特許第6581870号(P6581870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581870
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】畳およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   E04F15/02 102H
   E04F15/02 102G
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-194366(P2015-194366)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-66769(P2017-66769A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 一紘
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一輝
(72)【発明者】
【氏名】川島 直通
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−018427(JP,U)
【文献】 特開2012−184548(JP,A)
【文献】 特開2010−261184(JP,A)
【文献】 実開昭58−159344(JP,U)
【文献】 特開2010−143126(JP,A)
【文献】 特開平10−219977(JP,A)
【文献】 実開昭54−075022(JP,U)
【文献】 特開2012−087536(JP,A)
【文献】 特開2010−174608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状の畳床と、該畳床の表面側に配置された畳表と、該畳床と該畳表との間に配置されかつ該畳床の表面に接着されている緩衝材とを備えた畳であって、
矩形状の畳本体と、
前記畳本体の周囲側部に設けられ、前記畳床の裏面を前記緩衝材まで該畳床の側辺と平行に延びるように凹陥状に切り欠いた第1溝部の底部を折り目として、該第1溝部の溝壁面同士が当接するように該畳本体側に折り曲げられている第1折曲げ部と、を有し、
前記第1折曲げ部が前記畳本体側に折り曲げられて、前記第1溝部の溝壁面同士が当接して保持されている状態で、畳床の折り曲げられた外表面ないし周囲端面に亘って前記緩衝材が該畳床と前記畳表との間に配置されており、
前記畳の周囲端面では、前記畳床に対する前記緩衝材および前記畳表の貼り付け状態が平坦状になっている、畳。
【請求項2】
請求項1に記載の畳において、
前記第1溝部の底部は、互いに平行に延びる断面V字状の複数条の底部からなり、
前記第1溝部の複数条の底部により前記第1折曲げ部が前記畳本体側に折り曲げられた状態で該第1折曲げ部と該畳本体との間の隅角部分に面取り部が形成されている、畳。
【請求項3】
請求項1または2に記載の畳において、
前記緩衝材と前記畳表との間に不織布層が設けられ、
前記第1溝部は前記不織布層まで切り欠かれている、畳。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の畳において、
前記第1折曲げ部の周囲側部に隣接して設けられ、前記畳床の裏面を前記緩衝材まで該畳床の側辺と平行に延びるように凹陥状に切り欠いた第2溝部の底部を折り目として、該第2溝部の溝壁面同士が当接するように該第1折曲げ部側に折り曲げられている第2折曲げ部をさらに有し、
前記第2折曲げ部が該第1折曲げ部側に折り曲げられて、前記第2溝部の溝壁面同士が当接しかつ前記畳本体の畳床裏側と該第2折曲げ部の畳床裏側とが当接して保持されている状態で、畳床の折り曲げられた外表面、周囲端面および内表面に亘って前記緩衝材が該畳床と前記畳表との間に配置されている、畳。
【請求項5】
請求項4に記載の畳において、
畳床裏面の周囲側部には、畳床の厚さが他の部分よりも薄くなるように畳床の裏面を段差状に切り欠いた段差部が形成されていて該段差部の裏面に前記第1および第2溝部が設けられ、
前記第2折曲げ部は、前記第1折曲げ部側に折り曲げられた状態で前記段差部の一部に収容されている、畳。
【請求項6】
