【実施例1】
【0017】
本発明による実施例に係るCO
2回収装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係るCO
2回収装置の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るCO
2回収装置10Aは、CO
2を含有するCO
2含有排ガス11AとCO
2吸収液(リーン溶液12B)とを接触させてCO
2を除去するCO
2吸収塔(以下「吸収塔」ともいう)13と、CO
2を吸収したCO
2吸収液(リッチ溶液12A)を再生する吸収液再生塔(以下「再生塔」ともいう)14と、再生塔14でCO
2が除去されたリーン溶液12BをCO
2吸収塔13で再利用するCO
2回収装置であって、吸収塔13が、CO
2吸収液(リーン溶液)12BによりCO
2含有排ガス11A中のCO
2を吸収するCO
2吸収部13Aと、CO
2吸収部13Aのガス流れ下流側に設けられ、洗浄水20によりCO
2除去後の排ガス11Bを冷却すると共に、同伴するCO
2吸収剤を洗浄水20により回収する本水洗部13Cと、本水洗部13Cの液貯留部21で回収されたCO
2吸収剤を含む洗浄水20を本水洗部13Cの頂部側から供給して循環する洗浄水循環ラインL
1と、CO
2吸収部13Aと本水洗部13Cとの間に設けられる予備水洗部13Bと、洗浄水循環ラインL
1から、CO
2吸収剤を含む洗浄水20の一部20aを抜出し、吸収液再生塔14のリフラックス部17の塔頂側に接続され、該リフラックス部17内に導入する水洗部抜出液供給ラインL
2と、リフラックス部17の導入位置よりも塔底部側からリフラックス水の一部を抜出し、予備水洗部13B側に接続され、該予備水洗部13Bの予備水洗水20bとして導入するリフラックス水供給ラインL
3と、を具備するものである。
【0018】
なお、本実施例では、洗浄水循環ラインL
1から、CO
2吸収液を含む洗浄水20の一部20aをそのまま抜き出すようにしているが、本発明はこれに限定されず、別途洗浄水循環ラインL
1から、CO
2吸収液を含む洗浄水20の一部20aを一時貯留する貯留部を設け、ここから抜き出すようにしてもよい。
【0019】
本実施例のCO
2回収装置10Aは、CO
2を含有するCO
2含有排ガス11Aとリーン溶液12Bとを接触させてCO
2を除去する吸収塔13と、CO
2を吸収したリッチ溶液12Aを再生する再生塔14とを有し、再生塔14でCO
2が除去されたリーン溶液12BをCO
2吸収塔13で循環再利用して、CO
2を含有するCO
2含有排ガス11AからCO
2を効率よく除去している。
【0020】
本実施例のCO
2吸収塔13は、CO
2含有排ガス11A中のCO
2を吸収するCO
2吸収部13Aと、CO
2吸収部13Aのガス流れ下流側に設けられ、CO
2除去後の排ガス11Bを予備水洗する予備水洗部13Bと、予備水洗後のCO
2除去後の排ガス11Cを本水洗する本水洗部13Cと、を備えている。
【0021】
ここで、CO
2吸収塔13の内部では、吸収塔底部13bにおいて、外部から導入されたCO
2含有排ガス11Aが、CO
2吸収塔13の下部側に設けられたCO
2吸収部13Aにおいて、例えばアルカノールアミン等のCO
2吸収剤をベースとするCO
2吸収液12と対向流接触される。そして、この対向流接触の結果、CO
2含有排ガス11A中のCO
2は、化学反応(R−NH
2+H
2O+CO
2→R−NH
3HCO
3)により、CO
2吸収液12に吸収される。この結果、CO
2吸収部13Aを通過して、CO
2吸収塔13の内部を上昇するCO
2除去後の排ガス11Bには、CO
2が殆ど残存しないものとなる。
【0022】
このCO
2除去後の排ガス11Bは、ガス流れ下流の本水洗部13Cで洗浄するが、本実施例では、この本水洗部13Cに導入する前に、予備水洗部13Bを設け、ここで予備水洗をしている。
【0023】
この予備水洗部13Bでは、CO
2除去後の排ガス11Bを、予備水洗水20bと気液接触して予備洗浄し、CO
2除去後の排ガス11B中に同伴されるCO
2吸収剤を洗浄する。
【0024】
ここで、CO
2吸収液12中のCO
2吸収剤がCO
2除去後の排ガス11Bに何故同伴されるかという点について説明する。吸収塔13内のCO
2吸収部13A内を上昇するCO
2含有排ガス11A中にはその温度における飽和蒸気圧の関係から水蒸気が同伴する。
この水蒸気を含むCO
