(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るポンプ装置について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0013】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、
図2に示すインナーロータ31の回転軸C1とアウターロータ32の回転軸C2とが並ぶ方向と平行な方向、すなわち、
図2の上下方向とする。X軸方向は、Y軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向、すなわち、
図2の左右方向とする。
【0014】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「リア側」と呼び、Z軸方向の負の側(−Z側)を「フロント側」と呼ぶ。なお、リア側及びフロント側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ
Z方向)を単に「周方向」と呼ぶ。
【0015】
図1は、本実施形態のポンプ装置1を示す断面図である。
図2は、本実施形態のポンプ部20を示す底面図である。
図3は、本実施形態のポンプ部20の部分を示す底面図である。
図2及び
図3においては、ポンプカバー42を取り外した状態を示している。
【0016】
なお、本明細書において底面視とは、フロント側(−Z側)からリア側(+Z側)に向かって視ることを意味する。また、本明細書において底面図とは、フロント側からリア側に向かって視た図を意味する。
【0017】
本実施形態のポンプ装置1は、内接歯車ポンプである。ポンプ装置1は、
図1に示すように、駆動部10と、ポンプ部20と、を備える。駆動部10は、ポンプ部20を駆動する。ポンプ部20は、駆動部10によって駆動されることで流体を送る。ポンプ部20によって送られる流体は、例えば、自動車に用いられるオイルである。自動車に用いられるオイルとしては、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)等が挙げられる。以下、各部について詳細に説明する。
【0018】
[駆動部]
駆動部10は、モータハウジング16と、ロータ12と、ステータ13と、リアベアリング14と、フロントベアリング15と、を有する。
モータハウジング16は、フロント側(−Z側)に開口する有底の筒状である。モータハウジング16の底部には、リアベアリング保持部17が設けられている。
【0019】
ロータ12は、シャフト11を有する。すなわち、駆動部10は、シャフト11を有する。シャフト11は、軸方向(Z軸方向)に延びる中心軸Jを中心とする。シャフト11は、リアベアリング14とフロントベアリング15とによって中心軸J周り(±θ
Z方向)に回転可能に支持されている。
ステータ13は、ロータ12の径方向外側を囲んでいる。ステータ13は、モータハウジング16の内側に固定されている。
【0020】
リアベアリング14は、ステータ13のリア側(+Z側)に配置されている。リアベアリング14は、モータハウジング16のリアベアリング保持部17に保持されている。
フロントベアリング15は、ステータ13のフロント側(−Z側)に配置されている。フロントベアリング15は、後述するポンプハウジング40のフロントベアリング保持部41bに保持されている。
【0021】
[ポンプ部]
ポンプ部20は、駆動部10のフロント側(−Z側)に設けられている。ポンプ部20は、ポンプハウジング(ハウジング)40と、インナーロータ31と、アウターロータ32と、を有する。すなわち、ポンプ装置1は、インナーロータ31と、アウターロータ32と、ポンプハウジング40と、を備える。
【0022】
(インナーロータ及びアウターロータ)
