(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成型工程では、前記第1傾斜面が形成される部位である傾斜部位の繊維含有率が、前記傾斜部位に隣接する部位である隣接部位の繊維含有率に比して小さくなることを特徴とする請求項1または2に記載の複合材の成型方法。
前記成型工程では、硬化前の前記複合材の板厚に比して、硬化後の前記複合材の板厚が薄くなるように、前記複合材を成型することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合材の成型方法。
前記成型工程では、硬化前の複合材の繊維含有率に比して、硬化後の複合材の繊維含有率の増分が20%以下となるように、前記複合材を成型することを特徴とする請求項4に記載の複合材の成型方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたように、複合材は、賦形時において、繊維シートを積層した積層体が、シート面に直交する断面内において、所定の形状となるように二次元的に折り曲げられる。さらに、積層体は、二次元的に折り曲げられた上で、二次元断面内に直交する断面内において、所定の形状となるように折り曲げられる場合がある。つまり、積層体は、三次元空間内において、所定の形状となるように三次元的に折り曲げられる場合がある。積層体が三次元的に折り曲げられる場合、積層体を構成する繊維シートが蛇行したリンクル(しわ)が発生し易い。このため、積層体を三次元的に折り曲げる場合には、リンクルの発生を抑制する所定の形状とする必要があることから、複合材の設計の自由度が低いものとなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、リンクルの発生を抑制することができる複合材の成型方法及び複合材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合材の成型方法は、三次元の直交座標系において、XZ面に対してZ軸からY方向に第1傾斜角度をもって傾斜する外板形状となるスキンに接合する複合材の成型方法であって、繊維シートを積層した積層体がZ方向において同じ断面形状となるように、前記積層体をX方向及びY方向に曲げて賦形する賦形工程と、賦形した前記積層体をZ軸からY方向に形状変化を持つ型材に設置し、樹脂材の充填量を調整しながら、前記積層体に前記樹脂材を含浸させ、硬化後の前記複合材が、前記スキンの外板形状と相補的な形状となるように、XZ面に対してZ軸からY方向に前記第1傾斜角度をもって傾斜する第1傾斜面を有する形状に成型する成型工程と、を備え、前記型材は、前記第1傾斜面を成型すると共に前記スキンとの接合面となる第1傾斜成型面と、前記複合材の前記第1傾斜面の反対側の面を前記第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度となる第2傾斜面に成型する第2傾斜成型面と、を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、積層体が三次元的に折り曲げられる場合であっても、硬化後の複合材において第1傾斜面及び第2傾斜面が形成されるように成型を行うことで、リンクルの発生を抑制することができる。つまり、複合材の第2傾斜面を成型する第2傾斜成型面が、第1傾斜成型面に比して緩やかな傾斜面となることで、第2傾斜面に応じたリンクルが形成されることになる。このとき、第2傾斜面に応じて形成されるリンクルは、第1傾斜面に応じて形成されるリンクルに比して小さいリンクルとすることができるため、リンクルの発生を抑制することができる。そして、リンクルの発生を抑制できる分、複合材の形状の規制が緩和され、例えば、第1傾斜面の第1傾斜角度を従来に比して大きな角度にすることが可能となる。このため、複合材の設計の自由度を高くすることができる。なお、繊維シートは、ドライとなるものであってもよいし、樹脂を含浸したプリプレグであってもよい。また、型材は、アルミニウムまたはインバー等の金属を用いた金型であってもよいし、成型する複合材と同じ材料である共材、または、硬化済みの被接着材料を用いた型材であってもよい。
【0008】
また、前記繊維シートは、ドライ状態であることが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、積層体の層間が滑りやすい状態となる。このため、三次元的に折り曲げられる積層体の変位を許容し易い構成にできることから、リンクルの発生をより抑制することができる。
【0010】
