(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のプレス成形物の連続成形方法において、スリットの形成は切刃を移動中の帯状軟化樹脂シートに向けて下降させることにより行うプレス成形物の連続成形方法。
請求項2に記載のプレス成形物の連続成形方法において、切刃は下降と同時に帯状軟化樹脂シートの幅方向に移動させ、帯状軟化樹脂シートの移動方向に対して傾斜したスリットを形成するプレス成形物の連続成形方法。
請求項1から3のいずれか一項に記載の連続成形方法において、前記単位樹脂シート加熱工程は、単位樹脂シートのプレス成形に適した単位樹脂シート温度より幾分低い第1の温度まで徐々に加熱する第1の加熱工程と、前記第1の加熱工程後に、単位樹脂シートをプレス成形に適した第2の温度に急速加熱する第2の加熱工程とから成るプレス成形物の連続成形方法。
請求項6に記載のプレス成形物の連続成形装置において、スリット形成装置は、切刃を昇降移動可能に支持する切刃支持具と、切刃支持具を帯状軟化樹脂シートの幅方向に移動可能に案内する案内装置と、切刃支持具の幅方向移動のための駆動機構と、駆動機構を動作させるためのモータとを具備して成るプレス成形物の連続成形装置。
請求項7に記載のプレス成形物の連続成形装置において、切刃は複数具備され、各切刃毎に、切刃支持具、案内装置及び幅方向移動のための駆動機構とが具備されるプレス成形物の連続成形装置。
請求項5から8のいずれか一項に記載のプレス成形物の連続成形装置において、前記単位樹脂シート加熱装置は、第1の加熱炉と、第2の加熱炉とから成り、第1の加熱炉及び第2の加熱炉は、夫々、加熱室と、加熱室に内に配置され、単位樹脂シートの搬送を行うコンベヤと、単位樹脂シートの搬送経路に沿って加熱室に配置された赤外線ヒータとからなり、第1の加熱炉における赤外線ヒータは波長10〜20μmの遠赤外領域の赤外線を放射し、第2の加熱炉における赤外線ヒータは波長5〜10μmの中赤外領域の赤外線を放射するプレス成形物の連続成形装置。
請求項9に記載のプレス成形物の連続成形装置において、第1の加熱炉のコンベヤは、遠赤外領域の赤外線による単位樹脂シートの加熱が低速にて連続送りされるように制御され、第1の加熱炉のコンベヤは、遠赤外領域の赤外線による単位樹脂シートの加熱が低速にて連続送りされるように制御され、第2の加熱炉のコンベヤは、中赤外領域の赤外線による単位樹脂シートの加熱が単位樹脂シートの停止下で行われるように制御されるプレス成形物の連続成形装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態を説明すると、
図1はこの発明の実施形態における溶融樹脂から成形品までの成形ラインを示しており、成形ラインに沿って、溶融樹脂押出機10、溶融樹脂押出機10からの帯状軟化樹脂シートSの引出し及び温調のためのローラ列12、帯状軟化樹脂シートSを一つのプレス成形物(この実施形態では、後述のように、製品としての自動車の車体の左右の一対の樹脂製プロテクターフェンダーとなる部分と残りのスクラップとなる部分とから構成される)のプレス成形のための素材となる軟化状態の単位樹脂シートU(以下単に単位樹脂シートU)への切断を行う切断装置14、単位樹脂シートUをプレス成形に適した温度に2段階で加熱する加熱装置16、加熱装置16によりプレス成形に適した温度に調整された単位樹脂シートUの取り扱いのためのマニュピレータ(ロボット)18、マニュピレータ18により加熱装置16から取り出された単位樹脂シートUをプレス成形することによりプレス成形物とするプレス成形機20が配置される。また、成形ラインは下流側において、プレス成形機20により成形されたプレス成形物Pの取り出しのためのマニュピレータ22及び18後処理ライン24を備えている。
【0012】