インナーロータ31は、シャフト11に取り付けられている。より詳細には、インナーロータ31は、シャフト11のフロント側(−Z側)の端部に嵌め合わされて固定されている。これにより、インナーロータ31は、シャフト11と共に中心軸Jの軸周り(±θ
Z方向)に回転する。すなわち、
図2に示すように、インナーロータ31の回転軸C1は、中心軸Jと一致する。インナーロータ31は、フロント側(−Z側)から視て、時計回りに回転する。
【0023】
インナーロータ31は、外歯歯車部(第1の歯車部)35を有する。外歯歯車部35は、インナーロータ31の外周に設けられている。外歯歯車部35は、複数の外歯部(第1の歯部)33からなる。複数の外歯部33は、回転軸C1を中心とした周方向に沿って等間隔に設けられている。外歯部33は、
図2の例では、例えば、7つ設けられている。
【0024】
図1に示すように、インナーロータ31のフロント側(−Z側)のロータフロント面31aには、リア側(+Z側)に窪む被支持孔部31bが設けられている。被支持孔部31bの底面視形状は、
図2に示すように、回転軸C1と同心の円形状である。
【0025】
アウターロータ32は、インナーロータ31の径方向外側を囲む環状である。アウターロータ32は、回転軸C2の軸周りに回転する。図示は省略するが、回転軸C2は、中心軸Jと平行な軸である。すなわち、回転軸C2は、インナーロータ31の回転軸C1と平行な軸である。回転軸C2は、インナーロータ31の回転軸C1の+Y側に位置する。すなわち、アウターロータ32の回転軸C2は、インナーロータ31の回転軸C1と異なる。アウターロータ32は、フロント側(−Z側)から視て、時計回りに回転する。
【0026】
アウターロータ32は、外歯歯車部35と噛み合う内歯歯車部(第2の歯車部)36を有する。内歯歯車部36は、アウターロータ32の内周に設けられている。内歯歯車部36は、複数の内歯部(第2の歯部)34からなる。複数の内歯部34は、アウターロータ32の回転軸C2を中心とする周方向に沿って等間隔に設けられている。内歯部34は、外歯部33よりも1つ多く設けられている。すなわち、内歯部34は、
図2の例では、例えば、8つ設けられている。アウターロータ32は、内歯歯車部36と外歯歯車部35とが噛み合うことでインナーロータ31から回転駆動力が伝達され、回転する。
【0027】
なお、本明細書においては、インナーロータ31の回転軸C1を中心とする周方向をインナーロータ31の駆動方向Dinとする。また、本明細書においては、アウターロータ32の回転軸C2を中心とする周方向をアウターロータ32の駆動方向Doutとする。インナーロータ31の回転軸C1は中心軸Jと一致するため、駆動方向Dinは、中心軸Jを中心とする周方向(θ
Z方向)と同じである。
【0028】
また、本明細書においては、
図3に示すように、駆動方向Dinにおける外歯部33が進む側(+Din側,+θ
Z側)、及び駆動方向Doutにおける内歯部34が進む側(+Dout側)を駆動側と呼ぶ。また、本明細書においては、駆動方向Dinにおける外歯部33が進む側と逆側(−Din側,−θ
Z側)、及び駆動方向Doutにおける内歯部34が進む側と逆側(−Dout側)を反駆動側と呼ぶ。
【0029】
図2に示すように、外歯歯車部35と内歯歯車部36とは、各歯車部の−Y側で互いに噛み合う。外歯歯車部35と内歯歯車部36との間には、空間TSが設けられる。空間TSは、外歯歯車部35と内歯歯車部36と後述するポンプ室44の壁部とで構成される空間である。空間TSは、外歯歯車部35と内歯歯車部36とが噛み合う部分から駆動側に進むにつれて大きくなり、外歯歯車部35と内歯歯車部36とが噛み合う部分と逆側(+Y側)で最大となる。空間TSは、外歯歯車部35と内歯歯車部36とが噛み合う部分と逆側から駆動側に進むにつれて小さくなり、外歯歯車部35と内歯歯車部36とが噛み合う部分で最小となる。
【0030】
次に、インナーロータ31における外歯歯車部35の歯形の形状、及びアウターロータ32における内歯歯車部36の歯形の形状について、詳細に説明する。
