(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上部が円筒形状および下部が漏斗形状であり、中心部鉛直方向に第1電動機に接続された第1撹拌軸と、前記第1撹拌軸に対して水平方向に装着された第1撹拌羽とを収納し、前記第1撹拌羽が回転することにより油性廃棄物を混合溶解する混合溶解槽と、
第2電動機に接続された第2撹拌軸と、前記第2撹拌軸に装着された第2撹拌羽と、前記第2撹拌軸の一部および前記第2撹拌羽を収容する目開きのある籠とを有し、前記第2撹拌羽が回転することにより固形物を含む油性廃棄物を解砕溶解する固形物解砕溶解装置とを備え、
前記混合溶解槽内部の上部に、前記固形物解砕溶解装置の前記籠が設置されるとともに、前記混合溶解槽の底部には、鉛直方向下部に接続管を介して、少なくとも振動篩または篩が内蔵された回収部が設置されている油性廃棄物の処理装置であって、
前記混合溶解槽の前記第1撹拌羽の前記第1撹拌軸中心から前記第1撹拌羽の外周部までの平均距離を半径とした円の面積と、前記混合溶解槽の前記上部の円筒形状に存在する被処理液の高さとを掛け合わせた被処理液量をVH(m3)とし、前記第1撹拌羽の前記平均距離における円周方向の速度をvs(m/s)とすると、
前記VH(m3)を前記vs(m/s)で割った値が2(m2s)以上で5(m2s)以下の値である油性廃棄物の処理装置。
前記混合溶解槽の前記第1撹拌羽の回転時に、前記固形物解砕溶解装置の前記籠が前記混合溶解槽内部の被処理液に対して少なくとも80%以上浸った状態である請求項1に記載の油性廃棄物の処理装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鉄所の構内では、含油スラッジ、脱水スカム、クーラントスラッジ、各種廃油を含む油性廃棄物および廃汚泥が大量に発生する。例えば、冷間圧延工程では、被圧延板(鋼板)をワークロールで上下に挟んで押し伸ばし薄板にする。鋼板とワークロールの接触により摩擦が発生するので摩擦を下げるための潤滑油として圧延油(植物油、パーム油、動物油、鉱物油等)が鋼板の上下から噴射される。使用済み圧延油の一部は鋼板に付着し鋼板に随伴され次工程で洗浄除去される。使用済み圧延油の大部分は各ワークロールの下部に備えられた各ピット(スタンドピット)に集められ、各スタンドピットから沈降堆積分を除いた使用済み圧延油は集積タンク(スキミングタンク)に集められ、再使用油として回収される。スタンドピット内の沈降堆積物と、スキミングタンクでの沈降堆積分は油分を多く含むので助燃油として再利用される。各スタンドピットには、操業時に発生する鋼板の破断による鉄片、スタンドピット内補修工事で発生する溶断屑、溶接スパッタ、ボルト、ナット、ゴム類、パッキン等の多種多様の固形異物が集積する。
【0003】
従来、製鉄工場の冷間圧延工程から発生する含油排水を、浮上分離池に導いて浮上性の含油スカムと沈降性の含油スラッジとに分離し、含油スカムは複数段の振動篩により水分を分離して脱水スカムとしたうえ、含油スラッジとともに混合溶解槽に投入し、熱量調整油と混合して熱量調整を行い、混合溶解液とする。そして、混合溶解液を多数の振動するロッドを備えた振動ミルに通して粒子の微細化と粘性調整を行い、燃料油を得る処理装置および処理方法があった(下記の特許文献1参照)。
【0004】
また、含油排水にカチオン系高分子凝集剤を添加して油分を凝集させ含油スカムとし、この含油スカムを撹拌タンク内で撹拌して泥状化し、油分を回収する方法が開示されている(下記の特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術では、多くの薬剤およびエネルギーを要することなく含油廃棄物の再資源化を図る点で効果があるが、省スペース、低コスト処理、および装置のメインテナンスの点で課題があった。
【0007】
また、上記特許文献2の技術では、薬剤コストが多大となるうえに、回収された油分の発熱量が低く不安定であるため、回収油を燃料として再使用することは困難であるという課題があった。
【0008】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、油性廃棄物から、多くの薬剤および熱エネルギーを要することなく、省スペース、低コスト、メインテナンス容易で、かつ効率的に再生燃料を生成することができる油性廃棄物の処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示される油性廃棄物の処理装置は、