成形ラインについて順序が前後するが、加熱装置16により温度調整された単位樹脂シートUのプレス成形機について説明すると、プレス成形機20は雄型20-1と雌型20-2を備えており、型開きした状態においてマニュピレータ18は、加熱装置16によりプレス成形に適した温度に加熱された単位樹脂シートUを吸引カップ18-1により把持し、型開きされたプレス成形機20における雄型20-1と雌型20-2間の所定位置にセットする。単位樹脂シートUがセットされると、油圧シリンダ20-3 により雄型20-1に向けて雌型20-2が下降され、型締めによって単位樹脂シートUは型空洞に応じた形状のプレス成形物に賦形され、型内で暫時冷却後型開きにより雄型20-1から雌型20-2が上昇し離間され、プレス成形物Pは、マニュピレータ(ロボット)22の吸引カップ22-1によりプレス成形機20から取り出され、後処理ライン24のコンベヤ24-1に載せられ、この発明の本旨から外れるため図示は省略するが、後処理ライン24にはコンベヤ24-1で運び出されるプレス成形物Pの冷却装置及び冷却後のプレス成形物Pから製品となる部分(本発明の実施形態においては自動車の車体の左右の一対の樹脂製プロテクターフェンダー)を分離し、製品となる部分の周りのスクラップとなる部分については再利用するための後処理(チップ化)が行われる。
【0013】
本発明の帯状軟化樹脂シートSの押出し、切断装置44による帯状軟化樹脂シートSから単位樹脂シートUへの切断、加熱装置16による単位樹脂シートUの加熱、加熱された単位樹脂シートUのプレス成形機20によるプレス成形物のプレス成形を行う連続成形ラインにおいて、サイクルタイムSTは、プレス成形物一つの成形に要する時間のことをいう。そして、サイクルタイムSTは、プレス成形機20における型開き、マニュピレータ18からの単位樹脂シートUのセット、型締めによりプレス成形物の成形、型開き及びマニュピレータ22によるプレス成形物の取り出し、からなる一連の工程に要する時間により決まるとするのが当業者の常識的な思考である。しかしながら、樹脂シート連続プレス工法では、帯状軟化樹脂シートSから単位樹脂シートUへの切断のため樹脂温度は低下させており、プレス加工に先立って、単位樹脂シートUの温度をプレス加工に適した温度まで温度の均一性を確保しつつ昇温させる必要があり、従来はこの昇温のために時間を要していたため、サイクルタイムは単位樹脂シートUの加熱工程に要する時間に制限されていたが、本発明の実施形態においては、加熱装置16の工夫により加熱時間の短縮が可能となっており、それによりサイクルタイムSTの短縮化が図られている。そして、この設定サイクルタイムSTに同調するように、溶融樹脂押出機10からの帯状軟化樹脂シートSの押し出しが行われ、更には、後述の切断装置14による単位樹脂シートUへの切断、更には、加熱装置16による単位樹脂シートUの温度調整が行なわれ、この間において連続溶融単位樹脂シートSの実質的な滞留が生じたり、プレス成形機20での単位樹脂シートUの実質的な到着の待ち時間が生じたりすることがないようになっている。
【0014】
次に、成形ラインにより単位樹脂シートUからプレス成形機20によりプレス成形されるプレス成形物Pについて、その具体的な構造の一例について説明すると、
図2(a)(斜視図)及び
図3(平面図)はプレス成形物Pを図示しており、単位樹脂シートUのプレス成形により自動車の前輪用の左右のプロテクターフェンダーを一体としたものであり、プレス成形物Pから取り出される製品である左右のプロテクターフェンダーとなる部位をP
1, P
2にて夫々示し、これらの部位P
1, P
2は高さの高い縦壁部分Wを有している。縦壁部分の上面には車体取付けのためのボルトの座面等となるエンボス部分Eが設けられていることが分かる。
図3は、プロテクターフェンダーとなる部分P
1, P
2の輪郭形状が良く分かるようにプレス成形物Pを平面図にて現したものであり、プロテクターフェンダーとなる部位P
1, P
2の外側からプレス成形物Pの外周P´に至るまでのプレス成形物Pの部位P
3は後処理ライン24で除去され、スクラップとなる部位である。そして、本発明によれば、スクラップとなる部位P
3には、後述のように、単位樹脂シートUに切断する前の帯状軟化樹脂シートの状態でプレス成形により製品の縦壁となる部位Wやエンボスとなる部位Eに添うようにスリット(切込み)C
1, C
2, C
3, C
4, C
5が形成される。後述のように、帯状軟化樹脂シートにスリットC
1, C
2, C
3, C
4, C
5を形成しておくことにより、プレス成形機20による単位樹脂シートUのプレス成形時に縦壁となる部位Wやエンボスとなる部位E(薄肉厚が生じやすい深絞りとなる部位等)での肉の延びが良好となり、製品の肉厚が均衡化し品質向上を得ることができる。
図2(b)はスクラップとなる部位P
3を除去し、製品としての左右のプロテクターフェンダーとされた状態を模式的に示す。尚、
