特許第6581892号(P6581892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6581892
(24)【登録日】2019年9月6日
(45)【発行日】2019年9月25日
(54)【発明の名称】摩擦伝動ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/06 20060101AFI20190912BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20190912BHJP
   C08L 61/04 20060101ALI20190912BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20190912BHJP
   F16G 5/20 20060101ALN20190912BHJP
【FI】
   F16G1/06
   C08L21/00
   C08L61/04
   C08L25/04
   !F16G5/20 A
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-239586(P2015-239586)
(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公開番号】特開2017-106515(P2017-106515A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】原 浩一郎
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−258201(JP,A)
【文献】 特開2007−139062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/06
C08L 21/00
C08L 25/04
C08L 61/04
F16G 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト内周側のプーリ接触部分を構成するゴム層を有する摩擦伝動ベルトであって、
前記ゴム層は、架橋したゴム成分と、フェノール樹脂と、ハイスチレン樹脂と、を含有するゴム組成物で形成されており、
前記ゴム組成物における前記フェノール樹脂の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して8〜20質量部であり、且つ前記ハイスチレン樹脂の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して5〜10質量部である摩擦伝動ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
前記ゴム組成物における前記ゴム成分100質量部に対する前記フェノール樹脂の含有量が前記ハイスチレン樹脂の含有量よりも多い摩擦伝動ベルト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
前記ゴム組成物のJIS K6251に基づいて測定されるベルト長さ方向の10%伸び時における引張応力が1.5MPa以上である摩擦伝動ベルト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
前記ゴム組成物のJIS K6251に基づいて測定される切断時伸びが450%以上である摩擦伝動ベルト。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
前記ゴム組成物が多孔ゴムである摩擦伝動ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は摩擦伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト内周側のプーリ接触部分を構成するゴム層を有する摩擦伝動ベルトが広く知られている。特許文献1には、そのゴム層を形成するゴム組成物に、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂、クマロンインデン樹脂、アミノ樹脂、ビニルトルエン樹脂、リグニン樹脂、ブチルフェノールアセチレン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂の少なくとも1種からなる有機補強剤がゴム成分に対して1〜20質量%配合された伝動ベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−258201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、伝動能力及び耐クラック性の優れる摩擦伝動ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成するゴム層を有する摩擦伝動ベルトであって、前記ゴム層は、架橋したゴム成分と、フェノール樹脂と、ハイスチレン樹脂とを含有するゴム組成物で形成されており、前記ゴム組成物における前記フェノール樹脂の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して8〜20質量部であり、且つ前記ハイスチレン樹脂の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して5〜10質量部である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成するゴム層を形成するゴム組成物において、フェノール樹脂の含有量がゴム成分100質量部に対して8〜20質量部であり、且つハイスチレン樹脂の含有量がゴム成分100質量部に対して5〜10質量部であることにより、高弾性であることから優れた伝動能力を得ることができると共に、高弾性であるにも関わらず優れた耐クラック性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係るVリブドベルトの斜視図である。
図2】実施形態1に係るVリブドベルトのVリブ1個分の断面図である。
図3】ベルト成形型の縦断面図である。
図4】ベルト成形型の一部分の縦断面拡大図である。
図5】実施形態1に係るVリブドベルトの製造方法の第1の説明図である。
図6】実施形態1に係るVリブドベルトの製造方法の第2の説明図である。