請求項4または5に記載の畳において、
前記緩衝材と前記畳表との間に不織布層が設けられ、
前記第2溝部は前記不織布層まで切り欠かれている、畳。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の畳の製造方法であって、
前記畳本体の周囲側部に、前記畳床の裏面を前記緩衝材まで該畳床の側辺と平行に延びるように凹陥状に切り欠いて第1溝部を形成するステップと、
前記第1溝部の底部を折り目として該第1溝部の溝壁面同士が当接するように該第1折曲げ部を該畳本体側に折り曲げるステップと、
前記第1溝部の溝壁部同士の当接状態を保持するステップと、を備える、畳の製造方法。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の畳の製造方法において、
前記第1折曲げ部の周囲側部に隣接する位置に、前記畳床の裏面を前記緩衝材まで該畳床の側辺と平行に延びるように凹陥状に切り欠いて第2溝部を形成するステップと、
前記第2溝部の底部を折り目として該第2溝部の溝壁面同士が当接するように該第2折曲げ部を該第1折曲げ部側に折り曲げるステップと、
前記第2溝部の溝壁部同士の当接状態を保持しかつ前記畳本体の畳床裏側と該第2折曲げ部の畳床裏側との当接状態を保持するステップと、を備える、畳の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝統的な畳としては、畳床と、この畳床上に配置された畳表と、畳表の外縁に縫い付けられた畳縁と、を備えるものが知られている。これに対し、近年では、フローリングやカーペット等の床材上に簡単に敷設することが可能な置き畳が注目されている。この置き畳は、縁取りのない(すなわち上記の畳縁を備えない)シンプルな縁なし畳として構成されており、例えば特許文献1および2に示されるような畳構造が知られている。
【0003】
特許文献1には、畳床の表面を畳表本体で覆い、畳床の側面から裏面周辺部を畳表からはみ出した折り返し片で覆うとともに畳床の裏面側にて折り返し片の上から裏シートで覆われた縁なし畳が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、畳床より大きく接着されたい草および弾性体としての炭酸カルシウム含有合成樹脂発泡体からなる畳表層材を畳床側面から底面に巻き込むように接着した畳が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−167096号公報
【特許文献2】特開2001−317189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の畳では、畳床の表面ないし周囲側面に畳表が貼り付けられているのみの構成であることから、畳の周囲側面同士の突き合わせ箇所に生じうる隙間を調整するための構造上の工夫がなされていなかった。このため、特許文献1の畳では、畳の側面同士の突き合わせ箇所に隙間が生じやすく、畳同士を隙間なく綺麗に床材上に敷き詰めることが困難となる。
【0007】
一方、特許文献2の畳では、畳同士の隙間を調整するために、弾性体である炭酸カルシウム含有樹脂発泡体が畳床の周囲側面に配置されている。しかしながら、この畳の構成は、畳床の周囲側面に対して炭酸カルシウム含有樹脂発泡体を含む畳表層材を単に巻き込んでいるのみの構成であるため、特に畳の周囲側面では畳床に対する畳表層材の貼り付け状態にムラが生じやすい。すなわち、畳の周囲側面全体が平坦状になりにくい。その結果、特許文献2の畳でも、畳の側面同士の突き合わせ箇所に依然として隙間が生じやすく、畳同士を隙間なく綺麗に床材上に敷き詰めることが困難であった。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、畳を構成する層構造および畳床の形状に改良を加えることにより、畳同士を隙間なく綺麗に敷き詰めることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、畳の周囲側部を折り曲げた状態で緩衝材が畳床の外表面ないし周囲端面に亘って畳床と畳表との間に配置されるようにした。
【0010】