上部が円筒形状および下部が漏斗形状であり、中心部鉛直方向に第1電動機に接続された第1撹拌軸と、前記第1撹拌軸に対して水平方向に装着された第1撹拌羽とを収納し、前記第1撹拌羽が回転することにより油性廃棄物を混合溶解する混合溶解槽と、
第2電動機に接続された第2撹拌軸と、前記第2撹拌軸に装着された第2撹拌羽と、前記第2撹拌軸の一部および前記第2撹拌羽を収容する目開きのある籠とを有し、前記第2撹拌羽が回転することにより固形物を含む油性廃棄物を解砕溶解する固形物解砕溶解装置とを備え、
前記混合溶解槽内部の上部に、前記固形物解砕溶解装置の前記籠が設置されるとともに、前記混合溶解槽の底部には、鉛直方向下部に接続管を介して、少なくとも振動篩または篩が内蔵された回収部が設置されている油性廃棄物の処理装置であって、
前記混合溶解槽の前記第1撹拌羽の前記第1撹拌軸中心から前記第1撹拌羽の外周部までの平均距離を半径とした円の面積と、前記混合溶解槽の前記上部の円筒形状に存在する被処理液の高さとを掛け合わせた被処理液量をVH(m
3)とし、前記第1撹拌羽の前記平均距離における円周方向の速度をvs(m/s)とすると、
前記VH(m
3)を前記vs(m/s)で割った値が2(m
2s)以上で5(m
2s)以下の値である。
【発明の効果】
【0010】
本願に開示される油性廃棄物の処理装置によれば、油性廃棄物から、多くの薬剤および熱エネルギーを要することなく、省スペース、低コスト、メインテナンス容易で、かつ効率的に再生燃料を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)比較参考例の説明
まず、本願の実施の形態の内容をより明確に理解するために、
図2の比較参考例について説明する。
図2は、本願の比較参考例に係る油性廃棄物の処理装置の主要部の構成および処理フローを示したものである。
図2において、製鉄所内の冷間圧延処理工程等で発生した廃棄物1について、廃棄物1の一部は処理困難なため外部委託処理ステップ2に移され外部委託処理される。残りの廃棄物1は、前処理ステップ3において、浮上分離池で浮上性の含油スカム等の油性廃棄物31と沈降性の含油スラッジ32に分けられる。
【0013】
油性廃棄物31はべース油、熱量調整油を加え、脱水スカム等も含む油性廃棄物4として、混錬設備200の中の混合溶解槽270に送られる。含油スラッジ32は、汚泥スラッジ、タールスラッジなどを加えた含油スラッジ5として振動スクリーン210を経て、混錬設備200の混合溶解槽270へ送られる。
【0014】
油性廃棄物4および含油スラッジ5は、混合溶解槽270内で混合および溶解されて混合溶解油を排出する。当該混合溶解油はポンプ215により、振動篩290および篩291に送られ小さな固形異物(回収固形物292)を取り除いた後、回収油10として回収され、約60℃に設定された加温タンク11に送られる。その後、多数の振動するロッドを備えた振動ミル12に通して粒子の微細化と粘性調整を行い、燃料油として再資源化してロータリーキルンの助燃料等の再生燃料13に使用する。
【0015】
図2の比較参考例の場合は、多くの薬剤およびエネルギーを要することなく含油廃棄物の再資源化を図る点で効果があるが、被処理物中に介在する鉄屑等の異物または固結した油スラッジなどの粗い含油固形物の存在のために、被処理物を搬送するためのポンプ215の故障頻度が高くなり、メインテナンスに時間を要し、ポンプ215の更新頻度も高くなり、コストおよびメインテナンスの点で問題があった。また、振動スクリーン210、混合溶解槽270、振動篩290が同じ水平面に設置しているので、設置スペースを多くとられていた。更に、被処理物である固液混合物をそれぞれの工程に移動するのに多大な動力を必要としていた。
【0016】
これに対して、下記に説明する本願の実施の形態では、鉄屑、油スラッジなどの固形物を含む油性廃棄物を、固形物解砕溶解装置を内蔵する混合溶解槽に投入し、熱量調整油と混合して熱量調整と不燃性の固形物除去を行い、ポンプ搬送の替わりに、重力作用で混合溶解槽から振動篩を備えた回収部に移送し、その後、振動ミルにて残留固形物の微細化と粘性調整を行い、燃料油として再資源化を行うので、固形物が混ざっている油性廃棄物から多くの薬剤および熱エネルギーを要することなく、ポンプ搬送時に生じていた固形物が絡む搬送のポンプ故障のおそれがなくなり、メインテナンスが容易で、低コストの処理で油性廃棄物を再資源化することが可能となる。
