の様々な視野を含む多数の相補的画像からの少なくとも2つの相補的な画像から、解剖学的対象物全体の単一セグメンテーションを生成するという考えに基づいている。提示されるデバイス及び方法は、いわば、少なくとも2つ、好ましくは多数のサブセグメンテーションの組み合わせとして、解剖学的対象物全体の単一セグメンテーションを生成する。
【0022】
2つの医療用画像(第1及び第2の医療用画像)の場合、位置合わせユニットは、第1のステップにおいて、第2の医療用画像の画像空間から第1の医療用画像の画像空間への変換を決定する。第1の医療用画像の画像空間は、いわば基準画像空間と見なすことができる。この変換は、好ましくは、第2の医療用画像を第1の医療用画像の画像空間内へと並進及び/又は回転させる剛体変換として実現される。
【0023】
好ましくは、以下で詳述するように、変換はポイント間位置合わせ及び/又はメッシュ間位置合わせによって決定される。しかしながら、この事例には好適でないものの、変換は一般的には画像ベースの位置合わせを適用することによっても決定することができる。位置合わせの結果、第2の医療用画像の画像空間がどのように第1の医療用画像の画像空間に変換され得るかをパラメータ的に記述する変換行列が得られる。
【0024】
この変換は、第2の医療用画像を第1の医療用画像の画像空間に変換するために変換ユニット内で用いられる。換言すると、変換ユニットは、同一の基準画像空間において2つの整合させた画像を受信するために、第2の医療用画像を第1の医療用画像の画像空間内に並進及び/又は回転させる。本明細書では、第2の医療用画像の変換の結果を、変換済みの第2の医療用画像と呼ぶ。
【0025】
最後のステップにおいて、セグメンテーションユニットは、解剖学的対象物全体の全体セグメンテーションに、第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像の双方を用いる。セグメンテーションユニットは、モデルベースのセグメンテーションをそれらに適用する。
【0026】
本発明の中心となる考えの1つは、この全体セグメンテーションにおいて、第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像の双方に全く同一のセグメンテーションモデルが適合されるということである。第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像は融合されない(それらは個別に処理されている)ことに留意するのは重要である。第1及び変換済みの第2の医療用画像は、医療用画像処理デバイスのメモリ内において別々のままである。第1及び変換済みの第2の医療用画像は、いわば2つの異なる層に別々に記憶されている。しかしながら、セグメンテーションユニットは、第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像の双方に同時に適合される単一のセグメンテーションモデルを用いる。これは、この記載の導入部に提示したRajpoot,K.等により提案された手法との大きな相違の1つである。Rajpoot,K.等は、融合画像を生成するために画像を融合させ、その後この融合画像にセグメンテーションを行うことを提案している。
【0027】
提示されるデバイスは双方の画像を融合させないが、全く同一のセグメンテーションモデルを用いて双方の画像に基づくセグメンテーションを行うので、解剖学的対象物全体の単一セグメンテーションを生成することを可能としながら、画像融合の欠点(アーチファクト及び人工的な壁、強度の不一致及び画像平滑化)を防ぐことができる。従って、提示されるデバイス及び方法は、よりロバストで一貫性の高いセグメンテーション結果を生じ、これを解剖学的対象物の定量化のために用いることができる。
【0028】
提示されるデバイス及び方法は、いわば、医療用画像を融合させることなく各医療用画像を最大限に活用する。各サブ構造が見える画像から各サブ構造のセグメンテーションを行うことで、異なる視野を示す異なる画像から解剖学的対象物全体の単一セグメンテーションが算出される。
【0029】
セグメンテーションユニットは、好ましくは、
第1の医療用画像内の解剖学的対象物の第1のフィーチャポイントセットを識別し、
変換済みの第2の医療用画像内の解剖学的対象物の第2のフィーチャポイントセットを識別し、更に、
第1及び第2のフィーチャポイントセットの双方にセグメンテーションモデルを同時に適合させることによって、全体セグメンテーションを実行する。
【0030】
従って、セグメンテーションメッシュモデルは、双方の画像において識別されたフィーチャポイントに合致するように変形される。Rajpoot,K.等により提案されたような融合画像のセグメンテーションの場合、セグメンテーションメッシュモデルは、単一の融合画像において識別された1つのフィーチャポイントセットのみに合致するように変形されるが、本発明によれば、セグメンテーションメッシュモデルは、少なくとも2つのフィーチャポイントセット(2つの画像の場合)に合致するように変形される。これによって、よりロバストで一貫性の高いセグメンテーションの結果が得られることは明らかである。
【0031】
好ましくは、第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像の各々内で、第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像の各々内で最も大きい輝度勾配を有する画像ポイントをそれぞれ識別することによって、解剖学的対象物の第1及び第2のフィーチャポイントセットを識別する。しかしながら、輝度勾配は、フィーチャポイント識別のための唯一の指標ではなく、そうである必要もないことに留意すべきである。この識別は、画素輝度の絶対値のような他の基準、又はセグメンテーションメッシュ内の画素の輝度をセグメンテーションメッシュ外の画素の輝度と比較するアルゴリズムに基づいて行ってもよい。しかしながら、セグメンテーションのための画像輝度勾配の使用は、かなり容易に実現することができる。従ってセグメンテーションでは、通常は画像内の組織境界すなわち解剖学的対象物の解剖学的フィーチャの境界を表す画像内の明−暗エッジ(又は暗−明エッジ)を探す。
