特許第6581720号(P6581720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581720
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】光学的距離測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 3/06 20060101AFI20190912BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20190912BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20190912BHJP
【FI】
   G01C3/06 110A
   G01B11/00 B
   G01B11/26 G
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-512348(P2018-512348)
(86)(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公表番号】特表2018-527574(P2018-527574A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2015004812
(87)【国際公開番号】WO2017046832
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】ザイツ, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ルス, アレクサンドル
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−504947(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0273211(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第19752145(DE,A1)
【文献】 特開2011−242176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/00−3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面鏡が備え付けられた対象物までの距離を測定するための光学システムであって、
前記平面鏡に向かって光軸に沿ってレーザビームを投影するコヒーレント光源と、
前記光軸上に配置される光学素子であって、入射する前記レーザビームを伝搬方向が互いに所定の角度にある2つのレーザビームに分岐し、且つ、入射する前記レーザビームを前記2つのレーザビームの前記伝搬方向によって生成された平面に対して向きが垂直である光のシートに広げる、光学素子と、
入射光強度分布を検出するように構成された1次元光センサと、を備え、
前記分岐された2つのレーザビームは、前記光学素子から前記平面鏡まで伝搬し、前記平面鏡によって反射された前記2つのレーザビームは、前記1次元光センサまで伝搬し、
前記1次元光センサは、2つの極大を有する、前記反射された2つのレーザビームの前記入射光強度分布を検出し、前記反射された2つのレーザビームの位置は、前記平面鏡の前記距離及び前記平面鏡の瞬間傾斜角を計算するのに使用することができる、光学システム。
【請求項2】
前記光学素子は、透明材料からなる円柱レンズである、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記光学素子は、平坦な入力面と、互いにある角度をなした2つの平面から成る出射面とを有する、請求項1又は2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記平坦な入力面は、反射防止膜を設けた平面入射面と、ミラーコーティングを施した平面反射面とを有し、
前記出射面の第1の平坦な平面に反射膜を設け、前記出射面の第2の平坦な平面に反射防止膜を設け、
前記コヒーレント光源からの前記レーザビームが、前記平面入射面に入射し、前記出射面の前記第1の平坦な平面まで伝搬し、入射する前記レーザビームの一方の部分が、前記第1の平坦な平面から第1の方向に沿って外へ伝搬し、入射する前記レーザビームの他方の部分が、前記平坦な入力面の前記平面反射面に向かって前記第1の平坦な平面によって反射され、入射する前記レーザビームの前記他方の部分が、前記平面反射面において反射され、前記出射面の前記第2の平坦な平面から第2の方向に沿って外へ伝搬している、請求項に記載の光学システム。
【請求項5】
前記1次元光センサが、光ダイオードアレイ又はCCDラインとして製作された画素の1次元配列から成る、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項6】
前記画素の形状が長方形である、請求項に記載の光学システム。
【請求項7】
前記光学素子は、前記2つのレーザビームのスイッチを別々にオン及びオフする、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項8】
