【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において、「小児」は、10歳未満の、特に3歳〜10歳の人として定義される
。特に、本発明は未就学児に適用されるが、それはこの年齢で上述の問題が顕著だからで
ある。
【0013】
本発明では、眼の屈折特性を測定する波面測定装置を備えた、眼の屈折特性を測定する
システムであって、当該システムは、小児に割り当てられた少なくとも1つの測定モード
を有するよう構成され、当該システムは、当該システムを小児に割り当てられた少なくと
も1つの測定モードのうち1つに切り替えるよう構成された入力装置を有し、当該システ
ムは、システムを小児に割り当てられた少なくとも1つの測定モードのうち1つに切り替
える際に、デフォルト瞳孔間距離、デフォルト角膜頂点間距離、波面測定装置のデフォル
ト位置、波面測定装置の測定光線のデフォルト位置及び/又は方向、当該システムの額及
び顎受けアセンブリのデフォルト位置、及び固視標からなる群内の少なくとも1つを変更
するようさらに構成されたことを特徴とするシステムが提供される。
【0014】
さらに、眼の屈折特性を決定する方法であって、
眼の屈折特性を測定する波面測定装置を含むシステムを用意するステップを含み、
システムを小児に割り当てられた少なくとも1つの測定モードのうち1つに切り替える
ステップと、
デフォルト瞳孔間距離、デフォルト角膜頂点間距離、波面測定装置のデフォルト位置、
波面測定装置の測定光線のデフォルト位置及び/又は方向、システムの額及び顎受けアセ
ンブリのデフォルト位置、及び固視標からなる群内の少なくとも1つを変更するステップ
と、
眼の屈折特性をシステムにより測定するステップと
を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0015】
したがって、特に眼の屈折特性を測定するシステム上で実行されると、上記方法又はそ
の改良形態の1つを実行するプログラムコード手段を備えた、特に非一時的なコンピュー
タープログラム製品が提供される。
【0016】
これに関して、デフォルト瞳孔間距離及び/又はデフォルト角膜頂点間距離は、それぞ
れパラメータとしてシステムの特に非一時的な記憶装置に記憶され得る。したがって、デ
フォルト角膜頂点間距離は、測定された屈折特性からその人の処方又は屈折を決定するた
めの計算パラメータであり得る。したがって、デフォルト瞳孔間距離は、波面測定装置及
び/又は額及び顎受けアセンブリの位置の変更を決定するための計算パラメータであり得
る。
【0017】
用語「屈折」は、人の眼の屈折特性によって決まるその人の屈折異常を矯正するのに必
要な光学補正を意味するものとする。用語「処方」は、最良の屈折を提供すべく決定され
た、眼鏡レンズの例えば球面、軸、及び円柱における特性を意味するものとする。したが
って、本発明によるシステムは、屈折及び/又は処方を決定するための計算エンジン又は
データ処理ユニットをさらに備え得る。
【0018】
本発明のさらに別の態様によれば、小児用の眼鏡レンズ設計を決定する方法であって、
小児の眼の屈折特性を本発明の第1態様による方法又はその改良形態の1つにより測定す
るステップと、測定された屈折特性に基づいて屈折異常を矯正するための屈折を決定する
ステップと、当該屈折に基づいて眼鏡レンズ設計を決定するステップとを含む方法が提供
される。さらに、眼鏡レンズを製造する方法において、眼鏡レンズ設計を上述のように取
得することができ、眼鏡レンズを製造するさらに別のステップを続いて実行することがで
きる。
【0019】
ここで、用語「眼鏡レンズ設計」は、眼鏡レンズの前面及び/又は後面の表面形状の設
計を意味する。
【0020】
さらにまた、10歳未満、特に3歳から10歳の人である小児の眼の屈折特性を決定す
る方法であって、眼から出る波面のみに基づいて小児の眼の屈折特性を測定するステップ
を含む方法が提供される。特に、さらに、自覚的屈折は考慮されない。
