【文献】
Curr. Med. Res. Opin., 2004, Vol.20, No.4, pp.565-572
【文献】
KOBAYASHI Takumi, et al., "Increase of Eicosapentaenoic Acid in Thraustochytrids through Thraustochy
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビグアナイド化合物が、同量の前記ビグアナイド化合物を有する即時放出製剤と比較すると、前記遅延放出製剤において約40、50、または60%の低下された相対的生物学的利用能を有し、ここで、該同量のビグアナイド化合物を有する即時放出製剤が、Glucophage(登録商標)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
前記抗糖尿病薬が、チアゾリジンジオン、スルホニルウレア、メグリチニド、α−グルコシダーゼ阻害剤、DPP−IV阻害剤、インクレチンミメティック、およびSGLT阻害剤からなる群から選択される、請求項13に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
対象におけるメトホルミン等のビグアナイド化合物の全身性生物学的利用能を最小化し、なおさらに、有意に有益な代謝効果、例えば、高血糖の低減を提供する方法および組成物が本明細書に企図される。従来の理解に反して(例えば、上記のMulherinらを参照されたい)、本開示のビグアナイド化合物は、事実上、腸内分泌細胞の管腔または上皮側(すなわち、胃腸管側)との相互作用を含み得る作用の機序を通してGLP−1の放出を生じ、全身性生物学的利用能は、したがって、なお有意義な治療効果を達成しながら最小化され得る。有利に、主題の方法および組成物はGI忍容性を著しく改善し、また、さもなければ禁忌となる患者がここで効果的に治療され得るように、乳酸アシドーシス等の有害作用の可能性を低減する。
【0033】
したがって、ビグアナイド化合物のGI忍容性を改善する、および/またはビグアナイド化合物投与の結果生じるGI合併症を減少させる方法が本明細書に提供され、治療的有効量のビグアナイド化合物を遅延放出製剤でそれを必要とする対象に投与することを含み、その遅延放出製剤は、対象における化合物の全身性レベルを最小化する。対象において、および特に、ビグアナイド化合物(複数可)に対する禁忌を有する対象において、代謝障害を治療する方法がまた本明細書に提供され、治療的有効量のビグアナイド化合物を遅延放出製剤でそれを必要とする対象に投与することを含み、その遅延放出製剤は、対象における化合物の全身性レベルを最小化する。好ましい実施形態において、ビグアナイド化合物は、メトホルミン、ブホルミン、フェンホルミン、およびイメグリミンから成る群から選択され、なお所望の代謝改善を達成しながら、現在指示されるものよりも低い用量および/または低い生物学的利用能で投与される。
【0034】
定義
本明細書で使用される場合「胃腸管」および「腸」という用語は、胃および腸管を指す。「小腸」または「腸管の上部」は、十二指腸、空腸、および回腸を含み、「大腸」または「腸管の下部」は、盲腸、結腸、および直腸を含む。「遠位」小腸には、空腸および回腸を含む。
【0035】
任意の状態、疾患、または障害の「治療する」または「治療」は、いくつかの実施形態において、その疾患、障害、または状態を回復させることを指す(すなわち、疾患、障害、もしくは状態、または少なくとも1つのそれらの臨床症状の発症を抑止するか、低下させる)。他の実施形態において、「治療する」または「治療」は、対象によって識別可能であるか、またはそうでなくてもよく、望ましくないが臨床的に有意な生理的パラメーターを含む、少なくとも1つの生理的パラメーターを回復させることを指す。さらに他の実施形態において、「治療する」または「治療」は、物理的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理的に(例えば、生理的パラメーターの安定化)のいずれか、またはその両方で、疾患、障害、または状態を阻害することを指す。さらに他の実施形態において、「治療する」または「治療」は、疾患、障害、または状態の開始を妨げること、または遅らせることを指す。
【0036】
「治療的に有効な量」または「有効量」は、疾患、障害、または状態を治療するために対象に投与されるときに、疾患、障害、または状態のためのそのような治療の効果に十分である、組成物、化合物、療法、または一連の治療の量を意味する。「治療的に有効な量」は、組成物、化合物、療法、一連の治療、疾患、障害、もしくは状態、およびその重症度、ならびに治療される対象の年齢、体重等に応じて変動する。
【0037】
本明細書に記載のビグアナイド化合物が1つ以上のキラル中心を含む場合、そのようなキラル中心の立体化学は、独立して、RもしくはS立体配置、またはその2つの混合物内に存在し得る。キラル中心は、RもしくはS、またはR,S、またはd,D、1,Lもしくはd,l、D,Lとして、さらに指定され得る。それに応じて、本発明のビグアナイド化合物は、それらが光学的に活性型で存在し得る場合、エナンチオマーのラセミ混合物の形態で、または実質的に単離され精製された形態の別々のエナンチオマーのいずれかの形態で、または任意の相対的比率のエナンチオマーを含む混合物として、実際に存在することができる。
【0038】
本明細書に記載のビグアナイド化合物が2つ以上のキラル中心を含む場合、次いで、ジアステレオマーも可能である。そのようなジアステレオマーは、純粋なジアステレオマーのエナンチオマー、ジアステレオマーのエナンチオマーの純粋なラセミ混合物、ラセミ体であり得るか、または、その混合物の均衡においてエナンチオマーのジアステレオマーの複雑な順序のため、それら自身の右位に旋光性を有し得るジアステレオマーの混合物として、存在し得る。
【0039】
本発明のビグアナイド化合物は、それらが、幾何的に異性体型で周囲に存在し得る場合(例えば、グアニド結合(guanide bond))、次いでそれらは、任意の相対的比率の異性体を含む幾何異性体の混合物の形態で、または、いくつかの場合において、実質的に単離され精製された形態の別々の幾何異性体のいずれかの形態で、実際に存在することができる。
【0040】
本明細書に記載のビグアナイド化合物が1つ以上の単離された、または直線的な共役二重結合を含む場合、そのような二重結合の周りの幾何学は、独立して、そのシス/トランス、E/Z混合物、またはEもしくはZ幾何異性体であってもよい。
【0041】
「アルキル」は、直鎖または分枝鎖の、飽和一価炭化水素ラジカルを意味する。例として、炭化水素鎖は、1〜20個の炭素、1〜16個の炭素、1〜14個の炭素、1〜12個の炭素、1〜10個の炭素、1〜8個の炭素、1〜6個の炭素、1〜4個の炭素等を有し得る。「低級アルキル」は、例えば、1〜6個の炭素、1〜4個の炭素等を有するアルキルを指してもよい。ある特定の例において、直鎖アルキルは、1〜6個の炭素原子を有してもよく、分岐鎖アルキルは、3〜6個の炭素原子有してもよい、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル(すべての異性体型を含む)、ペンチル(すべての異性体型を含む)等。「Me」はメチルを意味し、「Et」はエチルを意味し、「iPr」はイソプロピルを意味する。
【0042】
「アリール」は、一価の単環式または二環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、例えば、6〜20個または6〜10個の環原子、例えばフェニルまたはナフチルを有する。
【0043】
「アルキルアリール」は、a(アルキレン)−Rラジカルを意味し、Rは上で定義されたアリールである。
【0044】
「シクロアルキル」は、環式の飽和または部分飽和一価炭化水素ラジカル(または脂環式ラジカル)を意味する。例として、シクロアルキルは、3〜20個の炭素原子、3〜16個の炭素原子、3〜14個の炭素原子、3〜12個の炭素原子、3〜10個の炭素原子、3〜8個の炭素原子、3〜6個の炭素原子等を有してもよく、1つまたは2つの炭素原子は、オキソ基、例えば、アドマンタニル(admantanyl)、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、インダニル等で置換され得る。
【0045】
「アルキルシクロアルキル」は、a(アルキレン)−Rラジカルを意味し、Rは、上で定義されるシクロアルキル;例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルエチル、またはシクロヘキシルメチル等である。
【0046】
「ヘテロシクリル」または「ヘテロシクロアルキル」は、飽和または不飽和一価単環式基を意味し、1つまたは2つの環原子は、N、O、またはSから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は、Cである。ヘテロシクリル環は、本明細書において定義されるように、(一つの)アリールまたはヘテロアリール環に融合されていてもよい。単環式アリールまたはヘテロアリール環に融合されているヘテロシクリル環はまた、本出願において、「二環式ヘテロシクリル」環とも称される。加えて、ヘテロシクリル環中の1つまたは2つの環炭素原子は、任意に−CO−基で置換されてもよい。より具体的には、ヘテロシクリルという用語は、ピロリジノ、ピペリジノ、ホモピペリジノ、2−オキソピロリジニル、2−オキソピペリジニル、モルホリノ、ピペラジノ、テトラヒドロピラニル、チオモルホリノ等を含むが、これらに限定されない。ヘテロシクリル環が不飽和である場合、それは1つまたは2つの環二重結合を含有する。ヘテロシクリル基が、少なくとも1つの窒素原子を含有する場合、それはまた、本明細書でヘテロシクロアミノとも称され、ヘテロシクリル基のサブセットである。ヘテロシクリル基が飽和環であり、上で記述されたアリールまたはヘテロアリール環に融合されない場合、それはまた、本明細書で飽和単環式ヘテロシクリルとも称される。
【0047】
「アルキルヘテロシクロアルキル」は、a−(アルキレン)−Rラジカルを意味し、Rは、上で定義されるヘテロシクリル環、例えば、テトライドロフラニルメチル(tetraydrofuranylmethyl)、ピペラジニルメチル、モルホリニルエチル等である。
【0048】
「ヘテロアリール」は、一価の単環式または二環式芳香族ラジカルを意味し、1つ以上の、好ましくは1、2、または3つの環原子は、N、O、またはSから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子は、炭素である。代表的な例には、ピロリル、チエニル、チアゾリル、イミダゾリル、フラニル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ジアゾリル(diazolyl)、ピラゾリル、トリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、テトラゾリル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
「オキソ」または「カルボニル」は、それぞれ、=(O)基またはC=O基を意味する。
【0050】
「置換される」という用語は、言及される基が、本明細書に記載の基から独立して選択される1つ以上のさらなる基(複数可)で個々に置換されることを意味する。いくつかの実施形態において、任意的置換基は、オキソ、ハロゲン、−CN、−NH
2、−OH、−NH(CH
3)、−N(CH
3)
2、アルキル(直鎖、分岐、および/または不飽和アルキルを含む)、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、フルオロアルキル、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アルコキシ、フルオロアルコキシ、−S−アルキル、−S(O)
2−アルキル、−CONH((置換もしくは非置換アルキル)または(置換もしくは非置換フェニル))、−CON(Hもしくはアルキル)
2、−OCON(置換もしくは非置換アルキル)
2、−NHCONH((置換もしくは非置換アルキル)または(置換もしくは非置換フェニル))、−NHCOアルキル、−N(置換もしくは非置換アルキル)CO(置換もしくは非置換アルキル)、−NHCOO(置換もしくは非置換アルキル)、−C(OH)(置換もしくは非置換アルキル)
2、および−C(NH
2)(置換もしくは非置換アルキル)
2から選択される。いくつかの実施形態において、例として、任意的置換基は、オキソ、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、−CN、−NH
2、−OH、−NH(CH
3)、−N(CH
3)
2、−CH
3、−CH
2CH
3、−CH(CH
3)
2、−CF
3、−CH
2CF
3、−OCH
3、−OCH
2CH
3、−OCH(CH
3)
2、−OCF
3、−OCH
2CF
3、−S(O)
2−CH
3、−CONH
2、−CONHCH
3、−NHCONHCH
3、−COCH
3、−COOH等から選択される。いくつかの実施形態において、置換基は、前述の基のうちの1個、2個、または3個で置換される。いくつかの実施形態において、置換基は、前述の基のうちの1個または2個で置換される。いくつかの実施形態において、置換基は、前述の基のうちの1個で置換される。さらに、反して記述されない限り、実線のみで示され、楔または破線を伴わない化学結合をもつ式は、それぞれの可能な異性体、例えば、それぞれのエナンチオマーおよびジアステレオマー、ならびにラセミまたはスカレミック混合物等の異性体の混合物を企図する。
【0051】
いくつかの実施形態において、本開示のビグアナイド化合物は、塩として組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、塩は、本開示の化合物を酸と反応させることによって得られる。いくつかの他の実施形態において、薬学的に許容される塩は、本開示の化合物を塩基と反応させることによって得られる。他の実施形態において、化合物は、本明細書に記載の組成物の製造において、遊離酸または遊離塩基の形態として使用される。塩のタイプには、(1)化合物の遊離塩基形態を、薬学的に許容される:例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタリン酸等の無機酸と;または、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、2−ナフタリンスルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]オクト−2−エン−l−カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−l−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、酪酸、フェニル酢酸、フェニル酪酸、バルプロ酸等の有機酸と;反応させることによって形成される、酸付加塩、(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類イオン(例えば、マグネシウムもしくはカルシウム)、またはアルミニウムイオンで置換されるときに、形成される塩、が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合において、本明細書に記載のビグアナイド化合物は、限定されないが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン等の有機塩基と反応する。他の場合において、本明細書に記載の化合物は、限定されないが、アルギニン、リジン等のアミノ酸と塩を形成する。酸性プロトンを含む化合物と塩を形成するために使用される許容される無機塩基には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
「アミノ酸」という用語は、20個の天然アミノ酸のうちのいずれか、または天然アミノ酸のうちのいずれかのD型を含む。加えて、「アミノ酸」という用語はまた、天然アミノ酸の機能的同等物であるDアミノ酸に加えて、他の非天然アミノ酸も含む。そのような非天然アミノ酸には、例えば、ノルロイシン(「Nle」)、ノルバリン(「Nva」)、L−またはD−ナフタレニン(naphthalanine)、オルニチン(「Orn」)、ホモアルギニン(ホモArg)、ならびに、その両方が参照により本明細書に組み込まれる、M.Bodanzsky,「Principles of Peptide Synthesis」1st and 2nd Revised Ed.,Springer−Verlag,New York,N.Y.,1984 and 1993、およびStewart and Young,「Solid Phase Peptide Synthesis」2nd Ed.,Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.,1984に記載されるような、ペプチド分野でよく知られた他のものを含む。
【0053】
アミノ酸およびアミノ酸類似体は、商業的に購入されてもよく(Sigma Chemical Co.;Advanced Chemtech)、または当該技術分野で既知の方法を使用して合成されてもよい。
【0054】
実施形態の範囲において、本明細書に記載のビグアナイド化合物は、薬学的に許容される塩、溶媒和物(水和物を含む)、非晶相、部分的結晶および結晶形態(すべての多形体を含む)、プロドラッグ、代謝産物、N−酸化物、同位体的に標識されたエピマー、純粋なエピマー、エピマー混合物、単一エナンチオマーおよびエナンチオマーのジアステレオマーを含むが、これらに限定されないエナンチオマー、メソ化合物、立体異性体、ラセミ混合物、ならびにジアステレオ異性体の混合物等の化合物の形態をさらに含む。1つ以上の二重結合を有する本明細書に記載のビグアナイド化合物は、シス/トランス異性体、E/Z異性体、および幾何異性体を含む。本明細書に記載のビグアナイド化合物は、親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンで置換されるか、または有機塩基と調和するときに形成される薬学的に許容される塩として調製され得る。加えて、開示される化合物の塩形態は、出発物質または中間体の塩を使用して調製され得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のビグアナイド化合物は、それらの溶媒添加形態または結晶形態、特に、溶媒和物または多形体を含む。溶媒和物は、化学量論または非化学量論量いずれかの溶媒を含有し、水、エタノール等の薬学的に許容される溶媒を用いた結晶化のプロセス中に形成されてもよい。溶媒が水である場合、水和物が形成され、または溶媒がアルコールである場合は、アルコラートが形成される。
【0056】
上で述べたように、いくつかの実施形態において本明細書に記載のビグアナイド化合物は、1つ以上の立体中心を持ち、各中心は独立して、RまたはSいずれかの立体配置中に存在する。本明細書に提示されるビグアナイド化合物は、すべてのジアステレオマー、エナンチオマー、およびエピマーの形態、ならびにそれらの適切な混合物を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるビグアナイド化合物上の部位は、種々の代謝反応に影響されやすい。したがって、代謝反応の位置での適切な置換成分の取り込みは、代謝経路を減少する、最小化する、または排除する。特定の実施形態において、代謝反応への芳香族環の感受性を減少させる、または排除するための適切な置換成分は、例として、ハロゲン、重水素、またはアルキル基である。
【0058】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のビグアナイド化合物は、同位体的に標識され、それは本明細書に提示される種々の式および構造中で列挙されるものと同じであるが、実際は、1つ以上の原子が、自然界で通常見られる原子質量もしくは質量数とは異なる原子質量もしくは質量数を有する原子で置換される。いくつかの実施形態において、1つ以上の水素原子は、重水素で置換される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物上の代謝部位は、重水素化される。いくつかの実施形態において、重水素での置換は、例えば、増大したインビボでの半減期または低下した必要な投与量等、より大きな代謝安定性の結果として起こるある特定の治療利益を与える。本明細書全体を通して、基およびそれらの置換成分は、安定した部分および化合物を提供するために、当業者によって選択され得る。
【0059】
ビグアナイド
本明細書で開示される組成物および方法は、メトホルミンおよび他のビグアナイドに関する。背景として、メトホルミンは、ビグアナイドとして既知の分類の化合物の最も単純な構造変異体の1つである。構造的展望から、メトホルミンは、ファーマコフォアまたはより大きい生物学的活性化学構造の断片に似ている。
【0060】
1つの実施形態において、主題の発明のビグアナイド化合物は、以下:
を含み、式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7は独立して、
H、OH、
O−Rx(式中、Rxが、アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アシル、エステル、チオエステルである);
置換されていてもよいアルキル(例えば、酸素、ケイ素、硫黄で置換されていてもよく、またはOH、O−アルキル、SH、S−アルキル、NH
2、NH−アルキルで置換されていてもよいC
1〜C
12直鎖または分枝鎖アルキル);シクロアルキル(例えば、C
3〜C
7シクロアルキル);アルキルシクロアルキル(例えば、C
4〜C
12アルキルシクロアルキル);ヘテロシクロアルキル(例えば、該ヘテロ環は、O、S、またはNから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含み、C
2〜C
6ヘテロシクロアルキルが含まれる);アルキルヘテロシクロアルキル(例えば、該ヘテロ環が、O、S、またはNから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含み、C
3〜C
11アルキルヘテロシクロアルキルが含まれ、Nが複素環式環に存在するとき、窒素原子は、アミド、カルバミン酸塩、または尿素の形態であり得ることを含む);置換されていてもよいアルケニル(例えば、酸素、ケイ素、硫黄で置換されていてもよく、OH、O−アルキル、SH、S−アルキル、NH
2、NH−アルキルで置換されていてもよいC
1〜C
12直鎖または分枝鎖アルケニル);置換されていてもよいアルキニル(例えば、酸素、ケイ素、硫黄で置換されていてもよく、OH、O−アルキル、SH、S−アルキル、NH
2、NH−アルキルで置換されていてもよいC
1〜C
12直鎖または分枝鎖アルキニル);