図7】実施形態1に係るVリブドベルトの製造方法の第3の説明図である。
図8】実施形態1に係るVリブドベルトの製造方法の第4の説明図である。
図9】自動車の補機駆動ベルト伝動装置のプーリレイアウトを示す図である。
図10】実施形態2に係るVリブドベルトの斜視図である。
図11】実施形態2に係るVリブドベルトのVリブ1個分の断面図である。
図12】実施形態2に係るVリブドベルトの製造方法の第1の説明図である。
図13】実施形態2に係るVリブドベルトの製造方法の第2の説明図である。
図14】実施形態3に係るVリブドベルトの斜視図である。
図15】実施形態3に係るVリブドベルトのVリブ1個分の断面図である。
図16】実施形態3に係るVリブドベルトの製造方法の第1の説明図である。
図17】実施形態3に係るVリブドベルトの製造方法の第2の説明図である。
図18】実施形態3に係るVリブドベルトの製造方法の第3の説明図である。
図19A】その他の実施形態に係るローエッジ型Vベルトの斜視図である。
図19B】その他の実施形態に係る平ベルトの斜視図である。
図20A】伝動能力評価用ベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す図である。
図20B】耐クラック性評価用ベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】
(実施形態1)
図1及び2は、実施形態1に係るVリブドベルトB(摩擦伝動ベルト)を示す。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動用のベルト伝動装置等に用いられるエンドレスのものである。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト長さが700〜3000mm、ベルト幅が10〜36mm、及びベルト厚さが4.0〜5.0mmである。
【0010】
実施形態1に係るVリブドベルトBは、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成する圧縮ゴム層11と中間の接着ゴム層12とベルト外周側の背面ゴム層13との三重層に構成されたVリブドベルト本体10を備えている。Vリブドベルト本体10の接着ゴム層12の厚さ方向の中間部には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線14が埋設されている。圧縮ゴム層11の厚さは例えば1.0〜3.6mmであり、接着ゴム層12の厚さは例えば1.0〜2.5mmであり、背面ゴム層13の厚さは例えば0.4〜0.8mmである。なお、背面ゴム層13の代わりに背面補強布が設けられた構成であってもよい。
【0011】
圧縮ゴム層11は、複数のVリブ15がベルト内周側に垂下するように設けられている。複数のVリブ15は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ15は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmである。Vリブ数は例えば3〜6個である(図1では6個)。
【0012】
圧縮ゴム層11は、ゴム成分に、フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂を含む種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧してゴム成分を架橋させたゴム組成物で形成されている。従って、圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、架橋したゴム成分とフェノール樹脂及びハイスチレン樹脂を含む各種の配合剤とを含有する。
【0013】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(以下「EPDM」という。)、エチレン−プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン−ブテンコポリマー(EDM)、エチレン−オクテンコポリマー(EOM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー;クロロプレンゴム(CR);クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM);水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、これらのうち1種又は2種以上をブレンドして用いることが好ましく、エチレン−α−オレフィンエラストマーを用いることが好ましく、EPDMを用いることがより好ましい。
【0014】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーである場合、そのエチレン含量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは57質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは59質量%以下である。
【0015】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分がEPDMである場合、そのジエン成分としては、例えば、エチリデンノボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が挙げられる。ジエン成分は、これらのうちエチリデンノボルネンが好ましい。
【0016】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分がEPDMであり、且つそのジエン成分がエチリデンノボルネンである場合、そのENB含量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは4.4質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4.6質量%以下である。
【0017】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分におけるエチレン−α−オレフィンエラストマーの125℃におけるムーニー粘度は、好ましくは15ML1+4(125℃)以上、より好ましくは18ML1+4(125℃)以上であり、また、好ましくは75ML1+4(125℃)以下、より好ましくは70ML1+4(125℃)以下、更に好ましくは20ML1+4(125℃)以下である。ムーニー粘度は、JISK6300に基づいて測定される。