具体的には、第1の形態は、矩形板状の畳床と、畳床の表面側に配置された畳表と、畳床と畳表との間に配置されかつ畳床の表面に接着されている緩衝材とを備えた畳であって、矩形状の畳本体と、畳本体の周囲側部に設けられ、畳床の裏面を緩衝材まで畳床の側辺と平行に延びるように凹陥状に切り欠いた第1溝部の底部を折り目として、第1溝部の溝壁面同士が当接するように畳本体側に折り曲げられている第1折曲げ部と、を有し、第1折曲げ部が畳本体側に折り曲げられて、第1溝部の溝壁面同士が当接して保持されている状態で、畳床の折り曲げられた外表面ないし周囲端面に亘って緩衝材が畳床と畳表との間に配置されている。そして、畳の周囲端面では、畳床に対する緩衝材および畳表の貼り付け状態が平坦状になっていることを特徴とする。
【0011】
この第1の形態では、畳床と畳表との間に配置された緩衝材を備える第1折曲げ部が畳本体側に折り曲げられていることにより、特に畳の周囲端面において、緩衝材および畳表がムラなく平坦状に貼り付けられた状態となっている。そして、部屋の床材上に複数の畳を敷き詰めた状態では、畳の周囲端面同士が第1折曲げ部において互いに突き合わされるとともに、畳床の周囲端面に配置された第1折曲げ部の緩衝材同士が互いに押し付け合って、畳同士の隙間が生じないように畳の納まり具合を調整することが可能となる。その結果、伝統的な畳に備えられているような畳縁を特に設けずとも、部屋の床材上に複数の畳を隙間なく綺麗に敷き詰めることができる。
【0012】
第2の形態は、第1の形態において、第1溝部の底部は、互いに平行に延びる断面V字状の複数条の底部からなり、第1溝部の複数条の底部により第1折曲げ部が畳本体側に折り曲げられた状態で第1折曲げ部と畳本体との間の隅角部分に面取り部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
この第2の形態では、第1折曲げ部と畳本体との間に形成されている面取り部により、部屋の床材上に複数の畳を敷き詰めたときに、畳の側部端面の隅角部に人の足がつまずいて転倒するようなことを未然に防ぐことができる。
【0014】
第3の形態は、第1または第2の形態において、緩衝材と畳表との間に不織布層が設けられ、第1溝部は不織布層まで切り欠かれていることを特徴とする。
【0015】
この第3の形態では、不織布層を介して緩衝材上に畳表を容易に貼り付けることができるとともに、第1折曲げ部を畳本体側に折り曲げる際、緩衝材および不織布層がその折り曲げの妨げにならず、緩衝材および畳表の接着状態を保ちながら第1折曲げ部を折り曲げることができる。
【0016】
第4の形態は、第1〜第3の形態のいずれか1つにおいて、第1折曲げ部の周囲側部に隣接して設けられ、畳床の裏面を緩衝材まで畳床の側辺と平行に延びるように凹陥状に切り欠いた第2溝部の底部を折り目として、第2溝部の溝壁面同士が当接するように第1折曲げ部側に折り曲げられている第2折曲げ部をさらに有し、第2折曲げ部が第1折曲げ部側に折り曲げられて、第2溝部の溝壁面同士が当接しかつ畳本体の畳床裏側と第2折曲げ部の畳床裏側とが当接して保持されている状態で、畳床の折り曲げられた外表面、周囲端面および内表面に亘って緩衝材が畳床と畳表との間に配置されていることを特徴とする。
【0017】
この第4の形態では、第1折曲げ部側に対し折り曲げられた第2折曲げ部により、折り曲げられた畳床の外表面、周囲端面および内表面に亘って、緩衝材が畳床と畳表との間に配置された状態となる。このため、特に畳床の周囲端面に対する緩衝材および畳表の貼り付け状態がより一層保たれることになり、その結果、第1の形態と同様の効果を得ることができる。また、第2溝部の溝壁面同士が当接しかつ畳本体の畳床裏側と第2折曲げ部の畳床裏側とが当接して保持されているため、畳の周囲側部の曲げ強さが向上するともに、折り曲げられた畳床の内表面に配置された緩衝材によって、部屋の床材上に畳を敷き詰めたときの鉛直方向に対するクッション性を向上させることができる。
【0018】
第5の形態は、第4の形態において、畳床裏面の周囲側部には、畳床の厚さが他の部分よりも薄くなるように畳床の裏面を段差状に切り欠いた段差部が形成されていて段差部の裏面に第1および第2溝部が設けられ、第2折曲げ部は、第1折曲げ部側に折り曲げられた状態で段差部の一部に収容されていることを特徴とする。
【0019】