図1において、プレス成形機20における下型20-1及び上型20-2は、便宜上略図にて画かれているが、実態の型面が
図2の成形品に応じた形状を有していることは言うまでもない。
【0015】
次に、
図1において成形ラインにおけるプレス成形に付されるまで、即ち調温された単位樹脂シートUに至るまでの各部の構成について説明すると、溶融樹脂押出機10は、それ自体は周知なので略示に留めるが、樹脂ペレット投入用ホッパ26と、スクリュエクストルーダ28と、ヒータ30と、ギヤポンプ32と、ダイス(押出ノズル)34とを備えている。この実施形態では、樹脂素材は、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂であり、ポリプロピレンとポリエチレンのペレットは所定の混合割合にてホッパ26に投入される。スクリュエクストルーダ28はペレットを混合しながら軸方向送りし、その間にヒータ30の熱によりペレットは溶融混合される。ギヤポンプ32は一定速度で混合溶融樹脂をダイス34に送り、細長矩形断面のダイス34より帯状軟化樹脂シートSとして押出される。押出し時の樹脂温度はポリプロピレン約50重量%、ポリエチレン約50%の本実施形態の樹脂の場合約190〜220℃である。
【0016】
ローラ列12は一対のシート引出しローラ対36と、調温ローラ38, 40とを備えており、ダイからの溶融樹脂はシート引出しローラ対36及び調温ローラ38, 40を通ることによって温度調整される。その温度範囲は、切断装置14での帯状軟化樹脂シートSから単位樹脂シートUへの切断に適した115〜135℃程度であり、ここの温度が高すぎると柔らかすぎて単位樹脂シートUへの切断が行えなくなる不都合がある。また、本発明のスリット形成装置50によるスリットの円滑な形成動作のためにも切断前の単位樹脂シートUはあまり柔らかくなり過ぎないように適正な温度となっていることが好適である。また、ラミネートフィルム(約0.5〜5mm厚の不織布フィルム等)のロール41が上方に設置されており、ロール41からのラミネートフィルムFは調温ローラ38において帯状軟化樹脂シートSと合体され、調温ローラ38を出たところではラミネートフィルムFは帯状軟化樹脂シートSの表面に位置している。
【0017】
切断装置14はピンチローラ対42と、切断装置44とを備えている。切断装置44は、ピンチローラ対42の出口に配置され、下側の固定刃44-1と上側の可動刃44-2との組合せからなる。固定刃44-1及び可動刃44-2は帯状軟化樹脂シートSの全幅を超えた長さの刃部を備えており、常態においては可動刃44-2は固定刃44-1から上方に離間した退避位置にあるが、帯状軟化樹脂シートSが一定長通過する毎に可動刃44-2は固定刃44-1に向けて瞬時下降後即座に上昇復帰するように駆動され、帯状軟化樹脂シートSは一定長の単位樹脂シートUに切断され、単位樹脂シートUは加熱装置16に送られる。切断装置14については必要あれば特許文献1の記載も参照されたい。
【0018】
切断装置14におけるピンチローラ対42の手前に
図2及び
図3により説明した成形品におけるスクラップとなる部位におけるスリットC
1, C
2, C
3, C
4, C
5(
図13も参照)を入れるためのスリット形成装置50が配置される。以下スリット形成装置50の構造について説明すると、スリット形成装置50は、
図4に示すように帯状軟化樹脂シートSの幅方向に3本の切刃52を備える。切刃52は後述のように個別に昇降及び幅方向移動可能となっているが、区別のため必要な場合は、
図4の左側をA、中央をB、右側をCの符牒を付して表現するものとする。切刃52の刃先52-1は、
図5に示すように、スリット形成時の帯状軟化樹脂シートSの受部となる一対のローラ53の中間を望むように設置され、後述のようにスリット形成のため切刃52を下降させたときその先鋭な刃先52-1が帯状軟化樹脂シートSを貫通するようになっている。
図6に模式的に示すように、各切刃52はエアシリンダ54のピストン55(
図5)から延びるピストンロッド56の下端にアダプタ57(ねじ止めにより切刃52の固定を行う)を介して着脱自在に装着されている。各切刃52は安全カバー58により通常は被覆されており、スリット形成時に刃先52-1が安全カバー58より突出するようになっている。
