(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本体部の外周面は、前記両端部の一端から前記両端部の他端にかけて前記軸線方向に階段状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達軸用の管体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて各実施形態の管体を備えた動力伝達軸について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態では、本発明の動力伝達軸を、FF(Front−engine Front−drive)ベースの四輪駆動車に搭載されるプロペラシャフトに適用した例を挙げる。また、各実施形態で共通する技術的要素には、共通の符号を付し、説明を省略する。
【0011】
[第一実施形態]
図1に示すように、動力伝達軸1は、車両の前後方向に延在する略円筒状の管体2と、管体2の前端に接合するカルダンジョイントのスタブヨーク3と、管体2の後端に接合する等速ジョイントのスタブシャフト4と、を備えている。
スタブヨーク3は、車体の前部に搭載された変速機と管体2とを連結する連結部材である。スタブシャフト4は、車体の後部に搭載された終減速装置と管体2とを連結する連結部材である。
動力伝達軸1は、変速機から動力(トルク)が伝達されると軸線O1回りに回転し、その動力を終減速装置に伝達する。
【0012】
管体2は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により形成されている。なお、本発明において繊維強化プラスチックに使用される繊維は、炭素繊維に限られず、ガラス繊維やアラミド繊維であってもよい。
【0013】
管体2の製造方法は、図示しないマンドレルに連続炭素繊維を巻き付けて第一成形体を形成し、その後、第一成形体の外周にプリプレグ(炭素繊維に樹脂を含浸させたシート)を巻き付けて製造されている。よって、管体2は、フィラメントワインディング法とシートワインディング法との2つの工法を取り入れられて製造されている。
ここで、フィラメントワインディング法によって製造される第一成形体は、繊維(炭素繊維)の連続性が保たれるため機械的強度(特にねじり強度)が高い。
一方、シートワインディング法によれば、マンドレルの軸線方向に延在するように炭素繊維を配置することができ、軸線O1方向に高弾性化した第二成形体を製造できる。
つまり、上記した製造方法によれば、管体102の内部で、軸線O1回りに巻回された繊維からなる繊維層と、軸線O1方向に延在する繊維からなる繊維層と、が積層しており、機械的強度が高く、かつ、軸線O1方向に高弾性化した管体2を製造できる。
なお、周方向に配向する繊維としてPAN系(Polyacrylonitrile)繊維が好ましく、軸線O1方向に配向する繊維としてピッチ繊維が好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記した製造方法に限定されない。本発明の管体2は、マンドレルにプリプレグを巻き付けて第一成形体を形成し、その第一成形体の外周に連続炭素繊維を巻き付けることで製造されたものでもよい。または、本発明の動力伝達軸は、単一の製造方法(フィラメントワインディング法又はシートワインディング法)によって製造されたものであってもよい。
【0015】
管体2は、管体2の大部分を占める本体部10と、本体部10の前側に配置された第一接続部20と、本体部10の後側に配置された第二接続部30と、本体部10と第二接続部30との間に位置する傾斜部40と、を備えている。
【0016】
図2は、管体2から本体部10のみを抽出するとともに、本体部10の形状を分かり易くするために本体部10の特徴を誇張して図示している。
図2に示すように、本体部10の前端部11には、第一接続部20が連続し、本体部10の後端部12には、傾斜部40が連続している。
【0017】
軸線O1を法線とする平面で本体部10を切った場合、本体部10の外周面14の断面形状及び内周面15の断面形状は、円形状となっている。
また、本体部10の外径は、中央部13から両端部(前端部11及び後端部12)に向うに連れて縮径しており、中央部13の外径R1は、両端部(前端部11及び後端部12)の外径R2よりも大きい。