この第5の形態では、第2折曲げ部が第1折曲げ部側に折り曲げられた状態で段差部の一部に収容されていることから、実際の使用状態において、畳の全体的な厚みを抑えて、部屋の床材上に畳をコンパクトに敷き詰めることができる。
【0020】
第6の形態は、第4または第5の形態において、緩衝材と畳表との間に不織布層が設けられ、第2溝部は不織布層まで切り欠かれていることを特徴とする。
【0021】
この第6の形態では、不織布層を介して緩衝材上に畳表を容易に貼り付けることができるとともに、第2折曲げ部を畳本体側に折り曲げる際、不織布層がその折り曲げの妨げにならず、緩衝材および畳表の接着状態を保ちながら第2折曲げ部を折り曲げることができる。
【0022】
第7の形態は、第1〜第6のいずれか1つの畳の製造方法であって、畳本体の周囲側部に、畳床の裏面を緩衝材まで畳床の側辺と平行に延びるように凹陥状に切り欠いて第1溝部を形成するステップと、第1溝部の底部を折り目として第1溝部の溝壁面同士が当接するように第1折曲げ部を畳本体側に折り曲げるステップと、第1溝部の溝壁部同士の当接状態を保持するステップと、を備えることを特徴とする。
【0023】
第7の形態では、第1の形態と同様の効果を得ることができる。また、第1の形態に係る畳を容易に製造することができる。
【0024】
第8の形態は、第4〜第6の形態のいずれか1つの畳の製造方法において、第1折曲げ部の周囲側部に隣接する位置に、畳床の裏面を緩衝材まで畳床の側辺と平行に延びるように凹陥状に切り欠いて第2溝部を形成するステップと、第2溝部の底部を折り目として第2溝部の溝壁面同士が当接するように第2折曲げ部を第1折曲げ部側に折り曲げるステップと、第2溝部の溝壁部同士の当接状態を保持しかつ畳本体の畳床裏側と第2折曲げ部の畳床裏側との当接状態を保持するステップと、を備えることを特徴とする。
【0025】
第8の形態では、第4〜第6のいずれか1つの形態と同様の効果を得ることができる。また、第4〜第6のいずれか1つの形態に係る畳を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によると、畳床の周囲端面に配置された緩衝材同士が互いに押し付け合って、畳同士の隙間が生じないように畳の納まり具合を調整することが可能となり、部屋の床材上に複数の畳を隙間なく綺麗に敷き詰めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る畳の側部を示す断面図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る畳の背面図である。
図3図3は、第1折曲げ部が畳本体側に折り曲げられる前の状態における畳材の側部を示す断面図である。
図4図4は、第1折曲げ部が畳本体側に折り曲げられる前の状態における畳材の背面図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る畳の図1相当図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る畳の図2相当図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る畳材の図3相当図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る畳材の図4相当図である。
図9図9は、調整板材を空間Sに配置した状態における畳の図5相当図である。
図10図10は、本発明の第3実施形態に係る畳の図5相当図である。
図11図11は、本発明の第3実施形態に係る畳材の図7相当図である。
図12図12は、その他の実施形態に係る畳の図1相当図である。
図13図13は、その他の実施形態に係る畳材の図3相当図である。
図14図14は、その他の実施形態に係る畳の図5相当図である。
図15図15は、その他の実施形態に係る畳材の図7相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施形態]