図4では中央部Bの切刃52が帯状軟化樹脂シートSを貫通し、両側A, Cの切刃52は安全カバー58により被覆されたままの状態を示す。エアシリンダ54はピストン55を
図4の上方に付勢し、そのため常態では切刃52を安全カバー58内に収容することができる。即ち、
図5においては、エアシリンダ54の下部空気圧ポート54-1からの空気圧導入(
図5の矢印a方向)及び上部空気圧ポート54-2からの空気圧排出(
図5の矢印b方向)によりピストン55は上昇移動し、刃先52-1が安全カバー58内に収容された状態が示される。そして、
図5と反対に、上部空気圧ポート54-2から空気圧導入(
図5の矢印bと反対方向)及下部空気圧ポート54-1からの空気圧排出(
図5の矢印aと反対方向)によりピストン55は下降移動し、刃先52-1が安全カバー58内に収容された状態から突出し、帯状軟化樹脂シートSに対するスリット形成を行うことができる。
図8は切刃52の中程の高さ位置での水平面における断面形状を示し、下方の刃先52-1に連なる切断縁52-2は帯状軟化樹脂シートSの移動方向(矢印f)を向くように位置し、かつ切刃52は帯状軟化樹脂シートSに対するスリット形成のための突入を容易とするため、先鋭な先端52-1を形成している。
【0019】
次に、エアシリンダ54の支持構造について説明すると、
図5に示すようにエアシリンダ54の本体背面には、水平移動部材60が固定配置される。そして、
図4の3個のエアシリンダ54は各々その背面にはエアシリンダ54のための支持部材62が直立設置され、支持部材62は水平移動部材60の水平移動の案内のための案内路62-1を形成している。そのため、各エアシリンダ54、換言すれば、各切刃52は個別的な水平移動が可能となっている。尚、エアシリンダ54の水平移動のための機構60, 62は簡明のため略図としたが、市販のリニアベアリングを備えたガイド装置をそのまま使用することができ、軽微な駆動力によりエアシリンダ54の精密な水平位置のコントロールが可能となっている。
【0020】
次に、各エアシリンダ54の個別的な水平移動を惹起させるためのチェーン式駆動機構について説明すると、
図4において、帯状軟化樹脂シートSの上方両側に位置するスプロケットホイールの対64, 66を巻き掛けるように無端チェーン68が設けられる。無端チェーン68は3個のエアシリンダ54の個別的な水平移動のため3本設けられる。スプロケットホイールの対64, 66も夫々の無端チェーン68のため3対設置される。各スプロケットホイールの対の一方のスプロケットホイール64が駆動側となり、他方のスプロケットホイール66が従動側となる。また、簡明のため各無端チェーン68の上側レーン及び下側レーンについて1駒づつのチェーン駒68-1を示し、周知のように、チェーン駒68-1をピンにて連接することにより一つの無端チェーン68に構成される。そして、簡明のため一つの無端チェーン68の複数のチェーン駒の上側及び下側の一つのチェーン駒68-1のみが
図5に示されている。このチェーン駒68-1の一つが対応のエアシリンダ54に固定され、無端チェーン68による、その無端チェーン68に固定された一つのエアシリンダ54の水平移動が可能となる。即ち、
図5において、支持部材62と反対側(前面側)におけるエアシリンダ54の本体外面に上下のブラケット板70, 72が片持状に溶接等により固着され、ブラケット板70, 72間に一つの無端チェーン68の一つのチェーン駒68-1(必要な場合は隣接する数個のチェーン駒)が溶接等により固着され、これにより無端チェーン68よりエアシリンダ54に水平駆動力を加えることができる。そして、
図9に示すように駆動側スプロケットホイール64は軸64-1によってギヤボックス74内に支持され、サーボモータ76の回転軸76-1の回転を一対のベベルギヤ78, 80によって駆動側スプロケットホイール64に伝達することができる。サーボモータ76の回転軸76-1の回転は駆動側スプロケットホイール64を介して無端チェーン68に伝達され、支持部材62にその水平移動部材60が案内されるエアシリンダ54は帯状軟化樹脂シートSの幅方向に水平移動され、延いては、切刃52の刃先52-1の帯状軟化樹脂シートSに対する幅方向位置の正確なコントロールが可能となる。このような、無端チェーン68の水平駆動のためのサーボモータ76は3本の無端チェーン68の各々のために設けられ(
