特許第6581889号(P6581889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581889
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】ガイドワイヤー挿通用補助具
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20190912BHJP
【FI】
   A61M25/09 530
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-233821(P2015-233821)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-99519(P2017-99519A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(72)【発明者】
【氏名】横溝 裕司
(72)【発明者】
【氏名】桂 英毅
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−154011(JP,A)
【文献】 特開2005−160952(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0141960(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0290433(US,A1)
【文献】 特開2009−189386(JP,A)
【文献】 特開2006−122181(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0149292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルのガイドワイヤールーメンに対してガイドワイヤーを挿入するための補助具であって、
一端領域から他端領域に対して直線的に延びるスリットが設けられている治具本体を有しており、
前記治具本体は、前記一端領域が高さ方向の厚みが厚く、前記他端領域が前記一端領域より厚みが薄くなるようにされていて、
前記一端領域では、前記スリットの形成深さが深く、前記他端領域では前記スリットの形成深さが浅くなるようにされており、
前記他端領域の前記スリットは、前記カテーテルのカテーテルシースを前記スリットの延びる方向に沿って差し込む挿入案内溝とされ、
前記カテーテルシースが前記一端領域まで差し込まれて、該一端領域におけるスリット出口において前記カテーテルシースの端部が位置した際に前記スリット出口開口に前記ガイドワイヤールーメンの端部が視認可能な状態で露出する構成とした
ことを特徴とする補助具。
【請求項2】
前記治具本体の前記スリットの内径が前記カテーテルシースの外径よりもわずかに小さく構成されていることを特徴とする請求項1に記載の補助具。
【請求項3】
前記スリットの前記一端領域は、挿入された前記カテーテルシースを埋設して位置ずれしないようにされた保持部であることを特徴とする請求項2に記載の補助具。
【請求項4】
前記スリットの前記他端領域は、挿入されたカテーテルシースの一部が浅い前記スリットから露出されることにより、作業に際して、作業者が前記治具本体の前記他端領域と前記カテーテルシースの一部とを把持することができる構成とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載した補助具。
【請求項5】
前記保持部の長さ方向の距離が、少なくとも前記複数のガイドワイヤールーメン間の離間距離より大きいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の補助具。
【請求項6】
前記保持部では、前記スリットの底部が広く、前記カテーテルシースを完全に包囲する形状とされていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の補助具。
【請求項7】
前記スリット出口開口は外方に向かって徐々に拡径されることにより、ガイドワイヤールーメンの視認を容易とする視認部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のガイドワイヤールーメンを持つカテーテルの各ガイドワイヤールーメンに容易にガイドワイヤーを挿通することができる補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは患者の体内への薬液の注入や、体外への廃液を行ったりして、医療現場で広く使用されている。
このようなカテーテルの使用に当たっては、多くの場合、カテーテルを患者の身体内に導入する際にガイドワイヤーが使用されている。
ガイドワイヤーは、カテーテルよりも細く柔軟なために、患者の体内の血管等に入り込んで、体腔内の湾曲や屈折箇所などにおいて、より適切に追随することができる。このため、カテーテルに先行してガイドワイヤーを体内に送り込むことで、目的位置までより安全かつ容易に操作することができ、このガイドワイヤーを体内に留置した後で、このガイドワイヤーに沿うようにカテーテルを送り込んで使用するのが一般的である。