【0018】
フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂であることが好ましい。フェノール樹脂は、カシュー変性フェノール樹脂であることが好ましい。フェノール樹脂の融点は、79℃以下であることが好ましい。この融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって求められる。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物には、粉末状のフェノール樹脂が分散して含まれていることが好ましい。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物におけるフェノール樹脂の含有量(A)は、ゴム成分100質量部に対して8〜20質量部であるが、好ましくは10質量部以上、より好ましくは12質量部以上であり、また、好ましくは18質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
【0019】
ハイスチレン樹脂は、酸塩型凝固剤を用いたものが好ましい。ハイスチレン樹脂のスチレン含量は、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。ハイスチレン樹脂の100℃におけるムーニー粘度は、好ましくは50ML5+4(100℃)以上、より好ましくは58ML5+4(100℃)以上であり、また、好ましくは70ML5+4(100℃)以下、より好ましくは64ML5+4(100℃)以下である。このムーニー粘度は、JISK6300に基づいて測定される。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物には、ハイスチレン樹脂がゴム成分に溶解するように含まれていることが好ましい。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物におけるハイスチレン樹脂の含有量(B)は、ゴム成分100質量部に対して5〜10質量部であるが、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0020】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物において、ゴム硬度の温度依存性を小さくする観点から、ゴム成分100質量部に対するフェノール樹脂の含有量(A)はハイスチレン樹脂の含有量(B)よりも多いことが好ましい。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物におけるゴム成分100質量部に対するフェノール樹脂の含有量(A)のハイスチレン樹脂の含有量(B)に対する比(A/B)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1以上であり、また、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0021】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物において、フェノール樹脂の含有量(A)とハイスチレン樹脂の含有量(B)との和(A+B)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。
【0022】
配合剤としては、カーボンブラックなどの補強材、軟化剤、加工助剤、加硫助剤、架橋剤、加硫促進剤等が挙げられる。
【0023】
補強材としては、カーボンブラックでは、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック等が挙げられる。補強材としてはシリカも挙げられる。補強材は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、HAF及びGPFを併用することがより好ましい。
【0024】
補強材の含有量(C)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。HAF及びGPFを併用する場合、圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物において、後述の優れた伝動能力及び耐クラック性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対するHAFの含有量(C1)はGPFの含有量(C2)よりも多いことが好ましい。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物におけるゴム成分100質量部に対するHAFの含有量(C1)のGPFの含有量(C2)に対する比(C1/C2)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは2.2以上であり、また、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.4以下である。
【0025】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物において、後述の優れた伝動能力及び耐クラック性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対する補強材(カーボンブラック)の含有量(C)は、フェノール樹脂の含有量(A)とハイスチレン樹脂の含有量(B)との和(A+B)よりも多いことが好ましい。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物におけるゴム成分100質量部に対する補強材(カーボンブラック)の含有量(C)のフェノール樹脂の含有量(A)とハイスチレン樹脂の含有量(B)との和(A+B)に対する比(C/(A+B))は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上であり、また、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.3以下である。
【0026】
