(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部は、棒状であり、前記立ち上がり部は、前記支持部の一端から立ち上がり、前記支持部には、垂直翼および水平翼が設けられている、請求項3に記載の自律型無人潜水機の充電システム。
前記充電ステーションには、前記紐状体に光を照らすための投光部が設けられており、前記自律型無人潜水機は、撮像装置と、推進装置と、前記撮像装置により撮像されたデータに基づいて前記推進装置を制御する制御装置と、を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の自律型無人潜水機の充電システム。
前記充電ステーションには、音響信号を発信するトランスポンダが設けられており、前記自律型無人潜水機には、前記トランスポンダからの音響信号に基づいて、前記トランスポンダまでの距離を計測する音響測位装置が設けられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自律型無人潜水機の充電システム。
前記自律型無人潜水機および前記充電ステーションのそれぞれには、互いに光無線通信する光無線通信装置が設けられている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自律型無人潜水機の充電システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような水中基地では、基台を海底に据え付けるのに大がかりな工事が必要となる。一方、充電用の水中基地を設置しない場合には、従来通り、AUVを充電のために母船に揚収しなければならず、多大な労力を要する。
【0006】
そこで、本発明は、水中に充電のための基地を設置することなく、水中で充電することを可能にするAUVの充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るAUVの充電システムは、洋上に浮かんだ洋上浮体と、前記洋上浮体から紐状体により水中に吊下げられた、水の流れを受けて前記水の流れ方向において前記洋上浮体よりも下流側に位置する、前記紐状体から離れた位置に非接触給電部を有する充電ステーションと、前記紐状体の回りに回転可能となるように前記充電ステーションに結合される、前記非接触給電部からの給電を受ける非接触受電部を有するAUVと、を備え、前記充電ステーションは、前記水の流れによって、前記非接触給電部が前記水の流れ方向において前記紐状体の下流側に位置する姿勢となるように構成されており、前記AUVは、前記充電ステーションに結合されたときに、前記非接触受電部が前記水の流れによって前記水の流れ方向において前記紐状体の下流側に位置する姿勢となるように構成されている。
【0008】
上記の構成によれば、洋上に浮かんだ洋上浮体から吊り下げた充電ステーションにAUVを結合させて充電を行う。このため、水中に充電のための基地を設置する必要がない。また、水の流れを利用して充電ステーションとAUVとの向きを合致させることができる。このため、AUVの非接触受電部と洋上浮体に吊下げられた充電ステーションの非接触給電部とを容易に位置合わせすることができ、水中でのAUVの充電を実現することができる。
【0009】
上記のAUVの充電システムにおいて、前記充電ステーションは、前記紐状体に固定された被捕捉部と、前記被捕捉部に連結されたステーション本体と、を有し、前記AUVは、潜水機本体と、前記潜水機本体の前端部に設けられた、前記被捕捉部に対して前記紐状体の回りに回転可能となるように前記被捕捉部を捕捉する捕捉機構と、を有してもよい。この構成によれば、捕捉機構が被捕捉部に対して紐状体の回りに回転可能となるように被捕捉部を捕捉するため、捕捉機構が被捕捉部を捕捉した状態で、被捕捉部を基準に非接触給電部と非接触受電部とを移動させて、それらを互いに給電可能な状態に位置合わせすることができる。
【0010】
上記のAUVの充電システムにおいて、前記ステーション本体は、前記非接触給電部を支持する支持部と、前記支持部から前記非接触給電部を越えて立ち上がり、その先端で前記被捕捉部と連結される立ち上がり部と、を有し、前記潜水機本体の下部には、前記非接触受電部が設けられてもよい。この構成によれば、ステーション本体の形状を、潜水機本体の外形に沿ったシンプルな形状に設計できる。
【0011】
上記のAUVの充電システムにおいて、前記支持部は、棒状であり、前記立ち上がり部は、前記支持部の一端から立ち上がり、前記支持部には、垂直翼および水平翼が設けられていてもよい。この構成によれば、支持部を水の抵抗が小さい形状としながら、垂直翼により、水の流れを受けた充電ステーションの水平方向の姿勢を規定することができ、また、水平翼により、水の流れを受けた充電ステーションの垂直方向の姿勢を規定することができる。