【0031】
外歯歯車部35の歯形及び内歯歯車部36の歯形は、トロコイド歯形である。すなわち、底面視(XY面視)における、外歯歯車部35の外形及び内歯歯車部36の外形は、トロコイド曲線からなる。
【0032】
図3に示すように、外歯部33の歯先33aは、一点に定まる。外歯部33の歯底33dは、駆動方向Dinに隣り合う外歯部33同士の境である。すなわち、駆動方向Dinに隣り合う外歯部33同士の間における歯底33dは、一点に定まる。
【0033】
ここで、外歯部33の歯先33aは、外歯部33における回転軸C1からの径方向の距離が最も大きい点である。外歯部33の歯底33dは、外歯部33における回転軸C1からの径方向の距離が最も小さい点である。
【0034】
なお、本明細書において、回転軸からの径方向の距離、とは、その回転軸を中心とした径方向における、その回転軸からの距離を意味する。
【0035】
外歯部33は、歯先33aの駆動方向Dinの両側に一点ずつ変曲点33b,33cを有する。変曲点33bは、歯先33aの駆動側(+Din側)に位置する。変曲点33cは、歯先33aの反駆動側(−Din側)に位置する。
【0036】
なお、本明細書において変曲点とは、歯部の外形線における曲率半径中心の位置が、歯部の外形線に対して、回転軸を中心とする径方向外側から径方向内側、あるいは、径方向内側から径方向外側へと変わる点である。
【0037】
内歯部34の歯先34aは、一点に定まる。内歯部34の歯底34dは、駆動方向Doutに隣り合う内歯部34同士の境である。すなわち、駆動方向Doutに隣り合う内歯部34同士の間における歯底34dは、一点に定まる。
【0038】
ここで、内歯部34の歯先34aは、内歯部34における回転軸C2からの径方向の距離が最も小さい点である。内歯部34の歯底34dは、内歯部34における回転軸C2からの径方向の距離が最も大きい点である。
【0039】
内歯部34は、歯先34aの駆動方向Doutの両側に一点ずつ変曲点34b,34cを有する。変曲点34bは、歯先34aの駆動側(+Dout側)に位置する。変曲点34cは、歯先34aの反駆動側(−Dout側)に位置する。
【0040】
軸方向(Z軸方向)に視た際において、インナーロータ31の回転軸C1と外歯部33の歯先33aとを結ぶ線分を、第1の線分Lr1とする。軸方向に視た際において、アウターロータ32の回転軸C2と内歯部34の歯底34dとを結ぶ線分を、第2の線分Lr2とする。
【0041】
第1の線分Lr1から、第1の線分Lr1の駆動側(+Din側)に位置する外歯部33の変曲点33bまでの距離を第1の距離L1とする。第1の線分Lr1から、第1の線分Lr1の反駆動側(−Din側)に位置する外歯部33の変曲点33cまでの距離を第2の距離L2とする。
【0042】
第2の線分Lr2から、第2の線分Lr2の駆動側(+Dout側)に位置する内歯部34の変曲点34cまでの距離を第3の距離L3とする。第2の線分Lr2から、第2の線分Lr2の反駆動側(−Dout側)に位置する内歯部34の変曲点34bまでの距離を第4の距離L4とする。
【0043】
なお、本明細書において、各線分から変曲点までの距離とは、軸方向(Z軸方向)に視た際における各線分と変曲点との間の距離のうち最短の距離である。すなわち、各線分から変曲点までの距離とは、軸方向に視た際における各線分と変曲点との間の各線分と直交する方向の距離である。
【0044】
第2の距離L2は、第1の距離L1以下であり、かつ、第4の距離L4は、第3の距離L3よりも大きい。すなわち、第1の距離L1と、第2の距離L2と、第3の距離L3と、第4の距離L4とは、L2≦L1、及び、L4>L3を満たす。
【0045】
本実施形態においては、例えば、第2の距離L2は、第1の距離L1よりも小さい。すなわち、本実施形態においては、例えば、第1の距離L1と第2の距離L2とは、L2<L1を満たす。
【0046】