置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル);置換されていてもよいアルキルアリール(例えば、アルキルフェニル、アルキル置換フェニル、アルキルナフチル、アルキル置換ナフチル);置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、それらすべてが置換されていてもよい、ピリジル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ジアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル);置換されていてもよいアルキルヘテロアリールから選択され、かつ
あるいはR
6およびR
7は、一緒に結合を形成し、それらが結合している窒素原子を含む環をともに形成し得、
あるいはR
1およびR
2は、それらが結合している窒素原子を含む3〜8員複素環式環をともに形成し得、
あるいはR
4およびR
5は、それらが結合している窒素原子を含む、アジリジン、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、インドリル、インドリニル、ピロリジニル、ピペラジニル、およびピペリジルの群から選択される環をともに形成し得る。
【0061】
ある特定の実施形態において、O−Rxは、O−C
1〜C
8直鎖または分枝鎖アルキル;O−C
3〜C
7シクロアルキル;O−C
4〜C
8アルキルシクロアルキル;O−アシル;O−エステル;およびO−チオエステルから選択され得る。
【0062】
他の実施形態において、任意的置換には、例えば、OH、O−アルキル、SH、S−アルキル、NH
2、NH−アルキルが含まれ得る。さらに、アルキル、アルケニル、アルキニル等は、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル等を形成するために酸素、ケイ素、硫黄等で置換され得る。
【0063】
ある特定の実施形態において、R
3、R
6、およびR
7、またはR
3、R
4、R
5、およびR
7、またはR
3、R
4、R
5、およびR
7、またはR
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7、またはR
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7のそれぞれは独立して、
H、メチル、エチル、プロピル、またはイソプロピルから選択されてもよく、
および残りの置換基のそれぞれ:R
1、R
2、R
4、およびR
5、またはR
1、R
2、およびR
6、またはR
1、R
2、およびR
6、またはR
1およびR
2、またはR
1はそれぞれ独立して、
H;置換されていてもよいアルキル(例えば、酸素、ケイ素、硫黄でヘテロ置換されていてもよく、またはOH、O−アルキル、SH、S−アルキル、NH
2、NH−アルキルで置換されていてもよいC
1〜C
12直鎖または分枝鎖アルキル);置換されていてもよいアルケニル(例えば、酸素、ケイ素、硫黄でヘテロ置換されていてもよく、またはOH、O−アルキル、SH、S−アルキル、NH
2、NH−アルキルで置換されていてもよいC
1〜C
12直鎖または分枝鎖アルケニル);置換されていてもよいアルキニル(例えば、酸素、ケイ素、硫黄でヘテロ置換されていてもよく、またはOH、O−アルキル、SH、S−アルキル、NH
2、NH−アルキルで置換されていてもよいC
1〜C
12直鎖または分枝鎖アルキニル);シクロアルキル(例えば、C
3〜C
7シクロアルキル);アルキルシクロアルキル(例えば、C
4〜C
12アルキルシクロアルキル);ヘテロシクロアルキル(例えば、該ヘテロ環が、O、S、またはNから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含み、C
2〜C
6ヘテロシクロアルキルが含まれる);アルキルヘテロシクロアルキル(例えば、該ヘテロ環が、O、S、またはNから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を含み、C
3〜C
11アルキルヘテロシクロアルキルが含まれ、Nが複素環式環に存在するとき、窒素原子は、アミド、カルバミン酸塩、または尿素の形態であり得ることを含む);アリール(例えば、フェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル);アルキルアリール(例えば、アルキルフェニル、アルキル置換フェニル、アルキルナフチル、アルキル置換ナフチル);ヘテロアリール(例えば、それらすべてが置換されていてもよい、ピリジル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ジアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル);アルキルヘテロアリールから選択され、
あるいはR
1およびR
2は、それらが結合している窒素原子を含む3〜8員複素環式環をともに形成し得、
あるいはR
4およびR
5は、それらが結合している窒素原子を含む、アジリジン、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、インドリル、インドリニル、ピロリジニル、ピペラジニル、およびピペリジルの群から選択される環をともに形成し得る。
【0064】
式IのR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7の例となる化合物および置換成分が、以下に示される。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7の置換成分のさらなる組み合わせの選択が想定され、同時係属中の米国特許出願第13/547,022号に開示され、その開示は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0065】
ある特定の実施形態において、式Iのビグアナイド化合物は、不斉中心(複数可)を含んでもよく、そのラセミ混合物、ジアステレオ異性体混合物、単一エナンチオマー、エナンチオマーのジアステレオマー、メソ化合物、純粋なエピマー、またはエピマーの混合物等の組成物の形態であってもよい。さらに、そのビグアナイド化合物は、1つ以上の二重結合を有してもよく、そのシス/トランス、E/Z混合物、またはEもしくはZ幾何異性体の形態であってもよい。
【0066】
式Iのビグアナイド化合物はまた、塩形態、例えば、好適な酸性型を含む薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、ホスフィン酸塩、シュウ酸塩、ヘミシュウ酸塩、マロン酸塩、ヘミマロン酸塩、フマル酸塩、ヘミフマル酸塩、マレイン酸塩、ヘミマレイン酸塩、クエン酸塩、ヘミクエン酸塩、酒石酸塩、ヘミ酒石酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等から選択される塩形態として調製され得る。
【0067】
特に主題の発明での使用が企図されるビグアナイド化合物の代替の実施形態は、その開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる、同時係属中の米国特許出願第13/547,022号に記載される関連複素環式化合物を含む。本明細書で使用される場合「ビグアナイド化合物」という語句は、その関連複素環式化合物を含み、その例示的な実施形態は以下を含む:
トリアゾール:
トリアジン:
ジヒドロトリアジン:
7環式ビグアナイド:
【0068】
1つの実施形態において、本開示の化合物は、成分A、B、およびCを含む、3つの成分の塩形態として調製され得、
Aは、天然または非天然アミノ酸のプロトン化形態であり、
Bは、酸のジアニオンであり、
Cは、式Iの化合物のプロトン化形態である。
【0069】
ある特定の態様において、A、B、およびCの化学量論量が含まれてもよく、
Aは、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸リシン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、スレオニン、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、メチオニン、プロリン、システイン、またはシスチンから選択される、天然アミノ酸のプロトン化形態であり、
Bは、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等から選択される酸のジアニオンであり、かつ
Cは、式Iの化合物のプロトン化形態である。
【0070】
メトホルミンを含むビグアナイド化合物に対する禁忌
メトホルミンを含む全身性ビグアナイドは腎臓によって実質的に排泄されると報告されているため、ビグアナイド化合物蓄積および乳酸アシドーシスの危険性は、腎機能の機能障害の度合いによって上昇する。メトホルミン等のビグアナイド化合物に対する他の禁忌には、乳酸排泄不全および低酸素状態が挙げられる。したがって、それらの禁忌を有する患者は、現在、従来のビグアナイド化合物で治療することはできない。
【0071】
しかしながら、本明細書に示されるように、メトホルミンおよび他のビグアナイド化合物の治療効果は、増大した乳酸アシドーシスの危険性を呈するメトホルミンの全身性レベルの上昇を必要としない。そのことから、メトホルミン蓄積および乳酸アシドーシスの危険性は、劇的に低下され、したがって本明細書に提供される方法は、患者がメトホルミンに対する禁忌を有する場合であっても、それを必要とする患者の状態を治療するために使用され得る。例えば、本明細書に提供される方法は、それを必要とする患者を治療するために使用されてもよく、患者は、低酸素状態(例えば、呼吸不全および/または心不全)、乳酸排泄不全(例えば、肝不全による)、メトホルミン排泄不全、ならびに/または中等度、重度、もしくは末期の機能障害であり得、および慢性腎臓疾患の結果であり得る腎機能障害を有する。
【0072】
代謝障害
本発明の組成物および方法は、体重過多である、肥満、糖尿病前症、多嚢胞性卵巣症候群、脂質異常症、または脂質代謝の障害、ならびにインスリン依存(1型)もしくは非依存(2型)糖尿病等の高血糖状態、ならびに高血糖状態に関連するか、またはその結果である生理的状態もしくは障害を含む、代謝障害の治療および/または予防における有利な使用を発見する。このため、本発明の方法によって治療可能な高血糖状態はまた、慢性または急性高血糖(例えば、糖尿病)に関連する組織病理学的変化も含む。特定の例には、膵臓の変性(β細胞破壊)、腎臓細管石灰化、肝臓の変性、眼の損傷(糖尿病性網膜症)、糖尿病性足病変、口もしくは歯肉等の粘膜の潰瘍化、過剰な出血、遅延性血液凝固、または創傷治癒、ならびに冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、脂質異常症、高血圧症、および肥満症の危険性の上昇を含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、患者の状態の参照において使用される「高血糖性」または「高血糖症」という用語は、患者の血液中に示される一過性または慢性の異常に高水準のグルコースを意味する。その状態は、患者が、正常な患者においては典型的に見られないグルコース不耐性または上昇するグルコースの状態を示す(例えば、糖尿病を発症する危険性のグルコース不耐性の亜糖尿病患者において、または糖尿病患者において)ように、グルコース代謝または吸収の遅延によって引き起こされ得る。正常血糖における空腹時血漿グルコース(FPG)レベルは、約110mg/dl未満であり、グルコース代謝不全においては約110〜126mg/dlであり、糖尿病においては約126mg/dl超である。
【0074】
代謝障害はまた、肥満または望ましくない体質量を含む。レプチン、コレシストキニン、PYY、およびGLP−1は、空腹感を低減するか、エネルギー消費を増大させるか、体重減少を誘発するか、または正常なグルコース恒常性を提供する。このため、様々な実施形態において、肥満もしくは望ましくない体質量、または高血糖症を治療するための本発明の方法は、メトホルミンの局所投与に関与し、コレシストキニン、オキシントモジュリン、GIP、GLP−2、PYY、またはGLP−1の腸内分泌細胞産生を活性化する。治療可能な障害にはまた、典型的に、肥満、例えば、異常に上昇した血清/血漿LDL、VLDL、トリグリセリド、コレステロール、血管の狭小化もしくは封鎖を引き起こすプラーク形成、高血圧/脳卒中、冠動脈心疾患等の危険性の上昇に関連するものも含む。
【0075】
化合物の合成
本明細書に記載の化合物は、本明細書に記載の方法と組み合わせて、当業者に知られる標準の合成技術を使用して、または当該技術分野で既知の方法を使用して合成され得る。加えて、本明細書に提示される溶媒、温度、および他の反応状態は、当業者の習慣および知識によって異なり得る。
【0076】
本明細書に記載の化合物の合成に使用される出発物質は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,Wis.)、Sigma Chemical Co.(St.Louis,Mo.)等の商業的供給源から得ることができるか、または出発物質は合成され得る。本明細書に記載の化合物および異なる置換成分を有する他の関連化合物は、例えば、March,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4th Ed.,(Wiley 1992)、Carey and Sundberg, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4th Ed.,Vols.A and B(Plenum 2000,2001)、およびGreen and Wuts,PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 3rd Ed.,(Wiley 1999)(それらのすべては参照することによりその全体が組み込まれる)に記載されるもの等の、当業者に既知の技術および物質を使用して合成され得る。本明細書に開示される化合物の調製のための一般的な方法は、当分野で既知の反応から得ることができ、本明細書に提供される式において見られる種々の部分の導入のために、当業者によって認識されるように、その反応は適切な試薬および条件の使用によって変更されてもよい。
【0077】
本明細書に記載の化合物のためのさらなるビグアナイド合成方法およびスキームは、米国出願第12/593,479号(米国第2010/0130498号として公開);米国出願第12/593,398号(米国第2010/0184796号として公開);米国特許第7,829,299号;米国出願第11/578,013号(米国第2010/0056621号として公開);米国特許第7,416,867号;米国出願第11/455,693号(米国第2007/0037212号として公開);米国出願第13/059,730号(米国第2011/0143376号として公開),米国出願第12/996,670号(米国第2011/0311991号として公開),米国特許第7,811,788号;米国出願第11/182,942号(米国第2006/0019346号として公開);米国出願第12/993,542号(米国第2011/0086138号として公開),米国出願第12/373,235号(米国第2010/0055209号として公開);国際出願第PCT/IL2007/000454号(国際公開第2007/116404号として公開);米国出願第10/472,056号(米国第2004/0138189号として公開);米国特許第5,891,919号;米国特許第6,376,657号;米国出願第11/554,982号(米国第2007/0104805号として公開);米国出願第11/926,745号(米国第2008/0108604号として公開);国際出願第PCT/CA2009/001688号(国際公開第2010/060198号として公開);米国出願第12/735,557号(米国第2010/0330205号として公開);国際出願第PCT/CA2007/001066号(国際公開第2008/000063号として公開);米国出願第11/438,204号(米国第2006/0269617号として公開);米国出願第10/563,713号(米国第2006/0172020号として公開);米国出願第10/902,352号(米国第2006/0024335号として公開);米国出願第10/538,038号(米国第2006/0275765号として公開),米国出願第11/555,617号(米国第2008/0187936号として公開);米国出願第12/739,264号(米国第2010/0316736号として公開);米国出願第12/215,609号(米国第2009/0042813号として公開);米国出願第11/893,088号(米国第2008/0050499号として公開);米国特許第7,807,204号;米国出願第11/811,166号(米国第2008/0003268号として公開);米国特許第6,376,657号;国際出願第PCT/US2011/041183号(国際公開第2011/163183号として公開);国際出願第PCT/EP2011/059814号(国際公開第2011/157692号として公開);米国出願第12/790,292号(米国第2011/0293753号として公開);国際出願第PCT/JP2009/071700号(国際公開第2010/076879号として公開);米国出願第13/032,530号(米国第2011/0217394号として公開);国際出願第PCT/EP2011/000110号(国際公開第2011/085979号として公開);国際出願第PCT/US2010/058467号(国際公開第2011/068814号として公開);米国出願第13/060,996号(米国第2011/0152361号として公開);米国出願第12/09,253号(米国第2011/0124609号として公開);米国出願第12/687,962号(米国第2011/0119499号として公開);および国際出願第PCT/EP2010/004623号(国際公開第2011/012298号として公開)において、見ることができ、そのそれぞれは、参照することによりその全体が組み込まれる。
【0078】
投与および方法
そのような化合物の類似体、塩、溶媒和化合物、多形体、水和物、N−酸化物、およびプロドラッグを含む、本開示のビグアナイド化合物は、肥満を含む様々な代謝障害、脂質異常症または脂質代謝の他の障害、ならびにII型糖尿病を含む高血糖症に関連付けられる高血糖状態および組織病理学的疾患を治療するために、それを必要とする対象に投与され得る。特に、本明細書で達成される全身性生物学的利用能および治療効果の驚くべき予想外の脱共役、ならびに毒性および安全性における結果的な改善を考慮して、そのような疾患および障害の予防および防止のためのそのような化合物の効果的な使用、ならびにより一般的な体重減少目的のための使用もまた明確に本明細書に企図される。
【0079】
好ましい実施形態において、化合物はメトホルミンである。メトホルミンの以前の製剤は、多くの比較となる小分子が60%を超える生物学的利用能を有するのに対し、30%〜60%の平均生物学的利用能を有すると報告される。例えば、「Metformin kinetics in healthy subjects and in patients with diabetes mellitus」Br.J.Clin.Pharmacol.1981,12(2)235−246を参照されたい。注目すべきは、メトホルミン投与は、正常な、糖尿病の、およびDPP−IV−欠損の齧歯動物において、ならびにII型糖尿病を有するか、または有しないヒトにおいて、GLP−1の血漿濃度を上昇するが、間接的に、および独立して、腸内L細胞への直接的影響となるように働くことが報告されている。Mulherinら、上記参照。
【0080】
本明細書に示されるように、しかしながら、当該技術分野の確立した慣習に反して、メトホルミンによる腸内分泌活性化は、腸の上皮側で管腔信号によって誘起され得、したがって、メトホルミンの上昇した全身性生物学的利用能は、GLP−1等の胃腸ホルモンの放出を刺激するために、経口摂取後は事実上不必要である。したがって、さもなければ禁忌となる患者の効果的治療が、ここで、化合物の全身性生物学的利用能を最小化するように適合されるビグアナイド化合物(その類似体、塩、溶媒和化合物、多形体、水和物、N−酸化物、およびプロドラッグを含む)を含む組成物を投与することによって可能となる。好ましい実施形態において、主題の組成物および方法は、経口投与の際の全身性生物学的利用能を低下させるために、胃および/または近位小腸(最大吸収を伴う領域)内での最初の放出を最小化し、および好ましくは避けるように製剤化される。
【0081】
特定の腸管位置への送達
本明細書に記載の実施形態は、胃および近位小腸内での吸収を避け、C
maxの急激な上昇に対応することによって、全身性生物学的利用能を最小化するために、小腸および/または腸管の下部、ならびに好ましくは遠位小腸の1つ以上の位置に送達されるように製剤化されるビグアナイド化合物(その任意の類似体、塩、溶媒和化合物、多形体、水和物、N−酸化物、またはプロドラッグを含む)を含む遅延放出組成物を投与することを含む治療方法を提供する。
【0082】
ビグアナイド化合物は、胃を超えて小腸の1つ以上の領域に標的化され、ならびに好ましくは、十二指腸の下流または遠位に標的化される。好ましい実施形態において、化合物は、空腸、回腸、盲腸、および結腸、またはそれらの組み合わせに送達される。好ましい実施形態において、化合物は、空腸、回腸、および盲腸、またはそれらの組み合わせに送達される。好ましい実施形態において、化合物は、優先的に回腸に標的化される。追加の実施形態において、化合物は、空腸の下流または遠位に、または単に腸管の下部に送達される。
【0083】
さらに他の実施形態において、ビグアナイド化合物(その類似体、塩、溶媒和化合物、多形体、水和物、N−酸化物、またはプロドラッグ)は、腸管の上部の1つ以上の領域および腸管の下部の1つ以上の領域に送達される。例えば、化合物は、十二指腸および結腸に送達される。別の非限定的な例において、化合物は、十二指腸、空腸、回腸、および結腸に送達され得る。
【0084】
腸管の好ましい領域または位置へのメトホルミン等のビグアナイドの投与は、任意の既知の方法によって達成され得る。好ましい実施形態において、ビグアナイド化合物は、腸管の標的領域または位置に化合物を送達する経口送達用の遅延放出組成物に製剤化される。ビグアナイド化合物の送達が胃腸管の2つ以上の領域に標的化される場合、化合物は、任意の割合および手段で送達され得る。
【0085】
全身曝露の最小化