【0021】
さらに、10歳未満、特に3歳〜10歳の小児の眼において、屈折異常眼の屈折を測定
するための波面測定装置の使用方法が提供される。
【0022】
特に、眼の屈折特性は、眼の屈折特性を測定する波面測定装置により測定される。さら
に、特に、波面測定装置は、シャック・ハルトマン原理、チェルニング法、又はレイトレ
ーシング法による収差計である。しかしながら、任意の他のタイプの波面センサを用いる
こともできる。
【0023】
これにより、小児の眼の屈折特性を他覚的測定技法のみに基づいて高い信頼性で測定す
ることができるという利点が得られる。しかしながら、測定は迅速に行われ得る。通常、
眼から出る波面に基づいて屈折特性を測定するには、約30秒かかり得る。本発明者らは
、従来技術にあった先入観に反して、波面測定装置に基づく他覚的屈折技法を幼児に対し
て高い信頼性で実践できることを見出した。したがって、眼から出る波面に基づく屈折特
性の測定は、検影法を全自動波面測定装置に完全に置き換えることを可能にする。これに
より、眼の屈折特性を測定することが著しく容易になり、小児の眼の屈折異常の治療の基
礎としてより信頼性の高い結果が得られる。
【0024】
これにより、一般に知られている波面測定装置を適用することができる。しかしながら
、入力装置により、測定装置を少なくとも1つの小児専用モードに設定することができる
。それにより、より詳細に後述するように、特定のハードウェア及び/又はソフトウェア
機能を、小児の眼の屈折特性を測定するための具体的なニーズに合うように変更すること
ができる。
【0025】
さらに、屈折特性の測定全体は、小児の眼から出る波面、特にシャック・ハルトマンセ
ンサ等の波面測定装置に基づいて他覚的方法のみで行われる。これにより、屈折特性の最
速且つ最も信頼性の高い測定が行われる。特に、これにより、検査を行う有資格者、例え
ば光学技術者の側でいかなる高度技能も必要ない完全に自動化された方法で測定を行うこ
とが可能となる。
【0026】
入力装置は、任意の種類の入力装置、例えば、ボタン又はキーボードその他であり得る
。さらに、入力装置は、ユーザにアイコンを見せるタッチスクリーンであり得る。アイコ
ンの選択により、続いてシステムを小児に割り当てられた測定モードに設定することがで
きる。概して、入力装置により、システムを特に小児に割り当てられた測定モードに切り
替えることが可能である。さらに、測定対象者の年齢をシステムに、例えばキーボード又
はタッチスクリーンを介して入力することができる、ということをもたらし得る。年齢に
応じて、例えば年齢が10歳未満、特に3歳〜10歳である場合、システムは、小児に割
り当てられた測定モードに切り替えられる。当然ながら、小児に割り当てられたモードが
2つ以上あってもよい。例えば、3歳〜6歳の小児に割り当てられた第1モード及び7歳
〜10歳の小児に割り当てられた第2モードという2つのモードがあり得る。
【0027】
10歳未満、特に3歳〜10歳の小児の眼の屈折異常眼屈折を測定する波面測定装置の
使用は、これまで考えられていなかった。小児向けには、検影法のみが眼の屈折特性を測
定する技術水準の方法として確立されていた。小児の場合に、検影法に代わるものがない
というのが、光学技術者間でゆるぎない固定観念である。本発明者らは、これが実際には
当てはまらず、波面測定装置を小児に用いることができることを見出した。
【0028】
したがって、最初に提示した問題は完全に解決される。
【0029】
本システムの改良形態において、本システムは、額及び顎受けアセンブリを有し、小児
に割り当てられた少なくとも1つの測定モードのうち1つへのシステムの切り替え時に、
額及び顎受けアセンブリ及び/又は波面測定装置を小児に割り当てられた調整状態へ移動
させるよう構成され、この調整状態は、9.7cm〜10.7cmの平均眼顎間距離に基
づく。特に、平均眼顎間距離は、10.2cmに設定され、眼顎間距離は特に、波面測定