また、前記成型工程では、前記第1傾斜面が形成される部位である傾斜部位の繊維含有率が、前記傾斜部位に隣接する部位である隣接部位の繊維含有率に比して小さくなることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、第1傾斜成型面における積層体の挟み込みが緩和されることから、隣接部位に比して傾斜部位に樹脂材が充填され易くなり、傾斜部位の繊維含有率が小さくなる。このため、隣接部位の板厚に比して傾斜部位の板厚を厚く成型することができる。
【0012】
また、前記成型工程では、硬化前の前記複合材の板厚に比して、硬化後の前記複合材の板厚が薄くなるように、前記複合材を成型することが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、積層体に充填される余剰の樹脂材を外部に排出することで、硬化前の複合材の板厚に比して、硬化後の複合材の板厚が薄くすることができる。このため、樹脂材の充填量を調整することで、複合材の第1傾斜面及び第2傾斜面を成型することができるため、型材による複合材の成型を精度良く行うことができる。
【0014】
また、前記成型工程では、硬化前の複合材の繊維含有率に比して、硬化後の複合材の繊維含有率の増分が20%以下となるように、前記複合材を成型することが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1傾斜面及び第2傾斜面を成型するために繊維含有率が変化する場合であっても、繊維含有率の増分が20%以下となるように複合材を成型することで、複合材の強度低下を抑制することができる。なお、より好ましくは、硬化前の複合材の繊維含有率に比して、硬化後の複合材の繊維含有率の増分が5%〜10%程度の範囲となるように、複合材を成型する。
【0016】
本発明の複合材は、三次元の直交座標系において、X方向、Y方向及びZ方向において形状が変化する複合材において、基準面に対して第1傾斜角度をもって傾斜する第1傾斜面と、前記第1傾斜面の反対側の面が前記第1傾斜角度よりも小さい第2傾斜角度となる第2傾斜面と、を有する形状であることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1傾斜面及び第2傾斜面が成型されることで、リンクルの発生が抑制された形状とすることができる。このため、リンクルの発生を抑制できる分、形状の規制が緩和され、例えば、第1傾斜面の第1傾斜角度を従来に比して大きな角度の形状にすることが可能となる。このため、設計の自由度が高い複合材の形状とすることができる。
【0018】
また、前記第1傾斜面が形成される部位である傾斜部位の繊維含有率は、前記傾斜部位に隣接する部位である隣接部位の繊維含有率に比して小さいことが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、隣接部位に比して傾斜部位に樹脂材が充填され易くなることから、傾斜部位の繊維含有率が小さくなる。このため、隣接部位の板厚に比して傾斜部位の板厚を厚く成型することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0022】
[実施形態]
本実施形態に係る複合材1の成型方法は、例えば、航空機の機体等を構成する複合材1を成型するための方法である。複合材1としては、例えば、
図1に示すスパー10、または
図2に示すストリンガー20等がある。なお、本実施形態では、
図1及び
図2に示す複合材1に適用して説明するが、これらの複合材1に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本実施形態に係る複合材の成型方法によって成型される複合材の一例としてのスパーを示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る複合材の成型方法によって成型される複合材の一例としてのストリンガーを示す斜視図である。
図3は、本実施形態に係る複合材の成型方法に関する説明図である。
図4は、硬化前後の複合材の形状に関する説明図である。
図5は、本実施形態に係る複合材の成型方法の動作を示す説明図である。
【0024】
複合材1の成型方法の説明に先立ち、
図1及び
図2を参照して、この成型方法によって成型される複合材1について説明する。
図1及び
図2に示す複合材1は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)を用いて構成されている。この複合材1は、複数枚の炭素繊維シートを積層して積層体3(
図5参照)を形成し、この積層体3に樹脂を含浸させて硬化させることにより成型される。この複合材1は、被取付部材5に取り付けられる。被取付部材5は、複合材1と同様に、CFRPであり、
図1及び