上に記載されるように、本明細書で開示される方法は、禁忌となる患者におけるビグアナイド化合物の全身性生物学的利用能を最小化する。いくつかの実施形態において、ビグアナイド化合物は、平均全身性生物学的利用能を低下させた。低下された平均全身性生物学的利用能、いくつかの実施形態において、等量のビグアナイド化合物を有する即時放出または長時間放出製剤と比較して、より低い平均全身性生物学的利用能である。他の実施形態において、低下された平均全身性生物学的利用能は、平均全身性生物学的利用能が、等量のビグアナイド化合物を有する即時または長時間放出製剤と比較して、30%未満、25%未満、15%未満、10%未満、および5%未満の場合である。ある特定の実例では、平均全身性生物学的利用能は、15%未満である。
【0086】
いくつかの実施形態において、主題の方法は、禁忌となる患者におけるビグアナイド化合物の平均血漿C
maxおよび/または平均AUCレベルを最小化する。いくつかの実施形態において、投与方法は、患者におけるビグアナイド化合物の最小の血漿吸収、平均C
max、および/または平均AUCレベルをもたらす。他の実施形態において、ビグアナイド化合物の平均血漿C
maxおよび/または平均AUCレベルは、同量のメトホルミンを有する従来の即時放出および長時間放出製剤の報告されるC
maxおよび/またはAUCレベルと比較して、記載の組成物に対して治療量未満と考えられる。例えば、ごく少量または治療用未満のメトホルミン血漿C
maxおよび/またはAUCレベルは、既知のメトホルミン製剤(例えば、GLUMETZA(登録商標)、GLUCOPHAGE(登録商標)、GLUCOPHAGE(登録商標)XR、RIOMET(登録商標)、FORTAMET(登録商標)、OBIMET(登録商標)、GLUFORMIN(登録商標)、DIANBEN(登録商標)、DIABEX(登録商標)、DIAFORMIN(登録商標)、メトホルミンIR(登録商標)、メトホルミンSR(登録商標)等)の報告されるC
maxおよび/またはAUCレベルの75%、60%、50%、40%、および30%を含む。
【0087】
特定の実施形態において、メトホルミンを対象とする本発明の組成物および方法は、経口摂取に続いて、同じ用量の即時放出メトホルミン製剤(例えば、GLUCOPHAGE(登録商標))の75%または85%以下、好ましくは50%または60%以下、より好ましくは25%または30%または40%以下であるC
maxを産出する。他の実施形態において、本発明の方法は、メトホルミンの最後の経口摂取から10〜12時間後の初回トラフ血漿濃度の3x以下、より好ましくは2.5xまたは2x以下、なおより好ましくは1.8xまたは1.5x以下であるC
maxを提供する。他の実施形態において、本発明の組成物および方法は、経口摂取に続いて、同じ用量の即時放出製剤(例えば、GLUCOPHAGE(登録商標))の75%または80%以下、好ましくは50%または60%以下、より好ましくは25%、30%、または40%以下である投与間隔にわたって、平均血漿AUCを提供する。
【0088】
したがって、特定の実施形態において、主題の遅延放出製剤の投与は、同量のビグアナイド化合物を有するIRまたはXR製剤を投与する同一のプロトコールと比較して、禁忌となる患者におけるビグアナイド化合物の平均血漿AUC、平均血漿C
max、および/または循環血漿濃度を最小化する。1つの実施形態において、投与の結果として生じるビグアナイド化合物の平均血漿AUC
0−∞は、約15,000ng
*h/mLまたは14,000ng
*h/mL未満、好ましくは約12,000ng
*h/mL、11,000ng
*h/mL、または10,000ng
*h/mL未満、より好ましくは約9,000ng
*h/mL、8,000ng
*h/mL、または7,000ng
*h/mL未満である。1つの実施形態において、結果として生じるビグアナイド化合物の平均血漿C
maxは、約1000ng/mL未満、好ましくは約900ng/mLまたは800ng/mL未満、より好ましくは約700ng/mL、600ng/mL、または500ng/mL未満である。1つの実施形態において、ビグアナイド化合物の結果として生じる循環血漿濃度は、患者において約5μg/mlまたは4μg/mlを下回る、好ましくは約3μg/mlまたは2.5μg/mlを下回る、より好ましくは約2μg/ml、1μg/ml、0.5μg/ml、または0.25μg/mlを下回る。好ましい実施形態において、ビグアナイド化合物はメトホルミン、IR組成物はGlucophage(登録商標)、XR組成物はGlucophage(登録商標)XRである。
【0089】
製剤
その全身性生物学的利用能を制限するために、ビグアナイド化合物を含む組成物は、血漿吸収を最小化する遅延放出用に適合される。腸内分泌細胞へのメトホルミン等のビグアナイド化合物の送達は、例えば、経口、直腸内、経鼻チューブ、腔内の腸管内注射等の非経口注射を含む、任意の既知の方法を介する。好ましい実施形態において、経口剤形が投与される。ビグアナイド化合物の経口送達は、遅延放出製剤の節に記載され、持効性放出系、腸溶コーティング、およびpH依存系等を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物を含む組成物は、ビグアナイド化合物が、投与に続いて、十二指腸、空腸、回腸、腸管の下部、またはそれらの組み合わせ等の胃腸管のいくつかの場所に送達される場合、多成分系を利用する。例えば、ビグアナイド化合物を含む遅延放出製剤は、持効性、または遅延(腸内)放出成分の使用によって腸管の下部に送達することができる。そのような化合物の多成分系は、二重層もしくは三重層もしくは多層錠剤または被包性ミクロ錠剤、顆粒等のマルチ微粒子形状等の単位剤形、あるいは別々の剤形、例えば、同時にもしくは定期的な間隔で服用される別々の錠剤としてであってもよい。
【0090】
いくつかの実施形態において、遅延放出製剤は、腸溶コーティングのために所望のpHでの開始後にビグアナイド化合物を放出する。企図されるpHには、約pH5.0または約pH5.5、より好ましくは約pH6.0、約pH6.5、および約pH7.0が挙げられる。所望のpHでの開始後、化合物は放出を開始する。そのような組成物は、ビグアナイド化合物を所望のpHでの開始後、約15分、約20分、約25分、もしくは約30分に放出し得るか、および/または、ビグアナイド化合物を約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、または約8時間等のより長い期間の経過にわたって放出する持効性、遅延、または徐放出の側面を有し得る。例となる2つの成分の送達系は、いくつかの実施形態において、二重層錠剤であり得る。3つ、4つ、およびさらなる成分が、実施形態の範囲内で企図される。
【0091】
ビグアナイド化合物を含む遅延放出製剤に関して、化合物の投薬量は、1日あたり約1mg〜約2000mg、約10mg〜約1500mg、約50mg〜約1000mgの範囲、または約100mgもしくは約500mgであり得る。いくつかの実例において、化合物の投与量は、1日あたり約2000mg、約1500 約1000mg、約800mg、約600mg、約500mg、約400mg、約300mg、約250mg、約200mg、約150mg、約100mg、約75mg、約50mg、約25mg、約10mg、または約1mgである。いくつかの実施形態において、化合物の投与量は、400mg未満である。いくつかの実施形態において、化合物の投与量は、250mgである。
【0092】
ビグアナイド化合物の塩には、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、サリチル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、パモ酸塩、オラト酸塩(oratate)、酢酸塩、イソ酪酸塩、アセチルサリチル酸、ニコチン酸、アダマントエート(adamantoate)、亜鉛クロロフィリン、カルボン酸、安息香酸、ジクロル酢酸、テオフィリン(theophylin)−7−酢酸塩、クロフィブラート、酒石酸塩(tartate)、シュウ酸塩、タンニン酸塩、およびヒドロキシル酸塩が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、塩はメトホルミン塩酸塩である。
【0093】
主題の発明のビグアナイド化合物は、有利に、本明細書に記載の抗肥満および/または抗糖尿病薬等の追加治療剤とともに投与され得るか、または組み合わせられ得る。本明細書に記載のメトホルミン組成物との組み合わせに関して注目すべき薬剤には、DPP−IV阻害剤(例えば、シタグリプチン、サクサグリプチン、ベルベリン、ビルダグリプチン、リナグリプチン、アログリプチン等)、SGLT−2および/またはSGLT−1阻害剤(例えば、ダパフログリジン(dapafloglizin)、カナフログリジン(canafloglizin)、LX4211)、GPR40、GPR120、GPR119、GPR41、GPR43等のアゴニスト、チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、リボグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン等)、スルホニルウレア(例えば、グリピジド、グリベンクラミド(グリブリド)、グリキドン、グリクロピラミド、グリメピリド、グリクラジド、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、トルブタミド、トラザミド等)、二重PPARアゴニスト(例えば、アレグリタザル、ムラグリタザル、テサグリタザル等)、脂質低下薬(例えば、スタチン)、ならびに降圧薬が挙げられる。
【0094】
本明細書に提供される組成物の製剤には、経口または直腸投与に適したものを含むが、最も好適な経路は、例えば、レシピエントの状態および障害に左右され得る。製剤は、好都合に、単位剤形で提示されてもよく、薬学分野でよく知られた方法のいずれかによって、調製されてもよい。すべての方法は、活性成分を1つ以上の副成分を構成する担体と関連させるステップを含む。
【0095】
経口投与に適した製剤は、それぞれが所定の量の活性成分を含むカプセル、カシェ剤、もしくは錠剤等の分離した単位として、粉末もしくは顆粒として、水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油型乳剤もしくは油中水型乳剤として提示されてもよい。
【0096】
経口的に使用され得る組成物の調製は、錠剤、ゼラチンで作られた押込嵌めカプセル、ならびに、ゼラチン、およびグリセロールまたはソルビトール等の可塑剤で作られた軟性、密封カプセルを含む。錠剤は、任意に1つ以上の副成分を用いて、圧縮または鋳造によって作られ得る。圧縮された錠剤は、好適な機械において、任意に、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、または潤滑界面活性もしくは分散剤と混合される粉末または顆粒等の自由流動形態の活性成分を圧縮することによって、調製され得る。鋳造された錠剤は、好適な機械において、湿った粉末化された化合物と不活性液体希釈剤の混合物を鋳造することによって作られ得る。錠剤は、任意に、コーティングされるか、または分割されてもよく、緩徐化された、または制御されたその中の活性成分の放出を提供するように製剤化され得る。錠剤は、任意に、胃以外の腸の一部において放出を提供するために、腸溶コーティングを伴って提供され得る。経口投与用のすべての製剤は、かかる投与に適した投与量でなければならない。押込嵌めカプセルは、ラクトース等の注入剤、デンプン等の結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、および任意に、安定剤との混合物内に、活性成分を含んでもよい。軟性カプセル、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール等の好適な液体中で溶解または懸濁され得る。加えて、安定剤が添加され得る。糖衣錠芯が、好適なコーティングを用いて提供される。この目的のため、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有する濃縮された糖溶液が使用されてもよい。染料またはピグメントは、識別のため、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加されてもよい。
【0097】
上で特に言及された成分に加えて、本明細書に記載の化合物および組成物は、問題の製剤のタイプを考慮して、当該技術分野において慣習的な他の薬剤を含むことができ、例えば、経口投与に適したものは、香味剤を含んでもよいことを理解されたい。
【0098】
本明細書に記載の組成物はまた、経口使用に適した形状で、例えば、錠剤、トローチ、薬飴、水性または油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳剤、硬性もしくは軟性カプセル、またはシロップもしくはエリキシル剤としてビグアナイド化合物を含有してもよい。経口使用が意図される組成物は、薬学的組成物の製造者にとって当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製されてもよく、そのような組成物は、薬剤的に洗練され味の良い調製を提供するために、非限定的な例として、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存料剤から選択される1つ以上の薬剤を含有してもよい。
【0099】
遅延放出製剤
放出の位置が全身性吸収を最小化するように制御される場合、遅延放出を得るために、多くのストラテジーが探究され得る。例えば、遅延放出は、製剤パラメーターおよび成分(例えば、適切な制御放出組成物およびコーティング)の適切な選択によって得ることができる。例には、単一または複数単位の錠剤またはカプセル組成物、油溶液、懸濁液、乳剤、マイクロカプセル、小球体、ナノ粒子、およびリポソームを含む。放出機構は、ビグアナイド化合物が定期的間隔で放出される、もしくは放出の位置が制御されるか、組み合わせ剤の放出が同時であり得るか、あるいは別の組み合わせ療法を他のものよりも早期放出することが好ましい場合、組み合わせにおけるビグアナイド化合物の遅延放出に影響し得るように、制御され得る。本明細書に記載の異なる送達系はまた、複数の間隔期間の開始で(例えば、経口投与後、約30分、約120分、約180分、および約240分)もしくは、異なる位置で(例えば、腸管の下部、腸管の上部、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、および/または直腸における放出)、またはそれらの組み合わせで放出するように併用され得る。例えば、pH依存型系は、所望の放出特性を実現するために持効性放出系または本明細書に記載の任意の他の系と併用され得る。
【0100】
ある特定の実施形態において、ビグアナイド化合物は、単位剤形でのビグアナイド化合物および/または追加治療剤の長時間放出成分と共役される遅延放出製剤の形態で提供される。長時間放出成分は、遅延放出成分の一部を包む層等の任意の既知の方法によって、製剤化され得る。追加治療剤の長時間放出のビグアナイド化合物の遅延放出に対する例となる割合は、約10%XR対約90%DR、約15%XR対約85%DR、約20%XR対約80%DR、約25%XR対約75%DR、約30%XR対約70%DR、約35%XR対約65%DR、約40%XR対約60%DR、約45%XR対約55%DR、または約50%XR対約50%DRである。ある特定の実施形態において、活性剤の長時間放出対活性剤の修飾放出は、約25%XR対約75%DRである。ある特定の実施形態において、活性剤の長時間放出対活性剤の修飾放出は、約20%XR対約80%DRである。XRおよびDR成分を有する単位剤形は、二重層錠剤、被覆ペレット等を含む任意の既知の製剤を含む。
【0101】
ある特定の実施形態において、ビグアナイド化合物は、単位剤形の追加治療剤即時放出成分と共役される遅延放出製剤の形態で提供される。即時放出成分は、遅延放出成分または同等物を包む層等の任意の既知の方法によって、製剤化され得る。追加治療剤の即時放出対ビグアナイド化合物の遅延放出の例となる割合には、約10%IR対約90%DR、約15%IR対約85%DR、約20%IR対約80%DR、約25%IR対約75%DR、約30%IR対約70%DR、約35%IR対約65%DR、約40%IR対約60%DR、約45%IR対約55%DR、または約50%IR対約50%DRである。ある特定の実施形態において、活性剤の即時放出対活性剤の遅延放出は、約25%IR対約75%DRである。ある特定の実施形態において、活性剤の即時放出対活性剤の遅延放出は、約20%IR対約80%DRである。IRおよびDR成分を有する単位剤形は、二重層錠剤、被覆ペレット等を含む任意の既知の製剤を含む。
【0102】
持効性放出系
1つの実施形態において、遅延放出機構は、投与に続いてある特定の時点で活性剤、例えばビグアナイド化合物を放出する「持効性」または経時的放出(「TR」)系である。持効性放出系は、当該技術分野でよく知られており、好適な持効性放出系には、任意の既知の賦形剤および/またはコーティングを含み得る。例えば、マトリックス、層、またはコーティング中の賦形剤は、環境中への活性薬剤の拡散を遅くすることによって活性薬剤の放出を遅延することができる。好適な持効性放出賦形剤には、アカシア(アラビアゴム)、寒天、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム)、ステアリン酸ナトリウム、ブラダーラック、ベントナイト、カルボマー、カラゲニン、Carbopol、セルロース、結晶セルロース、セラトニア、ツノマタ属、ブドウ糖、ファーセレラン、ゼラチン、ガティガム、グアーガム、ガラクトマンナン、ヘクトライト、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、蜂蜜、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、アラヤゴム、キサンタムガム(xanthum gum)、ベヘン酸グリセリル(例えば、Compritol 888 ato)、グリセリルジステアレート(例えば、Precirol ato 5)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 200−4500)、ポリエチレンオキシド、アジピン酸、トラガントガム、エチルセルロース(例えば、エチルセルロース100)、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース(例えば、KlOOLV、K4M、Kl5M)、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、酢酸セルロース(例えば、酢酸セルロースCA−398−10 NF)、酢酸フタル酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酪酸セルロース、硝酸セルロース、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、炭酸プロピレン、ポリアンドライド(polyandride)、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(PVM/MA)、ポリ(メトキシエチルメタクリル酸塩)、ポリ(メトキシエトキシメタクリル酸塩)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、二酸化ケイ素、ビニルポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)、ポリ酢酸ビニル、もしくはポリ酢酸フタル酸ビニルおよび混合物、コリドンSR、アクリル誘導体(例えば、ポリアクリル酸塩、例えば、架橋ポリアクリル酸塩、メタクリル酸コポリマー)、Splenda(登録商標)(ブドウ糖、マルトデキストリン、およびスクラロース)、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。持効性放出賦形剤は、活性薬剤とのマトリックス中、コーティングの一部として製剤の別の区画もしくは層の中、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。様々な量の1つ以上の持効性放出賦形剤は、指定された放出時間を実現するために使用され得る。
【0103】
1つの非限定的な例には、TIMERx(登録商標)系の製剤が挙げられる。この制御放出製剤系は、変化する経時的放出(SyncroDose(商標))ならびに二相性放出(Geminex(登録商標))を提供する。(例えば、Staniforth&Baichwal,TIMERx(登録商標):novel polysaccharide composites for controlled/programmed release of active ingredients in the gastrointestinal tract,Expert Opin.Drug Deliv.,2(3):587−89(2005)を参照されたい)。本明細書に記載の本発明のためのものといった製剤を使用して、上部胃腸管、下部胃腸管、またはその両方を標的化し、加えてそれらの位置のいずれかにおける放出を時間的に制御する組成物が作成され得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、持効性放出系は、投与に続いて、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、約90分、約100分、約110分、約120分、約130分、約140分、約150分、約160分、約170分、約180分、約190分、約200分、約210分、約220分、約230分、約240分、約250分、約260分、約270分、約280分、約290分、約300分、約310分、約320分、約330分、約340分、約350分、約360分、約370分、約380分、約390分、約400、約400、約410、または約420分の開始で、化合物を放出するように製剤化される。複数の放出を伴う実施形態において、持効性放出系は、1つを超える時点で放出するように製剤化される。ある特定の実施形態において、持効性放出系は、投与後、約10分、約30分、約120分、約180分、および約240分の開始で放出するように製剤化される。ある特定の実施形態において、持効性放出系は、患者への投与後、約5〜約45分、約105〜約135分、約165〜約195分、約225〜約255分、またはそれらの時間の組み合わせの開始で放出するように製剤化される。
【0105】
腸溶コーティングおよびpH依存系
製剤はまた、胃等の酸性環境において、活性剤、例えばビグアナイド化合物を分解から保護し、取り込みのための標的領域、例えば回腸内への遅延放出を可能にする、腸溶コーティングでコーティングされてもよい。
【0106】