軟化剤としては、例えば、石油系軟化剤;パラフィンワックスなどの鉱物油系軟化剤;ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落下生油、木ろう、ロジン、パインオイルなどの植物油系軟化剤等が挙げられる。軟化剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば2〜30質量部である。
【0027】
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸等が挙げられる。加工助剤は、1種を用いても、2種以上を用いても、どちらでもよい。加工助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜5質量部である。
【0028】
加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)や酸化マグネシウムなどの金属酸化物等が挙げられる。加硫助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。加硫助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば1〜10質量部である。
【0029】
架橋剤としては、例えば、硫黄、有機過酸化物が挙げられる。架橋剤は、硫黄を単独で用いても、また、有機過酸化物を単独で用いても、更には、それらの両方を併用しても、いずれでもよい。架橋剤の配合量は、硫黄の場合、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜4質量部であり、有機過酸化物の場合、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜8質量部である。
【0030】
加硫促進剤としては、金属酸化物、金属炭酸塩、脂肪酸及びその誘導体等が挙げられる。加硫促進剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜8質量部である。
【0031】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、短繊維を含有していなくても、フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂を含有していることにより高弾性となる。従って、圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、むしろ短繊維を含有していないことが好ましい。但し、フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂を含有していることによる後述の優れた伝動能力及び耐クラック性の作用効果を損なわない範囲で、短繊維を含んでいてもよい。
【0032】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物のJIS K6251に基づいて測定されるベルト長さ方向、つまり、列理方向の10%伸び時における引張応力は、好ましくは1.5MPa以上、より好ましくは1.6MPa以上であり、また、好ましくは2.5MPa以下、より好ましくは2.4MPa以下、更に好ましくは2.0MPa以下である。
【0033】
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物のJIS K6251に基づいて測定されるベルト長さ方向(列理方向)の切断時伸びは、好ましくは450%以上、より好ましくは460%以上であり、また、好ましくは600%以下、より好ましくは500%以下、更に好ましくは470%以下である。
【0034】
接着ゴム層12は、断面横長矩形の帯状に構成されている。背面ゴム層13も、断面横長矩形の帯状に構成されている。背面ゴム層13の表面は、接触する平プーリとの間で生じる音を抑制する観点から、織布の布目が転写された形態に形成されていることが好ましい。
【0035】
接着ゴム層12及び背面ゴム層13のそれぞれは、ゴム成分に種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋剤により架橋したゴム組成物で形成されている。従って、接着ゴム層12及び背面ゴム層13のそれぞれは、架橋したゴム成分と各種の配合剤とを含有する。背面ゴム層13は、平プーリとの接触で粘着が生じるのを抑制する観点から、接着ゴム層12よりもやや硬めのゴム組成物で形成されていることが好ましい。
【0036】
接着ゴム層12及び背面ゴム層13を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられるが、圧縮ゴム層11と同一のゴム成分であることが好ましい。
【0037】
配合剤としては、圧縮ゴム層11と同様、例えば、カーボンブラックなどの補強材、軟化剤、加工助剤、加硫助剤、架橋剤、加硫促進剤、ゴム配合用樹脂等が挙げられる。
【0038】
圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び背面ゴム層13は、同じ配合のゴム組成物で形成されていても、また、別配合のゴム組成物で形成されていても、どちらでもよい。
【0039】
心線14は、ポリエステル繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、アラミド繊維、ビニロン繊維等の撚り糸で構成されている。心線14の直径は例えば0.5〜2.5mmであり、断面における相互に隣接する心線14中心間の寸法は例えば0.05〜0.20mmである。心線14は、Vリブドベルト本体10の接着ゴム層12に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬された後に加熱される接着処理及び/又はゴム糊に浸漬された後に乾燥される接着処理が施されている。
【0040】
以上の構成の実施形態1に係るVリブドベルトBによれば、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成する圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物において、フェノール樹脂の含有量がゴム成分100質量部に対して8〜20質量部であり、且つハイスチレン樹脂の含有量がゴム成分100質量部に対して5〜10質量部であることにより、後述の実施例でも示す通り、高弾性であることから優れた伝動能力を得ることができると共に、高弾性であるにも関わらず優れた耐クラック性を得ることができる。