2除去後の排ガス11BとCO
2吸収液12とが対向接触することで、CO
2吸収剤の極一部が飽和蒸気圧の関係から蒸気として、飛沫同伴によりミストとして排ガス11Bに同伴する。
この結果、CO
2吸収部13Aを通過したCO
2除去後の排ガス11B中には、CO
2吸収剤が僅かに含まれることとなる。
【0025】
また、本洗浄部13Cでは、CO
2除去後の排ガス11Bの冷却により、該排ガス11B中に同伴している水蒸気から凝縮水である洗浄水20を生じ、排ガス11B中に同伴するCO
2吸収剤が溶解することにより、洗浄水20中にCO
2吸収剤が僅かに含まれることになる。
【0026】
よって、本実施例では、先ず予備水洗部13Bにおいて、CO
2除去後の排ガス11B中のCO
2吸収剤を予備洗浄水20bで洗浄除去するようにしている。
【0027】
この予備水洗部13Bを通過した後、CO
2除去後の排ガス11Cは、チムニートレイ16を介して本水洗部13C側へ上昇し、本水洗部13Cの頂部側から供給される洗浄水20と気液接触して、CO
2除去後の排ガス11Cに同伴するCO
2吸収剤を循環洗浄により回収する。
【0028】
本水洗部13Cでは、チムニートレイ16の液貯留部21で貯留した洗浄水20を循環ラインL
1で循環させて、循環洗浄するようにしている。
なお、洗浄水循環ラインL
1には冷却部22を設け、所定の温度(例えば40℃以下)まで冷却している。洗浄水20は、洗浄水循環ラインL
1に設けた循環ポンプ57により循環されている。この循環する洗浄水20による本洗浄によって、CO
2除去後の排ガス11Cに同伴するCO
2吸収剤を更に回収・除去することができる。
【0029】
その後、CO
2吸収剤が除去されたCO
2吸収剤除去後の排ガス11Dは、CO
2吸収塔13の塔頂部13aから外部へ排出される。なお、符号75はガス中のミストを捕捉するミストエリミネータを図示する。
【0030】
このように、本実施例では、予備水洗部13B及び本水洗部13Cを設けて、CO
2除去後の排ガス11B、11C中に同伴される凝縮水に溶解したCO
2吸収液を2段階で洗浄除去しているので、CO
2除去後の排ガス11B、11Cに同伴するCO
2吸収液を確実に回収・除去することができる。
【0031】
この結果、外部に放出されるCO
2吸収液除去排ガス11D中に残存して放出される塩基性アミン化合物類等のCO
2吸収剤の濃度をより一層低減することができる。
【0032】
CO
2を吸収したリッチ溶液12Aは、リッチ溶液供給管50に介装されたリッチソルベントポンプ51により昇圧され、リッチ・リーン溶液熱交換器52において、吸収液再生塔14で再生されたリーン溶液12Bにより加熱され、吸収液再生塔14の頂部側に供給される。
【0033】
再生塔14の頂部側から塔内部に放出されたリッチ溶液12Aは、その塔底部14bからの水蒸気による加熱により、CO
2放出部14Aで大部分のCO
2を放出する。再生塔14内で一部または大部分のCO
2を放出したCO
2吸収液12は「セミリーン溶液」と呼称される。この図示しないセミリーン溶液は、再生塔14底部に流下する頃には、ほぼ全てのCO
2が除去されたリーン溶液12Bとなる。このリーン溶液12Bは循環ラインL
20に介装された再生加熱器61で飽和水蒸気62により加熱される。加熱後の飽和水蒸気62は水蒸気凝縮水63となる。
【0034】
一方、再生塔14の塔頂部14aからは塔内においてリッチ溶液12A及び図示しないセミリーン溶液から逸散された水蒸気を伴ったCO
2ガス41が放出される。そして、水蒸気を伴ったCO
2ガス41がガス排出ラインL
21により導出され、ガス排出ラインL
21に介装されたコンデンサ42により水蒸気が凝縮され、分離ドラム43にて凝縮水44が分離され、CO
2ガス45が系外に放出されて、別途圧縮回収等の後処理がなされる。この分離ドラム43にて分離された凝縮水44は凝縮水ラインL
22に介装された凝縮水循環ポンプ46にて吸収液再生塔14の上部に供給される。なお、図示していないが、一部の凝縮水44はCO
2吸収液を含む洗浄水20の洗浄水循環ラインL
1に供給され、CO
2除去排ガス11Cに同伴するCO
2吸収液12の吸収に用いるようにしてもよい。
【0035】
再生されたCO
2吸収液(リーン溶液12B)はリーン溶液供給管53を介してリーン溶液ポンプ54によりCO
2吸収塔13側に送られ、CO
2吸収液12として循環利用される。この際、リーン溶液12Bは、冷却部55により所定の温度まで冷却して、CO