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る畳1を示し、この畳1は、後述するように図3および図4に示す畳材1Aから形成されるものである。畳1は、木質繊維板からなる矩形板状の畳床2を備えている。この畳床2は、畳1の芯材としての役割を果たすものである。この畳床2をなす木質繊維板の具体例としては、クッション性、断熱性、および防音性の観点から、厚さ約3mmのインシュレーションボード(すなわち軟質繊維板)が適している。なお、畳床2の大きさは、部屋の床面積に応じて適宜の大きさに形成されていればよい。
【0030】
図3および図4に示すように、畳1が形成される前の状態の畳材1Aにおいて、畳床2の表面2a側には畳表5が配置されている。この畳表5は、天然のイ草を編織したもの、または人工の筒状抄繊糸を緯糸にして編織して得た可撓性を有するシートが適している。また、畳床2と畳表5との間には、緩衝材3が配置されている。この緩衝材3は、接着剤により畳床2の表面2aに貼り付けられている。この緩衝材3としては、例えば樹脂製の不織布や発泡体、木質の繊維板、鉱物質の繊維板、ダンボール等が用いられる。もっとも好適には、クッション性と復元性に優れるウレタン性の発泡板材が用いられる。さらに、緩衝材3と畳表5との間には、不織布4(不織布層)が設けられている。この不織布4は、例えば緩衝材3と畳表5とを接着するための役割を有している。
【0031】
ここで、畳材1Aの状態において、緩衝材3、不織布4、および畳表5の各々は、畳床2の大きさと同じ大きさにそれぞれ形成されていればよい。また、畳床2上に積層された緩衝材3、不織布4、および畳表5の総厚みは、約4mm程度に設定されている。すなわち、畳材1Aの状態では、全体的な厚みが約7mmになるように設定されている。
【0032】
図3および図4に示すように、畳材1Aは、矩形状の畳本体6を有している。そして、畳本体6を構成する畳床2の表面2a上には、上述した緩衝材3、不織布4、および畳表5が積層されている。
【0033】
また、図3および図4に示すように、畳材1Aにおける畳本体6裏面の周囲側部には、第1溝部7が畳床2の側辺2cと平行に延びるように形成されている。この第1溝部7は、畳床2の裏面2bを凹陥状に切り欠いた形状になっている。より具体的には、第1溝部7は、畳床2の裏面2bから畳表5に向かって両溝壁面7a,7aの間隔が狭まるように切り欠かれた断面略V字状に形成されている。また、この第1溝部7は、緩衝材3および不織布4まで切り欠かれ、その底部7bは一条の折り目に形成されている。
【0034】
さらに、畳本体6における4辺全ての周囲側部には、第1溝部7の底部7bを折り目として第1溝部7の溝壁面7a,7a同士が当接するように畳本体6側に折り曲げられている第1折曲げ部8,8,…が設けられている。図3に示すように、この第1折曲げ部8は、断面略三角形状になるように形成されている。また、第1折曲げ部8を構成する畳床2の表面2a上には、畳本体6と同様、緩衝材3、不織布4、および畳表5が積層されている。
【0035】
図1および図2に示すように、畳1は、畳材1Aの状態における第1折曲げ部8が畳本体6側に折り曲げられて第1溝部7の溝壁面7a,7a同士が当接して保持されている。具体的には、第1溝部7の溝壁面7a,7a同士は、接着剤により互いに当接した状態で固定されている。
【0036】
このように、第1折曲げ部8が畳本体6側に折り曲げられた畳1では、畳床2の折り曲げられた外表面(すなわち畳本体6の畳床表面2a)ないし周囲端面(すなわち第1折曲げ部8の畳床表面2a)に亘って、緩衝材3が畳床2と畳表5との間に配置されている。そして、第1折曲げ部8が畳本体6側に折り曲げられた畳1の周囲端面では、畳床2に対する緩衝材3および畳表5の貼り付け状態がムラなく平坦状になっている。また、この畳1は、畳本体6の畳床裏面2bと第1折曲げ部8の裏面(畳材1Aの状態における畳床2の側辺2c)とが互いに面一となるように構成されている。
【0037】
次に、この実施形態に係る畳1の製造方法を説明する。
【0038】
まず、第1溝部7を形成する前の状態における畳材1Aを準備する。具体的には、接着剤を用いて、適宜の大きさに形成された畳床2の表面2a上に緩衝材3を貼り付ける。緩衝材3を貼り付けた後、不織布4を緩衝材3上に接着してから、その不織布4の上に畳表5を貼り付ける。
【0039】