腸溶コーティングは、非限定的な例として、蝋もしくは蝋のような物質、カルナウバ蝋等の、脂肪アルコール、水素化植物油、ゼイン、シェラック、スクロース、アラビアゴム、ゼラチン、デキストリン、オオバコ外皮粉末、ポリメタクリル酸塩、アニオン性ポリメタクリル酸塩、ポリ(メタクリル酸、メチルメタクリル酸塩)の混合物、アクリルおよび/またはメタクリル酸エステル由来のポリマーもしくはコポリマー、酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルローストリエリメート(trimelliate)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、プロピオン酸セルロースフタレート、酢酸マレイン酸セルロース、ポリビニルアルコールフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、ポリ酢酸フタル酸ビニル、ポリ(メタクリル酸、アクリル酸エチル)の混合物、エチルセルロース、メチルセルロース、プロピルセルロース、キトサンサクシネート、キトサンサクシネート、ポリ酢酸フタル酸ビニル(PVAP)、ポリ酢酸ビニルポリマーカルボキシメチルエチルセルロース、およびそれらの適合性のある混合物であり得る。加えて、不活性の中間膜が、ビグアナイド化合物と腸溶コーティングとの相互作用を防止するために、ビグアナイド化合物と腸溶コーティングとの間に提供されてもよい。
【0107】
1つの非限定的な例において、pH制御された胃腸薬物送達のためのシリコーン小球体が、Carelli et al.,Int.J.Pharmaceutics 179:73−83,1999によって説明されている。小球体は、様々な比率のポリ(メタクリル酸−co−メチルメタクリル酸塩)(EUDRAGIT(登録商標)L100またはEUDRAGIT(登録商標)S100)およびシリコーン小球体内にカプセル化された架橋ポリエチレングリコール8000で作られたpH感受性半相互貫入ポリマーハイドロゲルである。メタクリル酸コポリマーのEUDRAGIT(登録商標)シリーズは、ドイツのダルムシュタットにあるEvonik Industriesから市販されている。
【0108】
腸溶コーティングは、腸内ポリマーの組み合わせを使用して、所望のpHでビグアナイド化合物を放出するように製剤化され得る。異なる位置の胃腸系は、特定のpHを有することがよく知られている。例えば、十二指腸は、pH5.5の環境に相当し得、空腸は、pH6.0の環境に相当し得る。好ましい実施形態において、腸溶コーティングは、所望のpH、例えば、遠位小腸および腸管の下部で、すなわち、約pH6、約pH6.5、または約pH7の開始で、化合物を放出するように製剤化される。複数の放出を伴う実施形態において、腸溶コーティングは、2つ以上のpH値の開始で放出するように製剤化される。ある特定の実施形態において、腸溶コーティングは、pH6.0、6.5、および7.0の開始で放出されるように製剤化される。ある特定の実施形態において、腸溶コーティングは、pH6.5および7.0の開始で放出されるように製剤化される。ある特定の実施形態において、腸溶コーティングは、空腸、回腸、および腸管の下部で放出されるように製剤化される。さらに他の実施形態において、腸溶コーティングは、持効性放出系等の他の放出系と組み合わせて使用される。
【0109】
さらに他の実施形態において、腸溶コーティングは、即時放出/長時間放出の単位剤形と組み合わせて使用される。例えば、ビグアナイド化合物の20%IR/80%MR成分を有する二重層錠剤等の単位剤形は、放出が、剤形が例えば、5.5、6.0、6.5、7.0のpHに達するまで遅らされ、それによりIR成分を即時、およびMR成分をそのMR放出性質に従って放出するように、例えば、5.5、6.0、6.5、7.0のpHで放出する、腸溶コーティングでコーティングされ得る。ある特定の実例では、腸溶コーティングは、即時放出の/持効性放出の単位剤形と組み合わせて使用される。
【0110】
米国特許第6,022,562号、同第5,846,566号、および同第5,603,957号に記載されるマイクロカプセル胃保持型系は、本明細書に記載の遅延放出送達方法において使用され得る。活性薬剤または薬物の微小粒子は、膜形成性ポリマー誘導体の混合物、疎水性可塑剤、機能剤、および窒素含有ポリマーから成る物質を噴霧することによって、コーティングされる。結果として得られるマイクロカプセルは、1000ミクロン(gm)未満、もしくは同等の大きさであり、ある特定の事例において、そのようなマイクロカプセルは、100〜500ミクロンである。これらのマイクロカプセルは、少なくとも5時間、小腸に残ったままである。
【0111】
そのようなマイクロカプセルで使用される膜形成性ポリマー誘導体には、エチルセルロース、酢酸セルロース、および非水溶性セルロース誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。窒素含有ポリマーには、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルアミド、ポリ−N−ビニル−ラクタム、およびポリビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなマイクロカプセルで使用される可塑剤には、グリセロールエステル、フタル酸塩、クエン酸塩、セバシン酸塩、セチルアルコールエステル、ヒマシ油、およびクチンが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなマイクロカプセルで使用される界面活性および/もしくは潤滑剤には、例として、脂肪酸のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩等のアニオン性界面活性剤、ステアリン酸および/もしくはオレイン酸、例として、ソルビタンのポリオキシエチレン化エステルおよび/もしくはソルビタンのポリオキシエチレン化エステル等の非イオン性界面活性剤、ならびに/またはヒマシ油のポリオキシエチレン化誘導体;および/または、例として、カルシウム、マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリル、ステアリルフマル酸ナトリウム、およびベヘン酸グリセリル等のステアリン酸塩等の潤滑剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
下部GI送達製剤の1つの非限定的な例には、下部GI送達用の錠剤を含む。錠剤の内部組成には、重量約0.01%〜重量約10.0%の好適な活性成分;重量約50%〜重量約98%の高等植物から入手可能な親水コロイドガム;および重量約2%〜重量約50%の結合剤等の薬学的に許容される賦形剤を含む。薬学的組成物の所望の特徴を確立することを補助する他の任意の物質が存在してもよい。これらには、下部GIにおける活性成分の吸収を強化し得る、分解に対して活性成分を保護し得る、溶解を防止し得る等の物質が含まれる。任意に、錠剤の内部組成の周囲は、好ましくは、腸内ポリマー物質のものであるコーティングである。
【0113】
製剤は、(1)高等植物の上部GIから入手可能な親水コロイドの保護特徴、および(2)下部GIの親水コロイドの崩壊性特徴を活用するように設計される。このため、錠剤の内部組成は、いくつかの設計:(a)高い割合の親水コロイドと、概してより少ない量の他の賦形剤との組み合わせの全体にわたって均一に分散される治療有効量の活性成分のマトリックスであり得る、(b)活性成分を含まず、高い割合の親水コロイドおよび概してより少ない量の他の賦形剤を有する物質の層で囲まれた活性成分がその中で濃縮される芯を有し得る、(c)錠剤の芯により大きい量が存在し、芯を囲む多層により少ない量があり、外層には活性成分がほとんどないか、もしくは全くないといったように、活性成分の濃度勾配を有し得る、のうちの1つであり得る。錠剤の設計が、上記(a)、(b)、または(c)のどれであっても、下部GIへの領域性送達の特異性は、適切な腸溶コーティング物質で錠剤を腸溶性にコーティングすることによって強化される。
【0114】
好適な親水コロイドが当該技術分野でよく知られている。例えば、A.C.S.Monograph series,#141,1959,Reinhold Publishing Co.and the Eighteenth Edition of The Merck IndexからのSmithおよびMontgomeryによる「The Chemistry of Plant Gums and Mucilages」を参照されたい。一般に、使用される親水コロイドの量は、組成物がほとんど崩壊することなく上部GI管を通過し、上部GI管で活性成分がかなりの量放出されることがないようにする、すなわち、遅延放出特性を提供するような量である。一般に、親水コロイドの量は、約50%より多く、約98%未満である。個々の変化性、患者が食事をしたか食事を抜いているか、およびその他の要因に依存して、錠剤は、胃および腸管の上部を約3〜6時間で通過する。この間、本発明の錠剤からはほとんど活性成分が放出されない(20%未満、好ましくは10%未満)。いったん錠剤が下部GIに達すると、ガラクトマンナンガムの酵素分解によって活性成分の放出が誘発される。
【0115】
修飾放出製剤
追加の実施形態において、ビグアナイド化合物送達を対象とする方法および組成物は、まとめて「修飾放出」製剤として知られる、制御、持続、または長時間放出製剤をさらに用いてもよい。組成物は、修飾放出系によって、または当業者に既知の送達デバイスによって投与され得る。例には、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、および同第5,733,566号に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。そのような剤形は、様々な割合で所望の放出特性を提供するように、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他の高分子マトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧性系、多層コーティング、微小粒子、リポソーム、小球体、またはそれらの組み合わせを使用して、1つ以上の活性成分の修飾放出を提供するために使用され得る。本明細書に記載のものを含む当業者に既知の好適な修飾放出製剤は、本発明の活性成分との使用ために容易に選択され得る。本発明は、このため、修飾放出にさらに適合された錠剤、カプセル、ゲルキャップ、およびカプレット等であるが、これらに限定されない経口投与に適した単一の単位剤形を包含する。
【0116】
いくつかの実施形態において、修飾放出系は、放出の開始に続いて、約30分間、約40分間、約50分間、約60分間、約70分間、約80分間、約90分間、約100分間、約110分間、約120分間、約130分間、約140分間、約150分間、約160分間、約170分間、約180分間、約190分間、約200分間、約210分間、約220分間、約230分間、約240分間、約250分間、約260分間、約270分間、約280分間、約290分間、約300分間、約310分間、約320分間、約330分間、約340分間、約350分間、約360分間、約370分間、約380分間、約390分間、約400、約400、約410、または約420分間の持続時間で化合物を放出するように製剤化される。複数の放出を伴う実施形態において、修飾放出系は、異なる時点での時間の1つを超える持続時間で放出するように製剤化される。
【0117】
1つの非限定的な例において、キトサンおよびキトサンとカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)との混合物は、Inouye et al.,Drug Design and Delivery 1:297−305,1987に記載されるように、活性成分の持続放出のためのビヒクルとして使用されてきた。これらの化合物と本発明の薬剤の組み合わせとの混合物は、200kg/cm2未満に圧縮される場合、患者への投与時にそこから活性薬剤が緩徐に放出される錠剤を形成する。放出特性は、キトサン、CMC−Na、および活性薬剤(複数可)の割合を変えることによって変更され得る。錠剤はまた、ラクトース、CaHPO4二水和物、スクロース、結晶セルロース、またはクロスカルメロースナトリウムを含む、他の添加剤を含有し得る。
【0118】
別の非限定的な例では、Baichwalは、米国特許第6,245,356号において、非晶質形態の治療的活性薬物の凝集粒子、ゲル化剤、イオン化ゲル強度増強剤、および不活性希釈剤を含む持続放出の、経口、固形剤形を説明する。ゲル化剤は、キサンタンガムと、ガムが環境流体に曝露されるとき、キサンタンガムと架橋結合することができるローカストビーンガムとの混合物であってもよい。好ましくは、イオン化ゲル増強剤は、キサンタンガムとローカストビーンガムとの間の架橋結合の強度を強化するように作用し、それにより製剤の薬物成分の放出を延長する。キサンタンガムおよびローカストビーンガムに加えて、同じく使用され得る容認されるゲル化剤は、当該技術分野でよく知られたゲル化剤を含む。例には、アルギン酸塩、カラゲニン、ペクチン、グアーガム、修飾デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ならびに例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロース等の他のセルロース物質もしくはポリマー等の天然または修飾天然ガム、ならびに前述のものの混合物が挙げられる。
【0119】
本発明の組み合わせに有用な別の非限定的な製剤では、BaichwalおよびStaniforthは、米国特許第5,135,757号において、ヘテロ多糖類(例えば、キサンタンガムまたはその誘導体等)および水溶液の存在下でヘテロ多糖類(例えば、ガラクトマンナン、および最も好ましくは、ローカストビーンガム等)と架橋結合することができる多糖類物質を含む約20〜約70重量パーセント以上の親水性物質、ならびに約30〜約80重量パーセントの不活性薬学的注入剤(例えば、ラクトース、ブドウ糖、スクロース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、またはそれらの混合物等)を含む、薬学的賦形剤として使用するための自由流動徐放出造粒を説明する。この賦形剤を三環系化合物/コルチコステロイドの組み合わせ、または本発明の組み合わせ剤と混合した後、混合物は、錠剤等の固形剤形に直接圧縮される。このように形成された錠剤は、摂取され胃液に曝露される際、薬物を徐々に放出する。薬物に対する様々な量の賦形剤によって、徐放出特性が達成され得る。
【0120】
徐放出製剤はまた、容易に水に溶けないが、水によって攻撃され、徐々に取り除かれるか、またはそこを水が徐々に浸透することができるコーティングも含んでもよい。このため、例えば、本発明の組み合わせは、結合剤の溶液で噴霧コーティングされてもよい。Kitamoriらの米国特許第4,036,948号によって説明されるような持続的に流動化する状態下で、水溶性結合剤の例には、アルファ化デンプン(例えば、アルファ化コーンスターチ、アルファ化ジャガイモデンプン)、アルファ化修飾デンプン、水溶性セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、アラビアゴムおよびゼラチン、セルロース誘導体等(例えば、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース)の有機溶媒可溶性結合剤が挙げられる。
【0121】
別の非限定的な例では、Villaらは、米国特許第6,773,720号において、活性成分が封入(inglobated)される内側の親油性マトリックスと、親油性マトリックスが分散される外側の親水性マトリックスとを含有する修飾放出系を説明する。ビグアナイドまたは関連複素環式化合物等の活性成分が、低融点の親油性賦形剤または賦形剤の混合物中に、賦形剤自体を軟化および/または融解するように加熱しながらまず封入され、それにより、単純な分散により活性成分を組み込む。室温に冷ました後、不活性マトリックスが形成され、これは活性成分粒子を含有するマトリックス顆粒を得るようにサイズを減少され得る。不活性マトリックス顆粒は、続いて、1つ以上の親水性の水膨張性賦形剤とともに混合される。この点において、組成物が生体液に接触すると高粘度の膨張層が形成され、それは溶媒分子を配位し、新しい構造の内部の液体自体の浸透に対する障壁として作用する。その障壁は、不活性マトリックス内に封入された活性成分の溶解によって引き起こされる無制限の「バースト効果」を相殺し、それは、次は、親水性マトリックス内部で生じる。このタイプの1つの市販の系は、Cosmo Technologies Limited(イタリア)からの商品名、MMX(登録商標)技術である。親油性/親水性マトリックスは、pH特異的な送達のために、さらに腸溶性にコーティングされてもよい。
【0122】
腸管の上部送達、腸管の下部送達、または両方用の製剤は、当該技術分野で既知である。腸管の上部送達、腸管の下部送達、または両方用の製剤は、当該技術分野で既知である。活性成分の腸の種々の領域に対する標的化は、The Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,by James Swarbrick and James Boylan,Informa Health Care,1999のpp.287−308に記載される。部位特異的な送達および/または特異的な経時的送達(すなわち、遅延、制御、長時間、または持続放出)のための胃腸送達用の任意の好適な製剤は、本発明とともに使用されてもよく、本明細書に企図される。
【0123】
本明細書に記載の送達系のいずれかは、複数の放出および/または特定の放出特性を実現するために、他のものと組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態において、ビグアナイド化合物は、投与後、胃腸の位置で複数の放出を達成する製剤に存在する。ある特定の実施形態において、ビグアナイド化合物は、投与後、約10分、約30分、約120分、約180分、約240分、またはそれらの組み合わせの開始で放出する、多重放出製剤内に存在する。ある特定の実施形態において、ビグアナイド化合物は、投与後、約5〜約45分、約105〜約135分間、約165〜約195分間、約225〜約255分間、またはそれらの組み合わせの開始で放出する、多重放出製剤内に存在する。
【0124】
ある特定の実施形態において、ビグアナイド化合物は、投与後、十二指腸、空腸、回腸、腸管の下部、またはそれらの組み合わせで放出する、多重放出製剤内に存在する。さらに他の実施形態において、ビグアナイド化合物は、投与後、約pH5.5、約pH6.0、約pH6.5、約pH7.0、またはそれらの組み合わせの開始で放出する、多重放出製剤内に存在する。さらに他の実施形態において、ビグアナイド化合物は、投与後、約pH5.0〜約pH6.0、約pH6.0〜約pH7.0、約pH7.0〜約pH8.0の範囲、またはそれらの組み合わせで放出する、多重放出製剤内に存在する。さらに他の実施形態において、ビグアナイド化合物は、ビグアナイドの断片または部分を即時放出として放出し、残りの化合物を本明細書に記載の遅延手段で放出する、多重放出製剤内に存在する。
【0125】
経口剤形
主題の組成物および方法における使用に適した経口剤形には、錠剤、硬カプセル、ゼラチンで作られた押込嵌めカプセル、およびゼラチン、およびグリセロールまたはソルビトール等の可塑剤で作られた軟密封カプセル、ならびにトローチ、薬飴、水性または油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、乳剤、シロップ、またはエリキシル剤が挙げられる。好適な経口剤形は、薬学的組成物の製造者にとって当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製されてもよく、そのような組成物は、薬剤的に洗練され味の良い調製を提供するために、非限定的な例として、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存料剤から選択される1つ以上の薬剤を含有してもよい。
【0126】
錠剤は、錠剤の製造に適した薬学的に許容される賦形剤との混合物中に活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム等の不活性希釈剤、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、またはアルギン酸等の顆粒化および崩壊薬剤、結合薬剤、例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、またはアカシア、ならびに潤滑薬剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであり得る。錠剤は、任意に1つ以上の副成分を用いて、圧縮または鋳造によって作られ得る。圧縮された錠剤は、好適な機械において、任意に、結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、または潤滑界面活性もしくは分散剤と混合される粉末または顆粒等の自由流動形態の活性成分を圧縮することによって、調製され得る。鋳造された錠剤は、好適な機械において、湿った粉末化された化合物と不活性液体希釈剤の混合物を鋳造することによって作られ得る。錠剤は、胃腸管における崩壊および吸収を遅らせ、それにより、本明細書により完全に記載されるように全身性生物学的利用能を最小化するために、既知の技術によってコーティングされる。
【0127】
経口使用の製剤はまた、その中で活性成分が、不活性固形希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合される硬性ゼラチンカプセルとして、あるいは、その中で活性成分が、ポリエチレングリコールまたは油培養液、例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油等の水溶性担体と混合される軟性ゼラチンカプセルとして、提示されてもよい。代替的に、押込嵌めカプセルは、ラクトース等の注入剤、デンプン等の結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、および任意に、安定剤との混合物内に、活性成分を含んでもよい。軟性カプセル、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール等の好適な液体中で溶解または懸濁され得る。加えて、安定剤が添加され得る。糖衣錠芯が、好適なコーティングを用いて提供される。この目的のため、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有する濃縮された糖溶液が使用されてもよい。染料またはピグメントは、識別のため、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加されてもよい。
【0128】
上で特に言及された成分に加えて、本明細書に記載の化合物および組成物は、問題の製剤のタイプを考慮して、当該技術分野において慣習的な他の薬剤を含むことができ、例えば、経口投与に適したものは、香味剤を含んでもよいことを理解されたい。
【0129】