【0017】
(2)実施の形態の説明
次に、本願の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施の形態に係る油性廃棄物の処理装置の主要部の構成および処理フローを示す図、
図3は本実施の形態の混合溶解槽の主要部および固形物解砕溶解装置を示す構成図、
図4は固形物解砕溶解装置の金網籠を上部から視た外観図である。
【0018】
図1において、製鉄所内の冷間圧延処理工程等で発生した廃棄物1について、廃棄物1の一部は処理困難なため外部委託処理ステップ2に移され外部委託処理される。残りの廃棄物1は、前処理ステップ3において、浮上分離池で浮上性の含油スカム等の油性廃棄物31と沈降性の含油スラッジ32に分けられる。
【0019】
油性廃棄物31は、べース油、熱量調整油等が加えられ、脱水スカム等も含む油性廃棄物4として、混錬設備100の中の混合溶解槽170に送られる。ここで、ベース油とは再生燃料を生成する主原料となる廃油を示し、熱量調整油とは、再生燃料の出荷基準(発熱量)に適合させるため添加する高発熱量の廃油等を示す。
含油スラッジ32は、汚泥スラッジ、タールスラッジ等を加えた含油スラッジ5として混錬設備100の混合溶解槽170へ送られて、混合溶解槽170に備えられた固形物解砕溶解装置180に投入される。
【0020】
次に、本実施の形態の混合溶解槽および固形物解砕溶解装置の詳細について、
図1、
図3および
図4に基づいて説明する。
固形物解砕溶解装置180は、目開きの有る籠、具体的には目開き10mm〜15mmの金網籠181、第2電動機182、第2電動機182に接続される第2撹拌軸183、第2撹拌軸183に対して直角方向に装着された第2撹拌羽184を備える。なお、第2撹拌軸183には、3対の第2撹拌羽184a、184b、184cが装着されている。なお、第2撹拌羽184の個数は3対に限定するものではない。
【0021】
図4に示すように、本実施の形態の固形物解砕溶解装置180は、一対の第2電動機182に接続された一対の第2撹拌軸183(
図4の183A、183B)を備え、各第2撹拌軸183A、183Bには、同じ形状の第2撹拌羽184(
図4の184a、184b、184c)が備えられている。また、一方の第2撹拌軸183Aの回転方向と他方の第2撹拌軸183Bの回転方向が逆向きになるように設定している。第2電動機182を駆動して第2撹拌羽184を回転させることにより、金網籠181内の油性廃棄物4および含油スラッジ5は、異なった種類の油間で混合溶解が加速され、また油性廃棄物4および含油スラッジ5内の鉄屑などの不溶性固形物のうち、金網口径以下のサイズ(有効径)15mmまでは溶解が行われ、金網口径以下の固形物は混合溶解槽170内に押し出され、混合溶解槽170内にて溶解撹拌を継続する。
【0022】
固形物解砕溶解装置180から押し出された有効径15mm以下の固形物は、混合溶解槽170の下部に沈降する。重量物は下部に沈降するので、混合溶解槽170の下部において撹拌される。有効径が15mm以上の固形物は、固形物解砕溶解装置180の金網籠181内にトラップされる。トラップされた固形物は適宜、金網籠181から回収される。油を含浸している固形スラッジは固形物解砕溶解装置180内の撹拌の過程で解砕されると同時に、油分は液相内に浸み出して燃料成分になる。
【0023】
図3に示すように、混合溶解槽170は、上部170Aが円筒形状に、下部170Bが漏斗形状になっており、中心部鉛直方向に第1電動機171および第1電動機171に接続された第1撹拌軸172が設けられ、第1撹拌軸172には3枚の第1撹拌羽173(173a、173b、173c)が水平方向に装着されている。混合溶解槽170の第1撹拌羽173による撹拌作用に、固形物解砕溶解装置180の第2撹拌羽184の撹拌作用が加わり、被処理液の未溶解固形分は混合溶解槽170の内周部の壁面下方部に押し出される。また、混合溶解槽170には、混合溶解槽170内を約75℃〜80℃に保つヒーター174が設けられている。
【0024】