平面鏡が備え付けられた対象物までの距離を測定するための光学システムであって、
それぞれがレーザビームを前記平面鏡に向かって光軸に沿って投影する2つのコヒーレント光源と、
前記2つの光軸上に配置される光学素子であって、入射する前記レーザビームを、前記2つのレーザビームの伝搬方向によって生成された平面に対して向きが垂直である光のシートに広げる、光学素子と、
入射光強度分布を検出するように構成された1次元光センサと、を備え、
前記2つのレーザビームは、前記光学素子から前記平面鏡まで伝搬し、前記平面鏡によって反射された前記2つのレーザビームは、前記1次元光センサまで伝搬し、
前記1次元光センサは、2つの極大を有する、前記反射された2つのレーザビームの前記入射光強度分布を検出し、前記反射された2つのレーザビームの位置は、前記平面鏡の前記距離と前記平面鏡の瞬間傾斜角とを計算するのに使用することができる、光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面鏡が備え付けられた対象物までの距離を測定するための光学システム及び光学的方法に関する。平面鏡の傾斜角は、正確に分かっていないが、時間とともに変化することがある。特に、本発明は、例えば、移動するピストンの距離を測定しなければならない管状システムの場合と同様に、平面鏡が平面鏡のサイズよりもずっと長い距離にわたって移動している光学的距離測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物と物理的接触をすることなく対象物までの距離を測定することは、多くの機械システムにおいて頻繁に遭遇する問題である。そのような問題の好ましい解決策は、往々にして光学的方法であり、この光学的方法では、適切な光源からの光が対象物を照射し、対象物から光が測定システムに反射される。そこで、光が光センサによって検出され、光センサの電子信号が所望の距離情報を得るために処理される。特許文献1〜4は、光学的方法の例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2482094号
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0019160号
【特許文献3】米国特許第5424834号
【特許文献4】独国特許出願公開第4211875号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際にしばしば遭遇する状況としては、被測定距離の変動が光路のいずれかの側に利用可能である空間よりもずっと長いことである。結果として、光軸に近接して働く光学的測定方法を使用する必要がある。問題を解決するのに3つの根本的に異なる光学的測定方法が知られている。
(1)例えばS.Mackによって欧州特許出願公開第2482094号「Entfernungsmessender optoelektronischer Sensor und Verfahren zur Objekterfassung」に説明されている光飛行時間法。飛行時間法の実用上の利点は、飛行時間法による最大測定距離が、ほぼ無制限であることであり、月までの距離でさえ、そのような方法を用いて測定されている。しかし、約3×10m/sの光の高速度のため、今日飛行時間法を用いて実現可能な距離精度は1mmの程度であり、これは多くの機械システムには不十分である。
(2)コスト効果が高いレーザダイオードから利用可能な200〜2000nmの範囲のコヒーレント光の小さな波長を利用する干渉計測法。したがって、干渉計測法の測定精度は、100nmをはるかに下回り、これはほとんどの機械システムには十分である。しかし、従来の干渉距離測定法は、単色干渉計測システムにおいて遭遇する周知の位相アンビギュイティ(ambiguity)問題に見舞われるので、絶対距離を求めるこができない。これは、例えばK.Thurnerらによって米国特許出願公開第2015/0019160号、「Absolute distance laser interferometer」に説明されているように、多波長干渉計を用いて克服することができる。そのような距離測定システムの複雑性により、組み立てるのに、また動作時に安定化させるのに高価なものとなる。さらなる実用上の問題は、干渉距離測定法が平面鏡の傾斜に対して感受性が高いことである。平面鏡の向きが光軸に対して理想的な90度からわずか0.1度偏移しても、実質的に干渉縞が変化し、すなわち、明視野が暗視野に変化することがある。
(3)これらの不利な点は、2つの異なる光軸を有する光学システムを利用する三角測量法によって克服することができる。ステレオ三角測量システムでは、対象物上の同一スポットが2つの異なる方向から観測される。能動三角測量システムでは、構造化光が1つの方向に沿って入射し、検討中の対象物上のその像が別の方向から観測される。そのような三角測量システムの例が、J.Akedoらによって米国特許第5424834号、「Optical displacement sensor for measurement of shape and coarseness of a target workpiece surface」に説明されている。この三角測量法は、検討中の対象物に光スポットを生成するために、及び後方反射光の焦点を光センサ上に合わせるために、少なくとも3つの光学レンズシステムを必要とする。