装置の測定光線、特に測定光線の中心と額及び顎受けアセンブリの顎受け部、特に顎受け
部の顎受け面との間の垂直距離である。
【0030】
本方法の改良形態において、上記変更するステップは、システムの額及び顎受けアセン
ブリ及び/又はシステムの波面測定装置を小児に割り当てられた調整状態へ移動させるこ
とを含み、この調整状態は、9.7cm〜10.7cmの平均眼顎間距離に基づき、眼顎
間距離は特に、波面測定装置の測定光線、特に測定光線の中心と額及び顎受けアセンブリ
の顎受け部との間の垂直距離である。
【0031】
本システムは、頭及び顎受けアセンブリを有し得ると共に、小児に割り当てられた測定
モードへのシステムの切り替え時に、頭及び顎受けアセンブリを小児に割り当てられた調
整状態へ移動させるようさらに構成され得る。
【0032】
これにより、頭及び顎受けアセンブリを小児の解剖学的構造に平均的に合う位置へ駆動
することが可能である。これにより、調整状態が平均的に小児の解剖学的構造にすでに合
っているはずなので、屈折特性の測定をより迅速に開始することができる。特に、顎受け
部は、波面測定装置の高さに対して例えば約20mm又は約40mmの固定量だけ持ち上
げられ得る。当然ながら、頭及び顎受けアセンブリの位置及び向きの手動微調整を行うこ
とができる。
【0033】
代替的又は付加的に、従来の頭及び顎受けアセンブリの各部品上に置くことができる顎
及び頭受け用のアダプタを設けることができる。例えば、これらのアダプタ部品には、顎
及び額用の凹部が小児の解剖学的構造に合うように形成され得る。特に、小児の解剖学的
構造は、成人のものよりも小さい。したがって、額用の受け部及び顎用の受け部が相互に
対して可動でない場合、アダプタ部品は、小児の顔を成人用の寸法の額及び顎受けアセン
ブリに嵌める役割を果たし得る。例えば、約10mm〜約40mm、特に10mm〜20
mmの厚さを有し得るアダプタ部品が、顎受け部上に配置され得る。特に、この厚さは1
0mm、20mm、30mm、又は40mmであり得る。さらに、約1mm〜約15mm
、特に約5mm〜約10mmの厚さを有し得るアダプタ部品が、額受け部に配置され得る
。特に、この厚さは1mm、5mm、10mm、又は15mmであり得る。これらのアダ
プタ部品の設計は、例えばアダプタ部品上の色及び/又は絵により特に小児用に適したも
のとされ得る。
【0034】
本システムの改良形態において、本システムは、小児に割り当てられた測定モードへの
システムの切り替え時にデフォルト瞳孔間距離を変更するよう構成され、デフォルト瞳孔
間距離は、45mm〜55mmの範囲の値に設定される。特に、デフォルト瞳孔間距離は
、48mm又は54mmに設定される。さらに、特に、デフォルト瞳孔間距離は、3歳〜
6歳の小児では48mmに、7歳〜10歳の小児では54mmに設定される。
【0035】
本システムの改良形態において、本システムは、デフォルト角膜頂点間距離を10.5
mm〜11.5mmの範囲の値に変更するよう構成される。特に、角膜頂点間距離は11
mmに設定され得る。本システムは、小児に割り当てられた測定モードへのシステムの切
り替え時にデフォルト角膜頂点間距離を変更するよう構成することができ、デフォルト角
膜頂距離は、10.5mm〜11.5mmの範囲の値に設定される。
【0036】
したがって、本方法の改良形態において、上記変更するステップは、デフォルト瞳孔間
距離を45mm〜55mmの範囲の値に設定することを含み、且つ/又は上記変更するス
テップは、デフォルト角膜頂点間距離を10.5mm〜11.5mmの範囲の値に設定す
ることを含む。さらに、特に、デフォルト瞳孔間距離は、3歳〜6歳の小児用には48m
mに、7歳〜10歳の小児用には54mmに設定される。特に、角膜頂点間距離は11m
mに設定され得る。
【0037】
本システムは、小児に割り当てられた測定モードへのシステムの切り替え時にデフォル
ト瞳孔間距離を小児に割り当てられた瞳孔間距離に調整するよう構成され得る。
【0038】