【0003】
このように、カテーテル使用時にガイドワイヤーを利用する場合には、カテーテル先端にガイドワイヤーを通す必要がある。しかし、カテーテルは非常に細い管体であり、カテーテルにガイドワイヤーを通して治療準備することは簡単ではない。
そのため、本出願人は、以前に、カテーテル先端部を固定し、それに対して、ガイドワイヤーを対向させて挿入するような補助治具を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3902944
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この補助治具は、平板状の治具本体にカテーテル先端部の外形に沿った形状の溝を形成して、この溝内にカテーテル先端部を嵌合するものである。さらに、治具本体にはカテーテル形状の溝の先に細い案内溝が形成されていて、嵌合したカテーテル先端部と対向してガイドワイヤーを移動させ、細いカテーテル先端部の空孔(ルーメン)にガイドワイヤーを挿入する構成とされている。
【0006】
しかしながら、最近では、例えば、カテーテル先端に光学素子や音響素子を用いた計測手段を備えるものが使用されており、そのため、カテーテル先端には、これらの素子による走査経路等を避けるようにして、所定の間隔を設け、ガイドワイヤーを通すためのガイドワイヤールーメンが二か所設けられたタイプのもの等が使用されている。
このようなカテーテルにおいては、従来の補助治具では、二か所のガイドワイヤールーメンに極細のガイドワイヤーを案内して挿入することができない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数のガイドワイヤールーメンを備えるカテーテルに適切にガイドワイヤーを案内することができ、容易に各ルーメンにガイドワイヤーを挿通させ、かつ治具からの取り外しも容易にできるガイドワイヤー挿入のための補助具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
カテーテルのガイドワイヤールーメンに対してガイドワイヤーを挿入するための補助具であって、一端領域から他端領域に対して直線的に延びるスリットが設けられている治具本体を有しており、前記治具本体は、前記一端領域が高さ方向の厚みが厚く、前記他端領域が前記一端領域より厚みが薄くなるようにされていて、前記一端領域では、前記スリットの形成深さが深く、前記他端領域では前記スリットの形成深さが浅くなるようにされており、前記他端領域の前記スリットは、前記カテーテルのカテーテルシースを前記スリットの延びる方向に沿って差し込む挿入案内溝とされ、前記カテーテルシースが前記一端部まで差し込まれて、該一端部におけるスリット出口において前記カテーテルシースの端部が位置した際に前記スリット出口開口に前記ガイドワイヤールーメンの端部が視認可能な状態で露出する構成としたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、補助具を配置したら、前記スリットの治具本体の他端領域の端部から、前記スリットにカテーテルシース側を向けて、該スリットに沿ってカテーテルを挿入することで、該カテーテルを補助具に簡単にセットすることができる。
このカテーテルを前記スリットのさらに奥まで押し込むと、前記スリット出口開口に、前記カテーテルに形成されている前記ガイドワイヤールーメンの端部から視認可能な状態で露出するので、前記治具本体の厚みの薄い前記他端領域を、溝から一部はみ出しているカテーテルとともに把持することができる。
そして、前記本端の一端領域を術者が見やすい位置に向けて、前記スリット出口開口に露出している前記ガイドワイヤールーメンの端部に対して、他方の手で持ったガイワイヤを通すことで、ガイドワイヤールーメン内に簡単に挿入できる。
続いて、そのままガイドワイヤールーメンを深く挿入すると、前記スリットに沿って案内されて、別のガイドワイヤールーメンに、さらにガイドワイヤーが挿入されるので、複数のガイドワイヤールーメンにガイドワイヤーを挿通する作業がきわめて容易となる。
【0010】
好ましくは、 前記治具本体の前記スリットの内径が前記カテーテルシースの外径よりもわずかに小さく構成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記スリット内でカテーテルシースはしっかり保持されるので、作業がきわめて容易となる。
【0011】
好ましくは、 前記スリットの前記一端領域は、挿入された前記カテーテルシースを埋設して位置ずれしないようにされた保持部であることを特徴とする。
上記構成によれば、前記一端領域は十分な厚みがあるので、そこのスリットも深く形成できるので、カテーテルシース全体を十分に埋設でき、作業中にカテーテルシースをよりしっかり保持できる。
【0012】