システムの複雑性は、例えば独国特許出願公開第4211875号、「Optischer Abstandssensor」に説明されているように、測定光ビームを生成するのに1つ、及び検討中の対象物に光スポットを生成し、撮像するのに1つの、2つの光学レンズシステムだけを利用することによって低減することができる。2つの別々の光センサを利用することによって、対象物までの絶対距離と、測定スポットが生成される対象物表面の局所的傾斜とを同時に測定することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、平面鏡が備え付けられた対象物までの距離を測定するための光学システムは、平面鏡に向かって光軸に沿ってレーザビームを投影するコヒーレント光源と、光軸上に配置される光学素子であって、入射するレーザビームを伝搬方向が互いに所定の角度にある2つのレーザビームに分岐し、且つ、入射するレーザビームを2つのレーザビームの伝搬方向によって生成された平面に対して向きが垂直である光のシートに広げる光学素子と、入射光強度分布を検出するように構成された1次元光センサと、を備えることができる。分岐された2つのレーザビームは、光学素子から平面鏡まで伝搬し、平面鏡によって反射された2つのレーザビームは、1次元光センサまで伝搬する。1次元光センサは、2つの極大を有する、反射された2つのレーザビームの入射光強度分布を検出し、反射された2つのレーザビームの位置は、平面鏡の距離と平面鏡の瞬間傾斜角とを計算するのに使用することができる。
【0006】
本発明の一態様によれば、光学素子は、1次元光検出器の上方に配置することができる。
【0007】
本発明の一態様によれば、光学素子は、透明材料でできた円柱レンズでもよい。
【0008】
本発明の一態様によれば、光学素子は、平坦な入力面と、互いにある角度をなした2つの平坦な平面からなる出射面とを有することができる。平坦な入力面は、反射防止膜を設けた平面入射面と、ミラーコーティングを施した平面反射面とを有することができる。出射面の第1の平坦な平面には反射膜を設けることができ、出射面の第2の平坦な平面には反射防止膜を設けることができる。コヒーレント光源からのレーザビームは、平面入射面に入射し、出射面の第1の平坦な平面まで伝搬し、入射するレーザビームの一方の部分は、第1の平坦な平面から第1の方向に沿って外へ伝搬していてもよい。入射するレーザビームの他方の部分は、平坦な入力面の平面反射面に向かって第1の平坦な平面によって反射することができ、入射するレーザビームの他方の部分は、平面反射面において反射することができ、出射面の第2の平坦な平面から第2の方向に沿って外へ伝搬していてもよい。
【0009】
本発明の一態様によれば、光センサは、光ダイオードのアレイ又はCCDラインとして製作された画素の1次元配列から成ることができる。画素の形状は長方形でもよい。
【発明の効果】
【0010】
周知の光学的距離測定方法の、説明した複雑性及び測定精度限界は、特にシンプルで、ロバスト性があり、コンパクトな光学的三角測量法を実施した、上記の本発明によるシステムによって克服することができる。平面鏡が備え付けられた対象物までの距離は、任意の光学レンズシステムを必要とすることなく、入射光の焦点を平面鏡で合わせたり、反射光の像を光センサ上に生成したりすることも必要とすることなく測定される。更に、2つの主要パラメータが、すなわち、平面鏡の距離と平面鏡の傾斜角とが同時に測定される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、以下の本発明の詳細な説明を検討するとき、よりよく理解され、上記の対象物以外の対象物が明らかとなるであろう。そのような説明は付属の図面を参照する。
図1図1は、本発明の一実施形態に係る光学システムの斜視図である。
図2図2は、図1に例示される光学システムの上面図である。
図3図3は、反射鏡が光軸に関して理想的な90度の向きに対して角度βで設定された状況での別の上面図である。
図4図4は、入射するレーザビームを互いにある角度を為す2つのビームに分割するのに必要な第1の光学機能の一実施形態を示す上面図である。
図5図5は、入射光強度分布P(x)を1次元光センサ上の横方向位置の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態の基本的な目的は、平面鏡が備え付けられた対象物までの距離を測定するための光学システム及び光学的方法を提供することである。
【0013】
本発明の一実施形態の他の目的は、光学撮像レンズシステムなしで実施することができ、したがって、実現されたシステムがシンプルで、ロバスト性があり、コンパクトで且つコスト効果が高い、光学的距離測定システムを提供することである。
【0014】
本発明の一実施形態の別の目的は、平面鏡の傾斜角を許容することができる光学的距離測定システムを提供することである。これは、平面鏡の距離と平面鏡の傾斜角とを同時に測定することによって達成される。
【0015】
本発明の一実施形態の更に別の目的は、光軸のすべての側に対して小さな横方向の範囲を用いて実施することができる光学的距離測定システムを提供することである。このようにして、円筒中を移動する、平面鏡が備え付けられたピストン状の対象物の距離を、管形状で実施されたこの光学的距離測定システムを用いて測定することができる。