【0041】
次に、実施形態1に係るVリブドベルトBの製造方法について説明する。
【0042】
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造では、図3及び4に示すように、同心状に設けられた、各々、円筒状の内型21及び外型22を備えたベルト成形型20を用いる。
【0043】
このベルト成形型20では、内型21はゴム等の可撓性材料で形成されている。外型22は金属等の剛性材料で形成されている。外型22の内周面は成型面に構成されており、その外型22の内周面には、Vリブ形成溝23が軸方向に一定ピッチで設けられている。また、外型22には、水蒸気等の熱媒体や水等の冷媒体を流通させて温調する温調機構が設けられている。そして、このベルト成形型20では、内型21を内部から加圧膨張させるための加圧手段が設けられている。
【0044】
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造において、まず、ゴム成分に各配合剤を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して圧縮ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を作製する。同様に、接着ゴム層用及び背面ゴム層用の未架橋ゴムシート12’,13’も作製する。また、心線用の撚り糸14’をRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理を行った後、ゴム糊に浸漬して加熱乾燥する接着処理を行う。
【0045】
次いで、図5に示すように、表面が平滑な円筒ドラム24上にゴムスリーブ25を被せ、その上に、背面ゴム層用の未架橋ゴムシート13’、及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線用の撚り糸14’を円筒状の内型21に対して螺旋状に巻き付け、更にその上から接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’、及び圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート11’を順に巻き付けて積層体B’を形成する。なお、このとき、未架橋ゴムシート11’,12’,13’を、列理方向がベルト長さ方向(周方向)となるように巻き付ける。
【0046】
次いで、積層体B’を設けたゴムスリーブ25を円筒ドラム24から外し、図6に示すように、それを外型22の内周面側に内嵌め状態にセットする。
【0047】
次いで、図7に示すように、内型21を外型22にセットされたゴムスリーブ25内に位置付けて密閉する。
【0048】
続いて、外型22を加熱すると共に、内型21の密封された内部に高圧空気等を注入して加圧する。このとき、図8に示すように、内型21が膨張し、外型22の成型面に、積層体B’のベルト形成用の未架橋ゴムシート11’,12’,13’が圧縮され、また、それらのゴム成分の架橋が進行して一体化すると共に撚り糸14’と複合化し、最終的に、円筒状のベルトスラブSが成型される。このベルトスラブSの成型温度は例えば100〜180℃、成型圧力は例えば0.5〜2.0MPa、成型時間は例えば10〜60分である。
【0049】
そして、内型21の内部を減圧して密閉を解き、内型21と外型22との間でゴムスリーブ25を介して成型されたベルトスラブSを取り出し、ベルトスラブSを所定幅に輪切りして表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが得られる。なお、必要に応じて、ベルトスラブSの外周側、つまり、Vリブ15側の表面を研磨してもよい。
【0050】
図9は、実施形態1に係るVリブドベルトBを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置30のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置30は、VリブドベルトBが4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するサーペンタインドライブ方式のものである。
【0051】
この補機駆動ベルト伝動装置30は、最上位置にリブプーリのパワーステアリングプーリ31が設けられ、そのパワーステアリングプーリ31の下方にリブプーリのACジェネレータプーリ32が設けられている。また、パワーステアリングプーリ31の左下方には平プーリのテンショナプーリ33が設けられており、そのテンショナプーリ33の下方には平プーリのウォーターポンププーリ34が設けられている。更に、テンショナプーリ33の左下方にはリブプーリのクランクシャフトプーリ35が設けられており、そのクランクシャフトプーリ35の右下方にリブプーリのエアコンプーリ36が設けられている。これらのプーリは、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂成形品で構成されており、また、プーリ径がφ50〜150mmである。
【0052】
この補機駆動ベルト伝動装置30では、VリブドベルトBは、Vリブ15側が接触するようにパワーステアリングプーリ31に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面側が接触するようにテンショナプーリ33に巻き掛けられた後、Vリブ15側が接触するようにクランクシャフトプーリ35及びエアコンプーリ36に順に巻き掛けられ、更に、ベルト背面側が接触するようにウォーターポンププーリ34に巻き掛けられ、そして、Vリブ15側が接触するようにACジェネレータプーリ32に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ31に戻るように設けられている。プーリ間で掛け渡されるVリブドベルトBの長さであるベルトスパン長は例えば50〜300mmである。プーリ間で生じ得るミスアライメントは0〜2°である。
【0053】
(実施形態2)
図10及び11は、実施形態2に係るVリブドベルトBを示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は、実施形態1と同一符号を用いて示す。