一例として、本実施形態においては、第1の距離L1に対する第2の距離L2の比は、0.92以下である。すなわち、本実施形態においては、例えば、第1の距離L1と第2の距離L2とは、L2/L1≦0.92を満たす。第1の距離L1と第2の距離L2とがこのような関係を満たすことで、ポンプ装置1のトルク効率をより向上できる。なお、L2/L1は、0より大きい。
【0047】
一例として、本実施形態においては、第3の距離L3に対する第4の距離L4は、1.09以上である。すなわち、本実施形態においては、例えば、第3の距離L3と第4の距離L4とは、L4/L3≧1.09を満たす。第3の距離L3と第4の距離L4とがこのような関係を満たすことで、ポンプ装置1のトルク効率をより向上できる。
【0048】
本実施形態においては、例えば、第3の距離L3は、第1の距離L1よりも大きい。すなわち、本実施形態においては、例えば、第1の距離L1と第3の距離L3とは、L3>L1を満たす。
【0049】
一例として、第1の距離L1に対する第3の距離L3の比は、0より大きく、1.005以下である。すなわち、第1の距離L1と第3の距離L3とは、0<L3/L1≦1.005を満たす。第1の距離L1と第3の距離L3とがこのような関係を満たすことで、容積効率の低下を抑制しつつ、外歯歯車部35と内歯歯車部36とが干渉することを抑制できる。
【0050】
(ポンプハウジング)
ポンプハウジング40は、
図1に示すように、ポンプボディ41と、ポンプカバー42と、を有する。
ポンプボディ41は、モータハウジング16のフロント側(−Z側)に取り付けられている。ポンプボディ41は、フロントベアリング保持部41bを有する。フロントベアリング保持部41bは、ポンプボディ41のリア側(+Z側)の端部に位置する。
【0051】
ポンプボディ41のフロント側(−Z側)のボディフロント面41aには、リア側(+Z側)に窪む凹部45aが設けられている。凹部45aの底面視形状は、
図2に示すように、例えば、アウターロータ32の回転軸C2と同心の円形状である。
【0052】
図1に示すように、凹部45aの底面には、ポンプボディ41を軸方向(Z軸方向)に貫通する貫通孔45bが設けられている。貫通孔45bは、例えば、中心軸Jと同心の円形状である。貫通孔45bの径方向内側には、シャフト11の一部が挿入されている。
【0053】
図2に示すように、ポンプボディ41には、吸入口46と、吐出口47とが設けられている。吸入口46及び吐出口47は、空間TSに開口している。吸入口46は、駆動側に進むに従って空間TSが大きくなる側(−X側)に設けられている。吐出口47は、駆動側に進むに従って空間TS小さくなる側(+X側)に設けられている。
【0054】
ポンプカバー42は、
図1に示すように、ポンプボディ41のフロント側(−Z側)に取り付けられている。ポンプカバー42は、ポンプボディ41の凹部45aの開口を閉塞している。ポンプカバー42は、カバー本体43aと、支持部43bと、を有する。
【0055】
カバー本体43aのリア側(+Z側)のカバーリア面43cは、ポンプボディ41のボディフロント面41aと接触している。支持部43bは、カバー本体43aのカバーリア面43cからリア側に突出している。支持部43bは、インナーロータ31の被支持孔部31bに挿入されている。これにより、インナーロータ31が支持部43bによって支持される。そのため、インナーロータ31が傾くことを抑制できる。
【0056】
ポンプボディ41の凹部45aの内側面と、ポンプカバー42におけるカバー本体43aのカバーリア面43cとによって、ポンプ室44が構成される。すなわち、ポンプハウジング40は、ポンプ室44を有する。ポンプ室44は、インナーロータ31及びアウターロータ32を収容する。
【0057】