図2に示すように、被取付部材5には、プライドロップオフ部6が形成されている。プライドロップオフ部6は、積層される炭素繊維シートの一部が取り除かれることで、傾斜面が形成される。この傾斜面は、プライドロップオフ部6の下方側に隣接する平坦面を基準面とすると、基準面に対して所定の傾斜角度θ1をもって傾斜している。このため、被取付部材5に取り付けられる複合材には、被取付部材5のプライドロップオフ部6に接触する接触面において、プライドロップオフ部6の傾斜面と相補的な形状となる、第1傾斜面が形成されている。つまり、第1傾斜面は、上記の基準面に対して所定の傾斜角度θ1をもって傾斜している。そして、第1傾斜面を有する複合材1を成型するにあたって、
図1及び
図2に示すように、複合材1は、三次元の直交座標系において、X方向、Y方向及びZ方向において形状が変化するように成型される。
【0025】
図1及び
図2に示すように、三次元の直交座標系において、X方向、Y方向及びZ方向において形状が変化する複合材1を成型する場合、積層体3は、三次元的に折り曲げられて賦形される。具体的に、積層体3は、Z方向において同じ断面形状となるように、X方向またはY方向に曲げられることで、二次元的に折り曲げられる。例えば、
図1に示すスパー10であれば、積層体3は、XZ面に対してY方向に垂直に曲げ、さらにYZ面に対してX方向に垂直に折り曲げられる。また、
図2に示すストリンガー20であれば、積層体3は、XY面内において、その断面がT字状となるように折り曲げられる。さらに、積層体3は、二次元的に折り曲げられた上で、XY面に直交するYZ面内において、所定の形状となるように三次元的に折り曲げられる。例えば、
図1に示すスパー10であれば、積層体3は、XY面において折り曲げた対向する両端部が、YZ面内において相互に近づく方向に変形するように折り曲げられる。また、
図2に示すストリンガー20であれば、積層体3は、YZ面内において高さが変位するように折り曲げられる。
【0026】
図1に示すように、上記のように賦形された積層体3は、所定の金型を用いて成型されることで、第1傾斜面11を有する形状となるスパー10が成型される。なお、詳細は後述するが、このスパー10において、第1傾斜面11の反対側の面は、第2傾斜面12となっており、第2傾斜面12は、上記の基準面に対して所定の傾斜角度θ2をもって傾斜している。このとき、傾斜角度θ2は、傾斜角度θ1よりも小さい角度となっている。
【0027】
また、
図2に示すように、上記のように賦形された積層体3は、所定の金型を用いて成型されることで、第1傾斜面21を有する形状となるストリンガー20が成型される。なお、詳細は後述するが、このストリンガー20においても、第1傾斜面21の反対側の面は、第2傾斜面22となっており、第2傾斜面22は、上記の基準面に対して所定の傾斜角度θ2をもって傾斜している。このとき、傾斜角度θ2は、傾斜角度θ1よりも小さい角度となっている。
【0028】
次に、
図3から
図5を参照して、複合材の成型方法について説明する。この複合材の成型方法は、ドライ状態の繊維シートを用いた成型方法となっており、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)成形、RTM(Resin Transfer Molding)成形、インフュージョン成形等が適用可能となっている。なお、以下の説明では、
図2に示すストリンガー20を成型する場合について説明する。ここで、ストリンガー20は、被取付部材5であるスキン19と一体に成型される場合があり、以下では、硬化後の複合材であるスキン19に対して、ストリンガー20を一体に成型する場合について説明する。
【0029】
図3に示すように、この成型方法では、賦形した積層体3に対して、型材30を設置する。型材30は、分割された2つの分割金型31a,31bを有している。このとき、スキン19も型材30の一部として機能する。つまり、型材30は、2つの分割金型31a,31bと、スキン19とを含んで構成されている。2つの分割金型31a,31bは、例えば、アルミニウムを用いた金型となっている。賦形した積層体3は、プライドロップオフ部6が形成されるスキン19上に設置され、また、その上方に2つの分割金型31a,31bが積層体3の両側方から挟み込むように押し当てられる。
【0030】
また、この型材30は、バギングフィルム32で覆われる。バギングフィルム32は、2つの分割金型31a,31bを覆うと共に、スキン19との間にシール材33が設けられることで、その内部を気密に封止している。そして、気密に封止されたバギングフィルム32の内部に樹脂材が充填され、図示しない加熱装置によって加熱されることで、樹脂材が熱硬化し、ストリンガー20が成型される。
【0031】
次に、
図4及び
図5を参照して、型材30について説明する。
図4及び
図5は、