種々の実施形態において、本明細書に提供される組成物は、液体形態である。液体形態には、非限定的な例として、原液、溶液、懸濁液、分散、コロイド、泡剤等が挙げられる。ある特定の実例では、液体形態は、(例えば、ミルク、ヨーグルト、シェイク、またはジュース由来の)栄養成分または基礎もまた含有する。いくつかの態様において、化合物は、液体形態中で微粒子化されるか、またはナノ粒子として存在する。ある特定の実例では、化合物は、味物質性質をマスクするためにコーティングされ得る。他の実例では、化合物は、腸管および結腸への送達を修飾するようにコーティングされる。
【0130】
水溶液または懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に活性成分(複数可)を含有する。そのような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガム、およびアカシアガムであり、分散もしくは湿潤剤は、自然発生のホスファチド、例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物、例えば、ヘプタデカエチレン−オキシセタノール、またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート等の、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルの縮合物、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルの縮合物、例えば、ポリエチレンソルビタンオレイン酸モノエステルであり得る。水溶液または懸濁液はまた、1つ以上の保存剤、例えば、エチル、またはn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸塩、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、およびスクロース、サッカリン、もしくはアスパルテーム等の1つ以上の甘味剤を含有する。ある特定の実例では、香味剤は、化合物である。
【0131】
油性懸濁液は、活性成分(複数可)を植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはヤシ油中に、または流動パラフィン等の鉱物油中に懸濁させることによって製剤化され得る。油性懸濁液は、糊剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含有し得る。上述のもの等の甘味剤および香味剤は、味の良い経口調製を提供するために添加され得る。これらの組成物は、ブチルヒドロキシアニソール(hydroxyanisol)またはαトコフェロール等の抗酸化体の添加によって保存され得る。
【0132】
水の添加によって水溶液または懸濁液の調製に適した分散性粉末および顆粒は、分散もしくは湿潤剤、懸濁剤、および1つ以上の保存剤との混合物中の活性成分を提供する。好適な分散もしくは湿潤剤、および懸濁剤は、既に上で言及されたものによって例証される。さらなる賦形剤、例えば、甘味、香味、および着色剤がまた存在してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸等の抗酸化体の添加によって保存され得る。
【0133】
組成物はまた、水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は、植物油、例えば、オリーブ油もしくは落花生油、または鉱物油、例えば、流動パラフィン、またはこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤は、自然発生のホスファチド、例えば、大豆レシチンならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル、例えば、ソルビタンオレイン酸モノエステル、ならびに該部分エステルとエチレンオキシドの縮合物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸モノエステルであり得る。乳剤はまた、甘味剤、香味剤、保存剤、および抗酸化剤を含有し得る。
【0134】
シロップおよびエリキシル剤は、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロースを用いて製剤化され得る。そのような製剤はまた、粘滑剤、保存剤、香味および着色剤、ならびに抗酸化剤を含有し得る。
【0135】
組成物はまた、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、または他のグリセリド等の従来の坐薬基剤を含有する坐薬もしくは保持浣腸等の直腸内組成物において製剤化され得る。これらの組成物は、阻害剤と、通常の温度では固体だが、直腸内温度では液体であり、それによって直腸内で溶けて薬物を放出する好適な非刺激性賦形剤とを混合することによって、調製され得る。そのような物質には、ココア脂、グリセリンゼラチン、水素化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物、およびポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0136】
したがって、錠剤、カプセル、カシェ剤、丸剤、薬飴、粉末もしくは顆粒、溶液、液体、または懸濁液等の経口投与に適した遅延放出製剤でビグアナイド化合物を含む、薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は、好ましくは、正確な投薬量の単体投与に適した単位剤形、例えば100mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、750mg、800mg、または1000mgの所望のビグアナイド化合物、特に、メトホルミン、フェンホルミン、ブホルミン、もしくはイメグリミン、またはそれらの塩である。薬学的組成物は、従来の薬学的担体または賦形剤、および活性成分として本発明に従うビグアナイド化合物を含有し得る。それらは、他の薬用または薬学的薬剤、担体、アジュバント等をさらに含み得る。
【0137】
好適な担体には、不活性希釈剤もしくは注入剤、水、および種々の有機溶媒が挙げられる。組成物は、所望に応じて、香味剤等の追加成分、結合剤、賦形剤等を含み得る。このため、クエン酸等の種々の賦形剤を含有する経口投与用の錠剤は、デンプンもしくは他のセルロース系物質等の種々の崩壊剤、アルギン酸、およびある特定の複合ケイ酸塩と、ならびにスクロース、ゼラチン、およびアカシア等の結合薬剤とともに用いられ得る。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルク等の潤滑剤はしばしば、打錠目的において有用である。阻害剤、界面活性剤もしくは可溶化剤、可塑剤、安定剤、増粘剤、または被膜剤等の他の試薬がまた、添加され得る。同様のタイプの固形組成物はまた、軟性および硬性充填ゼラチンカプセルにおいて用いられてもよい。材料は、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁液またはエリキシル剤が、経口投与用に所望される場合、その中の活性化合物は、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、またはそれらの組み合わせ等の希釈剤とともに、種々の甘味もしくは香味剤、着色料もしくは色素、および所望に応じて、乳化剤もしくは懸濁剤と併用され得る。
【0138】
賦形剤
本明細書に記載の組成物または製剤のいずれかは、薬剤学において任意に一般的に使用される賦形剤を含み、所望の剤形の活性薬剤(複数可)および放出特性性質との適合性に基づいて選択される。賦形剤には、結合剤、注入剤、流動補助剤(flow aid)/滑剤、崩壊剤、潤滑剤、安定剤、界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の賦形剤の要旨は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteeth Ed(Easton,PA:Mack Publishing Company,1995)、Hoover,John E.,Remington's Pharmaceutical Sciences,(Easton,PA:Mack Publishing Co 1975)、Liberman,H.A.and Lachman,L.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms(New York, NY: Marcel Decker 1980)、およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,Seventh Ed(Lippincott Williams&Wilkins 1999)で見ることができ、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0139】
結合剤は、接着性質を与え、例えば、アルギン酸およびそれらの塩;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース(例えば、Methocel(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(登録商標))、エチルセルロース(例えば、Ethocel(登録商標))、および結晶セルロース(例えば、Avicel(登録商標))等のセルロース誘導体;微結晶性ブドウ糖;アミロース;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;酸性多糖類;ベントナイト;ゼラチン;ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー;クロスポビドン;ポビドン;デンプン;アルファ化デンプン;トラガント、デキストリン、スクロース(例えば、Dipac(登録商標))、グルコース、ブドウ糖、糖蜜、マンニトール、ソルビトール、キシリトール(例えば、Xylitab(登録商標))、およびラクトース等の糖;アカシア、トラガント、ガティガム等の天然または合成ガム、イサポール(isapol)外皮の粘液、ポリビニルピロリドン(例えば、Polyvidone(登録商標)CL、コリドン(登録商標)CL、Polyplasdone(登録商標)XL−10)、カラマツのアラボガラクタン(larch arabogalactan)、Veegum(登録商標)、ポリエチレングリコール、蝋、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0140】
崩壊剤は、投与後の経口固形剤形の分散または崩壊を促進する。崩壊剤の例には、デンプン、例えば、コーンスターチもしくはジャガイモデンプン等の天然デンプン、National 1551もしくはAmijel(登録商標)等のアルファ化デンプン、またはPromogel(登録商標)もしくはExplotab(登録商標)等のデンプングリコール酸ナトリウム;木製品等のセルロース、メチル結晶性セルロース、例えば、Avice10、Avicel(登録商標)PH101、Avicel(登録商標)PH102、Avicel(登録商標)PH105、Elcema(登録商標)P100、Emcocel(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tia(登録商標)、およびSolka−Floc(登録商標)、メチルセルロース、クロスカルメロース、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(Ac−Di−Solt)、架橋カルボキシメチルセルロース、もしくは架橋クロスカルメロース等の架橋セルロース;デンプングリコール酸ナトリウム等の架橋デンプン;クロスポビドン等の架橋ポリマー;架橋ポリビニルピロリドン;アルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸の塩等のアルギン酸塩;Veegum(登録商標)HV(ケイ酸アルミニウムマグネシウム)等の粘土;寒天、グアー、イナゴマメ、カラヤ、ペクチン、もしくはトラガント等のガム;デンプングリコール酸ナトリウム;ベントナイト;天然海綿;カチオン交換樹脂等の樹脂;柑橘パルプ;ラウリル硫酸ナトリウム;組み合わせデンプン中のラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0141】
潤滑剤は、物質の接着または摩擦を防ぐ、減少させる、または阻害する化合物である。例となる潤滑剤には、例えば、ステアリン酸;水酸化カルシウム;タルク;ステアリン酸フマル酸ナトリウム;鉱物油、水素化ヒマシ油、もしくは水素化大豆油(Sterotex(登録商標))等の水素化植物油等の炭化水素;高脂肪酸ならびにアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等のそのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩;ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、グリセロール、タルク、蝋、Stearowet(登録商標)ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ポリエチレングリコール、またはCarbowax(商標)等のメトキシポリエチレングリコール、エチレンオキシドポリマー、オレイン酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル(例えば、Compritol 888 Ato)、グリセリンジステラート(glyceryl disterate)(Precirol Ato 5)、ポリエチレングリコール、マグネシウム、またはラウリル硫酸ナトリウム、Syloid(商標)、Carb−O−Si10、DL−ロイシン等のコロイドシリカ、コーンスターチ等のデンプン、シリコーン油、界面活性剤等が挙げられる。
【0142】
流動補助剤または滑剤は、粉末混合物の流動特徴を改善する。そのような化合物には、例えば、Cab−o−sil(登録商標)等のコロイド状二酸化ケイ素;三塩基性リン酸カルシウム、タルク、コーンスターチ、DL−ロイシン、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、カオリン、および微粒子化アモルファス二酸化ケイ素(Syloid(登録商標))等が挙げられる。
【0143】
可塑剤は、経口固形剤形のコーティングを補助する。例となる可塑剤には、クエン酸トリエチル、トリアセチン(グリセリルトリアセタート)、クエン酸アセチルトリエチル、ポリエチレングリコール(PEG4000、PEG6000、PEG8000)、Carbowax400(ポリエチレングリコール400)、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、クエン酸アセチルトリエチル、オレイン酸、グリセルモノステアリン酸、クエン酸トリブチル、アセチル化モノグリセリド、グリセロール、脂肪酸エステル、プロピレングリコール、およびフタル酸ジプチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
上述の賦形剤は、例としてのみ与えられ、すべての可能な選択を含むことを意味しない。他の好適な賦形剤分類には、着色剤、造粒剤、保存剤、消泡剤、可溶化剤等を含む。加えて、多くの賦形剤は、1つを超える役割または機能を有し得るか、または1つを超える群に分類され得、その分類は記述的なもののみであり、特定の賦形剤の任意の使用を制限するとは意図されない。
【0145】
併用療法
本明細書に記載の実施形態の組成物は、本明細書に記載の状態のいずれかの治療のための既知の療法を用いて同時投与され得る。同時投与はまた、既知の療法のより低い投薬量、本明細書に記載の組成物、または両方の必要性をもたらす、相加または相乗効果を提供する。同時投与のさらなる利益には、既知の療法のいずれかに関連付けられる毒性の低下が挙げられる。
【0146】
同時投与は、別々の組成物における同時投与(simultaneous administration)、別々の組成物における異なる時点での投与、またはその中に両方の薬剤が存在する一組成物の投与を含む。このため、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物および既知の療法は、単一の治療において投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物および既知の療法は、結果として生じる組成物において混合される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物および既知の療法は、別々の組成物または投与で投与される。
【0147】
本明細書に記載の組成物および本明細書に記載の既知の療法の投与は、任意に好適な手法によるものであってよい。本明細書に記載の組成物および第2の化合物(例えば、糖尿病用薬物または肥満症用薬物)の投与は、任意に好適な手法によるものであってよい。本明細書に記載の組成物および第2の化合物が別々の組成物として投与される場合、それらは、同じ経路で、または異なる経路で投与されてもよい。本明細書に記載の組成物および第2の化合物が、単一の組成物において投与される場合、それらは、例えば、経口投与等の任意に好適な経路で投与されてもよい。ある特定の実施形態において、メトホルミンまたはその類似体(その塩、溶媒和化合物、多形体、水和物、N−酸化物、またはプロドラッグを含む)の組成物および第2の化合物は、胃腸管の同じ領域または異なる領域に投与され得る。例えば、メトホルミンまたはその類似体(その塩、溶媒和化合物、多形体、水和物、N−酸化物、またはプロドラッグを含む)は、十二指腸、空腸、回腸、または結腸に送達される抗糖尿病薬物と組み合わせて投与され得る。
【0148】
高血糖症および/またはそれらに関連する疾患もしくは状態、例えば、糖尿病の治療に有用な療法、薬物、および化合物は、本明細書で開示される組成物とともに投与されてもよい。糖尿病の薬物および化合物には、トリグリセリド濃度を減少させる、グルコース濃度を減少させる、および/またはインスリンを調節する(例えば、インスリン産生を刺激する、インスリンを模倣する、グルコース依存性インスリン分泌を強化する、グルカゴン分泌もしくは作用を抑制する、インスリン作用もしくはインスリン感作物質を改善する、またはインスリンの外来性形態である)ものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
トリグリセリドレベルを減少させる薬物には、アスコルビン酸、アスパラギナーゼ、クロフィブラート、コレスチポール、フェノフィブラートメバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、またはω3脂肪酸が挙げられるが、これらに限定されない。LDLコレステロールレベルを減少させる薬物には、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、およびフェノフィブラート、ニコチン酸、メビノリン、メバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、コレスチリン(cholestyrine)、コレスチポール、またはプロブコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
別の態様では、本明細書に記載の実施形態の組成物は、グルコース低下化合物と組み合わせて投与されてもよい。
【0151】
チアゾリジンジオン(グリタゾンとも呼ばれる)、スルホニルウレア、メグリチニド、ビグアナイド、αグルコシダーゼ阻害剤、DPP−IV阻害剤、およびインクレチンミメティックの薬物分類は、高血糖症および糖尿病(2型)ならびに関連疾患のための補助治療として使用されてきた。
【0152】
グルコースレベルを減少させる薬物には、グリピジド、グリブリド、エキセナチド(バイエッタ(登録商標))、インクレチン、シタグリプチン(ジャヌビア(登録商標))、ピオグリチゾン(pioglitizone)、グリメピリド、ロシグリタゾン、メトホルミン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン(オングリザ(商標))、スルホニルウレア、メグリチニド(例えば、プランジン(Prandin)(登録商標))グルコシダーゼ阻害剤、ビグアナイド(例えば、グルコファージ(登録商標))、レパグリニド、アカルボース、トログリタゾン、ナテグリニド、天然、合成、もしくは組換えインスリン、およびそれらの誘導体、ならびにアミリンおよびアミリン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
経時的に投与される場合、組み合わせは、2つ以上の投与において投与される。代替の実施形態において、1つ以上のビグアナイド化合物および1つ以上の追加の活性成分を異なる経路で投与することが可能である。技術者はまた、種々の活性成分は、肥満症または摂食障害もしくは状態の制御防止、寛解、減弱、または治療を増大するか、または相乗的に強化するように作用し得る1つ以上のビグアナイド化合物と組み合わせて投与されてもよいことを理解されよう。
【0154】
本明細書に提供される方法に従って、少なくとも1つの他の肥満減少(もしくは抗肥満)または減量薬物と同時投与される場合、本開示の化合物は、(1)同時に製剤化され、投与される、または複合製剤において同時に送達される、(2)別々の製剤として、交互または並行して送達される、あるいは(3)当該技術分野で既知の任意の他の併用療法レジメンによるものであり得る。交互療法において送達される場合、提供される方法は、例えば、別々の溶液、乳剤、懸濁液、錠剤、丸剤、もしくはカプセルで、または別々のシリンジでの異なる注射によって、経時的に活性成分を投与すること、または送達することを含み得る。概して、交互療法の間、各活性成分の有効な投薬量は、経時的に、すなわち、連続的に投与され、一方、同時療法においては、2つ以上の活性成分の有効な投薬量は、一緒に投与される。様々な順序の断続的併用療法がまた、使用されてもよい。
【0155】
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される組成物は、例として、PYYおよびPYYアゴニスト、GLP−1およびGLP−1アゴニスト、DPP−IV阻害剤、CCKおよびCCKアゴニスト、エキセンディンおよびエキセンディンアゴニスト、GIPおよびGIPアゴニスト、アミリンおよびアミリンアゴニスト、グレリン修飾物質(例えば、阻害剤)、ならびにレプチンおよびレプチンアゴニスト等の他の市販の減食剤または他の減量(weight loss)および/もしくは抗肥満薬と使用され得る。ある特定の実例では、本明細書に提供されるビグアナイド化合物を含む組成物は、アミリン、アミリンアゴニスト、またはミメティックと組み合わせて使用される。例となるアミリンアゴニストまたはミメティックには、プラムリンチドおよび関連化合物を含む。ある特定の実例では、本明細書に提供される化合物および組成物は、レプチン、レプチンアゴニスト、またはミメティックと組み合わせて使用される。さらなるレプチンアゴニストまたはミメティックは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,247,427号に記載される方法を使用して同定されることができる。さらなる実例にでは、本明細書に提供される化合物および組成物は、レプチン感受性を増加し、レプチン、レプチンアゴニスト、またはミメティックの有効性を増加する。