図4のA, B, Cのエアシリンダ54に対応させてサーボモータ76にA, B, Cの符牒を付して表す)、そのため、A, B, Cの3本のエアシリンダ54の夫々はA, B, Cのサーボモータ76により、個々に帯状軟化樹脂シートSの幅方向に移動可能であり、先端の切刃52の帯状軟化樹脂シートSの幅方向における精密な位置制御(サーボ制御)が可能となり、帯状軟化樹脂シートSに対するスリットの成形が可能となる。即ち、
図5において、エアシリンダ54の上部空気圧ポート54-2から空気圧導入(
図5の矢印bと反対方向)及下部空気圧ポート54-1からの空気圧排出(
図5の矢印aと反対方向)により、
図6において、ピストンロッド56は下方に伸張され、先端の切刃52は帯状軟化樹脂シートSに向けて下降され、その先鋭な先端52-1が、矢印fのように移動中の帯状軟化樹脂シートSに貫通される。切刃52は先端52-1から連なる切断縁52-2が帯状軟化樹脂シートSの移動方向f(
図8も参照)を向いているため、帯状軟化樹脂シートSの移動により
図7に示すように移動方向と平行にスリットCaが帯状軟化樹脂シートSに形成される。そして、サーボモータ76の回転軸76-1の回転による切刃52の横方向の移動は、帯状軟化樹脂シートSの移動に従い、スリットの方向を変え、左方向に切刃52が動けばCbに示す斜めのスリットが形成されることになる。斜めのスリットCbの形成時は切刃52の切断縁52-2は切断方向に対して正対位置から幾分傾斜することになるが、切断対象である帯状軟化樹脂シートSは加温により柔らかくなっているため、切刃52の実質的な切断抵抗とはならず、スムースな切断を行うことが可能である。
【0021】
図1において切断装置14により得られた単位樹脂シートUをプレス成形に適した温度に調整する加熱装置16は、本実施形態においては、単位樹脂シートUの送り方向に連接して設置された一次加熱炉84及び二次加熱炉86から構成される。
図10に示すように一次加熱炉84は、加熱室84-1と、加熱室84-1内に配置され、単位樹脂シートUを搬送するコンベヤ84-2と、コンベヤ84-2に対向して加熱室84-1の上面に設置された一連の赤外線加熱ヒータ84-3と、加熱室84-1の下面に配置された一連の赤外線加熱ヒータ84-4とを備える。コンベヤ84-2は駆動プーリ84-2aと従動プーリ84-2bとの間に巻き掛けられ、駆動プーリ84-2aの回転軸は模式的に示す駆動モータ84-5に連結される。赤外線加熱ヒータ(セラミックヒータ等)84-3, 84-4の放射光の波長は、例えば10〜20μm、といった遠赤外領域にある。このコンベヤ84-2は、後述のように、投入された単位樹脂シートUの連続搬送下で行う。この際のコンベヤ84-2による単位樹脂シートUの移送速度は例えば1.0m/sといった値である。遠赤外領域の相対的な低エネルギの放射による連続加熱により単位樹脂シートUは、一次加熱炉84から二次加熱炉86へ送り込む際に125〜135℃の温度にコントロールされる。前工程でのスリット形成及び単位樹脂シートUへの切断により、単位樹脂シートUとして一次加熱炉84に入ってくるときの単位樹脂シートUの温度は115〜125℃まで下がっているが、一次加熱炉84での連続移送下の赤外線加熱ヒータ84-3, 84-4による遠赤外領域の相対的に波長の長い赤外線による比較的緩慢に起こる加熱作用により単位樹脂シートUは125〜135℃の温度に制御される。即ち、一次加熱炉84は、主目的としては加熱目的もさることながら、二次加熱炉86での加熱に先立って単位樹脂シートUを全面で均一に保持する作用をも狙ったものである。
【0022】
一次加熱炉84で加熱を受けた単位樹脂シートUは、二次加熱炉86に送られる。二次加熱炉86は、加熱室86-1と、加熱室86-1に配置され、単位樹脂シートUを搬送するコンベヤ86-2と、コンベヤ86-2に対向して加熱室86-1の上面に設置された一連の赤外線加熱ヒータ86-3と、加熱室86-1の下面に配置された一連の赤外線加熱ヒータ86-4とを備える。個々の赤外線加熱ヒータ(セラミックヒータ等)86-3, 86-4の放射光の波長は、例えば5〜10μm、といった中赤外領域にある。コンベヤ86-2は駆動プーリ86-2aと従動プーリ86-2bとの間に巻き掛けられ、駆動プーリ86-2aの回転軸は模式的に示す駆動モータ86-5に連結されている。二次加熱炉86における赤外線加熱ヒータ86-3, 86-4による単位樹脂シートUの加熱は、単位樹脂シートUを停止させて行う。