好ましくは、前記スリットの前記他端領域は、挿入されたカテーテルシースの一部が浅い前記スリットから露出していることにより、作業に際して作業者が前記治具本体の前記他端領域と前記カテーテルシースの一部とを把持することができる構成とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、カテーテルシースと治具本体とを作業者の手でしっかり把持できるので、一層作業しやすい。
【0013】
好ましくは、前記保持部の長さ方向の距離が、少なくとも前記複数のガイドワイヤールーメン間の離間距離より大きいことを特徴とする。
上記構成によれば、ガイドワイヤールーメンが途中で途切れる箇所の全長に亘って、カテーテルシースを、前記スリットが覆うことができるから、作業中にガイドワイヤーが位置ずれしてしまうことが無い。
【0014】
好ましくは、前記保持部では、前記スリットの底部が広く、前記カテーテルシースを完全に包囲する形状とされていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記スリットが形成する溝は奥側(下部)でカテーテルシースの外周をほぼ全体に亘って保持するから、作業中に軸周り方向に位置ずれすることなく、作業が精密かつ容易にできる。
【0015】
好ましくは、前記スリット出口開口は外方に向かって徐々に拡径されることにより、ガイドワイヤールーメンの視認を容易とする視認部が設けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、外部から見える形状の相違に基づいて、視認部の位置確認が容易である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、複数のガイドワイヤールーメンを備えるカテーテルに適切にガイドワイヤーを案内することができ、容易に各ルーメンにガイドワイヤーを挿通させ、かつ治具からの取り外しも容易にできるガイドワイヤー挿入のための補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る補助具の他端領域から見た概略斜視図。
図2図1の補助具の概略側面図。
図3図1の補助具をA方向から見た図。
図4図1の補助具をB方向から見た図。
図5図1の補助具を使用する対象であるカテーテル先端部の断面構造例。
図6】ガイドワイヤーの先端部の形状の一例。
図7図1の補助具を用いてガイドワイヤーの挿通作業を説明するための説明図。
図8図1の補助具を用いてガイドワイヤーの挿通作業を説明するための説明図。
図9図1の補助具を用いてガイドワイヤーの挿通作業を説明するための説明図。
図10図1の補助具を用いてガイドワイヤーの挿通作業を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係るガイドワイヤーを挿入するための補助具(以下、「補助具」という。)の一例である。
図1および図2において、この補助具10は、治具本体(以下、「本体」という。)11と、本体11の一端領域12と、本端11の他端領域13を有しており、本体11には、その中央部で幅方向のほぼ中央部に上部が開口した長い溝であるスリット21が形成されている。案内部としてのスリット21は一端領域12から他端領域13に対して、直線的に設けられている。
【0020】
本体11を構成する材料としては、変形の少ない硬質の材料による成形物が好ましくは、例えば、ポリプロピレンやそのオレフィン系高分子材料、ポリカーボネートポリエステル、ポリアミド等の高分子材料が挙げられるが、ステンレス鋼等の金属材料を用いることができる。
【0021】
本体11は、図1の場合は、ほぼ矩形の形態であり、長さは約20ないし70mm、好ましくは25ないし60mm,さらに好ましくは30ないし50mm程度である。本体11の幅は15から35mm、好ましくは15ないし30mm、さらに好ましくは、8ないし25mm程度である。
図2に示す一端領域12の厚みD1は、少なくとも3mmないし5mm程度必要である。他端領域13の厚みD2は、少なくとも1mmないし3mm程度必要である。
他端領域13は、後述するように、ガイドワイヤー挿通時の把持部である。
また、好ましくは、本体11の底面は平坦面としない。適宜粗面としたり、凹凸を設けたり、適当な大きさの突起を設ける。本実施形態では、本体11の底面は円柱の一部のような構造を取っている。このように本体11の底面を平面以外の構造とするのは、スリット(溝)を上向きに作業台等に置いた状態で、作業者が補助具の両端をつかみ易くするためである。
【0022】
さらに、図1ないし図2から明らかなように、好ましくは一端領域12から他端領域13にかけてはなだらかな下降傾斜曲面14,14が形成されている。
また、後述するガイドワイヤーの挿入案内溝としてのスリット21の上部開口は一端領域12では、狭い開口(後述するカテーテルシースより細い寸法でなる。)22と、他端領域13では、22よりも広い開口(後述するカテーテルシースが露出し得る寸法でなる。)23とされている。
【0023】
好ましくは、本体11のスリット23の符号23aはほぼテーパ状の開口縁が面取りされている。つまり、後述するガイドワイヤーの挿入案内口である。これに対して、反対側に位置するスリット22のスリット出口開口は拡大開口とされて、後述するガイドワーヤールーメンの端部が視認できるように、露出するものである。