同様に、本体部10の内径も、本体部10の中央部13から両端部(前端部11及び後端部12)に向うに連れて縮径している。
【0018】
軸線O1に沿って本体部10を切った場合、本体部10の外周面14の断面形状及び内周面15の断面形状は、緩やかな曲線を描き、外側に向けて突出する円弧状となっている。よって、本体部10の外形は、中央部13が径方向外側に膨らみ樽形状(バレル形状)となっている。
また、その断面形状において、内周面15の曲率は、外周面14の曲率よりも大きい。言い換えると、本体部10の板厚は、両端部(前端部11及び後端部12)から中央部13に向うに連れて薄くなっており、中央部13の板厚T1は、両端部(前端部11及び後端部12)の板厚T2よりも薄い。
【0019】
図1に示すように、第一接続部20内には、スタブヨーク3のシャフト部3aが嵌め込まれている。シャフト部3aの外周面は、多角形状に形成されている。第一接続部20の内周面は、シャフト部3aの外周面に倣った多角形状に形成されている。このため、スタブヨーク3と管体2が互いに相対回転しないように構成されている。
【0020】
図3に示すように、第二接続部30内には、スタブシャフト4のシャフト部5が嵌め込まれている。スタブシャフト4のシャフト部5の外周面6は、多角形状に形成されている。第二接続部30の内周面31は、スタブシャフト4のシャフト部5の外周面6に倣った多角形状に形成されている。このため、管体2とスタブシャフト4とが互いに相対回転しないように構成されている。
また、第二接続部30の外径は、本体部10の後端部12よりも小径となっている。なお、第二接続部30の小径化は捩れ強度の低下を招く。よって、本実施形態の第二接続部30の板厚は、本体部10の後端部12の板厚よりも厚く形成され、所定の捩じれ強度を有するようになっている。
【0021】
傾斜部40は、本体部10と第二接続部30との間に形成された円筒状の部位である。傾斜部40の外径は、本体部10から第一接続部20に向かうに連れて次第に縮径し、円錐台形状となっている。
傾斜部40の板厚は、第二接続部30側(後側)の端部から本体部10側(前側)の端部に向かうに連れて漸次薄くなっている。このため、傾斜部40のうち前端部41の板厚が最も薄く、脆弱部を構成している。
【0022】
以上、上記した動力伝達軸1用の管体2によれば、曲げ応力が集中し易い本体部10の中央部13は、外径R1が大径に形成され、所定の曲げ剛性を有している。一方で、曲げ応力が集中し難い本体部10の両端部(前端部11及び後端部12)は、外径R2が小径に形成され、軽量化している。よって、中央部13の所定の曲げ剛性を確保しつつ本体部10が軽量化していることから、本体部10の曲げ一次共振点が向上する。
【0023】
また、管体2の本体部10に作用する曲げ応力は、中央部13から両端部(前端部11、後端部12)に向かうにつれて円弧状(曲線状)を描くように変化(減少)していくところ、本実施形態の管体2の外形は、円弧状に形成され、その変化率に応じて小さくなるように形成されている。よって、本体部10は、中央部13や両端部(前端部11及び後端部12)のみならず、中央部13と両端部との間の部位も所定の曲げ剛性を有しつつ、軽量化している。
以上から、管体2の本体部10は、各部位に要求される所定の曲げ剛性を有しつつ、極限的に軽量化しており、本体部10の曲げ一次共振点が大きく向上している。
【0024】
また、管体2における本体部10の板厚は、捻じり応力に対応するために、中央部13から両端部(前端部11、後端部12)に向かうにつれて、外径の変化率(縮径率)に応じて厚くなっている。これにより、本体部10の各部位に対して均一に作用する捻じり応力に対応した所定の強度が確保されている。
以上から、管体2の本体部10は、所定の曲げ応力及び捻じり応力に対応した強度を備えている。
【0025】
また、管体2の両端部(第一接続部20と第二接続部30)は、金属製部品(スタブヨーク3とスタブシャフト4)と連結する必要があるため、小型化し、かつ、強度を確保する必要がある。
実施形態の管体2によれば、中央部13が大径となっているものの、第一接続部20と第二接続部30が小径に形成され、かつ、板厚が厚くなっているため、小型化し、かつ強度を確保させる、という要件を満たすことができる。