図2をX方向から見たときの側面図である。型材30は、成型される硬化後のストリンガー20に第1傾斜面21を形成する第1傾斜成型面41と、第2傾斜面22を形成する第2傾斜成型面42とを有している。第1傾斜成型面41は、ストリンガー20に成型される第1傾斜面21の傾斜角度が、第1傾斜角度θ1となるように成型する。第2傾斜成型面42は、ストリンガー20に成型される第2傾斜面22の傾斜角度が、第1傾斜角度θ1よりも小さい第2傾斜角度θ2となるように成型する。
【0032】
このような型材30を用いて成型されるストリンガー20は、第1傾斜面21が形成される傾斜部位における板厚が、傾斜部位の両側に隣接する隣接部位における板厚に比して厚くなる。このため、傾斜部位が形成される領域E1は、繊維含有率が低い低Vf領域となっており、隣接部位が形成される領域E2は、繊維含有率が高い高Vf領域となっている。なお、繊維含有率(Vf:Fiver volume content)は、複合材1に含まれる炭素繊維の割合である。
【0033】
また、この型材30を用いて、ストリンガー20を成型する場合、賦形後(硬化前)のストリンガー20の板厚に比して、硬化後のストリンガー20の板厚が薄くなるように、ストリンガー20を成型している。ここで、ストリンガー20の板厚を薄くするには、積層体3に充填される余剰の樹脂材を外部に排出する。このとき、硬化後のストリンガー20の繊維含有率は、賦形後(硬化前)のストリンガー20の繊維含有率に比して、20%以下の増分となるように、樹脂材を外部に排出してストリンガー20を成型し、より好ましくは、5%〜10%程度の増分となるように、ストリンガー20を成型する。
【0034】
次に、
図5を参照して、上記の型材30を用いて、ストリンガー20等の複合材1を成型する複合材の成型方法に関する動作について説明する。
【0035】
まず、ドライ状態の炭素繊維シートを複数積層して積層体3を形成すると共に、この積層体3をX方向及びY方向に折り曲げて賦形する賦形工程(ステップS1)を行う。なお、
図5では、第1傾斜面21周りの積層体3のみを図示しており、
図2をX方向から見たときの側面図であることから、積層体3は、Z方向において平坦となっている。
【0036】
賦形工程S1において賦形された積層体3は、型材30としてのスキン19上に設置され、その上部から2つの分割金型31a,31bが設置される(ステップS2)。このため、積層体3は、2つの分割金型31a,31bによってZ方向に変形させられる。この後、積層体3は、型材30と共に、バギングフィルム32に覆われることで、型材30の内部を密閉した状態とする。
【0037】
ステップS2の実行後、樹脂材の充填量を調整しながら、積層体3へ向けて樹脂を充填する。ここで、樹脂材は、型材30の内部を真空引きしながら充填してもよいし、加圧しながら充填してもよく、樹脂材の充填方法については特に限定されない。また、型材30は、樹脂材の充填と共に、積層体3を挟み込むように加圧され、図示しない加熱装置によって加熱される(成型工程:ステップS3)。
【0038】
成型工程S3により熱硬化された複合材1は、型材30の第1傾斜成型面41及び第2傾斜成型面42によって、第1傾斜角度θ1となる第1傾斜面21が形成され、また、第2傾斜角度θ2となる第2傾斜面22が形成される(ステップS4)。そして、硬化後の複合材1は、傾斜部位において低Vf領域E1となり、隣接部位において高Vf領域E2となる。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、積層体3が三次元的に折り曲げられる場合であっても、硬化後の複合材1において第1傾斜面11,21及び第2傾斜面12,22が形成されるように成型を行うことで、リンクルの発生を抑制することができる。つまり、型材30の第2傾斜成型面42が、第1傾斜成型面41に比して緩やかな傾斜面となることで、第2傾斜面12,22に応じたリンクルが形成されることになる。このとき、第2傾斜面12,22に応じて形成されるリンクルは、第1傾斜面11,21に応じて形成されるリンクルに比して小さいリンクルとすることができるため、リンクルの発生を抑制することができる。そして、リンクルの発生を抑制できる分、複合材1の形状の規制が緩和され、例えば、第1傾斜面11,21の第1傾斜角度θ1を従来に比して大きな角度にすることが可能となる。具体的に、従来の第1傾斜角度θ1と、本実施形態の第1傾斜角度θ1とを比較した場合、本実施形態の第1傾斜角度θ1は、従来の第1傾斜角度θ1に比して、4倍程度大きな角度とすることができる。このため、複合材1の設計の自由度を高くすることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、ドライ状態の炭素繊維シートを用いて積層体3を形成したため、積層体3の層間を滑りやすい状態とすることができる。