この後、所定の切削機械(図示せず)を用いて、畳床2の4辺全ての周囲側部に第1溝部7を切削により形成する。具体的には、畳床2の側部における所定の位置に切削機械の切削刃を設置し、畳床2の側辺2cと平行に延びるように畳床2の裏面2bを凹陥状(すなわち畳床2の裏面2bから畳表5に向かって両溝壁面7a,7aの間隔が狭まるような断面略V字状)に切り欠いていく。このとき、緩衝材3および不織布4まで切り欠くことによって、第1溝部7の底部7bに畳床2の側辺2cと平行に延びる一条の折り目を形成する。このように、畳床2の4辺全ての周囲側部に第1溝部7,7,…を形成することによって、図3に示すように、畳本体6および第1折曲げ部8,8,…がそれぞれ形成される。これにより、畳1を形成する前の状態における畳材1Aの準備が完了する。
【0040】
畳材1Aの準備が完了した後、畳材1Aから部屋の床材上に敷き詰められる形態の畳1を作製する。具体的には、畳材1Aにおける第1溝部7の底部7bを折り目として第1溝部7の溝壁面7a,7a同士が当接するように第1折曲げ部8を畳本体6側に折り曲げる。すなわち、この実施形態では、畳材1Aの周囲側部を畳本体6側に1回のみ折り曲げる。これによって、畳床2の折り曲げられた外表面(すなわち畳本体6の畳床表面2a)ないし周囲端面(すなわち第1折曲げ部8の畳床表面2a)に亘って、緩衝材3が畳床2と畳表5との間に配置された状態となる。
【0041】
最後に、接着剤により第1溝部7の溝壁面7a,7a同士を固定して、第1溝部7の溝壁面7a,7a同士の当接状態を保持する。これにより、畳1の作製が完了する。
【0042】
以上のように、この実施形態に係る畳1では、畳床2と畳表5との間に配置された緩衝材3を備える第1折曲げ部8が畳本体6側に折り曲げられていることにより、特に畳1の周囲端面(すなわち第1折曲げ部8の畳床表面2a)において、緩衝材3および畳表5がムラなく平坦状に貼り付けられた状態となっている。そして、部屋の床材上に複数の畳1,1,…を敷き詰めた状態では、畳1の周囲端面同士が第1折曲げ部8において互いに突き合わされるとともに、畳床2の周囲端面に配置された第1折曲げ部8,8の緩衝材3,3同士が互いに押し付け合って、畳1,1同士の隙間が生じないように畳1の納まり具合を調整することが可能となる。その結果、伝統的な畳に備えられているような畳縁を設けずとも意匠的にシンプルな縁なし畳として、部屋の床材上に複数の畳1,1,…を隙間なく綺麗に敷き詰めることができる。
【0043】
また、この実施形態に係る畳1では、緩衝材3と畳表5との間に緩衝材3と畳表5と接着するための不織布4(不織布層)が設けられ、第1溝部7が不織布4まで切り欠かれていることから、不織布4を介して緩衝材3上に畳表5を容易に貼り付けることができるとともに、第1折曲げ部8を畳本体6側に折り曲げる際、緩衝材3および不織布4がその折り曲げの妨げにならず、緩衝材3および畳表5の接着状態を保ちながら第1折曲げ部8を折り曲げることができる。
【0044】
[第2実施形態]
図5図9は、本発明の第2実施形態に係る畳1を示す。この実施形態は、第1の実施形態における第1折曲げ部8の周囲側部に第2折曲げ部10を設けたものである。なお、この実施形態に係る畳1の他の構成は、第1実施形態に係る畳1の構成と同様である。このため、以下の説明では、図1図4と同じ部分について同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図7および図8に示すように、畳材1Aにおける第1折曲げ部8裏面の周囲側部には、第2溝部9が畳床2の側辺2cと平行に延びるように形成されている。この第2溝部9は、畳床2の裏面2bを凹陥状に切り欠いた形状になっている。なお、第2溝部9の具体的な構成および効果は、第1溝部7と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0046】
また、第1折曲げ部8に隣接する4辺全ての周囲側部には、第2溝部9の底部9bを折り目として第2溝部9の溝壁面9a,9a同士が当接するように第1折曲げ部8側に折り曲げられる第2折曲げ部10,10,…が設けられている。この第2折曲げ部10を構成する畳床2の表面2a上には、第1折曲げ部8と同様、緩衝材3、不織布4、および畳表5が積層されている。
【0047】