本実施の形態では、混合溶解槽170の第1撹拌軸172と固形物解砕溶解装置180の第2撹拌軸183との成す角度が鋭角(実運転では第1撹拌軸172と第2撹拌軸183の成す内角が25度)となっている。そのため、金網籠181をすり抜ける有効径15mm以下の固形物と油性廃棄物4は、より効果的に、混合溶解槽170の内周部の壁面下方部に押し出される。混合溶解槽170の第1撹拌羽173の側部および下部と、混合溶解槽170の内周部の側部及び底部との間の隙間(クリアランス)は75mmであり、金網籠181の金網口径以上であり金網口径の5倍以下である。
【0025】
図5は本実施の形態における固形物溶解解砕効果を示す図であり、実運転において、固形物解砕溶解装置180の第2撹拌軸183の回転数を50rpm、混合溶解槽170の第1撹拌軸172の回転数を41rpmとした場合の、油分溶解効果を示すものである。
図5において、混合溶解槽170および固形物解砕溶解装置180による被処理液の処理前は、ベース油40kg(80重量%)および含油スラッジ10kg(20重量%)だったものが、処理後はベース油42kg(97.6重量%)およびスラッジ小1kg(2.3重量%)となっており、良好な油分溶解効果を得ることができた。
【0026】
ここで、
図5に基づいて溶解効率について説明しておく。溶解効率(%)とは、固形物(
図5のA+B+C)からスラッジ大(
図5のC)を差し引いた固形物(
図5のA+B)からベース油相当(
図5のA)に溶解した比率を示したものであり、
図5の場合、[A/(A+B)]×100(%)⇒[2kg/(2kg+1kg)]×100(%)=66.7(%)となる。
【0027】
図6および
図7は、本実施の形態の混合溶解槽170における被処理液量VHを第1撹拌羽173の周速度vsで割った値(VH/vs)を指標とした場合の、溶解効率、動力、および回転数の関係を示す図である。
図6および
図7において、混合溶解槽170における被処理液量VHとは、混合溶解槽170の各第1撹拌羽173a〜cの第1撹拌軸172の中心から各第1撹拌羽173a〜cの外周部までの平均距離を半径とした円の面積と、混合溶解槽170の上部170Aの円筒形状に存在する被処理液の高さ(後述する
図8の高さH)を掛け合わせたものである。なお、被処理液量の単位は(m
3)である。
また、撹拌羽の周速度vsとは、各第1撹拌羽173a〜cの各第1撹拌羽173a〜cの第1撹拌軸172の中心から各第1撹拌羽173a〜cの外周部までの平均距離における円周方向の速度(m/s)である。
さらに、溶解効率(%)は前記説明した通りであり、動力とは第1撹拌羽173を駆動する第1電動機171の電力(kw)を意味する。
また、回転数(rpm)は、固形物解砕溶解装置180の第2撹拌羽184の回転数(rpm)を表す。
図6および
図7に示すように、被処理液量VH(m
3)を撹拌羽の周速度vs(m/s)で割った値(VH/vs)(単位はm
2s)が2(m
2s)以上で5(m
2s)以下の値の場合、溶解効率が高く維持され、動力(電力)が比較的抑制される。(VH/vs)が2(m
2s)未満の場合、溶解効率が90%以上になるが第1撹拌羽173の消費電力が高くなりコストが増大する。一方、(VH/vs)が5(m
2s)より大きくなると、第1撹拌羽173の消費電力がそれほど低減しないにも関わらず、溶解効率が約50%で維持されるからである。
また、固形物解砕溶解装置180の第2撹拌羽184の回転数(rpm)は、20(rpm)以上、50(rpm)以下で運転するのが好ましい。回転数(rpm)が20(rpm)未満であると固形物の解砕効果が乏しく、50(rpm)より大きくなると駆動動力が大きくなる割に解砕効果が大きくならないと考えられるからである。
【0028】
図8は本実施の形態の混合溶解槽において撹拌羽の回転時の被処理液の液面の変化を表した概略図であり、
図9は撹拌羽の回転数と被処理液の液面の変化の関係を示す図である。
図8および
図9において、混合溶解槽170の第1撹拌羽173を回転しない状態での、混合溶解槽170の上部170Aの円筒形状に存在する被処理液の高さをHとする。そして、混合溶解槽170の第1撹拌羽173を回転させた場合、回転数を増していくと混合溶解槽170の中心部の液面がΔH1下降していき、混合溶解槽170の内壁部の液面がΔH2上昇していく。固形物解砕溶解装置180が効率よく機能するためには、混合溶解槽170の第1撹拌羽173の回転時に、固形物解砕溶解装置180の金網籠181が少なくとも80%以上浸った状態に保つのが好ましい。
【0029】
以上のように、混合溶解槽170において被処理液である油性廃棄物4と含油スラッジ5の混合溶解が行われる。すなわち、含油スラッジと脱水スカムは、ベース油、油分が多い含油スカム、熱量調整油と加熱撹拌され、再生燃料として所定の発熱量と所定の粘性とを持つように調整される。