【0016】
前述の課題を考慮しつつ、本発明の一実施形態は、図1及び図2に例示する光学システムを用いて実現される。図1及び図2に例示されるように、光学的距離測定システム1は、コヒーレント光源10(レーザ光源)と、コヒーレント光源10の正面の1つ又は2つの光学素子20及び21と、1次元光センサ30と、を含む。光学的距離測定システム1は、1次元光センサ30から、平面鏡40が備え付けられた対象物までの絶対距離Lを計算することができる。システム1の説明を簡単にするために、対象物なしの平面鏡40を図に例示する。図1及び図2において、平面鏡40は、光軸Aに対して90度の角度で配列され、1次元光センサ30は、2つの光シートL2’及びL3’の絶対位置を求めることができる。
【0017】
コヒーレント光源10は、細いレーザビームL1を放射し、レーザビームL1は、光学素子20及び21によって変更される。光学素子21又は22の一方は、入射するレーザビームL1を互いに角度αを為す2つのビームL2及びL3に分岐する。このような光学素子の好ましい実施形態を図4に例示する。光学素子21又は22の他方は、1つ又は複数の入射するレーザビームを伝搬方向に対して垂直となる方向に広げる。このような光学素子の好ましい実施形態は、ガラス又はプラスチックなどの透明材料からできた円柱レンズである。光学デバイス20及び21が物理的に互いに近接している限り、光学デバイス20及び21の順序は実用上重要ではない。光学素子20及び21を用いて実施された2つの光学機能を組み合わせて1つの単一の光学素子にすることも可能である。いずれの場合でも、入射するレーザビームL1を光シートL2及びL3に広げる方向は、分岐されたレーザビームL2及びL3の伝搬方向によって生成された平面に対して垂直でなければならない。
【0018】
光シートL2及びL3は、平面鏡40によって反射され、平面鏡40は光軸上を移動することができ、光学検出器システム30に対する平面鏡40の距離を求めなければならない。反射された光シートL2’及びL3’は、1次元光センサ30に入射し、位置31及び32において検出される。次いで、測定された2つの位置31及び32は、図2及び図3に例示されるように、光学検出器システム30までの平面鏡40の絶対距離Lを計算するのに使用される。図2及び図3は、1次元光センサ30上の2つの光シートL2’及びL3’の位置を利用して平面鏡40の絶対距離Lを計算するための、2つの光シートL2及びL3の光路と仮想光源11の構造とを示す。
【0019】
図2は、光学検出器システム30からの平面鏡40の距離Lを計算するのに使用される光学構造を例示する。光ビームスプリッタ21(又は20)は、1次元光センサ30の感光面のちょうど上に配置されるとする。光ビームスプリッタ21は、角度2αだけ分離された2つの異なる方向に伝搬する2つの光のシートL2及びL3を生成する。反射鏡40を光軸Aに対して90度の理想的な角度で配置した場合、光ビームスプリッタ21が光シートL2及びL3を生成する点に対応する仮想点11が光軸A上に生成される。仮想点11と光軸A上の放射/検出位置(光センサ30)との間の距離は、2Lで与えられる。この対称の場合、光シートL2’及びL3’は、対称位置31及び32において1次元光センサ30によって検出される。位置31と32との間の測定された距離D、及び2つの放射された光シートL2とL3との間の既知の角度2αは、L=D/(4tan(α))により平面鏡40の距離Lを計算するのに使用することができる。
【0020】
実際には、平面鏡40を光軸Aに対して確実に理想的な90度の向きにすることはしばしば可能ではなく、この平面鏡40の傾斜角は、時間とともに変化することがある。本発明の一実施形態に係る光学システムにおいて、この状況は、図3に例示するように、反射された光シートL2’及びL3’が1次元光センサ30によって検出される絶対位置d1及びd2を使用することによって解決される。平面鏡40の傾斜角βがゼロ度に等しくない場合、検出された位置d1及びd2も等しくなく、距離Lと平面鏡傾斜角βとを計算するために、検出された位置d1及びd2の値を三角測量角度αの正確な知識とともに使用することができ、距離L及び平面鏡傾斜角βは両方とも他のパラメータの三角関数、すなわち、L(α,d1,d2)及びβ(α,d1,d2)である。
【0021】
本発明の一実施形態に係る光学的距離測定システム1における主要構成要素は、入射するレーザビームL1を2つの伝搬するレーザビームL2及びL3にそれらの伝搬方向の間に角度2αをつけて分岐することができる光学構成要素21又は22のうちの1つである。そのような光学構成要素の第1の好ましい実施形態が、nλ/2の(ピークとピークの間の)変調度及びλ/tan(α)の格子周期を有する正弦波位相格子であり、ここで、nは格子材料の屈折の指数を示し、λはレーザ光の波長である。レーザダイオードの波長は温度の関数として変化し、結果として、三角測量角度2αもレーザダイオードの温度の関数として変化することは周知である。これらの温度変動を適度に低く維持することができない場合、ビーム分岐構成要素の第2の好ましい実施形態を図4に例示し、その場合、三角測量角度2αは、レーザ光の波長にほんのわずかしか依存しない。