中赤外領域の相対的に短い波長の赤外線により単位樹脂シートUの急速加熱が行われ、加熱後の単位樹脂シートUの温度は130〜160℃の温度に制御される。この温度は、プレス加工により成形すべき成形物に応じて最適なプレス成形を行うことがでるように適宜選択される。そして、単位樹脂シートUを停止した状態での中赤外領域での加熱は例えば15秒といった極く短時間での加熱により目的とする単位樹脂シートUの温度を得ることができ、本発明の樹脂シート連続プレス工法の生産効率を高めることに寄与させることができる。従来における本出願人の樹脂シート連続プレス工法における加熱炉の構成では、加熱用に遠赤外領域の赤外線による加熱方式であり、この場合、大きさ約1500mm×2000mmで厚み1.6mmの単位樹脂シートUにおいて、約60秒の加熱時間を要しており、樹脂シート連続プレス工法における1個の製品当たりの製造に要する時間=サイクルタイムSTは加熱炉における加熱時間による制限を受けていたが、本発明の加熱装置16の新規な構造によりサイクルタイムSTを20秒といった時間に設定することが可能となり、生産性の著しい向上が実現する。
【0023】
切断装置14から、加熱装置16を介してプレス成形機20までの単位樹脂シートUの搬送及び一次加熱炉84と二次加熱炉86間の受渡し、更には、下流側のプレス成形機20への搬出動作について説明すると、切断装置14により得られた単位樹脂シートUは、そのまま、一次加熱炉84に入る。一次加熱炉84での単位樹脂シートUの加熱は連続的であり、基本的にコンベヤ84-2は一定の低速度で連続移動するが、単位樹脂シートUの受入れのために急速送りする必要上、コンベヤ84-2の駆動モータ84-6の回転速度は、急速上昇制御可能である。二次加熱炉86での単位樹脂シートUの急速加熱は、基本的に、コンベヤ86-2を停止して行うが、一次加熱炉84からの単位樹脂シートUの受け取り及び下流のプレス成形機20の搬出のため駆動モータ86-5の急速回転が可能となっている。一次加熱炉84のコンベヤ84-2の急速移動時の速度及び二次加熱のコンベヤ86-2の急速移動時の速度は例えば、10m/sといった同一速度である。
【0024】
図11及び
図12は切断装置44から一次加熱炉84及び二次加熱炉86を経てプレス成形機に単位樹脂シートUを送りだす工程ついての連携動作を模式的により示す。
図11(a)は帯状軟化樹脂シートSの先端が一次加熱炉84に送られてきた状態を示す。このとき、コンベヤ84-2は帯状軟化樹脂シートSの移送速度と同一速度(駆動モータ84-5の回転速度=Low)で動いている。一方、二次加熱炉86では静止したコンベヤ86-2上での単位樹脂シートUの急速加熱が行なわれている。
【0025】
図11(b)は一次加熱炉84内でのコンベヤ84-2による帯状軟化樹脂シートSが更に送られ、単位樹脂シートUがコンベヤ84-2上に乗って低速にて送られている状態を示し、二次加熱炉86での静止状態での単位樹脂シートUの急速加熱は継続される。
【0026】
図11(c)は切断装置44による帯状軟化樹脂シートSの切断を示し(
図12(a)のタイミングt
c)、帯状軟化樹脂シートSより単位樹脂シートUの切断が行われる。切断から些少時間経過した
図12(b)のタイミングt
1(カット時t
cに起動されるタイマにて計測される)で一次加熱炉84のコンベヤ84-2は低速運転(駆動モータ84-5の回転速度=Low)から高速運転(回転速度=High)に瞬時(例えば(0.5)秒といった極短時間)に切替えられ、コンベヤ84-2上の単位樹脂シートUは
図11(d)に示すように一次加熱炉84の中程の位置まで急速移送され、この時点(
図12(b)のt
2のタイミング(前記タイマにて計測される))でコンベヤ84-2と高速運転(回転速度=High)から本来の低速運転(駆動モータ84-5の回転速度=Low)に復帰される。このようにして、一次加熱炉84にて単位樹脂シートUを低速移動下にて徐々に加熱、二次加熱炉86にて停止下での急速加熱が行われる。
【0027】
タイマにて計測される二次加熱炉86での所要加熱時間タイミングt
3(
図12(c))が到来すると、二次加熱炉86でのコンベヤ86-2の駆動モータ86-5は静止状態(Stop)から高速運転(回転速度=High)に切替えられ、コンベヤ86-2上のそれまで停止していた単位樹脂シートUは、矢印mで示すようにプレス成形機への搬出用のマニュピレータ18のコンベヤ18-2に向け搬出開始される。コンベヤ18-2も僅か送れたタイミングt