【0054】
実施形態2に係るVリブドベルトBでは、圧縮ゴム層11は、表面ゴム層11aと内側ゴム部11bとを有する。表面ゴム層11aは、多孔ゴムで形成され、Vリブ15の表面全体に沿うように層状に設けられ、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成している。表面ゴム層11aの厚さは例えば50〜500μmである。内側ゴム部11bは、中実ゴムで形成され、表面ゴム層11aの内側に設けられ、圧縮ゴム層11における表面ゴム層11a以外の部分を構成している。
【0055】
ここで、本出願における「多孔ゴム」とは、内部に多数の中空部を有すると共に表面に多数の凹孔16を有する架橋済みのゴム組成物を意味し、中空部及び凹孔16が分散して配された構造並びに中空部及び凹孔16が連通した構造のいずれも含まれる。また、本出願における「中実ゴム」とは、「多孔ゴム」以外の中空部及び凹孔16を含まない架橋済みのゴム組成物を意味する。
【0056】
表面ゴム層11aは、実施形態1における圧縮ゴム層11と同様、架橋したゴム成分とフェノール樹脂及びハイスチレン樹脂を含む各種の配合剤とを含有するゴム組成物で形成されている。表面ゴム層11aは、それに加えて多孔ゴムであることから、その形成前の未架橋ゴム組成物に、多孔ゴムを構成するための未膨張の中空粒子及び/又は発泡剤が配合されている。
【0057】
未膨張の中空粒子としては、例えば、熱可塑性ポリマー(例えばアクリロニトリル系ポリマー)等で形成されたシェルの内部に溶剤が封入された粒子等が挙げられる。中空粒子は、1種だけ用いても、また、2種以上を用いても、どちらでもよい。中空粒子の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミドを主成分とするADCA系発泡剤、ジニトロソペンタメチレンテトラミンを主成分とするDPT系発泡剤、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを主成分とするOBSH系発泡剤、ヒドラゾジカルボンアミドを主成分とするHDCA系発泡剤などの有機系発泡剤等が挙げられる。発泡剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。発泡剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは4質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0058】
表面ゴム層11aは多孔ゴムであるので、その表面には多数の凹孔16が形成されている。凹孔16の平均孔径は、好ましくは40μm以上、より好ましくは80μm以上であり、また、好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下である。凹孔16の平均孔径は、表面画像で測定される50〜100個の数平均によって求められる。
【0059】
内側ゴム部11bは、架橋したゴム成分と各種の配合剤とを含有するゴム組成物で形成されている。内側ゴム部11bを形成するゴム組成物は、中空部及び凹孔16を除いた表面ゴム層11aを形成するゴム組成物と同一であってもよい。また、内側ゴム部11bを形成するゴム組成物は、接着ゴム層12又は背面ゴム層13を形成するゴム組成物と同一であってもよい。
【0060】
以上の構成の実施形態2に係るVリブドベルトBによれば、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成する圧縮ゴム層11の表面ゴム層11aを形成するゴム組成物において、フェノール樹脂の含有量がゴム成分100質量部に対して8〜20質量部であり、且つハイスチレン樹脂の含有量がゴム成分100質量部に対して5〜10質量部であることにより、高弾性であることから優れた伝動能力を得ることができると共に、高弾性であるにも関わらず優れた耐クラック性を得ることができる。しかも、表面ゴム層11aを形成するゴム組成物が多孔ゴムであり、低弾性でクラック発生確率が高いことが予想されるにも関わらず、優れた伝動能力及び耐クラック性を得ることができる。
【0061】
実施形態2に係るVリブドベルトBを製造するには、圧縮ゴム層11の表面ゴム層用及び内側ゴム部用の未架橋ゴムシート11a’,11b’を作製する。表面ゴム層用の未架橋ゴムシート11a’には中空粒子及び/又は発泡剤を配合する。次いで、実施形態1と同様の方法により、図12に示すように、表面が平滑な円筒ドラム24上に被せたゴムスリーブ25上に、背面ゴム層用の未架橋ゴムシート13’、及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線用の撚り糸14’を円筒状の内型21に対して螺旋状に巻き付け、更にその上から接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’、並びに圧縮ゴム層11における内側ゴム部用の未架橋ゴムシート11b’、及び表面ゴム層用の未架橋ゴムシート11a’を順に巻き付けて積層体B’を形成する。そして、この積層体B’により図13に示すような円筒状のベルトスラブSを成型する。
【0062】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0063】
(実施形態3)
図14及び15は、実施形態3に係るVリブドベルトBを示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は、実施形態1と同一符号を用いて示す。
【0064】
実施形態3に係るVリブドベルトBでは、圧縮ゴム層11は、表面ゴム層11aと内側ゴム部11bとを有する。表面ゴム層11aは、多孔ゴムで形成され、両側のVリブ15のそれぞれにおける外側の側面部に沿うように設けられ、また、相互に隣接する一対のVリブ15における対向する側面部及びそれらを連結するリブ底部に沿うように設けられ、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成している。この後者の表面ゴム層11aは、断面形状が逆U字状に形成されている。従って、各表面ゴム層11aは、両側のVリブ15のそれぞれにおける外側の側面部、又は、相互に隣接する一対のVリブ15における対向する側面部を含むように設けられている。表面ゴム層11aの厚さは例えば50〜500μmである。内側ゴム部11bは、中実ゴムで形成され、表面ゴム層11aの内側に設けられ、圧縮ゴム層11における表面ゴム層11a以外の部分を構成している。