これにより、小児に割り当てられた測定モードでの初期瞳孔間距離を平均的な小児の眼
に合わせておくことができる。これにより、画像認識による瞳孔の開口の自動捕捉が容易
になり加速される。例えば、装用位置のパラメータに関して上述したように、事前設定さ
れた瞳孔間距離をより小さな初期条件に切り替えることができる。
【0039】
成人向けには、標準設計を通常は平均的な解剖学的寸法に適合させる。通常、瞳孔間距
離は、成人用には60mm、64mm、又は68mmに事前決定されている。成人用に事
前決定された平均眼顎間距離は、通常は11.4cmである。成人用に事前決定された角
膜頂点間距離は、通常は12mmである。しかしながら、これでは、小児の瞳孔が初期デ
フォルト位置にある波面センサの範囲内にないことになり、且つ/又は角膜頂点間距離の
場合には小児の処方が適切に提案されなくなる。小児の瞳孔が波面センサの範囲内にあり
、自動的な捕捉及び調整手順を初期化できるようにシステムを手動で調整することは、面
倒であり得る。したがって、デフォルト瞳孔間距離を切り替えることにより、小児の瞳孔
がすでに範囲内にあって自動調整手順を行うことができる。出生時の平均瞳孔間距離は約
42mmであり、それから男児は1.6mm、女児は1.9mm伸びる。3歳では、性別
に関係なく平均瞳孔間距離は47mmである。
【0040】
本システムは、小児の年齢に応じてデフォルト瞳孔間距離を調整するよう構成すること
ができ、年齢はシステムに入力される。年齢は、システムに手動で入力され得る。さらに
、年齢は、システムに記憶されているか又はネットワーク経由でシステムに伝送された小
児に関連するデータから読み出されてもよい。特に、年齢に応じたデフォルト瞳孔間距離
は、システムに記憶された表から読み出され得る。さらに、特に、デフォルト瞳孔間距離
は、男児では式PD=42mm+(年齢×1.9mm)、女児ではPD=42mm+(年
齢×1.6mm)に応じて計算することができ、ここにPDはミリメートル単位のデフォ
ルト瞳孔間距離であり、「年齢」は小児の満年齢である。当然ながら、対応する方法ステ
ップも実行することができる。
【0041】
本システムは、小児に割り当てられた測定モードへのシステムの切り替え時に、デフォ
ルト角膜頂点間距離を小児に割り当てられた角膜頂点間距離に調整するようさらに構成さ
れ得る。
【0042】
平均角膜頂点間距離は、成人用には12mmに設定される。これは、測定された波面か
らの処方、例えば球面、円柱、及び軸の計算時に用いられる。当然ながら、処方すべき眼
鏡の屈折特性は、想定される角膜頂点間距離に応じて変わる。したがって、小児の場合、
異なるデフォルト角膜頂点間距離が設定される。特に、小児に割り当てられたモードでの
デフォルト角膜頂点間距離は、成人用のデフォルト角膜頂点間距離よりも小さい。特に、
デフォルト角膜頂点間距離は、11mmに設定することができる。
【0043】
本システムの改良形態において、本システムは、小児に割り当てられた少なくとも1つ
の測定モードのうち1つにおいて、固視標を、人物データに基づいた固視標のタイプの選
択、固視標を表示するシステムの表示装置上での固視標の移動、及び固視標を表示するシ
ステムの表示装置の眼から離れる移動からなる群内の少なくとも1つにより変更するよう
構成される。
【0044】
したがって、本方法の改良形態において、本システムは、固視標を表示する表示装置を
備え、上記変更するステップは、人物データに基づいた固視標のタイプの選択、固視標を
表示するシステムの表示装置上での固視標の移動、及び固視標を表示するシステムの表示
装置の眼から離れる移動からなる群内の少なくとも1つを含む。
【0045】
したがって、本システム又は本方法は、固視標を経時的に変えるよう構成され得る。こ
れにより、小児の注意及び動機付けを維持することができる。しかしながら、刺激的な視
標に対する固視は、小児の眼の望ましくない遠近調節を誘発し得るので、個々の固視標は