【0024】
図3は、図1の補助具をA方向から見た図であり、図4は、図1の補助具をB方向から見た図である。
図3において一端領域12に形成されたスリット21は、上部スリット21aと下部スリット21bを有し、上部スリット21aの幅W1は、図4の他端領域に形成されたスリット23の幅W2よりも狭く作られている。
このため、図3において下部スリット21bは上部が僅かに開口された管形であり、下部スリット21bの断面はほぼ円形で、その内径は、後述するカテーテルのカテーテルシース外径よりも僅かに小さい。このため、後述するように、カテーテルシースは下部スリット21b内に挿入されると周囲から締め付けて、滑らないように固定保持できる。
【0025】
このように、スリット21の奥側である下部スリット21bはカテーテルシース保持部としての役割を果たす。
この締付け効果を発揮する下部スリット21bが形成されている距離は図1のL2であり、この距離L2は、好ましくは、後述するカテーテルにおける2つのガイドワイヤールーメン間の距離L1と同じか、これより長いことが好ましい。
【0026】
さらに、一端領域端部においては、スリット21の幅は端部に向かって徐々に拡開されている。このため、術者は、後述するカテーテルをスリット21に挿入した際に、後述するように露出したガイドワイヤールーメンが視認しやすい。このように、作業中は、符号21cの箇所は視認部21cとなる。
図1の符号15は、本体11の表面にスリットに沿って挿入方向を指示するようなシンボルもしくは形状を利用した表示を設けている。この実施形態では、例えば矢印を一体に形成することで設けた挿入目印である。
挿入目印15は、矢印に限られるものではなく、三角形等の他の形状や文字表現等であってもよい。
【0027】
次に、本実施形態の補助具10をより正確に理解するために、この補助具10が使用されるカテーテルの一例について図3を参照して説明する。
図5はカテーテルの先端部を示す概略断面図である。
図において、カテーテル50は、例えば、太さ1mm程度の非常に細いカテーテルシース(「チューブ」ともいう)60内に複数のルーメンが形成されている。
カテーテルシース60は、ガイドワイヤー51に導かれて、治療や計測の目的で生体体腔等の生体内に挿入される。
【0028】
図6は、ガイドワイヤーの先端部を拡大して示す図である。
ガイドワイヤー51は図6に示されるように、カテーテルよりはるかに細い金属線である。ガイドワイヤー51は、例えば、ステンレス鋼やニッケルーチタン等の線材で、0.018ないし0.036mm程度の極細の線材であるが、その先端付近は、体腔内で進路探索等に便利なように屈曲部51aを有している。
【0029】
ここで、図5のカテーテル50は、例えば、超音波カテーテルであって、カテーテルシース60には、計測に用いる計測用ルーメン53が形成されている。計測用ルーメンはカテーテルシース60内の長さ方向に設けられた中空部分である。計測用ルーメン53には、例えば超音波振動子を内蔵した検査波送受信部としての検査ヘッド54と、検査ヘッド54を計測用ルーメン53内で所定距離移動させる駆動シャフト57を有している。
検査ヘッド54から患部に発射された超音波を受信することにより、超音波断層画像を得ることができるようになっている。
【0030】
カテーテル50には、ガイドワイヤー51を挿通するために、カテーテルシースの先端側に配置された第1のガイドワイヤールーメン55と、この第1のガイドワイヤールーメン51と軸方向に所定距離L1だけ離れて第2のガイドワイヤールーメン56が形成されている。カテーテル50が複数、例えば2つのガイドワイヤールーメンを備えるようにしたのは以下の理由による。
すなわち、カテーテル50では、検査ヘッド54からの超音波を妨げるルーメンの形成を避けるために、ガイドワイヤールーメンを第1のガイドワイヤールーメン51と第2のガイドワイヤールーメン56とに分割したものである。
しかしながら、このような構造であると、ガイドワイヤー51を、先ず第1のガイドワイヤールーメン55に通した後で、カテーテルシース60の外部に導出して、ガイドワイヤー51を、ふたたび第2のガイドワイヤールーメン56内に挿入しなくてはならない。ガイドワイヤールーメンの細さを考えると、この作業は非常に難しい。
特に図6に示すようにガイドワイヤー51の先端部51aは湾曲しているのが通常であるから、第1のガイドワイヤールーメン55を通ったとしても、その後ガイドワイヤーの線の屈曲部が上等に向いてしまうと、2つのガイドワイヤールーメン55,56に連続して挿通するのは困難を極める。
【0031】
そこで、本実施形態の補助具10を用いて、ガイドワイヤーを複数のガイドワイヤールーメンに挿入する方法を順次説明する。
図7を参照する。
先ず補助具10の本体を図示するように配置したら、挿入目印15に沿って、すなわち矢印F方向にそって、本体1の他端領域の図4で示した挿入案内口23aから図5で説明したカテーテル50の先端部を強制的に挿入する。既に説明したとおり、スリットの下部は一部でカテーテルシース60よりも僅かに小径であるから、この際には若干スリット23,21を拡げながら挿入される。ここで、図5と違うのは、まだガイドワイヤーが挿入されていない。