【0065】
実施形態2に係るVリブドベルトBを製造するには、実施形態2と同様の方法により、図16に示すような円筒状のベルトスラブSを成型する。このベルトスラブSの外周には、周方向に延びる断面形状が略台形の突条15’が軸方向に連なるように形成されており、その表面層が多孔ゴム11a”で形成され且つそれ以外の内部が中実ゴム11b”で形成されている。そして、図17に示すように、ベルトスラブSを一対のスラブ掛け渡し軸26間に掛け渡すと共に、ベルトスラブSの外周に対し、周方向に延びるVリブ形状溝が外周の軸方向に連設された研削砥石27を回転させながら当接させ、また、ベルトスラブSも一対のスラブ掛け渡し軸26間で回転させる。このとき、図18に示すように、ベルトスラブSの外周の突条が研削されることに複数のVリブ15が形成され、これらの複数のVリブ15において、多孔ゴムの表面ゴム層11aと中実ゴムの内側ゴム部11bとが構成される。
【0066】
その他の構成及び作用効果は実施形態1及び2と同一である。
【0067】
(その他の実施形態)
上記実施形態1〜3では、VリブドベルトBを示したが、特にこれに限定されるものではなく、摩擦伝動ベルトであれば、例えば、図19Aに示すようなベルト内周側のプーリ接触部分を構成する圧縮ゴム層11を有するローエッジ型のVベルトBであってもよく、また、図19Bに示すようなベルト内周側のプーリ接触部分を構成する内側ゴム層17を有する平ベルトBであってもよい。
【実施例】
【0068】
(未架橋ゴム組成物)
以下のゴム1〜24の未架橋ゴム組成物を調製した。それぞれの配合については表1〜3にも示す。
【0069】
<ゴム1>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのEPDM(JSR社製 商品名:EP123 エチレン含量58質量%、ENB含量4.5質量%、ムーニー粘度19.5ML1+4(125℃))を投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、補強材のHAFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シースト3)35質量部、補強材のGPFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストV)15質量部、軟化剤のオイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)8質量部、加工助剤のステアリン酸(花王社製 商品名:ルナック)1質量部、加硫助剤の酸化亜鉛(堺化学工業社製 商品名:酸化亜鉛3種)5質量部、架橋剤の硫黄(日本乾溜工業社製 商品名:セイミOT)1.7質量部、EPDM用混合加硫促進剤(三新化学工業社製 商品名:サンセラーEM−2)2.8質量部、スルフェンアミド系加硫促進剤(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーMSA−G)1.2質量部、ノボラック型でカシュー変性のフェノール樹脂(住友ベークライト社製 商品名:PR−12687)10質量部、酸塩型凝固剤を用いたハイスチレン樹脂(JSR社製 グレード:JSR0061)5質量部を投入配合して混練し、得られた未架橋ゴム組成物をゴム1とした。
【0070】
<ゴム2〜4>
フェノール樹脂の配合量をゴム成分100質量部に対して12質量部、15質量部、及び20質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物を、それぞれゴム2〜4とした。
【0071】
<ゴム5>
フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂の配合量をそれぞれゴム成分100質量部に対して10質量部及び6質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム5とした。
【0072】
<ゴム6>
フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂の配合量をそれぞれゴム成分100質量部に対して20質量部及び10質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム6とした。
【0073】
<ゴム7>
フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂の配合量をそれぞれゴム成分100質量部に対して8質量部及び9.5質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム7とした。
【0074】
<ゴム8>
フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂の配合量をそれぞれゴム成分100質量部に対して4質量部及び9.5質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム8とした。
【0075】
<ゴム9>
フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂の配合量をそれぞれゴム成分100質量部に対して2質量部及び6質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム9とした。
【0076】
<ゴム10>
フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂の配合量をそれぞれゴム成分100質量部に対して4質量部及び2.5質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム10とした。
【0077】
<ゴム11>
フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂の配合量をそれぞれゴム成分100質量部に対して8質量部及び2.5質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム11とした。
【0078】
<ゴム12>
フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂の配合量をそれぞれゴム成分100質量部に対して6質量部及び6質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム12とした。
【0079】
<ゴム13>
フェノール樹脂及びハイスチレン樹脂を配合しないことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム13とした。
【0080】
<ゴム14〜20>
ハイスチレン樹脂を配合せず、フェノール樹脂の配合量をゴム成分100質量部に対して2質量部、4質量部、8質量部、10質量部、12質量部、15質量部、及び20質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム14〜20とした。
【0081】
<ゴム21〜24>
フェノール樹脂を配合せず、ハイスチレン樹脂の配合量をゴム成分100質量部に対して2質量部、4質量部、8質量部、及び12質量部としたことを除いてゴム1と同様にして得られた未架橋ゴム組成物をゴム21〜24とした。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
表1〜3には、ゴム1〜24のそれぞれについて、ゴム成分100質量部に対するフェノール樹脂の含有量(A)とハイスチレン樹脂の含有量(B)との和(A+B)及びカーボンブラックの含有量(C=C1+C2)、並びにフェノール樹脂の含有量(A)のハイスチレン樹脂の含有量(B)に対する比(A/B)、HAFの含有量(C1)のGPFの含有量(C2)に対する比(C1/C2)、及びカーボンブラックの含有量(C=C1+C2)のフェノール樹脂の含有量(A)とハイスチレン樹脂の含有量(B)との和(A+B)に対する比(C/(A+B))をも示す。
【0086】
(Vリブドベルト)
ゴム1〜7のそれぞれを用いて圧縮ゴム層を形成した実施例1〜7のVリブドベルト、及びゴム8〜24のそれぞれを用いて圧縮ゴム層を形成した比較例1〜17のVリブドベルトを作製した。
【0087】
なお、接着ゴム層及び背面ゴム層を、EPDMをゴム成分とする他のゴム組成物で形成した。また、心線をポリエチレンテレフタレート繊維製の撚り糸で構成した。そして、ベルト周長を1200mm、ベルト幅を10.68mm、ベルト厚さを4.3mmとし、リブ数を3個とした。
【0088】
(試験方法)
<引張特性>
JIS K6251に基づき、ゴム1〜24のそれぞれをシート状に加工し、Vリブドベルトのベルト長さ方向に対応する列理方向が引張方向となるように試験片を作製して引張試験を行い、10%伸び時における引張応力及び切断時伸びを測定した。
【0089】
<ベルト走行試験>
−伝動能力評価−
図20Aは、伝動能力評価用ベルト走行試験機40のプーリレイアウトを示す。
【0090】
伝動能力評価用ベルト走行試験機40は、各々、プーリ径が60mmのリブプーリである駆動プーリ41及び従動プーリ42が左右に間隔をおいて設けられている。そして、この伝動能力評価用ベルト走行試験機40は、VリブドベルトBのVリブ側が駆動プーリ41及び従動プーリ42に接触して巻き掛けられるように構成されている。
【0091】
実施例1〜7及び比較例1〜17のそれぞれのVリブドベルトBについて、上記耐摩耗性評価用ベルト走行試験機40にセットし、ベルト張力が負荷されるように従動プーリ42に右方に588Nのデッドウェイト(DW)を負荷し、室温雰囲気下、駆動プーリ41を3500rpmの回転数で回転させると共に、無回転負荷状態にあった従動プーリ42の回転負荷を徐々に上昇させた。このとき、VリブドベルトBが駆動プーリ41及び従動プーリ42上でスリップするようになるが、そのスリップ率が1%となったときの従動プーリ42の回転負荷(トルク)を伝動能力とした。
【0092】
−耐クラック性評価−
図20Bは、耐クラック性評価用ベルト走行試験機50のプーリレイアウトを示す。
【0093】
耐クラック性評価用ベルト走行試験機50は、各々、プーリ径が60mmのリブプーリである駆動プーリ51及び第1従動プーリ52が上下に間隔をおいて設けられている(下側が駆動プーリ51及び上側が第1従動プーリ52)。駆動プーリ51及び第1従動プーリ52の上下方向中間付近の右側には、各々、プーリ径が50mmの平プーリの一対のアイドラプーリ53が上下に間隔をおいて設けられている。これらの一対のアイドラプーリ53の右方には、プーリ径が60mmのリブプーリの第2従属プーリ54が設けられている。そして、この耐クラック性評価用ベルト走行試験機50は、VリブドベルトBのVリブ側が駆動プーリ51、第1及び第2従動プーリ52,53に接触し、且つ背面側が一対のアイドラプーリ53に接触して巻き掛けられるように構成されている。
【0094】
実施例1〜7及び比較例1〜17のそれぞれのVリブドベルトBについて、上記耐クラック性評価用ベルト走行試験機50にセットし、ベルト張力が負荷されるように第1従動プーリ52に上方に588Nのデッドウェイト(DW)を負荷し、室温雰囲気下、駆動プーリ51を5100rpmの回転数で回転させてベルト走行させた。そして、定期的にベルト走行を停止すると共に、VリブドベルトBのVリブ側表面を目視観察し、クラックの発生が認められた時点でベルト走行を中止し、それまでのベルト走行時間を耐クラック寿命とした。
【0095】
(試験結果)
試験結果を表4〜6に示す。
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
表4〜6によれば、圧縮ゴム層を形成するゴム組成物において、フェノール樹脂の含有量がゴム成分100質量部に対して8〜20質量部であり、且つハイスチレン樹脂の含有量がゴム成分100質量部に対して5〜10質量部である実施例1〜7では、伝動能力が18.6N・m以上で且つ耐クラック寿命が2800時間以上であり、伝動能力及び耐クラック性のいずれもが優れるのに対し、それ以外の比較例1〜17では、伝動能力及び耐クラック性のうちの一方又は両方が劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は摩擦伝動ベルトの技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0101】
B Vリブドベルト,Vベルト,平ベルト(摩擦伝動ベルト)
11 圧縮ゴム層
11a 表面ゴム層
17 内側ゴム層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B