【0012】
上記のAUVの充電システムにおいて、前記被捕捉部は、円盤状であって、その上面の中心で前記紐状体が接続されており、前記捕捉機構は、前方および下方に開口した、前記紐状体が前方から挿入され、前記被捕捉部が下方から挿入される嵌合部を有していてもよい。この構成によれば、前方側開口から嵌合部に挿入された紐状体に沿って、AUVを充電ステーションへと下降させることにより、AUVを充電ステーションに結合することができる。また、AUVを上昇させることによりAUVを充電ステーションから分離することができる。このため、AUVと充電ステーションとの結合および分離がより容易に実施できる。
【0013】
上記のAUVの充電システムにおいて、前記立ち上がり部は、前記紐状体に対して垂直な方向に延びる軸を中心に前記被捕捉部に揺動可能に連結されており、前記捕捉機構は、前記自律型無人潜水機の左右方向に延びる軸を中心に前記嵌合部を揺動可能に保持する、前記潜水機本体の前端部に固定された保持部を有していてもよい。この構成によれば、ステーション本体が被捕捉部に対して揺動可能であるため、紐状体から牽引されて被捕捉部の向きが変更しても、水の流れ方向に対するステーション本体の姿勢を安定的に維持することができ、また、嵌合部が潜水機本体に固定された保持部に対して揺動可能であるため、紐状体から牽引されて被捕捉部の向きが変更しても、水の流れ方向に対する潜水機本体の姿勢を安定的に維持することができる。
【0014】
上記のAUVの充電システムにおいて、前記充電ステーションには、前記紐状体に光を照らすための投光部が設けられており、前記AUVは、撮像装置と、推進装置と、前記撮像装置により撮像されたデータに基づいて前記推進装置を制御する制御装置と、を有していてもよい。この構成によれば、AUVを充電ステーションに精度よく近づけることができる。
【0015】
上記のAUVの充電システムにおいて、前記充電ステーションには、音響信号を発信するトランスポンダが設けられており、前記AUVには、前記トランスポンダからの音響信号に基づいて、前記トランスポンダまでの距離を計測する音響測位装置が設けられていてもよい。この構成によれば、音響測位装置がトランスポンダから送られてきた音響信号に基づいて充電ステーションに対するAUVの位置を測位できるため、中長距離離れた位置からAUVを充電ステーションへと誘導することができる。
【0016】
上記のAUVの充電システムにおいて、前記AUVおよび前記充電ステーションのそれぞれには、互いに光無線通信する光無線通信装置が設けられていてもよい。この構成によれば、AUVが取得したデータをAUVから光無線通信装置を介して充電ステーションに送信することができ、また、AUVの制御プログラムを充電ステーションから光無線通信装置を介してAUVに送信することができる。
【0017】
上記のAUVの充電システムにおいて、前記洋上浮体が洋上を航走する船であってもよい。この構成によれば、AUVが充電ステーションに結合した状態で船が充電ステーションを曳航することにより、AUVおよび充電ステーションを水の流れを受けるようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水中に充電のための基地を設置することなく、水中で充電することを可能にするAUVの充電システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る充電システム1の概略構成図である。充電システム1は、AUV30を水中で充電するためのものである。充電システム1は、洋上に浮かんだ洋上浮体2と、洋上浮体2から紐状体3により水中に吊下げられた充電ステーション10と、充電ステーション10に結合して充電されるAUV30とを有する。本実施形態において、洋上浮体2は、洋上を航走する船である。但し、洋上浮体2は、例えば自走式のブイなど洋上を航走する船以外の航走体であってもよい。紐状体3は、例えば、洋上浮体2から充電ステーション10に電気を送るための送電用の、および/または、洋上浮体2と通信するための通信用のケーブルである。
【0021】