【0030】
混合溶解槽170の中で加熱撹拌作用により溶解された混合溶解液は、混合溶解槽170の底部の接続管175および切替弁176を介して回収部178の振動篩190に重力で送られる。振動篩190での処理後、未溶解固形物と液体油性廃棄物は更に重力により篩191へ送られる。篩191の目開きは2.8mm程度である。混合溶解槽170の接続管175から送出されたスラリー状の混合溶解液を振動篩190および篩191に通して異物を除去したものは、回収口177から回収油110として取り出される。なお、異物は回収固形物192として取り出される。
【0031】
回収油110は、加温タンク111で30℃〜60℃に加温され、振動ミル112に送られる。微粉砕が進行するとともに混合溶解液の粘度も低下して行くので、30℃〜60℃における粘度が20mm
2/s〜500mm
2/sの範囲に収まるように振動ミル112の運転を行うことが好ましい。なお粘度を20mm
2/s〜500mm
2/sの範囲とするのは、これよりも粘度を低下させることは容易ではなくコスト高となり、逆に粘度が500mm
2/sを超えると再生燃料として利用し難くなるためである。より好ましくは粘度は20mm
2/s〜100mm
2/sの範囲にすることが好ましい。振動ミル112を通過させることにより混合溶解液は適度の粘度を持つ燃料油となる。振動ミル112による粘度低減効果の一例を
図10に示す。
【0032】
振動ミル112から得られた燃料油は、そのまま、あるいは必要に応じてさらに熱量調整油を添加して、再生燃料113を生成する。再生燃料113は、重油の代替燃料として外販したり、あるいは廃棄物焼却用ロータリーキルンまたは生石灰焼成用のロータリーキルンの補助燃料油として使用したりすることができる。
【0033】
以上のように、本実施の形態の油性廃棄物の処理装置は、混合溶解槽および振動篩を配置した回収部が鉛直方向に配置されており、各装置間の油性廃棄物の移動の推進力が重力であるため、移動のための動力源が不要となり経済的である。また、鉄屑、含油スラッジなどの固形物を含む油性廃棄物を、固形物解砕溶解装置を内蔵する混合溶解槽に投入し、熱量調整油と混合して熱量調整と不燃性の固形物除去を行い、その後に振動篩と振動ミルにより残留固形物の微細化と粘性調整を行い、燃料油として再資源化を行うので、固形物が混ざっている油性廃棄物から多くの薬剤および熱エネルギーを要することなく、ポンプ搬送時に生じていた固形物が絡むポンプ故障のおそれがなくメインテナンスが容易で、低コストの処理で油性廃棄物の再資源化することが可能となる。
【0034】
図11は、本実施の形態(
図1)と比較参考例(
図2)の電力および作業を示した図である。
図11に示すように、比較参考例(
図2)に比べ本実施の形態(
図1)では、電力合計が約85%削減され、また、比較参考例では、搬送ポンプ内での固形物の目詰まりによる破損の修繕またはメインテナンスに月に少なくとも2回の作業(作業代30万円)を要していたが、本実施の形態では、搬送ポンプを不要としたため、その作業もなくなり、経済的な油性廃棄物の処理装置を実現することができた。
【0035】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0036】
1 廃棄物、2 外部委託処理ステップ、3 前処理ステップ、4 油性廃棄物、
5 含油スラッジ、100 混錬設備、170 混合溶解槽、171 第1電動機、
172 第1撹拌軸、173 第1撹拌羽、174 ヒーター、175 接続管、
176 切替弁、177 回収口、178 回収部、180 固形物解砕溶解装置、
181 金網籠、182 第2電動機、183 第2撹拌軸、184 第2撹拌羽、
190 振動篩、191 篩、192 回収固形物、110 回収油、
111 加温タンク、112 振動ミル、113 再生燃料。
【課題】油性廃棄物から、多くの薬剤および熱エネルギーを要することなく、省スペース、低コスト、メインテナンス容易で、かつ効率的に再生燃料を生成することができる油性廃棄物の処理装置を提供する。
【解決手段】混合溶解槽170の第1撹拌羽173の第1撹拌軸中心から第1撹拌羽173の外周部までの平均距離を半径とした円の面積と、混合溶解槽170の上部170Aの円筒形状に存在する被処理液の高さHとを掛け合わせた被処理液量をVH(m