図5および図6に示すように、第1折曲げ部8は、畳本体6側に折り曲げられているとともに、第2折曲げ部10は、第1折曲げ部8側に折り曲げられて第2溝部9の溝壁面9a,9a同士が当接して保持されている。ここで、第2溝部9の溝壁面9a,9a同士は、接着剤によってその当接状態が固定されている。さらに、第1および第2折曲げ部8,10が折り曲げられた状態をより強固に保持するために、第2折曲げ部10の畳床裏面2bは、接着剤により畳本体6の畳床裏面2bに固定されている。
【0048】
このように、第1および第2折曲げ部8,10が折り曲げられた畳1では、畳床2の折り曲げられた外表面(すなわち畳本体6の畳床表面2a)、周囲端面(すなわち第1折曲げ部8の畳床表面2aおよび)および内表面(すなわち第2折曲げ部10の畳床表面2a)に亘って、緩衝材3が畳床2と畳表5との間に配置されている。そして、第1実施形態と同様、第1折曲げ部8が畳本体6側に折り曲げられた畳1の周囲端面では、畳床2に対する緩衝材3および畳表5の貼り付け状態がムラなく平坦状になっている。
【0049】
次に、この実施形態に係る畳1の製造方法を説明する。
【0050】
第1溝部7を形成するまでの工程は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
第1溝部7を形成した後、所定の切削機械(図示せず)を用いて、畳床2の4辺全ての周囲側部に第2溝部9,9,…を切削により形成する。具体的には、第1折曲げ部8に隣接する所定の位置に切削機械の切削刃を設置し、畳床2の側辺2cと平行に延びるように畳床2の裏面2bを凹陥状(すなわち畳床2の裏面2bから畳表5に向かって両溝壁面9a,9aの間隔が狭まるような断面略V字状)に切り欠いていく。この第2溝部9についても、第1溝部7と同様、緩衝材3および不織布4まで切り欠き、第2溝部9の底部9bに畳床2の側辺2cと平行に延びる一条の折り目を形成する。このように、第2溝部9,9,…を形成することにより、図8に示すように、第1折曲げ部8に隣接する4辺全ての周囲側部に第2折曲げ部10,10,…が形成される。これにより、畳1を形成する前の状態における畳材1Aの準備が完了する。
【0052】
畳材1Aの準備が完了した後、畳材1Aから部屋の床材上に敷き詰められる形態の畳1を作製する。具体的には、まず第1溝部7の底部7bを折り目として第1溝部7の溝壁面7a,7a同士が当接するように第1折曲げ部8を畳本体6側に折り曲げる。次に、第2溝部9の底部9bを折り目として第2溝部9の溝壁面9a,9a同士が当接するように第2折曲げ部10を第1折曲げ部8側に折り曲げる。すなわち、この実施形態では、畳材1Aの周囲側部を畳本体6側に2回折り曲げる。これによって、畳床2の折り曲げられた外表面、周囲端面および内表面に亘って、緩衝材3が畳床2と畳表5との間に配置された状態となる。
【0053】
第1および第2折曲げ部8,10が折り曲げられた状態で、接着剤により、第1溝部7の溝壁面7a,7a同士および第2溝部9の溝壁面9a,9a同士をそれぞれ固定しかつ第2折曲げ部10の畳床2の裏面2bを畳本体6の畳床2の裏面2bに固定する。これにより、畳1の作製が完了する。
【0054】
以上のように、この実施形態に係る畳1では、第2折曲げ部10を第1折曲げ部8側に折り曲げることにより、畳床2の折り曲げられた外表面、周囲端面および内表面に亘って、緩衝材3が畳床2と畳表5との間に配置された状態となる。このため、特に畳床2の周囲端面に対する緩衝材3および畳表5の貼り付け状態がより一層保たれることになり、その結果、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2溝部9の溝壁面9a,9a同士が当接しかつ畳本体6の畳床裏側2bと第2折曲げ部10の畳床裏側2bとが当接して保持されているため、畳1の周囲側部の曲げ強さが向上するともに、折り曲げられた畳床2の内表面(すなわち第2折曲げ部10の畳床表面2a)に配置された緩衝材3によって、部屋の床材上に畳1を敷き詰めたときの鉛直方向に対するクッション性を向上させることができる。
【0055】
なお、この実施形態に係る畳1において、第1および第2折曲げ部8,10をそれぞれ折り曲げた状態では、畳本体6の裏面2bと第2折曲げ部10の表面5aとが互いに面一とならず、図9に示すように、部屋の床材上にこの畳を敷き詰めると必然的に空間Sが生じてしまう。この空間Sを埋めるため、例えば図9の仮想線により示した調整板材11を空間Sに別途配置すればよい。