図2は、充電システム1の充電ステーション10の斜視図である。本実施形態において、充電ステーション10は、水の流れを受けて水の流れ方向Fにおける下流側へと移動し、洋上浮体2よりも下流側に位置するように構成されている。また、充電ステーション10は、水の流れに応じて所定の姿勢(即ち、流れ方向Fに対する向き)をとるように構成されている。ここで、「水の流れ」とは、充電ステーション10に対する充電ステーション10の周りの水の移動を意味し、例えば、海水の流れである潮流だけでなく、充電ステーション10自体が水中を移動することによる充電ステーション10に対する周りの水の相対的な移動も含む。以下の説明では、水の流れを受ける充電ステーション10に関して、水の流れ方向Fの上流側を前方、水の流れ方向Fの下流側を後方、水の流れ方向Fに対する左側方向を左方、水の流れ方向Fに対する右側方向を右方、鉛直上向きを上方、鉛直下向きを下方と定義する。
【0022】
充電ステーション10は、紐状体3に固定された被捕捉部11と、被捕捉部11に連結されたステーション本体12とを有する。また、ステーション本体12には、AUV30に給電するための非接触給電部21が設けられている。
【0023】
ステーション本体12は、非接触給電部21を支持する棒状の支持部16と、支持部16の一端から立ち上がる立ち上がり部17とを有する。立ち上がり部17と支持部16とは一体的に形成されている。支持部16は、充電ステーション10が水の流れをうけるとき、水の流れ方向Fに沿って上流側から下流側へと延びるように形成されている。支持部16の上部であって、立ち上がり部17から離れた位置に非接触給電部21が固定されており、立ち上がり部17は、支持部16から非接触給電部21を越えて立ち上がるように延びている。立ち上がり部17は、その先端で被捕捉部11と連結されている。
【0024】
被捕捉部11は、円盤状であって、その上面の中心で洋上浮体2から延びる紐状体3と接続されている。被捕捉部11は、紐状体3に対して、即ち被捕捉部11の中心軸方向に対して垂直な方向に延びる軸を中心に立ち上がり部17を揺動可能に連結している。より詳しくは、被捕捉部11が、立ち上がり部17の上部を左右方向に延びる枢軸18で支持しており、枢軸18を中心にステーション本体12が被捕捉部11に対して揺動可能となっている。
【0025】
非接触給電部21および後述する非接触受電部35は、例えば、平板状のハウジングと、その内部に円形に形成されたコイルを有する。非接触給電部21は、非接触受電部35と対向することになる一方主面が上方を向くように支持部16に固定されている。
【0026】
ステーション本体12には、充電ステーション10が水の流れに応じて充電ステーション10が所定の姿勢をとるための垂直翼13および水平翼14が設けられている。垂直翼13および水平翼14は、支持部16の後部、即ち、充電ステーション10が水の流れをうけるとき、支持部16における水の流れ方向Fの下流側部分に設けられている。
【0027】
垂直翼13は、水の流れを受けた充電ステーション10の水平方向の姿勢を規定する機能を有している。より詳しくは、垂直翼13が水の流れを受けることにより、充電ステーション10は、ステーション本体12が紐状体3(即ち、紐状体3が固定された被捕捉部11を通る鉛直線)の回りに回転する。その結果、充電ステーション10は、ステーション本体12の支持部16が、立ち上がり部17から流れ方向Fの下流側へと延びる姿勢となる。言い換えれば、充電ステーション10は、被捕捉部11から離れた位置にある非接触給電部21が水の流れ方向Fにおける紐状体3の下流側に位置する姿勢となる。
【0028】
また、水平翼14は、水の流れを受けた充電ステーション10の垂直方向の姿勢を規定する機能を有している。より詳しくは、充電ステーション10が水の流れを受けると、充電ステーション10は、水の流れ方向Fにおける洋上浮体2の下流側へと移動する。その結果、紐状体3から牽引される被捕捉部11は、その中心軸方向が鉛直線から傾くように、ステーション本体12に対して枢軸18を中心に回動する。一方、水平翼14の効果により、被捕捉部11の向きが変化しても、ステーション本体12の支持部16は、水の流れ方向Fに概ね平行な姿勢となる。
【0029】
充電ステーション10には、音響信号を発信するトランスポンダ23が設けられている。トランスポンダ23は、後述の音響測位装置36とともに、充電ステーション10に対するAUV30の位置を測位するための音響測位システムを構成する。
【0030】
また、充電ステーション10には、AUV30と通信するための光無線通信装置19が設けられている。この光無線通信装置19は、被捕捉部11に設けられており、光を被捕捉部11の上方に向かって投光する投光部20を有する。本実施形態では、光無線通信装置19の投光部20は、AUV30を充電ステーション10に結合させる際に紐状体3に光を照らす役割も果たす。
【0031】
図3は、AUV30を斜め上から見た概略斜視図であり、