このため、三次元的に折り曲げられる積層体3の変位を許容し易い構成にできることから、リンクルの発生をより抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、傾斜部位の繊維含有率が、傾斜部位に隣接する部位である隣接部位の繊維含有率に比して小さくなるため、隣接部位の板厚に比して傾斜部位の板厚を厚く成型することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、積層体3に充填される余剰の樹脂材を外部に排出することで、硬化前の複合材1の板厚に比して、硬化後の複合材1の板厚を薄くすることができる。このため、樹脂材の充填量を調整することで、複合材1の第1傾斜面11,21及び第2傾斜面12,22を成型することができるため、型材30による複合材1の成型を精度良く行うことができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、繊維含有率の増分が20%以下となるように複合材1を成型することで、複合材1の強度低下を抑制しつつ、複合材1に、第1傾斜面11,21及び第2傾斜面12,22を成型することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、ドライ状態の炭素繊維シートを用いて積層体3を形成したが、繊維シートは、炭素繊維に限定されず、ガラス繊維やアラミド繊維といった他の材料の繊維シートでも良いし、さらに、繊維シートに予め樹脂を含浸したプリプレグを用いてもよい。この場合、成型工程において、樹脂材を多めに充填し、また、成型時において樹脂材排出して充填量を調整することが好ましい。
【0045】
また、本実施形態では、アルミニウムを用いて分割金型31a,31bを構成したが、インバー等の金属を用いてもよい。また、型材30は、複合材1の成型時において、成型後の複合材1の形状が、予め設計された設計形状となるように成型可能な型材であれば、特に限定されない。
【0046】
また、本実施形態では、型材30を用いて、複合材1としてのストリンガー20を成型したが、
図6の変形例に示す型材50を用いて、複合材1としてのスパー10を成型してもよい。
図6は、本実施形態の変形例に係る複合材の成型方法に関する説明図である。
図6に示す型材50は、複合材1としての
図1に示すスパー10を成型するために用いられる型材であり、下部型枠51と、上部型枠52とを有している。スパー10は、下部型枠51と上部型枠52との間に挟み込まれるように押し当てられる。
【0047】
下部型枠51は、スパー10を挟んで、鉛直方向の下側に設けられる型枠である。下部型枠51は、底部51aと、底部51aの両側から上方側に向かって延びる両側部51bとで、断面U字状に形成されており、その内部にスパー10を収容可能な内部空間が形成されている。この内部空間には、断面U字状に賦形された硬化前のスパー10が、下部型枠51と重なり合うように配置される。ここで、下部型枠51の内面(内部空間と接する面)は、スパー10が接合されるスキンの接合面と同じ面に形成されている。つまり、下部型枠51の内面には、成型される硬化後のスパー10に第1傾斜面11を形成する第1傾斜成型面41が形成されている。このため、硬化後のスパー10には、下部型枠51によって、第1傾斜面11が形成される。
【0048】
上部型枠52は、スパー10を挟んで、鉛直方向の上側に設けられる型枠である。上部型枠52は、分割された3つの分割金型52a,52b,52cを有している。3つの分割金型52a,52b,52cは、下部型枠51の内部空間に収容した、硬化前のスパー10の内側に押し当てられる。3つの分割金型52a,52b,52cは、分割型枠52cが、下部型枠51に収容される断面U字状のスパー10の底部に配置され、また、2つの分割型枠52a,52bが、分割型枠52cの両側から上方側に向かって延びるように配置されることで、断面U字状に配置されている。ここで、上部型枠52には、成型される硬化後のスパー10に第2傾斜面12を形成する第2傾斜成型面42が形成されている。このため、硬化後のスパー10には、上部型枠52によって、第2傾斜面12が形成される。
【0049】
また、この型材50は、バギングフィルム54で覆われる。バギングフィルム54は、3つの分割金型52a,52b,52cを覆うと共に、下部型枠51との間にシール材53が設けられることで、その内部を気密に封止している。そして、気密に封止されたバギングフィルム54の内部に樹脂材が充填され、図示しない加熱装置によって加熱されることで、樹脂材が熱硬化し、スパー10が成型される。
【0050】
なお、型材50を用いたスパー10の成型方法については、ストリンガー20の成型方法と同様であるため、説明を省略する。