過度に刺激的でないべきである。したがって、固視標は、特定の時間間隔、例えば1秒毎
〜12秒毎の範囲の時間間隔、特に2秒毎〜10秒毎の範囲の時間間隔、例えば3秒毎〜
7秒毎の範囲の時間間隔で変わり得る。例えば、この時間間隔は、2秒毎、5秒毎、又は
10秒毎であり得る。
【0046】
表示装置を有する本システムは、表示装置を眼から遠ざけることにより固視標を曇らせ
るよう構成され得る。このような固視標の曇らせを用いて、遠近調節の誘発をさらに抑制
することができ、このような曇らせは当業者には概して既知である。例えば、正レンズで
人の眼を「曇らせ」て、遠近調節で固視標のぼけがより強くなるようにすることができる
。これにより、眼が遠近調節機構を緩めることが促される。海上の帆船、田畑のトラクタ
ー、又は空に浮かぶ気球等の固視標を人に見せることができる。この固視標を続いて曇ら
せて遠近調節を緩めることができる。さらに、本システムは、小児の人物データに基づい
て固視標のタイプを選択するよう構成され得る。これにより、例えば小児の性別及び/又
は年齢に関する、例えばシステムに記憶された小児の人物データを読み出すことができる
。これに基づき、特定の固視標の組を選択して、これらを経時的に変化させて小児に提供
することができる。特に、男児専用の固視標の組及び女児専用の固視標の組があり得る。
固視標の自動設定の代替形態として、システムがユーザ入力で固視標の組を手動で選択で
きるようにすることも可能であり得る。
【0047】
本システムの改良形態において、本システムは、固視標を表示する表示装置を備え、こ
の表示装置は、固視標を含む映像を見せるよう構成され、この映像は、1秒間に少なくと
も20個の画像の頻度を有する一連の画像である。
【0048】
したがって、本方法の改良形態において、本方法は、固視標を含む映像を見せることを
さらに含み、この映像は、1秒間に少なくとも20個の画像の頻度で見せられる一連の画
像である。
【0049】
固視標を含む映像を見せることができ、この映像は、1秒間に少なくとも20個の画像
の頻度で見せられる一連の画像である。好ましくは、一連の画像は、1秒間に少なくとも
24個見せられる。さらにより好ましくは、映像は、1秒間に少なくとも30個の頻度で
見せられる一連の画像である。
【0050】
したがって、固視標を人に、特に小児に、その中でも特に3歳〜10歳の小児に見せる
映像を見せることができる。これに関して、映像は、任意の連続した単画像ではなく、1
秒間に少なくとも20個の画像の頻度で見せられる一連の画像を意味する。これは、一連
の画像を人が映画として知覚することを確実にするためである。これにより、映像が移動
固視標を含むことが可能になる。移動固視標は、波面測定中に人、特に小児の注意を引き
付けるのに有利であることが分かっている。さらに、これにより、より詳細に後述するよ
うに、映像は、固視標が眼による遠近調節を回避するよう移動するように提供することが
できる。したがって、特に小児の場合、注意を引き付けることができ、かつ望まれない遠
近調節を回避することができ、小児の場合でも波面測定技法による純粋な他覚的屈折で信
頼性の高い結果が可能となる。
【0051】
本システムの改良形態において、本システムは、遠近調節検出装置、特に瞳孔サイズ測
定装置と、警報装置とをさらに備え、本システムは、遠近調節検出装置、例えば瞳孔サイ
ズ測定装置で遠近調節が検出された場合に警報装置で警報を提供するよう構成される。
【0052】
したがって、本方法の改良形態において、本方法は、眼の遠近調節を特に瞳孔サイズ測
定装置で監視するステップと、遠近調節が検出された場合に特に警報装置で警報を提供す
るステップとをさらに含む。
【0053】
これにより、遠近調節が検出された場合、測定を再度行わなければならないか否かの情
報を提供する警報を与えることができる。瞳孔サイズ測定装置の例は、例えば、米国特許
第5790235号明細書(特許文献6)に記載されている。警報装置の例は、システム