【0032】
すでに述べた通り、本発明はむろん、上述のように2つの医療用画像のみを処理することに限定されない。好ましくは、上述の全体セグメンテーションには多数の医療用画像が用いられる。しかしながら原理は同じである。複数の画像はまず、例えばそれらのうち1つの画像の画像空間のような基準空間内に位置合わせされる。共通基準空間への全ての視野の幾何学的変換を記述するため、全ての画像について視野間変換が算出される。次いで、全ての画像が相互に整合されるように、それぞれの視野間変換によって全ての画像が変換される。次いでセグメンテーションユニットは、基準空間に変換された全ての画像を利用し、基準空間の全ての画像に1つのみのセグメンテーションモデルを同時に適用することによって、前述のように全体セグメンテーションを実行する。
【0033】
別の実施形態によれば、セグメンテーションユニットは、全体セグメンテーションの前に、第1のセグメンテーションメッシュを受信するために第1の医療用画像の個別セグメンテーションを実行し、更に、第2のセグメンテーションメッシュを受信するために第2の医療用画像の個別セグメンテーションを実行するように構成されている。この場合、位置合わせユニットは、第1のセグメンテーションメッシュ上に第2のセグメンテーションメッシュのポイントベースの位置合わせを適用することによって、第2の画像の画像空間から第1の画像の画像空間への変換を決定するように構成されている。
【0034】
第1及び第2の医療用画像の上述の個別セグメンテーションが、第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像の双方に同時に適合される全体セグメンテーションに関連付けられていない(not connected)ことに留意するのは重要である。第1及び第2の医療用画像の個別セグメンテーションは、全体セグメンテーションとは異なる技術目的のために行われる。全ての医療用画像の個別セグメンテーションは、各画像を基準空間に位置合わせする前に適用される。これらのセグメンテーションは、例えば第2の医療用画像の画像空間から第1の医療用画像の画像空間への変換のような視野間変換の決定を容易にするはずである。換言すると、各画像の個別セグメンテーションは、剛体ポイントベースメッシュ間位置合わせを用いることにより、各画像の変換の決定を可能とする。このようなメッシュ間位置合わせは、各画像の個別セグメンテーションなしで実行しなければならない画像ベースの位置合わせに比べ、より高速かつ高精度である。
【0035】
好ましくは、セグメンテーションユニットは、第1の医療用画像及び第2の医療用画像の個別セグメンテーションに同一のセグメンテーションモデルを適用するように構成されている。全体セグメンテーションでは、わずかに異なるセグメンテーションモデルを利用する。このモデルは、2セットの調整された(trained)画像フィーチャを、セグメンテーションを行う各画像に1セットずつ用いる。視野のみが変化するこの適用例では、2つのセットは同一であり、単一画像セグメンテーションモデルのうち1つと等しいことに留意すべきである。
【0036】
更に別の実施形態によれば、受信ユニットは、第1の医療用画像を含む第1の医療用画像シーケンスと、第2の医療用画像を含む第2の医療用画像シーケンスと、を受信するように構成されている。医療用画像処理デバイスは、解剖学的対象物の同一又は同様の解剖学的状態の対応する画像を識別するため、第1及び第2の医療用画像を選択するための選択ユニットを更に備える。
【0037】
すでに述べたように、医療用画像処理デバイスは実際には、超音波デバイス等の医療用撮像装置に直接接続されていることが多い。この場合、受信ユニットは、解剖学的対象物の同一又は同様の解剖学的状態を示す第1の医療用画像及び対応する第2の医療用画像を直接受信せず、いくつかの画像シーケンスを受信する。例えば、超音波検査士は、左心室の鼓動のような鼓動する心臓のサブ構造の第1の視野の第1の医療用画像シーケンスの取得を開始する。次に、超音波検査士は、右心室の鼓動のような鼓動する心臓の別のサブ構造を示す第2の視野の第2の医療用画像シーケンスを取得する。この手順を、全ての対象構造が撮像されるまで繰り返す。次いで、例えば拡張末期フェーズ又は収縮末期フェーズのような同一の心臓フェーズの対応する画像を識別することが重要である。これは上述の選択ユニットによって実行される。選択ユニットは、手作業で又は自動的な手法のどちらかで、対応する画像(すなわち第1及び第2の医療用画像)の選択を可能とする。
【0038】
自動的な手法は以下のように実施することができる。すなわち、セグメンテーションユニットは、第1及び第2の医療用画像シーケンスの全ての画像に個別にセグメンテーションを行うように構成することができ、選択ユニットは、第1及び第2の医療用画像シーケンスの全ての画像のセグメンテーションに基づいて第1及び第2の医療用画像を自動的に選択するように構成されている。選択ユニットは、各画像シーケンスごとに、対応する画像シーケンス内の全ての画像のセグメンテーションから容積曲線(volume curve)を導出するように構成することができる。次いで、これらの容積曲線の比較により、特定の心臓フェーズの心臓を示す各画像シーケンスの画像を自動的に選び出すことができる。
【0039】
更に別の実施形態によれば、医療用画像処理デバイスは、第1の医療用画像及び変換済みの第2の医療用画像を融合させることによって融合画像を再構築するように構成された画像再構築ユニットを更に備えてもよい。これによって、Rajpoot,K.等により提案されたものと同様に、解剖学的対象物全体の画像を視覚化することが可能となる。融合画像は、提示される医療用画像処理デバイスによってアドオンとしてのみ提供することができる。解剖学的対象物を定量化するために使用され得る全体セグメンテーションは、この場合も、融合画像に基づくのではなく、上述の手法に従って生成されることに留意しなければならない。