図4は、AUV30を斜め下から見た概略斜視図である。以下の説明では、AUV30に関して、AUV30が進行するときの進行方向を前方、進行方向の反対方向を後方、進行方向左側を左方、進行方向右側を右方、進行方向上側を上方、進行方向下側を下方と定義する。
【0032】
AUV30は、動力源としての蓄電池を内蔵した潜水機本体31と、水中を航走するための推進力を発生させるプロペラ等のいくつかの推進装置32(1つだけ示す)を備える。AUV30は、潜水機本体31の内部に、推進装置32を制御する制御装置33を備えており、制御装置33のプログラムに従って自律航走する。潜水機本体31は、その前方側が水の抵抗の少ない流線型をなしている。また、潜水機本体31の上部および下部は、互いに平行な平面状に形成されている。潜水機本体31の下部には、充電ステーション10の非接触給電部21から給電を受ける上述の非接触受電部35が設けられている。非接触受電部35は、非接触給電部21と対向することになる一方主面が下方を向くように潜水機本体31の下部に固定されている。
【0033】
本実施形態において、AUV30は、充電ステーション10からの給電を受けるために、まず水中で充電ステーション10と結合する。AUV30は、充電ステーション10の被捕捉部11を捕捉するための捕捉機構40を有しており、捕捉機構40が被捕捉部11を捕捉することによって、AUV30は充電ステーション10と結合する。捕捉機構40は、AUV30の進行方向前方側である潜水機本体31の前端部に設けられている。
【0034】
図5に、AUV30の捕捉機構40の拡大図を示す。本実施形態において、捕捉機構40は、被捕捉部11を覆うように形成されている。捕捉機構40は、被捕捉部11が嵌合する嵌合部41と、潜水機本体31の前端部に固定され、嵌合部41を保持する保持部46を有する。
【0035】
嵌合部41は、前方に開口した前方側開口部41aと下方に開口した下方側開口部41bを有する。AUV30が充電ステーション10に結合するとき、嵌合部41には、その前方から紐状体3が前方側開口部41aを介して挿入され、その下方から被捕捉部11が下方側開口部41bを介して挿入される。前方側開口部41aは、紐状体3が挿通するように上下方向に延びるように形成されており、前方側開口部41aの下方側と下方側開口部41bの前方側とはつながっている。
【0036】
嵌合部41は、被捕捉部11が嵌合するサイズに形成された嵌合空間S1と、嵌合空間S1の下側に位置しており、嵌合空間S1へと被捕捉部11を案内するために下方にいくにつれて広がった案内空間S2を形成している。嵌合部41は、AUV30が充電ステーション10に結合されたときに、紐状体3の回りに回転可能となるように構成されている。本実施形態では、嵌合空間S1が被捕捉部11と同様に円盤状に形成されており、捕捉機構40は、それに固定された潜水機本体31とともに、被捕捉部11を捕捉したまま被捕捉部11に対して紐状体3の回りに回転するように構成されている。
【0037】
嵌合部41は、被捕捉部11の上面部分を覆う上壁部42と、上壁部42の円弧状の左側端部から下方に延びる左側壁部43、上壁部42の円弧状の右側端部から下方に延びる右側壁部44を有している。前方側開口部41aは、左側壁部43および右側壁部44の前端部により構成され、下方側開口部41bは、左側壁部43および右側壁部44の下端部により構成される。上壁部42の前端部42aは、後方にいくにつれて徐々に狭まる平面視V字形状をなしており、このV字形状の前端部42aに紐状体3が押圧されたときに、紐状体3を嵌合部41の中央側へと案内するように構成されている。
【0038】
保持部46は、AUV30の左右方向に延びる軸Cを中心に嵌合部41を揺動可能に保持する。より詳しくは、保持部46は、嵌合部41の左右方向両側に位置し、潜水機本体31に固定された一対の固定部47a,47bと、固定部47a,47bのそれぞれに支持された一対の枢軸48a,48bを有する。軸Cは、嵌合部41の嵌合空間S1を通過するようにAUV30の左右方向に延びており、一対の枢軸48a,48bは、いずれも、軸C上に位置している。嵌合部41は、一対の枢軸48a,48bに揺動可能に支持されている。
【0039】
図3および
図4に戻って、潜水機本体31には、垂直翼34が設けられている。垂直翼34は、充電ステーション10側の垂直翼13と同様の機能を有している。AUV30は、充電ステーション10に結合されてから推進装置32を停止させると、垂直翼34が水の流れを受けて、潜水機本体31が被捕捉部11に対して紐状体3(即ち、被捕捉部11を通る鉛直線)の回りに回転する。その結果、AUV30は、その後端部が水の流れ方向Fにおける下流側へと移動し、非接触受電部35が水の流れ方向Fにおいて紐状体3の下流側に位置する姿勢となる。なお、本実施形態において、互いに結合した状態にあるAUV30と充電ステーション10は、水中において同じ位置にあるため、AUV30と充電ステーション10のそれぞれが受ける水の流れ方向Fは一致している。