【0156】
主題の方法における使用に適したさらなる抗肥満薬には、現在開発中のものを含む。他の抗肥満薬には、単独もしくは組み合わせて、フェンテルミン、フェンフルラミン、シブトラミン、リモナバント、トピラマート、ゾニサミド、ブプロピオン、ナルトレキソン、ロルカセリン、または関連する交感神経作動薬およびオルリスタット、または他の腸リパーゼ阻害剤を含む。減量、過食、食物依存、および欲求の治療に有用な療法、薬物、および化合物は、本明細書に記載の組成物と投与され得る。例えば、患者は、空腹感を抑制するか、または食欲を制御するとして知られている少なくとも1つの他の薬物をさらに投与され得る。そのような療法、薬物、および化合物には、メリディア(登録商標)およびゼニカル(登録商標)等のフェンテラミン(phenteramine)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる療法、薬物、および化合物が、当該技術分野で既知であり、本明細書で企図される。
【0157】
したがって、1つの態様において、化合物は、肥満症または摂食障害もしくは状態の制御、防止、または治療のための併用療法の一部として使用され得る。肥満症を治療する、または体重を減少するための併用療法の一部として使用される化合物には、抗鬱薬(ブプロピオン)、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(GW320659)、選択的5HT2c受容体アゴニスト、抗痙攣薬(トピラマート、ゾニサミド)、いくつかのドーパミンアンタゴニスト、およびカンナビノイド−1受容体アンタゴニスト(CB−1受容体アンタゴニスト)(リモナバント)を含む、神経伝達物質または神経イオンチャネルに影響する中枢神経系薬;レプチン類似体、レプチン輸送および/またはレプチン受容体のプロモーター、繊毛様神経栄養因子(アキソカイン)、神経ペプチドYおよびアグーチ関連ペプチドアンタゴニスト、プロオピオメラノコルチンおよびコカインおよびアンフェタミン調節転写プロモーター、α−メラノサイト刺激的ホルモン類似体、メラノコルチンメラノコルチン−4受容体アゴニスト、ならびにタンパク質−チロシンホスファターゼ−1B阻害剤、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−γ受容体アンタゴニスト、短時間作用型ブロモクリプチン(エルゴセット)、ソマトスタチンアゴニスト(オクトレオチド)、およびアジポネクチン/Acrp30(ファモキシンまたは脂肪酸代謝の酸化誘発剤)を含む、インスリン代謝/活性に影響する薬剤を含む、レプチン/インスリン/中枢神経系経路剤;コレシストキニン活性(CCK)、PYY活性、NPY活性、およびPP活性を増加する、グルカゴン様ペプチド−1活性(エキセンディン4、リラグルチド、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤)を増加するもの、およびグレリン活性を減少するもの、ならびにアミリン類似体(プラムリンチド)を含む、胃腸−神経経路剤;休止代謝率(選択的(3−3刺激剤/アゴニスト、非カップリングタンパク質ホモログ、および甲状腺受容体アゴニスト)を上昇し得る薬剤;メラニン濃縮ホルモンアンタゴニスト、フィトスタノール類似体、機能オイル、P57、アミラーゼ阻害剤、成長ホルモンフラグメント、デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩の合成類似体、脂肪細胞11B−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型活性のアンタゴニスト、コルチコトロピン放出ホルモンアゴニスト、脂肪酸合成の阻害剤(セルセニンおよびC75)、カルボキシペプチダーゼ阻害剤、インダノン/インダノール、アミノステロール(トロダスクエミン(trodusquemine)/トロダルアミン(trodulamine))、ならびに他の胃腸リパーゼ阻害剤(ATL962)を含む、他の多くの多様な薬剤;デクストロアンフェタミンのようなアンフェタミン;フェンテルミン、ベンズフェンタミン、フェンジメトラジン、マジンドール、およびジエチルプロピオンを含む、他の交感神経刺激アドレナリン作用薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
他の化合物は、エコピパム;オキシントモジュリン(OM);グルコース依存性インスリン親和性ポリペプチド(GIP);ガストリン放出ペプチド;ニューロメジンB;エンテロスタチン;アンフェブタモン、SR−58611;CP−045598;AOD−0604;QC−BT16;rGLP−1;1426(HMR−1426);N¬5984;ISIS−113715;ソラベグロン;SR−147778;Org−34517;メラノタン−II;セチリスタット;c−2735;c−5093;c¬2624;APD−356;ラダファキシン;フルアステロン;GP−389255;856464;S−2367;AVE−1625;T−71;オレイル−エストロン;ペプチドYY[3−36]鼻腔内;アンドロゲン受容体アゴニスト;PYY3−36;DOV−102677;タガトース;SLV−319;1954(Aventis Pharma AG);オキシントモジュリン、Thiakis;ブロモクリプチン、PLIVA;糖尿病/高脂血症療法、Yissum;CKD−502;甲状腺受容体βアゴニスト;β3アドレナリン受容体アゴニスト;CDK−Aアゴニスト;ガラニンアンタゴニスト;ドーパミンDl/D2アゴニスト;メラノコルチン修飾物質;ベロンガミン;神経ペプチドYアンタゴニスト;メラニン濃縮ホルモン受容体アンタゴニスト;二重PPARα/γアゴニスト;CGEN−P−4;キナーゼ阻害剤;ヒトMCH受容体アンタゴニスト;GHS−Rアンタゴニスト;グレリン受容体アゴニスト;DG70阻害剤;コチニン;CRF−BP阻害剤;ウロコルチンアゴニスト;UCL−2000;インペンタミン;β3アドレナリン作動性受容体;ペンタペプチドMC4アゴニスト;トロデュスクエミン;GT−2016;C−75;CPOP;MCH−1受容体アンタゴニスト;RED−103004;アミノステロール;オレキシン−1アンタゴニスト;神経ペプチドY5受容体アンタゴニスト;DRF−4158;PT−15;チロシンホスファターゼ阻害剤;A37215;SA−0204;糖脂質代謝物;MC−4アゴニスト;プロデュレスタン;PTP−1B阻害剤;GT−2394;神経ペプチドY5アンタゴニスト;メラノコルチン受容体修飾物質;MLN−4760;PPARγ/δ二重アゴニスト;NPY5RA−972;5−HT2C受容体アゴニスト;神経ペプチドY5受容体アンタゴニスト(フェニル尿素類似体);AGRP/MC4アンタゴニスト;神経ペプチドY5アンタゴニスト(ベンズイミダゾール);グルココルチコイドアンタゴニスト;MCHR1アンタゴニスト;アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤;R−1496;HOB1修飾物質;NOX−B11;ペプチドYY 3−36(エリゲン);5−HT 1修飾物質;膵臓リパーゼ阻害剤;GRC−1087;CB−1アンタゴニスト;MCH−1アンタゴニスト;LY−448100;ボムベシンBRS3アゴニスト;グレリンアンタゴニスト;MC4アンタゴニスト;ステアロイルCoAデサチュラーゼ修飾物質;H3ヒスタミンアンタゴニスト;PPARpanアゴニスト;EP−01492;ホルモン感受性リパーゼ阻害剤;脂肪酸結合タンパク質4阻害剤;チオラクトン誘導体;タンパク質チロシンホスファターゼ1B阻害剤;MCH−1アンタゴニスト;P−64;PPARγリガンド;メラニン濃縮ホルモンアンタゴニスト;チアゾール・ガストロキネティクス(gastroprokinetics);PA−452;T−226296;A−331440;イムノ薬物ワクチン;糖尿病または肥満治療(Bioagency,Biofrontera Discovery GmbH);P−7(ゲンフィット);DT−011M;PTP1B阻害剤;抗−糖尿病ペプチド抱合体;KATPアゴニスト;肥満療法(Lexicon);5−HT2アゴニスト;MCH−1受容体アンタゴニスト;GMAD−1/GMAD−2;STG−a−MD;神経ペプチドYアンタゴニスト;血管新生阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;ニコチン治療剤(ChemGenex);抗肥満薬(Abbott);神経ペプチドY修飾物質;メラニン濃縮ホルモン;GW−594884A;MC−4Rアゴニスト;ヒスタミンH3アンタゴニスト;オーファンGPCR修飾物質;MITO−3108;NLC−002;HE−2300;IGF/IBP−2−13;5−HT2C アゴニスト;ML−22952;神経ペプチドY受容体アンタゴニスト;AZ−40140;抗肥満療法(日清製粉);GNTI;メラノコルチン受容体修飾物質;αアミラーゼ阻害剤;神経ペプチドY1アンタゴニスト;β3アドレナリン受容体アゴニスト;ob遺伝子産物(Eli Lilly&Co.);SWR−0342−SA;β3アドレナリン受容体アゴニスト;SWR−0335;SP−18904;経口インスリンミメティック;β3アドレナリン受容体アゴニスト;NPY−1アンタゴニスト;β3アゴニスト;肥満療法(7TM Pharma);llβヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSD)1阻害剤;QRX−431;E−6776;RI−450;メラノコルチン−4アンタゴニスト;メラノコルチン4受容体アゴニスト;肥満療法(CuraGen);レプチンミメティック;A−74498;第二世代レプチン;NBI−103;CL−314698;CP−114271;β3アドレナリン受容体アゴニスト;NMI−8739;UCL−1283;BMS−192548;CP−94253;PD−160170;ニコチンのアゴニスト;LG−100754;SB−226552;LY−355124;CKD−711;L−751250;PPAR阻害剤;Gタンパク質療法;肥満療法(Amylin Pharmaceuticals Inc.);BW−1229;モノクローナル抗体(ObeSys/CAT);L−742791;(S)−シブトラミン;MBU−23;YM−268;BTS−78050;tubby様タンパク質遺伝子;ゲノミクス(摂食障害;Allelix/Lilly);MS−706;GI−264879A;GW−409890;FR−79620類似体;肥満療法(Hybrigenics SA);ICI−198157;ESP−A;5−HT2Cアゴニスト;PD−170292;AIT−202;LG−100641;GI−181771;抗肥満療法(Genzyme);レプチン修飾物質;GHRHミメティック;肥満療法(山之内製薬株式会社);SB−251023;CP-331684;BIBO−3304;コレステン−3−オン;LY−362884;BRL−48962;NPY−1アンタゴニスト;A−71378;RTM.ジデスメチルシブトラミン;アミド誘導体;肥満療法(Bristol−Myers Squibb Co.);肥満療法(Ligand Pharmaceuticals Inc.);LY−226936;NPYアンタゴニスト;CCK−Aアゴニスト;FPL−14294;PD−145942;ZA−7114;CL−316243;SR−58878;R−1065;BIBP−3226;HP−228;タリベグロン;FR−165914;AZM−008;AZM−016;AZM−120;AZM−090;ベメロフェリン;BMS−187257;D−3800;AZM−131;遺伝子の発見(Axys/Glaxo);BRL¬26830A;SX−013;ERR修飾物質;アジプシン;AC−253;A−71623;A−68552;BMS−210285;TAK−677;MPV−1743;肥満療法(Modex);GI−248573;AZM−134;AZM−127;AZM−083;AZM−132;AZM−115;エキソピパム(exopipam);SSR−125180;肥満療法(Melacure Therapeutics AB);BRL−35135;SR−146131;P−57;AZM−140;CGP−71583A;RF−1051;BMS−196085;マニファキシン;β3アゴニスト;DMNJ(Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology);BVT−5182;LY−255582;SNX¬024;ガラニンアンタゴニスト;ニューロキニン3アンタゴニスト;デクスフェンフルラミン;マジンドール;ジエチルプロピオン;フェンジメトラジン;ベンゾフェンタミン;アムフェブトモン;セルトラリン;メトホルミン;AOD−9604;ATL−062;BVT¬933;GT389−255;SLV319;HE−2500;PEG−axokine;L−796568;およびABT−239を含む。
【0159】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるビグアナイド化合物を含む組成物と組み合わせて使用するための化合物には、リモナバント、シブトラミン、オルリスタット、PYY、またはそれらの類似体、CB−1アンタゴニスト、レプチン、フェンテルミン、およびエキセンディン類似体が挙げられる。例となる投薬の範囲は、フェンテルミン樹脂(午前中に30mg)、塩酸フェンフルラミン(1日に3回20mg)、ならびにフェンテルミン樹脂(午前中に15mg)およびロルカセリン(夕食前の30mg)の組合せ、およびシブトラミン(10〜20mg)を含む。Weintraub et al.(1984)Arch.Intern.Med.144:1143−1148。
【0160】
さらなる実施形態において、本明細書に提供される組成物と組み合わせて使用するための化合物には、GPR119アゴニスト(例えば、アナンダミド;AR−231、453;MBX−2982;オレオイルエタノールアミド;PSN−365,963;PSN−632,408;パルミトイルエタノールアミド)、GPR120アゴニスト(例えば、a−リノレン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ヘンエイコサペンタエン酸、ヘキサデカトリエン酸、ステアリドン酸、テトラコサヘキサエン酸、およびテトラコサペンタエン酸が含まれるが、これらに限定されないω3脂肪酸)、ならびにGPR40、GPR41、およびGPR43アゴニスト(例えば、短、中、および長鎖、飽和および不飽和脂肪酸を含む遊離脂肪酸)が挙げられる。
【0161】
いくつかの実施形態において、本明細書に提供される組成物は、肥満外科手技への補助的療法として使用される。肥満外科手術は、減量のための手技であり、胃腸管の変更に関し、胃緊縛術、スリーブ状胃切除術、GIバイパス手技(例えば、ルーワイ術、胆管十二指腸バイパス術、ループ胃バイパス術)、胃内バルーン、垂直遮断胃形成術、腔内スリーブ、胆膵路転換手術等の手技を含む。ある特定の実例では、本明細書に提供される組成物は、胃緊縛術の補助的なものである。ある特定の実例では、組成物は、GIバイパス手技の補助的なものである。さらに他の実例では、本明細書に提供される組成物は、スリーブ状胃切除術の補助的なものである。ある特定の実施形態において、肥満外科手術に対する補助的療法として本明細書に提供される組成物は、肥満手技の前に投与される。ある特定の実施形態において、肥満外科手術に対する補助的療法として本明細書に提供される組成物は、肥満手技の後に投与される。ある特定の実例では、補助的療法として使用される場合、本明細書に提供される組成物の投与および量は、必要に応じて、肥満手技に対して調整され得る。例えば、肥満手技の補助治療として投与される本明細書に提供される組成物の量は、正常の投与量の半分に、または医療従事者によって指示されるように低下され得る。
【0162】
併用療法は、例えば、メタボリック症候群を調節する(またはメタボリック症候群、ならびにその関連する症状、合併症、および障害を治療する)ために活用されてもよく、本明細書に提供される化合物は、糖尿病、肥満症、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、および/またはそれらのそれぞれの関連する症状、合併症、および障害を調節する、防止する、または治療するために、例えば、上述の活性薬剤と組み合せて効果的に利用され得る。
【0163】
治療を評価するための方法
糖尿病の治療の評価
糖尿病の態様における本発明のビグアナイド化合物治療の効果は、当該技術分野で既知の、および糖尿病の患者を治療する医師によって一般的に実施される方法に従って、評価され得る。
【0164】
本明細書に記載の組成物および方法による糖尿病/メタボリック症候群および糖尿病関連状態の治療の有効性は、当該技術分野で既知のアッセイおよび手法を使用して評価され得る。例として、腎機能の定量的アセスメントおよび腎機能障害のパラメーターは、当該技術分野でよく知られている。腎機能/機能障害の判定のためのアッセイの例として、血清クレアチニンレベル;クレアチニン排泄速度;シスタチンC排泄速度、24時間尿クレアチニン排泄、24時間尿タンパク質分泌;糸球体濾過率(GFR);尿アルブミンクレアチニン比率(ACR);アルブミン排泄率(AER);および腎生検が挙げられる。
【0165】
膵機能の定量的アセスメントおよび膵臓機能障害または機能不全のパラメーターもまた、当該技術分野でよく知られている。膵臓機能/機能障害の判定のためのアッセイの例として、ランゲルハンス島の大きさ、成長、および/または分泌活性、β細胞の大きさ、成長、および/または分泌活性、インスリン分泌および循環血液レベル、血糖値レベル、膵臓のイメージング、および膵臓生検のアセスメント、経口グルコース負荷によるグルコース取り込み試験、サイトカイン特性のアセスメント、血液ガス分析、組織の血液潅流の程度、ならびに組織内の血管新生等の生物学的および/または生理学的パラメーターを使用して膵機能を評価することが挙げられる。
【0166】
糖尿病および糖尿病関連状態の治療のためのさらなるアッセイは、当該技術分野で既知であり、本明細書に企図される。
【0167】
体重減少、肥満、および摂食障害の治療の評価
肥満症の治療において、患者における体重および/または脂肪が減少されることが望ましい。体重を減少するとは、患者が、一連の治療にわたって彼の/彼女の全体重の一部を減らすことを意味する(一連の治療は、数日間、数週間、数か月間、または数年間であり得る)。代替として、体重を減少することは、脂肪質量対除脂肪質量の比率における減少として定義され得る(言い換えると、全体重における低下と必ずしも一致せずに、患者は脂肪量を減らし、除脂肪量を維持したか、または増加した)。この実施形態において施される有効量のビグアナイド化合物治療は、その一連の治療にわたって患者の体重を減少させるのに有効な量、または代替として、その一連の治療にわたって患者の脂肪質量の割合を低下させるのに有効な量である。ある特定の実施形態において、患者の体重は、一連の治療にわたって、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、または少なくとも約20%減少される。代替として、患者の脂肪質量の割合は、一連の治療にわたって、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、または少なくとも25%低下される。
【0168】
全体重および脂肪含量は、食事時間の最後に測定され得る。ラットにおいて、全体脂肪量を判定するために頻繁に使用される方法は、後腹膜脂肪パッド(後腹膜内、後腹壁と後壁側腹膜との間の領域に位置する身体の脂肪)を外科的に取り除き、秤量することである。パッド重量は、動物の体脂肪率に直接関係すると考えられる。ラットにおける体重と体脂肪との関係が線形であるため、肥満の動物は、同様に高い割合の体脂肪および後腹膜脂肪パッド重量を有する。
【0169】
患者における大食症を治療する、低下する、または防止する方法が提供される実施形態において、大食症は、当該技術分野で既知の、あるいは大食症を研究している人によって作成された質問表を使用することによって、測定され得る。そのような質問表は、好ましくは、患者が大食症を有しない場合は0とし、患者が重篤な大食症を有する場合は10(1〜10の尺度上である場合)とするように、大食症のレベルを数値尺度に位置づけるものである。質問表はまた、好ましくは、どのタイプの食物を患者が欲するかに対する質問を含むものである。過食は、質問表および過食スケール(Binge Eating Scale)(BES)を使用して、判定されるか、または測定され得る。過食の重症度は、総BESスコア(一つ一つの項目のスコアを合計することによって計算される)に基づいて、3つのカテゴリー(軽度、中度、および重度)に分けられ得る。したがって、方法は、患者のBESスコアを低下するために提供され、それを必要とする患者に、患者のBESスコアを低下するのに有効な量で化合物治療を投与することを含む。いくつかの実施形態において、化合物治療の投与は、対象のBESカテゴリーを、例えば、重度から中度へ、重度から軽度へ、または中度から軽度へ変化させる。
【0170】
患者のホルモンプロファイルの前治療評価
いくつかの実施形態において、患者は、本明細書に記載の方法を使用して、代謝ホルモンの発現を事前に評価される。このため、個人に提供される療法を彼または彼女の特定の必要性に標的化することができる。実施形態において、患者のホルモンプロファイルは事前に評価され、医師が影響することを望む変化に応じて、ある特定の決定された量の化合物/代謝産物の組み合わせが投与される。評価プロセスは、繰り返されてもよく、治療は、治療の間の、または治療に続く任意の時間に従って調整され得る。
【0171】
ホルモンアッセイ
実施形態において、GLP−1、GLP−2、GIP、オキシントモジュリン、PYY、CCK、グリセンチン(glycentin)、インスリン、グルカゴン、グレリン、アミリン、ウログアニリン、C−ペプチド、および/またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、本発明の方法に関連して検査されるホルモンのレベルは、本文献に記載される標準方法に従って検出される。例えば、タンパク質は、免疫学的アッセイによって、および転写産物は核酸増幅技術によって測定され得る。当該技術分野で説明される機能アッセイがまた、必要に応じて使用されてもよい。実施形態において、検査される試料は、培養細胞、患者の細胞もしくは組織試料、患者の体液、例えば、血液もしくは血漿等を含む。同様に、本発明の方法に関して検査される分析物(例えば、グルコース、トリグリセリド、HDL、LDL、apoB等)のレベルは、任意の既知の方法に従って検出される。