のディスプレイ上への表示、ノイズ、及び/又はシステム上の任意の種類の視覚表示、例
えばランプであり得る。特に、警報装置は、瞳孔径が規定の閾値未満に減少した場合に用
いられ得る。さらに、画像処理装置を、データ処理ユニット上にハードウェア実装又はソ
フトウェア実装で画像取得装置、例えばカメラと共に設けることもでき、この画像処理装
置は、眼の画像を取得して瞳孔サイズ、特に瞳孔径を画像処理により測定する。例えば、
このような画像処理は、瞳孔の外径のエッジ検出であり得る。瞳孔の外径には、暗から明
への急激な変化が存在する。したがって、このようなエッジは、画像処理で容易に検出可
能であり、当業者には概して既知である。特に、これらの装置は、測定プロセスの初めに
波面測定装置を小児の瞳孔の特定の位置に調整するために用いられるものと同じであり得
る。
【0054】
瞳孔径が特定の閾値未満に減少した場合に、瞳孔の遠近調節が検出され得る。このよう
な閾値は、検出した最大径の50%として、又は初期検出径の70%として設定され得る
。さらに、本システムは、瞳孔測定装置により連続的に、又は所定の時間間隔で、例えば
0.1s〜1sの範囲の、特に0.1s、0.2s、0.5s、又は1sの時間間隔で、
瞳孔のサイズ、特に直径を追跡するよう構成することができ、sは秒の単位である。これ
により、瞳孔のサイズ及びいわゆる瞳孔の「ポンピング」を追跡することが可能であり、
すなわち、交互に増減する瞳孔径を検出することができる。瞳孔のこのようなポンピング
は、望まれない遠近調節を強く示すものでもある。
【0055】
本システムの改良形態において、本システムは、第1知覚距離から第2知覚距離へ移動
する固視標を見せるよう構成され、第1知覚距離は第2知覚距離よりも小さく、第1知覚
距離は1ジオプター〜4ジオプターの範囲にあり、第2知覚距離は0.5ジオプター〜0
ジオプターの範囲にある。
【0056】
したがって、本方法の改良形態において、上記変更するステップは、第1知覚距離から
第2知覚距離へ移動する固視標を見せることをさらに含み、第1知覚距離は第2知覚距離
よりも小さく、第1知覚距離は1ジオプター〜4ジオプターの範囲にあり、第2知覚距離
は0.5ジオプター〜0ジオプターの範囲にある。
【0057】
ここでは、「ジオプター」は1/mの単位を意味し、mはメートルである。ジオプター
は、「dpt」とも省略される。したがって、「0ジオプターの距離」では、人間の眼は
鮮明な画像を取得するために余計な遠近調節を必要とすることなく、眼が無限遠に合焦す
ることになることが意味される。例えば、「3ジオプターの距離」では、眼は、鮮明な画
像を取得するためにあと3ジオプターだけ遠近調節する必要がある。したがって、固視標
を例えば「3ジオプターの距離から0ジオプターの距離へ」移動させた場合、このような
固視標の変更は、眼をリラックスさせ、遠近調節を回避するのに役立つ。
【0058】
したがって、表示装置を有する本システムは、映像を固視標として見せるよう構成され
得る。特に、映像は、例えば3ジオプターから始まって0ジオプターで終わる知覚距離で
見せられる固視標を含み得る。静止画又は一連の画像の代わりに、このような映像は、遠
近調節を回避するのにさらに寄与し得ると共に小児の注意力を高め得る。したがって、小
児の視線方向がより視標に集中することにより、屈折特性の測定が改善され得る。
【0059】
映像は、固視標を種々の知覚距離で見せるものを含み得る。これに関する用語「知覚距
離」は、人に、特に小児に対して映像を表示するディスプレイの実距離が変わらないこと
を意味する。しかしながら、映像中の固視標は、背景の前方で又は映像中で見せられる他
の物体に対してそのサイズを変えるので、人、特に小児にとっては、固視標が以前よりも
遠くにあるように見える。
【0060】
人に見せられる映像において固視標が人から遠ざかるように見えることで、眼及びその
瞳孔が弛緩状態になることが判明している。したがって、遠近調節を回避することができ