4(
図12(d))で同一速度で高速運転を開始する。
【0028】
二次加熱炉86のコンベヤ86-2が高速運転を開始した時点においては、
図11(d)おいて一次加熱炉84のコンベヤ84上に乗っていた単位樹脂シートUは
図11(e)に示すように上流側端がコンベヤ84-2から離れ、下流側端が二次加熱炉86のコンベヤ86-2に既に乗っており単位樹脂シートUは高速移動中であり、タイミングt
5でコンベヤ86-2の駆動モータ86-5は高速運転(回転速度=High)から静止状態(Stop)に切り替わり、
図11(a)に示すようにコンベヤ86-2に受け渡された単位樹脂シートUは二次加熱炉86の中程の位置に停止され、単位樹脂シートUの二次加熱炉86での停止状態での加熱が開始される。
【0029】
マニュピレータ18のコンベヤ18-2に向け排出された単位樹脂シートUについても程なく(タイミングt
6(
図12(d))ではコンベヤ18-2の規定位置に到来し、コンベヤ18-2上の単位樹脂シートUはマニュピレータの吸引カップ18-1(
図1)により吸引保持され(
図11(a)も参照)、プレス成形機でのプレス成形に供される。マニュピレータ18のコンベヤ18-2の規定位置(マニュピレータ18によりプレス成形機20の所期の位置への単位樹脂シートUの移送のため必要である)への到着を検出するセンサ88(
図11(e)参照)が設けられており、センサ88によるコンベヤ18-2の規定位置への到来によりタイマはクリヤされ、
図11(a)〜(e)の動作が繰返される。
図12の動作においてタイマは帯状軟化樹脂シートSの切断(タイミングをt
cにて示す)により起動され(タイマ起動用に帯状軟化樹脂シートSの切断動作完了を検知する図示しないセンサが設置される)、t
1〜t
5のタイミングはタイマにより計測され、センサ88によりコンベヤ18-2上の単位樹脂シートUの所定位置が確保されるとタイマはクリヤされ、センサによるタイマの起動及び停止(t
c及びt
6のタイミング)により
図12(a)〜(d)に示す一次加熱炉84及び二次加熱炉86内での単位樹脂シートUの移送動作を脱調させることなく確実に実現させることができる。
【0030】
図12において、帯状軟化樹脂シートSから単位樹脂シートUへの一連の切断タイミングt
cの間の時間が本実施形態におけるプレス成形物成形ラインのサイクルタイムSTとなり、プレス成形機での単位樹脂シートUの一連のプレス成形工程もこの間において行なわれる。また、二次加熱炉86の停止時間ATがサイクルタイムSTにおける二次加熱炉86での単位樹脂シートUの静止状態での急速加熱時間となる。
【0031】
本実施形態における、加熱装置16を一次加熱炉84と二次加熱炉86とに分けた構成は、一次加熱炉84においては、スリット形成及び単位シートUへの切断のため、低下した樹脂温度をサイクルタイム内で緩慢に連続加熱することにより樹脂温度を本来の温度まで全体を均一加熱又は保温することができ、その後の、二次加熱炉86での単位シートUを停止させた状態での中赤外領域の急速加熱により短時間で、プレス加工に最適な樹脂温度に到達させることができ、サイクルタイムに対して余裕をもった短時間で必要な加熱を行うことができ、加熱時間を15秒(
図12のAT)に短縮することができ、従来の加熱炉の場合は、1500mm×2000mmで厚み1.6mmといった大きさの単位樹脂シートUの場合に、加熱時間の制限から60秒程度に制限されていたサイクルタイムを20秒程度まで短縮することを可能とする。即ち、この発明の実施形態の加熱方法により従来の3倍もの生産速度を実現することができる。
【0032】
次に、プレス成形機20でのプレス成形物Pの成形動作について説明すると、加熱装置16で一次加熱炉84及び二次加熱炉86での加熱を受け、プレス成形に最適な温度まで加熱された単位樹脂シートUは型開きされたプレス成形機20の雄型20-1 に載置され、油圧シリンダ20-3により雌型20-2が下降され、単位樹脂シートUは型合わせした状態における雄型20-1 と雌型20-2との型空洞の形状に成形され、この実施形態では
図2(a)に示す自動車の前輪用の左右のプロテクターフェンダーを一体とした成形物Pとなり、型開き後の成形物Pはマニュピレータ22により取り出され、処理ライン24のコンベヤ24-1に送られる。プレス成形機20での、単位樹脂シートUの投入、型締め、型開き、プレス成形物の取り出しという一連の工程は