ビームスプリッタは、光学的透明構成要素50から成り、光学的透明構成要素50は、下部が透明であり、上部が反射するように作られた、1つの平坦な入力面を有し、及び、一方が半透鏡とされ、他方が透明である、互いに小さな角度を為した2つの平坦な平面から成る出射面を有する、1片の光学的透明材料からなる。この透明な構成要素50では、入射するレーザビームL1が、適切な反射防止膜を設けた平面入射面51に、ある角度で入射する。構成要素50の内側では、レーザビームL1が50%反射膜を設けた平面52まで伝搬しており、したがって、レーザビームL1の一方の部分は、第1の方向D1に沿って構成要素50から外へ伝搬しており、レーザビームL1の他方の部分は、ミラーコーティングを施した平面53に反射される。第2のレーザビームは、平面53において反射され、平面53から、適切な反射防止膜を設けた平面54まで伝搬している。第2のレーザビームは、構成要素50から方向D2内に伝搬しており、したがって、方向D1とD2との間の角度が三角測量角度2αと等しくなる。この三角測量角度は、平面51、52、53及び54のうちの少なくとも1つが他の平面に対してある角度で向いている場合、ゼロとは異なる。
【0022】
本発明の別の実施形態において、光学素子20及び21は、2つのレーザビームのスイッチを別々にオン及びオフすることができる機能を含む。このようにして、光センサ30は、第1の測定が第1のレーザビームのスイッチだけをオンにして(第2のレーザビームのスイッチがオフにされている間)実行され、第2のレーザビームのスイッチをオンにして(第1のレーザビームのスイッチがオフにされている間)第2の測定が後に続くので、一度に1つのレーザビーム位置だけを検出する必要がある。この時系列測定により、例えばPSD(位置敏感デバイス)などの追加の1次元光センサの種類の使用が可能になる。そのような実施形態を実現する単純な代替は、互いに三角測量角度2αを為した、レーザビームを放射する2つの別々のレーザ光源を使用することであり、各レーザ光源の正面において、光シートを形成する光学素子が配置される。
【0023】
1次元光センサ30は、位置31及び32において入射光シートL2’及びL3’によって生成された光分布を感知する。光センサ30の好ましい実施形態は、例えば光ダイオードアレイ又はCCD(電荷結合素子)ラインとして製作された画素の1次元配列から成る。レーザビームの使用は、結果として光検出器上のスペックルパターンとなるので、画素形状が、長い側面が光シートL2’及びL3’の方向に平行であり、したがって、そのようなスペックルパターンの影響が空間的平均化によって低減される、長方形である場合有利である。
【0024】
光センサ30は、図5に概略的に例示するように光分布を検出する。横方向位置xの関数としての光検出器信号P(x)は、位置x1及びx2において2つの極大を示し、それらは知られている信号処理アルゴリズムを用いて求めることができる。一例として、1次元光強度分布P(x)の極大を画素周期の1%よりも良い精度で求めることができるアルゴリズムがP.Seitzによって「Optical superresolution using solid−state cameras and digital signal processing」、Optical Engineering Vol.27、No.5、535〜540ページ、1988年7月に説明されている。
【0025】
このようにして、P(x)の2つの極大の位置x1及びx2を高い精度で求めることができる。次いで、この情報は、光センサ30に対する光軸Aの位置x0の知識とともに使用して、d1=x0−x1及びd2=x2−x0を計算する。距離L(α,d1,d2)及び平面鏡傾斜角β(α,d1,d2)が両方とも2つのパラメータd1及びd2並びに角度αの関数であるので、この知識を用いてL及びβの値を計算することができる。
【0026】
本発明の一実施形態に係る光学的距離測定システム1の性能の実例として、2度の角度α及び5μmの画素周期を有する光検出器アレイを検討する。P(x)の2つの極大の位置x1及びx2を求めることができる精度が画素周期の1%であるとすると、距離D=x2−x1は、精度ΔD=√2×50nmで求めることができ、それは70.7nmにほぼ等しい。図2に例示する対称の場合に対応して、平面鏡傾斜角がゼロである場合、距離Lを測定することができる精度ΔLは、ΔL=ΔD/(4tan(α))で与えられ、それは0.51μmにほぼ等しい。
【0027】
光検出器アレイが2048画素から成るとすると、センサラインの全長、したがって、Dの最大値も10.24mmである。結果として、この構成で測定することができる最大距離Lは、Lmaxで与えられ、それはほぼ70mmに等しい。この例は、本発明の一実施形態に係る光学的距離測定デバイスを実現することができるコンパクトさを例示する。検討された例において、それは少なくとも10.24mmの直径の管状空間を必要とするだけであり、結果として、平面鏡の傾斜角がゼロであることを条件として、約70mmの有効な測定長となる。
【符号の説明】
【0028】
1…光学的距離測定システム、10…コヒーレント光源、20,21…光学素子、30…1次元光センサ、31,32…位置、40…平面鏡、50…構成要素,51,52,53,54…平面、L1…レーザビーム、L2、L3、L2’、L3’…光シート。
図1
図2
図3
図4
図5