【0040】
非接触受電部35および非接触給電部21は、充電ステーション10およびAUV30が結合した状態で水の流れを受けたとき、水の流れ方向Fにおける紐状体3の下流側の位置で互いに対向するようにAUV30および充電ステーション10のそれぞれに配置されている。即ち、非接触受電部35および非接触給電部21は、AUV30の非接触受電部35から捕捉機構40までの水の流れ方向Fに沿った距離と、充電ステーション10の非接触給電部21から被捕捉部11までの水の流れ方向Fに沿った距離とが概ね一致するように配置されている。このため、AUV30と充電ステーション10とが結合した後に、これらが水の流れを受けて水の流れ方向Fに沿った姿勢をとることにより、AUV30は、充電ステーション10からの給電が可能な状態となる。
【0041】
AUV30および充電ステーション10は、互いに結合するために、充電ステーション10に対するAUV30の位置を計測する測位システムを有している。
【0042】
上述したように、AUV30には音響測位装置36が設けられており、充電ステーション10のトランスポンダ23とともに、充電ステーション10に対するAUV30の位置を測位するための音響測位システムを構成している。この音響測位システムは、例えば、トランスポンダ23からの音響信号を受信するまでの時間から、トランスポンダ23までの距離を計算し、音響測位装置36の有する受波アレイ内の各素子への到達音波の位相差をもとに方位を計算するSSBL(Super Short Base Line)方式の測位システムである。本実施形態では、この測位システムは、充電ステーション10からAUV30までの距離が所定の距離(例えば10m)より大きい場合に使用される。制御装置33は、音響測位装置36で得られた位置データに基づき推進装置32を制御し、AUV30を充電ステーション10へと誘導する。
【0043】
また、本実施形態では、AUV30は撮像装置(図示せず)を有している。この撮像装置は、AUV30が充電ステーション10から所定の距離(例えば10m)以下の範囲に位置する場合のAUV30の測位に使用される。より詳しくは、AUV30の撮像装置は、投光部20により光を照らされた紐状体3を撮像し、撮像データを制御装置33に送る。制御装置33は、撮像データに基づいて充電ステーション10に対するAUV30の位置データを取得し、その位置データに基づき推進装置32を制御する。これにより、AUV30を精度よく充電ステーション10へと近づけることができる。
【0044】
また、AUV30には、光無線通信装置39が設けられている。AUV30の光無線通信装置39と上述の充電ステーション10の光無線通信装置19とは、少なくともAUV30と充電ステーション10とが結合している間、互いに光無線通信することができるように配置されている。本実施形態では、AUV30の光無線通信装置39は、充電ステーション10の投光部20からの光信号を受光できるように、潜水機本体31の前端部であって、捕捉機構40の上方に配置されている。光無線通信装置19,39により、AUV30は、例えばAUV30が実施した検査で取得した検査データを充電ステーション10に送ることができ、また、充電ステーション10は、例えばAUV30のオペレーションプログラムをAUV30に送ることができる。
【0045】
次に、充電システム1によりAUV30が充電されるまでの充電工程を
図6を参照して説明する。
【0046】
まず、洋上浮体2から吊り下げられた充電ステーション10が、AUV30から中長距離の位置にある場合、言い換えれば、AUV30から充電ステーション10までの距離が所定の距離(例えば10m)より大きい場合、AUV30は充電ステーション10に向かって移動する。より具体的には、AUV30は、充電ステーション10のトランスポンダ23から送られてくる音響信号に基づいて充電ステーション10に対するAUV30の相対位置を計測する。得られたAUV30の位置データに基づいて、AUV30の制御装置33が推進装置32を制御して、AUV30は充電ステーション10へと誘導される。
【0047】
図6(a)に示すように、充電ステーション10が、AUV30から近距離の位置にある場合、言い換えれば、AUV30から充電ステーション10までの距離が所定の距離(例えば10m)以下である場合、AUV30は、捕捉機構40に紐状体3が当接するまで移動する(