図12に関連してサイクルタイム内で実施されることは言うまでもない。
【0033】
プレス成形機20での本発明の成形動作についてより詳細に説明すると、型成形時に、単位樹脂シートUが型形状に追随してスムースな樹脂の延びを生ずる必要があるが、
図2(a)に示すように、本実施形態にてプレス成形すべき成形物Pは高い縦壁部Wやエンボス部Eを複数有しており、これらの部位での樹脂のスムースな延びが阻害されると、局部的な肉厚不足が生ずる懸念があった。本発明においては、連続樹脂シートSに、その切断後の単位樹脂シートUのプレス加工時に製品(本実施形態の場合はプロテクターフェンダーP
1, P
2)の外側のスクラップとなる部位P
3に成形時における樹脂のスムースな金型内での延びの助けとなるようにスリットC
1, C
2, C
3, C
4, C
5を形成している。即ち、
図13(a)はスリット形成装置50により帯状軟化樹脂シートSにスリットC
1, C
2, C
3, C
4, C
5を形成した状態を示す。帯状軟化樹脂シートSを切断装置44により単位樹脂シートUに切断後にプレス成形機20により成形される成形物における製品であるプロテクターフェンダーP
1, P
2の部分を想像線にて示す。スリットC
1, C
2, C
3, C
4, C
5は、プレス成形機20により成形されることになる成形物におけるプロテクターフェンダーP
1, P
2となる部分の外側のスクラップとなる部分に形成されており、スリットC
1, C
2, C
3, C
4, C
5は位置はプレス成形機20により成形されることになる成形物における製品であるプロテクターフェンダーP
1, P
2の肉の延性が問題となる縦壁やエンボスとなる部分に添って形成される。
図4において説明したように、スリット形成装置50は独立して昇降及び幅方向制御可能なA, B, Cの3個の切刃52を有しており、この実施形態では、
図4のAの位置の切刃52によりスリットC
5が形成され、
図4のBの位置の切刃52によりスリットC
1, C
2, C
3の加工が行なわれ、
図4のCの位置の切刃52によりC
4の形成が行なわれることが分かる。スリット形成装置50によるスリットC
1, C
2, C
3, C
4, C
5の成形後に帯状軟化樹脂シートSは切断装置44により幅方向に前端縁e
1及び後端縁e
2に沿って切断されることで、
図13(b)に示すようにプレス成形機20による成形物Pのプレス成形に先立ちスリットC
1, C
2, C
3, C
4, C
5の成形が行なわれた単位樹脂シートUとなる。
【0034】
プレス成形機20による成形物Pのプレス成形の際のスリットC
1, C
2, C
3, C
4, C
5の働きについて説明すると、
図2(a)のプレス成形物において縦壁Wの部位はプレス成形時の樹脂の延びが大きい部分であるが、縦壁Wとなる部分に近接したスクラップとなる部分に沿ってスリットC
3, C
4が形成されていることから、成形時にスリットC
3, C
4を開くような力が被成形物に加わり(
図2(a)において成形によりスリットC
1, C
2, C
3, C
4, C
5が開かれた状態が模式的に図示されている)、成形時に縦壁Wとなる部分への樹脂の延びが良くなり、成形後の縦壁Wの部分の必要な肉厚を確保することができる。
図14はこれを模式的に示した縦壁Wの部分の断面図であり、スリットC
3, C
4の形成がない場合に、縦壁Wの部分での樹脂のスムースな延びが阻害され、成形後の肉厚δ
Aが所期の値に不足してしまうが、本発明ではスリットC
3, C
4の形成により樹脂のスムースな延びが得られるため成形後の肉厚δ
Bを所期の値に確保することができる。また、
図2のエンボス部Eの成形部分では、中間に設けたスリットC
1, C
2, C
3においてもこれを拡開するような力が被成形物に加わるため、型空間への樹脂の延びが良くなり、エンボス部Eにおいても所期の肉厚を得ることが可能となる。
溶融樹脂押出機から連続押出しされる帯状軟化樹脂シートSを帯状軟化樹脂シートSに切断し、帯状軟化樹脂シートSをプレス成形機においてプレス成形品とする。連続押出しされる帯状軟化樹脂シートSに、単位樹脂シートUへの切断に先立ち、プレス成形機によるプレス成形物の成形の際にプレス成形物P