【0026】
また、中央部13が薄肉化されるとともに、両端部(前端部11及び後端部12)が小径化されていることから、管体2の製造に必要とされる材料が低減する。このため、低コスト化を図れる。
また、管体2は、繊維強化プラスチックにより形成されるため、設計の自由が高く、更なる低コスト化を図れる。
【0027】
また、上記管体2によれば、車両が前方から衝突され、管体2に衝突荷重が入力すると、軸線O1に対して傾斜する傾斜部40にせん断力が作用する。そして、傾斜部40に作用するせん断力が所定値を超えると、傾斜部40において最も脆弱な前端部(脆弱部)41が破損する。よって、車両衝突時、車体の前部に搭載されたエンジンや変速機は速やかに後退し、衝突エネルギーは車体の前部により吸収される。
【0028】
[第二実施形態]
次に第二実施形態の動力伝達軸101について
図4を参照しながら説明する。なお、
図4は、本体部110の特徴を誇張して図示してある。
第二実施形態の動力伝達軸101は、管体102と、管体102の前端に接合するスタブヨーク3(
図1参照)と、管体2の後端に接合するスタブシャフト4(
図1参照)と、を備えている。
図4に示すように、管体102は、本体部110と、本体部110の前側に配置された第一接続部20と、本体部110の後側に配置された第二接続部30(
図4において不図示)と、本体部110と第二接続部30との間に位置する傾斜部140と、を備えている。
【0029】
軸線O1を法線とする平面で本体部110を切った場合、本体部110の外周面114の断面形状と内周面115の断面形状は、円形状となっている。
本体部110の外径は、中央部113から両端部(前端部111及び後端部112)に向うに連れて縮径し、中央部113の外径R3は、両端部(前端部111及び後端部112)の外径R4よりも大きい。
同様に、本体部110の内径も、本体部110の中央部113から両端部(前端部111及び後端部112)に向うに連れて縮径している。
【0030】
軸線O1に沿って本体部110を切った場合、本体部110の外周面114の断面形状及び内周面115の断面形状は、階段状に形成されている。
本体部110の板厚は、両端部(前端部111及び後端部112)から中央部113に向うに連れて薄くなっている。よって、中央部113の板厚T3は、両端部(前端部111及び後端部112)の板厚T4よりも薄い。
【0031】
特に図示しないが、傾斜部140の板厚は、本体部110側(前側)の端部から第二接続部30側(後側)の端部に向かうに連れて漸次薄くなっている。このため、傾斜部140のうち後端部の板厚が最も薄くなっており、傾斜部140の後端部が脆弱部を構成している。よって、車両が前方から衝突され、傾斜部140に作用するせん断力が所定値を超えると、傾斜部140において最も脆弱な後端部(脆弱部)が破損する。
【0032】
第二実施形態の動力伝達軸201用の管体102によれば、第一実施形態の管体2と同様に、本体部110が軽量化し、本体部110の曲げ一次共振点が向上する。また、両端部(前端部111及び後端部112)の小径化及び中央部113の薄肉化によって製造に必要とされる材料が低減し、低コスト化を図れる。
【0033】
[第三実施形態]
次に第三実施形態の動力伝達軸201について
図5を参照しながら説明する。なお、
図5は、本体部210の特徴を誇張して図示してある。
第三実施形態の動力伝達軸201は、管体202と、管体202の前端に接合するスタブヨーク3(
図1参照)と、管体202の後端に接合するスタブシャフト4(
図1参照)と、を備えている。
図5に示すように、管体202は、本体部210と、本体部210の前側に配置された第一接続部20と、本体部210の後側に配置された第二接続部30(
図5において不図示)と、本体部210と第二接続部30との間に位置する傾斜部40と、を備えている。
【0034】
軸線O1を法線とする平面で本体部210を切った場合、本体部210の外周面214の断面形状と内周面215の断面形状は、円形状となっている。
本体部210の外径は、中央部213から両端部(前端部211及び後端部212)に向うに連れて縮径しており、中央部213の外径R5は、両端部(前端部221及び後端部212)の外径R6よりも大きい。