図6(b)参照)。より具体的には、充電ステーション10は、投光部20により紐状体3に向かって光を照射する。AUV30は、光を照射された紐状体3を撮像装置により撮像するとともに、撮像されたデータに基づいて、嵌合部41に紐状体3が前方から挿入されるように推進装置32を駆動する。その結果、AUV30は、捕捉機構40の中央付近に紐状体3が配置された状態になる。
【0048】
続いて、AUV30は、捕捉機構40が被捕捉部11を捕捉するまで充電ステーション10に向かって紐状体3に沿って下降する(
図6(c)参照)。捕捉機構40が被捕捉部11を捕捉することにより、AUV30が充電ステーション10に結合すると、AUV30は、推進装置32を停止させ、その後、洋上浮体2は、充電ステーション10およびそれに結合されたAUV30を曳航する。なお、捕捉機構40が被捕捉部11を捕捉したか否かは、いずれの方法で検出してもよいが、例えば、被捕捉部11に近接センサを設け、該近接センサにより検出してもよいし、その検出結果は紐状体3を介して洋上浮体2に送られてもよい。
【0049】
充電ステーション10が曳航されると、
図6(d)に示すように、充電ステーション10は、水の流れを受けることにより紐状体3の回りに回転して、非接触給電部21が水の流れ方向Fにおいて紐状体3の下流側に位置する姿勢となる。一方、AUV30は、充電ステーション10に結合された状態で曳航されると、水の流れを受けることにより紐状体3の回りに回転して、非接触受電部35が水の流れ方向Fにおいて紐状体3の下流側に位置する姿勢となる。こうして、充電ステーション10の向きとAUV30の向きとを合致させて、AUV30の非接触受電部35と充電ステーション10の非接触給電部21とが給電可能な位置に合わせられる。その後、充電ステーション10は、非接触給電部21から非接触受電部35への給電を開始する。
【0050】
AUV30が水の流れを受けている間は、捕捉機構40の嵌合部41は、被捕捉部11から紐状体3の延びる方向に力を受け続けるため、推進装置32が停止した状態であっても、AUV30が充電ステーション10に結合した状態は維持される。充電終了後には、推進装置32を駆動してAUV30を上昇させることにより、AUV30は充電ステーション10から分離する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のAUV30の充電システム1では、洋上に浮かんだ洋上浮体2から吊り下げた充電ステーション10にAUV30を結合させてAUV30の充電を行う。このため、水中に充電のための基地を設置する必要がない。また、洋上浮体2の場所を変更することにより、AUV30の充電作業を実施する箇所を容易に変更することができる。
【0052】
また、水の流れを利用して充電ステーション10とAUV30との向きを合致させることができる。このため、AUV30の非接触受電部35と洋上浮体2に吊下げられた充電ステーション10の非接触給電部21とを容易に位置合わせすることができ、水中でのAUV30の充電を実現することができる。
【0053】
さらに、洋上浮体2である船がそれらを曳航することによって、AUV30および充電ステーション10が受ける水の流れを能動的に生じさせることができる。このため、水の流れが弱いところでも、充電ステーション10とAUV30との向きを合致させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、捕捉機構40が被捕捉部11に対して紐状体3の回りに回転可能となるように被捕捉部11を捕捉するため、捕捉機構40が被捕捉部11を捕捉した状態で、被捕捉部11を基準に非接触給電部21と非接触受電部35とを移動させて、それらを互いに給電可能な状態に位置合わせすることができる。
【0055】
また、本実施形態では、ステーション本体12が、非接触給電部21を支持する支持部16と非接触給電部21を越えて立ち上がり、その先端で被捕捉部11と連結される立ち上がり部17とを有し、潜水機本体31の下部に非接触受電部35を設ける構成である。このため、ステーション本体12の形状を、潜水機本体31の外形に沿ったシンプルな形状に設計できる。また、AUV30が充電ステーション10に結合した状態において、非接触給電部21および非接触受電部35は、いずれも水の抵抗に影響を与えにくい箇所に配置させることができる。これにより、非接触給電部21および非接触受電部35を拡大させて対向面積を増大させることができ、給電電力を増大させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、支持部16は、棒状であり、立ち上がり部17は、支持部16の一端から立ち上がり、支持部16には、垂直翼13および水平翼14が設けられている。このため、支持部16を水の抵抗が小さい形状としながら、垂直翼13により、水の流れを受けた充電ステーション10の水平方向の姿勢を規定することができ、また、水平翼14により、水の流れを受けた充電ステーション10の垂直方向の姿勢を規定することができる。