、瞳孔が開いたままとなり得る。さらに、移動固視標は、人の、特に小児、特に3歳〜1
0歳の小児の注意を引いて維持するのに役立つ。
【0061】
映像は、固視標が第1知覚距離から第2知覚距離へ移動しながら見せられるものを含む
ことができ、第1知覚距離は第2知覚距離よりも小さい。換言すれば、人の、特に小児の
知覚では固視標が人から遠ざかる。すでに説明したように、このような固視標は、人の眼
を弛緩させるのに役立つと共に遠近調節を回避するのに役立ち得る。
【0062】
本システム又は本方法のさらに別の改良形態において、映像は、固視標が第3知覚距離
から第1知覚距離へ移動しながら見せられるものを含むことができ、第3知覚距離は第1
知覚距離よりも大きい。
【0063】
換言すれば、固視標は、人の知覚では映像の表示中に人に近付く。第3知覚距離は、第
2知覚距離と等しくてもよく、又は第2知覚距離とは異なっていてもよい。特に、固視標
が第3知覚距離から第1知覚距離へ移動した後に第1知覚距離から第2知覚距離へ移動す
るようにする。したがって、固視標はまず人に近付いてから人から遠ざかり、特に無限遠
へ消え去るようにすることもできる。これにより、固視標が人から、特に小児から遠ざか
る間の遠近調節をさらに回避することができる。したがって、眼から出る波面が、固視標
が第1知覚距離から第2知覚距離へ移動する時間間隔中に測定されるようにすることがで
きる。
【0064】
本システム及び本方法のさらに別の改良形態において、映像がディスプレイに表示され
、映像が表示されている際にディスプレイと眼との間の実距離が変更され、特にディスプ
レイは、映像が表示されている際に眼から遠ざかるようにすることができる。
【0065】
したがって、特にディスプレイを人から遠ざけることにより行われ得るような、固視標
の曇らせも提供され得る。これにより遠近調節の回避を助けることができる。特に、ディ
スプレイと眼との間の実距離は、映像を見せている間に、特に固視標が第1知覚距離から
第2知覚距離へ移動しながら見せられている間に変更され得る。
【0066】
さらに別の改良形態において、本方法は、映像が表示されている際にオーディオコンテ
ンツを再生するステップを含み得る。
【0067】
したがって、対応して提供されるシステムは、人、特に小児に音を聞かせるスピーカシ
ステムを備え得る。オーディオコンテンツは、人、特に小児をくつろいだ気分にするメロ
ディ又は音楽であり得る。このような影響が眼の遠近調節の回避に役立ち得ることが分か
っている。さらに、オーディオコンテンツがディスプレイに表示された映像に対応する音
であるようにすることができる。したがって、オーディオコンテンツは、映像中で見せら
れる物体、漫画キャラクター、及び人物の音声情報及び他の音を含み得る。
【0068】
概して、本システムは、小児に割り当てられた測定モードの開始時に、測定について小
児に説明する漫画キャラクターを表示装置を介して小児に見せるようさらに構成され得る
。さらに、この種の指導映像において、大事なこと、及び測定に協力して良い結果を得る
ためのやり方を小児に説明することができる。
【0069】
概して、小児に割り当てられた測定モードへのシステムの切り替えは、あらゆる種類の
入力装置により行うことができる。入力装置は、システムに設けられた特定のボタンであ
り得る。さらに、入力装置は、システムのディスプレイ上の特定のボタンをクリックでき
るようにするキーボード又はトラックボール又はマウス装置であり得る。当然ながら、単
一の音声命令による小児に割り当てられた測定モードへのシステムの切り替えを可能にす
る音声命令も実現することができる。したがって、入力装置をマイクロフォン装置として
音声検出を行うこともできる。
【0070】
当然ながら、上述した特徴及び以下で説明される特徴は、説明に挙げた特定の組み合わ
せだけでなく、独立して、又は本発明の範囲を逸脱することなく開示された特徴の他のあ
らゆる組み合わせで用いることもできる。
【0071】
次に、図面を参照して例示的な実施形態を説明する。