同様に、本体部210の内径も、中央部213から両端部(前端部211及び後端部212)に向うに連れて縮径している。
【0035】
軸線O1に沿って本体部210を切った場合、本体部210の外周面214の断面形状は円弧状、内周面215の形状は階段状となっている。
本体部210の板厚は、両端部(前端部211及び後端部212)から中央部13に向うに連れて薄くなっており、中央部213の板厚T5は、両端部(前端部211及び後端部212)の板厚T6よりも薄い。
【0036】
第三実施形態の動力伝達軸201用の管体202によれば、第一実施形態の管体2と同様に、本体部210が軽量化し、本体部210の曲げ一次共振点が向上する。また、両端部(前端部211及び後端部212)の小径化及び中央部213の薄肉化によって製造に必要とされる材料が低減し、低コスト化を図れる。また、管体202は、繊維強化プラスチックにより形成されるため、設計の自由が高く、低コスト化を図れる。
【0037】
[第四実施形態]
第四実施形態の動力伝達軸301は、管体302と、管体302の前端に接合するスタブヨーク3(
図1参照)と、管体302の後端に接合するスタブシャフト4(
図1参照)と、を備えている。
図6に示すように、管体302は、本体部310と、本体部310の前側に配置された第一接続部20と、本体部310の後側に配置された第二接続部30(
図6において不図示)と、本体部310と第二接続部30との間に位置する傾斜部40と、を備えている。
【0038】
軸線O1を法線とする平面で本体部310を切った場合、本体部310の外周面314の形状と内周面315の形状は、円形状となっている。
本体部310の外径は、前端部311から中央部313までが同一に形成され、中央部313から後端部312に向うに連れて縮径している。よって、前端部311及び中央部313の外径R7は、後端部312の外径R8よりも大きい。
同様に、本体部310の内径も、本体部310の前端部311から中央部313までが同一に形成され、中央部313から後端部312に向うに連れて縮径している。
【0039】
軸線O1に沿って本体部310を切った場合、本体部310の外周面314の断面形状及び内周面315の断面形状は、前端部311から中央部313までは直線状を呈し、中央部313から後端部312にかけて緩やかな曲線を描き、円弧状となっている。
また、本体部310の板厚は、後端部312から中央部313に向うに連れて薄くなるとともに、中央部313から前端部311までは均一に形成されている。よって、前端部311及び中央部313の板厚T7は、後端部312の板厚T8よりも薄い。
【0040】
第四実施形態の動力伝達軸301用の管体302によれば、本体部310の中央部313は、外径R7が大径に形成されて所定の曲げ剛性が確保されている。本体部310の後端部312は、外径R8が小径に形成されて軽量化している。また、本体部310の中央部313は、板厚T7が薄く軽量化している。よって、中央部313の所定の曲げ剛性を確保しつつ本体部310が軽量化していることから、本体部310の曲げ一次共振点が向上する。
また、後端部312の小径化及び中央部313の薄肉化によって製造に必要とされる材料が低減し、低コスト化を図れる。また、動力伝達軸201は、繊維強化プラスチックにより形成されるため、設計の自由が高く、低コスト化を図れる。
【0041】
以上、各実施形態について説明したが、本発明は各実施形態で説明した例に限定されない。
例えば、各実施形態の管体は、スタブヨーク3等と連結するための接続部(第一接続部20、第二接続部30)を備えているが、本発明は、本体部のみから構成される管体であってもよい。つまり、本発明においては、管体が本体部のみから構成され、本体部の両端部内にスタブヨーク3等の嵌合させるようにしてもよい。
【0042】
各実施形態の傾斜部40は、板厚が次第に薄くなることで端部に破損し易い脆弱部が形成されるようにしているが、板厚を均一するとともに外周面又は内周面に凹部を設けることで脆弱部を形成してもよい。
【解決手段】本発明は、回転することで動力を伝達する繊維強化プラスチック製の動力伝達軸1用の管体2であって、軸線O1を中心とする筒状の本体部10を備え、本体部10の外径は、中央部13から両端部11,12に向うに連れて縮径しており、本体部10の板厚は、両端部11,12から中央部13に向うに連れて薄くなっている。