気を付けなければならないのは、挿入に際して、カテーテル50の挿入時には、図5の姿勢、すなわちカテーテルシース60を必ず下にして、スリット22に挿入することである。上下方向を誤ると、適切にガイドワイヤーを挿入できないことに注意する。
このように方向を定めてカテーテル50の先端部を挿入すると、図3で説明した下部スリット21bにカテーテルシース60を適切に通すことができる。
【0032】
カテーテル50をそのまま挿入方向に進めると、図8に示すように、カテーテルシースに形成されている第1ガイドワーヤールーメン55の端部が、本体11の一端領域12の端部において、視認部21cに現れる。
ついで、一方の手で他端領域13を露出している第2ガイドワイヤールーメン56を上から抑えるように把持する。そして、第1ガイドワイヤールーメン55に図示するようにガイドワイヤー51を挿入する。
【0033】
ここで、注意を要するのは、ガイドワイヤー51について、図6で示した上下の向きを反対にして、屈曲部51aを下方に向けて第1ガイドワイヤールーメン55に挿入することである。これにより、ガイドワイヤー51の屈曲部51aは上に向かわずに、案内される。
しかも、図8の状態では、カテーテルシース60が一端領域の内部で、図3で説明したカテーテルシース保持部によって締付け保持されているから、位置ずれすることが無い。
そして、図8の状態でガイドワイヤー51をスリット21,23を利用して直線的に挿入を進めるだけで、図5で説明した直線的に並んでいる第1ガイドワイヤールーメン55と第2ガイドワイヤールーメン56にきわめて容易に順次挿通される。
【0034】
次に、図9に示されているように、ガイドワイヤー51が挿通されたカテーテル50を矢印H方向に移動させる。この時、スリット21,23の内部では、カテーテルシース60は挿入時と反対方向に移動して、補助具10から容易に抜き取られる。
【0035】
続いて、図10に示されているように、補助具10には、もはや極端に細いガイドワイヤー51だけが残されているから、矢印Jの方向に持ち上げる。これにより、細いガイドワイヤー51は、スリット21,23からなんの障害もなく上方に移動して、補助具10から容易に取り外すことができる。
【0036】
以上述べたように、本実施形態によれば、複数のガイドワイヤールーメン55,56を備えるカテーテル50に適切にガイドワイヤー51を案内することができ、容易に各ルーメン55,56にガイドワイヤー51を挿通させ、かつ取り外しも容易にできるガイドワイヤー挿入のための補助具10を提供することができる。
【0037】
しかも上述の実施形態では、治具本体11のスリット21の下部スリット21bの内径がカテーテルシース60の外径よりもわずかに小さく構成されているから、スリット21内でカテーテルシース60はしっかり保持されるので、ガイドワイヤー51の挿入作業がきわめて容易となる。
すなわち、スリットの一端領域12の部分は、挿入されたカテーテルシース60を埋設して位置ずれしないようにされた保持部である。
【0038】
また、スリットの他端領域部分13は、挿入されたカテーテルシース60の一部が浅いスリットから露出していることにより、図8で説明したように、作業に際して作業者が本体11の他端領域13とカテーテルシース60の一部とを把持することができるので、
一層作業しやすい。
さらにまた、保持部の長さ方向の距離L1が、図5で示した複数のガイドワイヤールーメン間の離間距離L2より大きいので、ガイドワイヤールーメン55,56間で途切れる箇所の全長に亘って、カテーテルシース60をスリットが覆うことができるから、作業中にガイドワイヤーが位置ずれしてしまうことが無い。
しかもこの場合、保持部21bでは、スリットの底部が広く、カテーテルシース60を完全に包囲する形状とされているから、スリットが形成する溝は奥側(下部)でカテーテルシース60の外周をほぼ全体に亘って保持することで、作業中に軸周り方向に位置ずれすることなく、作業が精密かつ容易にできる。
【0039】
ところで本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
補助具の外形は、本実施形態の図示のような長方形に限らず、正方形でもよく、長楕円、楕円形、あるいは四角形以外の多角形でもよい。
本発明の補助具が利用されるカテーテルは、2つのガイドワイヤールーメンを備える者に限らず、3つ以上のガイどワイヤールーメンを備えるものに使用することができる。また、カテーテルの小型化にともない、一つのガイドワイヤールーメンを備えるカテーテルにも使用することができる。
なお、上述の各実施形態、変形例の個別の構成は、必要により省略したり、説明しない他の構成と組み合わせたりしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10・・・補助具、11・・・本体、12・・・一端領域、13・・・他端領域、21,23・・・スリット、51・・・ガイドワイヤー、60・・・・カテーテルシース(チューブ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10