(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581879
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】鉄道車両用全閉形電動機
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20190912BHJP
H02K 9/22 20060101ALI20190912BHJP
H02K 9/02 20060101ALI20190912BHJP
H02K 5/18 20060101ALI20190912BHJP
H02K 5/00 20060101ALI20190912BHJP
B61F 5/00 20060101ALN20190912BHJP
【FI】
B60L3/00 H
H02K9/22 Z
H02K9/02 Z
H02K5/18
H02K5/00 A
!B61F5/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-211288(P2015-211288)
(22)【出願日】2015年10月27日
(65)【公開番号】特開2017-85759(P2017-85759A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】村島 稔
【審査官】
今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−050683(JP,A)
【文献】
特開平09−066829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
H02K 5/00
H02K 5/18
H02K 9/02
H02K 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に冷却フィンを設けた電動機ケースを備え、電動機ケースに突設した取付アームを介して鉄道車両の台車枠に隙間を存して取り付けられる鉄道車両用全閉形電動機において、
台車枠との間の隙間に臨む電動機ケースの外表面の一部を冷却フィンの無い領域とし、この領域に、台車枠の前記領域に対向する部分に面接触する伝熱体を接合し、この伝熱体を介して走行風が常時あたる台車枠に熱引きして前記領域を冷却することを特徴とする鉄道車両用全閉形電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用全閉形電動機に関する。
【0002】
電動式鉄道車両は、通常、車体を支持する台車枠に取り付けた主電動機の動力を歯車装置を介して車軸に伝達することで軌道上を走行するようになっている。主電動機としては、内部に外気を導入しない全閉方式の冷却構造を持つ所謂全閉形電動機を用いることが近年主流となっているが、全閉形電動機は例えば外気を導入する自己通風式のものと比較して冷却性能上は不利である。このため、全閉形電動機では、ロータとステータとを格納する電動機ケースの外表面に放熱面積の拡大を図る冷却フィンや冷却ブロックを設けることが一般である。
【0003】
ここで、台車枠は、軌道に沿うように配置される2本の側梁部と両側梁部間を結ぶ横梁部とで構成される。そして、主電動機が、その電動機ケースに突設した取付アームを介して横梁部に隙間を存して取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。このように主電動機を取り付けた場合、車両の走行時、台車枠(即ち、横梁部)に面する側には走行風が然程あたらず、その他の面に比較して冷却が不十分になり易い。この場合、走行風が然程あたらない電動機ケースの部分にて、十分な冷却性能が得られるように冷却フィンや冷却ブロックの数を増すことが考えられる。然し、これでは、主電動機の重量アップを招き、ひいては、台車枠の補強等も必要となって鉄道車両自体が重量アップしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−312875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、走行風が然程あたらない電動機ケースの部分を効果的に冷却できるようにした鉄道車両用全閉形電動機を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、外表面に冷却フィンを設けた電動機ケースを備え、電動機ケースに突設した取付アームを介して鉄道車両の台車枠に隙間を存して取り付けられる本発明の鉄道車両用全閉形電動機は、台車枠との間の隙間に臨む電動機ケースの外表面の一部を冷却フィンの無い領域とし、この領域に、台車枠の
前記領域に対向する部分に面接触する伝熱体を接合し
、この伝熱体を介して走行風が常時あたる台車枠に熱引きして前記領域を冷却することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、電動機ケースの外表面に接合した伝熱体を介して走行風が常時あたる台車枠に熱引きする構成を採用したため、車両の走行時、走行風が然程あたらない電動機ケースの部分を効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の鉄道車両用全閉形電動機を台車枠に取り付けた状態で示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の鉄道車両用全閉形電動機の実施形態を説明する。
図1を参照して、1は、図外の車体を支持する鉄道車両の台車枠である。台車枠1は、鉄等の機械的強度のある材料で構成され、軌道2に沿うように配置される2本の側梁部11とこれら側梁部11間に架設され、板材をコ字状に成形してなる横梁部12とを有する。両側梁部11の間には、軌道2上を転動する車輪31,31を支持する車軸3が軸支されている。そして、横梁部12に主電動機4が取り付けられ、主電動機4の動力を歯車装置5を介して車軸3に伝達することで鉄道車両が軌道2上を走行するようになっている。なお、図中、符号6は空気ばねであり、空気ばね6を含め鉄道車両自体は公知のものが利用できるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0010】
主電動機4としては全閉形電動機が用いられる。ここで、図示省略のロータとステータとを格納する電動機ケース41の形態以外、その内部構造を含め全閉形電動機4としては公知のものが利用できるため、電動機ケース41以外の詳細な説明は省略する。主電動機4の電動機ケース41は例えば鉄製であり、その外表面には放熱面積の拡大を図る冷却フィン42が複数列設されている。冷却フィン42としては、冷却性能を向上できるものであれば特に制限はなく、例えば、鉄と比較して軽量で熱伝導のよい材料、例えばアルミニウムで構成することができる。
【0011】
また、電動機ケース41の上部には取付アーム43が突設され、取付アーム43を介して横梁部12に取り付けられる。具体的には、取付アーム43の先端を横梁部12の上面に当接させた状態でボルト71により締結され、横梁部12の下部を貫通するボルト72を電動機ケース41の下部に締結することで電動機ケース41が横梁部12に固定されるようになっている。なお、図中、44は、全閉形電動機4の落下を防止する補助ノーズである。
【0012】
ここで、上述のように、全閉形電動機4を横梁部12に取り付けた場合、車両の走行時、横梁部12に面する側には走行風が然程あたらず、その他の面に比較して冷却が不十分になり易い。そこで、本実施形態では、横梁部12側に面する電動機ケース41の外表面の一部を冷却フィンの無い領域41aとし、領域41aに、この領域41aに対向する横梁部12側面部分に面接触する伝熱体8を接合することとした。伝熱体8は、例えば、領域41aと同等の面積を持つアルミニウム製の板材で構成される。そして、取付アーム43を介して電動機ケース41を横梁部12に取り付けたとき、電動機ケース41の外表面と横梁部12との間の隙間を埋めて横梁部12にその全面に亘って面接触するようにしている。
【0013】
以上の実施形態によれば、電動機ケース41の外表面に接合した伝熱体8を介して走行風が常時あたる台車枠1の横梁部12に熱引きするため、車両の走行時、走行風が然程あたらない電動機ケース41の部分を効果的に冷却することができる。また、電動機ケース41の外表面に
伝熱体8を接合しただけであるため、主電動機4の重量アップも抑制でき、有利である。
【0014】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、伝熱体8をアルミニウム製の板材で構成したものを例に説明したが、走行風が然程あたらない電動機ケース41の部分を効果的に冷却することができれば、これに限定されるものではなく、その材質や形状を適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0015】
1…鉄道車両の台車枠、12…横梁部(台車枠の構成要素)、4…主電動機(全閉形電動機)、41…電動機ケース、41a…外表面に冷却フィンの無い電動機ケースの領域、42…冷却フィン、43…取付アーム、8…伝熱体(アルミニウム製の板材)。