駆動部10のシャフト11を介してインナーロータ31が回転されると、インナーロータ31に連動してアウターロータ32が回転する。これにより、空間TSが大きさを変化させつつ駆動方向に移動する。−X側では、空間TSが大きくなることで、空間TSには吸入口46を介してポンプ装置1によって送られる流体が吸入される。吸入された流体は、空間TSによってポンプ室44内を駆動方向に送られる。そして、空間TS内の流体は、空間TSが小さくなることで、吐出口47を介して空間TSから吐出される。このようにして、ポンプ装置1は、流体を送る。
【0058】
本実施形態によれば、第1の距離L1から第4の距離L4が、L2≦L1、及び、L4>L3を満たすため、ポンプ装置の容積効率が低下することを抑制しつつ、ポンプ装置のトルク効率を向上できる。以下詳細に説明する。
【0059】
図4は、ポンプ部20の部分を示す底面図である。
図4は、外歯部33と内歯部34とが噛み合う部分を示している。
図4では、第1の線分Lr1と第2の線分Lr2とが、共に回転軸C1,C2が並ぶ方向(Y軸方向)と平行で、かつ、重なり合っている。
【0060】
図4に示すように、第2の距離L2が第1の距離L1以下であり、かつ、第4の距離L4が第3の距離L3よりも大きいことで、外歯部33の反駆動側(−Din側)において、外歯部33と内歯部34との隙間Gaの寸法L5が大きくなる。そのため、隙間Gaにポンプ装置1が送る流体が入り込みやすい。隙間Gaに入り込んだ流体は、次に噛み合う外歯部33及び内歯部34の表面を覆う。これにより、外歯部33と内歯部34とが流体を介して接触し、外歯部33と内歯部34との間のフリクショントルクを低減できる。したがって、本実施形態によれば、ポンプ装置1のトルク効率を向上できる。
【0061】
なお、隙間Gaの寸法L5とは、回転軸C1と回転軸C2とが並ぶ方向と直交し、かつ、中心軸Jと直交する方向(X軸方向)における、隙間Gaの寸法である。
【0062】
また、本実施形態によれば、外歯部33と内歯部34との隙間のうち、反駆動側の隙間Ga以外の隙間をほぼ一定の狭い間隔とすることで、隙間から漏れる流量を少なくできる。そのため、本実施形態によれば、ポンプ装置1の容積効率が低下することを抑制できる。
【0063】
以上により、本実施形態によれば、ポンプ装置1の容積効率が低下することを抑制しつつ、ポンプ装置1のトルク効率を向上できる。ここで、ポンプ装置1のポンプ全効率は、トルク効率と容積効率とを乗じた値である。したがって、本実施形態によれば、ポンプ全効率を向上できる構造を有するポンプ装置が得られる。
【0064】
また、本実施形態によれば、第1の距離L1と第2の距離L2とは、L2<L1を満たすため、隙間Gaの寸法L5をより大きくできる。これにより、隙間Gaに入り込む流体の量を大きくでき、外歯部33と内歯部34との間のフリクショントルクをより低減できる。したがって、本実施形態によれば、ポンプ装置1のトルク効率をより向上でき、その結果、ポンプ全効率をより向上できる。
【0065】
また、本実施形態によれば、第1の距離L1と第3の距離L3とは、L3>L1を満たすため、外歯部33と内歯部34とが噛み合う際に、外歯部33が内歯部34同士の間に入り込みやすい。これにより、外歯部33と内歯部34とが互いに干渉することを抑制できる。
【0066】
また、本実施形態によれば、アウターロータ32の回転軸C2は、インナーロータ31の回転軸C1と異なる。そのため、インナーロータ31とアウターロータ32との空間TSの大きさを駆動方向に沿って変化させることができる。これにより、インナーロータ31とアウターロータ32との空間TS内に流体を収容することで、吸入口46から吐出口47まで流体を送ることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、ポンプ室44を有するポンプハウジング40を備えている。そのため、ポンプ室44の壁部と外歯歯車部35と内歯歯車部36とによって、流体を送る空間TSを構成できる。
【0068】
なお、本実施形態においては、以下の構成を採用してもよい。
【0069】
本実施形態においては、第1の距離L1と第2の距離L2とは、同じであってもよい。