2吸収部13A内にノズル56を介して、供給されている。
【0036】
よって、CO
2吸収液12は、CO
2吸収塔13と吸収液再生塔14とを循環する閉鎖経路を形成し、CO
2吸収塔13のCO
2吸収部13Aで再利用される。なお、必要に応じて図示しない補給ラインによりCO
2吸収液12は供給され、また必要に応じて図示しないリクレーマによりCO
2吸収液を再生するようにしている。
【0037】
なお、CO
2吸収塔13に供給されるCO
2含有排ガス11Aは、その上流側に設けられた冷却塔70において、冷却水71により冷却され、その後CO
2吸収塔13内に導入される。なお、冷却水71の一部もCO
2吸収塔13の洗浄水20として本水洗部13Cの頂部に供給され、CO
2除去排ガス11Bに同伴するCO
2吸収液12の洗浄に用いる場合もある。なお、符号72は循環ポンプ、73は冷却器、74は循環ラインを図示する。
【0038】
本実施例では、吸収塔13内の予備水洗部13Bで用いる洗浄水として、本水洗部13Cで用いた洗浄水20の一部20aを、再生塔14のリフラックス部17に導入し、このリフラックス部17から抜出したリフラックス水の一部を用いるようにしている。
【0039】
ここで、本実施例では、本水洗部13Cの洗浄水循環ラインL
1から、CO
2吸収剤を含む洗浄水20の一部20aを、水洗部抜出液供給ラインL
2により抜出している。水洗部抜出液供給ラインL
2は、吸収液再生塔14のリフラックス部17の塔頂部14a側の導入位置Xに接続され、ここでリフラックス部17内にCO
2吸収剤を含む洗浄水20の一部20aを導入している。なお、洗浄水20の一部20aの抜出量は、水洗部抜出液供給ラインL
2に介装されたポンプにより調整される。
【0040】
そして、リフラックス部17では、凝縮水44が導入されてリフラックス水となり、このリフラックス水と混合される。そして、CO
2吸収剤を含む洗浄水20の一部20aの導入位置Xよりも塔底部14bの位置Yからリフラックス水の一部をリフラックス水供給ラインL
3により抜出している。そして、予備水洗部13B側に接続されたリフラックス水供給ラインL
3により、予備水洗部13Bの予備水洗水20bとして導入するようにしている。
【0041】
図2は、実施例1に係る吸収液再生塔の要部概略図である。
図2に示すように、再生塔14のリフラックス部17は、複数の棚段のトレイ17a〜17dが配置され、再生塔14のCO
2放出部14AでCO
2が放出された後の水蒸気を伴ったCO
2ガス41が上昇される。
【0042】
すなわち、
図2に示すように、再生塔14のリフラックス部17において、リフラックス部17で再生塔14の下部からの蒸気を伴ったCO
2ガス41により生成されたリフラックス水と、CO
2吸収剤を含む洗浄水20の一部20aとが、棚段トレイを落下する際、混合される。
【0043】
このリフラックス部17で水蒸気により洗浄水20の一部20aはその温度が上昇され、その後、洗浄水20の一部20aの導入位置Xよりも塔底部14b側の抜出位置Yからリフラックス水の一部として抜出し、該予備水洗部13Bの予備水洗水20bとしている。
【0044】
ここで、再生塔リフラックス部については、段塔でも充填塔でもよい。なお、低液流量の条件では段塔とすることが好ましい。
【0045】
この段塔の具体例としては、例えばダウンカマーを有する十字流接触型のバルブトレイ、泡鐘トレイ、及び多孔板トレイ等を例示することができる。
【0046】
リフラックス部17の段数については、本実施例では、気液接触効率の観点から4段以上が好ましい。なお、
図2の実施例では、十字流接触型の4段トレイを例示している。
【0047】
塔外部からの液の供給方法については、特に制約は無いが、本実施例では、ダウンカマーの凝縮水44と、反対方向からの水洗部抜出液供給ラインL
2とにより液供給を行う態様を例示している。
【0048】
上段トレイ17aから下段側のトレイ17bへの液供給は、ダウンカマー部にて塔内部を流下させる方法でもよく、ダウンカマー部から塔外部の配管を介して下段に供給する方法でもよい。なお、
図2に示す実施例では、塔内部での下段への液供給の例である。
【0049】
リフラックス部17の水分凝縮については、リフラックス部17の最下段トレイ17dにて、例えば、100℃近い温度の水蒸気を含むCO
2ガス41が、温度の低いリフラックス液及び水洗部抜出供給液との接触により、ガス温度が、例えば5℃程度低下する。この結果水蒸気を含むCO