【0172】
例えば、免疫蛍光法が、GLP−1を分析するために使用され得る。細胞は、37℃で12ウェルプレートの単一層でコンフルエントになるようにマトリゲルコーティングされたカバーガラス上で増殖され、リン酸緩衝食塩水(PBS)中4%パラホルムアルデヒドに固定され、PBS中0.4%Triton−Xで10分間透過処理し、さらに室温で1時間遮断した後、主要な抗血清(例えば、ウサギ抗αガストデューシン、1:150;Santa Cruz Biotechnology、およびウサギ抗GLP−1、Phoenix)で、4℃で一晩インキュベートされ得る。遮断緩衝液を用いた3つの洗浄ステップに続いて、適切な二次抗体が室温で1時間適用される(AlexaFluor 488 抗ウサギ免疫グロブリン、1:1000、Molecular Probes)。3つの洗浄ステップの後、細胞は、Vectashield培地および可視化された免疫蛍光法に固定され得る。
【0173】
細胞から単離されたGLP−1 RNAは、RT−PCRを使用して検査され得る。細胞からのRT−PCR RNA単離は、標準の方法論を使用して実施され得る.RT−PCR反応は、公開された主要な配列(Integrated DNA Technologies)を使用して、ペルチェサーマルサイクラー(PTC−225 DNA Engine Tetrad Cycler、MJ Research)中で50plの体積で実施され得る。95℃で15分間の最初の活性化ステップの後、逆転写は、50℃で30分間実施され得る。PCRは、94℃で1分間変性させ、55℃で1分間アニーリングし、72℃で1分間拡張することによって、40サイクル実施されてもよく、72℃で10分間の最終拡張ステップが続く。例えば、取り除かれた逆転写酵素または鋳型の代わりに水で置き換えることによって、陰性対照が必要に応じて含まれ得る。対照は、例えば、ラットの舌上皮から単離されたRNAであり得る。PCR産物は、臭化エチジウムを用いて2%アガロースゲル中で分離され、UV光下で可視化され得る。
【0174】
患者の血液試料中の総GLP−1のためのラジオイムノアッセイ(RIA)は、当該技術分野において、例えば、Laferrereらによる、2007年「Incretin Levels and Effect are Markedly Enhanced 1 Month after Roux−en−Y Gastric Bypass Surgery in Obese Patients with Type 2 Diabetes,Diabetes Care 30(7):1709−1716において説明されるように、実施され得る(Phoenix Pharmaceutical,Belmont,CAから得られる市販の材料を使用する)。著者らは、経口耐糖能検査および同じ血糖の静注グルコース試に応答するインスリン分泌における差異(曲線下面積またはAUC)を測定することによって、インスリンの分泌におけるGIPおよびGLP−1の効果の測定を記述する。
【0175】
GLP−1、GIP、グルカゴン、インスリン、Cペプチド、膵臓ペプチド、非エステル化脂肪酸、グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体、および膵島抗原抗体の血漿濃度の測定は、例えば、Toft−Nielsenらによる、2001年「Determinants of the Impaired Secretion of Glucagon−Like Peptide−1 in Type 2 Diabetic Patients」J.Clin.End.Met.86(8):3717−3723に記載される。著者らは、アミド化GLP−1−(7−36)の血漿濃度を測定するために、抗体コード第89390を使用する、GLP−1に対するラジオイムノアッセイの使用を記述する。このアッセイは、GLP−1−(7−36)およびその代謝産物GLP−1−(9−36)の合計を測定する。著者らは、ヒトGIPに100%反応するが8−kDA GIPには反応しない、C末端に向けられた抗体コード第R65(RIA)を使用するGIPの測定を記述する。
【0176】
GLP−1およびPYYは、例えば、Claustreらによって記述されるように、静脈流出液からの上清中で直接検査され得る(1999,「Stimulatory effect of(3−adrenergic agonists on ileal L cell secretion and modulation by a−adrenergic activation,J.Endocrin.162:271−8)。(同様に、Plaisancie´et al.,1994,「Regulation of glucagon−like peptide−1−(7−36)amide secretion by intestinal neurotransmitters and hormones in the isolated vascularly perfused rat colon」、Endocrinology 135:2398−2403 and Plaisancie´et al.,1995,「Release of peptide YY by neurotransmitters and gut hormones in the isolated,vascularly perfused rat colon」、Scandinavian Journal of Gastroenterology 30:568-574も参照されたい。)この方法では、199D抗GLP−1抗体が1:250000の希釈で使用される。この抗体は、GLP−1−(7−36)アミドに100%、GLP−1−(1-36)アミドに84%、ならびにGLP−1−(1−37)、GLP−1−(7−37)、GLP−2、およびグルカゴンに0.1%未満反応する。PYYは、A4D抗ブタPYY抗血清を用いて1:800000の希釈で検査される。
【0177】
GLP−1およびGIPを分析する方法はまた、当該技術分野の他、例えば、Jongらによる、PNAS、2007でも記述される。
【0178】
PYYはまた、例えば、Weickertらによる、2006年「Soy isoflavones increase preprandial peptide YY(PYY),but have no effect on ghrelin and body weight in healthy postmenopausal women」Journal of Negative Results in BioMedicine,5:11に記述されるように、ラジオイムノアッセイを使用して血中で検査され得る。血液は、グルコース、グレリン、およびPYYの分析用の氷冷されたEDTA管中で収集される。1600gで10分間、4℃の遠心分離に続いて、アリコートを検査されるまで、−20℃で即時凍結した。個々の患者からのすべての試料を同じアッセイにおいて測定した。著者らは、市販のラジオイムノアッセイによって測定された免疫反応性総グレリンの測定を記述した(Phoenix Pharmaceuticals,Mountain View,CA,USA)。(Weickert,et al.,2006,「Cereal fiber improves whole−body insulin sensitivity in overweight and obese women」、Diabetes Care 29:775−780もまた参照されたい)。免疫反応性総ヒトPYYは、二重抗体/PEG技術により活性PYYのレベルを判定するために、トレーサーとして125Iで標識された生理活性PYYおよびPYY抗血清を使用して、市販のラジオイムノアッセイ(LINCO Research,Missouri,USA)によって、測定される。PYY抗体は、モルモット中で上昇し、ヒトPYYのPYY1−36およびPYY3−36(活性)形態の両方を認識する。
【0179】
SGLT−1、腸管ナトリウム依存性グルコーストランスポーター1は、身体へのグルコースの提供に関与するタンパク質である。それは、T1R3に関与する経路を通る腸の管腔内の糖に応答して発現されることが報告されている(Margolskee,et al.,2007"T1R3 and gustducin in gut sense sugars to regulate expression of Na+−glucose cotransporter 1,"Proc Natl Acad Sci USA 104,15075−15080")。SGLT−1の発現は、例えば、Margolskeeらによって記述されるように、例えば、当該技術分野で既知の定量的PCRおよびウエスタンブロット法を使用して、検出され得る。グルコース輸送の測定は、文献、例えば、Dyerらによる、1997年、Gut 41:56−9、およびDyerらによる、2003年、Eur.J.Biochem 270:3377−88に記載されている。刷子縁膜小胞におけるグルコース輸送の測定は、例えば、BBMV(100μgのタンパク質)への100mM NaSCN(もしくはKSCN)、100mM マンニトール、20mM Hepes/トリス(pH7.4)、0.1mM MgSO4、0.02%(wt/vol)NaN3、および0.1mM D−[U14C]グルコースを含有する100plの培養培地の添加により開始されるD−グルコース取り込みによって達成され得る。反応は、150mM KSCN、20mM Hepes/トリス(pH7.4)、0.1mM MgSO4、0.02%(wt/vol)NaN3、および0.1mM フロリジンを含有する1mlの氷冷停止緩衝液の添加によって3秒後に停止される。反応混合物の0.9−mlの部分を除去し、0.22−[tm孔の酢酸セルロース/硝酸塩フィルター(GSTF02500;Millipore,Bedford,MA)を通して、減圧下で濾過する。フィルターを1mlの停止緩衝液で5回洗浄し、フィルター上で保持される放射能を液体シンチレーション計数法で測定する。
【実施例】
【0180】
実施例1:PYY、GLP−1(活性)、およびGLP−1(総量)の腸内分泌産生、ならびにグルコースおよびインスリンの低下は、メトホルミンの血漿吸収とは無関係である
実施例1.1:材料および方法
母集団:25.0〜35.0kg/m
2のBMIを有する18〜65歳のおよそ18人の適格な男性および女性対象を本研究において無作為化した。適格であるため、各対象はまた、以下の基準も満たした:(a)母乳哺育ではない;(b)陰性妊娠検査結果(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、βサブユニット)を有する;(c)外科的に無菌である、閉経後である、または出産可能性がある場合、試験の全期間中、適切な受胎調節を実施する;(d)以下の状態:(i)肝臓疾患;(ii)腎臓疾患;(iii)胃腸管疾患;(iv)糖尿病を含む、内分泌障害;(v)心血管疾患;(vi)発作性障害;(vii)臓器移植;および(viii)慢性感染を含むが、これらに限定されない、臨床的に有意な異常のない身体検査を有する;ならびに(e)プロトコール要求を理解する能力およびそれを支持する意志。
【0181】
製剤
メトホルミンDR製剤は、錠剤が遠位小腸のpH6.5領域に達するまでGI管での薬物の放出を遅らせるために、そこに追加コーティング(密封コーティングおよび腸溶コーティング)が適用される、500mgのメトホルミン塩酸塩を含有する、米国から供給される市販のフィルムコーティングされた即時放出錠剤であった。その錠剤は、それぞれが500mgのメトホルミン塩酸塩を含有する、白色で両凸の、円形状のコーティングされた錠剤であった。その市販の錠剤の不活性成分には、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、およびポリエチレングリコールを含んだ。追加コーティング系中の不活性成分には、ヒプロメロース、トリアセチン、タルク、メタクリル酸コポリマー(Eudragit(登録商標)L30 D−55)、ポリ(アクリル酸メチル−コ−メタクリル酸メチル−コ−メタクリル酸)7:3:1(Eudragit(登録商標)FS 30 D)、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、モノステアリン酸グリセリン、およびクエン酸トリエチルを含んだ。
【0182】
メトホルミンIR製剤は、そこに追加の密封コーティングのみが適用される、500mgのメトホルミン塩酸塩を含有する、同一の米国から供給される市販のフィルムコーティングされた即時放出錠剤であった。遅延放出(腸溶)コーティングは適用されなかった。追加の密封コーティング系中の不活性成分には、ヒプロメロース、トリアセチン、およびタルクを含んだ。
【0183】
容器番号およびロット番号が表示されたスクリューキャップ容器内にパッケージ化されるバルク錠剤として、そのメトホルミン製剤を部位に供給した。すべての試験薬をラベル上で示されるように涼しく乾燥した状態で保管し、研究職員によって指示されるようにのみ使用した。各治療期間の開始時に、無作為化スキームに従って、非盲検の施設薬剤師または研究職員によって試験薬が調剤された。
【0184】
投与
来院2および4で、無作為化スキームに従って、非盲検の施設薬剤師または研究職員によって試験薬が調剤された。来院2および4の終了時に、その次の試験来院(来院3または5)に彼らが戻るまでの割り当てられた試験薬および自己投与の指示書を持たせて、対象を診療所から退院させた。
【0185】
試験薬は、無傷の錠剤(噛まれずに、または砕かれずに丸ごと嚥下される)として経口で水とともに投与された。各治療期間に対する試験薬の最初の用量および最後2回の用量は、認定された研究施設職員によって対象に投与された(来院2および4における最初の用量、ならびに来院3および5における最後2回の用量)。対象は、その次の試験来院(来院3または5)に彼らが戻るまで、指示書に従って割り当てられた試験薬を自己投与した。研究施設職員は、直接的ではない質問を通して服薬遵守および有害事象を評価するため、各治療期間の投薬の2日目に電話で対象に連絡した。対象が有意な胃腸管症状を経験していた場合、研究者の裁量で対象に用量を増大しないことを指示した。
【0186】
試験中に実施される手順は、以下の表1〜3に記載される。
【0187】
(表1)試験計画(プロトコールLCPOC6)
[1]直接的ではない質問を通して服薬遵守および有害事象を評価し、対象に用量を増加させることを思い出させるための電話
[2]対象が子宮摘出術を受けたことがあるか、または閉経後である場合を除き、すべての女性対象において必要とされる妊娠検査。
[3]来院2および4においてGLP−1、PYY、血漿グルコース、インスリン、およびトリグリセリド;来院3および5においてGLP−1、PYY、血漿グルコース、インスリン、トリグリセリド、およびメトホルミン。
来院2および来院4における食事負荷の後。来院3および来院5における4日目の午後の用量および5日目の午前の用量。
【0188】
(表2)来院2および来院4における標準化された朝食および血液採取特性のスケジュール
[1]PYY、GLP−1、血漿グルコース、インスリン、およびトリグリセリドのアセスメントのための採取時点あたり6−mLの総血液量。
[2]対象は、20分間以内に標準化された朝食を消費することを指示される。
【0189】
(表3)来院3および来院5における投薬、標準化された朝食、および血液採取特性の5日目のスケジュール
[1]PYY、GLP−1、血漿グルコース、インスリン、およびトリグリセリドのアセスメントのための採取時点あたり6−mLの総血液量。
[2]対象は、20分間以内に標準化された朝食を消費することを指示される。
[3]メトホルミンのアセスメントのための採取時点あたり2−mLの総血液量。
【0190】
薬力学アセスメント
表1、2、および3に提示されるスケジュールに従って、ならびに上に記載されるように血液試料を収集した。分析方法により、空腹時および食後の腸ホルモンGLP−1およびPYYの血漿濃度、ならびに血漿グルコース、インスリン、およびトリグリセリドの濃度を測定した。各来院からの血液試料を処理し、将来のさらなるホルモンの探索分析のため、−70℃で保管した。
【0191】
薬物動態アセスメント
表1、2、および3に提示されるスケジュールに従って、ならびに上に記載されるように、血液試料を収集した。分析方法によって血漿メトホルミン濃度を測定した。各来院からの血液試料を処理し、将来のさらなるホルモンの探索分析のため、−70℃で保管した。
【0192】
臨床検査評価
前節の表1、2、および3に提示されるスケジュールに従って、試料を収集した。
【0193】
化学
化学アセスメントは、尿素窒素、クレアチニン、総タンパク質、アルブミン、尿酸、総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸塩アミノトランスフェラーゼ、γグルタミルトランスペプチダーゼ、クレアチンホスホキナーゼ、グルコース、ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸塩、リン、乳酸塩、およびカルシウム(または他の承認された通例の化学パネル)を含んだ。
【0194】
血液学
血液学アセスメントは、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値、白血球数、血小板、微分計数、平均細胞容積、平均赤血球ヘモグロビン量、および平均赤血球ヘモグロビン濃度(または他の承認された通例の血液学アセスメント)を含んだ。
【0195】
尿検査
尿検査アセスメントは、pH、比重、グルコース、血液、ケトン、およびタンパク質(または他の承認された通例の尿検査)を含んだ。
【0196】
妊娠検査
出産ステータスを問わず、すべての女性対象(対象が、閉経期後であったか、または子宮摘出術を受けたことがあった場合を除く)は、妊娠検査のための血液または尿を提供した。陰性結果が得られない限り、試験薬を投与しなかった。
【0197】
安全性に関するバイタルサインおよび他の観察
安全性に関するバイタルサインおよび他の観察における臨床的に有意な異常を、根本的な原因が診断されるか、または回復が生じるまで研究者によって経過観察し、必要に応じてさらなる検査で評価した。
【0198】
バイタルサイン
バイタルサイン測定は、収縮期および拡張期血圧、心拍数、および体温の設定を含んだ。対象がおよそ5分間の休憩をした後、座位の対象においてバイタルサインを測定した。少なくとも30秒後血圧測定を繰り返し、2つの読み取りの平均を記録した。
【0199】
実施例1.2:結果
試験設計および事象タイムラインが、
図1〜2に示される。結果として得られる対象の処置および母集団(表4)ならびに対象18人の人口統計学的およびベースライン特徴(表5)が、以下の表4および5において示される。
【0200】
(表4)対象の処置および母集団
・対象2人を評価可能母集団から除外した;1人は中止し、1人は治療期間2の終了時に試験食事を完了できなかった
【0201】
(表5)人口統計学的およびベースライン特徴(n=18)
【0202】
図3は、メトホルミンDRの摂取がメトホルミンIRと比較して血漿中のメトホルミンの吸収を最小化したことを示す。メトホルミンDRおよびメトホルミンIRの曲線下面積(AUC)およびCmax値が、以下の表6に提供される。
【0203】
(表6)メトホルミン血漿薬物動態
【0204】
メトホルミンDRによる治療は、メトホルミンIR(
図3)と比較してメトホルミンの全身性レベルを最小化したが、
図4A〜Cは、メトホルミンIRのものと比較可能なメトホルミンDRの治療後の対象16人における摂食亢進性(meal−enhanced)腸ホルモンの増大を示す。加えて、
図5A〜Bは、メトホルミンIRのものと比較可能なメトホルミンDRでの治療後の対象16人における摂食亢進性グルコースおよびインスリンの減少を示す。
図6は、メトホルミンDRによる治療が、メトホルミンIRと同様のPYY反応をもたらすが、低い全身曝露を有することを示す。
図7A〜Bは、メトホルミンPK/PD関係が少なくとも1人の患者において分離できたことを示す。
【0205】
実施例2−2型真性糖尿病を有する対象における遅延放出および即時放出メトホルミンの定常状態のPKおよびPDを評価するための無作為化クロスオーバー研究
【0206】
この無作為化クロスオーバー研究は、2型真性糖尿病を有する対象における、500mgおよび1000mgメトホルミン遅延放出(メトホルミンDR)、1000mgメトホルミン即時放出(メトホルミンIR)、ならびに500mgメトホルミンIR+1000mgメトホルミンDRの定常状態の薬物動態および薬力学(グルコース、インスリン、グルカゴン様ペプチド1[GLP−1]、およびペプチドYY[PYY]を評価した。経口抗糖尿病療法でそれらの糖尿病を管理する対象は、無作為化の直前少なくとも14日間はそれらの薬物療法を断っていなければならなかった。
【0207】
各治療期間は、5日間の長さであり、7日間の休薬間欠期によって分けられた。各治療期間は、試験薬物の投与前1日目の標準化された朝食および昼食プロファイル(ベースラインアセスメント)および5日目の朝の同一のプロファイル(薬物のアセスメント)を含んだ。
【0208】
実施例2.1:材料および方法
標準プロトコールを使用して、2つの標準化された食事(t=0分に約500キロカロリーの標準化された朝食、およびt=300分に約1000キロカロリーの標準化された昼食)に応答して、およそ10時間にわたる循環PYY、GLP−1、グルコース、およびインスリン濃度上の各治療の効果に関して、対象を評価した。およそ11時間のサンプリング期間にわたってメトホルミン薬物動態もまた評価した。
【0209】
集団:最も無作為化された対象は白人(79.2%)であり、半分は女性(50.0%)であった。ベースラインにおいて、その平均年齢は51.3歳であり、平均体重は93.4kgであり、および平均BMIは33.3kg/m
2であった。対象24人中、19人が試験を完了した。
【0210】
薬物動態および薬力学分析に対する主要集団は、プロトコール手順と一致している全治療期間を完了したすべての対象として定義される、評価可能集団(N=19)であった。安全性分析に対する主要集団は、試験薬の少なくとも1用量を受けるすべての対象として定義される治療意図(Intent−to−Treat)(ITT)集団(N=24)であった。
【0211】
製剤
メトホルミンDR製剤は、錠剤が遠位小腸のpH6.5領域に達するまでGI管での薬物の放出を遅らせるために、そこに追加コーティング(密封コーティングおよび腸溶コーティング)が適用された、500mgのメトホルミン塩酸塩を含有する、米国から供給される市販のフィルムコーティングされた即時放出錠剤であった。その錠剤は、それぞれが500mgのメトホルミン塩酸塩を含有する、白色で両凸の、円形状のコーティングされた錠剤である。その市販の錠剤の不活性成分には、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、およびポリエチレングリコールを含んだ。追加のElcelyxコーティング系中の不活性成分には、ヒプロメロース、トリアセチン、タルク、メタクリル酸コポリマー(Eudragit(登録商標)L30 D−55)、ポリ(アクリル酸メチル−コ−メタクリル酸メチル−コ−メタクリル酸)7:3:1(Eudragit(登録商標)FS 30 D)、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、モノステアリン酸グリセリン、およびクエン酸トリエチルを含んだ。