また、本実施形態においては、第1の距離L1と第3の距離L3とが同じであってもよい。
【0070】
また、本実施形態においては、第2の距離L2が第1の距離L1よりも小さく、かつ、第4の距離L4が第3の距離L3以上である構成を採用してもよい。すなわち、本実施形態においては、第1の距離L1と、第2の距離L2と、第3の距離L3と、第4の距離L4とが、L2<L1、及び、L4≧L3を満たす構成としてもよい。この構成においては、第3の距離L3と第4の距離L4とが同じであってもよい。
【0071】
この構成によれば、上述したL2≦L1、及び、L4>L3を満たす構成と同様に、隙間Gaの寸法L5を大きくできるため、ポンプ全効率を向上できる構造を有するポンプ装置が得られる。
【実施例】
【0072】
上記説明した実施形態の実施例1から実施例3と、比較例1,2とを対比して、本実施形態の効果について検証した。各実施例及び各比較例において、ポンプ装置によって送られる流体はATFとした。ATFの温度は、120℃とした。ポンプ室から吐出される流体の吐出圧力は、0.2MPaとした。ポンプ室から吐出される流量は、2L/minとした。
【0073】
実施例1から実施例3及び比較例1,2におけるポンプ部の構成は、第1の距離L1から第4の距離L4を除いて、
図2において示したポンプ部20の構成と同様とした。ポンプ部における第1の距離L1から第4の距離L4は、表1の通りとした。
【0074】
【表1】
【0075】
表1においては、隙間Gaの寸法L5についても記載している。第2の距離L2、第3の距離L3、第4の距離L4、及び隙間Gaの寸法L5は、第1の距離L1を1としたときの比として示している。
【0076】
実施例1のポンプ部は、L2<L1、及び、L4>L3を満たす。
実施例2のポンプ部は、L2=L1、及び、L4>L3を満たす。
実施例3のポンプ部は、L2<L1、及び、L4=L3を満たす。
【0077】
比較例1のポンプ部は、L2=L1、及び、L4=L3を満たす。
比較例2のポンプ部は、L2>L1、及び、L4>L3を満たす。
実施例1から実施例3及び比較例1,2のポンプ部は、L3>L1を満たす。
【0078】
実施例1から実施例3、及び比較例1,2について、それぞれポンプ室から吐出される吐出量、及び駆動部の駆動トルクを測定し、容積効率[%]、トルク効率[%]、及びポンプ全効率[%]を算出した。結果を上記の表1に示す。
【0079】
表1に示すように、実施例1から実施例3では、比較例1,2に対してポンプ全効率を向上できることが確かめられた。実施例1と、実施例2及び実施例3とを対比すると、実施例2及び実施例3に対して、実施例1のトルク効率及びポンプ全効率が大きいことが確かめられた。これにより、第1の距離L1から第4の距離L4が、L2<L1、及び、L4>L3を満たすことで、よりトルク効率及びポンプ全効率を向上できることが確かめられた。
【0080】
また、実施例1と実施例2と比較例2とは、第2の距離L2を除いて各距離の値が同じである。実施例1と実施例2とは、比較例2に対して、トルク効率及びポンプ効率が大きい。また、実施例1は、実施例2に対して、トルク効率及びポンプ効率がより大きい。実施例1においては、L2/L1は、0.915である。実施例2においては、L2/L1は、1である。比較例2においては、L2/L1は、1.097である。これにより、第1の距離L1と第2の距離L2とが、L2/L1≦0.92を満たすことで、トルク効率をより向上でき、ポンプ全効率をより向上できることが確かめられた。
【0081】
また、実施例2と比較例1とは、第4の距離L4が異なる点を除いて同様である。実施例2は、比較例1に対して、トルク効率及びポンプ全効率が大きい。実施例2においては、L4/L3は、約1.096である。比較例1においては、L4/L3は、1である。これにより、第3の距離L3と第4の距離L4とが、L4/L3≧1.09を満たすことで、トルク効率をより向上でき、ポンプ全効率をより向上できることが確かめられた。