【0056】
[第3実施形態]
図10および図11は、本発明の第3実施形態に係る畳1を示す。この実施形態は、第2の実施形態において、畳床裏面2bの周囲側部に段差部12を設けたものである。なお、この実施形態に係る畳1の他の構成は、第2実施形態に係る畳1の構成と同様である。このため、この実施形態の説明では、図5図9と同じ部分について同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
図11に示すように、畳材1Aの状態において、畳床2の裏面2bの周囲側部には、畳床2の厚さが他の部分よりも薄くなるように畳床2の裏面2bを段差状に切り欠いた段差部12が形成されている。また、段差部12の裏面には、第1および第2溝部7,9が設けられている。そして、図10に示すように、第2折曲げ部10は、第1折曲げ部8側に折り曲げられた状態で段差部12の一部に収容されている。より具体的には、この実施形態に係る畳1は、畳材1Aの第1および第2折曲げ部8,10をそれぞれ折り曲げた状態において、畳本体6の裏面2bと第2折曲げ部10の表面5aとが互いに面一となるように構成されている。
【0058】
以上のように、この実施形態に係る畳1では、第2折曲げ部10が第1折曲げ部8側に折り曲げられた状態で段差部12の一部に収容されていることから、実際の使用状態において、畳1の全体的な厚みを抑えて、部屋の床材上に畳1をコンパクトに敷き詰めることができる。
【0059】
また、この実施形態に係る畳1では、第1および第2折曲げ部8,10をそれぞれ折り曲げた状態において、畳本体6の裏面2bと第2折曲げ部10の表面5aとが互いに面一となっていることから、第2実施形態のように、別途の調整板材11を用いることなく、実際の使用状態における畳1を部屋の床材上にそのまま敷き詰めることができる。
【0060】
[その他の実施形態]
上記の各実施形態に係る畳1では、第1溝部7の形状として、断面V字状の一条の底部7bからなる形態としたが、この形態に限らない。例えば、図13および図15に示すように、第1溝部7の底部7bは、互いに平行に延びる断面V字状の複数条(図13および図15では二条)の底部7b,7bからなる形態にしてもよい。このような形態にすれば、図12および図14に示すように、第1溝部7の複数条の底部7b,7bにより第1折曲げ部8が畳本体6側に折り曲げられた状態で第1折曲げ部8と畳本体6との間における隅角部分に傾斜状の面取り部13が形成されることになる。この面取り部13により、部屋の床材上に複数の畳1,1,…を敷き詰めたときに、畳1の側部端面2cの隅角部に人の足がつまずいて転倒するようなことを未然に防ぐことができる。
【0061】
上記の各実施形態に係る畳1では、不織布4を備える形態としたが、この形態に限られない。すなわち、不織布4を備えない畳であってもよい。例えば、接着剤により、緩衝材3の表面に畳表5がしっかり接着されているような形態であればよい。
【0062】
上記の各実施形態では、畳材1Aの状態において、畳本体6における4辺全ての周囲側部に第1溝部7,7,…および第1折曲げ部8,8,…を設ける形態としたが、この形態に限られない。例えば、畳本体6における2辺(例えば図4に示す畳本体6の左右両側)の周囲側部にのみ第1溝部7,7および第1折曲げ部8,8を設ける形態としてもよい。また、第2溝部9および第2折曲げ部10についても、畳本体6における2辺(例えば図8に示す畳本体6の左右両側)の周囲側部にのみ設ける形態としてもよい。
【0063】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、フローリングやカーペット等の床材上に敷設することが可能な置き畳として
産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:畳
2:畳床
3:緩衝材
4:不織布(不織布層)
5:畳表
6:畳本体
7:第1溝部
8:第1折曲げ部
9:第2溝部
10:第2折曲げ部
7a,9a:溝壁面
7b,9b:底部(折り目)
12:段差部
13:面取り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15