【0057】
また、本実施形態では、紐状体3を嵌合部41に前方側開口部41aを介して挿入させてからAUV30を充電ステーション10へと紐状体3に沿って下降させることにより、AUV30を充電ステーション10に結合することができる。また、AUV30を上昇させることによりAUV30を充電ステーション10から分離することができる。このため、AUV30と充電ステーション10との結合および分離がより容易に実施できる。
【0058】
また、本実施形態では、被捕捉部11がステーション本体12に対して揺動可能であるため、紐状体3から牽引されて被捕捉部11の向きが変更しても、水の流れ方向Fに対するステーション本体12の姿勢を安定的に維持することができ、また、嵌合部41が潜水機本体31に固定された保持部46に対して揺動可能であるため、紐状体3から牽引されて被捕捉部11の向きが変更しても、水の流れ方向Fに対する潜水機本体31の姿勢を安定的に維持することができる。
【0059】
また、本実施形態では、充電ステーション10がAUV30から近距離の位置にある場合には、投光部20により光に照らされた紐状体3を頼りに、充電ステーション10に対するAUV30の位置を取得するため、AUV30を充電ステーション10に精度よく近づけることができる。また、投光部20が、AUV30の測位のために紐状体3に向けて投光する役割だけでなく、AUV30と光無線通信をするためにAUV30に投光する役割も果たすため、充電ステーション10の部品点数を削減することができる。
【0060】
また、本実施形態では、充電ステーション10がAUV30から中長距離の位置にある場合には、音響測位装置36がトランスポンダ23から送られてきた音響信号に基づいて充電ステーション10に対するAUV30の位置を測位できるため、中長距離離れた位置からAUV30を充電ステーション10へと誘導することができる。
【0061】
上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、上記実施形態で示された充電ステーション10およびAUV30の形状や、それらに設けられた構成要素の形状、配置等も、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0062】
例えば、上記実施形態の充電ステーション10には、水の流れによって姿勢を変えるための垂直翼13および水平翼14が設けられており、AUV30には、水の流れによって姿勢を変えるための垂直翼34が設けられていたが、水の流れによって姿勢を変える手段はこれらに限定されない。例えば、充電ステーション10は、ステーション本体12全体の形状を翼形状にしたり、重心位置を考慮して設計したりして、水の流れによって姿勢を変えるように構成されてもよい。
【0063】
上記実施形態では、捕捉機構40の保持部46が、AUV30の左右方向に延びる軸Cを中心に嵌合部41を揺動可能に保持していたが、捕捉機構40は、例えば保持部46の一対の固定部47a,47bが潜水機本体31に上下方向に揺動可能に支持されるなどして、AUV30の前後方向に延びる軸を中心に嵌合部41が揺動するように構成されていてもよい。
【0064】
また、AUV30の測位システムも、上記実施形態に限定されない。例えば音響測位システムはSSBL方式でなくてもよく、LBL方式やSBL方式等を利用してよい。また、充電ステーション10がAUV30から近距離の位置にある場合にも、撮像装置を用いた方法とは別の方法でAUV30を充電ステーション10に近づけてもよい。
【0065】
また、光無線通信装置19の投光部20は、紐状体3に向けて投光する投光部としての役割も果たしていたが、紐状体3に向けて投光する投光部は、光無線通信装置19の投光部20とは別に設けてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、洋上浮体2である船が充電ステーション10およびそれに結合されたAUV30を曳航することによって、AUV30および充電ステーション10が受ける水の流れを能動的に生じさせていたが、これに限定されない。例えば、潮流など一定の水の流れを確保できる箇所であれば、洋上浮体は移動しなくてもよく、この場合、例えば洋上浮体は海底に固定された錘と係留したブイであってもよい。