2ガス41中の水蒸気が凝縮する。よって、従来のように、水洗部抜出液供給量(リフラックス部への供給無し)と比較して、本実施例ではリフラックス部17へ洗浄水20の一部20aを供給すること及び凝縮によって、例えば1.6倍程度の液流量となる。
【0050】
この際、水洗部抜出液中吸収剤濃度は、従来に比較して、例えば0.6倍程度に低下すると共に、リフラックス部17からリフラックス水の一部の抜出液温度(T
1)は、リフラックス部17へ導入するCO
2吸収剤を含む洗浄水20の一部20aの導入温度(T
0)よりも例えば約36℃程度上昇する。
【0051】
この温度が上昇したリフラックス部17からのリフラックス水の一部の抜出液を予備洗浄水20bとして、予備水洗部13Bに導入しているので、従来よりも予備水洗効率が増大する。
【0052】
予備水洗部13Bにおいて、CO
2除去後の排ガス11Bに同伴する吸収液ミストからの吸収剤放散では、平衡上の到達点は、水洗部洗浄水中吸収剤濃度である。本実施例のように、洗浄水中の吸収剤が低濃度であれば、ミスト中吸収剤濃度との差が大きく、ミストからのCO
2吸収剤の放散が従来よりも大幅に促進される。
【0053】
さらに、本実施例のように、予備水洗部13Bに導入する予備水洗水20bの液温度が高いので、上記の液中吸収剤濃度差(飽和蒸気圧差)の推進力だけでなく、物質移動係数も上昇する。よって、物質移動係数と推進力との積で表される吸収剤放散速度が従来よりも、大幅に向上することとなる。
【0054】
また、再生塔14の塔底部14bに洗浄水20の一部20aの全量を供給するものではないので、再生加熱器61のリボイラ量の低減を図ることができる。
【0055】
このように、CO
2吸収塔13と吸収液再生塔14とを循環利用されるCO
2吸収液12は、予備水洗部13B及び本水洗部13Cにおいて、CO
2除去後のCO
2除去排ガス11B、11Cと、洗浄水20とを向流接触させ、CO
2除去排ガス11B、11Cに同伴されたCO
2吸収液12を洗浄水20で吸収除去することで、吸収塔13の外部への放散を防止している。
【0056】
この洗浄の際、予備水洗部13Bにおいて用いる予備洗浄水20bとして、本水洗部
13Cで用いた洗浄水20の一部20aを抜出し、再生塔14側のリフラックス部17に導入し、このリフラックス部17において、高温のリフラックス水と混合することで、液温度を上昇させると共に、吸収剤濃度を低下させたリフラックス水の一部を予備洗浄水20bとして用いるようにしているので、予備水洗部13Bにおける予備洗浄水20bの高温化及び含有吸収剤低濃度化に基づいたミストからの吸収剤放散促進による吸収剤の効率的な回収が図れると共にガスに同伴する吸収剤の放散量を低減することができる。
【0057】
[試験例1]
本発明の実施例1の効果を確認する試験を行った。
即ち、二酸化炭素14%を含む燃焼排ガス200Nm
3/hを吸収塔13のCO
2吸収部13Aに供給し、塩基性アミン溶液(CO
2吸収液)と向流接触させて二酸化炭素を除去した。本試験例では、予備水洗部13BをCO
2吸収部13Aの後流(上部)側に設けた。予備水洗部13Bの予備洗浄水20bは、本水洗部13Cで用いた洗浄水20の一部20aを抜出し、再生塔14側のリフラックス部17に導入し、このリフラックス部17において、高温のリフラックス水と混合して抜出したものを用いた。
この予備洗浄水20bとCO
2除去後の排ガス11Bとを対向流接触させ、CO
2吸収部13AのCO
2吸収液に直接流下させると共に、本水洗部13Cにて洗浄水と液/ガス比4L/Nm
3で向流接触させ出口のミストエリミネータ75を通過させた。
【0058】
この結果を
図5に示す。
図5は、試験例1における吸収塔出口ガス中の同伴物質濃度を対比したグラフである。
図5中、左側は従来法であり、予備水洗部に、本水洗部からの洗浄水20の一部をそのまま供給した場合である。これに対し、右側は本実施例に係る予備水洗部13Bに、洗浄水20の一部20aを抜出し、再生塔14側のリフラックス部17に導入し、このリフラックス部17において、高温のリフラックス水と混合して抜出した温度が高い希釈した予備洗浄水20bを用いた場合である。
試験例のように予備水洗部に温度が高い希釈した予備洗浄水20bを用いた場合には、吸収塔出口ガス(CO
2吸収液除去排ガス11D)中の同伴物質の濃度比は、従来技術を1とすると、本試験例は0.96に低減した。