【0212】
メトホルミンIR製剤は、そこに追加の密封コーティングのみが適用される、500mgのメトホルミン塩酸塩を含有する、同一の米国から供給される市販のフィルムコーティングされた即時放出錠剤であった。遅延放出(腸溶)コーティングは適用されなかった。追加の密封コーティング系中の不活性成分には、ヒプロメロース、トリアセチン、およびタルクを含んだ。
【0213】
容器番号およびロット番号が表示されたスクリューキャップ容器内にパッケージ化されるバルク錠剤として、そのメトホルミン製剤を部位に供給した。すべての試験薬をラベル上で示されるように涼しく乾燥した状態で保管し、研究職員によって指示されるようにのみ使用した。各治療期間の開始時に、無作為化スキームに従って、非盲検の施設薬剤師または研究職員によって試験薬が調剤された。
【0214】
投与
試験薬は、朝食および夕食の前に無傷の錠剤(丸ごと嚥下される)として経口的に水とともに投与された。対象は、研究施設職員によって1日目に提供された指示書に従って、1日目の午後から4日目の午前まで彼らの割り当てられた試験薬を自己投与した。各治療期間に対する試験薬の最後2回の用量(4日目の午後および5日目の午前)は、認定された研究施設職員によって対象に投与された。胃腸副作用を低減するために、すべての治療レジメンは、最初3回の用量に対して500mg/用量で治療を開始し、続いて残りの試験期間に対して無作為化された用量(500mg/用量、1000mg、または1500mg/用量)に増加した。研究施設職員は、直接的ではない質問を通して服薬遵守および有害事象を評価し、適切な場合、彼らに用量の増大を思い出させるため、各治療期間の投薬の2日目に電話で対象に連絡した。
【0215】
実施例2.2:結果
薬物動態評価
薬物動態プロファイル
図8は、治療から5日目の平均血漿メトホルミン濃度および時点を示す。5日目のt=0におけるメトホルミンIRの投薬前平均濃度は350ng/mLであり、それは文献に公開される定常状態のトラフ濃度と一致した。t=−1分におけるメトホルミンIRの投与後、メトホルミンの濃度の急激な上昇があり、それは投薬の90分後に1249ng/mLのピークに達し、その後残りのサンプリング期間において安定した低下が続いた。
【0216】
メトホルミンDRの両用量の投薬前濃度は、メトホルミンIRのものよりもおよそ2倍高かった(1000mgDRに関して716ng/mLおよび500ng/mL DRに関して602ng/mL、対して1000mgIRに関して350ng/dL)。t=−1分におけるメトホルミンDRの両用量の投与の後、初めの240分にメトホルミン濃度の減少があり、標準化された昼食後にメトホルミン濃度のわずかな上昇が続き、それは残りのサンプリング期間において横這いとなった。全11時間のメトホルミンプロファイルは、t=0で測定された投薬前濃度を下回ったままであった。夕食とともに投薬されるメトホルミンDRの吸収プロファイルは、朝食とともに投与される用量に比べて緩徐であり、睡眠時間中の緩徐な腸管通過と一致していた。それらの低下は用量比例性未満であったが、500−mg用量のメトホルミンDR濃度は、すべての時点において1000−mg用量よりも低かった。この観察は、メトホルミンIRに関して報告される用量比例性の欠如と一致し、腸内における飽和吸収プロセスによるものであり得る。
【0217】
メトホルミンDR+メトホルミンIR治療群は、4つの治療群の最も高い投薬前濃度を有した(761ng/mL)。t=−1分における試験薬の投与後、メトホルミン濃度はメトホルミンIRと同様の様子で急激に上昇したが、概して初めの500分間、メトホルミンIR濃度曲線を下回ったままであった。残りのサンプリング期間において濃度は横這いとなったが、他の治療で観察されたものよりも高かった。
【0218】
薬物動態パラメーター
表7および
図9は、5日目における治療によるメトホルミン対メトホルミンIRの相対的生物学的利用能を示す。メトホルミンIR製剤と比較して、t=0から試験薬投与後の最終濃度までのメトホルミン曝露(AUC
0−t)は、1000mg メトホルミンDRで45.2%(54.8の%平均比率;p<0.0001)、および500mg メトホルミンDRで56.6%(43.4の%平均比率;p<0.0001)統計的に有意に低下された。メトホルミンIRと比較して、C
maxはまた、1000mg メトホルミンDRで34.9%(65.1の%平均比率;p<0.0001)、および500mg メトホルミンDRで47.7%(52.3の%平均比率;p<0.0001)統計的に有意に低下された。
【0219】
メトホルミンDR+IR治療は、50%の1日の用量の増加にもかかわらず、1000mgメトホルミンIR(90.9の%平均比率;p=0.2271)のものと同様の曝露を生じた。
【0220】
(表7)5日目の治療によるメトホルミン対メトホルミンIRの相対的生物学的利用能−評価可能集団
略号:NA=該当なし;t=用量投与後の最後の数量化濃度
注釈:対象内のCV%は、AUC
0-tに対して24.2、C
maxに対して26.3であった。
[1] (1000mg Met IR、1000mg Met DR、または500mg Met DR)/1000mg Met IR。
【0221】
薬力学評価
総PYY
図10および表8は、ベースラインおよび治療から5日目の平均血漿PYY総濃度プロファイル、ならびにそれぞれ、時点および対応する薬力学パラメーターの分析を示す。ベースライン血漿PYY総濃度は、ほとんどの時点において治療間で同様であった。加えて、すべてのメトホルミン治療は、AUC
0−tおよび1.26〜1.55の範囲のCmaxに対するパーセント比率(5日目/1日目)とともに、PYY総曝露およびピーク濃度(すべてに対してp<0.01)を統計的に有意に増加した。空腹時血漿PYY総濃度はまた、各治療に対して5日目のベースラインから統計的に有意に上昇された(表9、すべてに対してp<0.01)。これらの結果は、試験された治療のすべてが、2つの標準化された食事に対して同様のPYY総反応を誘発したことを示す。
【0222】
(表8)血漿総PYY(pg/mL)の薬力学分析−比率に基づく治療内比較−評価可能集団
略号:BL=ベースライン(1日目);EOT=治療の終わり(5日目);geo.=幾何学;t=用量投与後の最後の数量化濃度
[1] 各治療のEOT(5日目)/BL(1日目)
【0223】
(表9)ベースラインおよび5日目における空腹時血漿総PYY(pg/mL)−評価可能集団
略号:BL=ベースライン(1日目);EOT=治療の終わり(5日目)。
【0224】
GLP−1活性
図11および表10は、ベースラインおよび治療から5日目の平均血漿GLP−1活性濃度プロファイル、ならびにそれぞれ、時点および対応する薬力学パラメーターの分析を示す。ベースライン血漿GLP−1活性濃度は、ほとんどの時点において治療間で同様であった。加えて、すべてのメトホルミン治療は、AUC0−tおよび1.42〜1.88の範囲のCmaxに対するパーセント比率(5日目/1日目)とともに、GLP−1活性曝露およびピーク濃度(すべてに対してp<0.01)を統計的に有意に増加した。空腹時血漿GLP−1総濃度はまた、各治療に対して5日目のベースラインから統計的に有意に上昇された(表11、すべてに対してp<0.05)。これらの結果は、試験された治療のすべてが、2つの標準化された食事に対して同様のGLP−1活性反応を誘発したことを示す。
【0225】
(表10) 血漿GLP−1活性(pmol/L)の薬力学分析−比率に基づく治療内比較−評価可能集団
略号:BL=ベースライン(1日目);EOT=治療の終わり(5日目);geo.=幾何学;t=用量投与後の最後の数量化濃度
[1] 各治療のEOT(5日目)/BL(1日目)。
【0226】
(表11) ベースラインおよび5日目の空腹時血漿GLP−1活性(pmol/L)−評価可能集団
略号:BL=ベースライン(1日目);EOT=治療の終わり(5日目)。
【0227】
グルコース
図12および表12は、ベースラインおよび治療から5日目の平均血漿グルコース濃度プロファイル、ならびにそれぞれ、時点および食事による対応する薬力学パラメーターの分析を示す。
【0228】
ベースライン血漿グルコース濃度は、ほとんどの時点において治療間で同様であった。さらに、すべてのメトホルミン治療は、両方の食事間隔のグルコース曝露およびピーク濃度を同程度に統計的に有意に減少した(すべてに対してp<0.001)。
【0229】
(表12) 食事間隔による血漿グルコース(mg/dL)の薬力学分析−比率に基づく治療内比較−評価可能集団
略号:BL=ベースライン(1日目);EOT=治療の終わり(5日目);t=用量投与後の最後の数量化濃度。
[1] 各治療のEOT(5日目)/BL(1日目)。
【0230】
表13は、t=0から試験薬投与後の最終濃度の時点までのグルコースに対する薬力学パラメーターを示す。朝食および昼食間隔の薬力学パラメーターと一致するすべてのメトホルミン治療は、AUC
0−tおよび0.84〜0.92の範囲のCmaxに対するパーセント比率(5日目/1日目)とともに、グルコース曝露およびピーク濃度を統計的に有意に減少した(すべてに対してp<0.001)。
【0231】
(表13)血漿グルコース(mg/dL)およびインスリン(pmol/L)の薬力学分析−比率に基づく治療内比較−評価可能集団
略号:BL=ベースライン(1日目);EOT=治療の終わり(5日目);t=用量投与後の最後の数量化濃度。
[1] 各治療のEOT(5日目)/BL(1日目)。
【0232】
表14は、ベースラインより治療から5日目までのLS平均値(SE)を示し、
図13は空腹時血漿グルコース濃度における個々の変化を示す。ベースラインの空腹時グルコース濃度は、治療群の間で類似しており、196mg/dL〜200mg/dLの範囲であった。すべての治療群は、5日間の治療後、空腹時血漿グルコースにおいて統計的に有意な低下(すべてに対してp<0.01)を達成した。
図13に示されるように、個々の反応のLSMおよび分布は、治療群の間で類似していた。
【0233】
(表14)ベースラインおよび5日目の空腹時血漿グルコース(mg/dL)−評価可能集団
略号:BL=ベースライン(1日目);EOT=治療の終わり(5日目)。
【0234】
インスリン
表15および16は、それぞれベースラインおよび5日目のインスリンの薬力学パラメーター、ならびにベースラインおよび5日目の空腹時血漿インスリン濃度を示す。治療のいずれに対してもインスリン曝露、ピーク濃度、または空腹時濃度に統計的に有意な変化はなかった(すべてに対してp>0.05)。低循環グルコース濃度にもかかわらずインスリン濃度の維持は、インクレチン効果を示す。
【0235】
(表15)インスリン(pmol/L)の薬力学分析−比率に基づく治療内比較−評価可能集団
略号:BL=ベースライン(1日目);EOT=治療の終わり(5日目);t=用量投与後の最後の数量化濃度。
[1] 各治療のEOT(5日目)/BL(1日目)。
【0236】
(表16)ベースラインおよび5日目の空腹時インスリン(pmol/L)−評価可能集団
略号:BL=ベースライン(1日目);EOT=治療の終わり(5日目)。
【0237】
安全性評価
表17は、SOC、基本語(preferred term)、および開始時点での最新治療による、治療により発現した有害事象を要約する。
【0238】
メトホルミン処方情報に一致する有害事象は、悪心、嘔吐、およびレッチングを伴う、本質的に主に胃腸であり、メトホルミンDRを伴うか、または伴わないメトホルミンIRを受けた治療群にのみ生じた。下痢は、すべての治療群にわたって報告され、メトホルミンIR+メトホルミンDRで最大の発生頻度(対象7人、33.3%)となり、最低用量のメトホルミンDRで最小の発生頻度(対象2人、10.0%)となる、用量依存性であると思われた。注目すべきは、500mg メトホルミンDR群におけるすべての胃腸事象が、試験薬物を断っている治療後休薬期間中に生じたことである。
メトホルミンIRによる眩暈および頭痛等の神経系障害もまた、DR投薬のいずれかよりも頻繁であった。全体的にみて、メトホルミンDRによる、メトホルミンIRよりも少ない胃腸および神経系障害有害事象が報告され、近位小腸を迂回することによって達成されたメトホルミンに対する低下された全身性曝露が、忍容性を改善したことを示す。
【0239】
(表17)SOCおよび基本語および開始時の治療により発現した有害事象の要約−ITT集団
【0240】
実施例2.3:考察
本試験において、1000mgの即時放出メトホルミン(メトホルミンIR)、500mgのメトホルミンDR、および1000mgのメトホルミンDR、または500mgのメトホルミンIRおよび1000mgのメトホルミンDRの組み合わせによるBID投薬(朝食前および夕食前)の5日目の定常状態である11時間にわたって、血漿中のメトホルミン濃度を測定した(
図1)。すべての対象は2型糖尿病を有し、治療間に1週間の休薬を伴う無作為化クロスオーバー設計における各治療を受けた。
【0241】
観察されたプロファイルは、メトホルミンDRを使用したとき、メトホルミンIRに比べて低循環量のメトホルミンを示した。5日目の午前中にメトホルミンIRを伴う5日目のメトホルミンの投薬前濃度は、350ng/mLであり、それは文献に公開される定常状態のトラフ濃度と一致した。5日目の午前中のメトホルミンIRの投与後、メトホルミンの濃度の急激な上昇があり、それは投薬の90分後にピークに達し、その後残りのサンプリング期間において安定した低下が続いた。
【0242】
メトホルミンDRの投薬によって、5日目の午前中の投薬前にメトホルミンの最高濃度が観察され、それはメトホルミンIRのものよりもその時点でおよそ2倍高かった。メトホルミンDRのいずれかの用量の投与の後、初めの240分にメトホルミン濃度の減少があり、360分にメトホルミン濃度のわずかな上昇が続き、それは残りのサンプリング期間に横這いとなった。全11時間のメトホルミンDR PKプロファイルは、t=0で測定された投薬前濃度を下回ったままであった。これらの結果は、夕食とともに投薬されるメトホルミンDRの吸収プロファイルが、朝食とともに投与される用量に比べて緩徐であり、睡眠時間中の緩徐な腸管通過と一致していたことを示す。このため、5日目の最初の240分間にわたる濃度のプロファイルは、主に4日目の午後の投薬の吸収の結果であり、240分から660分の濃度は、主に5日目の午前の投薬の吸収の結果であった。
【0243】
実施例3:午前と午後の用量間における薬物動態の差の分析
午前と午後の用量の間における薬物動態の差をより良く特徴づけるため、健常対象において夕食および朝食時に与えられる500および1000mgの用量のメトホルミンDRの36時間PKプロファイルを得るように実施例3の試験を設計した。対象はまた、別々の治療期間の間に、夕食および朝食とともに1000mgのメトホルミンIRを受け、夕食とともに2000mgのメトホルミン長時間放出(メトホルミンXR)を受けた。すべての対象は、治療間に1週間の休薬を伴う無作為化クロスオーバー設計における各治療を受けた。
【0244】
メトホルミンDR製剤は、錠剤が遠位小腸のpH6.5領域に達するまでGI管での薬物の放出を遅らせるために、そこに追加コーティング(密封コーティングおよび腸溶コーティング)が適用される、500mgのメトホルミン塩酸塩を含有する、米国から供給される市販のフィルムコーティングされた即時放出錠剤であった。その錠剤は、それぞれが500mgのメトホルミン塩酸塩を含有する、白色で両凸の、円形状のコーティングされた錠剤である。その市販の錠剤の不活性成分には、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム、ヒプロメロース、およびポリエチレングリコールを含んだ。追加コーティング系中の不活性成分には、ヒプロメロース、トリアセチン、タルク、メタクリル酸コポリマー(Eudragit(登録商標)L30 D−55)、ポリ(アクリル酸メチル−コ−メタクリル酸メチル−コ−メタクリル酸)7:3:1(Eudragit(登録商標)FS 30 D)、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、モノステアリン酸グリセリン、およびクエン酸トリエチルを含んだ。メトホルミンIRおよびメトホルミンXR製剤は、いかなる改変を伴わない、市販されている製剤である(それぞれ、Aurobindo Pharma LimitedおよびBristol−Myers Squibb)。
【0245】
図14に示されるように、メトホルミンDRの両用量は、メトホルミンIRまたはメトホルミンXRのいずれかにおいて観察されたよりも実質的に低下した全身性メトホルミンをもたらした。注目すべきは、1000mg メトホルミンIR BIDおよび2000mg メトホルミンXR QD(1日の総投与量2000mg)のAUCによって測定された全血漿メトホルミン曝露が酷似しており、2つの製剤間において以前に確立された生物学的同等性と一致することである。最初の12時間にわたるメトホルミンDRプロファイルは、投薬後およそ6〜7時間に生じる最初の数量化血漿濃度によって、メトホルミンDRの全身性吸収の遅延があったことを示した。午後の投薬からおよそ11時間後に最高濃度を達成した。午前のメトホルミンDRの第2の投薬後、メトホルミンの血漿濃度は最初の投薬からおよそ15時間後まで減少し、第2の投薬後およそ3時間にわたってわずかな上昇が続いた。
【0246】
上で述べたように、データは、メトホルミンIRおよびメトホルミンDRの両用量が、恐らく睡眠時間中の緩徐な腸管通過の結果によって、午前の投薬よりも午後の投薬後に若干優れた生物学的利用能を有することを示す。
【0247】
表18は、各治療の経口投与後のメトホルミンの平均(CV%)血漿薬物動態パラメーターを示し、
図15は、C
maxの平均(SEM)値(左パネル)およびAUC
0〜36時間(右パネル)を比較する。メトホルミンDRの両用量は、曝露における実質的な低下、ならびに6〜7時間の吸収の遅延をもたらした。
【0248】
(表18)治療A、B、C、およびDの経口投与後のメトホルミンの平均(CV%)血漿薬物動態パラメーター−評価可能集団
a中央値(最小、最大)
bn=18
cn=17
【0249】
メトホルミンDR治療(500mg BID[治療B]および1000mg BID[治療C])からの、メトホルミンIR(1000mg BID[治療A])に対する変換後(ln−transformed)C
max、AUC
0−t、およびAUC
0−∞の幾何学的LSMの割合および90%信頼区間が表19に示され、相対的生物学的利用能が
図16の左パネルにプロットされる。これらの結果は、500mg BIDメトホルミンDRからの曝露の速度および規模(C
max、AUC
0−t、およびAUC
0−∞)が、1000mg BIDメトホルミンIRからのものよりも、それぞれ、およそ55%、68%、および67%低かったことを示す。1000mg BIDメトホルミンDR(治療C、1日の総投与量2000mg メトホルミン)において、曝露の速度および規模(C
max、AUC
0−t、およびAUC
0−∞)は、1000mg BIDメトホルミンIR(治療A、1日の総投与量2000mg メトホルミン)からのものよりも、それぞれ、およそ33%、52%、および47%低かった。500mg BIDおよび1000mg BIDのメトホルミンDRを2000mg QDのメトホルミンXRと比較した際、曝露の速度および規模における同様の低下が観察された(表20;
図16、右パネル)。
【0250】
(表19)500mg BIDおよび1000mg BIDメトホルミンDR治療を1000mg BIDメトホルミンIRと比較した経口投与後のメトホルミンの相対的生物学的利用能−評価可能集団
SS:統計的に有意である(p値<0.0001)
治療A:1000mg メトホルミンIR BID(2x500mg メトホルミンHCl錠剤[即時放出])
治療B:500mg メトホルミンDR BID(1x500mg メトホルミンHCl錠剤[遅延放出pH6.5腸溶コーティング])
治療C:1000mg メトホルミンDR BID(2x500mg メトホルミン HCl錠剤[遅延放出pH6.5腸溶コーティング])
【0251】
(表20)500mg BIDおよび1000mg BIDメトホルミンDR治療を2000mg QDメトホルミンXRと比較した経口投与後のメトホルミンの相対的生物学的利用能−評価可能集団
SS:統計的に有意である(p値<0.0001)
治療B:500mg メトホルミンDR BID(1x500mg メトホルミンHCl錠剤[遅延放出pH6.5腸溶コーティング])
治療C:1000mg メトホルミンDR BID(2x500mg メトホルミン HCl錠剤[遅延放出pH6.5腸溶コーティング])
治療D:2000mg メトホルミンXR QD(4x500mg メトホルミンHCl錠剤[長時間放出])
【0252】
統合すると、実施例2および3の薬物動態結果は、メトホルミンDRを投与することによるメトホルミンの腸の下部への送達が、同じ1日の用量のメトホルミンIRおよびメトホルミンXRに比べて24時間生物学的利用能をおよそ50%低下させることを示す。メトホルミンDR用量が1日の総投与量2000mgから1000mgに減少されたとき、効果の低減を伴わない曝露におけるより大きな低下が観察された。さらに、メトホルミンDR投薬の時間(朝食または夕食とともに)は、腸管におけるメトホルミン放出のタイミングに有意義に影響し(それぞれ、投薬後3対6〜7時間)、午前の投薬前に観察されたメトホルミンDRのトラフ値が、午前の投薬から12時間に観察されたトラフ値よりも高かったという、実施例2における試験の所見の説明を提供する。
【0253】
実施例2の試験において、メトホルミンへの全身性曝露はメトホルミンDRによって実質的に低下されたが(2000mg/日のメトホルミンIRに対して、2000mg/日で45%および1000mg/日で約60%)、メトホルミンIR(2000mg/日)の全グルコース低下効果が維持された。1日あたり2000mgおよび1000mgのメトホルミンDRの両方において全グルコース低下効果が観察されたとすると、現存する製品(メトホルミンIRおよびメトホルミンXRとして現在利用可能であるものよりもより洗練された剤形が可能である、より低い用量が実現できる(すなわち、より小さい錠剤、十分な効果のある固定された用量の組み合わせ、1日1回の投薬)。さらに、メトホルミンIRと異なり、メトホルミンDRは、いずれの用量において、いかなる悪心および嘔吐にも関連しなかった。
【0254】
本明細書において言及されるすべての特許および特許公報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0255】
前述の説明の解読にあたって、ある特定の変更および改善が当業者に生じるであろう。すべてのそのような変更および改善は、簡潔さおよび読みやすさのために本明細書において削除されているが、適切に以下の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。